(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素ゴムシートの第1面のタック値が110gf未満となるように、前記フッ素ゴムシートの第1面側に表面処理を施すことを特徴とする請求項4に記載の固定用ゴムシートの製造方法。
前記フッ素ゴムシートの第1面側に、フッ素含有有機化合物を含む表面処理剤による表面処理を施すことを特徴とする請求項4又は5に記載の固定用ゴムシートの製造方法。
前記第1プレス板及び前記第2プレス板の少なくとも一方における前記梨地加工面に当接することで梨地に形成された前記フッ素ゴムシートにおける梨地面側に、当該梨地面のタック値が110gf未満となるように表面処理を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の固定用ゴムシートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について説明する。
[固定用ゴムシート]
本実施形態に係る固定用ゴムシート1は、フレキシブル基材に対してスピンコート法により薄膜を形成する際に、当該フレキシブル基材を固定するために用いられるものであって、第1面11及び第1面11に対向する第2面12を有する、フッ素ゴムからなる固定用ゴムシート本体10を備える(
図1参照)。
【0020】
固定用ゴムシート本体10の第1面11は、フレキシブル基材4(
図3参照)と対向する面であって、その表面粗さRaは1.5〜2.5μm、好ましくは1.9〜2.4μm、特に好ましくは2.2〜2.4μmである。固定用ゴムシート本体10の第1面11の算術平均表面粗さRaが上記範囲内であることで、スピンコート装置にて高速に回転しているときにはフレキシブル基材4が外れない程度に保持・固定可能である一方で、当該フレキシブル基材4を容易に剥離することができる。
【0021】
なお、本実施形態において、算術平均表面粗さRaは、例えば、表面粗さ測定装置(KEYENCE社製,形状解析レーザー顕微鏡VK−X150)を用いて測定され得る。
【0022】
固定用ゴムシート本体10の第1面11のタック値は、110gf未満であるのが好ましく、1.0〜110gfであるのがより好ましく、2.0〜5.0gfであるのが特に好ましい。固定用ゴムシート本体10の第1面11のタック値が110gf以上であると、固定用ゴムシート10からフレキシブル基材4を剥離するのが困難となるおそれがある。
【0023】
なお、本実施形態における「タック値」は、以下の方法で測定され得る。
固定用ゴムシート本体10をプローブタック試験装置(製品名:タッキング試験機TAC−II,レスカ社製)に取り付け、固定用ゴムシート本体10の第1面11に対し100gfの荷重を印加しながら3秒間プローブ(SUS製の円柱プローブ(直径:5.1mm))を接触させた後、プローブを第1面11に対する垂直方向に600mm/minの速度で剥離し、剥離するために要する力としてタック値(gf)が求められる。
【0024】
固定用ゴムシート本体10の第2面12の算術平均表面粗さRaは、0.8μm以下であるのが好ましく、0.1〜0.5μmであるのがより好ましい。固定用ゴムシート本体10の第2面12は、ガラス基板等のリジッド基板2(
図3参照)に当接する面であるが、当該算術平均粗さRaが0.8μm以下であることで、タック値が110gf以上となり、ガラス基板等に対する優れた粘着性を示すことができるため、スピンコート装置にて高速に回転したときに、固定用ゴムシート1がガラス基板等のリジッド基板2から剥離してしまうのを抑制することができる。
【0025】
固定用ゴムシート本体10の第1面11は、成形されたフッ素ゴムシートに対して粗面化処理されてなる面、又はフッ素ゴムシートの成形時に粗面化処理されてなる面である。当該粗面化処理としては、例えば、後述するフッ素ゴムシートの表面処理、フッ素ゴムシートの成形時における梨地加工処理等が挙げられるが、前者(表面処理)が好ましい。成形されたフッ素ゴムシートに対して表面処理が施されることで、固定用ゴムシート本体10の第1面11の算術平均表面粗さRaが1.5〜2.5μmとされ、かつ第1面11のタック値が2.0〜5.0gf程度とされる。その結果、スピンコート装置にて高速に回転しているときにはフレキシブル基材4が外れない程度に保持・固定可能である一方で、当該フレキシブル基材4を容易に剥離することが可能な固定用ゴムシート1とすることができる。
【0026】
固定用ゴムシート本体10の第1面11が、成形時にフッ素ゴムシートに対して梨地加工処理が施された面(梨地面)である場合、当該第1面11(梨地面)に対し、上記表面処理剤による表面処理を施すのが好ましい。これにより、当該第1面11(梨地面)の算術平均表面粗さRaをさらに大きくすることができるため、スピンコート装置にて高速に回転しているときにはフレキシブル基材4が外れない程度に保持・固定可能であり、かつ当該フレキシブル基材4を容易に剥離することができる。
【0027】
なお、固定用ゴムシート本体10の第2面12は、成形時にフッ素ゴムシートに対して鏡面加工処理がなされた面(鏡面)であるのが好ましい。第2面12が鏡面であることで、第2面12の算術平均粗さRaを0.8μmとし、タック値を大きく(110gf以上)することができる。その結果、高速に回転しているときに、ガラス基板等のリジッド基板に対して強い粘着性を示すことができる。
【0028】
