特許第6276154号(P6276154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276154
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】往復動型圧縮装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/02 20060101AFI20180129BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F04B39/02 W
   F04B39/06 P
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-197138(P2014-197138)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-70090(P2016-70090A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
(72)【発明者】
【氏名】高木 一
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−075812(JP,U)
【文献】 特表2013−508612(JP,A)
【文献】 実開昭54−034417(JP,U)
【文献】 実開昭63−087284(JP,U)
【文献】 特開昭60−255038(JP,A)
【文献】 実開昭62−102873(JP,U)
【文献】 実開昭54−045887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/02
F04B 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
シリンダ内に圧縮室を形成するように配置されたピストンと、
前記ピストンを前記シリンダ内で往復移動させるための駆動力を発生する駆動部と、
前記圧縮室から吐出されたガスから潤滑剤を分離する分離器と、
前記分離器で分離された潤滑剤を、ガスが存在し前記分離器内の圧力よりも低圧の戻し先に戻す戻し路と、
を備え、
前記戻し路には、潤滑剤によって前記駆動部を冷却する駆動部冷却部が設けられており、
前記戻し路は、前記ピストン内に形成されるとともに前記圧縮室に連通するピストン内通路を有しており、前記駆動部を冷却した前記潤滑剤を、前記ピストン内通路を通して前記戻し先としての前記圧縮室内に戻す往復動型圧縮装置。
【請求項2】
前記駆動冷却部は、前記戻し路を流れる潤滑剤が前記駆動部に供給されるように構成されている請求項1に記載の往復動型圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動型圧縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、シリンダ内でプランジャを往復移動させることによって、圧縮室内で作動ガスを圧縮する往復圧縮機が知られている。この往復圧縮機では、プランジャの外周を潤滑及びシールするための潤滑油を供給する潤滑油流路が設けられている。
【0003】
一方、下記特許文献2に開示されているように、ピストンを往復動させるためにリニアモータを用いることも知られている。この特許文献2に開示された流体機械では、リニアモータの冷却のための冷却媒体回路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−116330号公報
【特許文献2】特開2010−513779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には、潤滑油流路を通してプランジャの外周に潤滑油を供給することが開示されている。しかしながら、特許文献1には、潤滑剤を供給するための構成として潤滑油流路以外の構成は開示されていない。一方、特許文献2には、ピストンを往復動させるためのリニアモータを冷却する冷却媒体回路が開示されている。しかしながら、特許文献2には、冷却媒体として、吐出ガスを冷却するための冷却媒体と同じ冷却媒体を用いることができると記載されているのみである。
【0006】
