特許第6276211号(P6276211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6276211-透明樹脂積層体 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276211
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】透明樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20180129BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20180129BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   C08J7/04 KCEY
   B60J1/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-62019(P2015-62019)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-20087(P2016-20087A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-112034(P2014-112034)
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-123031(P2014-123031)
(32)【優先日】2014年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】板垣保広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤茂一
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6181803(JP,B2)
【文献】 特開2009−084398(JP,A)
【文献】 特開2011−131407(JP,A)
【文献】 特開2016−003319(JP,A)
【文献】 特開平04−019142(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061428(WO,A1)
【文献】 特開2010−138112(JP,A)
【文献】 特開平06−071826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09D 1/00−10/00
101/00−201/10
C08J 7/04−7/06
C08F 283/01
290/00−290/14
299/00−299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表層側から順にハードコートの層と透明樹脂シートの層とを有し、
上記ハードコートが、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;
(C)有機チタン 0.05〜3質量部;
(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;及び、
(E)撥水剤 0.01〜7質量部;
を含む塗料からなり;
上記透明樹脂シートの厚みが1〜6mmである;透明樹脂積層体。
【請求項2】
上記透明樹脂シートが、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートであることを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂積層体。
【請求項3】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートが、
第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;
芳香族ポリカーボネート系樹脂層;
第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;が、
この順に直接積層された積層シートであることを特徴とする請求項2に記載の透明樹脂積層体。
【請求項4】
最表層側から順にハードコートの層と透明樹脂シートの層とを有し、
上記ハードコートが、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;
(C)有機チタン 0.05〜3質量部;
(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;及び、
(E)撥水剤 0.01〜7質量部;
を含む塗料からなり;
下記特性(イ)〜(ハ)を満たすことを特徴とする透明樹脂積層体。
(イ)全光線透過率 80%以上。
(ロ)ヘーズ 5%以下。
(ハ)黄色度指数 3以下。
【請求項5】
上記透明樹脂シートが、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートである請求項4に記載の透明樹脂積層体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の透明樹脂積層体を含む家電製品。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の透明樹脂積層体を含む家具。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか1項に記載の透明樹脂積層体を含む、車両部材。
【請求項9】
請求項1〜5の何れか1項に記載の透明樹脂積層体を含む、建築物部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂積層体に関する。更に詳しくは、比重が小さく、透明性、剛性、耐傷付性、耐候性、耐衝撃性、及び加工性に優れ、車両の窓や風防等、建築物の窓や扉等、電子看板の保護板等、冷蔵庫等の家電製品の表面部材等、食器棚等の家具の扉等、及びショーウインドウなどの部材として好適に用いることのできる透明樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の窓や風防等の部材、建築物の窓や扉等の部材、電子看板の保護板等、及びショーウインドウなどには、透明性、剛性、耐傷付性、及び耐候性などの要求特性に合致することから、ガラスを基材とする物品が使用されてきた。またガラスは、その透明感のある意匠感から、冷蔵庫等の家電製品の表面部材等、及び食器棚等の家具の扉等にも採用が広がっている。一方、ガラスには、耐衝撃性が低く割れ易い、加工性が低い、比重が高く重いなどの問題がある。そこでガラスに替わる材料が盛んに研究されており、ポリカーボネート系樹脂やアクリル系樹脂などの透明樹脂層と、ハードコート層とを有する透明樹脂積層体が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。しかし、その耐傷付性はまだ不十分であり、ワイパーなどで繰返ししごかれたり、雑巾などで繰返し拭かれたりしても、初期の特性を維持できる透明樹脂積層体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−043101号公報
