【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
実施例として、
図1に示すベルトプレス型脱水装置1にて、し尿処理場の余剰汚泥の濃縮汚泥(以下「供給汚泥」という)を対象に、ベルトプレス型脱水装置1で汚泥の脱水処理を行った。ベルトプレス型脱水装置1の有効濾布ベルト幅は0.5mとした。汚泥貯槽111から供給される供給汚泥の汚泥濃度は2%とし、カチオンポリマで凝集後、ベルトプレス型脱水装置1に供給した。汚泥貯槽111から造粒槽105に移送される汚泥供給量は2.5m
3/hとした。濾布ベルト10,20の送り速度(以下、「濾布速度」とも記す)を1m/minとした。
【0046】
そして脱水が完了し、スクレーパ53,55により脱水ケーキを剥離した後、洗浄装置60A,60Bで上下2枚の濾布ベルト10,20の洗浄を行った。各洗浄装置60A,60Bは前記
図2に示す構造の二流体ノズル60を6個ずつ備え、
図4,
図5に示すように隣り合う二流体ノズル60を濾布ベルトの進行方向に対して前後に配置した構造である。前後に配置した二流体ノズル60間の距離dは1cmとしている。そして圧縮空気と洗浄水を各二流体ノズル60に供給し、濾布ベルト10,20の洗浄を両者均等の洗浄水量にて行った。洗浄面は
図1に示す通り、脱水ケーキの剥離面とした。洗浄水としては工水を使用した。
【0047】
表1は、二流体ノズル60に供給する空気量、空気圧力、洗浄水量を変更して洗浄を継続して行い、結果として脱水ケーキに含まれる含水率を測定した結果を示す表である。
【表1】
【0048】
ここで含水率とは、濾布ベルト10,20の洗浄と汚泥の脱水を繰り返して行って、定常的になった脱水ケーキ中の含水率をいう。例えば、この例の場合、脱水前の供給汚泥の汚泥濃度は2%なので、含水率は98%である。これを含水率80%の脱水ケーキにすると、体積では1/10の量になるので、十分な脱水が行えたと言える。一方表1の含水率(%)の欄で、「×」と記載したのは、濾布ベルト10,20の洗浄と汚泥の脱水を繰り返して行った際、次第に脱水ケーキの含水率が悪化(上昇)し、最終的には圧搾脱水工程で汚泥が濾布ベルト10,20から漏れ出る状態となり、脱水処理の継続が困難になったことを示している。
【0049】
洗浄方法としては、水洗浄のみ(従来法1,比較例3)、空気洗浄のみ(比較例1)、空気洗浄後に水洗浄(比較例2)、空気―水併用洗浄(実験例1〜9)を行った。比較例2の場合のみ、空気洗浄用の二流体ノズル60(6個ずつ)の後段に、水洗浄用の二流体ノズル(6個ずつ)を備えた洗浄装置とした。比較例2以外は、前記二流体ノズル60に水のみ、空気のみ、水と空気の両者を供給することで洗浄を行った。従来法1は、洗浄水のみで濾布ベルト10,20の洗浄を行う従来法(以下、「水洗浄」とも記す)である。各条件の切り替え時には、この従来法による濾布ベルト10,20の洗浄を十分に行った。
【0050】
(従来法1)
上述のように、従来法1は、従来から行われている、洗浄水のみで濾布ベルト10,20の洗浄を行う方法である。即ちこの従来法1では、洗浄水量を3m
3/hとすることで、良好な濾布ベルト10,20の洗浄が行えた。このときの脱水ケーキの含水率は80〜82%で好適であった。
【0051】
(比較例1)
空気洗浄のみの比較例1では、濾布ベルト10,20の洗浄後も濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト洗浄面の反対側に汚泥粒子が残留していることが目視により確認できた。最初の濾布ベルト洗浄後の脱水では脱水ケーキの含水率が84%と悪化していた。さらに濾布ベルト10,20の洗浄と脱水を繰り返すと、次第に含水率が悪化し、最終的には圧搾脱水工程で汚泥が濾布ベルト10,20から漏れ出る状態となった。即ち圧縮空気のみによる洗浄では、汚泥微粒子を濾布ベルト10,20から十分に洗い去ることは難しく、濾布ベルト10,20が目詰まりし易くなった。そのため、汚泥微粒子が残留した濾布ベルト10,20で脱水操作を繰り返すことで、含水率悪化等の脱水性能の低下を招き、安定した脱水処理の継続が困難となった。
