特許第6276192号(P6276192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6276192ソフト・テキスチャー有するペット・フード組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276192
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ソフト・テキスチャー有するペット・フード組成物
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/48 20160101AFI20180129BHJP
   A23K 20/189 20160101ALI20180129BHJP
【FI】
   A23K50/48
   A23K20/189
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-544717(P2014-544717)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2015-504311(P2015-504311A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】US2011065039
(87)【国際公開番号】WO2013089722
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年5月28日
【審判番号】不服2016-11311(P2016-11311/J1)
【審判請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502329223
【氏名又は名称】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ジェイ・モンテロンゴ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・カペルマン
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 渡戸 正義
【審判官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−043750(JP,A)
【文献】 特表昭59−501492(JP,A)
【文献】 特開2001−161258(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0076718(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00105051(EP,A1)
【文献】 特表2002−525089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K1/00-3/04
A23L1/00-1/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥材料基準でタンパク質10%〜60%
乾燥材料基準で脂肪5%〜40%および
乾燥材料基準で炭水化物30%〜65%および
温度不安定性アミラーゼである少なくとも1つのアミラーゼを含有するペット・フード組成物であり、
該組成物、ソフト・テスチャーを有し
加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力(penetrating force)の10%〜80%である侵入力を有するとともに、3回の凍結/解凍サイクル後の添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%〜80%である侵入力を有し、および
素活発アミラーゼを実質上含まず
水40%〜80%を含むウェット・ペット・フード組成物であることを特徴とするレトルトのペット・フード組成物。
【請求項2】
前記アミラーゼがエンド−アミラーゼ、エキソ−アミラーゼまたはそれらの混合物である請求項1記載のペット・フード組成物。
【請求項3】
前記アミラーゼが混合物の総重量の0.001%〜0.1%の量で存在する請求項1または2記載のペット・フード組成物。
【請求項4】
前記アミラーゼが混合物の総重量の0.005%〜0.5%の量で存在する請求項1〜3いずれかに記載のペット・フード組成物。
【請求項5】
前記ペット・フード組成物がコンパニオン・アニマルに栄養的または感覚的に適している請求項1〜4いずれかに記載のペット・フード組成物。
【請求項6】
前記コンパニオン・アニマルがイヌ科の動物またはネコ科の動物である請求項5記載のペット・フード組成物。
【請求項7】
前記ペット・フード組成物が添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%〜60%の範囲の侵入力を有する請求項1〜6いずれかに記載のペット・フード組成物。