【特許文献2】特開2014−040017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、比重が小さく、透明性、剛性、耐傷付性、耐候性、耐衝撃性、及び加工性に優れ、従来ガラスを基材とする物品が使用されてきた車両の窓や風防等、建築物の窓や扉等、電子看板の保護板等、冷蔵庫等の家電製品の表面部材等、食器棚等の家具の扉等、及びショーウインドウなどの部材として好適に用いることのできる透明樹脂積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の透明樹脂積層体により、上記課題を達成できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、最表層側から順にハードコートの層と透明樹脂シートの層とを有し、
上記ハードコートが、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;
(C)有機チタン 0.05〜3質量部;及び
(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;
を含む塗料からなる透明樹脂積層体である。
【0007】
本発明の第2の発明は、上記ハードコートが、更に(E)撥水剤 0.01〜7質量部;を含む塗料からなることを特徴とする第1の発明に記載の透明樹脂積層体である。
【0008】
本発明の第3の発明は、上記透明樹脂シートが、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートであることを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の透明樹脂積層体である。
【0009】
本発明の第4の発明は、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートが、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;芳香族ポリカーボネート系樹脂層;第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;が、この順に直接積層された積層シートであることを特徴とする第3の発明に記載の透明樹脂積層体である。
【0010】
本発明の第5の発明は、最表層側から順にハードコートの層とポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートの層とを有し、下記特性(イ)〜(ハ)を満たすことを特徴とする透明樹脂積層体である。
(イ)全光線透過率 80%以上。
(ロ)ヘーズ 5%以下。
(ハ)黄色度指数 3以下。
【0011】
本発明の第6の発明は、第1〜5の発明の何れか1に記載の透明樹脂積層体の、車両部材としての使用である。
【0012】
本発明の第7の発明は、第1〜5の発明の何れか1に記載の透明樹脂積層体の、建築物部材としての使用である。
【0013】
本発明の第8の発明は、第1〜5の発明の何れか1に記載の透明樹脂積層体を含む、車両部材である。
【0014】
本発明の第9の発明は、第1〜5の発明の何れか1に記載の透明樹脂積層体を含む、建築物部材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の透明樹脂積層体は、比重が小さく、透明性、剛性、耐傷付性、耐候性、耐衝撃性、及び加工性に優れる。そのため車両の窓や風防等、建築物の窓や扉等、電子看板の保護板等、冷蔵庫等の家電製品の表面部材等、食器棚等の家具の扉等、及びショーウインドウなどの部材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において「シート」の用語は、フィルムや板をも含む用語として使用する。「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。
【0017】
本発明の透明樹脂積層体は、最表層側から順にハードコートの層と透明樹脂シートの層とを有し、ガラスに替わる材料として用いる目的から、高い透明性を有し、かつ着色のないものである
【0018】
そのため本発明の透明樹脂積層体は、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0019】
また本発明の透明樹脂積層体は、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
【0020】
更に本発明の透明樹脂積層体は、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0021】
本発明の透明樹脂積層体は、少なくとも片面の最表層にハードコートの層を有する。上記ハードコートは活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含む塗料からなり、耐傷付性や耐擦傷性に優れている。以下、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含む塗料について説明する。
【0022】
(A)多官能(メタ)アクリレート:
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0023】
上記成分Aは、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートであり、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
【0024】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができる。上記成分Aとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0025】
なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0026】
(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物:
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む。ここで(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。なお上記成分Bは、アルコキシシリル基を有するという点で上記成分Aとは区別される。上記成分Aは、アルコキシシリル基を有しない。本明細書において、1分子中にアルコキシシリル基と2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、成分Bである。
【0027】
上記成分Bは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有することにより上記成分Aと、アルコキシシリル基を有することにより上記成分Dと、化学結合ないし強く相互作用することができ、ハードコートの耐擦傷性を大きく向上させる働きをする。また成分Bは上記成分Eとも、分子内に(メタ)アクリロイル基を有することにより、あるいはアルコキシシリル基を有することにより、化学結合ないし強く相互作用し、成分Eがブリードアウトするなどのトラブルを防止する働きもする。
【0028】
上記成分Bとしては、例えば、一般式「(−SiORR’−)n・(−SiORR”−)m」で表される化学構造を有する化合物をあげることができる。ここで、nは自然数(正の整数)であり、mは0又は自然数である。好ましくは、nは2〜10の自然数、mは0又は1〜10の自然数である。Rはメトキシ基(CHO−)、エトキシ基(CO−)などのアルコキシ基である。R’はアクリロイル基(CH=CHCO−)、メタクリロイル基(CH=C(CH)CO−)である。R”はメチル基(CH)、エチル基(CHCH)などのアルキル基である。
【0029】
