【実施例1】
【0019】
図1〜
図5は、本発明のヘッダプレートレス熱交換器用偏平チューブの第1実施例を示すものであり、
図6はその偏平チューブを用いたコアの要部断面図である。
図1に示すごとく、一対のプレート1がプレス成形により同一形状に形成され、互いにその溝底部1aが対向されるように逆向きに嵌着して偏平チューブ8が形成されるものである。
このプレート1は、互いに対向する一対の側壁部1b、1cを有する偏平な溝形に曲折される。この側壁部1b、1cは平坦な面で形成されており、段部を有さない。また、偏平チューブ8の両開口端部の位置で、各プレート1の溝底部1aの厚み方向に拡開する拡開部2が形成される。
そして、各プレート1の両拡開部2以外の中間部分の溝底部1aには、多数のディンプル6が突設形成されている。このディンプル6の高さは、各プレート1の拡開部2の拡開高さと同一である。
【0020】
側壁部1b、1cの拡開部2の形成位置には、その高さ方向の両方向に拡開する拡開側壁部2b、2cが形成され、一方の拡開側壁部2bの高さは他方の拡開側壁部2cの高さよりも板厚分、低く形成される。
図1に示す如く、その拡開側壁部2b、2cは段部を有していない。即ち、拡開側壁部2b、2cとそれ以外の側壁部1b、1cは、連続する平坦な面で形成されている。
また、プレート1の一方の拡開側壁部2bの先端面で、且つ偏平チューブ8の開口端部の位置に爪3が突設されている。さらに、他方の拡開側壁部2cに隣接する拡開溝底部2aの位置に爪3が係合される切欠き部4が形成されている。この切欠き部4は、
図1に示す如く、偏平チューブ8の開口端部の位置から拡開側壁部2cに沿って平行に形成され、平面視でコ字状に切り欠かれている。その切欠き部4の長さは、拡開部2の幅方向の付根部に達しない程度に形成される。
なお、この切欠き部4及び爪3は、この例では、
図1及び
図5に示す如く、偏平チューブ8の両方の開口端部に形成されているが、偏平チューブ8の一方の開口端部のみに形成してもよい。
【0021】
このように形成された2枚の同形状のプレート1において、一方のプレート1の一方の拡開側壁部2bの外面と、それに対向するプレート1の他方の拡開側壁部2cの内面とが接触されるように嵌着される。その際、各プレート1の長手方向の両端部において、各プレート1の一方の拡開側壁部2bの先端面が、
図4に記載の如く、対向するプレート1の拡開溝底部2aに当接されるとともに、一方の拡開側壁部2bの爪3が、
図3に記載の如く、対向するプレート1の切欠き部4に係合される。
爪3の突出高さは、ブレージングされたろう材等の厚みを考慮して適宜設定するとよい。それにより、一方のプレート1の爪3が対向するプレート1の切欠き部4に係合したとき、その爪3の先端面が対向するプレート1の拡開溝底部2aの外面に面一に整合するようにする。爪3の長さは、切欠き部4の長さに整合する。
【0022】
上記のような一対のプレート1が互いに逆向きに嵌着して形成される偏平チューブ8が、インナーフィン7を内装した状態で、拡開部2とディンプル6の頂部により、多数厚み方向に積層され、
図6のごとく熱交換器のコア10を構成する。そして、そのコア10の外周にコア被嵌部材11が被嵌される。一例として、このコア被嵌部材11がケーシングの場合、そのケーシングを一対の溝状材で形成し、積層方向の中間部で互いに嵌着するものを利用することができる。
ケーシングの側壁部には、図示しない一対の冷却水出入口が穿設され、そこにパイプが接続される。また、コア10の開口方向の両端には一対のタンクが配置される。
【0023】
この様に組立てられた熱交換器は、偏平チューブ8の積層方向に外力を加えた状態で、炉内でろう付けされる。ろう付けの方法として、各部品の互いに接触する一方にろう材がクラッドされているか、或いはそれらの間にろう材が介装または塗布される。
図3および
図4に示すごとく、一方のプレート1の拡開側壁部2bの先端面が、対向するプレート1の拡開溝底部2aに当接されるとともに、その爪3が対向するプレートの切欠き部4に係合される。
そして、一方の拡開側壁部2bの外面と他方の拡開側壁部2cの内面とが密接して嵌着される際、それらの側壁部での厚みが偏平チューブの板厚の和となる。
【0024】
したがって、互いのプレートにかかる圧力を拡開側壁部2b、2cで支持することができるため、各プレート1の拡開部2での故障が発生し難い偏平チューブ8を提供することができる。
さらに、側壁部1b、1cおよび拡開側壁部2b、2cは段部を有するものではないので、
図9に示すような滑落は生じず、信頼性の高いろう付けが実現される。
また、コア被嵌部材11に接触する拡開側壁部2cの先端は、
図6に示す如く、コーナー部の上下方向の一方が平坦に形成されているため、拡開部2の位置で、コア被嵌部材11と偏平チューブ8との隙間を従来図の
図9の隙間の半分にすることができる。即ち、ろう付けの際、ろう材が流れ出る隙間を減少させることができるので、ろう付けの信頼性が向上する。
【0025】
なお、側壁部1b、1cは拡開側壁部2b、2cのように側壁部1cが偏平チューブ8の外面側に、側壁部1bがその内側に配置され、側壁部1bの先端面が対向するプレート1の溝底部1aに当接するようにされている。
拡開側壁部2b、2c以外の側壁部1b、1cについては、一対のプレート1が互いに側壁部で接触して、嵌着されていればよく、側壁部1bの先端面が対向するプレート1の溝底部1aに当接しなくともよい。その理由は、偏平チューブ8の内部に介装されるインナーフィン7により、ろう付け時の圧力を支持することができるからである。
また、コア被嵌部材11はこの例ではケーシングで説明したが、これに替えて、コア10の開口端をタンクで被嵌し、それらをケーシングで被嵌することも可能である。
【実施例2】
【0026】
図7は、本発明のヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブの第2実施例である。
この例が、第1実施例と異なる点は、
図7に示す如く、切欠き部4に隣接した拡開側壁部2cのコーナー部9に予め舌片部5を設けることにある。
プレート1の切欠き部4に隣接する位置で、他方の拡開側壁部2cの位置に予め平面視で、偏平チューブ8の開口端部の位置からL字状に欠切して、そこに舌片部5を形成しておく。そして、プレート1をプレス成形で溝形に曲折することにより、その舌片部5の端面はそのプレート1の拡開溝底部2aの外面に面一に整合する。
この例では、舌片部5の長さと切欠き部4の切欠き長さが、整合するように形成されている。
【0027】
この場合、一対のプレート1の嵌着体からなる偏平チューブ8のコーナー部9に形成された舌片部5の位置で直角が切り出されるため、偏平チューブ8の外側に配置される拡開側壁部2cは、舌片部5の位置ではそのコーナー部9に平坦な面が形成される。
その状態で、偏平チューブ8を積層しコア10を形成すると、その外周には拡開部2の舌片部5の位置で隙間のない平坦な壁面が形成される。
その結果、コア10の外周がコア被嵌部材11により被嵌されて、一体にろう付けされると、偏平チューブ8の外側に位置する拡開側壁部2cとコア被嵌部材11の間は隙間なく密着し、気密性、液密性を確保することができる。
また、このように舌片部5を形成しておくと、プレート1を曲折する際、切欠き部4に隣接する拡開側壁部2cのコーナー部9に歪みが生じ難く、爪3を欠切き部4に係合しやすい状態にすることができる。