(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記出力低下制御中に、第2の前記風速値を超える風速が発生し、かつ風速がその後、第3の風速値以下(ただし、第2の風速値>第3の風速値)になった場合、前記出力低下制御を終了する制御を実行することを特徴とする請求項4記載の風力発電装置。
前記制御部は、第1の風速検出時間中の長期平均風速値と、前記第1の風速検出時間よりも短い第2の風速検出時間中の短期平均風速値の測定結果を取得し、短期平均風速値が、長期平均風速値よりも第2の閾値以上で低下した場合に、前記出力低下制御を行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の風力発電装置。
前記制御部は、前記出力低下制御の際に、該制御開始直後に前記発電機による出力を一定量にする定発電量制御を第1の継続時間で継続することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の風力発電装置。
前記制御部は、定発電量制御の後に、前記発電機による出力を、第2の継続時間で、段階的または連続的に増加させて前記定格出力モードに復帰させることを特徴とする請求項7記載の風力発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のうち、(1)の手法については、レーザライダー風速計の設置が提案されているが、装置の値段が高い、また雨等の天候の影響を受けること、ロータ面内の風速不均一性の取り扱い等の課題を有する。(2)の手法については、気象モデルを使用した風速予測の場合、計算コストが高いこと、予測精度が不十分であることに起因する課題が残り、風速測定データの短期情報から予測する手法は予測精度の点で課題が残る。また、風速測定値を使用して予測する場合、測定風速がロータ面内をかならずしも代表するとは限らず、予測誤差の原因となる。(3)の手法においても、同様に測定風速の局所性が問題となる。また、本手法の場合、一般に風速の上昇傾向を把握して風車の回転数抑制制御を実施するが、風速の上昇傾向を監視して出力抑制制御を試みても、(大型風車の場合)調速制御に時間がかかるため、効果が低いという課題が挙げられる。
【0006】
本願発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、事前の対応によって、突風が発生した際の対応を確実に行うことができる風力発電装置、風力発電制御装置および風力発電制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の風力発電装置のうち、第1の形態は、
風車と、
前記風車の回転によって発電を行う発電機と、
前記発電機による出力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、第1の検出時間中の平均発電出力が定格値を目指すように前記発電機の出力を制御する定格出力モードを有し、前記定格出力モードの際に、前記第1の検出時間よりも短い第2の検出時間中における短期平均発電出力が、前記平均発電出力よりも所定の閾値以上で低下した場合、前記発電機による出力を前記平均発電出力よりも低下させる出力低下制御を行
い、
前記出力低下制御において、前記定格値またはそのときの平均発電出力を基準にして低下量が設定されていることを特徴とする
【0008】
他の形態の風力発電装置は
、風車と、
前記風車の回転によって発電を行う発電機と、
前記発電機による出力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、第1の検出時間中の平均発電出力が定格値を目指すように前記発電機の出力を制御する定格出力モードを有し、前記定格出力モードの際に、前記第1の検出時間よりも短い第2の検出時間中における短期平均発電出力が、前記平均発電出力よりも所定の閾値以上で低下した場合、前記発電機による出力を前記平均発電出力よりも低下させる出力低下制御を行い、
前記制御部は、風速計による測定結果を取得し、風速の測定結果に基づいて出力低下制御を調整することを特徴とする。
さらに他の形態の風力発電装置は、前記形態の本発明において、前記制御部は、風速が第1の風速値以上の場合に出力低下制御を実行することを特徴とする。
さらに他の形態の風力発電装置は、前記形態の本発明において、前記制御部は、前記出力低下制御中に、