【請求項8】
前記ペット・フード組成物が添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%〜40%の範囲の侵入力を有する請求項7記載のペット・フード組成物。
【請求項9】
前記ウェット・ペット・フード組成物が水40%〜60%を含有する請求項記載のペット・フード組成物。
【請求項10】
a)水、乾燥材料基準でタンパク質10%〜60%、乾燥材料基準で脂肪5%〜40%、および、乾燥材料基準で炭水化物30%〜65%を含有する混合物を調製し、
b)該混合物を効果的量のアミラーゼに接触させ140°F〜180°Fの温度範囲で、アミラーゼ処理混合物を与えるのに十分な時間加熱し、および、
c)アミラーゼ処理混合物をレトルト工程に付すペット・フード組成物を調製する方法であって、
前記ペット・フード組成物、ソフト・テスチャーを有し
合物の総重量の40%〜80%の範囲内の量の水を含有し、
酵素活性アミラーゼを実質上含有せず、かつ
加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力(penetrating force)の10%〜80%である侵入力を有するとともに、3回の凍結/解凍サイクル後の添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%〜80%である侵入力を有し、アミラーゼが温度不安定性を有することを特徴とするペット・フード組成物を調製する方法。
【請求項11】
前記アミラーゼがエンド−アミラーゼ、エキソ−アミラーゼまたはそれらの混合物である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記アミラーゼが混合物の総重量の0.001%〜0.1%の範囲の量で存在する請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記アミラーゼが混合物の総重量の0.005%〜0.5%の範囲の量で存在する請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記アミラーゼが温度不安定エンド−アミラーゼ、エキソ−アミラーゼまたはその混合物である請求項10記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物の澱粉成分がアミラーゼで部分的に消化されているソフト・テキスチャーを有するペット・フード組成物および該ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物の調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペット・フード組成物は食物が意図されている栄養的に完全な動物用の食餌を企画し配合される。ペット・フードが単独の栄養源ではないが、動物のための第1の栄養源として用いられることを意図する場合、その食物はペット・フード組成物中のタンパク質と脂肪のレベルを、限定的ではないが、非常に厳しい栄養的なガイドラインに従って配合されるべきである。必要な食事成分の望ましいバランスと相対濃度を達成するための1つの方法は、一般にポリマー材料アミロースおよびアミロペクチンを含む1以上の炭水化物成分を有する配合を追加することを含む。
【0003】
ペット・フード組成物(特に「ウェット」ペット・フード組成物)は、水、タンパク質、脂肪、炭水化物および当業者に認識されている他の栄養的に必要な成分の適切な原材料を組み合せ、その後その混合物を適切な温度で、成分をブレンドするのに十分な時間調理することにより調製される。調理された混合物は、容器に分配され、ペット・フード組成物を殺菌するために密封されレトルトされる。しかしながら、これらの操作工程の間およびその後に、澱粉成分は水和、膨潤およびゼラチン化し得る。組成物が冷えると、澱粉ポリマーが再配列し、分子間水素結合を形成して、比較的結晶性の構造を発現する。このプロセスは老化と呼ばれ、最終製品において望ましくない固い構造を形成し、ペット・フードとして感覚的に受け入れがたくなる。
【0004】
従って、ペット・フード組成物として栄養的および感覚的に許容できる組成物並びにそれらの組成物を再現的に提供することができる方法が望まれている。
概要
【0005】
本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は水、タンパク質、脂肪および炭水化物を適切なレベルで含有する混合物を、アミラーゼ、特にエンド−アミラーゼ(endo−amylase)、エキソ−アミラーゼ(exo−amylase)またはそれらの混合物で処理して部分的に混合物の澱粉ポリマーを消化する方法で調製する。消化は、調理段階の前か調理段階中に行われ、その後組成物をレトルト工程にかけるか、若しくは消化がレトルト工程中に行われる。このように調製されるペット・フード組成物は、アミラーゼ処理のない同じ方法で調製されたペット・フード組成物より定量的にソフトである。