本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮室から吐出されたガスから分離された潤滑剤を圧縮前のガスに戻すための構成を簡素化しつつ、潤滑剤の有効利用を図るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、シリンダと、シリンダ内に圧縮室を形成するように配置されたピストンと、前記ピストンを前記シリンダ内で往復移動させるための駆動力を発生する駆動部と、前記圧縮室から吐出されたガスから潤滑剤を分離する分離器と、前記分離器で分離された潤滑剤を、ガスが存在し前記分離器内の圧力よりも低圧の戻し先に戻す戻し路と、を備え、前記戻し路には、潤滑剤によって前記駆動部を冷却する駆動部冷却部が設けられており、前記戻し路は、前記ピストン内に形成されるとともに前記圧縮室に連通するピストン内通路を有しており、前記駆動部を冷却した前記潤滑剤を、前記ピストン内通路を通して前記戻し先としての前記圧縮室内に戻す往復動型圧縮装置である。
【0008】
本発明では、分離器において、圧縮室から吐出されたガスから潤滑剤を分離する。分離器で分離された潤滑剤は、戻し路を通じて戻し先に戻される。戻し路では、潤滑剤により、駆動部を冷却する。そして、駆動部を冷却した潤滑剤は、ガスが存在し分離器内の圧力よりも低圧となっている戻し先に戻される。このため、潤滑剤を戻すための圧送手段が不要となるため、潤滑剤を圧縮前のガスに戻すための構成を簡素化することができる。しかも、潤滑剤を単にガスに戻すのではなく、冷却部の冷却用に有効に利用している。このため、ピストンを駆動する駆動部を冷却するための構成を簡素化することができる。したがって、新たに冷却回路等を追加する必要もないため、往復動型圧縮装置としての構成の簡素化を図ることができる。なお、戻し先は、分離器内の圧力よりも常時低い圧力のところに限られるものではなく、一時的に分離器内の圧力よりも低くなるところであってもよい
【0009】
しかも、駆動部を冷却した潤滑剤がピストン内に形成されたピストン内通路を流れて圧縮室内に戻される。このため、ピストンの位置の影響を受けることなく、潤滑剤を常時圧縮室内に直接戻すことができる。圧縮室内は、ガスの吐出工程以外のときには吐出側の圧力よりも低圧となっているため、そのときに、分離器内の圧力と圧縮室内の圧力との差圧によって、潤滑剤が戻し路を流れる。したがって、潤滑剤の圧送手段は不要となる
【0010】
前記駆動冷却部は、前記戻し路を流れる潤滑剤が前記駆動部に供給されるように構成されていてもよい。この態様では、潤滑剤によって駆動部を効果的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、圧縮室から吐出されたガスから分離された潤滑剤を圧縮前のガスに戻すための構成を簡素化しつつ、前記潤滑剤の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る往復動圧縮装置の構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の第1参考形態に係る往復動圧縮装置の構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の第2参考形態に係る往復動圧縮装置の構成を概略的に示す図である。
図4】本発明の第3参考形態に係る往復動圧縮装置の構成を概略的に示す図である。
図5】本発明の第4参考形態に係る往復動圧縮装置の構成を概略的に示す図である。
図6】本発明の第1参考形態の変形例に係る往復動圧縮装置の構成を概略的に示す図である。
図7】本発明のその他の参考形態に係る往復動圧縮装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る往復動型圧縮装置10は、シリンダ12と、シリンダ12内に配置されたピストン14と、ピストン14を往復移動させるための駆動力を発生する駆動部16と、を備えている。この往復動型圧縮装置10では、例えば水素ガスが圧縮対象のガスとされる。
【0015】
ピストン14が収容されるシリンダ12の内部空間20は、一方向に長い形状に形成されている。この内部空間20は、幅(長手方向に直交する方向の長さ)の広い部分(以下、第1空間部20aと称する)と幅の狭い部分(以下、第2空間部20bと称する)とが互いに繋がり合った形状となっている。なお、内部空間20は、幅の異なる空間部がと繋がり合った形状に限られるものではない。内部空間20は、長手方向の全体に亘って同じ幅に形成されていてもよい。
【0016】
シリンダ12においては、第1空間部20aを形成する部位と、第2空間部20bを形成する部位とは、一体的に形成されていてもよく、別体に形成された上で互いに結合されていてもよい。