出力を増加させて前記定格出力モードに復帰させる途中で、第2の風速値を超える風速が発生した場合
、前記発電機の出力を低下させる制御を実行することを特徴とする。
さらに他の形態の風力発電装置は、前記形態の本発明において、前記制御部は、前記出力低下制御中に、第2の前記風速値を超える風速が発生し、かつ風速がその後、第3の風速値以下(ただし、第2の風速値>第3の風速値)になった場合、前記出力低下制御を終了する制御を実行することを特徴とする。
【0009】
さらに他の形態の風力発電装置は、前記形態の本発明において、前記制御部は、風速計による第1の風速検出時間中の長期平均風速値と、前記第1の風速検出時間よりも短い第2の風速検出時間中の短期平均風速値の測定結果を取得し、短期平均風速値が、長期平均風速値よりも第2の閾値以上で低下した場合に、前記出力低下制御を行うことを特徴とする。
さらに他の形態の風力発電装置は、前記形態の本発明において、前記制御部は、前記出力低下制御の際に、該制御開始直後に前記発電機による出力を一定量にする定発電量制御を第1の継続時間で継続することを特徴とする。
さらに他の形態の風力発電装置は、前記形態の本発明において、前記制御部は、前記定発電量制御の後に、前記発電機による出力を、第2の継続時間で、段階的または連続的に増加させて前記定格出力モードに復帰させることを特徴とする。
【0010】
本発明の風力発電制御装置のうち、第1の形態は、 発電機を備える風力発電装置の出力を制御する制御装置であって、
前記発電機による出力を制御する制御部と、
平均発電出力を算出する第1の検出時間と、定格値と、第2の検出時間と、閾値と、出力低下時の発電量を規定する低下発電量と、をデータとして格納する記憶部と、を備え。
前記制御部は、前記記憶部における格納データを呼び出し、前記第1の検出時間中の平均発電出力が前記定格値を目指すように前記発電機の出力を制御する定格出力モードを有し、前記定格出力モードの際に、第1の前記検出時間よりも短い第2の前記検出時間中における短期平均発電出力が、前記平均発電出力よりも前記閾値以上で低下した場合、前記発電機による出力を前記平均発電出力よりも低下した前記低下発電量とする出力低下制御を行
い、
前記記憶部は、さらに、第1の風速検出時間、第2の風速検出時間、第2の閾値を格納し、
前記制御部は、前記記憶部における格納データを呼び出し、前記定格出力モードの際に、短期平均発電出力が、前記平均発電出力よりも前記閾値以上で低下し、かつ、第2の風速検出時間中の短期平均風速値が第1の風速検出時間中の長期平均風速値よりも前記第2の閾値以上で低下した場合、前記発電機による出力を前記平均発電出力よりも低下した前記低下発電量とする出力低下制御を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の風力発電制御プログラムのうち、第1の形態は、発電機を備える風力発電装置の出力を制御するコンピュータで実行される風車発電制御プログラムであって、
第1の検出時間中の平均発電出力が定格値を目指すように前記発電機の出力を制御する定格出力ステップと、
前記定格出力の際に、第1の前記検出時間よりも短い第2の検出時間中における短期平均発電出力が、前記平均発電出力よりも閾値以上で低下した場合、前記発電機による出力を前記平均発電出力よりも低下させる出力低下ステップと、を有
し、
前記出力低下ステップは、前記短期平均発電出力が、前記平均発電出力よりも閾値以上で低下し、かつ、第2の風速検出時間中の短期平均風速値が第1の風速検出時間中の長期平均風速値よりも前記第2の閾値以上で低下した場合に、前記発電機による出力を前記平均発電出力よりも低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明によれば、突風を予測して対応することができ、突風発生時に、確実な風車制御を行うことができ、風車を停止することなく運転が可能であり、風車稼働率の向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
本発明の一実施形態である風力発電装置1は、
図1に示すように、装置本体1Aに、風車2と、風車2と連結された発電機4とを有しており、さらに風力発電装置1を制御する制御部5が装置本体1A外に設置されている。ナセル3の上方には、風速計6が設置されており、制御部5に測定結果が送信される。風速計の設置箇所は特に限定されない。さらに、風力発電装置では、風速計を備えず、外部の計測データなどを入手するようにしてもよい。
