(54)【発明の名称】複合高分子ポリヒドロキシ酸(CPPA)と陽イオン種との混合物を含む組成物を、植物、又はその植生場所と接触させる方法、組成物、粒剤、及び種子コーティング
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複合高分子ポリヒドロキシ酸が、濃縮した炭化水素、リグニン、並びにタンニン及び/又は濃縮タンニンの混合物を含み、タンニン及び/又は濃縮タンニンが全組成のうち少なくとも10%を占めていることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
前記複合高分子ポリヒドロキシ酸が、濃縮した炭化水素、リグニン、並びにタンニン及び/又は濃縮タンニンの混合物を含み、タンニン及び/又は濃縮タンニンが全組成のうち少なくとも20%を占めていることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
前記生物学的作用の有益な効果が、植物1株当たりの葉数、植物の総重量、根/芽の重量、葉コンダクタンス、及び収穫高のうち1つ以上の改善である、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の方法。
前記遷移金属陽イオン又はアルカリ(土類)金属塩が、第一鉄/第二鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、モリブデンイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、及びナトリウムイオンのうち1種又は複数種であり、
前記遷移金属陽イオンは、第一鉄/第二鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、マグネシウムイオン、及び亜鉛イオンのうち少なくとも1種である、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の方法。
前記遷移金属陽イオンが、第一鉄/第二鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、マグネシウムイオン、モリブデンイオン、及び亜鉛イオンのうち少なくとも1種である、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の方法。
前記混合物は、細胞内輸送及び/又は細胞間輸送、金属酸化還元化学、金属キレート化、細胞外酸性化、金属同化経路、木部への金属負荷、葉の老化に先立つ金属イオンの回復、並びに細胞内分布及び/又は金属イオンの貯蔵を促進する、のうち少なくともいずれか1をもたらす、請求項8に記載の方法。
前記複合高分子ポリヒドロキシ酸が、濃縮した炭化水素、リグニン、並びにタンニン及び/又は濃縮タンニンの混合物を含み、タンニン及び/又は濃縮タンニンが全組成のうち少なくとも10%を占めていることを特徴とする、請求項14〜16のうちいずれか1項に記載の組成物。
前記複合高分子ポリヒドロキシ酸が、濃縮した炭化水素、リグニン、並びにタンニン及び/又は濃縮タンニンの混合物を含み、タンニン及び/又は濃縮タンニンが全組成のうち少なくとも20%を占めていることを特徴とする、請求項14〜16のうちいずれか1項に記載の組成物。
前記混合物における全有機炭素(TOC)に対する金属塩の重量比が0.1〜0.5であり、或いは、TOCに対するアルカリ(土類)金属塩の重量比が1.0〜10.0である、請求項14〜18のうちいずれか1項に記載の組成物。
少なくとも1つのコーティングを更に含み、前記少なくとも1つのコーティングが、少なくとも部分的に前記粒剤を取り囲み、第1のコーティングは前記混合物を含む、請求項20に記載の粒剤。
少なくとも部分的に前記第1のコーティングを取り囲む第2のコーティングを更に含み、前記第1のコーティングと前記第2のコーティングのうち、一方に、前記複合高分子ポリヒドロキシ酸が含有されており、もう一方に、植物有害量の1種又は複数種のアルカリ(土類)金属塩、及び/又は、相乗量の、農学的に許容可能な遷移金属イオンの少なくとも1種のイオン源が含有されている、請求項21に記載の粒剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
温室実験、又は野外実験により、CPPA(CAS番号1175006−56−0)、つまり、有機物から得たアルカリ性の抽出物である複合高分子ポリヒドロキシ酸は、植物の成長と発育を促進して、収穫高を増加させることが立証されている。生理学研究によると、CPPAは、植物内での栄養素の有効性と流動性の改善を提供することを示唆されている。更にCPPAは、植物ホルモンの合成又は有効性を増加させ、及び/又は、植物ホルモンの一部に反応して相乗作用をもたらす。分子レベルで、植物成長/生育作用は、遺伝子、遺伝子発現、CPPAとの接触に影響される作用により、制御及び/又は影響を受けることになる。植物成長、生育、ストレス耐性、及び/又は耐病性と関連性を持つ関連遺伝子の発現の始動又は変更を介して、CPPAが作用するものと思われる。
【0011】
CPPAに農学的非有効量の遷移金属塩を加えた混合物は、植物において少なくとも1つの生物学的作用の相乗効果をもたらすことがわかった。更に、CPPAと植物有害量のアルカリ(土類)金属塩とを含む混合物は、意外にも、植物において少なくとも1つの生物学的作用の相乗効果をもたらす。植物の生物学的作用のこのような改善により、農学的(agriculture)生産及び/または農学的(agronomical)生産を向上させることができる。
【0012】
本明細書における用語「農学的に許容可能な」という表現は、該表現が適用される物質又は組成物が、植物又はその環境に対して許容できないほどのダメージ又は有害性を持たず、及び/又は、本明細書に記載されたように使用する際に該物質に露出される使用者などに対して安全であることを意味する。
【0013】
本明細書における語句「遷移金属陽イオンの農学的に許容可能なイオン源」という表現は、一般的に、植物又はその環境に対して許容できないほどのダメージ又は有害性を持たない遷移金属陽イオンを生成する水溶性遷移金属塩を指すものである。具体的には、当該表現は、酵素機能、タンパク質構造/機能、及び/又は細胞機能に関連するか、若しくはそれらに必要である、遷移金属陽イオンのイオン源を提供する遷移金属塩を網羅する。当該塩には亜鉛、鉄、マンガン、銅、ニッケル、モリブデンの水溶性塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。このような遷移金属陽イオンの農学的に許容可能なイオン源は、植物の必須栄養素、例えば微量栄養素に当たる金属イオンのイオン源を提供する遷移金属塩を網羅する。
【0014】
本明細書における語句「アルカリ(土類)金属」という表現は、アルカリ金属の塩、及び/又はアルカリ土類金属の塩を網羅する表現である。
【0015】
本明細書における語句「生物学的作用の効果(biological effect、生物学的効能)」という表現は、一般的に、流動(例えば酸化還元化学によるもの)、キレート化、細胞外酸性化、金属同化経路、根芽間輸送を目的とする木部への金属負荷、葉の老化に先立つ金属イオンの回復、並びに細胞内分布及び/又は金属イオンの貯蔵を含む、細胞内輸送及び/又は細胞間輸送を促進する、金属輸送、金属輸送体及び作用と関連性を持つ植物作用を含む。改善された「生物学的作用の効果(生物学的効能)」は、例えば、植物作用の効率を高めることによって、植物の健康/活力、収穫高、生存力、繁殖力などに、通常の状況では起こり得ない利益、つまり発芽及び毛状体の向上、根及び根毛の成長の強化、植物における栄養摂取と栄養移動の増加、非生物的ストレスの緩和、作物品質の向上、クロロフィル密度の増加、(マメ科における)根粒形成及び窒素固定の増加、収穫高の増加などをもたらすことを指す。
【0016】
本明細書における用語「葉面」という表現は、葉の表面、並びに活性成分を吸収できる表面を有する植物の他の緑色部位、例えば葉柄、托葉、茎、苞葉、つぼみなどを含む。本発明において、「葉面」は、上述した緑色部位の表面を含むものと理解するものとする。
【0017】
本明細書における用語「粒」及び語句「粒剤(granular form)」という表現は、粒剤、微粒子物質、ビーズ、及びそれらの組み合わせを指す。例えば、粒剤は農業環境で通常的に用いられる分配装置に適合する。粒剤は、農業環境又は農業設備に相応するならば、形状と寸法はいずれであってもよい。
【0018】
本明細書における用語「植生場所(locus)」という表現は、葉面を含む一方、植物の場所、若しくは、複数の種子が播種(sow)された場所の近傍場所も含む。
【0019】
本明細書における語句「農学的非有効量」という表現は、単独では植物の生物学的作用、特に限定するものではないが、例えば酵素機能、タンパク質構造/機能、及び/又は細胞機能などと関連する又は必要とする作用に、事実上、何の影響ももたらさない量を指すものである。当該表現は、農業に従来用いられてきたレベルより少なくとも1桁小さい量を含む。例えば、市販の鉄(Fe)の微量栄養素組成物は、重量%(wt/wt%)を基準として、通常約5%の鉄を含有する。約10.7ポンド/ガロンの嵩重量は、約0.535ポンドの鉄を含有することになり、施肥量が約1クオート/エーカーである場合、1エーカー当たり鉄の含量は約0.134ポンドになる(若しくは0.294ポンド/ヘクタール、つまり133グラム/ヘクタール(g/ha)になる)。それに対して、鉄の「農学的非有効量」は、約100mg−Fe/ha(つまり1ヘクタール当たりの鉄の含量が100ミリグラム)から500mg−Fe/haとなり、これは、農業に通常用いられる量より2〜3桁小さい量である。
【0020】
本明細書における語句「植物有害量(phytotoxic amount)」とは、一般的に、毒性又は毒素の作用、速度、持続時間又は最終状態に関わらず、植物に対して有毒性を持つ物質又は組成物の量を指す。例えば、塩水(例えば海水、又は半塩水など)は、他の成分中の、塩化ナトリウムなどの、1種又は複数種の溶解したアルカリ(土類)金属塩を植物有害量ほど含有している。
【0021】
本明細書における「種子処理」のいう表現は、一般的に、少なくとも1種の活性成分を含有する化合物又は組成物を種子と接触させることに関する。化合物又は組成物の形態は、種子に相応すれば何でも良く、例えば、液体、ゲル、乳液、懸濁液、分散液、噴霧液、粉末などである。種子処理は、種子コーティング及び種子粉衣(dressing)を含む。好ましい実施形態において、活性成分はCPPAである。他の好ましい実施形態において、活性成分はCPPAに用いられる金属イオンのイオン源であり、種子の生物学的作用を反転及び/又は改善する。
【0022】
本明細書における「種子コーティング」又は「種子粉衣」という表現は、一般的に、種子の少なくとも一部に形成されているコーティング又はマトリックスを指す。該コーティング又はマトリックスは、少なくとも1種の活性成分を含む。任意の化合物又は化学物質を種子コーティングに含ませ、種子コーティングの作用、又は少なくとも1種の活性成分のコーティングからの崩解/放出を促進し、或いは、埃を防止し、又は、種子に色を付けてもよい。
【0023】
本明細書における用語「種子」という表現は、特定の種子に限定されず、単一の植物種、或いは複数の植物種の混合物であっても良く、同種の様々な株から採取した種子のブレンドであってもよい。本発明が開示する組成物を用いて、裸子植物の種子、双子葉被子植物の種子、及び単子葉被子植物の種子を処理することができる。