本実施形態に係る固定用ゴムシート1は、平面視略方形状を有するが、当該形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、フレキシブル基材4の形状等に応じて適宜設定される。また、本実施形態に係る固定用ゴムシート1の厚さは、特に限定されないものの、好適には1〜10mm程度である。当該厚さが厚くなりすぎると、スピンコート装置での高速回転時に固定用ゴムシート1の第1面11の平行性が安定せず、フレキシブル基材4上に形成される薄膜の膜厚にバラツキが生じてしまうおそれがある。
【0029】
本実施形態に係る固定用ゴムシート1の大きさは、第1面11に保持・固定されるフレキシブル基材4よりも小さくなく、かつ後述するスピンコート装置の回転テーブル3及びリジッド基板2(
図3参照)よりも大きくない限り、特に制限されないが、
図2に示すように、第1面11上に保持・固定されるフレキシブル基材4を物理的に包含可能な大きさであるのが好ましい。後述するように、フレキシブル基材4は、本実施形態に係る固定用ゴムシート1の第1面11とフレキシブル基材4との間に流動層5を形成するように、当該固定用ゴムシート1に保持・固定されるが(
図3参照)、フレキシブル基材4が固定用ゴムシート1に物理的に包含可能な大きさであることで、フレキシブル基材4が固定用ゴムシート1に強固に保持・固定される。
【0030】
なお、本実施形態に係る固定用ゴムシート1において、第1面11に上記表面処理剤による表面処理が施されている場合、当該第1面11におけるフッ素含有率(%)は、炭素含有率を100%としたときに50〜230%程度である。当該フッ素含有率は、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求められ得る。
【0031】
[固定用ゴムシートの製造方法]
本実施形態に係る固定用ゴムシート1は、以下のようにして製造される。
まず、フッ素ゴムと、加硫剤と、共架橋剤とを含有するゴム配合物に加硫処理を施す。このとき、表面が鏡面加工された一対のプレス板により、又は表面が鏡面加工されたプレス板と梨地加工されたプレス板とによりゴム配合物の両面からプレスした状態で加硫し、第1面及び第2面が鏡面であるフッ素ゴムシート、又は第1面が梨地面であり、第2面が鏡面であるフッ素ゴムシートを作製する。
【0032】
フッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン(VDF/HFP)系共重合体、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン(VDF/HFP/TFE)系共重合体、ビニリデンフルオライド/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン(VDF/PAVE/TFE)系共重合体、ビニリデンフルオライド/パーフルオロアルキルビニルエーテル/ヘキサフルオロプロピレン(VDF/PAVE/HFP)系共重合体、ビニリデンフルオライド/パーフルオロアルキルビニルエーテル/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン(VDF/PAVE/HFP/TFE)系共重合体等が挙げられる。
【0033】
かかるフッ素ゴムとしては、バイトン(登録商標)GLT、GLT−S、GFLT、GFLT−S、GF、GF−S、GBL、GBL−S(デュポン社製)等の市販品を用いることができる。
【0034】
加硫剤としては、例えば、非硫黄加硫剤である有機化酸化物を用いることができる。有機化酸化物としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0035】
フッ素ゴム配合物における加硫剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。
【0036】
共架橋剤(架橋助剤)としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメタアリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられる。
【0037】
フッ素ゴム配合物における共架橋剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。
【0038】
なお、ゴム配合物は、その他の成分として、導電性粒子(カーボンブラック、カーボンナノチューブ等);酸化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の受酸剤;各種の充填剤等を含有していてもよい。
【0039】
ゴム配合物の加硫条件(加熱条件)としては、特に限定されるものではないが、例えば、1次加硫が150〜180℃で5〜20分程度、2次加硫が180〜250℃で2〜6時間程度とされる。
【0040】
このようにして作製されるフッ素ゴムシートの厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜10mm程度である。当該フッ素ゴムシート、すなわち固定用ゴムシート1の厚さが大きすぎると、スピンコート装置での高速回転時に固定用ゴムシート1の第1面11の平行性が安定せず、フレキシブル基材4上に形成される薄膜の膜厚にバラツキが生じてしまうおそれがある。
【0041】
上述のようにして得られたフッ素ゴムシート(第1面及び第2面がともに鏡面であるフッ素ゴムシート)の第1面に対して所定の表面処理を施す。これにより、第1面11の算術平均表面粗さRaが1.5〜2.5μmである固定用ゴムシート1を製造することができる。
【0042】