上記成分Bとしては、例えば、一般式「(−SiO(OCH)(OCHC=CH)−)n」、「(−SiO(OCH)(OC(CH)C=CH)−)n」、「(−SiO(OCH)(OCHC=CH)−)n・(−SiO(OCH)(CH)−)m」、「(−SiO(OCH)(OC(CH)C=CH)−)n・(−SiO(OCH)(CH)−)m」、「(−SiO(OC)(OCHC=CH)−)n」、「(−SiO(OC)(OC(CH)C=CH)−)n」、「(−SiO(OC)(OCHC=CH)−)n・(−SiO(OCH)(CH)−)m」、及び「(−SiO(OC)(OC(CH)C=CH)−)n・(−SiO(OCH)(CH)−)m」で表される化学構造を有する化合物をあげることができる。ここで、nは自然数(正の整数)であり、mは0又は自然数である。好ましくは、nは2〜10の自然数、mは0又は1〜10の自然数である。
【0030】
上記成分Bとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0031】
上記成分Bの配合量は、上記成分A 100質量部に対して、耐擦傷性の観点から、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。一方、撥水性を発現し易くする観点から、また成分Bと上記成分Cとの配合比を好ましい範囲にしたときに成分Cが過剰量にならないようにする観点から、4質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
【0032】
また上記成分Dと化学結合ないし強く相互作用させる観点から、上記成分Bと上記成分Dとの配合比は、成分D100質量部に対して、成分Bが通常0.2〜80質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは2〜7質量部である。
【0033】
(C)有機チタン:
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(C)有機チタンを含む。
【0034】
上記成分Cは、上記成分Bの働きを補助する成分であり、ハードコートの耐擦傷性を大きく向上させる観点において、成分Bと成分Cとは特異的な好相性を示す。また成分C自身も、上記成分Dなどと化学結合ないし強く相互作用し、ハードコートの耐擦傷性を高める働きをする。
【0035】
上記有機チタンとしては、例えば、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、ジ−n−ブトキシ−ビス(トリエタノールアミナト)チタン;及びこれらの1種以上からなる重合体;などをあげることができる。上記成分Cとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0036】
これらの中で、アルコキシチタンのテトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレートが耐擦傷性と色調の観点から好ましい。
【0037】
上記成分Cの配合量は、上記成分A 100質量部に対して、耐擦傷性の観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。一方、色調の観点から、3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。
【0038】
また上記成分Bの働きを効果的に補助する観点から、上記成分Bと上記成分Cとの配合比は、成分B100質量部に対して、成分Cが通常1.25〜1500質量部、好ましくは5〜150質量部、より好ましくは20〜80質量部である。
【0039】
(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子:
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子を含む。
【0040】
上記成分Dは、ハードコートの表面硬度を高める働きをする。一方、上記成分Aとの相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで本発明においては、成分Aと成分Dの両方に化学結合ないし強く相互作用することのできる上記成分Bを用い、この問題を解決したものである。
【0041】
上記成分Dとしては、無機微粒子、有機微粒子のどちらも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;金属微粒子;などをあげることができる。有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂ビーズをあげることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
また微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの表面硬度を高めたりする目的で、当該微粒子の表面をビニルシラン、アミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを用いてもよい。
【0043】
これらの中でより表面硬度の高いハードコートを得るためにシリカや酸化アルミニウムの微粒子が好ましく、シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
【0044】
上記成分Dの平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持する観点、及びハードコートの表面硬度改良効果を確実に得る観点から300nm以下である。好ましくは200nm以下であり、より好ましくは120nm以下である。一方、粒子径の下限を制限する理由は特にないが、通常入手可能な微粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
【0045】
なお本明細書において、微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0046】
上記成分Dの配合量は、上記成分A 100質量部に対して、表面硬度の観点から、5質量部以上、好ましくは20質量部以上である。一方、耐擦傷性と透明性の観点から、100質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
【0047】
(E)撥水剤:
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める観点から、更に、(E)撥水剤 0.01〜7質量部;を含ませることが好ましい。
【0048】
上記撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコンオイル、シリコン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;フルオロポリエーテル系撥水剤、フルオロポリアルキル系撥水剤等の含弗素系撥水剤;などをあげることができ、上記成分Eとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0049】