【0024】
本明細書における「相乗」又は「相乗的」という表現は、一般的に、個別的に効果を得た時の総合よりも期待される結果が大きい場合(例えば、少なくとも2つの成分を組み合わせた時の効果が、個々の成分の効果に比べて大きい場合)、或いは、効果の低減が期待されていた時に組み合わせが付加的な効果を見せた場合を指す。従って、例えば、植物有害の物質とCPPAの混合物は、植物の生物学的作用に対する効果が低減することが期待されるが、実際は、植物の生物学的作用に対して改善された効果をもたらす相乗的混合物となる。農学的に非許容な量の微量栄養素とCPPAの組み合わせが、微量栄養素とCPPAの何れかよりも大きい生物学的活性の改善効果を植物に対してもたらす場合、「相乗的」な組み合わせとなる。相乗効果をもたらす成分の含量は、一般的に「相乗量(synergistic amount)」と呼ばれる。
【0025】
本明細書が開示する組成物は、天然に豊富にある有機物質源から分離し抽出した有機分子を水溶液に入れた混合物を含む。該天然の有機物質は、主として、土壌環境で時間をかけて様々な程度に変わってきた植物原料に由来したものである。一部の植物原料は、近年、環境に沈着(deposite)している。天然の有機物質の少なくとも一部は、部分的な腐植作用を介して、部分的に腐植した天然有機物質となる。腐植化は、微生物、菌類、及び/又は環境の悪化(熱、圧力、直射日光、電光、火気など)及び/又は天然有機物質の酸化を含む。最も好ましくは、組成物は、実質的に腐植化しない天然有機物質(部分的に腐植した天然有機物質)を含む。一様態において、天然有機物質は、通常、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppm、55ppm、60ppm、65ppm、70ppm、75ppm、80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、100ppm、若しくは最大500ppmの溶解性有機物(DOM)を含有又は提供する環境から得られる。他の様態において、天然有機物質は、約500ppm、1000ppm、1500ppm、2000ppm、2500ppm、3000ppm、又はそれ以上のDOMを含有又は提供する環境から得ることができる。
【0026】
天然有機物質は、原料と当該原料の周りの環境条件によって、一般的に数千の化合物が存在するため、非常に複雑なものになっている。本発明が開示する組成物と該組成物を用いる方法は、溶解性有機物を含有しており、当該有機物質は、微生物的、菌類的、及び/又は環境的(熱、圧力、直射日光、電光、火気など)分解作用などの、上述した腐植化の途中に形成される。他の天然有機物、又は合成有機物質の分解作用を用いることもできる。一様態において、組成物は、実質的に腐植化しない天然有機物質(例えば、部分的に腐植した天然有機物質)を主に含有する、高分子ポリヒドロキシ酸の複合混合物(以下、「CPPA」という)に該当する。腐植量は、既知の方法、例えば完全腐植した天然有機物質の対照群、つまり国際腐植物質学会(IHSS)の標準腐植物質(humic substance standard)のレオナルダイト腐植酸(LHA、Leonardite Humic Acid)、パホキーピート腐植酸(PPHA、Pahokee Peat Humic Acid)、スワニーリバーフルボ酸II(SRFA、Suwannee River Fulvic AcidII)を用いる13CーNMRにより判定及び評価することができる。
【0027】
一様態において、原料源に相対した、約10X、25X、50X、100X、200X、300X、400X、500X、600X、700X、800X、900X、1000X、1500X、2000X、2500X、3000X、3500X、4000X、4500X、又は5000X(Xは倍率(times)に当該する)の溶解性有機物(DOM)濃度レベルを有するCPPA組成物を得るために、原料源から天然有機物質を取り除き、必要に応じて処理し及び/又は濃縮して、CPPAを得る。他の様態において、溶解性有機物(DOM)濃度レベルのCPPA濃度は、約7500X,10000X、15000X、20000X,25000X、最大50000Xである。DOMの濃度が約10ppm〜約700000ppmになるように、CPPA組成物を調整してもよい。好ましくは、DOMの濃度が約1000ppm〜約500000ppmになるように、CPPA組成物を調整する。CPPA組成物は、水溶液において、1000ppmと50000ppmの間であり、500ppm単位で増加する(例えば10500ppm、11000ppm、11500ppm、12000ppmなど)、ppm値で表されるDOM値に調整してもよい。他のDOM濃度、例えば、約75000ppm〜約750000ppmの超高濃縮組成物を用いてもよい。例えば、原料源が約30000Xの濃度ならば、約550000ppmのDOMを含有してもよい。特定の様態において、CPPA組成物はおおよそ約91%〜約99%が水であり、残りの有機物質は主にDOMで、少量のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩を含有する。また、他の様態において、CPPA組成物のDOMは、水溶液による再構築に適する形態で乾燥又は凍結乾燥されている。上述したプロセスに先立って、若しくはそれに続いて、金属イオンの一部(或いはほぼ全部)をCPPAから取り除き、NOM、DOM、或いはNOM又はDOMの全有機炭素(TOC)の何れかに対する金属イオンの所定量又は比率を調整することができるCPPA生成物を用意する。上述したプロセスに先立って、若しくはそれに続いて、CPPAに追加の金属イオンを加え、NOM、DOM、或いは全有機炭素(TOC)の何れかに対する金属イオンの所定量又は比率を調整することができるCPPA生成物を用意する。
【0028】
CPPAは、物質の複合混合物、典型的には、単一の構造式では十分でない化合物の不均一な混合物を含む。化学的及び生物学的試験によると、CPPAは、腐植酸及びフルボ酸に比べて、植物に対する生物学的効能と化学組成の両方において、特有の組成を有している。CPPA物質の元素評価及び分光学的同定は、以下に述べるように、CPPAを、腐植系(humic−based)有機複合物質、例えば腐植酸及びフルボ酸から識別する。CPPA組成物をブレンドし、物質の一貫性(consistency)を得て、天然由来の物質の通常のバリエーションを相殺(compensate)してもよい。
【0029】
フルボ酸(CAS番号479−66−3)、腐植酸(CAS番号1415−93−6)などの腐植物質は、天然有機物質に由来した有機複合物質の対照例であるが、詳細を後述するように、CPPAは、化学的及び生物学的にフルボ酸及び腐植酸とかけ離れている。フルボ酸、腐植酸などの腐植物質は、元来から大量の金属イオンを含有しておらず、処理しても同じく金属イオンを含まないのが一般的である。一部の様態において、フルボ酸、腐植酸などの腐植物質は、本願において開示されている組成物に対する対照群として有用である。
【0030】
[評価方法]
CPPAを構成する有機化合物は、多様な方式で評価することができる(例えば、分子量、官能基間の炭素分布度、相対的な元素組成、アミノ酸含量、炭水化物含量などに基づいて評価する)。一様態においては、腐植系物質に関する既知の標準と比べてCPPAを評価した。他の様態において、CPPAについて、腐植系物質に関する既知の標準(腐植系物質の標準)に対して機能性を評価した。
【0031】
官能基間の炭素分布度を評価するために、13C−NMR、元素分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FTICR−MS)やフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)などの相応の手法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。CPPAと標準腐植物質の化学的評価は、エレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI−FTICR−MS)、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)、ICP−AESを用いた金属元素分析の手法を利用し、Huffman Laboratories社とワシントン大学で行った。
【0032】
CPPAの元素評価、分子量評価、分光学的同定の結果は、主にリグニン化合物及びタンニン化合物(及び濃縮タンニンと非濃縮タンニンの混合物)、濃縮芳香族化合物、微量の脂質及び無機質からなる有機複合物質と一致する。数千の化合物が存在しており、分子量は225〜700ダルトンの範囲であって、化合物のほとんどは1分子当たり約10〜約39の炭素原子を有する。CPPA組成物は、一般的に炭素、酸素、水素、並びに少量の窒素と硫黄からなる。
【0033】
一様態において、本明細書に開示されているCPPA組成物は、金属イオンの農学的に許容可能なイオン源の相乗量を含む。従って、一様態において、CPPAは、CPPA組成物の溶解性有機炭素(DOC)に対して15重量%(w/w)を超える金属イオン含量を有する組成物である。一様態において、CPPAの金属イオン含量は、DOCの約10重量%〜約28重量%である。他の様態において、金属イオン含量は、CPPA組成物に対する溶解性有機物(DOM)の約5重量%〜約15重量%である。
【0034】
CPPA組成物に通常存在している溶解性固形物の元素組成を、表Aに示す。有機化合物を無機化合物と分離すると、元素の分析結果は、C:55%、H:4%、O:38%、N:1.8%、S:2.2%となる。
【0036】
CPPAに存在する有機化合物群は多いが、一般的には、分析によって、リグニン、タンニン(有機環構造と関連性があるような、濃縮物と非濃縮物の混合物)、濃縮芳香族化合物、未特定の物質と一部の脂質が存在することを明らかにすることができる。一様態において、CPPA組成物は、CPPA組成物に存在する化合物の総重量%の少なくとも10%は、タンニン及び/又は濃縮タンニンであるという特徴を有する。他の様態において、CPPA組成物は、CPPA組成物に存在する化合物の総重量%の少なくとも15%は、タンニン及び/又は濃縮タンニンであるという特徴を有する。他の様態において、CPPA組成物は、CPPA組成物に存在する化合物の総重量%の少なくとも20%は、タンニン及び/又は濃縮タンニンであるという特徴を有する。化合物群のそれぞれは、かなり狭い分子量範囲や炭素/分子の数値によって特徴を更に有する。CPPAの代表試料(基本的に金属イオンの有無にかかわらず)に対する、各化合物群の平均値と百分率、分子量及び、炭素原子/分子(炭素範囲)の分析結果を表B1に示す。
【0038】
組成物における、生成物の3つのバッチ(基本的に金属イオンの有無にかかわらず)の平均値に基づく第2の代表的な試料に対する、各化合物群の平均数値と百分率、分子量及び、炭素原子/分子(炭素範囲)の分析結果を表B2に示す。
【0040】
表Cは、上記の化合物群の定義に用いた酸素対炭素比(O/C)と水素対炭素比(H/C)をまとめたものである。一様態において、CPPA組成物は、質量分析を行った結果、CPPA組成物に存在する溶解性有機物のO/C比が約0.4を超えるという特徴と有する。他の様態において、CPPA組成物は、質量分析を行った結果、CPPA組成物に存在する溶解性有機物のH/C比が約0.8を超えるという特徴と有する。CPPA組成物は、質量分析を行った結果、CPPA組成物に存在する溶解性有機物のH/C比が約0.85を超えるという特徴と有する。
