特許第6276117号(P6276117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276117
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】圧縮機及び圧縮機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20180129BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F04D29/44 R
   F04D29/42 N
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-125357(P2014-125357)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-3626(P2016-3626A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 徹
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−231620(JP,A)
【文献】 特開平09−170442(JP,A)
【文献】 特開2013−174230(JP,A)
【文献】 特開2014−088785(JP,A)
【文献】 特開平06−307250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に回転自在に設けられた羽根車と、
前記ケーシング内に配置され、前記羽根車により圧縮されたガスの流速を低下させるディフューザとを備え、
前記羽根車は、前記ケーシングの内周面へ向かって延びるブレードを有し、
前記ディフューザは、前記ブレードに対向するシュラウド面の一部を形成するシュラウド形成部を有し、
前記シュラウド形成部は、前記ケーシングの素材である鋳鉄または鋳鋼である鋳物よりも耐腐食性の高い素材であるステンレス鋼からなる、圧縮機。
【請求項2】
前記シュラウド形成部の内周面は、前記ケーシングの内周面とともに連続した前記シュラウド面を形成する、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記羽根車を収容する内部空間を有し、
前記シュラウド形成部は、圧縮後の前記ガスが排出される前記内部空間の出口において前記シュラウド面を形成する、請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
歯車及び前記歯車が配置される増速機ケーシングを有し、モータの回転力を増速してインペラに伝達する増速機と、
前記内部空間の前記増速機ケーシング側の端部を覆うケーシングカバーと、
前記増速機ケーシングと前記ケーシングカバーとの間に挟み込まれるシムと、
備える
請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧縮機を製造するための方法であって、
前記ケーシングに前記シュラウド形成部を結合した状態で前記ケーシングの内周面と前記シュラウド形成部の内周面を同時に削り出す削出工程を備える
圧縮機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及び圧縮機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、羽根車の回転によりガスを圧縮する圧縮機が知られている。下記特許文献1には、そのような圧縮機の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された遠心圧縮機は、ケーシングと、ケーシングの内部空間に回転自在に設けられた羽根車とを備える。
【0004】
ケーシングは、羽根車の軸方向の一端から他端側へ向かうにつれて拡径するテーパー状の内周面を有する。羽根車は、ケーシングの内周面へ向かって延びる複数の羽根を備える。各羽根は、ケーシングの内周面に対向する外端縁を有する。ケーシングの内周面と各羽根の外端縁との間には、微小な隙間が形成される。
【0005】
ケーシングの外周部には、渦巻室が設けられ、羽根車の収容空間と渦巻室との間にディフューザが配置された流路が設けられている。羽根車の回転により圧縮されたガスは、ディフューザが配置された流路を経て渦巻室へ流れ、圧縮機から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−12693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧縮機のケーシングは一般的に鋳鉄や鋳鋼などの鋳物によって形成されるため、圧縮対象のガスに含まれる湿気等によって内周面に腐食が生じやすい。上記従来の圧縮機において、ケーシングの内周面に腐食が生じると、ケーシングの内周面と各羽根の外端縁との間の隙間であるシュラウド隙間が拡大し、圧縮機の性能が低下する。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ケーシングの腐食による圧縮機の性能低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による圧縮機は、ケーシングと、前記ケーシング内に回転自在に設けられた羽根車と、前記ケーシング内に配置され、前記羽根車により圧縮されたガスの流速を低下させるディフューザとを備え、前記羽根車は、前記ケーシングの内周面へ向かって延びるブレードを有し、前記ディフューザは、前記ブレードに対向するシュラウド面の少なくとも一部を形成するシュラウド形成部を有し、前記シュラウド形成部は、前記ケーシングの素材よりも耐腐食性の高い素材からなる。
