特許第6276113号(P6276113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276113
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/15 20060101AFI20180129BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01R13/15 A
   H01R13/15 Z
   H01R13/42 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-113727(P2014-113727)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-228330(P2015-228330A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】川上 悠太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長田 孝之
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−229223(JP,A)
【文献】 特許第3381496(JP,B2)
【文献】 特開2001−110500(JP,A)
【文献】 実開昭60−115473(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/15
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ハウジングと該雄ハウジング内に挿入装着される雄端子とを備えた雄コネクタと、雌ハウジングと該雌ハウジング内に挿入装着される雌端子とを備えた雌コネクタとからなり、
前記雌コネクタは、前記雌ハウジングの内壁から突出して前記雌端子と係合する弾性腕を有し、前記雌端子は、筒状のソケット部と、該ソケット部の筒壁部に設けられた弾性腕係合用孔と、前記ソケット部の筒壁部に一端側が支持されて前記ソケット部内に設けられた弾性接触片とを有し、前記雌端子が弾性腕係合用孔で前記ソケット部に前記弾性腕を係合させて前記雌ハウジング内に取り外し可能に固定されており、
前記雄コネクタと前記雌コネクタとを嵌合した時に、前記雌端子の前記ソケット部内に前記雄端子が挿入されることで、前記弾性接触片を変位させて前記雄端子に接触圧を持って接触させ、前記雄端子と前記雌端子とを電気的に接続するようになされたコネクタにおいて、
前記雌端子は、前記ソケット部の筒壁部の一部をなす弾性壁部で、変位した前記弾性接触片で前記ソケット部の筒壁部の外側に押圧され前記ソケット部の筒壁部からその外側に変位する弾性壁部を有し、
前記弾性腕は、変位した前記弾性壁部で外側に押圧され変位するよう前記ソケット部の前記弾性壁部側に設けられ、
変位した前記弾性接触片を変位した前記弾性壁部及び前記弾性腕で押圧することで、前記弾性接触片の接触圧を増大させることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記弾性腕は前記弾性壁部に係合させることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記弾性腕が前記弾性壁部から外れる位置に変位するため、前記雌ハウジング内における前記弾性腕の外側に形成された弾性腕逃がし空間に、前記雄コネクタと前記雌コネクタとを嵌合した時に挿入され、内側の前記弾性腕との間にギャップを形成する弾性腕押さえ部が前記雄ハウジング内に形成され、
