(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276152
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】工事桁の撤去方法、及び、工事桁撤去用の土留板
(51)【国際特許分類】
E01B 1/00 20060101AFI20180129BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
E01B1/00
E01B37/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-192551(P2014-192551)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2016-61126(P2016-61126A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100167025
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100136227
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(72)【発明者】
【氏名】樫内 雅章
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 達明
(72)【発明者】
【氏名】戸簾 昌俊
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−041505(JP,A)
【文献】
特開2011−246989(JP,A)
【文献】
特開2011−074603(JP,A)
【文献】
特開2002−194704(JP,A)
【文献】
特開平08−144205(JP,A)
【文献】
特開2010−007245(JP,A)
【文献】
特開昭60−255233(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0032607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側フランジ部、下側フランジ部及びウェブ部からなるI型断面をなし、軌道下での地下構造物の構築中に代替枕木を介してレールを仮受けする工事桁の撤去方法であって、
前記代替枕木を撤去する工程と、
前記I型断面の工事桁の側部に、前記上側フランジ部の端縁と前記下側フランジ部の端縁とを上下につないで前記工事桁内部へのバラストの侵入を抑制する蓋状の土留板を取付ける工程と、
前記土留板の取付後、前記レールの下方にバラストを埋め戻し、バラスト上に枕木を設置することで、前記レールを復旧する工程と、
前記レールの復旧後、前記工事桁を吊り上げて撤去する工程と、
を含むことを特徴とする、工事桁の撤去方法。
【請求項2】
前記土留板は、垂直、若しくは、上端側が下端側より外側に位置するように傾斜させて取付けることを特徴とする、請求項1記載の工事桁の撤去方法。
【請求項3】
前記軌道がカントを有し、前記工事桁が垂直方向に対し傾倒状態で設置されている場合に、
前記工事桁の傾倒側とは反対側の側部に取付けられる土留板が、垂直、若しくは、上端側が下端側より外側に位置するように傾斜させて取付けられることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の工事桁の撤去方法。
【請求項4】
前記土留板は、その上側の端縁に、前記上側フランジ部の端縁に向かって突出する傾き調整部材を有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の工事桁の撤去方法。
【請求項5】
前記工事桁の側部に前記土留板を取付ける際に、前記ウェブ部と前記土留板との間に突き当て部材を介在させることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の工事桁の撤去方法。
【請求項6】
上側フランジ部、下側フランジ部及びウェブ部からなるI型断面をなす工事桁の撤去に際して用いられる土留板であって、
前記工事桁の側部に蓋状に取付けられ、前記上側フランジ部の端縁と前記下側フランジ部の端縁とを上下につないで前記工事桁内部へのバラストの侵入を抑制することを特徴とする、工事桁撤去用の土留板。
【請求項7】
前記土留板は、垂直、若しくは、上端側が下端側より外側に位置するように傾斜させて取付けられることを特徴とする、請求項6記載の工事桁撤去用の土留板。
【請求項8】
前記土留板は、その上側の端縁に、前記上側フランジ部の端縁に向かって突出する傾き調整部材を有することを特徴とする、請求項6又は請求項7記載の工事桁撤去用の土留板。
【請求項9】
前記土留板は、その上下方向の中間部から前記ウェブ部に向かって突出する突き当て部材を有することを特徴とする、請求項6〜請求項8のいずれか1つに記載の工事桁撤去用の土留板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道下での地下構造物の構築中に軌道を仮受けする工事桁の撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開削工法を用いて鉄道の軌道下に地下構造物を構築する場合には、軌道下が空洞になっても軌道を強固に支持し、列車が当該区間を安全に走行できるように、工事桁が架設される。この工事桁は、地盤に予め打設された支持杭によって支持される。
【0003】
特許文献1には、この種の工事桁が示されている。