【0017】
ピストン14は、第1空間部20aの幅に応じた幅を有する第1部位14aと、第2空間部20bの幅に応じた幅を有する第2部位14bとを有する。第1部位14aの長手方向の端部は、第2部位14bの長手方向の端部につながっており、第1部位14aと第2部とは一体的に形成されている。第1部位14aは第1空間部20aに収容されている。第2部位14bは、主として第2空間部20bに配置されているが、第1部位14a側の部位が第2空間部20bから第1空間部20a内に入り込んでいる。
【0018】
第1空間部20aにおいて、シリンダ12と第1部位14aの先端部(第2部位14bと反対側の端部)との間の部位は、第1圧縮室22aとなっている。また、第2空間部20bにおいて、シリンダ12と第2部位14bの先端部(第1部位14aと反対側の端部)との間の部位は、第2圧縮室22bとなっている。つまり、第1実施形態の圧縮装置10には、第1圧縮室22aと第2圧縮室22bとを有する圧縮室22が形成されている。
【0019】
駆動部16は、リニアモータによって構成されている。具体的に、駆動部16は、シリンダ12の外面に固定された固定子としてのコイル16a(電磁石)と、ピストン14に固定された可動子としての磁石16bとを有している。磁石16bは、ピストン14における第1部位14aに配置されている。コイル16aと磁石16bとの間の反発力及び吸引力によってピストン14が往復移動するようになっている。
【0020】
シリンダ12には、第1圧縮室22a内に吸入されるガスが流れる吸入路26と、第2圧縮室22bから吐出されたガスが流れる吐出路27と、第1圧縮室22aと第2圧縮室22bとを連通する連絡路28とが接続されている。
【0021】
吸入路26と圧縮室22(第1圧縮室22a)とを連通する連通路には、吸入路26から圧縮室22への流れのみを許容する逆止弁C1が設けられている。圧縮室22(第2圧縮室22b)と吐出路27とを連通する連通路には、圧縮室22から吐出路27への流れのみを許容する逆止弁C2が設けられている。連絡路28と第1圧縮室22aとを連通する連通路には、第1圧縮室22aから連絡路28への流れのみを許容する逆止弁C3が設けられている。連絡路28と第2圧縮室22bとを連通する連通路には、連絡路28から第2圧縮室22bへの流れのみを許容する逆止弁C4が設けられている。したがって、連絡路28には、ガスが第1圧縮室22aから第2圧縮室22bに向かって流れる。換言すれば、往復動型圧縮装置10は、第1圧縮室22aで圧縮されたガスが、さらに第2圧縮室22bで圧縮される二段圧縮型の圧縮装置10として構成されている。
【0022】
吐出路27には、分離器30が設けられている。往復動型圧縮装置10から吐出されるガスには、潤滑剤としてのイオン液が含まれている。分離器30は、圧縮室22(第2圧縮室22b)から吐出されたガスからイオン液を分離するものである。
【0023】
分離器30には、戻し路33が接続されている。戻し路33は、分離器30で分離されたイオン液を分離器30よりも低圧側の戻し先に戻すためのものである。本実施形態では、戻し先が第1圧縮室22aに設定されている。
【0024】
戻し路33は、分離器30とシリンダ12とを接続するシリンダ外通路33aと、シリンダ12の周壁を貫通するシリンダ内通路33bと、ピストン14内に設けられたピストン内通路33cと、を有している。ピストン内通路33cには、逆止弁331が設けられる。
【0025】
シリンダ外通路33aには、戻し路33を流れるイオン液を冷却する潤滑剤冷却部35が設けられている。潤滑剤冷却部35は、冷却水等の冷却媒体によってイオン液を冷却する熱交換器によって構成されている。また、シリンダ外通路33aには、減圧弁37が設けられている。減圧弁37は省略することもできる。
【0026】
シリンダ内通路33bは、シリンダ12の外部と内部を連通させる通路であり、外端部(流入端部)がシリンダ外通路33aの一端部(流出端部)と接続されている。シリンダ内通路33bの内端部(流出端部)は、内部空間20に開口している。すなわち、イオン液は、シリンダ内通路33bを通してシリンダ12の外部からシリンダ12の内部に導入される。
【0027】