前記弾性腕は、変位した前記弾性壁部で外側に押圧され前記ギャップで変位した後、前記弾性腕押さえ部に当接させることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、特に雄雌端子間接触圧を向上するためのコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雄ハウジングと該雄ハウジング内に挿入装着される雄端子とを備えた雄コネクタと、雌ハウジングと該雌ハウジング内に挿入装着される雌端子とを備えた雌コネクタとからなり、前記雌コネクタは、前記雌ハウジングの内壁から突出して前記雌端子と係合する弾性腕(ランス)を有し、前記雌端子は、筒状のソケット部と、該ソケット部の筒壁部に設けられた弾性腕係合用孔と、前記ソケット部の筒壁部に一端側のみが支持されて前記ソケット部内に設けられた弾性接触片とを有し、前記雌端子が前記弾性腕係合用孔で前記ソケット部の筒壁部に前記弾性腕を係合させて前記雌ハウジング内に取り外し可能に固定されており、前記雄コネクタと前記雌コネクタとを嵌合した時に、前記雌端子の前記ソケット部内に前記雄端子が挿入されることで、前記弾性接触片を変位させて前記雄端子に接触圧を持って接触させ、前記雄端子と前記雌端子との電気的接続を得るコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−218198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来コネクタでは、弾性接触片の接触圧のみで、雄雌端子間接触圧を得ているが、大きい雄雌端子間接触圧を得るために、弾性接触片の変位量を増大して弾性接触片の接触圧を増大させると、それに伴って弾性接触片の根元部に加わる応力も増大するため、弾性接触片の根元部の応力がその限界を越え、弾性接触片が塑性変形して元に戻らなくなり、弾性接触片の所望の接触圧が得られなくなる危険性が高くなってしまう。要するに、弾性接触片のヘタリが発生して弾性接触片の接触圧が小さくなる危険性が高くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、大きい雄雌端子間接触圧を得ると共に、弾性接触片のヘタリが発生しにくいコネクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載のコネクタは、雄ハウジングと該雄ハウジング内に挿入装着される雄端子とを備えた雄コネクタと、雌ハウジングと該雌ハウジング内に挿入装着される雌端子とを備えた雌コネクタとからなり、前記雌コネクタは、前記雌ハウジングの内壁から突出して前記雌端子と係合する弾性腕を有し、前記雌端子は、筒状のソケット部と、該ソケット部の筒壁部に設けられた弾性腕係合用孔と、前記ソケット部の筒壁部に一端側のみが支持されて前記ソケット部内に設けられた弾性接触片とを有し、前記雌端子が弾性腕係合用孔で前記ソケット部の筒壁部に前記弾性腕を係合させて前記雌ハウジング内に取り外し可能に固定されており、前記雄コネクタと前記雌コネクタとを嵌合した時に、前記雌端子の前記ソケット部内に前記雄端子が挿入されることで、前記弾性接触片を変位させて前記雄端子に接触圧を持って接触させ、前記雄端子と前記雌端子との電気的接続を得るコネクタにおいて、前記雌端子は、前記ソケット部の筒壁部の一部をなす弾性壁部で、変位した前記弾性接触片で外側に押圧され前記ソケット部の筒壁部からその外側に変位する弾性壁部を有し、前記弾性腕は、変位した前記弾性壁部で外側に押圧され変位するよう前記ソケット部の前記弾性壁部側に設けられ、変位した前記弾性接触片を変位した前記弾性壁部及び前記弾性腕で押圧することで、前記弾性接触片の接触圧を増大させることを特徴とするものである。
【0007】
請求項1に記載のコネクタにおいては、雌端子は、ソケット部の筒壁部の一部をなす弾性壁部で、変位した弾性接触片で外側に押圧されソケット部の筒壁部からその外側に変位する弾性壁部を有し、弾性腕は、変位した弾性壁部で外側に押圧され変位するようソケット部の弾性壁部側に設けられ、変位した弾性接触片を変位した弾性壁部及び弾性腕で押圧することで、弾性接触片の接触圧を増大させるので、弾性接触片と弾性壁部及び弾性腕とで雄雌端子間接触圧が生成される。即ち、弾性接触片単体で生じる雄雌端子間接触圧より大きく、しかも弾性接触片の接触圧を増大させるために、例えば、ソケット部の筒壁部に一端側が支持されてソケット部内に設けられ、変位した弾性接触片で外側に押圧され変位する補助弾性片を有し、変位した弾性接触片を変位した補助弾性片で押圧する構造を採用した時に、弾性接触片と補助弾性片とで生成される雄雌端子間接触圧力より大きい雄雌端子間接触圧力が得られる。そして、そのような大きい雄雌端子間接触圧力を得るために、弾性接触片の変位量は増大させなくてもよいので、弾性接触片のヘタリが発生しにくい。
【0008】