【0006】
従って、種々の態様において、本発明はソフト・テキスチャーのペット・フード組成物並びにそれらの調製方法を提供する。
【0007】
1つの態様において、本発明は、乾燥材料基準でタンパク質約10%〜約60%、乾燥材料基準で脂肪約5%〜約40%、乾燥材料基準で炭水化物約30%〜約65%および少なくとも1つのアミラーゼを含有するペット・フード組成物を提供する。この態様のペット・フード組成物は添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力(penetrating force)の約10%〜約80%の範囲の侵入力を有することで観察されるソフト・テキスチャーを有する。添加アミラーゼのないペット・フード組成物は、アミラーゼの添加を除いて同様の方法で調製されるものである。この態様の1つの側面では、使用されるアミラーゼはエンド−アミラーゼ、エキソ−アミラーゼまたはそれらの混合物であり、かつ最終のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は実質的には酵素活性アミラーゼを含有しない。1つの特定の態様では、使用されるアミラーゼは温度不安定アミラーゼであり、かつ最終のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は実質的には酵素活性アミラーゼを含有しない。
【0008】
この態様の特定の側面では、アミラーゼは組成物の総重量に基づいて約0.001%〜約0.1%、約0.005%〜約0.05%、または約0.01%〜約0.025%のレベルで存在する。
【0009】
この具体化の特定の側面では、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、コンパニオン・アニマルに、栄養的、感覚的または両方で適応する。特定の側面では、そのコンパニオン・アニマルは、イヌ科の動物またはネコ科の動物である。
【0010】
特定の態様では、本発明のソフト・テキスチャーのペット・フードは、添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の約10%〜約80%、約20%〜約70%、約10%〜約60%、約20%〜約60%、約10%〜約40%、または、約20%〜約40%の範囲の侵入力を有する。
【0011】
更なる態様では、本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、組成物の総重量の約30%〜約80%、約35%〜約65%、または約40%〜約60%の範囲の水のレベルを有するウェット・ペット・フード組成物である。
【0012】
本発明はまたソフト・テキスチャーのペット・フード組成物の製造方法を提供し、その方法はa)水、乾燥材料基準でタンパク質約10%〜約60%、乾燥材料基準で脂肪約5%〜約40%、および、乾燥材料基準で炭水化物約30%〜約65%を含有する混合物を調製し;b)該混合物を効果的量のアミラーゼに接触し、温度約120°F〜約220°Fにアミラーゼ処理混合物を提供するのに十分な時間加熱し;および(c)アミラーゼ処理混合物をレトルトする、方法であって、前記ペット・フード組成物が、ソフト・テキスチャーを有し、かつ、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物が添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の約10%〜約80%の範囲である侵入力を有する。
【0013】
この態様の1つの側面では、使用されるアミラーゼは、エンド−アミラーゼ、エキソ−アミラーゼまたはそれらの混合物である。
【0014】
この態様の特定の側面では、アミラーゼは組成物の総重量の約0.001〜約0.1%、約0.005%〜約0.05%、または、約0.01%〜約0.025%の範囲のレベルで存在する。
【0015】
この態様のもう一つの側面では、混合物は組成物の総重量の約30%〜約80%、約35%〜約65%、または、約40%〜約60%の水のレベルを含有する。
【0016】
さらに他の態様では、ソフト・テキスチャーのペット・フード製品の本発明の調製方法は、添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の約10%〜約80%、約20%〜約70%、約10%〜約60%、約20%〜約60%、約10%〜約40%、または、約20%〜約40%の侵入力を有する組成物を提供する。
【0017】