【0010】
この構成では、ケーシングの素材よりも耐腐食性の高い素材からなるシュラウド形成部がシュラウド面の少なくとも一部を形成するため、ケーシングの腐食によるシュラウド面とブレードとの間のシュラウド隙間の拡大を抑制できる。このため、圧縮機の性能低下を抑制できる。また、ディフューザのシュラウド形成部を利用して耐腐食性を高めることができるため、例えばケーシング全体を耐腐食性の高い素材で形成するような場合に比べて、製造コストの増大を抑制できる。
【0011】
前記圧縮機において、前記シュラウド形成部の内周面は、前記ケーシングの内周面とともに連続した前記シュラウド面を形成することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ケーシングとディフューザのシュラウド形成部とにより、滑らかに連続したシュラウド面を形成できる。
【0013】
前記圧縮機において、前記ケーシングは、前記羽根車を収容する内部空間を有し、前記シュラウド形成部は、圧縮後の前記ガスが排出される前記内部空間の出口において前記シュラウド面を形成することが好ましい。
【0014】
ケーシングの腐食により拡大したシュラウド隙間は修復困難であるが、ケーシングの歪により拡大したシュラウド隙間は調整により修復できる。このため、本構成によれば、内部空間の出口におけるシュラウド面が耐腐食性の高いシュラウド形成部で形成されることにより、内部空間の出口において、修復困難な腐食によるシュラウド隙間の拡大をシュラウド形成部によって防止し、シュラウド隙間の拡大の原因を容易に調整可能な歪によるものに限定できる。
【0015】
前記圧縮機は、歯車及び前記歯車が配置される増速機ケーシングを有し、モータの回転力を増速して前記インペラに伝達する増速機と、前記内部空間の前記増速機ケーシング側の端部を覆うケーシングカバーと、前記増速機ケーシングと前記ケーシングカバーとの間に挟み込まれるシムと、を備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、経年変化による圧縮部ケーシング、ケーシングカバー及び増速機ケーシングのいずれか1つの歪によりシュラウド隙間が拡大する場合があっても、シムの厚みを調整することにより修復できる。
【0017】
前記圧縮機において、前記シュラウド形成部の素材は、ステンレス鋼であることが好ましい。
【0018】
圧縮機のケーシングは、一般的に鋳鉄や鋳鋼などの鋳物によって形成されるため、シュラウド形成部の素材がステンレス鋼であることにより、ケーシングよりも耐腐食性の高いシュラウド形成部を形成できる。
【0019】
本発明による圧縮機の製造方法は、前記圧縮機を製造するための方法であって、前記ケーシングに前記シュラウド形成部を結合した状態で前記ケーシングの内周面と前記シュラウド形成部の内周面を同時に削り出す削出工程を備える。
【0020】
この製造方法によれば、ケーシングの内周面とシュラウド形成部の内周面との間に段差のない、滑らかなシュラウド面を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ケーシングの腐食による圧縮機の性能低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態によるターボ圧縮機の部分的な断面図である。
図2図1中のA部の拡大図である。
図3】圧縮部ケーシングの断面図である。
図4】圧縮部ケーシングをケーシングカバー側から見た平面図である。
図5】ディフューザの平面図である。
図6】ディフューザの軸方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は、本実施形態によるターボ圧縮機の部分的な断面図である。本実施形態による圧縮機は、図略のモータと、増速機2と、圧縮部ケーシング4と、ケーシングカバー6と、インペラ8と、ディフューザ10と、シム11とを備える。
【0025】
増速機2は、図略のモータの回転力を増速してインペラ8へ伝達するものである。増速機2は、図略の低速軸と、低速歯車12と、高速歯車14と、高速軸16と、増速機ケーシング18とを備える。低速歯車12は、図略の低速軸に外嵌され、増速機ケーシング18内に配置される。高速歯車14は、高速軸16に設けられ、低速歯車12と噛み合う。図1における高速軸16の左端は、増速機ケーシング18から突出し、インペラ8に結合される。
【0026】
圧縮部ケーシング4は、図1に示すように、ケーシングカバー6及びシム11を介して増速機ケーシング18に締結される。本実施形態では、圧縮部ケーシング4が本発明のケーシングに相当する。圧縮部ケーシング4は、鋳鉄や鋳鋼などの鋳物によって形成される。圧縮部ケーシング4は、インペラ8を収容する収容部22と、収容部22の外周に配置されて収容部22と一体的に形成されたスクロール部24とを有する。
【0027】
収容部22内には、インペラ8が配置される内部空間22aが設けられる。高速軸16の軸方向における内部空間22aの両端は、開放されている。以下、単に「軸方向」というときは、高速軸16の軸方向を意味する。また、高速軸16を中心とする径方向を単に「径方向」という。ケーシングカバー6は、内部空間22aの増速機ケーシング18側の端部を覆う。内部空間22aのケーシングカバー6と反対側の端部によって、ガスの導入口22bが構成される。