これらの中で、上記成分Eとしては、撥水性能の観点から、フルオロポリエーテル系撥水剤が好ましい。上記成分Aや上記成分Bと成分Eとが化学結合ないしは強く相互作用し、成分Eがブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、成分Eとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基とフルオロポリエーテル基とを含有する化合物を含む撥水剤(以下、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤と略す。)が更に好ましい。成分Eとしては、成分Aや成分Bと成分Eとの化学結合ないしは相互作用を適宜調節し、透明性を高く保ちつつ良好な撥水性を発現させる観点から、アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤とメタアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤との混和物を用いてもよい。
【0050】
上記成分Eを用いる場合の配合量は、上記成分A 100質量部に対して、成分Eがブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、通常7質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。配合量の下限は、任意成分であるから特にないが、成分Eの使用効果を得るという観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。
【0051】
また上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0052】
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0053】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0054】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
【0055】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は上記成分A〜D、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。
【0056】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これらの成分を混合、攪拌することにより得られる。
【0057】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含むハードコート形成用塗料を用いてハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0058】
上記ハードコートの層の厚みは、特に制限されないが、本発明の透明樹脂積層体の耐傷付き性や耐擦傷性の観点から、通常1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であってよい。また本発明の透明樹脂積層体の切削加工適性やハンドリング性の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。
【0059】
上記透明樹脂シートの層は、透明樹脂シートからなる層であり、本発明の透明樹脂積層体をガラスに替わる材料として用いる目的から、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意の透明樹脂シートを用いることができる。
【0060】
上記透明樹脂シートは、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0061】
上記透明樹脂シートは、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
【0062】
上記透明樹脂シートは、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0063】
上記透明樹脂シートの厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。本発明の透明樹脂積層体を、更にポリカーボネート板やアクリル板等の他の基板と積層して用いる場合には、取扱性の観点から、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であってよい。また経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下であってよい。本発明の透明樹脂積層体を、車両の窓ガラスや建築物の窓ガラスを代替する部材として用いる場合には、剛性を保持する観点から、通常1mm以上、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上であってよい。また部材の軽量化の要求に応える観点から、通常6mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下であってよい。
【0064】
上記透明樹脂シートとしては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;エチレンノルボルネン共重合体等の環状炭化水素系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;芳香族ポリカーボネート系樹脂;ポリプロピレン、4−メチル−ペンテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリマー型ウレタンアクリレート系樹脂;及びポリイミド系樹脂;などのシートがあげられ、無延伸シート、一軸延伸シート、及び二軸延伸シートを包含する。またこれらの1種又は2種以上の積層シートを包含する。
【0065】
これらの中で好ましいものとしては、
(a1)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シート;
(a2)アクリル系樹脂シート;
(a3)芳香族ポリカーボネート系樹脂シート;
(a4)ポリエステル系樹脂シート;
(a5)上記透明樹脂シートa1〜a4の何れか1種又は2種以上の積層シート;
をあげることができる。
【0066】
上記(a1)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートは、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を主として(通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。
【0067】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、アクリル系樹脂の高透明性、高表面硬度、高剛性という特徴はそのままにポリイミド系樹脂の耐熱性や寸法安定性に優れるという特徴を導入し、淡黄色から赤褐色に着色するという欠点を改良した熱可塑性樹脂であり、例えば、特表2011−519999号公報に開示されている。なお本明細書において、ポリ(メタ)アクリルイミドとは、ポリアクリルイミド又はポリメタクリルイミドの意味である。
【0068】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としては、透明樹脂積層体をガラスに替わる材料として用いる目的から、高い透明性を有すること以外は制限されず、任意のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いることができる。