【0042】
[CPPAの製造、及び標準腐植物質との比較]
元素評価及び構造評価に基づき、腐植物質とCPPAの比較を行った。国際腐植物質学会の標準腐植物質3種、つまりLHA(Leonardite Humic Acid)、PPHA(Pahokee Peat Humic Acid)、SRFA(Suwannee River Fulvic AcidII)を用いた。各標準腐植物質と各CPPA試料を、FTIR及びESI−FTICR−MSにより分析した。各標準腐植物質の一部を水/メタノールに溶解し、イオン化の促進のためにアンモニウムイオンを加え、ESI−FTICR−MS分析を行うものとした。CPPAの試料3種(CP#60、CPPA#75、CPPA#99)を分析用に用意し、陽イオン交換樹脂(AG MP−50、Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)によって分析を妨害する可能性のある金属を取り除く。標準腐植物質と組成物の各試料の比較結果を、表Dにまとめる。
【0044】
表Dは、標準腐植物質とCPPA試料の間に大きな相違点があることを示している。例えば、O/C比については、腐植物質は全て0.4未満であるが、CPPA試料は全て0.5以上である。CPPA試料のDBEは、標準腐植酸に比べて著しく低く、それに反して平均分子量は大きい。
【0045】
質量分析によると、CPPA試料に存在している化合物の数は、標準腐植物質には実質的に含有していないか、著しく低減していることが分かる。具体的には、CPPAにおける少なくとも1つの成分は、1種又は複数種のタンニン化合物と対応している。これに対して、標準腐植物質におけるタンニン化合物の含有比(%)は少量しか含有されていない。例えば、標準フルボ酸及び標準腐植酸は、両方とも、表Eに示されているように、CPPA試料におけるタンニンの含有比(%)より少なくとも1/3〜1/4のタンニンの含有比(%)しか含有していない、つまり、CPPA試料のタンニンの含有比(%)より少なくとも3〜4倍少ない。
【0047】
IHSS標準物質とCPPA試料に対してフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を行って比較したところ、主に1600〜1800cm
−1の領域に類似点があった。両方の試料とも、カルボニル官能基からのC=O伸縮による1700cm
−1周辺の非常に強いピークを有し、更には、アルケン又は芳香族化合物からのC=C結合と一致する1590〜1630cm
−1の領域にピークが存在した。しかしながら、700〜1450cm
−1の領域には、著しい相違点が現れている。1160〜1210cm
−1のピークは、全てのスペクトルに存在し、アルコール、エーテル、エステル、酸のC−O結合に由来する。最大の相違点は870cm
−1のピークで、これはCPPA試料には存在するが、IHSS標準物質には存在していない。該ピークは、アルケン及び芳香族化合物、或いはメトキシ群のC−H結合によるものと思われる。
【0048】
化学的評価、元素評価、構造評価において、CPPAは、腐植酸、フルボ酸、或いはその組み合わせと、化学的及び生物学的にかけ離れている。更に、植物生態に対するCPPAの生物学的活性、遺伝子制御及び全ての作用の性質と範囲の結果から、CPPAは、ストレス耐性活性及び遺伝子制御性質が質と量の両方において一般的に欠けている、従来の腐植酸及び/又はフルボ酸の組成物及び処理手法の結果とかけ離れている。CPPAは、その他にも、CPPAから得た処理手法及び/又は遺伝子制御方法によって、農業産業において更なる有益な属性を発現することができる。
【0049】
評価データによると、CPPAは、約300〜約18000ダルトン以上の分子量分布を持つ、相対的に小さい分子或いは超分子組織体を含有している。有機分子の混合物が分割される有機物質は、様々な腐植物質、有機酸、微生物滲出液などを含む。該混合物は、脂肪族と芳香族の特性を両方とも有する。実例として、炭素分布度は、カルボニル基及びカルボキシル基では約30〜35%、芳香族基では約30%、脂肪族基では約18〜22%、アセタール基では約7%、他の複素脂肪族基では約12%である。
【0050】
一部の実施形態において、CPPAにおける化合物の混合物は、約200〜約30000ダルトン、例えば約200〜約25000ダルトン、約200〜約20000ダルトン、或いは約200〜約18000ダルトンの分子量分布を有する、有機分子若しくは超分子組織体を含む。
【0051】
官能基間の炭素分布度を評価するために、13C−NMR、元素分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FTICR−MS)やフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)など、相応の手法を用いるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
一様態において、カルボキシ基とカルボニル基はともに、CPPAの有機化合物の混合物において、炭素原子の約25%〜約40%、例えば約30%〜約37%、実例として約35%の割合を占める。
【0053】
他の様態において、芳香族基は、CPPAの有機化合物の混合物において、炭素原子の約20%〜約45%、例えば約25%〜約40%、或いは約27%〜約35%、実例として約30%の割合を占める。
【0054】
他の様態において、脂肪族基は、CPPAの有機化合物の混合物において、炭素原子の約10%〜約30%、例えば約13%〜約26%、或いは約15%〜約22%、実例として約18%の割合を占める。
【0055】
他の様態において、アセタール基及び他の複素脂肪族基は、CPPAの有機化合物の混合物において、炭素原子の約10%〜約30%、例えば約13%〜約26%、或いは約15%〜約22%、実例として約19%の割合を占める。
【0056】
他の様態において、CPPAにおける芳香族炭素と脂肪族炭素の比は、約2:3〜約4:1、例えば約1:1〜約3:1、或いは約3:2〜約2:1である。
【0057】
具体的な例示の様態において、CPPAの有機化合物の混合物における炭素分布度は、カルボキシ基及びカルボニル基では約35%、芳香族基では約30%、脂肪族基では約18%、アセタール基では約7%、他の複素脂肪族基では約12%である。
【0058】
CPPAの有機化合物における元素組成は独立して、一連の実施形態において、以下のようになり、単位は重量%である。すなわち、炭素は約50%〜約60%、実例として約55%、水素は約3%〜約5%、実例として約4%、酸素は約20%〜約30%、実例として約25%、窒素は約0.5%〜約3%、実例として約1.3%、硫黄は約0.2%〜約4%、実例として約2%である。
【0059】
様々な様態において、CPPAに存在できる有機化合物群は、アミノ酸、炭水化物(単糖類、二糖類、多糖類)、糖アルコール、カルボニル化合物、ポリアミン、脂質、これらの組み合わせである。これらの特定の化合物は、典型的に少量、例えば化合物の総重量%に対して5%未満で存在する。CPPAに存在し得るアミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、セリン、トレオニン、チロシン、バリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。CPPAに存在し得る単糖類及び二糖類として、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、リボース、キシロースなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
化学的評価、元素評価、構造評価によると、CPPAは、腐植酸、フルボ酸、或いはその組み合わせと、化学的及び生物学的にかけ離れている。更に、植物/種子の生物学的阻害や遺伝子制御の性質と範囲の結果から、CPPAは、そういう活性及び性質が質と量の両方において一般的に欠けている、従来の腐植酸及び/又はフルボ酸の組成物とかけ離れている。CPPAは、その他にも、CPPAから得た処理手法及び/又は遺伝子制御方法によって、農業産業において植物機能に対する有益な属性を更に発現することができる。
【0061】
有機化合物の混合物に適したものとしては、例えば、Floratine Biosciences社(FBS)がCARBON BOOST(登録商標)−S土壌溶液及びKAFE(登録商標)−F葉面溶液として市販している製品に含まれる成分の1つなどが挙げられる。これらの製品に関する詳細情報については、www.fbsciences.comで参照することができる。従って、本明細書に開示されている態様の例示的な組成物は、CARBON BOOST(登録商標)−S土壌溶液或いはKAFE(登録商標)−F葉面溶液に含有されている金属イオンのほぼ全部を、例えばイオン交換媒体及び/又はHPLCを用い、所定量の水溶性遷移金属塩を添加する方法を用いて、除去することによって得ることができる。一様態において、活性成分は、CAS番号1175006−56−0の物質形態(form)であり、これは、本明細書に開示されている方法及び組成物に適した、代表のCPPAに相当する。
【0062】
生物学的効能及び/又は遺伝子制御を与えるために組成物に存在すべきCPPAの含量は、用いられる特定の有機混合物、及び/又は植物/土壌/種子に左右される。当該含量は、例えば組成物における混合物の可溶限度を超過したり、溶液から他の必須成分を抽出したりして、組成物に物理的な非安定性を引き起こすほど多すぎてはならない。一方、当該含量が少なすぎると、対象の植物種や植生場所に添加されたとき、生物学的効能や遺伝子制御機能を与えることができなくなってしまう。特定の有機混合物に対して、当業者は、製剤安定性と生物学的効率に関する定期テストを行い、本開示における特定の用途に対して組成物における有機混合物の含量を最適化することができる。
【0063】
必要に応じて、CPPAを含む組成物に追加の成分が存在してもよい。例えば、組成物は、第2の成分を更に含んでもよい。該第2の成分は、植物栄養素の農学的に許容可能な栄養源の少なくとも1種であってもよい。該第2の成分は、また、農薬であってもよい。本明細書における「農薬」という表現は、少なくとも1種の除草剤、殺虫剤、防カビ剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、抗線虫剤、或いはこれらの組み合わせに関する。
【0064】
本明細書における、CPPA組成物を用いて植物に対して1つ以上の生物学的効能(生物学的作用の効果)をもたらす方法について、更に開示する。該組成物を、単一の植物/種子(例えば室内用鉢植え植物や園芸植物)、或いは、一定の領域を占めている植物集団に散布(apply)する。一部の実施形態において、該組成物を農作物又は園芸作物、特に食用作物に散布する。本明細書における「食用作物」とは、主に食用として栽培される作物を指す。本発明における方法は、田畑と、例えば温室などの保護栽培環境の両方に適用することができる。
【0065】