【0028】
図2は、図1中のA部の拡大図である。内部空間22aを形成する収容部22の内周面22cは、図2に示すように、入口側テーパー面22d、中間面22e及び出口側テーパー面22fを有する。
【0029】
入口側テーパー面22d、中間面22e及び出口側テーパー面22fは、導入口22bからケーシングカバー6側へ順番に配置される。入口側テーパー面22dから中間面22eにかけての内周面22cは、ケーシングカバー6側へ向かうにつれて縮径するテーパー状を成す。出口側テーパー面22fは、ケーシングカバー6側へ向かうにつれて拡径するテーパー状を成す。出口側テーパー面22fのケーシングカバー6側の端縁部22gが、内周面22cのケーシングカバー6側の端縁部に相当する。
【0030】
図3は、圧縮部ケーシング4単体の軸方向に沿った断面図である。圧縮部ケーシング4は、出口側テーパー面22fの端縁部22gの外周に形成された嵌合凹部25を有する。嵌合凹部25は、軸方向に見て内周面22cと同軸に形成された円形の凹部である。
【0031】
スクロール部24は、嵌合凹部25の径方向外側に配置される。スクロール部24には、圧縮後のガスが排出される渦巻室24aが設けられる。スクロール部24は、嵌合凹部25の外縁から径方向外側に延びる端面24bを有する。端面24bは、軸方向に対して垂直であり、図2に示すようにケーシングカバー6との間に隙間をあけて配置される。
【0032】
図4は、圧縮部ケーシング4をケーシングカバー6側から見た平面図である。スクロール部24の外周部は、ケーシングカバー6(図2参照)に当接する外周端面24dを有する。外周端面24dは、軸方向に対して垂直に配置される。外周端面24dには、シール用のOリング50(図2参照)を嵌め込む円形のリング溝24eが形成される。リング溝24eは、図4に示すように収容部22の軸心O1から偏心した位置に中心O2を有するように配置される。リング溝24eが偏心配置されることによってスクロール部24の外周部にあいた領域に、径方向内側へ窪む切欠部24gが設けられる。切欠部24gにより、圧縮機に接続される図略の直結ポンプ(本実施形態では、図1におけるスクロール部24の直ぐ上側に位置する。)と圧縮部ケーシング4との干渉が回避される。
【0033】
インペラ8は、図1に示すように、収容部22の内部空間22aに収容されて、軸回りに回転自在に設けられる。インペラ8は、本発明の羽根車の一例である。インペラ8は、ハブ26と、複数のブレード28とを有する。
【0034】
ハブ26は、図1に示すように、高速軸16と同軸に配置された状態で高速軸16に結合する。ハブ26は、頂部26aからケーシングカバー6へ向かうにつれて径方向外側に広がる外周面26bを有する。
【0035】
複数のブレード28は、ハブ26の外周面26bから収容部22の内周面22c及び後述するディスク部32の内周面32aへ向かって突出する。複数のブレード28は、ハブ26の周方向において間隔をあけて配置される。複数のブレード28とハブ26は、金属材料により一体的に形成される。各ブレード28は、図2に示すように、ケーシングカバー6側へ向かうにつれて径方向外側へ向かうように延びる外端縁28aを有する。
【0036】
図5は、ディフューザ10の平面図であり、図6は、ディフューザ10の軸方向に沿った断面図である。図5及び図6に示すように、ディフューザ10は、平板で円環状のディスク部32と、ディスク部32と一体的に形成された複数のベーン34とを有する。
【0037】
ディスク部32は、本発明によるシュラウド形成部の一例である。ディスク部32は、図2に示すように、嵌合凹部25に嵌合され、複数のボルト36により圧縮部ケーシング4に締結される。ディスク部32は、圧縮部ケーシング4の素材よりも耐腐食性の高い素材からなる。具体的には、ディスク部32の素材は、ステンレス鋼である。ディスク部32は、圧縮部ケーシング4に結合された状態でインペラ8のブレード28と径方向において重複するように配置される。
【0038】
図2に示すように、ディスク部32は、圧縮部ケーシング4の出口側テーパー面22fからケーシングカバー6側へ向かうにつれて軸方向に対して垂直に近づくように拡径するR形状の内周面32aを有する。内周面32aは、圧縮部ケーシング4の内周面22cとともにブレード28の外端縁28aに対向する連続したシュラウド面38を形成する。シュラウド面38は、ケーシングカバー6側へ向かうにつれて径方向外側へ広がる滑らかな曲面である。ブレード28の外端縁28aは、シュラウド面38に沿う形状を有し、シュラウド面38とブレード28の外端縁28aとの間に微小なシュラウド隙間が形成される。
【0039】
ディスク部32は、ケーシングカバー6側を向く端面32bを有する。端面32bは、軸方向に対して垂直であり、ケーシングカバー6との間に隙間をあけて配置される。端面32bは、スクロール部24の端面24bと連続するように配置される。ディスク部32の端面32b及びスクロール部24の端面24bとケーシングカバー6との間の隙間により、収容部22の内部空間22aと渦巻室24aとを繋ぐ通路40が形成される。
【0040】
各ベーン34は、ディスク部32と同じ素材からなる板体であり、ディスク部32と一体的に形成される。各ベーン34は、図2に示すようにディスク部32の端面32bからケーシングカバー6側へ突出する。複数のベーン34は、図5に示すようにディスク部32の周方向に間隔をあけて配置され、ディスク部32の径方向に対して斜めに配置される。ベーン34は、通路40(図2参照)を通る圧縮後のガスをインペラ8の回転方向に分散させて流速を低下させるものである。