【0069】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の好ましいものとしては、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、3以下のものをあげることができる。黄色度指数は、より好ましくは2以下であり、更に好ましくは1以下である。また押出負荷や溶融シートの安定性の観点から、好ましいものとしてメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)が0.1〜20g/10分のものをあげることができる。メルトマスフローレートは0.5〜10g/10分がより好ましい。更にポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、150℃以上のものが好ましい。より好ましくは170℃以上である。
【0070】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
【0071】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の市販例としては、エボニック社の「PLEXIMID TT70(商品名)」などをあげることができる。
【0072】
上記(a2)アクリル系樹脂シートは、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。
【0073】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などの(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体などの(メタ)アクリル酸エステルを含む共重合体;などのアクリル系樹脂(Acry)の1種又は2種以上の混合物と、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴム(Core)の1種又は2種以上の混合物を含む樹脂組成物をあげることができる。
【0074】
なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。また(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
【0075】
上記Acryと上記Coreとの配合比は、両者の合計を100質量部としたとき、好ましくはAcry50〜85質量部(Core50〜15質量部)であり、より好ましくはAcry60〜75質量部(Core40〜25質量部)である。
【0076】
また上記アクリル系樹脂組成物に含み得るその他の任意成分としては、上記Acryや上記Core以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、核剤、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、AcryとCoreとの合計を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
【0077】
上記(a3)芳香族ポリカーボネート系樹脂シートは、芳香族ポリカーボネート系樹脂を主として(通常70質量%以上、好ましくは90質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。
【0078】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0079】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、上記(a3)芳香族ポリカーボネート系樹脂シートの耐切削加工性や耐衝撃性をより高めることができる。
【0080】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムをあげることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0081】
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
【0082】
上記(a4)ポリエステル系樹脂シートは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を主として(通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上。)含む樹脂からなるシートであり、無延伸シート、一軸延伸シート、及び二軸延伸シートを包含する。またこれらの1種又は2種以上の積層シートを包含する。
【0083】
上記(a4)ポリエステル系樹脂シートは、好ましくは、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を主として(通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。
【0084】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール成分とのポリエステル系共重合体をあげることができる。より具体的には、モノマーの総和を100モル%として、テレフタル酸50モル%及びエチレングリコール30〜40モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール10〜20モル%からなるグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG);テレフタル酸50モル%、エチレングリコール16〜21モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール29〜34モル%からなるグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG);テレフタル酸25〜49.5モル%、イソフタル酸0.5〜25モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール50モル%からなる酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTA);テレフタル酸30〜45モル%、イソフタル酸5〜20モル%及びエチレングリコール35〜48モル%、ネオペンチルグリコール2〜15モル%、ジエチレングリコール1モル%未満、ビスフェノールA1モル%未満からなる酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート;などの1種又は2種以上の混合物をあげることができる。
【0085】
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を320℃で5分間保持した後、20℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で320℃まで加熱するという温度プログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される融解曲線)の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性、10J/gを超えて60J/g以下のポリエステルを低結晶性と定義した。
【0086】
上記ポリエステル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、その他の成分を含ませることができる。含む得る任意成分としては、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
【0087】
上記ポリエステル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。コアシェルゴムを用いることで、上記(a4)ポリエステル系樹脂シートの耐衝撃性を向上させることができる。
