特許第6276129号(P6276129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276129
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/02 20060101AFI20180129BHJP
   F25D 29/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F25D23/02 306M
   F25D29/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-153878(P2014-153878)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-31193(P2016-31193A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山下 太一郎
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−032323(JP,A)
【文献】 特開2005−214488(JP,A)
【文献】 特開2014−048001(JP,A)
【文献】 特開2005−214487(JP,A)
【文献】 特開2004−156873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室の開口部に設置される開閉可能な扉と、
ソレノイドと、前記ソレノイドへの通電によって前記扉を押し開く向きに移動するプランジャと、前記プランジャに固定され当該プランジャの移動に伴い前記扉を押圧する押圧部材と、前記ソレノイドへの前記通電を行う駆動回路と、を有する開扉装置と、
前記開扉装置を用いて前記扉を開く際、ユーザによって操作される開扉スイッチと、
前記ソレノイドへの通電を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記開扉スイッチが操作されてから第1所定時間が経過するまで、前記開口部を閉じた状態から前記扉を移動させるための第1電流値で前記ソレノイドに通電し、
前記開扉スイッチが操作されてから前記第1所定時間が経過した後、前記第1電流値よりも小さい第2電流値で前記ソレノイドに通電し、
前記第2電流値での通電を開始してから第2所定時間が経過した後、前記第1電流値よりも小さく、かつ、前記第2電流値よりも大きい第3電流値で前記ソレノイドに通電すること
を特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記扉を移動させる際の負荷を検出する負荷検出手段を備え、
前記制御装置は、
前記負荷検出手段によって検出される負荷が大きいほど、前記第2電流値を大きい値に設定すること
を特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記扉を移動させる際の負荷を検出する負荷検出手段を備え、
前記制御装置は、
前記負荷検出手段によって検出される負荷が大きいほど、前記第3電流値を大きい値に設定すること
を特徴とする請求項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開扉装置を備える冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの食品を収納できる大容量の冷蔵庫の需要が高まっている。冷蔵庫は、開閉可能なヒンジ式の扉を備え、この扉に設置された収納ポケットに食品を収納できるようになっている。
ところで、冷蔵庫の容量が大きくなるほど扉のサイズ・重量も大きくなり、ユーザ自身が手動で扉を開く際に大きな力を要することになる。このようなユーザの負担を軽減するものとして、ユーザによる操作に応じて冷蔵庫の扉を開く開扉装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷蔵庫の扉を押圧して開扉する開扉装置と、ユーザの操作に応じて開扉装置に駆動信号を出力する開扉スイッチと、開扉時にかかる負荷を検知する負荷検知手段と、を備えた冷蔵庫について記載されている。
特許文献1に記載の技術では、扉に食品が収納されていることが負荷検知手段によって検知された場合、開扉装置のPWM(Pulse Width Modulation)デューティが高い値に設定される。また、扉に食品が収納されていないことが負荷検知手段によって検知された場合、開扉装置のPWMデューティが低い値に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−214488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、冷蔵庫の扉は、いわゆる半ドアを防止するために、ドアパッキンに磁石が内蔵され、また、閉扉状態を維持するように付勢するクロ―ザがヒンジに設置されている。したがって、冷蔵庫の開扉初期(つまり、扉が回動し始めるとき)には、ドアパッキンに密着した扉を引き剥がすために比較的大きな力を要するが、扉がドアパッキンから離れて回動し始めると、扉の回動に要する力は急激に小さくなる。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、前記したように、負荷検知手段によって検知された負荷に応じて、開扉装置のPWMデューティを変化させるものの、冷蔵庫の扉を開く過程ではPWMデューティが固定値(例えば、100%)で設定される。つまり、特許文献1に記載の技術では、ドアパッキンから離れた後は扉の負荷が急激に小さくなるという負荷特性が考慮されていない。