工事桁(主桁)は、上側フランジ部と下側フランジ部とウェブ部とからなるI型断面(言い換えれば、横向きのH型断面)をなし、代替枕木(枕木受桁と枕木)を介してレールを支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−041505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地下構造物の構築後は、代替枕木を撤去した後、レールの下方にバラストを埋め戻し、バラスト上に枕木を設置することで、レールを復旧する。その後、工事桁を吊り上げて撤去する。
【0006】
しかしながら、工事桁はI型断面をなしており、工事桁の周囲にバラストを埋め戻すと、バラストが工事桁の内部に侵入する。すると、工事桁を吊り上げて撤去する際に、引き上げ抵抗が増大するばかりか、バラストを崩してしまい、その修復作業が必要となる。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、引き上げ抵抗を減少させると共にバラストへの影響を最小限に抑えつつ、工事桁を撤去できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る工事桁の撤去方法は、上側フランジ部、下側フランジ部及びウェブ部からなるI型断面をなす工事桁により、代替枕木を介してレールを仮受けしている状態から、代替枕木を撤去する工程と、I型断面の工事桁の側部に、上側フランジ部の端縁と下側フランジ部の端縁とを上下につないで工事桁内部へのバラストの侵入を抑制する蓋状の土留板を取付ける工程と、土留板の取付後、レールの下方にバラストを埋め戻し、バラスト上に枕木を設置することで、レールを復旧する工程と、レールの復旧後、工事桁を吊り上げて撤去する工程とを含む。
【0009】
本発明はまた、上記の工事桁の撤去に際して用いられる土留板、すなわち、工事桁の側部に蓋状に取付けられ、上側フランジ部の端縁と下側フランジ部の端縁とを上下につないで工事桁内部へのバラストの侵入を抑制する土留板を提供するものである。
【0010】
また、土留板は、軌道のカントの有無(工事桁の傾倒状態)にかかわらず、垂直、若しくは、上端側が下端側より外側に位置するように傾斜させて取付けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バラストを埋め戻す際に、土留板により工事桁の内部へのバラストの侵入を防止でき、工事桁を吊り上げて撤去するのが容易となる。すなわち、引き上げ抵抗を減少させることができる他、引き上げ時にバラストを崩すのを抑制できる。
【0012】
また、土留板を、軌道のカントの有無(工事桁の傾倒状態)にかかわらず、垂直、若しくは、上端側が下端側より外側に位置するように傾斜させて取付けることで、引き上げ抵抗を確実に減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
先ず、軌道下への地下構造物(例えば線路と交差する方向のアンダーパスの道路)の構築工事について説明する。
【0015】
図1は仮受けまでの工事の概要を示している。これらの工事は夜間(終電から始発まで)に行われる。
先ず、
図1(a)に示すように、レール1の下方の地盤に、土砂崩壊を防ぐための1次土留杭2を打設する。地下水位低下を防ぐための地盤改良3を行う。そして、工事桁を支えるための支持杭4を打設する。
次に、
図1(b)に示すように、支持杭4の上に、工事桁10を架け、レール1を仮受けする。例えば、支持杭4は12m間隔で打設し、工事桁10は1本の長さを12mとして、2本の支持杭4間に1本ずつ工事桁10を架ける。
【0016】
図2は工事桁による仮受け状態を示す図であり、
図3は
図2のA−A断面図である。
工事桁(主桁)10は、レール1の外側にレール1と平行に配置される。
工事桁10は、I形鋼又はH形鋼であり、上側フランジ部10aと、下側フランジ部10bと、これらをつなぐウェブ部10cとからなるI型断面(言い換えれば横向きのH型断面)をなしている。
【0017】
工事桁10のウェブ部10cにはL型断面の棚板11が固定される。棚板11は、枕木受桁12の端部を支持する。
枕木受桁12はH形鋼の両端部の下側に切欠き部12aを形成したもので、切欠き部12aの部分が棚板11に載せられて固定される。枕木受桁12の上側の溝内には合成枕木(FRP製の枕木)13が収納される。枕木受桁12と合成枕木13とで仮受け用の代替枕木が構成される。
【0018】
図4は仮受け中の工事の概要を示している。これらの工事は、昼間・夜間を問わず、仮受け中の軌道下で実施可能である。
先ず、
図4(a)に示すように、レール1及び工事桁10の下で地面を掘削し、床付け面まで掘削する。尚、図中5は2次土留杭を示している。
次に、
図4(b)に示すように、床付け面上に道路躯体6を鉄筋コンクリートで構築する。道路躯体6の上面側には仮受架台7を構築して、工事桁10を支持する。そして、道路躯体6完成後、その上面付近まで回りを気泡モルタルで埋め戻す。
【0019】
レール1及び工事桁10と道路躯体6上面との間は、流動化処理土と路盤コンクリートで埋め、最上部にバラスト収納空間を配置する。
【0020】
その後、工事桁10を撤去する。すなわち、バラストを埋め戻し、バラスト上にレール1を復旧して後、工事桁10を吊り上げて撤去する。
【0021】
かかる工事桁10の撤去作業について詳細に説明する。
図5は工事桁撤去作業の工程図である。
先ず、
図5(a)に示すように、工事桁10の外側の側部に蓋状の土留板20を取付ける。土留板20は、I型断面の工事桁10の上側フランジ部10aの端縁と下側フランジ部10bの端縁とを上下につないで工事桁10内部へのバラストの侵入を抑制するものである。
【0022】
次に、