【0088】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムの1種又は2種以上の混合物をあげることができる。コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0089】
上記コアシェルゴムの配合量は、ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、耐衝撃性を向上させるため、好ましくは0.5質量部以上である。一方、透明性を保持するため、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0090】
上記(a5)上記透明樹脂シートa1〜a4の何れか1種又は2種以上の積層シートは、例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、及びスタックプレート方式などの任意の共押出装置を使用し、所望の層構成になるように共押出製膜することにより;任意の製膜装置を使用して上記透明樹脂シートa1〜a4の何れか1種又は2種以上を得た後、これらを所望の層構成になるように熱ラミネート又はドライラミネートすることにより;任意の製膜装置を使用して上記透明樹脂シートa1〜a4の何れか1種を得た後、該シートを基材として所望の層構成になるように押出ラミネートすることにより;得ることができる。
【0091】
上記(a5)の好ましいものとしては、例えば、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;芳香族ポリカーボネート系樹脂層;第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;が、この順に直接積層された積層シートをあげることができる。
【0092】
上記透明樹脂シートを得るための製造方法は、特に制限されないが、例えば、(P)押出機とTダイとを備える装置を用い、Tダイから、透明樹脂の溶融シートを、連続的に押出す工程;(Q)回転する又は循環する第一の鏡面体と、回転する又は循環する第二の鏡面体との間に、上記透明樹脂の溶融シートを供給投入し、押圧する工程;を含む方法をあげることができる。
【0093】
上記工程(P)で使用する上記Tダイとしては、任意のものを使用することができ、例えばマニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイなどをあげることができる。
【0094】
上記工程(P)上記押出機としては、任意のものを使用することができ、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機などをあげることができる。
【0095】
また透明樹脂の劣化を抑制するため、押出機内を窒素パージすることも好ましい方法の一つである。更に透明樹脂を製膜に供する前に、これを乾燥することは好ましい。また乾燥機で透明樹脂を、乾燥機から押出機に直接輸送し、投入することも好ましい。また押出機の、通常はスクリュウ先端の計量ゾーンに、真空ベントを設けることも好ましい。
【0096】
上記工程(Q)で使用する上記第一の鏡面体としては、例えば、鏡面ロールや鏡面ベルトなどをあげることができる。上記第二の鏡面体としては、例えば、鏡面ロールや鏡面ベルトなどをあげることができる。
【0097】
上記鏡面ロールは、その表面が鏡面加工されたロールであり、金属製、セラミック製、及びシリコンゴム製などがある。また鏡面ロールの表面については、腐食や傷付きからの保護を目的としてクロームメッキや鉄−リン合金メッキ、PVD法やCVD法による硬質カーボン処理などを施すことができる。
【0098】
上記鏡面ベルトは、その表面が鏡面加工された、通常は金属製のシームレスのベルトであり、例えば、一対のベルトローラー相互間に掛け巡らされて、循環するようにされている。また鏡面ベルトの表面については、腐食や傷付きからの保護を目的としてクロームメッキや鉄−リン合金メッキ、PVD法やCVD法による硬質カーボン処理などを施すことができる。
【0099】
上記鏡面加工は、限定されず、任意の方法で行うことができる。例えば、微細な砥粒を用いて研磨することにより、上記鏡面体の表面の算術平均粗さ(Ra)を好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、十点平均粗さ(Rz)を好ましくは500nm以下、より好ましくは250nm以下にする方法をあげることができる。
【0100】
理論に拘束される意図はないが、上記の製膜方法により、透明性、表面平滑性、及び外観に優れた透明樹脂シートが得られるのは、第一鏡面体と第二鏡面体とで透明樹脂の溶融シートが押圧されることにより、第一鏡面体及び第二鏡面体の高度に平滑な面状態がシートに転写され、ダイスジ等の不良箇所が修正されるためと考察できる。
【0101】
上記面状態の転写が良好に行われるようにするため、第一鏡面体の表面温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であってよい。一方、シートに第一鏡面体との剥離に伴う外観不良(剥離痕)の現れることを防止するため、第一鏡面体の表面温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下であってよい。
【0102】
上記面状態の転写が良好に行われるようにするため、第二鏡面体の表面温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは60℃以上であってよい。一方、シートに第二鏡面体との剥離に伴う外観不良(剥離痕)の現れることを防止するため、第二鏡面体の表面温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下であってよい。
【0103】
なお第一鏡面体の表面温度を、第二鏡面体の表面温度よりも高くすることが好ましい。これはシートを第一鏡面体に抱かせて次の移送ロールへと送り出すためである。
【0104】
また上記ハードコートの層を形成するに際し、基材となる上記透明樹脂シートのハードコート形成面又は両面に、ハードコートとの接着強度を高めるため、事前にコロナ放電処理やアンカーコート形成などの易接着処理を施してもよい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
測定方法
(イ)全光線透過率:
JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0107】
(ロ)ヘーズ:
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0108】
(ハ)黄色度指数(YI):
JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定した。
【0109】
(ニ)表面外観(表面平滑性):
透明樹脂積層体の表面(両方の面)を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にうねりや傷がない。間近に光を透かし見ても、曇感がない。
○:間近に見ると、表面にうねりや傷を僅かに認める。間近に光を透かし見ると、僅かな曇感がある。
△:表面にうねりや傷を認めることができる。また曇感がある。
×:表面にうねりや傷を多数認めることができる。また明らかな曇感がある。
【0110】
(ホ)水接触角:
透明樹脂積層体のハードコート面を、KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JISR 3257:1999を参照。)で測定した。