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の技術において、大きなPWMデューティ(例えば、100%)で開扉装置を駆動し続けた場合、扉が勢いよく開かれてユーザに唐突感を与えてしまう。一方、小さなPWMデューティ(例えば、10%)で開扉装置を駆動し続けた場合、扉が充分に開かなかったり、又は扉が全く開かなかったりして、使い勝手が悪くなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、開扉装置を用いて扉を開く際、ユーザにとって使い勝手のよい冷蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る冷蔵庫は、開扉スイッチが操作されてから第1所定時間が経過するまで、貯蔵室の開口部を閉じた状態から扉を移動させるための第1電流値で開扉装置のソレノイドに通電し、前記開扉スイッチが操作されてから前記第1所定時間が経過した後、前記第1電流値よりも小さい第2電流値で前記ソレノイドに通電し、前記第2電流値での通電を開始してから第2所定時間が経過した後、前記第1電流値よりも小さく、かつ、前記第2電流値よりも大きい第3電流値で前記ソレノイドに通電することを特徴とする。
なお、詳細については、発明を実施するための形態において説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開扉装置を用いて扉を開く際、ユーザにとって使い勝手のよい冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る冷蔵庫の正面図である。
図2】冷蔵庫を上方から視た平面図である。
図3図2のII−II線における模式的な矢視断面図である。
図4】冷蔵庫の開扉装置が備える駆動回路の構成図である。
図5】駆動回路の動作を説明するための電流波形図であり、(a)は交流電源から供給される電流の波形図であり、(b)はフォトトライアックカプラを介して整流回路に供給される電流の波形図であり、(c)は整流回路から平滑回路に供給される電流の波形図であり、(d)は平滑回路からソレノイドに供給される電流の波形図である。
図6】冷蔵庫の開扉装置が備える駆動回路の構成図であり、位相制御回路、整流回路、及び平滑回路の各構成を示している。
図7】冷蔵室扉を開扉する過程での負荷特性を示す説明図である。
図8】冷蔵庫の制御装置が実行する処理のフローチャートである。
図9】(a)は交流電流の半周期に対してフォトトライアックの点弧時間が占める比率の変化を示す説明図であり、(b)は冷蔵室扉が回動する過程での角速度の変化を示す説明図であり、(c)は冷蔵室扉の開扉角の変化を示す説明図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る冷蔵庫の制御装置が実行する処理のフローチャートである。
図11】交流電流の半周期に対してフォトトライアックの点弧時間が占める比率の変化を示す説明図であり、(a)は冷蔵室扉の負荷が比較的小さい場合であり、(b)は冷蔵室扉の負荷が比較的大きい場合である。
図12】本発明の第3実施形態に係る冷蔵庫の制御装置が実行する処理のフローチャートである。
図13】交流電流の半周期に対してフォトトライアックの点弧時間が占める比率の変化を示す説明図であり、(a)は冷蔵室扉の負荷が比較的小さい場合であり、(b)は冷蔵室扉の負荷が比較的大きい場合である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図1に示すように上下・左右を定義する。
【0013】
≪第1実施形態≫
<冷蔵庫の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷蔵庫の正面図である。
冷蔵庫Sは、食品等を低温で保存するものである。冷蔵庫Sの内部には、上から順に、冷蔵室R1と、左右に並ぶ製氷室R2・上段冷凍室R3と、下段冷凍室R4と、野菜室R5と、が設けられている。そして、前記した各室(貯蔵室)を区画する形状の断熱箱体11と、この断熱箱体11に設置される各扉と、によって、冷蔵庫Sの庫内/庫外が隔てられている。なお、断熱箱体11において冷蔵室扉21a,21bに対応する開口部は、正面視で四角枠状を呈している。
【0014】
冷蔵庫Sは、閉扉状態において冷蔵室R1を外部から密閉するフレンチ型(いわゆる観音開き型)の冷蔵室扉21a,21bを備えている。左側の冷蔵室扉21aは、図2に示すヒンジMaを軸として前方に回動(移動)し、右側の冷蔵室扉21bは、図2に示すヒンジMbを軸として前方に回動(移動)するように設置されている。
【0015】
また、冷蔵庫Sは、閉扉状態において製氷室R2を外部から密閉する引出し式の製氷室扉22を備えている。その他、冷蔵庫Sは、引き出し式の上段冷凍室扉23、下段冷凍室扉24、及び野菜室扉25を備えている。
【0016】
冷蔵室扉21a,21bの内側にはドアパッキンN(図3参照)が設置され、閉扉状態において断熱箱体11の開口部に密着(或いは接触や近接)して冷蔵室R1を閉じるようになっている。ちなみに、断熱箱体11の開口部及びドアパッキンNには、それぞれ磁石(図示せず)が埋設されている。
また、引き出し式の製氷室扉22の内側にもドアパッキンNが設置され、製氷室R2を閉じるようになっている。上段冷凍室R3、下段冷凍室R4、及び野菜室R5についても同様である。
【0017】
冷蔵庫Sは、図示は省略するが、圧縮機と、凝縮器と、減圧装置と、蒸発器と、が配管を介して環状に順次接続された冷凍装置を備えている。そして、周知のヒートポンプサイクルで冷媒を循環させ、蒸発器で放熱して冷やされた空気を各室に送り込むようになっている。
【0018】