ピストン内通路33cは、シリンダ12内壁面とピストン14の外周面との間のすき間を介してシリンダ内通路33bと連通している。ピストン内通路33cは、ピストン14を貫通するように形成されており、一端部が第1部位14aの周面に開口するとともに、他端部が第1部位14aの先端面に開口している。この先端面は第1圧縮室22aに面しているため、ピストン内通路33cの他端部(流出端部)は、第1圧縮室22aに開口していることになる。ピストン内通路33cは、一端部が周面に開口する一方で、他端部が先端面に開口する構成となるため、途中で折れ曲がっている。このため、シリンダ内通路33bを通過したイオン液は、ピストン14の周面から径方向に流れ込み、その後ピストン14の長さ方向に流れの向きを変える。
【0028】
戻し路33には、潤滑剤冷却部35で冷却されたイオン液によって駆動部16を冷却する駆動部冷却部39が設けられている。駆動部冷却部39は、コイル16aを冷却するための固定子冷却部39aと、磁石16bを冷却するための可動子冷却部39bとを有する。
【0029】
固定子冷却部39aは、シリンダ外通路33aのうち、コイル16a内を通過させる部位によって構成されている。固定子冷却部39aでは、シリンダ外通路33aを流れるイオン液がコイル16aに直接供給される。コイル16aは、高圧のイオン液が外部に漏れ出さずにコイル16a内を通過するようにケース42でカバーされている。なお、固定子冷却部39aは、コイル16aを径方向に貫通する通路と、周方向に貫通する通路とを有していてもよい。この構成の場合には、通路内を流れるイオン液によってコイル16aが冷却される。
【0030】
可動子冷却部39bは、ピストン内通路33cのうち、磁石16bに形成された孔によって構成されている。可動子冷却部39bでは、シリンダ内通路33bを流れたイオン液が磁石16bに直接供給された上で孔内に流入する。なお、可動子冷却部39bは、磁石16bを径方向に貫通する通路と、周方向に貫通する通路とを有していてもよい。この構成では、通路内を流れるイオン液によって磁石16bが冷却される。
【0031】
第1実施形態の往復動型圧縮装置10では、駆動部16が発生する駆動力によってピストン14が第1圧縮室22aを膨張させる方向に動作すると、逆止弁C1が開放してガスが吸入路26から第1圧縮室22aに吸入される。続いてピストン14が第1圧縮室22aを圧縮する方向に動作すると、第1圧縮室22aのガスが圧縮され、所定圧力以上に昇圧すると逆止弁C3が開放し、第1圧縮室22aから連絡路28に吐出される。このガスにはイオン液が含まれている。
【0032】
連絡路28内のガスは、第2圧縮室22bを膨張させるピストン14の動作により、第2圧縮室22bに吸入される。第2圧縮室22bのガスは、第2圧縮室22bを圧縮させるピストン14の動作によってさらに圧縮されて、所定圧力以上に昇圧すると逆止弁C2が開放し、第2圧縮室22bから吐出路27に吐出される。吐出路27に吐出されたガスは、分離器30に流入する。分離器30において、イオン液がガスから分離される。イオン液が分離されたガスは、供給先へと供給される。
【0033】
分離器30で分離されたイオン液は、分離器30内の圧力と第1圧縮室22a内の圧力との差圧により、戻し路33を流れる。戻し路33を流れるイオン液は、シリンダ外通路33aにおいて、潤滑剤冷却部35で冷却媒体によって冷却され、その後、固定子冷却部39aにおいてコイル16aを冷却する。このとき、イオン液はコイル16aに直接供給されて、コイル16aを冷却する。コイル16aを冷却したイオン液は、シリンダ内通路33bを通過してピストン内通路33cに流入する。このとき、イオン液の一部は、ピストン14の外周面とシリンダ12の内壁面との間の隙間に流入する。また、イオン液の他部は、磁石16bに直接供給された上で磁石16bに形成された孔に進入する。これにより磁石16bがイオン液によって冷却され、このイオン液は、第1圧縮室22aに導入される。シリンダ内通路33bに逆止弁331が設けられることにより、第1圧縮室22a内の圧力が戻し路33内の圧力よりも高くなってしまった場合であっても、第1圧縮室22aから分離器30へと向かうイオン液及びガスの流れを防止することができる。
【0034】