本方法は、穀物などのイネ科作物(牧草に属する)、例えばトウモロコシ、小麦、大麦、オート麦、米などに有用である一方、イネ科ではない作物、例えば野菜作物、果物作物、大豆などの広葉畑作作物、種子作物、或いは種子生産を目的に栽培される作物などにも有用である。本明細書における「果物」及び「野菜」は、厳密な植物の概念に限られるものではなく、農業面と料理面の概念を全て網羅するものであり、よって、トマト、キュウリ、ズッキーニなどは、植物学的に言えば果実の部分の消費対象ではあるが、本願においては野菜として見なされる。
【0066】
本方法を有用に適用できる野菜作物としては、
アマランス、ビートの若葉、ビターリーフ、青梗菜、芽キャベツ、キャベツ、キャッツイヤー、セルタス、チョウクゥイー(choukwee)、ツルムラサキ、チコリー、フユアオイ、菊花葉、ノヂシャ、クレス、タンポポ、エンダイブ、アリタソウ、アカザ、シダ、フルートかぼちゃ(fluted pumpkin)、ゴールデンサムファイア、ケノポディウム・ボヌスヘンリクス、アイスプラント、ジャムブ(jambu)、カイラン、ケール、小松菜、バオバブ、ハゼラン、ランドクレス、レタス、アメリカハンゲショウ、メロキア(melokhia)、水菜、からし、ハクサイ、ツルナ、ハマアガサ、エンドウ葉、ポルク(polk)、赤チコリ、ルッコラ、サムファイア、ハマフダンソウ、ハマナ、シエナリオンボロギ(Sierra Leone bologi)、ケイトウ、スイバ、ホウレンソウ、スベリヒユ、フダンソウ、タアサイ、白カブ葉、オランダガラシ、ヨウサイ、冬スベリヒユ、油菜などの葉菜類及びサラダ用野菜類;
ドングリカボチャ、アルメニアキュウリ、アボカド、ピーマン、ゴーヤ、ニホンカボチャ、カイグア、ケープグーズベリー、カイエンペッパー、ハヤトウリ、唐辛子、キュウリ、ナス、アーティチョーク、ヘチマ、クロダネカボチャ、パルワル、パティパンカボチャ、多年生キュウリ、カボチャ、カラスウリ、カボチャ(マロー)、スイートコーン、アマトウガラシ、ティンダ、トマト、トマティーヨ、トウガン、西インドキュウリ、ズッキーニなどの花菜類及び果菜類;
米国ラッカセイ、小豆、黒豆、ササゲ、ひよこ豆、ナンバンサイカチ、フジマメ、ソラマメ、サヤマメ、グアー、インゲンマメ、ホースグラム、インドマメ、金時豆、レンズマメ、ライマメ、モスビーン、リョクトウ、白インゲンマメ、オクラ、エンドウ豆、ラッカセイ、キマメ、うずら豆、ツルアズキ、ベニバナインゲン、大豆、タルイ、テパリービーン、ウラド豆、ハッショウマメ、シカクマメ、ジュウロクササゲなどの豆類(マメ科);
アスパラガス、カルドン、セロリアック、セロリ、ジャンボニンニク、フェンネル、ニンニク、コールラビ、クラット(kurrat)、リーキ、れんこん、ノパル(nopal)、タマネギ、プルシアンアスパラガス、エシャロット、ネギ、ギョウジャニンニクなどの鱗茎菜類及び茎菜類;
アヒパ(ahipa)、アラカチャ、タケノコ、テーブルビート、セイヨウクロタネソウ、ゴボウ、セイヨウオモダカ、ヒナユリ、カンナ、ニンジン、キャッサバイモ、チョロギ、ダイコン、アースナットピー、象蒟蒻、エンセーテ、生姜、ハンブルグパセリ、ホースラディッシュ、キクイモ、ヒカマ、パースニップ、ヒッコリー木の実、ヤマハッカ、イモ、プリーリーカブ、ラディッシュ、ルタバガ、セイヨウゴボウ、フタナミソウ、ムカゴニンジン、サツマイモ、サトイモ、キャベツヤシ、ショクヨウガヤツリ、カブ、ウルーコ、ワサビ、シログワイ、ヤーコン、ヤムイモなどの根菜類及び芋類;
シシウド、アニス、バジリコ、ベルガモット、キャラウェイ、カルダモン、カモミール、チャイブ、シラントロ、コリアンダー、イノンド、ウイキョウ、朝鮮人参、ジャスミン、ラベンダー、レモンバーム、レモンバジル、レモングラス、マジョラム、薄荷、オレガノ、パセリ、ケシ、サフラン、セージ、大茴香、タラゴン、タイム、ターメリック、バニラなどのハーブが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本方法を有用に適用できる果物作物としては、リンゴ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、クロフサスグリ、ブルーベリー、ボイゼンベリー、カンタロープ、チェリー、シトロン、クレメンタイン、クランベリー、ダムソン、ドラゴンフルーツ、イチジク、ブドウ、グレープフルーツ、グリーンゲージ、グーズベリー、グアバ、ハネデューメロン、パラミツ、キーライム、キウイ、キンカン、レモン、ライム、ローガンベリー、竜眼、ビワ、マンダリン、マンゴ、マンゴスチン、メロン、マスクメロン、オレンジ、パパイヤ、モモ、西洋ナシ、柿、パイナップル、オオバコ、プラム、ザボン、ウチワサボテン、マルメロ、ラズベリー、アカフサスグリ、スターフルーツ、イチゴ、タンジェロ、ポンカン、テイベリー、アグリフルーツ、スイカなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本方法を有用に適用できる種子作物、つまり植物種の種子の生産に用いられる特殊作物としては、穀物(例えば大麦、トウモロコシ、キビ、オート麦、米、ライ麦、ソルガム(モロコシ)、小麦)に加え、イネ科ではない種子作物、例えばソバ、綿、亜麻、カラシ、ケシ、菜種(キャノーラを含む)、ベニバナ、ゴマ、ヒマワリなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本方法を有用に適用できるが、上述したカテゴリーに当てはまらない他の作物としては、サトウダイコン、サトウキビ、ホップ、タバコなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
上述した作物は、生物学的効能に対するそれぞれ固有のニーズを有している。当業者ならば、本開示の説明に基づき、必要以上の実験をすることなく、特定の作物に対する本明細書における組成物の更なる最適化を容易に行うことができる。
【0071】
本明細書におけるCPPA組成物を用いて、植物生態に対して生物学的効能をもたらす方法は、種子、植物の葉面、或いは植物又は種子の植生場所に組成物を散布するステップを有する。当該方法は、植物作用における効率の向上により、本明細書における組成物を用いた処理を受けていない植物に比べ、植物の健康/活力、収穫高、生存力、繁殖力などに、通常の状況では起こり得ない利益、つまり発芽の向上、根及び根毛の成長の強化、植物における栄養摂取と栄養移動の増加、非生物的ストレスの緩和、作物品質の向上、クロロフィル密度の増加、(マメ科における)根粒形成及び窒素固定の増加、収穫高の増加などをもたらす。
【0072】
本明細書に記載されている組成物は、種子、葉面、或いは植生場所に液体又は個体を与える従来の手法を用いて散布することができる。一般的には、噴霧による散布が最も便利であるが、必要ならば、注入、回転、ブラシ、ロープウィック、列間の振り掛け(drizzle)、畝間散布(in−furrow)、突き刺し(shank)など、他の方法を用いてもよい。噴霧の場合、散水ノズルと回転ディスク噴霧器を備えた噴霧液滴を生成する既存の噴霧法を用いてもよい。或いは、灌漑(irrigation)システムに組成物を直接導入してもよい。
【0073】
葉面又は植生場所に散布する場合、土壌、或いは植物の葉面又は植生場所に対する組成物の散布率は、乾燥重量で約0.001g/ha〜約100.0g/ha、約0.2g/ha〜約2.0g/ha、約0.3g/ha〜約1.5g/ha、或いは約0.4g/ha〜約1.0g/haとなる。
【0074】
本明細書に開示されている組成物は、種子、植物、或いは植生場所に散布する前に、水を用いて更に希釈及び/又は混合することができる濃縮形態(液体、ゲル、再構成可能な粉体形態)であってもよい。若しくは、直接散布にすぐに使える溶液であってもよい。本明細書に開示されている組成物は、他の肥料溶液及び/又は農薬溶液と組み合わせて用いることができるため、他の溶液と混合することによって希釈及び/又は再構築が可能である。
【0075】
上述した濃縮組成物は、更に、希釈することに適している。植物の葉面に散布する場合、濃縮組成物を水で最大約600倍以上、より典型的には最大約100倍、或いは最大約40倍に希釈する。実例として、濃縮製品は、約60〜約600L/ha、例えば約80〜約400L/ha又は約100〜約200L/haに希釈された後、総散布容積を基準として、約0.1〜約3.0L/ha、例えば約5〜約2.5L/haで散布される。
【0076】
種子処理を目的とする散布の場合、濃縮組成物を水で最大約600倍以上、より典型的には最大約100倍、或いは最大約40倍に希釈する。実例として、濃縮製品は、種子1kgを基準として(種子1kg当たりにつき)、約0.1mg/kg 〜約100mg/kg、例えば約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約0.75mg/kg、約1.0mg/kg、約1.25mg/kg、約1.5mg/kg、約1.75mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.0mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約6.5mg/kg、約7.0mg/kg、約7.5mg/kg、約8.0mg/kg、 約8.5mg/kg、約9.0mg/kg、約9.5mg/kg、約10.0mg/kgで散布してもよい。更に、濃縮製品を約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kgで散布してもよい。
【0077】
濃縮組成物を希釈して得た散布溶液は、本明細書に開示されている組成物及び方法の更なる様態を表すものである。
【0078】
[実験]
[種子コーティング]
図6に示すように、種子コーティング及び/又は種子粉衣は、種子10と種子10を少なくとも部分的に取り囲む第1の層20とを備えている。第1の層20は、種子の生物学的作用に効能をもたらせるように、有効量のCPPAを含む。該CPPAは、播種(種まきした)後の分解を制御するために構成されている高分子又は他のマトリックス内に含有されている。適切な高分子又は他のマトリックスとしては、ヒドロゲル、ミクロゲル、ゾル−ゲルなどが挙げられる。種子のコーティングに用いられる特定の物質及び方法には、例えば、Intellicoat(登録商標)(Landec社、インディアナ州)、ThermoSeed(登録商標)(Incotec、オランダ)、CelPril(登録商標)(Bayer CropScience)、ApronMaxx(登録商標)(Syngenta)、Nacret(登録商標)(Syngenta)などが含まれる。CPPA、NOM、或いは他の活性成分は、前記の高分子又は他のマトリックスに取り込んで用いてもよく、種子に直接付着してもよい。高分子又は他のマトリックスによるコーティングの厚さは、約0.01ミル〜約10ミルである。高分子又は他のマトリックスは、温度、含水量、日光、時間、或いはこれらの組み合わせに応じて活性成分を放出するように設計することができる。高分子又は他のマトリックスは、迅速に溶解又は崩解して活性成分を放出してもよく、徐々に或いは温度、含水量、日光、時間、或いはこれらの組み合わせなどの所定の条件に応じて、活性成分を制御しながら放出してもよい。高分子又は他のマトリックスは、例えばコーティングへの湿気浸透防止や活性成分の保護のために、個別層を有する多層構造であっても良い。本構成において、追加の層は、種子とCPPAの間に位置し、例えば植物の生物学的作用に対するCPPAの効能を増加させるのに十分な農学的に許容可能な遷移金属陽イオンの量、或いはアルカリ(土類)金属塩の植物有害量を有する。第1の層20と追加の中間層は、分解を制御するために構成され、これによって、播種後に生物学的効能を遅れてもたらす。上述した追加の農薬の活性成分は、第1の層20及び/又は中間層にCPPA物質を添加される。CPPA及び/又は金属或いは塩の導入順番は、上述のものと逆であってもよい。