また、制御部5は、装置本体1A外に設置する他に、装置本体1A内に設置されるものでもよく、また、ネットワークを介して装置本体1A内の機器と接続されるものであってもよい。制御部5は、本発明の風力発電制御装置に相当する。
【0017】
制御部5は、
図2に示すように、CPU50と、風力発電装置1を制御するプログラムや、風力発電装置1の動作パラメータ、各種設定データなどが格納された記憶部51とを有しており、記憶部51には、ROMやRAM、不揮発メモリなどが用いられる。
【0018】
CPU50では、風力発電制御プログラムが記憶部51などから読み出されるなどして実行される。
記憶部51には、平均発電出力を算出する際の第1の検出時間、定格出力を行う際の定格値、短期平均発電出力を算出する際の第2の検出時間、低下制御を行う場合の閾値、出力低下時の発電量を規定する低下発電量などが設定データとして格納されている。これらの設定データは変更可能としてもよい。
【0019】
制御部5は、風力発電装置1全体の制御を行うことができ、発電機4における出力制御として、風車2のブレード角度を変更するピッチ制御や、装置本体1Aのヨー制御、発電機4のトルク制御などを行うことができる。
【0020】
風力発電装置1では、通常、定格出力を目指して定格出力モードによって運転が行われる。
定格出力モードにおける手順を、
図3のフローチャートに基づいて説明する。
定格出力モードの開始に伴って、現況の風車ロータ回転数を取得する(ステップs1)。
次いで、主として前記回転数に基づいて定格出力(回転数)制御を行う(ステップs2)。出力制御では、風車2の角度を変更するピッチ制御や装置本体1Aの向きを調整するヨー制御、発電機4のトルク制御などによって、風力発電装置1の出力Pwが定格値を目標とするように制御する。
【0021】
出力Pwに関するデータは、制御部5で取得されており、制御部5では、定格出力制御に際し、出力Pwが定格値に対応した値であるかを判定し、フィードバックによって出力制御を行うことができる。ただし、本発明としては、定格出力制御の内容が特定のものに限定されるものではない。
【0022】
上記制御では、測定回転数に依拠して制御が行われるため、突風が生じるような状況では出力制御が間に合わない状況が発生し得る。また、風速のみの制御では、風速のゆらぎによって、的確な突風回避を行うことが難しい。
従来の制御において、突風が発生する状況における運転手順を、
図4のフローチャートに基づいて説明する。なお、突風は平均風速から突然減少した後、瞬間的に増大する特徴を有している。
【0023】
突風が頻発する状況の運転において(ステップs100)、風速が一時落ち込み、風車(ロータ)の回転速度が減速される(ステップs101)。
定格出力モードでは、定格回転数を目標値としてピッチ角度は出力増加方向へ制御される(ステップs102)。その後、急速な風速の上昇により(ステップs103)、風車の回転数が上昇する(ステップs104)。定格出力モードでは、回転数制御によるピッチ角度を出力低減方向へ制御する(ステップs105)。しかし、最大速度で制御しても間に合わず(ステップs106)、風車(ロータ)の過回転状態が発生する(ステップs107)。
【0024】
この実施形態では、風車運転時の風速や発電量(または、回転数)を検出する。検出された運転データから、風車の過回転を引き起こす特異なパターンを検出し、あらかじめ制御を実施することで、過回転状態を引き起こさないようにすることができる。特に、地形により生成される突風は平均風速から突然減少した後、瞬間的に増大する特徴を有することが想定される。
この特徴は、特に発電量に相関する。発電量を観察することで、実際のロータ面全体が受ける荷重、トルクを評価できるため、風速測定の局所性に関わる問題を排除できる。
さらに、風車の過回転状態が発生しやすい領域は風車の定格風速付近であるといえる。これは、風速の急激な減少により風車が減少した回転数(発電量)を補うために、風車ピッチ角を発電量が増加する方向に制御した瞬間に突風が吹くためである。
したがって、発電量と風速の時系列変化を監視することで、より効率的な過回転制御が可能である。
【0025】