請求項2に記載のコネクタは、請求項1に記載のコネクタにおいて、前記弾性腕は前記弾性壁部に係合させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載のコネクタにおいては、雌ハウジング側の弾性腕と係合する雌端子側の係合部である弾性壁部の変位に伴い、弾性腕も同じように変位し、両者の位置関係が変位前と変位後とで変わらない。このため、弾性腕は、雌端子から外れる方向となる外側に変位して弾性接触片を押圧(弾性接触片の接触圧を増大)しても雌端子から外れず、雌端子の固定(抜け止め)が維持される。
【0010】
請求項3に記載のコネクタは、請求項2に記載のコネクタにおいて、前記弾性腕が前記弾性壁部から外れる位置に変位するために前記雌ハウジング内における前記弾性腕の外側に形成された弾性腕逃がし空間に、前記雄コネクタと前記雌コネクタとを嵌合した時に挿入され、内側の前記弾性腕との間にギャップを形成する弾性腕押さえ部が前記雄ハウジングに形成され、前記弾性腕は、変位した前記弾性壁部で外側に押圧され前記ギャップで変位し、その後、前記弾性腕が前記弾性腕押さえ部に当接することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載のコネクタにおいては、非嵌合状態であれば弾性腕の外側に弾性腕逃がし空間が存在し、修理などの必要に応じて雌ハウジングから雌端子を取り外す時に、弾性腕は、弾性腕逃がし空間で雌端子から外れる位置に変位することができる。一方、嵌合状態であれば弾性腕の外側にはギャップを介在して弾性腕押さえ部が存在し、弾性腕は、変位した弾性壁部で外側に押圧されギャップで変位し、その後、弾性腕が弾性腕押さえ部に当接し、それ以上外側に変位しない。このため、雌端子の固定強度が低下しない。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明のコネクタにおいては、雌端子におけるソケット部の筒壁部の一部をなす弾性壁部と、雌端子を雌ハウジングに取り外し可能に固定するために雌ハウジングの内壁から突出して雌端子と係合する弾性腕とを使用することで、大きい雄雌端子間接触圧を得ると共に、弾性接触片のヘタリが発生しにくいコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態としてのコネクタの全体構成を示す断面側面図
図2】雄コネクタの全体構成を示す断面側面図
図3】雄端子を示す斜視図
図4】雄コネクタの組み立てを説明する斜視図
図5】雌コネクタの全体構成を示す断面側面図
図6】雌端子を示す斜視図
図7】雌端子の断面斜視図
図8】(A)ソケット部の全部断面正面図、(B)ソケット部の後部断面正面図
図9】雌コネクタの組み立てを説明する斜視図
図10】雄雌端子間接触圧生成流れの第1(初期)工程を示す部分拡大断面側面図
図11】雄雌端子間接触圧生成流れの第2工程を示す部分拡大断面側面図
図12】雄雌端子間接触圧生成流れの第3工程を示す部分拡大断面側面図
図13】雄雌端子間接触圧生成流れの第4(最終)工程を示す部分拡大断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<全体構成>
図1に示すように、コネクタは、雄ハウジング10と該雄ハウジング10内に挿入装着される雄端子20とを備えた雄コネクタC1と、雌ハウジング30と該雌ハウジング30内に挿入装着される雌端子40とを備えた雌コネクタC2とからなる。
【0015】
<雄コネクタ>
図2に示すように、雄ハウジング10は、絶縁性合成樹脂材をもって成形され、基部11と、基部11の前端部から外側へ張り出した角形のフランジ部12と、フランジ部12の外側部から前方へ突出した角形のフード部13とを一体に有し、雄コネクタC1と雌コネクタC2とを嵌合した時に、基部11の前面が雌ハウジング30の前面と向かい合い、フード部13が雄ハウジング30の外側に嵌合されるもので、基部11には、後方から雄端子20を挿入可能な端子収容部14が形成されている。この端子収容部14は、基部11の前後面に貫通した孔からなり、フード部13内に連通されている。端子収容部14内における前端部には、その両側壁部から内側へ突出した一対の端子挿入ストッパ15が形成されている。端子収容部14内には、雄ハウジング10に雄端子20を取り外し可能に固定するための弾性腕16が形成されている。この弾性腕16は、端子収容部14の上壁部から突出した後に曲げられ、端子収容部14内における前半上部にて前方に延ばされ、先端側が上下方向に弾性変位可能な片持ち梁からなり、その先端側下面に雄端子20と係合するための係合突部16aが形成されている。端子収容部14内における弾性腕16の上側には、弾性腕16の係合突部16aが雄端子20から外れる位置に弾性腕16を弾性変位するための弾性腕逃がし空間17が形成されている。