また、冷蔵庫Sは、断熱箱体11の開口部を閉じた状態から冷蔵室扉21a,21bを開く(移動させる)開扉装置3と、開扉時にユーザによって操作される開扉スイッチ4a,4bと、冷蔵室扉21a,21bの開閉状態を検知する開閉検知器5a,5bと、開扉装置3等を制御する制御装置6(図2参照)と、を備えている。
【0019】
(開扉装置)
図2は、冷蔵庫を上方から視た平面図である。
開扉装置3は、ユーザによって開扉スイッチ4a(4b)が操作された場合に冷蔵室扉21a(21b)を押し開く装置であり、断熱箱体11の上に載置した状態で固定されている。ちなみに、冷蔵室扉21a,21bの上端は、断熱箱体11の上面よりも高くなっている(図3参照)。したがって、冷蔵庫Sの正面に立ったユーザからは、開扉装置3はほとんど見えない。
【0020】
図3は、図2のII−II線における模式的な矢視断面図である。開扉装置3は、ソレノイド31と、駆動回路32(図4参照)と、プランジャ33と、押圧部材34と、スプリング35と、収容体36と、を備えている。
ソレノイド31は、円筒状に巻回されたコイルであり、その軸方向が前後方向に一致するように配置されている。プランジャ33は、前後方向に進退可能に配置された円筒状の磁性体であり、ソレノイド31を貫通している。なお、ソレノイド31に通電するための駆動回路32(図4参照)については後記する。
【0021】
押圧部材34は、プランジャ33と共に前後に進退する部材であり、プランジャ33に同軸で固定された棒状部341と、冷蔵室扉21bの後壁に当接する当接部342と、を備えている。
棒状部341は、プランジャ33の中心軸線に沿って延びており、その先端はプランジャ33から突出している。当接部342は、例えば、樹脂製であり、棒状部341の先端に固定されている。前記したように、冷蔵室扉21bの上端は断熱箱体11の上面よりも高くなっており、閉じている冷蔵室扉21bの後壁に当接部342が当接している。
【0022】
スプリング35は、ソレノイド31への通電に伴ってプランジャ33が前進した場合、このプランジャ33を後退させる向きの付勢力を発生させるバネである。スプリング35は、その一端がプランジャ33に固定され、他端が基部Gに固定されている。
前記したソレノイド31、押圧部材34、及びスプリング35は、左右方向において右側の冷蔵室扉21bに対応する位置に設置されている(図2参照)。同様に、左側の冷蔵室扉21aに対応する位置にも、ソレノイド31、押圧部材34、及びスプリング35が設置されている(図2参照:符号は左右で区別していない)。
収容体36は、ソレノイド31、プランジャ33、押圧部材34、及びスプリング35等を収容するものであり、断熱箱体11の上面に固定されている。
【0023】
以下では、冷蔵室扉21a,21bの開扉について説明する場合、主に左側の冷蔵室扉21aについて記載するものとする。
制御装置6(図2参照)からの指令によってソレノイド31に電流が流れると、スプリング35の付勢力に抗してプランジャ33及び押圧部材34が前進し、図2に示すように、冷蔵室扉21aが押し開かれる。つまり、ヒンジMaを軸として冷蔵室扉21aが回動する。その後、ソレノイド31への通電が止められると、スプリング35の付勢力によってプランジャ33及び押圧部材34が元の位置まで後退する。このようにして、左側の冷蔵室扉21aが開かれる。
【0024】
なお、左側の冷蔵室扉21aと、右側の冷蔵室扉21bと、は独立で開扉可能になっているが、ユーザによる所定の操作によって左右の冷蔵室扉21a,21bを同時に(又はタイミングをずらして順次に)開扉するようにしてもよい。
【0025】
(開扉スイッチ)
図1に示す左側の開扉スイッチ4aは、開扉装置3を用いて左側の冷蔵室扉21aを開く際、ユーザによって操作されるタッチパネル式のスイッチである。開扉スイッチ4aは冷蔵室扉21aに設置され、冷蔵室扉21aが閉められた状態で外部に露出している(右側の開扉スイッチ4bについても同様)。ユーザの操作(手指の接触)を検知した場合、開扉スイッチ4a,4bは開扉信号を制御装置6に出力する。
なお、開扉スイッチ4a,4bとして、機械式のスイッチを用いてもよい。
【0026】
(開閉検知器)
図1に示す開閉検知器5aは、左側の冷蔵室扉21aの開閉状態を検知する磁気センサ(ホールIC)であり、断熱箱体11の開口部のうち、冷蔵室扉21aの右端付近と対向する位置に取り付けられている。同様に、右側の冷蔵室扉21bの開閉状態を検知する開閉検知器5bが、前記した開口部のうち、冷蔵室扉21bの左端付近と対向する位置に取り付けられている。
【0027】
冷蔵室扉21aが閉じている場合、当該状態を示すオフ信号が開閉検知器5aから制御装置6(図2参照)に出力される。また、冷蔵室扉21aが開かれた場合、開扉されたことを示すオン信号が開閉検知器5aから制御装置6(図2参照)に出力される。つまり、冷蔵室扉21aと開閉検知器5aとの距離が所定値(例えば、開扉角θ=10°に対応する距離)以上になった場合、開閉検知器5aから制御装置6にオン信号が出力される。
なお、開閉検知器5a,5bは、磁気センサに限定されず、光センサや機械式のものであってもよい。
【0028】
(制御装置)
図2に示す制御装置6は、開扉スイッチ4a,4b(図1参照)の操作に応じて開扉装置3を制御するものであり、例えば、冷蔵庫Sの上部に設置されている。制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェースなどの電子回路を含んで構成され、設定されたプログラムに従って各種処理を実行する。
【0029】
制御装置6は、ユーザによって開扉スイッチ4a,4bが操作された場合、開扉装置3のソレノイド31(図3参照)に所定の電流値で通電する機能を有している。これによって、プランジャ33及び押圧部材34(図3参照)が前進し、冷蔵室扉21aが押し開かれる。なお、制御装置6が実行する処理については後記する。