【0111】
(へ)耐擦傷性(綿拭後の水接触角):
縦150mm、横50mmの大きさで、透明樹脂積層体のマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート面が表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置き、学振試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片のハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、上記(ホ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定した。なお水接触角が100度以上であれば、耐擦傷性は良好であると判断される。また2万往復後の水接触角が100度未満のときは、所定の往復回数を1万5千回、及び1万回に変更した測定も行い、以下の基準で評価した。
◎:往復回数2万回後でも水接触角100度以上。
○:往復回数1万5千回後では水接触角100度以上だが、2万回後は100度未満。
△:往復回数1万回後では水接触角100度以上だが、1万5千回後は100度未満。
×:往復回数1万回後で水接触角100度未満。
【0112】
(ト)耐傷付性:
透明樹脂積層体を、透明樹脂積層体のハードコート面が表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置いた。続いて、学振試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、試験片の表面を100往復擦った。上記表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:傷がない
○:1〜5本の傷がある
△:6〜10本の傷がある
×:11本以上の傷がある
【0113】
(チ)耐候性:
JIS B7753:2007に規定するサンシャインカーボンアーク灯式の耐候性試験機を使用し、JIS A5759:2008の表10の条件(但し、試験片は、縦125mm、横50mmの大きさで、透明樹脂積層体のマシン方向が試験片の縦方向となるように採取したものをそのまま用い、ガラスへの貼り付けは行わなかった。)で、2000時間の促進耐候性試験を行った。試験のN数は3とし、全ての試験で、透明樹脂積層体に膨れ、ひび割れ、及び剥がれ等の外観変化がない場合を合格(表には◎と記載した。)、それ以外は不合格(表には×と記載した。)とした。
【0114】
(リ)耐衝撃性:
前面板、背面板、及び側面板の各壁面で形成される上部が開口した直方体の金属製治具(大きさは、縦1100mm、横900mm、高さ200mm。)に、透明樹脂積層体を、ハードコート面が上になるようにして、上記治具の開口部を完全に覆うように設置・固定した。続いて直径100mm、質量4.11Kgの金属球を、透明樹脂積層体の上3000mmの高さから、透明樹脂積層体の開口部を覆う部分の中心付近に印した一辺130mmの正三角形の頂点に、金属球を各1回、合計で3回落下させた。試験のN数は3とし、全ての試験で金属球が透明樹脂積層体を貫通しなければ合格(表には◎と記載した。)、それ以外は不合格(表には×と記載した。)とした。
【0115】
(ヌ)鉛筆硬度:
JIS K 5600−5−4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用いて測定した。
【0116】
使用した原材料
(A)多官能(メタ)アクリレート:
(A−1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。6官能。
(A−2)エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート。3官能。
【0117】
(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物:
(B−1)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKR−513(商品名)」、Rはメトキシ基、R’はアクリロイル基、R”はメチル基。
(B−2)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンX−40−2655A(商品名)」、Rはメトキシ基、R’はメタクリロイル基、R”はメチル基。
【0118】
(B’)比較成分:
(B’−1)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKBM−403(商品名)」、アルコキシシリル基とエポキシ基を有する化合物。(メタ)アクリロイル基を有しない。
(B’−2)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKBM−903(商品名)」、アルコキシシリル基とアミノ基を有する化合物。(メタ)アクリロイル基を有しない。
【0119】
(C)有機チタン:
(C−1)日本曹達株式会社のチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート「TOG(商品名)」。
(C−2)日本曹達株式会社のテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン「TOT(商品名)」。
(C−3)日本曹達株式会社のジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン「T−50(商品名)」。
【0120】
(C’)比較成分:
(C’−1)日本曹達株式会社のテトラ−n−プロポキシジルコニウム「ZAA(商品名)」。
【0121】
(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子:
(D−1)平均粒子径20nmのシリカ微粒子。
【0122】
(E)撥水剤:
(E−1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「KY−1203(商品名)」。固形分20質量%。
(E−2)ソルベイ(Solvay)社のメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「FOMBLIN MT70(商品名)」。固形分70質量%。
(E−3)DIC株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「メガフアツクRS−91(商品名)。
【0123】
その他の任意成分:
(F−1)双邦實業股分有限公司のフェニルケトン系光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)「SB−PI714(商品名)」。
(F−2)1−メトキシ−2−プロパノール。
(F−3)BASF社のヒドロキシケトン系光重合開始剤(α−ヒドロキシアルキルフェノン)「イルガキュア127(商品名)」。
【0124】
(a)透明樹脂シート:
(a1−1)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シート:
エボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂「PLEXIMID TT70(商品名)」を用い、押出機とTダイとを備える装置を使用して、Tダイから上記樹脂の溶融シートを連続的に押出し、回転する第一鏡面ロールと、回転する第二鏡面ロールとの間に、上記溶融シートを供給投入し、押圧して、厚さ1mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度140℃、第二鏡面ロールの設定温度120℃、Tダイ出口の樹脂温度300℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は92%、ヘーズは1.0%、黄色度指数は0.6であった。