発電量(または発電量と風速)を監視に使用することで、効果的に過回転を招く突風のみを対象とすることができる。突風の検出後、風車を出力制限状態にすることで、突風に伴う急激な回転数増加を抑制できるだけでなく、発電量の極端な増加を抑制することが可能であり、発電量の平滑化も期待できる。突風は、同一時間、同一風向で繰り返し発生することが想定されるため、風車出力を段階的に回復させることで、繰り返し発生する突風に対しても効果的に本制御の効果を得ることができる。
なお、発電量や風速の監視は、これらを直接監視する他、間接的にこれらを把握できる物理量などを対象に監視を行うようにしてもよい。例えば、発電力の監視は、発電量そのものの他、風車の回転数、発電機のトルク、発電機ブレードのピッチ角度、発電機における電流値、電圧値、風速発生に伴う荷重量、加速度など、発電量を推測できるものが挙げられる。したがって、風力以外を監視対象とする場合、監視する物理量に応じて発電量の低下に見合う変化量を把握する。
【0026】
以下に、本実施形態の制御手順を
図5のフローチャートに基づいて説明する。
制御開始に伴って、風速測定値を取得する(ステップs10)。
次に、風速値が予め定めた第1の風速値以上であるかを判定する(ステップs11)。第1の風速値は、予め突風が吹く可能性のある風速値や過回転状態を招きやすい風速領域を経験的に定めておき、記憶部51に格納しておく。風速が低い場合は、風車過回転を招く突風が吹く可能性は低く、発電効率を考慮して出力低下制御を行わないようにするのが望ましい。なお、本発明としては、風速の大小によって出力低下制御を行う判定を行わないものであってもよい。第1の風速値は、地形や風車の構造応答特性などを考慮して定めることができる。また、この際の風速値には、ある程度の時間(例えば30秒程度)の平均風速を用いるのが望ましい。
【0027】
測定した風速値が第1の風速値未満である場合(ステップs11、No)、出力低下制御は不要として、ステップs16における定格出力モードを実行する。
測定した風速値が第1の風速値以上である場合(ステップs11、Yes)、長期平均発電出力と短期平均発電出力と、を算出する(ステップs12)。長期平均発電出力は、本発明における平均発電出力に相当する。
【0028】
長期平均発電出力は、第1の検出時間における発電出力の平均値として算出し、短期平均発電出力は、第1の検出時間よりも短い第2の検出時間における発電出力の平均値として算出する。第1の検出時間および第2の検出時間は予め設定しておき、記憶部51に格納しておくことができる。第1の検出時間および第2の検出時間の大きさは特定のものに限定されるものではなく、地形などを考慮して決定してもよい。第1の検出時間としては、例えば数十秒から数百秒の範囲を選定でき、第2の検出時間としては、例えば数秒の範囲で選定することができる。第1の検出時間は第2の検出時間よりも長く、かつその差が十分にあるのが望ましい。
なお、発電出力の平均は、相加平均が一般的であるが、本発明としてはこれに限定されず、相乗平均、調和平均、加重平均などの種々の平均方法を用いることができる。長期平均発電出力と短期平均発電出力とは、同じ平均方法で算出するのが望ましいが、同じである必要はない。
なお、長期平均発電出力における第1の検出時間と、第1の風速値と比較する風速値の測定時間とは同じ時間を採用するようにしてもよい。
【0029】
長期平均発電出力と短期平均発電出力を算出した後、出力低下判定を行う(ステップs13)。出力低下判定では、閾値を予め定めておき、これを記憶部51に格納しておくことができる。閾値としては、例えば、基準となる出力に対し、10〜80%程度を設定することができる。出力低下判定は、短期平均発電出力と長期平均発電出力との対比によって行う。
なお、長期平均発電出力と短期平均発電出力は、前述したように、発電量を直接求めるものではなく、間接的にこれらを把握できる物理量などを測定対象にして、算出を行うようにしてもよい。例えば、風車の回転数、発電機のトルク、発電機ブレードのピッチ角度、発電機における電流値、電圧値、風速発生に伴う荷重量、加速度などを用いることができる。
【0030】
ステップs14では、ステップs13における判定結果に基づいて、低下発電制御の要否を判定する。出力低下制御が要であると判定されなければ(ステップs14、No)、ステップs16に移行して、通常の定格出力モードを実行する。