【0030】
(開扉装置が備える駆動回路)
次に、図4に示す駆動回路32について、図5の波形図を参照しつつ説明する。
図4は、冷蔵庫の開扉装置が備える駆動回路の構成図である。
駆動回路32は、制御装置6からの指令に応じた電流値でソレノイド31に通電するための回路である。駆動回路32は、ソレノイド31と電気的に接続された状態で、収容体36に収容されている(図3では、図示を省略した)。図4に示すように、駆動回路32は、位相制御回路321と、整流回路322と、平滑回路323と、を備えている。
【0031】
位相制御回路321は、交流電源Uから供給される正弦波状の交流電流(図5(a)参照)に関して、フォトトライアックH(図6参照)を点弧するときの位相を制御することで、ソレノイド31に流れる電流を調整する回路である。
図6は、冷蔵庫の開扉装置が備える駆動回路の構成図であり、位相制御回路、整流回路、及び平滑回路の各構成を示している。図6に示す位相制御回路321は、商用周波数検出回路321aと、マイコン321bと、フォトトライアックカプラ321cと、を有している。
【0032】
商用周波数検出回路321aは、交流電源Uの周波数を検出して(つまり、図5(a)に示す交流電流の正負が切り替わるタイミングを検出して)、その検出結果をマイコン321bに逐次出力する。
マイコン321bは、制御装置6から入力される電流指令値に応じたタイミング(点弧角)で、フォトトライアックカプラ321cにトリガ信号を出力する。
【0033】
フォトトライアックカプラ321cは、フォトトライアックHの点弧を光信号によって制御する素子であり、フォトカプラPと、フォトトライアックHと、を有している。
フォトカプラPは、マイコン321bから入力されるトリガ信号を、光信号としてフォトトライアックHに伝達する。フォトトライアックHは、フォトカプラPから入力されるトリガ信号に応じて、交流電源Uと整流回路322との接続/遮断を行う。
【0034】
なお、フォトトライアックHにトリガ信号が入力されるタイミング(点弧角)によって、交流電流の点弧時間TON図5(b)参照)が特定され、交流電源Uから整流回路322に所定の電流が供給される。また、交流電流の正負が切り替わると、フォトトライアックHは消弧して初期状態に戻る。このような処理が、交流電流の半波毎に繰り返される。
つまり、マイコン321bは、交流電流(図5(b)の破線を参照)の半周期T/2に対して、フォトトライアックHの点弧時間TONが占める割合(以下、比率という)を調整する機能を有している。なお、図5(b)に示す「ON」は、フォトトライアックHにトリガ信号が入力されるタイミングを示している。
【0035】
図6に示す整流回路322は、ブリッジ接続された4個のダイオードD1〜D4によって全波整流を行う回路であり、入力側はフォトトライアックHを介して交流電源Uに接続され、出力側は平滑回路323に接続されている。前記したフォトトライアックHの点弧中、図5(b)に示す波形の電流がフォトトライアックHを介して整流回路322に供給され、さらに整流回路322によって、図5(c)に示す波形に全波整流される。
【0036】
図6に示す平滑回路323は、例えば、ソレノイド31に並列接続されたコンデンサCであり、整流回路322によって整流された電流を平滑化する機能を有している。平滑回路323によって、図5(d)に示すように電流が平滑化され、平滑化された電流(電力)がソレノイド31に供給される。
なお、以下の記載において、所定の「電流値」でソレノイド31に通電するという場合、この「電流値」とは、平滑回路323で平滑化された電流(図5(d)参照)の平均値を意味するものとする。
【0037】
図5(b)に示す消弧時間TOFFが短いほど(つまり、点弧のタイミングが早いほど)、ソレノイド31に供給される電流も大きくなり(図5(d)参照)、また、プランジャ33(図3参照)を前進させる力も大きくなる。このように駆動回路32は、交流電流の正負が切り替わる時刻からフォトトライアックHを点弧するまでの消弧時間TOFFを調整することで、プランジャ33を前進させる力を調整するようになっている。
【0038】
(開扉過程での負荷について)
図7は、冷蔵室扉を開扉する過程での負荷特性を示す説明図である。なお、図7に示す特性図の横軸は冷蔵室扉21aの開扉角であり、縦軸は冷蔵室扉21aを開く際にかかる負荷(つまり、開扉に要する力)である。
図7に示す開扉角θMaxは、冷蔵室扉21aが最大限に開かれ、その回動がストッパ(図示せず)で規制されるときの開扉角(例えば、θMax=135°)である。なお、開扉角θ1,θ2については後記する。
【0039】
前記したように、冷蔵室扉21aのドアパッキンN(図3参照)には磁石が埋設され、また、冷蔵室扉21aのヒンジMa(図2参照)には、図示しないクロ―ザが設置されている。冷蔵室扉21aが閉じた状態では、前記した磁石の磁力と、クロ―ザの弾性力と、によって、冷蔵室扉21aのドアパッキンNが断熱箱体11に密着している。
【0040】
したがって、冷蔵室扉21aの開き始めは、断熱箱体11からドアパッキンNを引き剥がすために比較的大きな負荷F1が押圧部材34にかかる(図7参照)。しかし、冷蔵室扉21aがわずかでも開けば、前記したクロ―ザの弾性力や磁石の吸引力から開放され、開扉に要する負荷が急減する(図7参照)。なお、図7に示す負荷F2は、ヒンジMa(図2参照)の摩擦抵抗によって生じる負荷である。
【0041】
このように冷蔵室扉21aの開扉過程で負荷が急減することを考慮し、本実施形態では、冷蔵室扉21aの開き始めはソレノイド31に比較的大きな電流を流し、その後、ソレノイド31に流す電流を小さくするようにした。
【0042】
<制御装置の処理>