上記表面処理は、第1面11の算術平均表面粗さRaを1.5〜2.5μmとすることができればよく、例えば、フッ素含有有機化合物(フッ素ゴム、フッ素樹脂、テフロン(登録商標)等)を含む表面処理剤を用いた表面処理により当該表面処理剤の塗膜(薄膜)を第1面11に形成する処理、DLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)の成膜処理等が挙げられる。
【0043】
フッ素含有有機化合物を含む表面処理剤としては、市販の表面処理剤を用いてもよく、例えば、モルティアコートR2330(住鉱潤滑剤社製)等を用いることができる。
【0044】
また、フッ素含有有機化合物を含む表面処理剤として、下記式(I)で示されるフッ素含有化合物と、下記式(II)で示されるシランカップリング剤と、テトラエトキシシランと、アセトンと、塩酸とを含有するものを用いてもよい。
【0045】
【化1】
(上記式(I)中、R
1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R
2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R
3及びR
4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表し、xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。)
【0046】
【化2】
(上記式(II)中、R
5はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R
6はアルキル基を表し、R
7は前記ゴム基材を構成するゴム組成物のポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を表し、mは1〜3の整数であり、nは0〜3の整数である。)
【0047】
上記式(I)において、R
1で表されるフルオロアルキル基を含有する基としては、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
6F
13、−C
7F
15等の−C
qF
2q+1(q=1〜10)で表されるフルオロアルキル基;オキシフルオロアルキレン基等を挙げることができ、これらのうち、下記式(III)で示されるオキシフルオロアルキレン基であるのが好ましい。
【0048】
【化3】
(上記式(III)中、pは0〜2の整数である。)
【0049】
上記式(I)において、R
2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2のアルキル基が挙げられ、R
2で表されるアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等の炭素数2〜4のアルコキシアルキル基が挙げられる。これらのうち、R
2で表される基としては、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0050】
上記式(I)において、R
3及びR
4で表される有機基としては、例えば、下記式(i)〜(v)で示される基を挙げることができる。
【0052】
上記式(I)において、トリアルコキシシリル基又はトリアルコキシアルコキシシリル基(−Si(OR
2)
3)が結合する中間鎖(−CH
2−CH−)の数xは、1〜100であり、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10、特に好ましくは2〜5である。また、中間鎖(−CH
2−CR
3R
4−)の数yは、0〜100であり、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜10である。
【0053】
上記フッ素含有化合物として好適な化合物としては、下記式(IV)〜(VIII)で示される化合物を例示することができる。特に、下記式(IV)又は式(V)で示される化合物(上記式(I)においてy=0である化合物)は、1分子中に占めるフッ素原子の割合が大きく、固定用ゴムシート1の第1面11に高い効率でフッ素原子を存在させ得るため好ましい。
【0054】
【化5】
(式(IV)中、x’は2又は3である。)
【0056】
【化7】
(式(V)及び式(VI)中、R
1’は、−CF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OC
3F
7で表される基である。式(V)中、xaは1〜100の整数である。式(VI)中、xbは1〜100の整数であり、ybは1〜500の整数である。)
【0057】
【化8】
(式(VII)中、xcは1〜10の整数であり、ycは0〜100の整数である。)
【0058】
【化9】
(式(VIII)中、xdは1〜10の整数であり、ydは0〜100の整数である。)
【0059】
上記式(I)で示されるフッ素含有化合物は、下記式(Ia)で示されるフッ素含有過酸化物の存在下に、下記式(Ib)で示される単量体と、下記式(Ic)で示される単量体とを重合させることにより得られる。なお、この反応性生物(フッ素含有化合物)中には、フルオロアルキル基を含有する基(R
1)が片末端のみに導入されているオリゴマーが任意の割合で含まれていてもよい。
【0060】
【化10】
(式(Ia)〜(Ic)中、R
1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R
2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R
3及びR
4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表す。)
【0061】