したがって、本発明は、本発明の方法によって調製されるソフト・テキスチャーのペット・フード組成物にも関する。この態様の特定の側面では、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、コンパニオン・アニマルに、栄養的、感覚的、または、両方で適している。この態様のなお更なる側面では、コンパニオン・アニマルはイヌ科の動物またはネコ科の動物である。
【0018】
本発明の適用性の更なる領域は、以下の詳しい説明から明らかになる。詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示しているが、説明のためだけを意図し、本発明の範囲を制限することを意図しない、ことを理解すべきである。
詳しい説明
【0019】
好ましい態様の以下の記載は、本質的に単なる説明であり、発明、用途および使用に制限することはない。
【0020】
本発明の方法によって調製されるソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は添加アミラーゼのないペット・フード組成物より明らかに柔らかい。添加アミラーゼのないペット・フード組成物は、同様の方法でアミラーゼの添加を省略して調製されるものである。本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、また添加アミラーゼのないペット・フード組成物と比較して消化性に関して実質的に違いはない。本発明の組成物は、また本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物を与えた動物の糞が本質的に変化のないことを示しているので、本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物を与えた動物において胃腸問題を生じさせない。
【0021】
従って、種々の態様において、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物並びにそれらを調製する方法を提供する。
【0022】
1つの態様に、本発明は、乾燥材料基準でタンパク質約10%〜約60%、乾燥材料基準で脂肪約5%〜約40%、乾燥材料基準で炭水化物約30%〜約65%および少なくとも1つのアミラーゼを含有するペット・フード組成物を提供する。この態様のペット・フード組成物は添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の約10%〜約80%の範囲の侵入力を有することで観察されるソフト・テキスチャーを有する。添加アミラーゼのないペット・フード組成物は、同様の方法でアミラーゼの添加の省略を除いて調製されるものである。この態様の1つの側面では、使用されるアミラーゼはエンド−アミラーゼ、エキソ−アミラーゼまたはそれらの混合物であり、かつ最終のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は実質的には酵素活性アミラーゼを含有しない。1つの特定の態様では、使用されるアミラーゼは温度不安定アミラーゼであり、かつ最終のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は実質的には酵素活性エンド−アミラーゼを含有しない。
【0023】
ここに考えられるように、本発明の組成物は栄養的に完全でバランスのとれたペット・フード組成物(本明細書では単に「栄養的に完全なペット・フード組成物」とも称する)を包含しうる。栄養的に完全なペット・フード組成物は、当業者になじみがある。例えば、栄養分および成分、具体的には本明細書に記載のもの、動物用飼料組成物用に適した他のものおよびその推奨される量は、Association of American Feed Control Officials(「AAFCO」)Inc.の公報、犬と猫の栄養的要求(Nutrient Requirements)(2011)中に見つけられる。例えば、栄養的に完全なフードは、タンパク質、脂肪、炭水化物、食物繊維、アミノ酸、ミネラル、ビタミンおよび他の成分を当業者に既知の量で含んでもよい。
【0024】
実施例で述べられるそれらの成分に加えて、タンパク質は、植物原料、動物原料または両方を含む当業者に知られているいろいろな原料のどれによってでも供給されるかもしれない。動物原料は、例えば、肉、肉副産物、シーフード、乳製品、卵などを含む。肉は、例えば、家禽、魚および哺乳類(例えば、牛、ブタ、羊、ヤギなど)の肉を含む。肉副産物は、例えば、肺、腎臓、脳、肝臓および胃および腸(すべてまたは基本的にすべて内容物にとらわれない)含む。タンパク質はそのままであってもよく、またほとんど完全にまたは部分的に加水分解されてもよい。
【0025】
実施例で述べられるそれらの成分に加えて、脂肪は、肉、肉副産物、魚油および植物を含む当業者に知られているいろいろな原料のどれによって供給されてもよい。植物脂肪原料は小麦、フラックスシード、ライ麦、大麦、米、モロコシ、コーン、オート麦、雑穀、小麦麦芽、コーン麦芽、大豆、ピーナッツおよび綿実、ならびに、これらおよび他の植物脂肪原料から誘導された油を含む。