【0079】
図1に示すように、種子コーティング及び/又は種子粉衣は、種子10、種子10を少なくとも部分的に取り囲む第1の層20、並びに第2のコーティング30を備える。第1の層20は、所定の時間、種子発芽を阻害するCPPAの有効量を含む。該CPPAは、播種後の分解を制御するために構成される上述の高分子又は他のマトリックス内に含有されている。本構成において、種子とCPPAの間に、追加の層が位置している。これらの追加の中間層は、分解を制御するために構成され、これによって、播種後に生物学的効能を遅れてもたらす。第2の層30は、第1の層20のCPPAと組み合わせると有益な(或いは相乗的な)生物学的効能をもたらす、金属イオン及び/又は塩の有効量を含む。第2の層30は、播種から所定の時間が経過した後に、分解を制御されるように構成される、高分子又は他のマトリックスを含んでもよい。第1の層20と第2の層30の間に、追加の中間層が位置している。これらの追加の中間層も、分解を制御するように構成され、これによって、播種後、金属イオン及び/又は塩の放出を所定の時間遅らせる。上述した追加の農薬の活性成分を、第1の層20、第2の層30、及び/又は中間層に添加してもよい。コーティングした種子に、更に追加の層、顔料、粉末などを散布又は使用してもよい。その後、コーティングした種子を播種して、種子の生物学的作用を増加させ、及び/又は第1の遅延により生物学的作用を増加又は改善するものとする。
【0080】
[土壌及び/又は植生場所での散布に用いられるコーティングした粒剤]
一様態において、粒剤をCPPAの水溶液又は粉末と接触させ、第1の所定時間には植物の生物学的作用に対して効能をもたらし、第2の所定時間には施肥物質を導入するために用いられる組成物を用意する。一様態において、当該組成物は、CPPAを制御して或いは遅延して放出させる。粒剤は、粘土であってもよく、例えば、モンモリロナイト、アラパルジャイト(allapulgite)、水和アルミノケイ酸塩などの鉱物を含む。モンモリロナイトは、無膨張ベントナイト類の粘土(例えばミシシッピ州のリプリーとイリノイ州のマウンズで生産される)に由来する。モンモリロナイトは、低かさ密度と高吸収率を有し、CPPAの水溶液に対する液体保持容量を高める。酸性白土(Fuller’s earth)とも呼ばれるアタパルジャイトもまた、無膨張ベントナイト類の粘土に由来し、ジョージア州のオックロックニーで生産される。アパタルジャイトは、低かさ密度と高吸収率を有し、CPPAの水溶液に対する液体保持容量を高める。水和アルミノケイ酸塩もまた、低かさ密度と高吸収率を有し、CPPAの水溶液に対する液体保持容量を高める。本明細書に開示されているCPPAと共に用いるのに適した粘土粒剤は、Oil−Dri社(ジョージア州のアルファレッタ)で市販している。粘土粒剤のミクロ細孔構造を調整し、農業に用いられるCPPAの吸収性、及び/又は放出性、及び/又は環境安定性を最適化することができる。
【0081】
図2Aに示すように、粒剤40があり、その粒剤40を第1の層50が少なくとも部分的に取り囲んでいる。
図8は、第1の層50と第2のコーティング60にコーティングされている粒剤の第2様態を示す。第1の層50は、有効量、例えば植物の生物学的作用の阻害を中止又は逆転することができる量の金属イオンを含む。金属イオンは、分解を制御することを目的として設計されている、上述の高分子又は他のマトリックスに含有/浸透されている。用語「層」は、
図2Bで参照されるが、金属イオン又は塩は、粒剤上の物理的な「層」の有無にかかわらず、粒剤に含まれている。第2の層60は、植物の生物学的作用に有益な効能をもたらす有効量のCPPAを含む。CPPAは、分解の制御を目的として設計されている、上述の高分子又は他のマトリックスに含有されている。本構成において、追加の層は、粒剤と金属無含有のCPPA組成物の間に位置する。これらの追加の中間層は、分解を制御し、このことによって、所定の時間、効能の発現を遅らせるように設計されている。本構成において、有益な効能(或いは相乗効果)は、CPPAに対する金属イオンの再導入による生物学的作用の増加又は改善と同時に生じるか、或いは後に伴うことになる。追加の中間層は、第1の層50と第2の層60の間に位置してもよい。これらの追加の中間層も、分解を制御し、このことによって、所定の時間、金属イオン又は塩の放出を遅らせるように設計されている。上述した追加の農薬の活性成分を、第1の層50、第2の層60、及び/又は中間層に添加してもよい。追加の層、顔料、処理助剤、粉末などを更に散布/使用してもよい。CPPA及び/又は金属或いは塩の導入順番は、上述のものと逆であってもよい。
【0082】
特定の粘土粒剤の相対表面pHは、酸性又は塩基性の何れであってもよく、例えば、約3〜約11の範囲内である。粘土粒剤の相対表面pHは、植物又は種子の植生場所に導入した後の、CPPAの放出を制御し、及び/又は、CPPAの有効量の放出を遅延させ、及び/又は、長期間の生体利用効率を改善させるために選択することができる。例えば、相対的に酸性表面の性質を有する粘土粒剤は、通常、相対的に塩基性表面の性質を有する粘土粒剤よりも分解や放出の速度が遅い。相対的に酸性表面pHを持つ粘土粒剤にCPPAを散布すれば、CPPAを直接土壌に散布する時に比べて、有効量のCPPAが遅延して放出される間、効率を損失せずにCPPAの長期間の生体利用効率をもたらすことが可能である。
【0083】
特定の様態において、CPPA、金属及び/又は塩を有し、約4〜約6のpHを有する徐放性粒剤は、播種した種子及び/又は植物の健康、成長率、害虫抵抗性、有効量のCPPAの遅延放出性を改善することができる。他の様態において、CPPAを有し、約9〜約10のpHを有する速放性粘土粒剤と、約4〜約6のpHを有する徐放性粒剤との組み合わせは、播種した種子及び/又は植物の健康、成長率、害虫抵抗性を改善する。酸性/塩基性粒剤の組み合わせは、CPPA、金属及び/又は塩の有効量を基本的に即放出し、所定の時間が経過した後にCPPAの有効量を遅延放出させるために用いられる。
【0084】
一様態において、CPPAは、粘土粒剤及び/又は第1の層50に噴霧された後、乾燥される。他の様態において、第1の層50の有無にかかわらず、粘土粒剤をCPPAと共に転がり回してもよく、流動床を用いてもよい。処理済の粘土粒剤を、植物及び/又は播種した種子の植生場所に振り掛け、植物の生物学的作用を改善することができ得る。
【0085】
他の様態において、粘土粒剤を植物又は播種した種子の植生場所に導入し、CPPAを基本的に同じ植生場所に導入してもよい。それによって、粘土粒剤の少なくとも一部がCPPAと接触し、土壌及び/又は葉にCPPAの有効量が基本的には瞬時放出される。所定の時間が経過した後、植生場所に金属及び/又は塩の有効量が遅延放出され、瞬時放出されたCPPAがもたらした効果を増強する。
【0086】
一様態において、粘土粒剤はCPPAと接触する。該CPPAは、植物又は播種した種子の健康、成長率又はストレス耐性を改善するための後続処理を行う第2の成分と組み合わせられてもよく、或いは連続して接触してもよい。他の様態において、粘土粒剤は、順番にCPPAと或いは少なくとも1つの第2成分と接触して、何れかの成分の効果を最大化するか、成分及び/又は粘土粒剤の相互作用を最小化してもよい。
【0087】
一様態において、CPPAと必要に応じて第2の成分とも接触させた粘土粒剤を、種子と植生場所に基本的に同時に散布する。例えば、種子を播種する時、或いは植物が発芽した後に散布すれば良い。
【0088】
[CPPAを有する、尿素の粒剤]
一様態において、粒剤は尿素を含む。第1のコーティング50の有無にかかわらず、粒剤状尿素をCPPAと接触して、農学的用途に適している、製造の組成物を生成する。一様態において、粒剤は、硫黄コーティングした尿素(SCU)又は高分子コーティングした尿素(PCU又はESN)であり、以下、粒剤状尿素と総称するものとする。
【0089】
硫黄コーティングした尿素(SCU)は、制御放出性窒素肥料であり、NPK分析結果は、通常、約25−0−0〜約38−0−0であり、硫黄は約10〜30%である。SCUは、窒素(例えば尿素)の速放性の形態が早期成長をもたらし、瞬時供給と徐放性の形態が栄養素の供給をより長持ちさせるように設計される。
【0090】
SCUである硫黄コーティングした尿素粒剤は、多様な方法により製造することができる。典型的には、予熱した尿素粒剤を溶融した硫黄を、必要に応じてロウと共に噴霧して製造する。硫黄コーティングの厚さを調整して、取扱、積み込み、発送、ブレンド、包装を最適化し、一度に全ての窒素を早発的に崩解及び放出することを低減することができる。SCU粒剤は、様々な寸法で市販されている。適したSCUとしては、例えば、Nu−Gro Technologies社のSCU(商標)(カナダ、オンタリオ)などが挙げられる。
【0091】
一様態において、CPPAは、第1のコーティング50の有無にかかわらず、SCU粒剤上に噴霧された後、乾燥される。他の様態において、第1の層50の有無にかかわらず、SCU粒剤をCPPAと共に転がり回してもよく、流動床を用いてもよい。処理済のSCU粒剤を植物及び/又は播種した種子の植生場所に振り掛け、それらの健康、成長率又は害虫抵抗性を改善する。他の様態において、SCU粒剤を植物又は播種した種子の植生場所に導入し、CPPAを基本的に同じ植生場所に導入してもよい。それによって、SCU粒剤の少なくとも一部がCPPAと接触し、CPPAの有効量が瞬時に土壌及び/又は葉を処理する。所定の時間が経過した後、植生場所に金属イオン及び/又は塩、或いは他の活性成分の有効量が遅延放出され、瞬時放出されたCPPAがもたらした効果を増強する。
【0092】
尿素を硫黄でコーティングし、CPPAと連続的に接触させることによって、CPPAとの接触による阻害の後、窒素源と硫黄源の放出を制御して、植物又は播種した種子の健康、成長率又はストレス耐性を中止、回復及び/又は改善する。一様態において、CPPAと接触した硫黄コーティングした尿素は、播種した種子又は植物の生物学的作用を瞬時に阻害し、及び/又は散布後、約8週、約9週、約10週、約11週、或いは約12週以上に渡って持続的に施肥を行うものとする。持続期間は、環境によって左右される。
【0093】
一様態において、CPPAは、追加の活性成分と組み合わせられる。該組み合わせは、SCU粒剤と接触し、播種した種子又は植物に処理を施して、健康、成長率、又はストレス耐性を改善する。他の様態において、SCU微粒子は、順番にCPPAと、或いは少なくとも1つの第2の成分と接触して、何れかの成分の効果を最大化するか、成分及び/又はSCU微粒子の相互作用を最小化してもよい。
【0094】
[CPPAで処理された、高分子コーティング尿素]
一様態において、高分子コーティングした尿素(PCU又はESN)粒剤は、CPPAと接触し、制御放出性のCPPAと肥料を組み合わせる。高分子コーティングした尿素(PCU又はESN)は、制御放出性窒素肥料であり、NPK分析結果は、通常、硫黄の無いSCUと類似である。典型的なPCUは、窒素(例えば尿素)の速放性の形態が早期成長をもたらし、瞬時供給と徐放性の形態が栄養素の供給をより長持ちさせるように設計される。金属イオン層50を用いてもよく、金属イオンを、粒剤状尿素をコーティングしている高分子に取り込んでもよい。