【0052】
(比較例2)
空気洗浄後に水洗浄を行う比較例2では、空気洗浄のみの比較例1よりも濾布ベルト洗浄効果が高まるが、洗浄水量を従来法1の半分としたため、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト洗浄面の反対側に残留している汚泥粒子を十分に洗い流すことが困難であった。そのため、濾布ベルト10,20の洗浄と脱水を繰り返すと、次第に含水率が悪化し、最終的には圧搾脱水工程で汚泥が濾布ベルト10,20から漏れ出る状態となった。
【0053】
(比較例3)
洗浄水量を従来法1の半分とした洗浄水のみで濾布ベルト10,20の洗浄を行う比較例3の場合も、比較例2と略同様であった。
【0054】
比較例1〜3の洗浄効果を比べると、比較例2>比較例3>>比較例1であるが、何れも最終的には圧搾脱水工程で汚泥が濾布ベルト10,20から漏れ出る状態となり、濾布ベルト洗浄効果としては不十分であった。
【0055】
(実験例1)
空気−水併用洗浄とした実験例1では、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト10,20に付着していた汚泥粒子を十分に洗い去ることが可能であり、目視による観察では、従来法1と同程度の洗浄効果が確認できた。実験例1では洗浄が良好であるため、安定した脱水処理の継続が可能であり、脱水ケーキの含水率は従来法と同じ80〜82%であった。
【0056】
以上のことからわかるように、濾布ベルト10,20の洗浄に気体と液体を混合して噴霧打力を高めた気液混合ミストを噴射する二流体ノズルを使用した実験例1では、濾布ベルト10,20の洗浄が良好であり、安定した脱水処理の継続が可能であった。つまり実験例1では、洗浄水単独の従来法1に比べて少ない洗浄水量であっても、気液混合ミストの有する強い貫通力により、濾布ベルト表面あるいは織目に食い込んだ汚泥粒子を洗い去ることで、濾布ベルト10,20の洗浄を行うことができるため、濾布ベルト洗浄水量を削減することが可能となる。
【0057】
(実験例1〜4)
実験例1〜4では、空気−水併用洗浄での洗浄水量の比較を行った。即ち、空気圧0.5MPa、空気量300NL/minに設定し、洗浄水量を0.5〜1.5m
3/hの範囲で変更して比較した。
【0058】
洗浄水量を0.75〜1.5m
3/hとした実験例1〜3では、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト10,20に付着していた汚泥粒子を十分に洗い去ることが可能であり、目視による観察では、従来法1と同程度の洗浄効果が確認できた。実験例1〜3では洗浄が良好であるため、安定した脱水処理の継続が可能であり、脱水ケーキの含水率は従来法と同じ80〜82%であった。
【0059】
一方、洗浄水量を0.5m
3/hに低減した実験例4では、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト洗浄面の反対側に残留している汚泥粒子を十分に洗い流すことが困難であり、濾布ベルト10,20の洗浄と脱水を繰り返すと次第に含水率が悪化し、最終的には圧搾脱水工程で汚泥が濾布ベルト10,20から漏れ出る状態となった。
【0060】
以上のことからわかるように、濾布ベルト10,20の洗浄に、気体と液体とを混合した気液混合ミストを噴射する二流体ノズル60を使用することで、洗浄水量を削減することが可能となるが、実験例4のように、洗浄水量を少なくしすぎると、気液混合ミストの噴霧打力が弱まり、濾布ベルト10,20の洗浄が不十分となるため、濾布ベルト10,20が目詰まりし易くなり、安定した脱水処理の継続が困難となった。そのため、二流体ノズル使用時の洗浄水量は、実験例3の0.75m
3/hまで削減可能であることが確認できた。実験例3の洗浄水量は、濾布幅1m当り1.5m