【0016】
また、雄ハウジング10には、雌ハウジング30に形成される弾性腕33用の剛性で曲がらない押さえ部18が形成されている。この弾性腕押さえ部18は、雌ハウジング30に形成された弾性腕逃がし空間34に、雄コネクタC1と雌コネクタC2とを嵌合した時に挿入され、下側の弾性腕33との間に所定のギャップG2(図11参照)を形成するように、基部11の前面からフード部13内に突出されている。
【0017】
図3に示すように、雄端子20は、導電性を有する1枚の金属片を折り曲げることにより形成され、角筒状の基部21と、基部21から前方へ突出する平型のタブ部(ピンコンタクト)22と、基部21の後方に連設する電線接続部23とを一体に有し、基部21の上壁部には、弾性腕係合用孔24が形成され、電線接続部23には、ゴム栓圧着部23aと芯線圧着部23bとが形成されている。
【0018】
図4に示すように、雄コネクタC1を組み立てる時は、初めに雄端子20が電線W1に取り付けられ、その後、雄端子20が雄ハウジング10の後方から端子収容部14内に挿入装着される。雄端子20を電線W1に取り付ける時は、初めに雄コネクタC1と電線W1との間に防水性を持たせるワイヤーシールであるゴム栓25が電線W1の絶縁被服W1aの外側に嵌着され、その後、ゴム栓25がゴム栓圧着部23aに固着されると共に、電線W1の芯線W1bが芯線圧着部23bに固着される。雄端子20を端子収容部14内に挿入する時は、その前に、雄コネクタC1と雌コネクタC2との間に防水性を持たせるコネクタシールである角形のゴムリング26が雄ハウジング10の前方からフード部13内に嵌め込まれる。
【0019】
図2に示すように、雄端子20は、その基部21の前端が端子挿入ストッパ15に突き当たり、それ以上挿入できなくなるまで端子収容部14内に完全挿入されることで、その基部21、電線接続部23、電線W1の端部及びゴム栓25が端子収容部14内に収容され、そのタブ部22がフード部13内に突出した状態で雄ハウジング10内に挿入配置される。また、弾性腕16は、その下側を雄端子20の基部21の前端が通過する時に、その係合突部16aが雄端子20の基部21の上壁部に乗り上げることで、その上側の弾性腕逃がし空間17で上方へ弾性変位し、その後、雄端子20が完全挿入された時点で、その係合突部17aが雄端子20の弾性腕係合用孔24内に嵌り込むことで、下方へ弾性復帰して元の状態に戻り、その係合突部16aの前面を雄端子20の弾性腕係合用孔24の前端縁(基部31)に係合させることで、雄端子20を抜け止めして雄ハウジング10に固定する。
【0020】
以上のように構成された雄コネクタC1は、修理などの必要に応じて雄ハウジング10から雄端子20を取り外すことができる。その時は、雄ハウジング10の前方からフード部13内に図示しない端子取り外し工具を挿入し、その先端を弾性腕16の先端下面に引っ掛け、弾性腕16をその上側の弾性腕逃がし空間17で上方へ持ち上げ、弾性腕16の係合突部16aを雄端子20の弾性腕係合用孔24から上方へ抜き去り、弾性腕16を雄端子20から外した状態で、雄端子20を雄ハウジング10の後方へ引き抜くことができる。
【0021】
<雌コネクタ>