出力低下制御が要であると判定された場合(ステップs14、Yes)、出力低下制御を実行する(ステップs15)。その後、出力低下制御の完了後に定格出力モードを実行する(ステップs16)。次いで、終了かを判定し(ステップs17)。終了でなければステップs10に移行して処理を継続し、終了であれば(ステップs17、Yes)、手順を終了する。
【0031】
次に、出力低下判定の手順の一例を
図6のフローチャートに基づいて説明する。
出力低下判定では、短期平均発電出力が長期平均発電出力に対し、閾値以上で低下しているか否かで判定する(ステップs130)。短期平均発電出力が長期平均発電出力に対し、閾値以上で低下していれば(ステップs130、Yes)、低下発電制御が要であると判定し(ステップs131)、出力低下判定を終了する。短期平均発電出力が長期平均発電出力に対し、閾値以上で低下していなければ(ステップs130、No)、出力低下制御は不要であると判定し(ステップs132)、出力低下判定を終了する。
【0032】
他の手順の例として、風速を考慮した判定手順を
図7のフローチャートに基づいて説明する。
この例では、第2の風速検出時間における短期平均風速値が、第1の風速検出時間における長期平均風速値に対し、第2の閾値以上で低下したことを出力低下判定の条件の一つとする(ステップs130A)。第1の風速検出時間は、第2の風速検出時間よりも長くなっている。
この手順では、ステップs130で短期平均発電出力が長期平均発電出力に対し、閾値(この場合は、第1の閾値とする)以上で低下して場合(ステップs130、Yes)、さらに、短期平均風速値が長期平均風速値に対し、第2の閾値以上で低下しているかを判定する(ステップs130A)。その差が第2の閾値以上で低下していれば(ステップs130A、Yes)、出力低下要であると判定する(ステップs131)。
【0033】
一方、短期風速測定値が長期風速測定値に対し、第2の閾値以上で低下していなければ(ステップs130A、No)、出力低下は不要であると判断し(ステップs132)、処理を終了する。なお、短期平均発電出力が長期平均発電出力に対し、閾値以上で低下していなければ(ステップs130、No)、
図6の手順と同様に、出力低下不要であると判断し(ステップs132)、処理を終了する。
【0034】
長期平均風速値における第1の風速検出時間は、長期平均発電出力を算出した際の第1の検出時間と同じ時間を用いることができ、短期平均風速値における第2の風速検出時間は、短期平均発電出力を算出した際の第2の検出時間と同じ時間を用いることができる。ただし、長期平均風速値、短期平均風速値における風速検出時間は、平均発電電力の検出時間と同じである必要はない。第2の閾値は予め定めておき、記憶部51に格納しておくことができる。第2の閾値は、第1の閾値と相関しているのが望ましい。
【0035】
風速と発電量を監視した手順は、判断の確実性を増す効果がある。その一方で、風速は、例えば、ナセル上方などの一部領域で測定されるのが通常であるため、その領域では、風速値が十分に得られていても、ナセル下方側での風速が小さくなって、風車の回転数が十分に得られずに、出力が低下しているような場合もある。このような状況で、過回転を招くことも考えられるが、上記手順では、過回転抑止の点で回避可能性が低下する可能性を有している。
【0036】
次に、出力低下制御の手順を
図8のフローチャートに基づいて説明する。
先ず低下制御を行う際の低下量を記憶部51から読み出す(ステップs20)。低下量は、発電低下の出力値で規定してもよく、基準となる出力に対する減少率などによって規定するものであってもよい。基準となる出力は、出力低下制御判定時の長期平均発電出力や定格値を用いることができる。
【0037】
次いで、設定した低下量に基づいて、第1の継続時間で定発電制御を行う(ステップs21)。第1の継続時間は、予め設定しておき、記憶部51などに格納しておく。第1の継続時間は、その際の風速などによって異なる時間が設定されているものであってもよい。
定発電制御の後、第2の継続時間で、段階的または連続的に発電量を増加させる(ステップs22)。第2の継続時間は予め設定しておき、記憶部51などに格納しておく。
第2の継続時間後、出力低下から低下前の出力に復帰させ(ステップs23)、手順を終了する。
【0038】
なお、第2の継続時間で段階的または連続的な発電量増加を行っている際に、風速値によって異なる制御を行うことができる。その手順を