図8は、冷蔵庫の制御装置が実行する処理のフローチャートである。
図8のステップS101において制御装置6は、冷蔵室扉21aが閉じられているか否かを判定する。つまり、制御装置6は、開閉検知器5a(図1参照)からオフ信号が入力されているか否かを判定する。冷蔵室扉21aが閉じられている場合(S101→Yes)、制御装置6の処理はステップS102に進む。一方、冷蔵室扉21aが既に開かれている場合(S101→No)、制御装置6の処理は「START」に戻る(RETURN)。
【0043】
ステップS102において制御装置6は、ユーザによって開扉スイッチ4a(図1参照)が操作されたか否かを判定する。つまり、制御装置6は、冷蔵室扉21aを開扉する旨の開扉信号が開扉スイッチ4aから入力されたか否かを判定する。ユーザによって開扉スイッチ4aが操作された場合(S102→Yes)、制御装置6の処理はステップS103に進む。一方、ユーザによって開扉スイッチ4aが操作されていない場合、(S102→No)、制御装置6の処理は「START」に戻る(RETURN)。
【0044】
ステップS103において制御装置6は、電流値I1(第1電流値)でソレノイド31に通電する。すなわち、制御装置6は、フォトトライアックH(図6参照)の点弧時間の比率(=2TON/T:図5(b)参照)を所定の比率K1に設定し、電流値I1でソレノイド31に通電する。
この比率K1は、ソレノイド31に大きな電流を流してプランジャ33を前進させ、断熱箱体11からドアパッキンNを引き剥がすことができるように、比較的高い値に設定されている。つまり、図7の負荷F1に対応する電磁力でプランジャ33を前進させ、冷蔵室扉21aを回動させることができるように比率K1が設定されている。
【0045】
ステップS104において制御装置6は、開扉スイッチ4aが操作されてから所定時間ΔtA(例えば、30msec:第1所定時間)が経過したか否かを判定する。この所定時間ΔtAは、電流値I1での通電を継続する時間であり、予め設定されている。
開扉スイッチ4aが操作されてから所定時間ΔtAが経過した場合(S104→Yes)、制御装置6の処理はステップS105に進む。一方、開扉スイッチ4aが操作されてから所定時間ΔtAが経過していない場合(S104→No)、制御装置6の処理はステップS103に戻る。
【0046】
このように、電流値I1で所定時間ΔtAだけソレノイド31に通電することで、冷蔵室扉21aが押し開かれる。言い換えると、所定時間ΔtAの長さは、冷蔵室扉21aを確実に開くことができるように設定されている。
【0047】
図9(a)は、交流電流の半周期に対してフォトトライアックの点弧時間が占める比率の変化を示す説明図である。なお、図9(a)に示す時刻t0は、ソレノイド31への通電を開始した時刻(つまり、冷蔵室扉21aの開扉を開始した時刻)である。
冷蔵室扉21aの開扉初期である時刻t0〜t1において、比率K1(電流値I1に対応)でソレノイド31に通電することによって、大きな力でプランジャ33(図3参照)及び押圧部材34(図3参照)を前進させ、冷蔵室扉21aを押し開くことができる。
【0048】
図9(b)は、冷蔵室扉が回動する過程での角速度の変化を示す説明図であり、図9(c)は冷蔵室扉の開扉角の変化を示す説明図である。なお、図9(a)、(b)、(c)の各時刻は対応している。
前記したように、時刻t0〜t1において比率K1でソレノイド31に通電した場合(図9(a)参照)、冷蔵室扉21aの開扉角の速度(角速度)がゼロからわずかに上昇する(図9(b)参照)。
なお、時刻t1での開扉角θ1(図9(c)参照)は、例えば、5°である。この状態において、冷蔵室扉21aの回動に要する負荷は急減している(図7の開扉角θ1を参照)。
【0049】
次に、図8のステップS105において制御装置6は、電流値I2(第2電流値)でソレノイド31に通電する。すなわち、制御装置6は、フォトトライアックHを所定の比率K2(図9(a)参照)に設定し、ソレノイド31に通電する。この比率K2は、ソレノイド31に小さな電流を流してプランジャ33をさらに前進させ、冷蔵室扉21aの回動を加速できる値に設定されている(図9(b)の時刻t1〜t2を参照)。
【0050】
ちなみに、ステップS105の開始時において、冷蔵室扉21aはわずかに開かれている。この状態から比較的小さな電流値I2でソレノイド31に通電すると、ヒンジMaの摩擦負荷(図7に示す負荷F2)に抗してプランジャ33がさらに前進する。
図7に示すように、ヒンジMaの摩擦負荷である負荷F2は、断熱箱体11に密着した冷蔵室扉21aを引き剥がす際の負荷F1よりも格段に小さい。したがって、冷蔵室扉21aを無用に速く回動させないよう、電流値I2に対応する比率K2は、電流値I1(>I2)に対応する比率K1よりも低い値に設定されている(図9(a)参照)。
【0051】
ステップS106において制御装置6は、電流値I2でソレノイド31に通電してから所定時間ΔtB(例えば、700msec:第2所定時間)が経過したか否かを判定する。この所定時間ΔtBは、電流値I2でソレノイド31への通電が継続される時間であり、予め設定されている。
【0052】
電流値I2の通電を開始してから所定時間ΔtBが経過した場合(S106→Yes)、ステップS107において制御装置6はソレノイド31への通電を停止し、処理を終了する(END)。一方、電流値I2の通電を開始してからから所定時間ΔtBが経過していない場合(S106→No)、制御装置6の処理はステップS105に戻る。
【0053】
このように、電流値I2で所定時間ΔtBだけソレノイド31に通電することで、冷蔵室扉21aが押圧部材34から離れた後も、慣性によって冷蔵室扉21aを所定角度(例えば、90°)まで回動させることができる。言い換えると、所定時間ΔtBの長さは、慣性によって冷蔵室扉21aを充分な角度まで回動させるように設定されている。