【0026】
実施例で述べられるそれらの成分に加えて、炭水化物はオート麦繊維、セルロース、ピーナッツ外皮、ビート・パルプ、パーボイルされた米、コーンスターチ、コーン・グルテン・ミールとそれらの原料のどんな組合せを含む当業者にでも知られているいろいろな原料のどれによって供給されてもよい。炭水化物を供給す穀物は、小麦、コーン、大麦および米を含むが、これに限定されるものではない。食物の炭水化物含有量は、当業者に公知の多くの方法で決定してもよい。通常、炭水化物パーセンテージは窒素フリー抽出物(「NFE」)として計算されてもよい。それは以下の通りに計算されうる:NFE=100%−湿分%−タンパク質%−脂肪%−灰分%−粗繊維%。
【0027】
本発明の特定の態様では、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物はオメガ3脂肪酸(例えばドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アルファ-リノレン酸(ALA)、オクタデカテトラエン酸(ステアリドン酸)またはそれらの混合物の中から選ばれるものを含む一以上の脂肪酸を含有してもよい。
【0028】
本発明のさらに他の側面では、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、食物繊維を配合されてもよい。食物繊維は、動物の消化酵素による消化に抵抗する植物の成分を言及する。食物繊維は、可溶性および不溶性繊維を含む。可溶性繊維は小腸での消化と吸収に抵抗して大腸で完全もしくは部分的発酵を経るもので、例えば、ビート・パルプ、グアーガム、チコリ根、オオバコ、ペクチン、ブルーベリー、クランベリー、スカッシュ、リンゴ、オート麦、豆、柑橘類、大麦またはエンドウが挙げられる。不溶性繊維は、種々の原料、例えばセルロース、全麦の製品、小麦オート麦、トウモロコシ糠、亜麻の種、ブドウ、セロリ、緑莢インゲン、カリフラワー、ジャガイモ皮、果物皮、野菜皮、ピーナッツ外皮および大豆繊維によって供給されてもよい。粗繊維は、食物の細胞壁および細胞含有物に含まれる非消化性成分、例えば穀物(米、コーンまたは豆など)の外皮を包含する。
【0029】
特定の他の側面では、本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、アミノ酸、例えば必須アミノ酸を配合してもよく、それは遊離アミノ酸として本発明の組成物に添加されるか、多くの原料(例えば、粗たんぱく質)によって、本発明の組成物に供給されてもよい。必須アミノ酸は、新たに、または、生物によって十分な量で合成されることができなくて、このように食事から摂らなければならないアミノ酸である。必須アミノ酸は生物の代謝に基づいて、種類によって異なる。例えば、犬とネコ(そして、人間)のための必須アミノ酸はフェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、リジン、イソロイシン、バリン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびアルギニンであると通常理解される。また、タウリンは、技術的にアミノ酸でなくシステインの誘導体であるが、ネコにとって必須の栄養分である。
【0030】
本発明の組成物は、一つ以上のミネラルや微量元素(例えば、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、コリンまたは鉄塩)を、不足を避けて健康を維持するために要求される量で含有してもよい。これらの量は当業者に公知であり、例えばAssociation of American Feed Control Officials(「AAFCO」)Inc.の公報、犬と猫の栄養的要求(Nutrient Requirements)(2011)で提供される。
【0031】
本発明の組成物は、不足を避けて健康を維持するためにビタミンを要求される量で包含してもよい。これらの量と測定方法は、当業者に知られている。例えばAssociation of American Feed ControlOfficials(「AAFCO」)Inc.の公報、犬と猫の栄養的要求(Nutrient Requirements)(2011)は、そのような成分の犬や猫に対する推奨量を提供する。ここに観察されるように、有用なビタミンはビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンH(ビオチン)、ビタミンK、葉酸、イノシトール、ナイアシンおよびパントテン酸を含むが、これに限定されるものでない。
【0032】