上記表面処理剤におけるフッ素含有化合物の含有割合としては、特に限定されるものではないが、1.0〜10.0質量%であるのが好ましく、1.5〜5.0質量%であるのがより好ましく、1.8〜3.0質量%であるのが特に好ましい。
【0062】
上記表面処理剤に含まれるシランカップリング剤(上記式(II))において、「−Si(OR
5)
mR
63-m」で表される基は、少なくとも1個、好ましくは3個の加水分解性基(−OR
5)を有する。これにより、上記式(II)で示されるシランカップリング剤は、複数の加水分解性基(−OR
2)を有する、上記式(I)で示されるフッ素含有化合物と反応することができる。
【0063】
上記式(II)において、「−Si(OR
5)
mR
63-m」で表される基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基であるのが好ましい。
【0064】
フッ素ゴム組成物のポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基(−R
7)としては、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ウレイド基等が挙げられる。
【0065】
上記表面処理剤において、シランカップリング剤の含有量としては、フッ素含有化合物の含有量の0.01〜10倍(質量基準)であるのが好ましく、0.1〜5倍(質量基準)であるのがより好ましく、0.5〜2倍(質量基準)であるのが特に好ましい。
【0066】
なお、上記表面処理剤は、上記式(I)で示されるフッ素化合物と、テトラエトキシシランと、アセトンと、塩酸とを所定の溶剤に添加し、所定時間(10〜30分程度)攪拌してそれらの成分を表面処理剤用溶剤に溶解させることにより容易に調製され得る。
【0067】
このような表面処理剤をフッ素ゴムシート(第1面及び第2面がともに鏡面であるフッ素ゴムシート)の第1面に塗布することで当該表面処理剤の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱する。これにより、固定用ゴムシート本体10の第1面11を粗面化処理することができ、当該第1面11の算術平均表面粗さRaを1.5〜2.5μmにすることができる。
【0068】
フッ素ゴムシートの第1面に表面処理剤を塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等を用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0069】
フッ素ゴムシートの第1面に形成された塗膜を加熱する方法としては、オーブンによる加熱、遠赤外線による加熱等が挙げられるが、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば、90〜150℃で10分〜1時間程度、好ましくは130〜150℃で10分〜1時間程度である。
【0070】
フッ素ゴムシートの第1面にDLC膜(膜厚0.3〜2.0μm程度)を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、CVD法、PVD法等が挙げられ、特に常温〜80℃程度の処理温度でのプラズマCVD法が好適である。
【0071】
なお、第1面が梨地面であるフッ素ゴムシートは、当該第1面(梨地面)の算術平均表面粗さRaが1.5〜2.5μmであり、そのまま本実施形態に係る固定用ゴムシート1として用いられ得るものであるが、当該第1面(梨地面)を上記表面処理剤にて表面処理するのが好ましい。当該第1面(梨地面)を上記表面処理剤にて表面処理することで、算術平均表面粗さRaをさらに大きくすることができる。
【0072】
[成膜方法]
本実施形態に係る固定用ゴムシート1を用いて、スピンコート法によりフレキシブル基材に薄膜を形成する方法(成膜方法)について説明する。
図3は、本実施形態における成膜方法を示す概略構成図である。
【0073】
図3に示すように、本実施形態に係る固定用ゴムシート1を上面に密着させたリジッド基板(ガラス基板、金属基板等)2を、スピンコート装置の回転テーブル3上に真空吸着、粘着テープ等により固定する。リジッド基板2は、本実施形態に係る固定用ゴムシート1を保持するためのものである。そのため、リジッド基板2の上面(固定用ゴムシート1の第2面12が当接する面)は、固定用ゴムシート1の第2面12が密着可能な程度に平坦性を有するのが好ましい。本実施形態に係る固定用ゴムシート1の第2面12の算術平均表面粗さRaが0.8μm以下であり、タック値が110gf以上であるため、固定用ゴムシート1は、スピンコート装置における回転に耐え得る程度にリジッド基板2の上面に密着する。
【0074】
リジッド基板2の上面に固定用ゴムシート1を密着させる方法として、好ましくは、固定用ゴムシート1を上面に載置したリジッド基板2を真空チャンバ内に収容し、真空雰囲気下にて固定用ゴムシート1をリジッド基板2に密着させる。
【0075】
次に、固定用ゴムシート1の第1面11とフレキシブル基材4(樹脂フィルム基材、金属箔、ガラス/樹脂複合フィルム基材等)との間に流体層5を形成するようにして、フレキシブル基材4を固定用ゴムシート1の第1面11上に載置し、固定する。具体的には、流体層5を構成する流体(液体)を固定用ゴムシート1の第1面11上に供給し、当該流体にフレキシブル基材4を接触させるようにして、フレキシブル基材4を固定用ゴムシート1の第1面11上に載置する。
【0076】