3/hに相当する。
【0061】
(実験例3、5〜9)
実験例3、5〜9では、空気−水併用洗浄での空気圧力の比較を行った。
まず実験例3、5〜7では、洗浄水量を0.75m
3/hに設定し、空気圧力を0.15〜0.5MPaの範囲で変更して比較した。実験例5〜7では空気量は空気圧力に応じた空気量として特に調整を行わなかった。
【0062】
洗浄水量を0.75m
3/h、空気圧力を0.20〜0.5MPaとした実験例3,5,6では、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルトに付着していた汚泥粒子を十分に洗い去ることが可能であり、目視による観察では、従来法1と同程度の洗浄効果が確認できた。実験例3,5,6は洗浄が良好であるため、安定した脱水処理の継続が可能であり、脱水ケーキの含水率は従来法1と同じ80〜82%であった。
【0063】
洗浄水量を0.75m
3/h、空気圧力を0.15MPaとした実験例7では、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト洗浄面の反対側に残留している汚泥粒子を十分に洗い流すことが困難であり、濾布ベルト10,20の洗浄と脱水を繰り返すと次第に含水率が悪化し、最終的には圧搾脱水工程で汚泥が濾布ベルト10,20から漏れ出る状態となった。
【0064】
しかし空気圧力が0.15MPaの場合でも、洗浄水量を1.5m
3/hに設定し、空気−水併用洗浄を行った実験例9では、目視による観察では、従来法1と同程度の洗浄効果が確認でき、濾布ベルト10,20の洗浄が良好であるため、安定した脱水処理の継続が可能であり、脱水ケーキの含水率は従来法1とほぼ同じである80〜83%であった。
【0065】
以上の説明から明らかなように、洗浄水量の削減効果としては、空気圧力を0.20〜0.5MPaとした実験例3,5,6で従来法1の4分の1(0.75m
3/h、即ち濾布ベルト幅1m当り1.5m
3/h)、空気圧力を0.15MPaに設定した実験例9で従来法1の2分の1(1.5m
3/h、即ち濾布ベルト幅1m当り3.0m
3/h)であった。即ち、圧縮空気の圧力を0.2〜0.5MPaとした場合、圧力を0.15MPaとした場合に比べて圧縮空気の圧力を高めることで気液混合ミストの噴霧打力の強さが増すため、洗浄水量削減効果は高まるが、二流体ノズル60に供給する圧縮空気の圧力を0.15MPa以上とすることで、濾布ベルト洗浄の洗浄水量削減効果は得られることが確認できた。
【0066】
表2は、濾布速度を変更して洗浄を継続して行い、結果として脱水ケーキに含まれる含水率を測定した結果を示す表である。
【表2】
【0067】
即ち、濾布速度1m/minで脱水処理を行った前記実験例6の条件において、濾布速度を0.5〜2m/minに設定した条件での脱水処理について検討を行った。実験例10では濾布速度を0.5m/minに、実験例11では濾布速度を2m/minに設定した。実験例10及び11では濾布速度以外の条件は実験例6と同じである。なお実験例6、10、11の濾布速度と同一条件で、洗浄方法を水洗浄とし、洗浄水量を3m
3/hとした従来法1,2,3での脱水処理を行い、従来法と実験例との脱水性能の比較を行った。
【0068】
各条件で汚泥供給量を2.5m
3/hとしたが、濾布速度の遅い実験例10の条件でも重力濃縮部での汚泥の水切りは良好であり、濾布速度を0.5〜2m/minの条件で汚泥供給量を2.5m
3/hで一定としても脱水処理に支障は無かった。
【0069】