図5に示すように、雌ハウジング30は、絶縁性合成樹脂材をもって成形され、雄コネクタC1と雌コネクタC2とを嵌合した時に、その前面が雄ハウジング10の基部11の前面と向かい合い、その後端部を除いて雄ハウジング30のフード部13の内側に嵌合されるもので、この雌ハウジング30には、後方から雌端子40が挿入可能な端子収容部31が形成されている。この端子収容部31は、雌ハウジング30の前後面に貫通した孔からなる。端子収容部31内における前端部には、その両側壁部から内側に突出した一対の端子挿入ストッパ32が形成されている。端子収容部31内には、雌ハウジング30に雌端子を取り外し可能に固定するための弾性腕33が形成されている。この弾性腕33は、端子収容部31の上壁部から突出した後に曲げられ、端子収容部31内における前半上部にて前方に延ばされ、先端側が上下方向に弾性変位可能な片持ち梁からなり、その先端側下面に雌端子40と係合するための係合突部33aが形成されている。端子収容部31内における弾性腕33の上側には、弾性腕33の係合突部33aが雌端子40から外れる位置に弾性腕33を弾性変位するための弾性腕逃がし空間34が形成されている。また、この弾性腕逃がし空間34は、雄ハウジング30に形成された弾性腕押さえ部18を、雄コネクタC1と雌コネクタC2とを嵌合した時に前方から挿入可能で、挿入された弾性腕押さえ部18とその下側の弾性腕33との間に所定のギャップG2(図11参照)を形成するものである。
【0022】
図6図7図8(A),図8(B)に示すように、雌端子40は、導電性を有する1枚の金属片を折り曲げることにより形成され、その先端側に、底壁部41と、底壁部42の両側部から立ち上げられた側壁部42,42と、一方の側壁部42の前部ともう一方の側壁部42の後部とから上方へ延長された延長部が、それぞれ、内側へ折り曲げられ、その先端部が反対側の側壁部42に固定されず係合だけされて形成された前後上壁部43,44とを有し、これら底壁部41と側壁部42,42と前後上壁部43,44からなり、前方から雄端子20のタブ部22を挿入可能な角筒状のソケット部45と、後上壁部43から後方へ延長された延長部が、ソケット部45内の前方に向けて折り返されて形成され、先端側が上下方向に弾性変位可能な片持ち梁からなる弾性接触片46とを一体に有し、底壁部41において前上壁部43と対向する前部には、ソケット部45内に張り出した固定接点部41aが打ち出しにより形成され、弾性接触片46には、後上壁部44からの折り返し部である曲げ部46aと、曲げ部46aから前斜め下方へ延び、先端側が前上壁部43と固定接点部41aとの間に配置されるアーム部46bと、アーム部46bの先端側を斜め上方へ曲げて固定接点部41aと対向する下向き突状の湾曲面に形成された可動接点部46cとを有し、固定接点部41aと可動接点部46cとの間に、雄端子20のタブ部22の厚さより薄い雄端子挿入ギャップG1(図10参照)が形成され、雄コネクタC1と雌コネクタC2とを嵌合した時に、ソケット部45内における雄端子挿入ギャップG1に雄端子20のタブ部22が前方から挿入されることで、弾性接触片46の先端側を上方へ変位させて可動接点部46cを雄端子20のタブ部22の上面に接触圧を持って接触させ、雄端子20のタブ部22を固定接点部41aと可動接点部46cとの間に挟持して、雄端子20と雌端子40とを電気的に接続するようになされている。
【0023】
前上壁部43と弾性接触片46の先端との間には、前上壁部43から前方へ延長された延長部が、下向きに折り曲げられた後、ソケット部45内の後方に向けて折り曲げられて形成された剛性接触片47の先端部が配置され、上方へ変位した弾性接触片46の先端を剛性接触片47の先端部に当接させ、この剛性接触片47を支持する前上壁部43を上方へ押圧して変位させ、上方へ変位した弾性接触片46を上方へ変位した前上壁部43で下方へ押圧することで、弾性接触片46の接触圧を増大させるようになされている。即ち、この雌端子40では、ソケット部45の筒壁部の一部である前上壁部43を、上方へ変位した弾性接触片46で上方へ押圧され変位して、変位した弾性接触片46を下方へ押圧し、弾性接触片46の接触圧を増大させる弾性壁部として有している(以下、「前上壁部」を「弾性壁部」という。)。
【0024】
なお、弾性接触片46を支持する後上壁部44は、その先端側が弾性壁部43と同様に一方の側壁部42に係合されているだけで固定されていなくても、弾性接触片46の先端側が雄端子20のタブ部22で上方へ押圧された時に上方へ変位することはなく、弾性接触片46単体での接触圧が低下することはないが、後上壁部44の先端側は、一方の側壁部42に固定してもよい。
【0025】
ソケット部45には、前上壁部43と後上壁部44との隙間からなる弾性腕係合用孔48が設けられている。
【0026】
また、雌端子40は電線接続部49を一体に有し、この電線接続部49は、ソケット部45の後方に連設され、ゴム栓圧着部49aと芯線圧着部49bとが形成されている。