本発明の組成物は、また添加物、安定剤、充填剤、増粘剤、フレーバー剤、嗜好向上剤(palatability enhancer)および着色剤を当業者に周知の量と組合せで含んでもよい。この態様の特定の側面に、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、コンパニオン・アニマルに、栄養的に、感覚的に、または、両方ともに適している。特定の側面では、そのコンパニオン・アニマルは、イヌ科の動物またはネコ科の動物である。
【0033】
この態様の他の側面では、本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、実質的には酵素活性アミラーゼを含有しない。
【0034】
特定の態様では、本発明のソフト・テキスチャーのペット・フードは、添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の約10%〜約80%、約20%〜約80%、約10%〜約60%、約20%〜約60%、約10%〜約40%、または、約20%〜約40%の範囲である侵入力を有する。
【0035】
更なる態様では、本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、組成物の総重量の約30%〜約80%、約35%〜約65%、または約40%〜約60%の範囲内のレベルの水を含有するウェット・ペット・フード組成物である。
【0036】
本発明は、a)水、乾燥材料基準でタンパク質約10%〜約60%、乾燥材料基準で脂肪約5%〜約40%、および、乾燥材料基準で炭水化物約30%〜約65%を含有する混合物を調製し;b)該混合物を効果的量のアミラーゼに接触し、温度約120°F〜約220°Fにアミラーゼ処理混合物を提供するのに十分な時間加熱し;および、c)アミラーゼ処理混合物をレトルトする;ペット・フード組成物を調製する方法であって、前記ペット・フード組成物が、ソフト・テキスチャーを有し、前記ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物が添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の約10%〜約80%の範囲である侵入力を有することを特徴とするペット・フード組成物を調製する方法を提供する。
【0037】
この態様の特定の側面では、使用されるアミラーゼは、エンド−アミラーゼ、エキソ−アミラーゼまたはそれらの混合物である。
【0038】
この態様の特定の側面では、アミラーゼは組成物の総重量の約0.001%〜約0.1%、約0.005%〜約0.05%、または約0.01%〜約0.025%の範囲のレベルで存在する。
【0039】
アミラーゼは中心成分、即ちタンパク質、脂肪および炭水化物と最初のブレンド段階の間に結合されてもよい。アミラーゼは、最初のブレンド段階(例えば、約100°Fの温度で)の後で昇温(約120°F〜約220°Fの範囲の温度))下の調理段階前に混合物に添加してもよい。他の側面では、アミラーゼは調理段階の開始の後、ブレンドに加えられる。
【0040】
本発明の方法の他の側面では、アミラーゼの量および澱粉加水分解の時間と温度は、所望のソフト・テキスチャーを有するペット・フード組成物を提供するために、変化してもよい。他の側面では、ソフト・テキスチャーの程度は、ペット・フード組成物が実質的な期間(例えば、少なくとも2週間)硬化後製品に長期の貯蔵寿命を提供する柔らかさの目標レベルである。
【0041】
本発明の方法に有用なアミラーゼは実施例に記載のものを含むがそれらに限定されない。特定の態様では、アミラーゼは温度不安定な酵素である。一面において、これは、長期の貯蔵または硬化時に組成物の柔らかさの増加をもたらさない酵素のレベルである。
【0042】
もう一つの側面に、本発明の方法で使われるアミラーゼは、温度安定性である。さらにもう一つの側面では、アミラーゼは、実際、レトルト工程の後に長期間ペット・フード組成物のテクスチャーの柔らかさの所定のレベルをつくりだし維持するようにする酵素の混合物である。
【0043】
この態様のもう一つの側面では、混合物は組成物の総重量の約30%〜約80%、約35%〜約65%、または、約40%〜約60%の範囲の中の水のレベルを含有する。
【0044】
さらに他の態様では、ソフト・テキスチャーのペット・フード製品の本発明の調製方法は、添加のアミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の約10%〜約80%、約20%〜約80%、約10%〜約60%、約20%〜約60%、約10%〜約40%、または約20%〜約40%の範囲内である侵入力を有する組成物を提供する。
【0045】
したがって、本発明は、本発明の方法によって調製されるソフト・テキスチャーのペット・フード組成物にも関する。この態様の特定の側面では、ソフト・テキスチャーのペット・フード組成物は、栄養的に、感覚的に、または、両方ともコンパニオン・アニマルに適している。この態様のなお更なる側面では、コンパニオン・アニマルはイヌ科の動物またはネコ科の動物である。