図5(b)に示すように、工事桁10の外側の路盤上にバラスト(砕石や砂利)15を埋め戻す。このとき、土留板20により、工事桁10内部へのバラストの侵入を防止できる。
図5(a)、(b)の作業は、軌道の外側での作業となるため、準備作業として、昼間・夜間を問わず、実施可能である。
【0023】
図5(b)の状態からは、
図5(c)に示すように、代替枕木、すなわち、枕木受桁12と枕木13とを撤去する。具体的には、工事桁10の棚板11と枕木受桁12との固定を解除し、枕木13ごと枕木受桁12を水平面内で90°回転させて、レール1とレール1との間を通して、枕木受桁12及び枕木13を撤去する。このとき、レール1は枕木撤去部分の前後で支持される。
【0024】
次に、
図5(d)に示すように、工事桁10の内側の側部に、バラストの侵入防止のため、蓋状の土留板20を取付ける。
【0025】
次に、
図5(e)に示すように、工事桁10の内側の路盤上、すなわちレール1の下方にバラスト(砕石や砂利)15を埋め戻す。そして、バラスト15上にPC枕木16を設置することで、レール1を復旧する。
【0026】
図5(c)、(d)、(e)の一連の作業は、軌道の一定区間ずつ、すなわち、所定数の枕木受桁12について、夜間に行う。このような分割撤去方式とすることで、線閉間合い(終電から始発までの時間)が短い場合にも実施可能となる。
1本の工事桁10の範囲の全ての枕木受桁12について、
図5(c)、(d)、(e)の作業が終了すると、支持杭4又は仮受架台7との連結を解除することで、当該工事桁10の吊り上げ撤去が可能となる。
【0027】
工事桁10の吊り上げ撤去は、
図5(e)の状態から、クレーン(図示せず)により、工事桁10を吊り上げて撤去する。このとき、工事桁10の側部の土留板20により、工事桁10の内部にバラストが侵入していないので、引き上げ抵抗を軽減できると共に、バラストが崩れるのを抑制できる。
【0028】
工事桁10の撤去後は、工事桁10があった部分にバラストを埋め戻して作業を終了する。
工事桁10の吊り上げ撤去とバラストの埋め戻しの作業は、夜間(終電から始発までの間)に行う。
【0029】
次に、工事桁10撤去用の土留板20について、更に詳しく説明する。
図6は左右一対の工事桁10への土留板20の取付例1を示す図である。
土留板20は、木製で、工事桁10の側部(上側フランジ部10a及び下側フランジ部10bの各内側)に嵌合するように、木製ブロックからなる嵌合用部材21が固定されている。外れ防止のためである。
【0030】
土留板20にはまた、土留板20の上下方向の中間部(両端部以外の部位)からウェブ部10cに向かって突出するように、木製ブロックからなる突き当て部材(間詰め材)22が固定されている。すなわち、工事桁10の側部に土留板20を固定する際に、ウェブ部10cと土留板20との間に突き当て部材22を介在させる。これにより、土留板20のたわみを低減することができる。尚、工事桁10の内部には棚板11等の取付ボルト等が存在することから、突き当て部材22は取付ボルト等を避けるべく複雑な形状をなしているが、いずれにしても、土留め板20の背面部とウェブ部10cとの間に突き当て状態で介在すればよい。
【0031】
工事桁10への土留板20の取付けに際しては、工事桁10の側部に土留板20を嵌合させた後、一般にガムテープと呼ばれる梱包用の粘着テープ(クラフト粘着テープ又は布粘着テープ)で固定する。
【0032】
また、土留板20の長さ(工事桁10の延在方向の長さ)は1m以下とし、1本の工事桁10に複数の土留板20を並べて取付ける。このとき、たわみ対策として、土留板20と土留板20との間には5mm程度の隙間をあける。
【0033】
図7は左右一対の工事桁10への土留板20の取付例2を示す図である。
本例では、土留板20は、その上側の端縁に、上側フランジ部10aの端縁に向かって突出する傾き調整部材23を有する。傾き調整部材23自体は木製ブロックで、土留板20にボルト等で固定される。
【0034】
傾き調整部材23を介在させることで、土留板20は、上端側が下端側より外側に位置するように傾斜させて取付けられる。言い換えれば、工事桁10の両側部が逆ハの字状をなす。
これにより、工事桁10を垂直方向に吊り上げて撤去するのがより容易となり、引き上げ抵抗を更に減少させることが可能となる。
【0035】
図8は左右一対の工事桁10への土留板20の取付例3を示す図である。
本例は、軌道がカントを有し、工事桁10が垂直方向に対し傾倒状態(図では左側)で設置されている場合について示している。この場合、工事桁10の傾倒側とは反対側の側部(右側の側部)に取付けられる土留板20について、その上側の端縁に、傾き調整部材23を設ける。これにより、工事桁10の傾倒側とは反対側の側部(右側の側部)に取付けられる土留板20が、垂直、若しくは、上端側が下端側より外側に位置するように傾斜させて取付けられる。
従って、カントがあっても、工事桁10を垂直方向に吊り上げて撤去するのが容易となり、引き上げ抵抗を確実に減少させることができる。
本例では、傾倒側と反対側(図で右側)の土留板20にのみ傾き調整部材23を設けたが、傾倒側(図で左側)の土留板20にも傾き調整部材23を設けてよい。また、本例では突き当て部材22の図示は省略したが、もちろん設けてもよい。
【0036】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 レール
2 1次土留杭
3 地盤改良
4 支持杭
5 2次土留杭
6 道路躯体
7 仮受架台
10 工事桁(主桁)
10a 上側フランジ部
10b 下側フランジ部
10c ウェブ部
11 棚板
12 枕木受桁
13 合成枕木
15 バラスト
16 PC枕木
20 土留板
21 嵌合用部材
22 突き当て部材
23 傾き調整部材