【0095】
PCUコーティングした尿素は、多様な方法により製造することができる。典型的には、粒剤状尿素に高分子溶液を噴霧し、乾燥させて製造する。高分子コーティングの厚さを調整して、取扱、積み込み、発送、ブレンド、包装を最適化し、尿素の放出率を変更又は調整することができる。例えば、尿素の放出率は、高分子の化学的性質及び/又は高分子コーティングの厚さを調整して制御できる。高分子コーティングの化学的性質を調整し、温度及び/又は湿気に基づいて尿素の放出を制御することができる。高分子コーティングは、生分解可能であってもよく、尿素放出の途中或いは後に無損傷状態のままでいてもよい。適したPCUとしては、例えば、POLYCON、ESN(商標)Smart Nitrogen(Agrium社、カナダ、カルガリー)などが挙げられる。
【0096】
一様態において、CPPA、及び金属イオン又は塩を含有した層は、PCU粒剤上に噴霧された後、乾燥される。他の様態において、第1の層50を備えるPCU粒剤をCPPAと共に転がり回してもよく、流動床を用いてもよい。CPPAは、第1の層50と高分子の上にコーティングを形成してもよく、高分子コーティングを貫通してもよく、或いは両方とも行っても構わない。一様態において、CPPAは、粒剤状尿素をコーティングする前に、高分子と混合されてもよく、或いは、分散又はブレンドされてもよい。
【0097】
他の様態において、PCU粒剤を植物又は播種した種子の植生場所に導入し、CPPAを基本的に同じ植生場所に導入してもよい。それによって、PCU粒剤の少なくとも一部がCPPAと接触し、CPPAの有効量が瞬時に土壌及び/又は葉を処理する。所定の時間が経過した後、植生場所にCPPA、或いは金属イオン又は塩の有効量が遅延放出される。
【0098】
他の様態において、CPPAは、他の活性成分と組み合わせられる。該組み合わせはPCU粒剤と接触し(或いは、尿素微粒子のコーティングに先立って高分子コーティングと混合され)、播種した種子又は植物に処理を施して、健康、成長率、又はストレス耐性を改善することができ得る。他の様態において、PCU微粒子は、順番にCPPAと、或いは少なくとも1つの第2の成分と接触して、何れかの成分の効果を最大化するか、成分及び/又はPCU微粒子の相互作用を最小化してもよい。
【0099】
CPPAを含有する高分子で尿素を高分子コーティングするか、或いはCPPAに高分子コーティングした尿素を接触させることにより、CPPAとの組み合わせ、窒素源の放出を制御し、植物又は播種した種子の健康、成長率又はストレス耐性を改善する。通常、CPPAと接触させた高分子コーティングした尿素は、植物の生物学的作用を改善し、及び/又はその直後に植物又は播種した種子の健康、成長率又はストレス耐性を改善する。散布後、約8週、約9週、約10週、約11週、或いは約12週以上に渡って効果は続き、持続期間は環境によって左右される。CPPAとの組み合わせで窒素源の持続的な制御された放出は、成長及び病害抵抗性に必須である他の栄養素の摂取を強化させる。CPPAと接触したPCUを含む制御放出性組成物は、散布回数を低減し、及び/又は植物の損傷を防止することができ得る。
【0100】
他の様態において、粒剤状尿素(SCU又はPCU)は、上述した粘土粒剤と組み合わせて用いられる。少なくとも1つの粘土粒剤を、植生場所への散布の最初に或いは散布に続いて、CPPAと接触させることにより、肥料と組み合わせたCPPAと金属イオン又は塩の有効量の放出形態を制御する。粘土粒剤と粒剤状尿素の組み合わせは、基本的に、肥料と組み合わせた、植生場所に対して有効量のCPPAを瞬時に提供し、所定の時間が経過した後、SCU又はPCUの有効量を土壌及び/又は葉に対して遅延放出する。
【0101】
尿素の他の形態は、硫黄又は高分子をコーティングしてもよく、置換(substitute)してもよく、本開示の実施においてSCUと組み合わせてもよい。他の形態には、尿素ホルムアルデヒド(UF)及び/又はメチレン尿素(MU)、例えば、Formolene、FLUF、Nitro 26 CRN、Nitroform、或いはCoRoNの、コーティング或いは未コーティングの粒剤が含まれる。UF及びMUの放出特性は、物質のN−C−N鎖長を調整して制御することができる。尿素における冷水可溶性窒素(CWSN)、冷水不溶性窒素(CWIN)、及び熱水不溶性窒素(HWIN)の形態の様々な種類、若しくはこれらの組み合わせを用いてもよい。イソブチレンジウレア(IBDU)を用いることもできる。様々な処理助剤を用いて、粘土粒剤又は粒剤状尿素とCPPAを接触させるように補助してもよい。該処理助剤は、既知の、ジメチルスホキシド(dimethylsufoxide、DMSO)等の浸透剤、アルコール、油、粘着付与剤、乳化剤、分散剤、接着促進剤、消泡剤などを含む。本明細書に開示されている組成物を製造するプロセスは、通常、成分と粒剤との単純混合を含む。添加の順番は、特に重要ではない。一様態において、粒剤が分配装置を用いて植物又は播種した種子の植生場所を均一に覆うことができるほどの量になるよう、粒剤に対するCPPAの散布量を調整する。粒剤の重量に対する活性成分としてCPPAの量は、当業者によって若しくは本願に定められた例示に従って、必要以上の実験を行うことなく、容易に決めることができる。
【実施例】
【0102】
[方法]
本明細書に記載されている組成物を用いて、土壌及び/又は葉を処理し、植物の生物学的作用を有益に、或いは相乗的に改善する方法について、
図1〜
図2を参照とし、以下に開示する。第1の層50の有無にかかわらず、粒剤(粘土、SCU、PCUなど)を、少なくともCPPA又はNOMを含む、必要に応じて少なくとも1つの第2の成分を含む組成物を用いて処理する(以下、「処理済の粒剤」という)。当該処理済の粒剤は、単一植物(例えば商用作物、室内用鉢植え植物、或いは園芸植物)或いは一定の領域を占めている植物集団に散布してもよく、植物又は播種した種子の植生場所に散布してもよい。処理済の粒剤は、種子が土壌又は他の培地に取り込まれるとき、種子と組み合わせられてもよく、播種後の植生場所や発芽した植物の植生場所に散布してもよい。
【0103】
[実験]
概要:対応の図及び表において、各試料の平均値を表す。同じ文字を付している平均値は、ほぼ類似であり、格別に差はないことを意味する(P=0.05、ダンカンの多重比較検定)。実験において、未処理チェック(UTC)は、水のみで処理したことを指す。用語「約」という表現は、特定の数値を判定する方法又は手法における正常範囲の誤差、例えば実験誤差、装備誤差、或いは平均化などを包括する範囲に相当するものと解釈される。若しくは、「約」は、記載数値の±10%を網羅することを指す。
【0104】
[CPPAと遷移金属塩の組み合わせ]
陽イオン交換樹脂(無金属CP)で処理したCPPAに鉄イオン(例えばFeSO
4)を再添加すると、植物における生物学的反応を著しく改善することができる。一般的に、無鉄のCPAAは、UTCに比べて効果があまりよくない。鉄を添加したとき(例えばFeSO
4)、植物において、UTCと無金属CPPAのものよりも優れた、著しく有益な生物学的反応が生じた。植物の生物学的反応は、一般的に、超過量の鉄を添加したときよりも、(CPPAの量又はそのTOC値に対して)化学量論量の鉄を再添加したときに、よりよく観察されている。
【0105】
CPPAから全ての水溶性の鉄(Fe)を取り除いてしまうと、発芽と根の生長に悪影響を及ぼすことになる。しかしながら、CPPAから鉄を取り除いても、芽の生長はあまり影響を受けないものと見なされる。鉄のみを用いて種子を処理すると、根と芽の生長両方に悪影響を及ぼすことになる。陽イオン交換樹脂を用いて事前に処理したCPPAに鉄を添加して水溶性の鉄をほぼ全て除去すれば、結果として根の生長は、統計誤差を鑑みても、元来の未処理状態のCPPAを用いたときのそれと基本的に同じである。鉄を除去したCPPAにFeSO
4溶液を添加した場合、そのCPPAは、芽の生長に対するFeSO
4のみでの悪影響を相殺しているように見える。以上の観察結果は、CPPAと鉄の組み合わせが植物及び/又は種子における生物学的効能やそれらの相互作用において相乗作用を見せるという前提を裏付けしている。
【0106】
当該実験の目的は、CPPA組成物に水溶性の鉄塩(Fe)が存在している場合としていない場合における植物への生物学的効能、並びにCPPA組成物に超過量の鉄が添加された時における植物への生物学的効能を判定することであった。
【0107】
[実験Fe−1:CPPA/鉄組成物による葉の処理]
本実験の目的は、CPPA組成物に水溶性の鉄塩(Fe)が存在している場合としていない場合における植物への生物学的効能を判定することであった。従って、本実験のために、種子からトマト(Lycopersicon es.)を栽培し、3インチ×3インチの鉢に移した。完全乱塊法を適用して、処理1回当り10株を用い、総じて4回の処理を行った。各鉢には、移植後18日間、葉に溶液を噴霧した。未処理チェック(UTC)の鉢には水のみを噴霧した。CPPA/鉄組成物を用いて、1ヘクタール当りの有機炭素が520mgになる比率で、全てのテスト対象の鉢を処理した。陽イオン交換樹脂(AG MP−50樹脂、Bio−Rad Laboratories、2000 Alfred Nobel Drive、Hercules、CA 94547)を用いてCPPA組成物からまず鉄を取り除いて(無鉄CPPA組成物)試料を用意した。その後、無鉄CPPA組成物に適正量のFeSO
4を再添加し、全有機炭素の約25重量%か、或いは1ヘクタール当り130mgの、鉄を含有する1つのテスト試料(以下、「0.25×Fe」)と、重量百分率を基準として炭素量が5倍か、或いは1ヘクタール当り約2.6gの、鉄を含有する1つのテスト試料(以下、「5×Fe」)の、既知の鉄重量%の2つテスト試料を用意した。散布から14日が経過した時点で、活力、植物1株当たりの葉数、植物の総重量、根の重量、芽の重量について各植物を測定した。データをグラフとして
図3〜
図7に表す。
【0108】
図3を参照すると、植物の活力の結果は、実験1から得たデータに現れている。活力を指す縦軸の目盛りは、5が最高、1が枯れ(dead)を意味する。同様に、
図4は、植物1株当たりの葉数を示す。
図5は、植物の総重量を示す。
図6は、植物における根の重量を示す。
図7は、植物における芽の重量を示す。
図3〜
図7において、各バーの上にある数字は平均値である。
図3〜
図7におけるデータは、CPPAにおける鉄の存在が植物生体に対して影響を及ぼすことを示している。CPPAは、通常、全有機炭素(TOC)1gに対して0.10〜0.28gの鉄を含有している。CPPAに含有している鉄の平均値は、約0.21gであり、これはTOCの約0.25重量%に当該し、0.25×Feの試料のそれと一致する。
図3〜
図7に示す結果を見ると、平均量の鉄を有するCPPAは、処理後、植物に対して有益な生物学的効能を自然的に与える。データによると、超過量の鉄(5×Fe)を添加した場合、一般的に正常量の試料に比べ、生物学的効能は劣るが、無鉄の試料よりは優れた効能を見せることが分かる。更に
図3〜