本発明の空気−水併用洗浄で濾布ベルト10,20の洗浄を行った場合、実験例6,10,11の各条件において、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト10,20に付着していた汚泥粒子を十分に洗い去ることが可能であり、目視による観察では、従来法1,2,3と同程度の洗浄効果が確認できた。実験例6,10,11では洗浄が良好であるため、安定した脱水処理の継続が可能であり、脱水ケーキの含水率は実験例6では80〜82%、実験例10では79〜81%、実験例11では82〜84%であった。濾布速度が同じであり、水洗浄を行った従来法と空気−水併用洗浄を行った本発明、具体的には実験例6と従来法1、実験例10と従来法2、実験例11と従来法3の含水率はほぼ同じ値であった。このことから、濾布速度が少なくとも0.5〜2m/minの範囲では、本願発明により、洗浄水単独の従来法1に比べて少ない洗浄水量であっても、気液混合ミストの有する強い貫通力により、濾布ベルト表面あるいは織目に食い込んだ汚泥粒子を洗い去ることで、濾布ベルト10,20の洗浄を行うことができるため、濾布ベルト洗浄水量を削減することが可能となることが確認できた。
【0070】
また、濾布速度0.5m/minとした実験例10の条件で、洗浄水量を0.75m
3/hから0.5m
3/hに削減した実験例12では、濾布ベルト10,20の織目内部や濾布ベルト洗浄面の反対側に残留している汚泥粒子を十分に洗い流すことが困難であり、濾布ベルト10,20の洗浄と脱水を繰り返すと次第に含水率が悪化し、最終的には圧搾脱水の工程で汚泥が濾布ベルト10,20から漏れ出る状態となった。
【0071】
即ち濾布速度を遅くした実験例12の場合でも、実験例4と同様に洗浄水量を少なくすると、気液混合ミストの噴霧打力が弱まり、濾布ベルト10,20の洗浄が不十分となるため、濾布ベルト10,20が目詰まりし易い傾向にあり、安定した脱水処理の継続は困難であった。
【0072】
以上の結果から、濾布速度が少なくとも0.5〜2m/minの範囲では、濾布ベルト10,20の洗浄に気体と液体とを混合した気液混合ミストを噴射する二流体ノズル60を使用することで、洗浄水量を削減することは可能であるが、洗浄水量として0.75m
3/h(濾布幅0.5m当り)が必要であった。また、濾布速度の速度に応じて、洗浄水量を変更する必要、具体的には濾布速度が速く、洗浄装置を通過する時間の短い場合に洗浄水量を高める、あるいは濾布速度が遅く、洗浄装置を通過する時間が長い場合に洗浄水量を下げる必要は無かった。
【0073】
このことは、二流体ノズル60を使用した気液混合ミストによる濾布ベルト10,20の洗浄においては、気液混合ミストの噴霧打力の強さが重要であることを示している。
【0074】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、二流体ノズル60の構造は上記
図2に示す構造のものに限定されず、要は気体と液体とを混合して噴霧打力を高めた気液混合ミストを噴射する機能を有している構造の二流体ノズルであれば、どのような構造であってもよい。またベルトプレス型脱水装置の構造が上記
図1に示す構造のものに限定されないことは言うまでもなく、要は一対の無端状の濾布ベルトをそれぞれ複数個のロールに走行可能に掛装し、前記両濾布ベルトの一部分同士を互いに対面平行して走行するように設置し、前記対面平行とした濾布ベルトの間に汚泥を挟圧して脱水する構造のベルトプレス型脱水装置であれば、どのような構造のベルトプレス型脱水装置であっても本発明を適用できる。また上記例では、隣り合う二流体ノズルを濾布ベルトの進行方向に対して互い違いに前後に配置したが(即ち二流体ノズルを二列に配置したが)、本発明は、隣り合う二流体ノズルを濾布ベルトの進行方向に対して前後に配置するものであればよく、洗浄装置が過大になることに問題がなければ、例えば二流体ノズルを三列以上の列になるように配置しても良い。また上記例では、二流体ノズルから噴射される気液混合ミストのスプレーパターンSPの長手方向が濾布ベルト幅方向を向く(一致する)ように構成したが、前記スプレーパターンSPの長手方向が濾布ベルト幅方向と所定の角度θ(例えばθ=3〜45°)となるように各二流体ノズルの回転方向の取付角度を調節しても良い。その場合も、各スプレーパターンSPが重ならないようにすることが好ましい。