【実施例】
【0046】
実施例1:ペット・フード組成物への澱粉の部分消化の影響
4つのペット・フード組成物(配合1〜配合4)を、以下の表1〜4に記載の目標範囲により調製した:
【表1】
【0047】
配合2の配合の目標とされた範囲は、下記の表2に記載する:
【表2】
【0048】
配合3の配合のための目標とされた範囲は、以下の表3に示す:
【表3】
【0049】
配合4の配合のための目標とされた範囲は、以下の表4に示す:
【表4】
【0050】
それぞれの例において、肉原料、乾燥成分および水を、ボウル中で混合して、次いで約100°Fの温度に加熱する。この時点で、アミラーゼを試験組成物に加え、次いで170°Fの温度まで加熱した(表5にアミラーゼの量とタイプを各々記載した)。使用されるアミラーゼは、Bacillus amyloliquefaciensの温度不安定の細菌性α-アミロース(BAN480 L)およびBacillus licheniformisの温度安定細菌性アミラーゼ(ターマミル(Termamyl)クラシック)であり、;両方とも、ノボザイム(Novozymes(デンマーク))から入手可能である。
【0051】
混合物を170°Fまで加熱した後、各々の製品の試料を250°Fで73分間消毒された12オンスの缶に分配した。サンプルの全てを少なくとも14日の間保存し、TA−TX2テキスチャー・アナライザー(テクスチャー・テクノロジーズ社、スカースデール(Scarsdale)、ニューヨーク)を用いて一般にメーカーの指示に従ってを測定した。
【0052】
コントロール組成物を試験組成物と同じ方法および成分量で、添加アミラーゼだけを除いて調製した。
【0053】
各酵素での部分消化の有無を有する配合1〜4の各々のテクスチャー・データは、下記の表5に要約する。
【表5】
【0054】
上記のデータは、アミラーゼで処理されなかった同じ配合と比較して、テストされた各アミラーゼの部分的な澱粉消化が配合1〜4の各々のテクスチャーを柔らかくしたことを証明する。それぞれの例において、アミラーゼ処理製品に侵入する力において、コントロールと比べてより少ない力を必要とした。データはまた、柔軟化の範囲および製品のソフト・テキスチャーの性質は消化反応で使用される酵素のレベルを変えることによって制御され得ることを示した。
【0055】
実施例2:アミラーゼの活性に対するpHの効果
BAN480Lとターマミル・クラシック・アミラーゼのpH最適条件は、約pH5〜約pH7の範囲内にあると考えられる。従って、上記の終末製品の各々のpHを、pHが最適酵素活性と適合しているかどうかを評価して決定した。得られるデータは、下記の表6で提示される:
【表6】
【0056】
表6のデータは、配合1〜4の各々のpHが使用されたBAN480Lおよびターマミル・クラシックαーアミラーゼ両方の最適活性について予想される範囲内にあることを示した。
【0057】
実施例3:BAN480Lでの消化性の範囲についての温度の効果
この実験は異なる温度で観察される消化のレベルを測定するために行われた。この実験のために、配合1(実施例1)が基材として用いられ、BAN480Lがアミラーゼとして用いられた。
【0058】
配合1の異なる組成物の異なるバッチを、実施例1に記載されているように調製した。酵素、BAN480Lのαアミラーゼを0.001%(組成物の総重量の)のレベルで添加し、個々のサンプルを温度120°F、140°F、158°F、176°Fおよび194°Fに加熱した。コントロール試料を、実施例1のように調製し、170°Fの温度に加熱した。すべてのサンプルを缶中分配し、実施例1のようにシールして殺菌した。加水分解の範囲は残っている澱粉のレベルで表示し、観察される総シュガー・レベルおよびデータを表7に提示する。
【表7】
【0059】
得られるデータは、これらの条件下で、最大の加水分解が158°Fの温度で観察され、かつ加水分解が温度180°Fを超えては殆ど観察されないことを示す。
【0060】
実施例4:α-アミラーゼについての最大の加水分解温度
前の実験で示されるように、最大の加水分解は140°F〜160°Fの温度で観察される。実験はこの例示のα−アミラーゼが不活性化される温度を測定して、 殺菌後残存酵素活性α−アミラーゼも含まない配合を調製すること可能にする。
【0061】
配合1の組成物の異なるバッチを、実施例1に記載されているように調製した。酵素、BAN480Lのα−アミラーゼ、を0.001%(組成物の総重量の)のレベルに添加し、個々のサンプルを温度160°F、180°F、190°Fおよび200°Fに加熱した。コントロール試料を、実施例1のように調製し、170°Fの温度に加熱した。すべてのサンプルは缶に分配されて、実施例1と同様にシールされ殺菌された。加水分解の範囲は残っている澱粉のレベルで表示し、観察される総シュガー・レベルおよびデータを表8に提示する。
【表8】
【0062】