図7のデータが示すように、無鉄の試料はUTCより生物学的効能がむしろ劣っているが、これは生物学的阻害又は有毒性が原因であると説明することができる。該データから、CPPAと鉄の組み合わせが、植物の生物学的活性、少なくとも活力、植物1株当たりの葉数、植物の総重量、根の重量、芽の重量、つまり植物の1つ以上の生物学的作用に対する直接的又は間接的な指標に影響を与えていることが明確である。CPPAと鉄の組み合わせの効能は、鉄の重量がCPPAの有機炭素重量のおおよそ10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、或いは50%未満である場合に、最適の効率性を示す。
【0109】
[実験Fe−1A]
上記の実験1で報告されたデータは、TOCが520mg/ha(つまり、520mgTOC/ha)である処理にも適用できる。これは、CPPA製品を葉に散布した場合の典型的な散布率である。本実験における残り三つの散布率は、260mgTOC/ha、1040mgTOC/ha、2080mgTOC/haとなる。試料は上記に用いられたものと同じである。
図8A〜
図8Dはこれらの組成物に対するデータを示しており、y軸は植物、根、芽の平均重量(単位はグラム)である。
【0110】
図8A〜
図8Dのデータによると、無鉄の試料は、基本的にはUTCに相当する。TOCの収率の25重量%に当たる量の鉄を添加すると、散布率によらず、例えば植物/根/芽の重量増加という明白な、植物の生物学的機能の著しい改善をもたらす。しかしながら、改善は、260mg/haで停滞状態になり、鉄の散布率が増加するにつれ僅かに減少することになる。260mgTOC/haと520mgTOC/haの散布率において、鉄濃度が高い場合、鉄濃度が低い場合に比べて生物学的反応が実際に低減することが更に観察されている。TOCの最も高い2つの散布率(1040mgTOC/haと2080mgTOC/haの散布率)においては、鉄の含量が多い方が少ない方に比べてより適した反応を表す。
【0111】
[実験Fe−1B]
実験Fe−1Aに用いられた鉢のセットと同様の第2のセットを用意し、上述と同様の処理を施し、14日後に評価する代わりに、各鉢に対して、1回目の散布と同様の二回目の散布を行った。更に14日が経過した後、各鉢の植物を上述と同じ方式で評価した。
図8E〜
図8Gに、CPPAの4つの散布率のそれぞれについて、無鉄、0.25×Fe試料及び5×Fe試料での植物の重量を示す。
図8Eは、「無鉄」のCPPA試料に対して、反応率に若干の変化はあるが、統計的に有意なほどの差はないことを示している。
図8Fは、「0.25×Fe」のCPPA試料に対して、最も低い散布率で反応率が最も高く、以降、散布率が増加するにつれ低減していくことを示す。
図8Gは、「5×Fe」のCPPA試料に対して、高い方の2つの散布率において反応が大きくなり、散布率の低減につれて反応も低減していくことを示す。これらの結果のよると、CPPAと組み合わせた鉄の含量は、植物の生物学的反応に直接影響を与える。一様態において、当該データは、鉄の含量が増加する場合、CPPAの量も同様に増加しなければ、植物において適した生物学的効能を得られないことを明示している。
【0112】
[実験Fe−2:CPPA/鉄組成物の葉面への噴霧]
本実験の目的は、自然発生した鉄の含量がそれぞれ異なるCPPAのバッチから得た試料で処理した場合の、植物の生物学的効能(例えば成長)を評価することであった。これらの試料における鉄の重量%は、CPPAにおける有機炭素の重量の約10%〜約30%(w/w)の範囲である。本実験のために、種子からトマト(Lycopersicon es.)を栽培し、3インチ×3インチの鉢に移した。完全乱塊法を適用して、処理1回当り10株を用い、総じて11回の処理、並びにUTC処理を行った。各鉢には、移植後19日間、葉に溶液を噴霧する手法でCPPAを散布した。全てのテスト対象の鉢を、CPPA/鉄組成物を用いて1ヘクタール当りの有機炭素が520mgになる比率で処理し、これはUTCも同様とした。葉面散布から13日が経過した後、各植物の根の重量を測定した。
【0113】
図9Aにおける回帰曲線は、鉄の含量がそれぞれ異なるCPPAで処理した植物の根の重量を示している。各CPPA試料における有機炭素に対する鉄の比率(w/w%)対(verses)根の重量の回帰は、有機炭素に対する鉄の比率が23%付近であるとき最大となる二次多項式に最も当てはまる。他の組成特性に関しても同様の手法で評価したが、何れの特性も根の重量との関連性は表われなかった。更に他の生物学的指標を測定し、鉄の含量と対比して評価したが、相関関係は統計的に有意なものではなかった。
【0114】
[実験Fe−3:CPPA/鉄組成物による多重及び/又は順次処理]
本実験の目的は、実験Fe−2のCPPA/鉄製剤を1回以上散布して処理を施した場合に、単一処理と比較して、同等の若しくは改善した生物学的効能(例えば成長)を示すか否かを判定することであった。試料(鉄含有のCPPAと無鉄のCPPA)及びUTCは、実験Fe−1と同じである。移植から19日が経過した後、各鉢に葉面への噴霧によりCPPAを散布した。但し、UTCには水のみを噴霧し、他の鉢に対しては、CPPA/鉄組成物を用いて、1ヘクタール当りの有機炭素が520mgになる比率で処理を施した。これらの試料において、鉄の含量は、CPPAにおける炭素の約10重量%〜約30重量%の範囲である。最初の散布から13日が経過した後、最初と同じCPPA試料を用いて各植物に二回目の処理を施した。二回目の処理から14日が経過した後、各植物を収穫して根の重量を測定した。本実験において、二回目のCPPA散布から14日が経過した後に測定した各植物の根の重量を散布図のy軸として示し、各CPPA試料における有機炭素に対する鉄の比率をx軸として示し、傾向線を引き出した。結果を
図9Bに図示する。
図9Bにおいて、鉄の含量がそれぞれ異なるCPPA試料を二回処理した後の根の重量を、各試料における鉄の含量と対比した。先行の実験と同様に、回帰曲線は、炭素に対する鉄の比率が22%付近であるとき最大となる二次多項式に最も当てはまる。他の組成特性に関しても同様の手法で評価したが、重量との相関関係は有意でなかった。更に、他の成長因子を測定し、鉄の含量に対して評価してみたが、やはり相関関係を引き出すことはできなかった。実験Fe−2と実験Fe−3は、両方とも、鉄の存在、及び葉面散布においてCPPAと組み合わせた鉄の含量と、最後の散布から14日後に測定した根の成長度(生物学的効能)との間に、明確な相関関係があることを示している。
【0115】
[実験Fe−4]
本実験の目的は、鉄の含量が典型的な量(例えば鉄/TOC=0.135)より少ないCPPA試料に低レベルの鉄を添加した場合に、植物の生物学的反応が増加するか否かを判定することであった。CPPAに対する名目上(nominal)の鉄/TOCの比率は0.10〜0.28の範囲であるが、手を加えてない「そのままの」CPPA試料に対する最適比は、先行の実験で判定されたとおり、0.2〜0.25の範囲である。従って、本実験において、農学的非有効量の鉄をCPPA試料と組み合わせた。トマト(Lycopersicon es.)を種子から栽培し、3インチ×3インチの鉢に移した。完全乱塊法を適用して、処理1回当り20株を用い、総じて16回の処理、並びにUTC処理を行った。各鉢は、水(UTC)、CPPAのみ(それぞれ異なる散布率を三つ適用する)、鉄のみ(それぞれ異なる散布率を三つ適用する)、CPPA及び鉄の組み合わせ(各散布率を適用する)を用いて処理した。CPPAの散布率は、有機炭素(TOC)の量が1ヘクタール当たり260mg、520mg、1040mgとなる比率に相当する。鉄の散布率は、鉄の量が1ヘクタール当たり130mg、260mg、520mgとなる比率に相当する。各鉢には、移植後すぐに、葉面散布によって処理を施した。散布から10日が経過した後、植物のうち10株を収穫し、活力、葉数、植物の高さ、植物の重量、根の重量、芽の重量を評価した。CPPAと鉄の散布率がそれぞれ最も高い場合における評価結果を
図9Cに図示し、表1にまとめた。
【0116】
【表7】
【0117】
図9Cと表1に示すように、テストした農学的に非有効な濃度の鉄とCPPA濃度の組み合わせは、CPPA単独、或いは鉄単独の製剤を用いた場合に比べ、相乗効果をもたらした。CPPA及び鉄の追加の散布率は、CPPAと鉄の組み合わせから観察された結果とほぼ同様の相乗効果をもたらした。移植から20日が経過した後、残りの10株を更に評価した。(散布率の異なる三つの)処理の結果をそれぞれ、
図9D、
図9E、
図9Fに図示し、表2、表3、表4にまとめた。データにも示されているように、低散布率のCPPAと、農学的に非有効な低散布率の鉄を組み合わせた結果、CPPA単独、或いは鉄単独の場合に比べ、生物学的反応(例えば植物/根/芽の重量)に対して著しい相乗の改善効果を確認することができた。
【0118】
同じく、表3及び
図9Eに示すように、中間散布率のCPPA(520mgTOC/ha)を農学的に非有効な低散布率の鉄と組み合わせた結果、CPPA単独、或いは鉄単独の場合に比べ、相乗効果を有することを確認した。中間散布率のCPPAと農学的に非有効な低散布率の鉄の組み合わせは、どちらかの単独処理に比べ、植物の総重量をほぼ100%増加させた。例えば、どちらかの単独処理に比べ、根の重量は100%以上増加した。
【0119】
高散布率のCPPAと、農学的に非有効な高散布率の鉄による処理の結果を、
図9F及び表4に示す。農学的に非有効な高散布率の鉄のみで処理を施した場合に、統計的に有意ではないが、植物、例えば根や芽に重量に対して僅かに生物学的な悪影響をもたらした。高散布率のCPPAのみを用いて処理した結果は、UTC処理の結果と同等であった。しかしながら、高散布率のCPPAと、農学的に非有効な高散布率の鉄を組み合わせた場合、どちらかの単独処理よりも2倍以上優れた結果を引き出した。
【0120】
低散布率のCPPAにおいて、農学的に非有効な低散布率で添加された鉄が、生物学的反応に対して明白な相乗効果をもたらすことが観察された。鉄が増えると、成長反応が低減した。これらの結果を表5及び
図9Gにまとめた。表5及び
図9Gにおいて、CPPAのTOCに対する鉄の含量は、比として表される。この場合、CPPAに存在する鉄の測定量と、例えばFeSO
4溶液に由来する鉄の添加量に基づいて、TOCに対する鉄の比を判定する。
【0121】
上述とは対照的に、高散布率のCPPAにおいて、表6及び
図9Hに示すように、前述の段落とは全く逆の効果が観測された。この場合、高レベルのCPPAに対する生物学的反応は、最大の生物学的反応を生じさせる最高率まで鉄の含量を増加させるにつれ、同様に増加した。これら2つの実施例から、農学的非有効量の鉄をCPPAに添加した場合、植物の反応に対する最適な比率は、TOCに対する鉄の比が0.63周辺であるときのものとなることがわかる。鉄の含量が増えると、TOCの比率も同様に増加し、鉄とTOC間の最適比をそのまま維持する。
【0122】
【表8】
【0123】
【表9】
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
【表12】
【0127】
[実験5:CPPA製剤のおける鉄濃度の可逆性]