【0054】
図9(a)に示すように、時刻t1〜t2において比率K2でソレノイド31に通電した場合、冷蔵室扉21aは加速しながら回動する(図9(b)参照)。なお、ソレノイド31への通電が停止される時刻t2において(図9(a)参照)、冷蔵室扉21aの開扉角θ2(図9(c))は、例えば、20°である。通電が止められた後、冷蔵室扉21aは慣性によって回動し続け、その角速度は徐々に減少し(図9(b)参照)、その開角度は緩やかに増加する(図9(c)参照)。
【0055】
その後、冷蔵室扉21aの回動は、例えば、開角度θ=90°で止まる。つまり、電流値I2で所定時間ΔtBだけソレノイド31に通電することで(図9(a)参照)、冷蔵室扉21aは充分に開かれた状態になる。したがって、ユーザ自身の手でさらに冷蔵室扉21aを開く必要がなく、ユーザにとって使い勝手のよいものとなる。
【0056】
<効果>
本実施形態では、図7に示す負荷特性を考慮して、冷蔵室扉21aの開扉初期に比較的大きな電流値I1で通電することによって(S103:図8参照)、断熱箱体11に密着した状態から冷蔵室扉21aを確実に引き剥がすことができる。
また、電流値I1で所定時間ΔtAだけ通電した後、電流値I1よりも小さい電流値I2でソレノイド31に通電する。このように開扉過程の途中で電流値を減少させることで、ヒンジMaの摩擦負荷に抗する力で冷蔵室扉21aをスムーズに押し開くことができる。
【0057】
なお、仮に、大きな電流値I1でソレノイド31に通電し続けた場合(つまり、図9(a)の時刻t0〜t2において電流値I1で通電した場合)、次のような事態が生じる。すなわち、冷蔵室扉21aのドアパッキンが断熱箱体11から離れた後も、この冷蔵室扉21aが開扉装置3によって大きな力で押圧される。その結果、冷蔵室扉21aが勢いよく開かれ、ユーザに唐突感を与えてしまう。
これに対して本実施形態では、プランジャ33を前進させる途中でソレノイド31に通電する電流を小さくする。これによって、ユーザに唐突感を与えることなく冷蔵室扉21aをスムーズに開くことができる。
【0058】
また、電流値I2でソレノイド31に通電する所定時間ΔtBは、押圧部材34から離れた後も冷蔵室扉21aが慣性で回動し、その回動が止まったときに冷蔵室扉21aが充分に開かれた状態となるように設定されている。したがって、ユーザが手動で冷蔵室扉21aをさらに開く必要がなく、ユーザにとって使い勝手のよいものとなる。
【0059】
≪第2実施形態≫
第2実施形態に係る冷蔵庫Sは、冷蔵室扉21aの負荷を検出する負荷検出手段(図示せず)を備える点と、この負荷に応じて電流値I2を設定する点と、が第1実施形態と異なるが、その他(冷蔵庫Sの構造等)については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0060】
冷蔵庫Sが備える負荷検出手段(図示せず)は、冷蔵室扉21aと、この冷蔵室扉21aの収納ポケット(図示せず)に収納された食品と、の総重量を検出する機能を有している。
負荷検出手段は、例えば、冷蔵室扉21aのヒンジMa(下ヒンジ)の下側に配置された圧電素子(ピエゾ素子)であり、前記した総重量に応じて電気抵抗率が変化するようになっている。この総重量が大きいほど、冷蔵室扉21aのヒンジMaの摩擦負荷が大きくなり、開扉時の負荷も大きくなる。負荷検出手段は、例えば、数分ごとに検出値を制御装置6に出力する。
なお、右側の冷蔵室扉21bにも、負荷検出手段が設置されている。
【0061】
制御装置6は、負荷検出手段によって検出された負荷(冷蔵室扉21aの総重量)が大きいほど、比率K2(つまり、電流値I2)を大きい値に設定する。なお、負荷と比率K2との関係は、データベースとして制御装置6の記憶部(図示せず)に格納しておいてもよいし、単調増加の関数として記憶部に格納しておいてもよい。
【0062】
図10は、冷蔵庫の制御装置が実行する処理のフローチャートである。第1実施形態と同様に、開扉スイッチ4aが操作された後(S102→Yes)、制御装置6は、比較的大きな電流値I1でソレノイド31に通電する(S103)。
そして、電流値I1の通電を所定時間ΔtAだけ行った後(S104→Yes)、制御装置6の処理はステップS201に進む。なお、所定時間ΔtAの経過時において冷蔵室扉21aは、わずかに回動している。
【0063】
ステップS201において制御装置6は、負荷検出手段の検出値を読み込む。
次に、ステップS202において制御装置6は、負荷検出手段の検出値に応じて、ソレノイド31に通電する際の電流値I2を設定する。
図11(a),(b)は、交流電流の半周期に対してフォトトライアックの点弧時間が占める比率の変化を示す説明図である。なお、図11(a),(b)に示す所定時間ΔtA,ΔtB、及び比率K1は、第1実施形態で説明したものと同様である(図9(a)参照)。
【0064】
例えば、冷蔵室扉21aに食品が収納されておらず、負荷検出手段の検出値が比較的小さい場合、図11(a)に示すように、比率K2α(つまり、電流値I2)も小さい値に設定される。この場合、ヒンジMaの摩擦負荷が小さく、冷蔵室扉21aの開扉に要する負荷も小さいからである。
一方、冷蔵室扉21aに多くの食品が収納され、負荷検出手段の検出値が比較的大きい場合、図11(b)に示すように、比率K2β(つまり、電流値I2)も大きい値に設定される。この場合、ヒンジMaの摩擦負荷が大きく、冷蔵室扉21aを回動させる際に大きな力を要するからである。
【0065】