流体層5を介さずに固定用ゴムシート1の第1面11に直接フレキシブル基材4を載置してしまうと、それらの間に空気層(気泡)を挟み込みやすく、当該気泡が存在したままスピンコーティングすると、フレキシブル基材4が固定用ゴムシート1から外れやすく、またフレキシブル基材4上に形成される薄膜の膜厚にバラツキが生じやすい。本実施形態のように、流体層5を介して固定用ゴムシート1の第1面11上にフレキシブル基材4を載置することで、固定用ゴムシート1の第1面11とフレキシブル基材4との間に空気層(気泡)が挟み込まれるのを抑制することができ、フレキシブル基材4を保持・固定することができるとともに、実質的に均一な薄膜の形成が可能となる。
【0077】
また、本実施形態に係る固定用ゴムシート1を用いずに、リジッド基板2上に流体層5を介してフレキシブル基材4を直接載置すると、スピンコート装置の回転テーブル2の回転により、フレキシブル基材4がリジッド基板2から外れてしまうおそれがある。
【0078】
本実施形態においては、固定用ゴムシート1の第1面1の算術平均表面粗さRaが1.5〜2.5μmであり、当該固定用ゴムシート1の第1面11上に流体層5を介してフレキシブル基材4が固定されることで、スピンコート時における高速回転に耐え得る程度(外れない程度)にフレキシブル基材4が保持・固定され、かつ固定用ゴムシート1からフレキシブル基材4を容易に剥離することができる。
【0079】
流体層5を構成する流体(液体)としては、スピンコート法による薄膜形成に悪影響を及ぼさないものである限りにおいて特に制限されるものではないが、例えば、トルエン、イソプロパノール等の有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0080】
本実施形態においては、固定用ゴムシート1の第1面11とフレキシブル基材4との間に流体層5を極めて薄い厚みで形成することで、フレキシブル基材4を固定用ゴムシート1に保持・固定することができる。よって、スピンコート時における高速回転により、固定用ゴムシート1からフレキシブル基材4が外れてしまうことを防止することができる。
【0081】
このようにして固定用ゴムシート1の第1面11上にフレキシブル基材4を保持・固定し、回転テーブル3を回転させながらフレキシブル基材4上に成膜材料を滴下する。これにより、フレキシブル基材4上に薄膜が形成される。このようにして薄膜が形成されたフレキシブル基材4を固定用ゴムシート1から剥離し、オーブン等で加熱処理を施すことで、薄膜が硬化する。本実施形態に係る固定用ゴムシート1においては、フレキシブル基材4を容易に剥離することができるため、フレキシブル基材1上に形成された薄膜が折れ曲がってしまったり、薄膜にシワが形成されてしまったりするのを防止することができる。また、フレキシブル基材4と固定用ゴムシート1の第1面11との間に空気層(気泡)を挟み込み難いため、スピンコート装置での高速回転中にフレキシブル基材4が外れ難く、また実質的に均一な膜厚で成膜することができる。したがって、本実施形態における成膜方法によれば、スピンコート法によりフレキシブル基材4上に薄膜を多層に形成する場合であっても、当該多層薄膜を精度よく、かつ実質的に均一な膜厚で形成することができる。
【0082】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0084】
[製造例1]フッ素ゴムシート1の製造
フッ素ゴム(ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体,製品名:ダイエルG−801,ダイキン社製)100質量部、加硫剤1.5質量部、及び共架橋剤(製品名:TAIC,日本油脂社製)4質量部を8インチロールによって混練してフッ素ゴム配合物(未加硫ゴム)を調製した。
【0085】
次に、この未加硫ゴムを、鏡面加工処理が施されている第1プレス板及び第2プレス板を用い、熱プレスによる加硫処理(1次加硫:170℃,10分間;2次加硫:200℃,4時間)を行い、フッ素ゴム(加硫ゴム)からなるフッ素ゴムシート1(厚さ:2mm)を作製した。
【0086】
[製造例2]フッ素ゴムシート2の製造
第1プレス板として梨地加工処理が施されているものを用いた以外は、製造例1と同様にしてフッ素ゴムシート2(厚さ:2mm)を作製した。
【0087】
[製造例3]フッ素ゴムシート3の製造
第1プレス板及び第2プレス板として梨地加工処理が施されているものを用いた以外は、製造例1と同様にしてフッ素ゴムシート3(厚さ:2mm)を作製した。
【0088】
〔実施例1〕
(1)表面処理剤1の調製
上記式(IV)で示されるフッ素含有化合物0.1g、テトラエトキシシラン(TEOS)0.2g、上記式(II)で示されるメルカプト系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=SH,m=3,n=3;Z6062,東レダウコーニング社製)0.1g及び0.1N塩酸0.002gを、アセトン10mLに添加し、室温下にて10分間攪拌することにより、表面処理剤1を調製した。
【0089】
(2)フッ素ゴムシート1の表面処理
製造例1にて製造されたフッ素ゴムシート1の一方面に、上記表面処理剤1をスプレーコーティングし、150℃のオーブンで10分間焼成して、固定用ゴムシートを製造した。
【0090】
(3)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面の算術平均表面粗さRaを、表面粗さ測定装置(KEYENCE社製,形状解析レーザー顕微鏡VK−X150)を用いて測定したところ、当該表面粗さRaは2.393μmであった。
【0091】
また、上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を以下のようにして測定した。