図9のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、風速値を取得し(ステップs30)、風速値が第2の風速値を超えたかを判定する(ステップs31)。第2の風速値は突風に相当するものであり、その値を予め設定して記憶部51などに格納しておく。したがって、この際の風速値は瞬間風速で示される。
この際に、風速値が第2の風速値を超えていれば(ステップs31、Yes)、
図6に示すステップs21に移行し、発電出力をさらに下げて定電圧制御を行う。
風速値が第2の風速値を超えていなければ(ステップs31、No)、前に第2の風速値を超え(フラグON)、かつ、第3の風速値以下の風速になっているかを判定する(ステップs32)。
【0039】
第3の風速値は、予め設定しておき、記憶部51に格納しておく。第3の風速値は、例えば、第1の風速値未満に設定するものが例示される。フラグONは、前に突風が吹いたことを示している。その後、風速値が第3の風速値まで低下していれば突風の可能性が低いことが想定される。第3の風速値には、ある程度の時間の平均風速を用いるのが望ましい。
フラグONで、かつ、第3の風速値以下の風速になっている場合(ステップs32、Yes)、フラグをOFFにした上で、段階的または連続的発電増加処理を終了する。これによる低下発電前の状態に復帰することができる。
フラグOFF、または、第3の風速値以下の風速になっていない場合(ステップs32、No)、第2の継続時間が経過したかを判定する(ステップs33)。第2の経過時間を経過していれば(ステップs33、Yes)、処理を終了し、第2の継続時間が経過していなければ、ステップs30に戻り処理を継続する。
【0040】
次に、発電時の変化を
図10(a)に示す。
図に示すように、長期平均発電出力に対し、短期平均発電出力が落ち込むと、その後に、突風が発生する可能性が高く、風車の回転が過回転になり、発電出力が急激に増加している。本実施形態では、短期平均発電出力が長期平均発電出力に対し、所定以上で落ち込んだことを検出し、
図10(b)に示すように、発電出力の低下制御を行う。
【0041】
落ち込み検出によって突風検出を予測し、発電出力を、所定の低下量で低下させる。この例では、低下制御前の出力(100%)に対し、25%出力まで低下させており、この出力を第1の継続時間で維持する。なお、突風に対する対処としては、定格出力の25%程度が好ましいが、本発明としては特に限定するものではない。その後、第2の継続時間で段階的または連続的に発電量を増加させて、低下制御前の出力に復帰させる。この際の復帰レート(復帰発電量/第2の継続時間)は、適宜定めることができる。
なお、第2の継続時間による復帰を設けることで、複数発生する突風にも対処することが可能になる。
なお、第1の継続時間と、第2の継続時間と、復帰レートとは、低下制御を行っている際の逸失発電量に係わるため、突風回避の確率と、逸失発電量とを勘案して、これらの条件を適宜選定するのが望ましい。
【0042】
図11は、均一流入風が流入する際の風車挙動シミュレーションを示す例である。
発電量の低下を検出して出力低下制御を開始する。発生した突風による過回転を抑制することができる。時刻t=7300sにおいて、風速の大きな減少は見られないが、発電量の落ち込みが発生し,制御が動作している様子が確認できる。
なお、図中実線は、制御無しを示し、点線は、制御有りを示している。
【0043】
図12は、均一流入風が流入する際に、風速の変化と発電量の変化に基づく風車挙動シミュレーションを示す例である。t=50秒前後において制御を導入することで、過回転状態を防ぐことができる。また、タワーおよびブレードに発生する荷重も抑制することが可能である。図中実線は、制御無しを示し、点線は、制御有りを示している。
【0044】
図13は、乱流流入風が流入する際の風車挙動シミュレーションの一例を示す図である。
1)突風の前兆である風速・回転数の落ち込みを検知し、
2)一度出力制限をかけることで、
3)風速の急上昇にロータ回転数が定格回転数を大幅に上回ることなく運転を継続可能である。
4)また、一度突風が発生すると繰り返しの可能性が高い。
5)そのため出力を徐々に上げる効果により、ロータ回転数を安定的に定格付近に戻すことができる。
【0045】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは前記実施形態を適宜変更することが可能である。