【0125】
(a2−1)アクリル系樹脂シート:
住友化学工業株式会社のアクリル系樹脂組成物(アクリル系樹脂70質量部とアクリル系コアシェルゴム30質量部の樹脂組成物)「HT03Y(商品名)」を用い、押出機とTダイとを備える装置を使用して、Tダイから上記樹脂の溶融シートを連続的に押出し、回転する第一鏡面ロールと、回転する第二鏡面ロールとの間に、上記溶融シートを供給投入し、押圧して、厚さ1mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度100℃、第二鏡面ロールの設定温度80℃、Tダイ出口の樹脂温度300℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は86%、ヘーズは2.7%、黄色度指数は0.7であった。
【0126】
(a3−1)芳香族ポリカーボネート系樹脂シート:
帝人化成株式会社の芳香族ポリカーボネート系樹脂「K−1300Y(商品名)」99.5質量部と株式会社カネカのコアシェルゴム(メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体)「カネエースB−56(商品名)」0.5質量部との樹脂組成物を用い、押出機とTダイとを備える装置を使用して、Tダイから上記樹脂の溶融シートを連続的に押出し、回転する第一鏡面ロールと、回転する第二鏡面ロールとの間に、上記溶融シートを供給投入し、押圧して、厚さ1mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度140℃、第二鏡面ロールの設定温度120℃、Tダイ出口の樹脂温度300℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は88%、ヘーズは2.3%、黄色度指数は0.8であった。
【0127】
(a4−1)ポリエステル系樹脂シート:
イーストマンケミカルカンパニー社の非結晶性ポリエステル系樹脂(PETG樹脂)「Cadence GS1(商品名)」99質量部と株式会社カネカのコアシェルゴム(メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体)「カネエースB−56(商品名)」1質量部との樹脂組成物を用い、押出機とTダイとを備える装置を使用して、Tダイから上記樹脂の溶融シートを連続的に押出し、回転する第一鏡面ロールと、回転する第二鏡面ロールとの間に、上記溶融シートを供給投入し、押圧して、厚さ1mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度80℃、第二鏡面ロールの設定温度40℃、Tダイ出口の樹脂温度200℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は85%、ヘーズは3.0%、黄色度指数は0.5であった。
【0128】
(a5−1)積層シート1:
押出機とTダイとを備える2種3層マルチマニホールド方式の共押出製膜装置を使用し、エボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂「PLEXIMID TT70(商品名)」を両外層とし、住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301−4(商品名)」を中間層とする溶融積層シートをTダイから連続的に押出し、回転する第一鏡面ロールと、回転する第二鏡面ロールとの間に、上記溶融積層シートを供給投入し、押圧して、全厚み1mm、両外層の厚み0.1mm、中間層の厚み0.8mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度140℃、第二鏡面ロールの設定温度120℃、Tダイ出口の樹脂温度300℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は91%、ヘーズは1.0%、黄色度指数は0.7であった。
【0129】
実施例1
上記a1−1の両面に処理量167W・min/m(放電電力500W、放電電極の長さ1m、ライン速度3m/min)の条件で、コロナ放電処理を行った。両面とも濡れ指数は64mN/mであった。続いてハードコート形成用塗料として、表1に示す配合組成(質量部)の塗料を用い、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記a1−1の両面に、硬化後厚みが25μmとなるようにハードコートを形成し、透明樹脂積層体を得た。上記試験(イ)〜(ヌ)を行った。結果を表1に示す。
【0130】
実施例2〜14、比較例1〜7
ハードコート形成用塗料の配合組成を表1〜4の何れか1に示すように変更したこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表1〜4の何れか1に示す。なお比較例4は、初期の水接触角(試験ホ)が100度未満であったので、試験ヘの耐擦傷性(綿拭後の水接触角)は、往復回数2万回後の水接触角測定のみを行った。
【0131】
実施例9−2
ハードコート形成用塗料の配合組成を表2に示すように変更したこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0132】
実施例15
上記a1−1に替えて、上記a2−1を用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0133】
実施例16
上記a1−1に替えて、上記a3−1を用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0134】
実施例17
上記a1−1に替えて、上記a4−1を用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0135】
実施例18
上記a1−1に替えて、上記a5−1を用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
本発明の透明樹脂積層体は、ガラスに替わる材料として好適な物性を発現している。また透明樹脂シートとしてポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートを使用した実施例1〜14、18は透明性が特に優れている。一方、成分Cを含まない比較例1は耐綿拭性に劣る。成分Cが規定量を超える比較例2は色調に劣る。成分Bが規定量未満の比較例3は耐綿拭性に劣る。成分Bが規定量を超える比較例4は撥水性が発現し難くなった。成分Bの替わりにアルコキシシリル基とエポキシ基を有し、(メタ)アクリロイル基を有しない化合物を使用した比較例5は耐綿拭性に劣る。成分Bの替わりにアルコキシシリル基とアミノ基を有し、(メタ)アクリロイル基を有しない化合物を使用した比較例6は色調に劣る。成分Cの替わりにテトラ−n−プロポキシジルコニウムを使用した比較例7は耐綿拭性に劣る。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】実施例において、透明樹脂シートの製膜に使用した装置の概念図である。
【符号の説明】
【0142】
1:Tダイ
2:溶融フィルム
3:鏡面ロール
4:鏡面ベルト
5:一対のベルトローラー
図1