【0092】
固定用ゴムシートをプローブタック試験装置(製品名:タッキング試験機TAC−II,レスカ社製)に取り付け、固定用ゴムシートの第1面(第2面)に対し100gfの荷重を印加しながら3秒間プローブ(SUS製の円柱プローブ(直径:5.1mm))を接触させた後、プローブを第1面(第2面)に対する垂直方向に600mm/minの速度で剥離し、剥離するために要する力(タック値,gf)を測定した。固定用ゴムシートの第1面のタック値は3.2gfであり、第2面のタック値は405.2gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は4.9gfであった。
【0093】
(4)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに116%であった。
【0094】
〔実施例2〕
(1)表面処理剤2の調製
上記式(IV)で示されるフッ素含有化合物0.075g、テトラエトキシシラン(TEOS)0.15g、上記式(II)で示されるメルカプト系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=SH,m=3,n=3;Z6062,東レダウコーニング社製)0.075g及び0.1N塩酸0.002gを、アセトン10mLに添加し、室温下にて10分間攪拌することにより、表面処理剤2を調製した。
【0095】
(2)フッ素ゴムシート1の表面処理
製造例1にて製造されたフッ素ゴムシート1の一方面に、実施例1と同様にして上記表面処理剤2による表面処理を施し、固定用ゴムシートを製造した。
【0096】
(3)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面の算術平均表面粗さRa、上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは2.245μm、第1面のタック値は2.1gf、第2面のタック値は404.8gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は4.0gfであった。
【0097】
(4)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに100%であった。
【0098】
〔実施例3〕
(1)表面処理剤3の調製
上記式(IV)で示されるフッ素含有化合物0.05g、テトラエトキシシラン(TEOS)0.1g、上記式(II)で示されるメルカプト系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=SH,m=3,n=3;Z6062,東レダウコーニング社製)0.05g及び0.1N塩酸0.002gを、アセトン10mLに添加し、室温下にて10分間攪拌することにより、表面処理剤3を調製した。
【0099】
(2)フッ素ゴムシート1の表面処理
製造例1にて製造されたフッ素ゴムシート1の一方面に、実施例1と同様にして上記表面処理剤3による表面処理を施し、固定用ゴムシートを製造した。
【0100】
(3)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面の算術平均表面粗さRa、上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは2.094μm、第1面のタック値は2.9gf、第2面のタック値は445.4gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は3.5gfであった。
【0101】
(4)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに158%であった。
【0102】
〔実施例4〕
(1)表面処理剤4の調製
上記式(IV)で示されるフッ素含有化合物0.2g、テトラエトキシシラン(TEOS)0.4g、上記式(II)で示されるメルカプト系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=SH,m=3,n=3;Z6062,東レダウコーニング社製)0.2g及び0.1N塩酸0.002gを、アセトン10mLに添加し、室温下にて10分間攪拌することにより、表面処理剤4を調製した。
【0103】
(2)フッ素ゴムシート1の表面処理
製造例1にて製造されたフッ素ゴムシート1の一方面に、実施例1と同様にして上記表面処理剤4による表面処理を施し、固定用ゴムシートを製造した。
【0104】
(3)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面の算術平均表面粗さRa、上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは2.020μm、第1面のタック値は2.1gf、第2面のタック値は401.9gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は3.3gfであった。
【0105】
(4)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに55%であった。
【0106】
〔実施例5〕
(1)表面処理剤5の調製
上記式(IV)で示されるフッ素含有化合物0.025g、テトラエトキシシラン(TEOS)0.05g、上記式(II)で示されるメルカプト系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=SH,m=3,n=3;Z6062,東レダウコーニング社製)0.025g及び0.1N塩酸0.002gを、アセトン10mLに添加し、室温下にて10分間攪拌することにより、表面処理剤5を調製した。