【0041】
シム11は、図1及び図2に示すように、ケーシングカバー6と増速機ケーシング18との間に挟み込まれる薄い平板状の部材であり、通常厚みが異なる複数枚が挿入される。なお、図2では図示の都合上、複数枚のシム11を1つの矩形にて示している。シム11に要求される調整範囲は大きくなく、厚みの(複数枚挿入する場合はその厚みの合計値の)計画値(初期値)は1mm以下程度である。シム11が設けられることにより、ケーシングカバー6と圧縮部ケーシング4とを一体とした状態でこれらの部材の軸方向の位置を調整することができる。
【0042】
以上のように構成された圧縮機において、ガスの圧縮が行われるときには、図略のモータからの動力により図略の低速軸が回転し、低速軸の回転運動は、低速歯車12(図1参照)から高速歯車14へ増速されて伝達される。高速歯車14の回転運動は、高速軸16からインペラ8に伝達され、インペラ8が高速軸16と一体的に回転する。これにより、導入口22bから収容部22の内部空間22aに吸い込まれたガスがインペラ8によって圧縮される。圧縮後のガスは、通路40を通じて渦巻室24aへ流れるときにディフューザ10のベーン34によってインペラ8の回転方向に拡散されて流速が低下される。流速の低下に伴い、ガスは昇圧され、渦巻室24aを通って圧縮機から排出される。
【0043】
次に、本実施形態による圧縮機の製造方法について説明する。
【0044】
まず、圧縮部ケーシング4の筒状の素材を鋳物によって形成し、嵌合凹部25や内周面22c(図3参照)など加工精度が要求される部分のみを機械加工により形成する。そして、ステンレス鋼からなるディフューザ10のディスク部32の素材を嵌合凹部25に嵌め込み、ボルト36(図1参照)で圧縮部ケーシング4の素材に締結する。
【0045】
その後、工作機械により、圧縮部ケーシング4の素材とディスク部32の素材を軸回りに一体的に回転させながら、収容部22の内周面22cとディスク部32の内周面32a(図2参照)を同時に削り出す。すなわち、収容部22の内周面22cとディスク部32の内周面32aとを共加工する。これにより、出口側テーパー面22fの端縁部22gとディスク部32の内周面32aとの間で段差がなく、滑らかに連続した曲面を形成する収容部22の内周面22c及びディスク部32の内周面32aが形成される。
【0046】
以上のような工程で、圧縮部ケーシング4及びディフューザ10が形成される。
【0047】
増速機2(図1参照)は、別途組み立てておく。そして、高速軸16の端部にインペラ8を取り付けるとともに、上記のように形成した圧縮部ケーシング4を増速機ケーシング18にケーシングカバー6及びシム11を介して締結する。以上のようにして、本実施形態による圧縮機が製造される。
【0048】
以上説明した本実施形態の圧縮機では、圧縮部ケーシング4の素材である鋳鉄や鋳鋼よりも耐腐食性の高いステンレス鋼からなるディスク部32の内周面32aがシュラウド面38の一部を形成する。このため、ディスク部32により形成されたシュラウド面においては、腐食によるシュラウド隙間の拡大を防止できる。このため、圧縮機の性能低下を抑制できる。
【0049】
なお、腐食によるシュラウド隙間の拡大を防止するために圧縮部ケーシング4全体をステンレス鋼で形成することも可能であるが、製造コストが著しく増大する。これに対し、本実施形態では、ステンレス鋼で形成されたディフューザ10のディスク部32を利用してシュラウド面38の耐腐食性を向上できるので、製造コストの増大を抑制できる。
【0050】
また、経年変化による圧縮部ケーシング4、ケーシングカバー6及び増速機ケーシング18の歪によりシュラウド隙間が拡大する場合がある。腐食により拡大したシュラウド隙間は修復困難であるが、歪により拡大したシュラウド隙間は、ケーシングカバー6と増速機ケーシング18との間に挟み込むシム11の厚みを調整することにより修復できる。このため、内部空間22aの出口付近に位置するシュラウド面38が耐腐食性の高いディスク部32で形成されることにより、内部空間22aの出口付近において、シュラウド隙間の拡大の原因を容易に調整可能な歪によるものに限定できる。
【0051】
また、本実施形態では、圧縮部ケーシング4の素材にディスク部32の素材を結合した状態で収容部22の内周面22cとディスク部32の内周面32aを同時に削り出すため、内周面22c,32aからなる滑らかなシュラウド面38を容易に形成できる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【0053】
例えば、ディフューザの素材は、必ずしもステンレス鋼に限定されない。圧縮部ケーシングの素材よりも耐腐食性の高い素材であれば、ディフューザの素材として適用可能である。シム11の数は1であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
4 圧縮部ケーシング(ケーシング)
8 インペラ(羽根車)
10 ディフューザ
22a 内部空間
22c 内周面
28 ブレード
28a 外端縁
32 ディスク部(シュラウド形成部)
32a 内周面
38 シュラウド面
40 通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6