得られるデータは、これらの条件下で、最大の加水分解が140°F〜160°Fの範囲内の温度で観察されることを示す。
【0063】
実施例5:澱粉の加水分解ついての温度と時間の効果
実験はアミラーゼを用いた澱粉加水分解の程度に対する温度と時間の効果を決定するために行われた。使われるモデルは、配合1(実施例1)およびアミラーゼとしてBAN480Lα−アミラーゼを含む。
【0064】
配合1の組成物の異なるバッチを、実施例1に記載されているように調製した。この実験では、100°Fでの最初の混合の後、BAN480Lα−アミラーゼを、組成物の0.001%のレベルで加え、配合1の個々のバッチの各々の温度を示された温度(即ち、120°F、150°Fおよび180°F)に上げた。サンプルは、示された温度が(「時間0」)、その後30分と60分に達した時点で取り出した。コントロール試料は、実施例1と同様に調製され、170°Fに加熱された。すべてのサンプルは缶に分配されて、実施例1と同様にシールされ殺菌された。加水分解の範囲は残っている澱粉のレベルで表示し、観察される総シュガー・レベルおよびデータを表9に提示する。
【表9】
【0065】
上記のデータは、澱粉の最適消化が150°Fで0〜60分の範囲でこれらの条件の下で観察されることを示す。
【0066】
実施例6:硬化後と冷凍/解凍サイクル後のペット・フード組成物の分析
配合1の組成物は、実施例1に記載されているように、調製された。穀物混合物、肉混合物および液体を結合してブレンドして均質材料を提供し、100°F〜110°Fに加熱し、次いで水溶液としてアミラーゼを各サンプルに添加して、意図された最終的な酵素濃度(即ち、0.001%、0.005%、0.010%、0.050%および0.100%のBAN480Lα−アミラーゼ濃度)を提供した。添加アミラーゼのないコントロールブレンドを含むブレンドの各々を170°F−175°Fの温度で調理した。調理後、混合物をポンプによって缶ライン・シーマ―/フィラーにポンプ圧送し、12オンスの缶に分配し、次いで250°Fで73分間レトルトした。
【0067】
製品を2週間硬化した後に、サンプルの各々のテクスチャーを、TA−XT2アナライザー(テクスチャー・テクノロジーズ・コーポレーション、スカースデール、ニューヨーク)で、一般にメーカーの指示に従って測定した。
【0068】
硬化組成物の別のサンプルを、3回の凍結/解凍サイクルにかけ、澱粉老化を誘発した。このように処理されるサンプルのテクスチャーをまた上記のように再び分析した。コントロール・サンプルはこれらの処理後乾いてもろくなり、より硬いテクスチャーを示した。得られるデータは、表10に提示される。
【表10】
【0069】
表10のデータはα−ミラーゼの添加がコントロール・サンプルと比較してソフト・テキスチャーのペット・フード組成物を提供したことを示す。なぜならば、後のサンプルが組成物の構造に侵入するためにより大きな量の力に要求したからである。
【0070】
実施例7:消化率の検討
消化率の検討は標準的な手順によって0.01%、0.05%または0.10%のBAN480Lで消化された配合1の組成物(実施例1)を使って行った。6匹の犬に14日間本発明の食餌を与え、糞便を14日通して11日回収した。食餌および糞便の両方について、タンパク質、脂肪、繊維、灰分、窒素フリー抽出物(「NFE」)およびエネルギーについて分析した。データは与えられる食餌と比較して回収された材料のパーセンテージとして表示され、表11に提示される。
【表11】
【0071】
表11のデータは、本発明のソフト・テキスチャー・ペット・フード組成物が未処置コントロールに実質的に等しい消化率特性を示すことを示す。
【0072】
実施例8:糞検討
糞検討は配合1(実施例1)のペット・フード組成物で0.01%、0.05%および0.10%のBAN480Lをアミラーゼとして用いて実施例1と同様に行われた澱粉消化の有、無(コントロール)を比較して行った。糞検討は各々の配合のメンテナンス・レベルを与えた10匹の動物で行った。糞は、1〜5のスケールで記録され、3以上の値で良好である。得られがデータは、図10および表12に示される。
【表12】
【0073】
表12のデータは、動物に本発明のソフト・テキスチャーのペット・フード組成物を与えても、コントロール組成物を与えられた動物の糞と比較して同等の糞が得られたことを示す。
【0074】
本明細書中に用いられる範囲は、範囲の中の各値およびすべての値を記載することの短縮形として用いられる。範囲の中のいかなる値も、範囲の終点として選ばれることができる。また、この中のすべての引用文献は、参考として全体が本明細書に導入される。本明細書の定義と引用文献のそれとが矛盾する場合は、本明細書の記載が優先する。
【0075】
特に明記しない限り、本明細書のいずれかの場所でまたは本明細書に記載される%および量は、重量パーセントに関するものと理解されなければならない。与えられる量は、材料の実際の重さに基づいている。