本実験の目的は、CPPAから鉄を取り除いた後、そのCPPAに元来のレベルまでの鉄を添加し直した場合の、植物生態が受ける影響を判定することであった。本実験のために、種子からトマト(Lycopersicon es.)を栽培し、3インチ×3インチの鉢に移した。完全乱塊法を適用して、処理1回当り10株を用い、総じて3回の処理、並びにUTC処理を行った。各鉢は、移植の際に、CPPAを葉に対して噴霧している。但し、UTCには水のみで処理し、他の鉢に対しては、CPPAを用いて、1ヘクタール当りの有機炭素が260mgになる比率で処理を施した。最初の試料(「通常CPPA(Normal CPPA)」と表す)における鉄の含量は、有機炭素の13.6重量%である。通常CPPAの試料を、陽イオン交換樹脂(AG MP−50樹脂、Bio−Rad Laboratories、2000 Alfred Nobel Drive、Hercules、CA 94547)を用いて、鉄を取り除いた(この試料を「無鉄CPPA(No Iron CPPA)」と表す)。無鉄CPPAの試料に、鉄として硫酸第一鉄を添加し、鉄の含量が有機炭素の約13.6%とした(この試料を「無鉄+鉄CPPA(No Iron + Fe CPPA)」と表す)。散布から10日が経過した後、全ての植物を収穫し、植物/根/芽の重量を評価した。結果を
図9Iにまとめる。
図9Iに示すように、260mgTOC/haでの「通常CPPA」処理は、植物/根/芽の重量を測定した結果、植物において著しい生物学的反応を促進していた。同じ散布率であるにも関わらず、無鉄CPPAの試料は、UTCよりも測定重量が低いため、生物学的反応を阻害していたと考えられる。しかしながら、無鉄+鉄CPPAの試料のように、鉄を再添加すると、通常CPPAの試料と同レベルまで生物学的反応を回復した。CPPAから鉄を除去した影響は、この散布率或いは他の散布率で回復させることが可能であることがわかった。
【0128】
これらのテストは、葉面処理においてCPPAと鉄の組み合わせがもたらす生物学的効能を明示している。CPPA/鉄組成物を用いて土壌及び/又は植生場所に処理を施した場合も、同様の結果が引き出されると思われる。他の遷移金属イオン、例えばマンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、及び/又は銅(Cu)のイオンを、単独、又は鉄と組み合わせて用いた場合、CPPAと組み合わせて、葉面、及び/又は土壌或いは植生場所に処理を施したときと同様の生物学的効能をもたらすことを期待される。
【0129】
[CPPAとアルカリ(土類)金属塩の組み合わせ]
本実験の目的は、(1)CPPAと植物有害レベルのアルカリ(土類)塩の組み合わせを葉面散布した場合、植物毒性が緩和されるか否か、及び、(2)CPPAとアルカリ(土類)塩の間に、植物の生物学的活性に有益な影響をもたらす相乗効果は存在するか否かを判定することであった。
【0130】
[実験Salt−1:CPPA/NaCl組成物の葉面散布]
本実験のために、種子からトマト(Lycopersicon es.)を栽培し、3インチ×3インチの鉢に移した。完全乱塊法を適用して、処理1回当り10株を用い、総じて5回の処理、並びにUTC処理を行った。CPPA(1000mgTOC/L)とNaCl(5000mg/L、以下「塩」という)の水溶液を用いて、鉢に移植した際に、全ての植物に葉面散布を行った。CPPA単独、塩単独、CPPA+塩を用いて、各試料を処理した。CPPAの散布率は、TOCの量が1ヘクタール当たり520mgとなる第1の散布率と、TOCの量が1ヘクタール当たり1040mgとなる第2の散布率との2つを用いた。塩は、1ヘクタール当たり2.6gに相当する散布率で散布した。全ての処理は、水で希釈して、最終噴霧容積が1ヘクタール当たり208リットル(lit)とした噴射溶液を用いた。この噴射溶液は、各植物の葉面を十分濡らすほどの量を噴霧ボトルに入れて使用した。実験Salt−1にて行われた処理の仕様を表7にまとめる。
【0131】
【表13】
【0132】
処理から10日が経過した後、活力、葉数、植物の高さ、植物の重量、根の重量、芽の重量、及び葉コンダクタンスについてSPADメータを用いて評価し、その結果を表8及び
図10〜
図16にまとめた。
【0133】
【表14】
【0134】
表8にまとめられた結果は、一貫性を有する。これらのうちの1つのケースである塩単独処理は、期待されたとおりの最悪の結果、すなわち、著しい植物毒性を示した。驚くことに、塩をCPPAと組み合わせた全ての場合において、塩の有毒作用を完全に中和していることが明らかとなった。更には、全ての場合において、NaCl+CPPA処理は、CPPA単独処理と同程度に優れているか、むしろ凌駕するほどの生物学的活性効果をもたらし、顕著な相乗効果の存在を示した。植物の総重量及び芽の重量において、CPPA単独処理とCPPA+NaCl処理の差は、P<0.01であり、統計的に有意である。
【0135】
[実験Salt−2:CPPA/塩製剤を用いた葉面処理]
本実験の目的は、(1)植物毒性レベルの塩と低散布率/高散布率のCPPAを組み合わせて葉面散布を行った場合、植物に対する塩の植物毒性を緩和することができるか否か、及び、(2)低散布率/高散布率のCPPAと、塩の様々な散布率の間に、植物の生物学的活性に有益な影響をもたらす相乗効果は存在するか否かを判定することであった。
【0136】
本実験のために、種子からトマト(Lycopersicon es.)を栽培し、3インチ×3インチの鉢に移した。完全乱塊法を適用して、処理1回当り20株を用い、総じて8回の処理、並びにUTC処理を行った。CPPA(1000mgTOC/L)と塩(5000mg/L)の水溶液を用いて、鉢に移植した際に、全ての植物に葉面散布を行った。CPPA単独、塩単独、CPPA+塩を用いて試料を処理した。CPPAの散布率は、TOCの量が1ヘクタール当たり260mgとなる第1の散布率と、TOCの量が1ヘクタール当たり1040mgとなる第2の散布率との2つを用いた。NaClも、1ヘクタール当たり1.3g、並びに2.6gに相当する2つの散布率で散布した。全ての処理は、水で希釈して、最終噴霧容積が1ヘクタール当たり208リットルとした噴射溶液を用いた。この噴射溶液は、各植物の葉面を十分濡らすほどの量を噴霧ボトルに入れて使用した。処理の仕様を表9にまとめる。
【0137】
【表15】
【0138】
処理から10日が経過した後、各処理においてそれぞれ10株ずつの植物試料を用いて、活力、葉数、植物の高さ、植物の重量、根の重量、芽の重量を評価した。残りの10株を用いて20日目に評価を再び行い、結果から平均値を得た。
図17は、0mg又は260mg/haのCPPA散布率と多様な塩散布率とを用いて、トマトに処理を施した結果として得た活力、葉数、植物の高さ、植物の重量、根の重量、芽の重量を示すものであり、これらの結果を、更に表4にまとめた。
【0139】
図18は、1040mg/haのCPPA散布率でトマトに処理を施した結果として得た活力、葉数、植物の高さ、植物の重量、根の重量、芽の重量を示すものであり、これらの結果を、更に表10にまとめた。
【0140】
【表16】
【0141】
実験Salt−2において、CPPAの散布率(260mg/ha及び1040mg/ha)は両方とも、塩の露出によって生じる悪い反応(植物毒性)を緩和させることを示した。
図17のデータによると、CPPAの散布率が260mg/haである場合、塩の露出率が高いとき(例えば塩が2600mg/ha)に、低いとき(例えば塩が1300mg/ha)よりも、より優れた緩和効果を示した。しかしながら、CPPAの散布率が260mg/haであると、全ての場合において、CPPA単独処理の方が同じ散布率のCPPAを塩と組み合わせて用いた処理よりも(塩の散布率に関わらず)植物に対してより大きい有益な反応を促していたため、相乗効果に対する相当の抑制が存在すると思われる。
図18に示すように、CPPAの散布率がより高い1040mg/haである場合、塩による悪い反応を緩和するだけでなく、CPPAと塩の間の相乗効果も観測される。植物生態に対する相乗効果は、塩の散布率が低くても高くても観測されるが、塩の散布率が低い場合に、相乗効果はわずかに大きくなった。
【0142】
[実験Salt−3:CPPA/塩製剤を用いた土壌処理]
本実験の目的は、CPPAと塩の組み合わせを、植え付けの際に植物の植生場所又は土壌に散布した場合に、植物における生物学的効能に対する相乗効果を得られるか否かを判定することであった。
【0143】
本実験のために、小麦種子(Triticum aestivum)を、直径約1インチで深さ1インチの小さい鉢に蒔いた。完全乱塊法を適用して、処理1回当り20株を用い、総じて8回の処理、並びにUTC処理を行った。CPPA(1000mgTOC/L)とNaCl(5000mg/L、以下「塩」という)の水溶液を用いて、種子を植えつけた直後に、全ての鉢の土壌を浸した。全て同じ深さで種子を埋め(土壌表面から5mmほど下)、同じ容積の浸透溶液を各鉢に散布した。該容積に存在しているCPPA及びNaClの量は、この際、重要ではない。CPPA単独、塩単独、CPPA+塩を用いて試料を処理した。CPPAの散布率は、TOCの量が1ヘクタール当たり520mgとなる第1の散布率と、TOCの量が1ヘクタール当たり1040mgとなる第2の散布率との2つを用いた。塩は、NaClの量が1ヘクタール当たり1.3g又は2.6gとなる散布率で散布した。処理の仕様を表11にまとめる。
【0144】
【表17】
【0145】
処理から28日が経過した後、植物の重量、根の重量、芽の重量を評価した。
図19は、520mg/haのCPPA散布率と多様な塩の散布率とを用いて処理を施した結果として得た植物の重量、根の重量、芽の重量を示すものであり、これらの結果を、更に表12にまとめた。
【0146】
【表18】
【0147】
図20は、1040mg/haのCPPA散布率を用いて処理を施した結果として得た植物の重量、根の重量、芽の重量を示すものであり、これらの結果を、更に表13にまとめた。
【0148】
【表19】
【0149】
実験Salt−3において、520mg/ha又は1040mg/haの散布率のCPPAを塩と組み合わせて土壌処理に用いた結果、UTCに比べて優れた結果を引き出した。CPPAと塩の組み合わせは、CPPA単独又は塩単独の何れよりも、植物の重量においてより良い結果をもたらしている。
図19において、CPPAと塩の組み合わせによる、土壌処理の生物学的効能に対する相乗効果を示しており、該相乗効果は、散布率520mg/haのCPPAをより高い散布率の塩と組み合わせた場合(表12の「処理6」)より大きい。
【0150】
図20によると、CPPAの散布率が高い場合、例えば1040mg/haである場合、低散布率の塩と組み合わせることで、植物、例えば小麦に対して最も優れた生物学的効能を引き出すことができる。同様に、
図20のデータによると、CPPAと塩を組み合わせれば、例え塩の散布率が低くても、塩の高散布率で表われた追加の生物学的効能に対する相乗効果を引き出すことができる。
【0151】
上記の実験結果によると、CPPAを陽イオン種と組み合わせて、植物、植生場所、及び/又は種子に散布することにより、植物の生物学的作用を改善することができる。具体的には、実験結果によると、CPPAを、遷移金属陽イオン、例えば鉄、及び/又は、ナトリウムなどのアルカリ(土類)陽イオンやその水溶性塩と組み合わせることにより、植物生態に予想外の影響を与え、植物1株当たりの葉数、植物の総重量、根/芽の重量、葉コンダクタンスを改善することができる。これらの属性は、更に、農業条件又は園芸条件における作物の収穫高を改善する。
【0152】
本願に引用されている特許及び出版物は、参照により本願の一部となすものとする。「〜を含む(comprise、〜からなる)」「〜を含む(comprises)「〜を含んでいる(comprising)」などの表現は、排他的ではなく包括的に解釈すべきである。