以上説明したように、第1実施形態では、分離器30において、第2圧縮室22bから吐出されたガスからイオン液を分離する。分離器30で分離されたイオン液は、戻し路33を通じて戻し先に戻される。戻し路33では、イオン液は、潤滑剤冷却部35において冷却され、この冷却されたイオン液により、駆動部16を冷却する。そして、駆動部16を冷却したイオン液は、イオン液が含まれるガスが存在し分離器30内の圧力よりも低圧となっている戻し先に戻される。このため、イオン液を戻すための圧送手段が不要となるため、イオン液を圧縮前のガスに戻すための構成を簡素化することができる。しかも、イオン液を単にガスに戻すのではなく、冷却部の冷却用に有効に利用している。このため、ピストン14を駆動する駆動部16を冷却するための構成を簡素化することができる。したがって、新たに冷却回路等を追加する必要もないため、往復動型圧縮装置10としての構成の簡素化を図ることができる。
【0035】
また第1実施形態では、駆動部16を冷却したイオン液がピストン14内に形成されたピストン内通路33cを流れて第1圧縮室22a内に戻される。このため、ピストン14の位置の影響を受けることなく、イオン液を常時第1圧縮室22a内に直接戻すことができる。第1圧縮室22a内は、吐出側の圧力よりも低圧となっているため、分離器30内の圧力と第1圧縮室22a内の圧力との差圧によって、イオン液が戻し路33を流れる。したがって、イオン液の圧送手段は不要となる。
【0036】
また第1実施形態では、イオン液がコイル16a及び磁石16bに直接供給される(吹き付けられる)ため、イオン液によって駆動部16を効果的に冷却することができる。
【0037】
(第1参考形態)
図2は本発明の第1参考形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
第1実施形態では、戻し路33の戻し先が第1圧縮室22aとなっているが、これに対し、第1参考形態では、戻し路33の戻し先が、ピストン14に設けられたピストンリング45間の空間となっている。
【0039】
シリンダ12の内部空間20は、第1圧縮室22a側の第1空間部20aと第2圧縮室22b側の第2空間部20bとを有する。第1実施形態では、第1空間部20aと第2空間部20bとは互いに幅が異なっているが、第1参考形態では、第1空間部20aの幅と第2空間部20bの幅とは同じ幅に構成されている。なお、第1参考形態においても、第1実施形態と同様に、第1空間部20aの幅と第2空間部20bの幅とが互いに異なっていてもよい。
【0040】
ピストン14は、第1圧縮室22aを形成する第1部位14aと第2圧縮室22bを形成する第2部位14bとを有している。第1参考形態では、第1部位14aの幅と第2部位14bの幅とは同じ幅に構成されている。なお、第1参考形態においても、第1実施形態と同様に、第1空間部20aの幅と第2空間部20bの幅とが互いに異なっている場合には、第1部位14aの幅と第2部位14bの幅とが互いに異なっていてもよい。
【0041】
ピストン14の周面には、第1部位14a及び第2部位14bにおいてそれぞれ、長手方向に間隔をおいて複数の凹部14cが形成されている。これらの凹部14cにはそれぞれ、ピストンリング45が嵌められている。
【0042】
戻し路33は、シリンダ外通路(第1シリンダ外通路)33aと、シリンダ通路33eと、ピストン内通路33cと、第2シリンダ外通路33fと、流出部33gと、を有する。第1シリンダ外通路33aは、分離器30とシリンダ通路33eとを連通している。シリンダ通路33eは、ピストン14を径方向に貫通しており、シリンダ12の周壁のうち少なくとも対向する2つの部位を貫通している。したがって、シリンダ通路33eには、シリンダ12の外部からシリンダ12の内部にイオン液を導入する導入部位33hと、シリンダ12内からシリンダ12外にイオン液を導出する導出部位33iとが含まれている。第2シリンダ外通路33fは、シリンダ通路33eと流出部33gとを連通している。流出部33gは、ピストン14の往復移動時に常時ピストンリング45間となる位置で、シリンダ12の周壁を貫通している。ピストン14の周面とシリンダ12の内壁面との間には僅かに隙間が形成されているため、流出部33gから流出したイオン液は、この隙間のうちピストンリング45間の空間に導入される。
【0043】
したがって、第1参考形態では、ピストンリング45間の空間にイオン液が供給されるため、圧縮室内のガスがシリンダ12とピストン14との間の間隙に漏れることを抑制することができる。ピストンリング45間の空間は、第1圧縮室22a内の圧力と同程度又はそれ未満の圧力となっているため、イオン液の圧送手段は不要となる。
【0044】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0045】
(第2参考形態)