【0027】
図9に示すように、雌コネクタC2を組み立てる時は、初めに雌端子40が電線W2に取り付けられ、その後、雌端子40が雌ハウジング30の後方から端子収容部31内に挿入装着される。雌端子40を電線W2に取り付ける時は、初めに雌コネクタC2と電線W2との間に防水性を持たせるワイヤーシールであるゴム栓50が電線W2の絶縁被服W2aの外側に嵌着され、その後、ゴム栓50がゴム栓圧着部49aに固着されると共に、電線W2の芯線W2bが芯線圧着部49bに固着される。
【0028】
図5に示すように、雌端子40は、そのソケット部45の前端が端子挿入ストッパ32に突き当たり、それ以上挿入できなくなるまで端子収容部31内に完全挿入されることで、そのソケット部45、電線接続部49、電線W2の端部及びゴム栓50が端子収容部31内に収容された状態で雌ハウジング30内に挿入配置される。また、弾性腕33は、その下側を雌端子40のソケット部45の前端が通過する時に、その係合突部33aが雌端子40のソケット部45の弾性壁部43に乗り上げることで、その上側の弾性腕逃がし空間34で上方へ弾性変位し、その後、雌端子40が完全挿入された時点で、その係合突部33aが雌端子40の弾性腕係合用孔48内に嵌り込むことで、下方へ弾性復帰して元の状態に戻り、その係合突部33aの前面を雌端子40の弾性腕係合用孔48の前端縁、即ち、弾性壁部43の後端面に係合させることで、雌端子40を抜け止めして雌ハウジング30に固定する。
【0029】
そして、弾性腕33は、上方へ変位した弾性壁部43で上側に押圧され変位するようソケット部45の弾性壁部43側に設けられ、具体的には、弾性腕33の先端側を弾性壁部43に重ね合わせ、より具体的には、弾性腕33の係合突部33aより先の先端部を弾性壁部43に重ね合わせ、上方へ変位した弾性壁部43を弾性腕33に当接させ、この弾性腕33を上方へ押圧して変位させ、上方へ変位した弾性接触片46を上方へ変位した弾性壁部43及び弾性腕33で下方へ押圧することで、弾性接触片46の接触圧を増大させるようになされている。言い換えると、剛性のソケット部45の筒壁部において、弾性腕33が係合する筒壁部の一部を、変位した弾性接触片46で外側に押圧され変位する弾性壁部43とし、この弾性壁部43だけでなく弾性腕33も弾性接触片46の接触圧を増大させるためのバネとして使用するようになされている。
【0030】
以上のように構成された雌コネクタC2は、修理などの必要に応じて雌ハウジング30から雌端子40を取り外すことができる。その時は、雌ハウジング30の前方から端子収容部31内に図示しない端子取り外し工具を挿入し、その先端を弾性腕33の先端下面に引っ掛け、弾性腕33をその上側の弾性腕逃がし空間34で上方へ持ち上げ、弾性腕33の係合突部33aを雌端子40の弾性腕係合用孔48から上方へ抜き去り、弾性腕33を雌端子40から外した状態で、雌端子40を雌ハウジング30の後方へ引き抜くことができる。
【0031】
<本実施形態の作用>
次に、本実施形態の作用について、図10ないし図13に参照しながら説明する。
雄コネクタC1と雌コネクタC2との嵌合を開始すると、先ず、図10に示すように、雌ハウジング30の弾性腕逃がし空間34内に雄ハウジング10の弾性腕押さえ部18が前方から挿入されると共に、雌端子40のソケット部45内における底壁部41の固定接点部41aと弾性接触片46の可動接点部46cとの間の雄端子挿入ギャップG1に雄端子20のタブ部22が前方から挿入される。そして、図11に示すように、弾性腕逃がし空間34内への弾性腕押さえ部18の挿入に伴いその下側の弾性腕33との間に所定のギャップG2が形成される。一方、弾性接触片46は、その先端側がタブ部22の挿入に伴い上方へ押圧され変位し、その先端が剛性接触片47に当接する。すると、図12に示すように、弾性壁部43が剛性接触片47を介して上方へ押圧され変位する。上方へ変位した弾性壁部43は、上方へ変位した弾性接触片46を剛性接触片47を介して下方へ押圧するので、弾性接触片46のタブ部22との接触圧が増大する。さらに、上方へ変位した弾性壁部43は、図12に示すように、弾性腕33の先端側に当接する。すると、図13に示すように、弾性腕33との先端側が上方へ押圧され、その上側の弾性腕押さえ部18とのギャップG2で上方へ変位し、その後、弾性腕33との先端側が弾性腕押さえ部18に当接する。上方へ変位した弾性腕33は、上方へ変位した弾性接触片46を弾性壁部43及び剛性接触片47を介して下方へ押圧するので、弾性接触片46のタブ部22との接触圧がさらに増大する。この結果、弾性接触片(金属バネ)46と弾性壁部(金属バネ)43及び弾性腕(樹脂バネ)33で、従来と比べて大きい雄雌端子間接触圧が生成される。そして、そのような大きい雄雌端子間接触圧力を得るために、弾性接触片46の変位量は増大させなくてもよいので、弾性接触片46のヘタリが発生しにくい。