このように負荷の大きさに応じて電流値I2を設定することで、食品の収納量に関わらず、冷蔵室扉21aを充分な開扉角まで回動させることができる。なお、電流値I2の大きさは、押圧部材34から離れたときの冷蔵室扉21aの角速度が所定値となるように(慣性によって充分な開扉角まで回動できるように)、負荷の大きさに対応付けて設定されている。
そして、制御装置6は、電流値I2で所定時間ΔtBだけソレノイド31に通電した後(S105,S106:図10参照)、この通電を停止する(S107)。
【0066】
<効果>
本実施形態では、前記したように、負荷検出手段によって検出される負荷に応じて電流値I2が設定される(S202:図10参照)。すなわち、制御装置6は、冷蔵室扉21aに収納された食品の重量が大きいほど、電流値I2を大きい値に設定する。これによって、冷蔵室扉21aに収納された食品の重量に関わらず、冷蔵室扉21aを充分な開扉角(例えば、90°)まで回動させることができる。
【0067】
≪第3実施形態≫
第3実施形態に係る冷蔵庫Sは、図1に示す開閉検知器5a,5bを利用して冷蔵室扉21a,21bの負荷を検出する点と、ソレノイド31に流す電流の変化のさせ方と、が第2実施形態とは異なるが、その他については第2実施形態と同様である。したがって、第2実施形態と異なる部分について説明し、第2実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0068】
冷蔵庫Sが備える開閉検知器5a(負荷検出手段:図1参照)は、例えば、磁気センサであり、自身と冷蔵室扉21aとの距離を検出する機能を有している。この距離が所定値以上になった場合、開閉検知器5aは「冷蔵室扉21aが開かれた」ことを検知し、その検知結果を制御装置6に出力するようになっている。
【0069】
また、開閉検知器5aは、電流値I1でソレノイド31に通電してから所定時間ΔtAが経過した時点で、自身と冷蔵室扉21aとの距離を検出し、その検出値を制御装置6に出力する機能も有している。
なお、右側の開閉検知器5bも、左側の開閉検知器5aと同様の機能を有している。
【0070】
ちなみに、冷蔵室扉21aに収納された食品の重量が大きくなるほど、ヒンジMa(図2参照)の摩擦負荷も大きくなり、所定時間Δtが経過したときの開扉角が小さくなる。つまり、開閉検知器5aと冷蔵室扉21aとの距離が小さくなる。
そこで本実施形態では、開閉検知器5aの検出値が小さくなるほど、電流値I2を大きくするようにした。
【0071】
図12は、冷蔵庫の制御装置が実行する処理のフローチャートである。
第2実施形態と同様に、開扉スイッチ4aが操作された後(S102→Yes)、制御装置6は、比較的大きい電流値I1でソレノイド31に通電する(S103)。
そして、電流値I1の通電を所定時間ΔtAだけ行った後(S104→Yes)、制御装置6の処理はステップS105に進む。なお、所定時間ΔtAの経過時において冷蔵室扉21aは、わずかに回動している。
【0072】
ステップS105において制御装置6は、ステップS103の電流値I1よりも小さい電流値I2でソレノイド31に通電する。この電流値I2は、第2実施形態で説明したように、冷蔵室扉21aを無用に速く回動させないよう比較的小さい値に設定されている。
【0073】
次に、ステップS301において制御装置6は、電流値I2の通電を開始してから所定時間ΔtC(例えば、200msec:第2所定時間)が経過したか否かを判定する。この所定時間ΔtCは、前記した電流値I2でソレノイド31に通電される時間であり、予め設定されている。
【0074】
電流値I2の通電を開始してから所定時間ΔtCが経過した場合(S301→Yes)、制御装置6の処理はステップS302に進む。一方、電流値I2の通電を開始してから所定時間ΔtCが経過していない場合(S301→No)、制御装置6の処理はステップS105に戻る。
【0075】
ステップS302において制御装置6は、開閉検知器5aの検出値(冷蔵室扉21aの負荷に対応)を読み込む。前記したように、この検出値は、所定時間Δtcが経過した時点での開閉検知器5aと冷蔵室扉21aとの距離である。つまり、所定時間Δtcの長さによって、前記した距離(冷蔵室扉21aの回動角)を検出するタイミングが特定される。
ステップS303において制御装置6は、開閉検知器5aの検出値に応じて、ソレノイド31に通電する電流値I3を設定する。
【0076】
図13(a),(b)は、交流電流の半周期に対してフォトトライアックの点弧時間が占める比率の変化を示す説明図である。
例えば、冷蔵室扉21aに食品がほとんど収納されておらず、開閉検知器5aの検出値が比較的大きい場合、図13(a)に示すように、比率K3α(つまり、電流値I3)は小さい値に設定される。この場合、ヒンジMa(図2参照)の摩擦負荷が小さく、冷蔵室扉21aの開扉に要する負荷も小さいからである。
【0077】
また、冷蔵室扉21aに多量の食品が収納され、開閉検知器5aの検出値が比較的小さい場合、図13(b)に示すように、比率K3β(つまり、電流値I3)が大きい値に設定される。この場合、ヒンジMaの摩擦負荷が大きく、冷蔵室扉21aを回動させる際に大きな力を要するからである。
【0078】
このように負荷の大きさに応じて比率K3を設定することで、食品の収納量に関わらず、冷蔵室扉21aを充分な開扉角まで回動させることができる。
図12のステップS304において制御装置6は、電流値I3でソレノイド31に通電する。
次に、ステップS305において制御装置6は、電流値I3の通電を開始してから所定時間ΔtD(例えば、500msec)が経過したか否かを判定する。この所定時間ΔtDは、電流値I3の通電が継続される時間であり、予め設定されている。つまり、押圧部材34から冷蔵室扉21aが離れた後、慣性によって冷蔵室扉21aが充分な開扉角まで回動するように所定時間ΔtDが設定されている。
【0079】