図3は本発明の第2参考形態を示す。尚、ここでは第1参考形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
1参考形態では、イオン液がピストンリング45間の空間に戻される。これに対し、第2参考形態では、イオン液が吸入路26に戻される。すなわち、戻し路33は、第1シリンダ外通路33aと、シリンダ通路33eと、ピストン内通路33cと、第2シリンダ外通路33fと、を有する。第2シリンダ外通路33fは、第1参考形態と異なり、シリンダ通路33eと吸入路26とを連通している。吸入路26内の圧力は、分離器30内の圧力よりも常時低い圧力のところとなっている。このため、減圧弁37は省略されている。
【0047】
2参考形態では、圧縮室よりも低圧となる吸入路26にイオン液が戻される。したがって、分離器30内の圧力と吸入路26内の圧力との差圧によって、イオン液を効果的にガスに戻すことができる。
【0048】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記1参考形態と同様である。
【0049】
(第3参考形態)
図4は本発明の第3参考形態を示す。尚、ここでは第2実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
1実施形態では、ピストン14の駆動部16が、ピストン14を直線方向に移動させる駆動力を発生させるリニアモータによって構成されている。これに対し、第3参考形態では、ピストン14の駆動部16が、回転駆動力を発生するモータによって構成されている。往復動型圧縮装置10には、駆動部16が生成したモータの回転駆動力を、ピストン14を往復動させる駆動力に変換する駆動力変換部48が設けられている。この駆動力変換部48は、ハイポサイクロイド機構によって構成されていてもよく、あるいはクランク機構によって構成されていてもよい。この往復動型圧縮装置10では、圧縮室22が1つのみ形成されていて、1段圧縮タイプとなっている。
【0051】
戻し路33は、第1シリンダ外通路33aと、シリンダ通路33eと、第2シリンダ外通路33fと、を有している。第1シリンダ外通路33aは、分離器30とシリンダ通路33eとを連通している。シリンダ通路33eには、シリンダ12外からシリンダ12内にイオン液を導入する導入部位33hと、シリンダ12内からシリンダ12外にイオン液を導出する導出部位33iとが含まれている。導入部位33h及び導出部位33iは、シリンダ12の内部空間20のうち、駆動部16が収納される収納部20cに開口している。導入部位33hは、イオン液を駆動部16に直接供給するように構成されている。導出部位33iは、収納部20c内の底部に溜まったイオン液を導出する。第2シリンダ外通路33fは、シリンダ通路33eと吸入路26とを連通している。なお、第3参考形態では、駆動部16がピストン14内に無いため、ピストン内通路33cは設けられていない。
【0052】
3参考形態では、圧縮室22よりも低圧となる吸入路26にイオン液が戻される。したがって、分離器30内の圧力と吸入路26内の圧力との差圧によって、イオン液を効果的にガスに戻すことができる。
【0053】
なお、第3参考形態では、戻し路33の第2シリンダ外通路33fが吸入路26に連通する構成となっているが、これに限られない。戻し路33が、シリンダ内通路(図示省略)を備えていて圧縮室22に直接連通する構成であってもよい。この場合、戻し先は、圧縮室22となる。圧縮室22内の圧力は、分離器30内の圧力よりも常時低圧となっているわけではなく、一時的(すなわち、吐出工程以外のときであり、少なくとも膨張工程のときを含む)に分離器30内の圧力よりも低くなる。したがって、圧送手段を設ける必要はない。このように、圧縮室22から吐出されたイオン液が、圧縮室22よりも高圧となる空間を経由することなく戻し路33に流入した場合、吐出工程以外のときに当該圧縮室22に戻されることとなる。
【0054】
戻し先は、圧縮室22ではなく、第1参考形態のように、ピストン14に設けられたピストンリング間の空間に設定されていてもよい。
【0055】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第2実施形態と同様である。
【0056】
(第4参考形態)
図5は本発明の第4参考形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