【0032】
本実施形態においては、図13に示すように、雌ハウジング30側の弾性腕33と係合する雌端子40側の係合部である弾性壁部43の変位に伴い、弾性腕33も同じように変位し、両者の位置関係が変位前と変位後とで変わらない。このため、弾性腕33は、雌端子40から外れる方向となる上方に変位して弾性接触片46を押圧(弾性接触片46の接触圧を増大)しても雌端子40から外れず、雌端子40の固定(抜け止め)が維持される。また、図5に示すように、非嵌合状態であれば弾性腕33の上側に弾性腕逃がし空間34が存在し、修理などの必要に応じて雌ハウジング30から雌端子40を取り外す時に、弾性腕33は、弾性腕逃がし空間34で雌端子40から外れる位置に変位することができる。一方、図11図12に示すように、嵌合状態であれば弾性腕33の上側には所定のギャップG2を介在して弾性腕押さえ部18が存在し、図13に示すように、弾性腕33は、変位した弾性壁部43で上側に押圧されギャップG2で変位し、その後、弾性腕33が弾性腕押さえ部18に当接し、それ以上外側に変位しない。このため、雌端子40の固定強度が低下しない。
【0033】
以上、本実施形態においては、雌端子40におけるソケット部45の筒壁部の一部をなす弾性壁部43と、雌端子40を雌ハウジング30に取り外し可能に固定するために雌ハウジング30の内壁から突出して雌端子40と係合する弾性腕33とを使用することで、大きい雄雌端子間接触圧を得ると共に、弾性接触片26のヘタリが発生しにくいコネクタを実現することができる。
【0034】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はそれに限定されず本発明の要旨を変更しない範囲内で種々変更実施することができる。本実施形態では多極コネクタ、具体的には自動車用ワイヤーハーネス同士を接続する4極コネクタを示し、雄雌の端子は局数(電線の接続本数)に応じて4本ずつ備えると共に、雄雌のハウジングの端子収容部及び雄ハウジングの弾性腕押さえ部についても、局数に応じて4つずつ形成するものであるが、電線を1対1で接続する単極コネクタ、電線と機器基板(電気・電子機器)を接続するコネクタ等、種々のコネクタで実施することができる。
【0035】
また、本実施形態では、弾性腕(ランス)がソケット部にその上側から係合するものであるため、ソケット部の上壁部の一部を弾性壁部とするが、弾性腕が側方や下側から係合するものでは、弾性腕が係合する側壁部や底壁部の一部を弾性壁部として実施することができる。本実施形態では、弾性接触片がソケット部の後上壁部(後端)から折り返すものであるため、ソケット部の前上壁部(前部)を弾性壁部としたが、弾性接触片がソケット部の前上壁部(前端)から折り返すものでは、ソケット部の後上壁部(後部)を弾性壁部として実施することができる。本実施形態では、弾性接触片はソケット部に一体形成したものであるが、別体の金属板バネ等をソケット部の内壁に固着したものでもよい。本実施形態では、弾性接触片の先端を弾性壁部に形成された剛性接触片に当接させ弾性壁部を変位させる構造のものであるが、弾性接触片の先端を直接弾性壁部に当接させその弾性壁部を変位させる構造でも実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
C1 雄コネクタ
C2 雌コネクタ
10 雄ハウジング
18 弾性腕押さえ部
20 雄端子
30 雌ハウジング
33 弾性腕
40 雌端子
45 ソケット部
43 弾性壁部
46 弾性接触片
48 弾性腕係合用孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13