電流値I3の通電を開始してから所定時間ΔtDが経過した場合(S305→Yes)、ステップS107において制御装置6はソレノイド31への通電を停止し、処理を終了する(END)。一方、電流値I3の通電を開始してから所定時間ΔtDが経過していない場合(S305→No)、制御装置6の処理はステップS304に戻る。
【0080】
<効果>
本実施形態によれば、冷蔵室扉21aの負荷を検出する「負荷検出手段」として開閉検知器5aを用いることで、第2実施形態のように負荷検出手段を別体で設ける場合と比較して、冷蔵庫Sの製造コストを低減できる。
また、制御装置6は、ソレノイド31への通電を行う際の電流値I3を、開閉検知器5aの検出値に応じて設定する(S302:図12参照)。つまり、制御装置6は、冷蔵室扉21aに収納された食品の重量が大きいほど電流値I3を大きい値に設定し、図13(a)、(b)に示す網掛部分Qの面積を大きくする。
これによって、冷蔵室扉21aに収納された食品の重量に関わらず、冷蔵室扉21aを充分な開扉角(例えば、90°)まで回動させることができ、ユーザにとって使い勝手のよいものとなる。
【0081】
≪変形例≫
以上、本発明に係る冷蔵庫Sについて各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、第1実施形態では、開扉装置3のマイコン321b(図6参照)が、電流値I1に対応する比率K1でフォトトライアックHを点弧した後、電流値I2に対応する比率K2でフォトトライアックHを点弧する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、マイコン321bが、PWM制御に基づき、電流値I1に対応するオン・デューティでソレノイド31に通電した後、電流値I2(<I1)に対応するオン・デューティでソレノイド31に通電するようにしてもよい。この場合でも、第1実施形態と同様の効果が奏される。また、第2、第3実施形態に関しても同様に、PWM制御に基づいてソレノイド31に通電するようにしてもよい。
【0082】
また、各実施形態では、フレンチ型の冷蔵室扉21a,21bを開扉装置3で開ける場合について説明したが、これに限らない。例えば、図1に示す製氷室R2の天井面に開扉装置を設置し、この開扉装置を用いて引き出し式の製氷室扉22を開ける(移動させる)ようにしてもよい。なお、制御装置6が実行する処理については各実施形態と同様である。
同様に、引き出し式の上段冷凍室R3、下段冷凍室R4、野菜室R5等を、開扉装置で開けるようにしてもよい。
【0083】
また、第2実施形態では、冷蔵室扉21aを開く際の負荷を検出する「負荷検出手段」として、冷蔵室扉21aのヒンジMaの下側に配置した圧電素子(図示せず)を用いる場合について説明したが、これに限らない。例えば、冷蔵室扉21aの収納ポケット(図示せず)に重量センサを設置し、収納ポケットに収納された食品の重量(つまり、負荷)を直接的に検出するようにしてもよい。
【0084】
また、第3実施形態では、冷蔵室扉21aを開く際の負荷を開閉検知器5aで検出する場合について説明したが、これに限らない。例えば、冷蔵室扉21aの開扉角を検出するためのポテンショメータ(負荷検出手段)をヒンジMaに設置し、前記した所定時間ΔtC図13参照)が経過したときの検出値に基づいて、開扉に要する負荷を算出するようにしてもよい。
【0085】
また、第3実施形態では、電流値I3で通電する時間ΔtDを固定値とし、この電流値I3を可変にする場合について説明したが(図13参照)、これに限らない。すなわち、電流値I3(ただし、I2<I3<I1)を固定値とし、電流値I3で通電する時間ΔtD図13参照)を可変にしてもよい。これによって、負荷に応じた力積を冷蔵室扉21aに与えることができ、冷蔵室扉21aを充分な開扉角(例えば、90°)まで開くことができる。
なお、前記した場合において、電流値I2で通電する時間ΔtCと、電流値I3で通電する時間ΔtDと、の和(ΔtC+ΔtD)を一定とし、開扉に要する負荷が大きいほど時間ΔtDを長くする(つまり、時間ΔtCを短くする)ことが好ましい。これによって、押圧部材34が冷蔵室扉21aから離れるまでの時間が一定になり、押圧部材34から離れた時点で冷蔵室扉21が所定の角速度で回動するからである。
【0086】
なお、電流値I3及び時間Δtの両方を固定値とし、電流値I2でソレノイド31に通電してから時間ΔtCが経過した後、電流値I3(ただし、I2<I3<I1)でソレノイド31に通電するようにしてもよい。
【0087】
また、前記した各実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、第2実施形態で説明した負荷検出手段(ヒンジMaの下側に配置された圧電素子)を第3実施形態に適用し、負荷検出手段の検出値に応じて電流値I3を調整するようにしてもよい。
【0088】
また、前記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、前記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0089】
S 冷蔵庫
11 断熱箱体
21a,21b 冷蔵室扉(扉)
22 製氷室扉(扉)
23 上段冷凍室扉(扉)
24 下段冷凍室扉(扉)
25 野菜室扉(扉)
3 開扉装置
31 ソレノイド
32 駆動回路
33 プランジャ
34 押圧部材
4a,4b 開扉スイッチ
5a,5b 開閉検知器(負荷検出手段)
6 制御装置
R1 冷蔵室(貯蔵室)
R2 製氷室(貯蔵室)
R3 上段冷凍室(貯蔵室)
R4 下段冷凍室(貯蔵室)
R5 野菜室(貯蔵室)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13