3参考形態では、ピストン14が固体ピストン14によって構成されている。これに対し、第4参考形態では、ピストン14が液体部分を有する構成となっている。すなわち、本第4参考形態では、ピストン14が駆動部16から直接駆動力を受ける受け部14dと、受け部14dから間隔をおいて配置される作動部14eと、受け部14dと作動部14eとの間に挟み込まれた作動液で構成される液部分14fとを有する。作動液として、油、イオン液等が用いられる。作動部14eの上にはイオン液の液層14gが設けられている。言い換えると、圧縮装置10は、イオニックコンプレッサとして構成されている。
【0058】
駆動部16は、第1実施形態と同様、リニアモータによって構成されていてもよい。また、第3参考形態と同様に、回転駆動力を発生するモータによって構成されていてもよい。この場合には、駆動力変換部48が設けられることなる。また、受け部14dに代えて、ピストン式以外のポンプ(例えば、回転式のポンプ)が具備されてもよい。
【0059】
戻し路33は、分離器30と吸入路26とを連通している。戻し路33には、駆動部冷却部39が設けられている。駆動部冷却部39は、イオン液を駆動部16に直接供給するように構成されている。
【0060】
なお、第4参考形態では、戻し路33が吸入路26に連通する構成となっているが、これに限られない。戻し路33が、圧縮室22に開口するシリンダ内通路を備えていて、圧縮室22に直接連通する構成であってもよい。この場合、戻し先は、圧縮室22となる。圧縮室22内は、吐出工程以外のときに、分離器30内の圧力よりも低くなるため、分離器30内の圧力と圧縮室22内の圧力との差圧によってイオン液が流れる。
【0061】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
第1実施形態では、分離器30に流入する直前のガス及びイオン液を冷却する冷却部が設けられてもよい。この場合、潤滑剤冷却部35は省略されてもよい
【0064】
第1実施形態では、戻し路33におけるイオン液の圧力(又は流量)を調整することができるのであれば減圧弁37以外の弁が利用されてもよい。イオン液が戻し路33に過度に流入しないのであれば減圧弁37は省略されてもよい
【0065】
1参考形態では、第2圧縮室22bよりも第1圧縮室22aに近い側に配置されたピストンリング45間にイオン液が戻される構成を示しているが、これに限られない。図6に示すように、戻し路33には、シリンダ通路33eと、第1圧縮室22aよりも第2圧縮室22bに近い側に配置されたピストンリング45に繋がる流出部33nとを連通する他の第2シリンダ外通路33mが設けられてもよい。第2シリンダ外通路33mには逆止弁332が設けられる。流出部33nから流出したイオン液はピストンリング45間の空間に導入される。
【0066】
図7に示すように、ピストン14の両側に存在する第1及び第2圧縮室22a,22bには1つの流路から同じ圧力のガスが導入されてもよい。第1及び第2圧縮室22a,22bのそれぞれにて昇圧されたガスは同程度の圧力にて吐出され、分離器30に流入する。図7では、ピストン内通路33cを通過した後のイオン液が、分離器30から2つの第2シリンダ外通路33f,33m及び2つの流出部33g,33nを介して第1及び第2圧縮室22a,22bのそれぞれの近傍に存在するピストンリング45間の空間に導入される。この形態では、吸入路26が途中で分岐していて、吸入路26を流れるガスは、分流して第1圧縮室22a及び第2圧縮室22bに吸入される。連絡路28は省略されており、吐出路27は途中で分岐していて、第1圧縮室22a及び第2圧縮室22bに接続されている。第1圧縮室22a及び第2圧縮室22bで圧縮されたガスは、それぞれ吐出路27を流れて分離器30に導入される。
【符号の説明】
【0067】
10 往復動型圧縮装置
12 シリンダ
14 ピストン
16 駆動部
16a コイル
16b 磁石
22 圧縮室
22a 第1圧縮室
22b 第2圧縮室
26 吸入路
27 吐出路
28 連絡路
30 分離器
33 戻し路
33a シリンダ外通路
33b シリンダ内通路
33c ピストン内通路
33e シリンダ通路
33f シリンダ外通路
33m シリンダ外通路
33g 流出部
33n 流出部
33h 導入部位
33i 導出部位
35 潤滑剤冷却部
37 減圧弁
39 駆動部冷却部
39a 固定子冷却部
39b 可動子冷却部
45 ピストンリング
48 駆動力変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7