【0107】
(2)フッ素ゴムシート1の表面処理
製造例1にて製造されたフッ素ゴムシート1の一方面に、実施例1と同様にして上記表面処理剤5による表面処理を施し、固定用ゴムシートを製造した。
【0108】
(3)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面の算術平均表面粗さRa、上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは1.903μm、第1面のタック値は3.2gf、第2面のタック値は389.2gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は3.2gfであった。
【0109】
(4)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに229%であった。
【0110】
〔実施例6〕
(1)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
製造例2にて製造されたフッ素ゴムシート2を固定用ゴムシートとし、当該固定用ゴムシートにおける梨地処理面(第1面)の算術平均表面粗さRa、固定用ゴムシートにおける梨地処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは1.980μm、第1面のタック値は102.1gf、第2面のタック値は277.9gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は70.8gfであった。
【0111】
(2)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける梨地処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに283%であった。
【0112】
〔実施例7〕
(1)フッ素ゴムシート2の表面処理
製造例2にて製造されたフッ素ゴムシート2の梨地処理面に、実施例1と同様にして上記表面処理剤1による表面処理を施し、固定用ゴムシートを製造した。
【0113】
(2)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面の算術平均表面粗さRa、上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは2.320μm、第1面のタック値は3.4gf、第2面のタック値は299.0gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は3.2gfであった。
【0114】
(3)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける表面処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに93%であった。
【0115】
〔実施例8〕
(1)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
製造例3にて製造されたフッ素ゴムシート3を固定用ゴムシートとし、当該固定用ゴムシートにおける一方面(第1面)の算術平均表面粗さRa、固定用ゴムシートにおける一方面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは1.980μm、第1面及び第2面のタック値は102.1gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は70.8gfであった。
【0116】
(2)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける梨地処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに283%であった。
【0117】
〔実施例9〕
(1)フッ素ゴムシート1のDLC成膜処理
製造例1にて製造されたフッ素ゴムシート1の第1面に、CVD法によりDLC薄膜を形成したものを準備した(ジニアスコートF,日本アイティーエフ社製)。
【0118】
(2)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
上記固定用ゴムシートにおけるDLC成膜処理面(第1面)の算術平均表面粗さRa、上記固定用ゴムシートにおけるDLC成膜処理面(第1面)及びその対向面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは1.919μm、第1面のタック値は2.4gf、第2面のタック値は249.6gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は3.0gfであった。
【0119】
〔比較例1〕
(1)算術平均表面粗さRa及びタック値の測定
フッ素ゴムシート1を固定用ゴムシートとし、当該固定用ゴムシートにおける第1面の算術平均表面粗さRa、固定用ゴムシートにおける第1面及びその対向面である第2面のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは0.378μm、第1面及び第2面のタック値は428.4gfであった。なお、固定用ゴムシートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用ゴムシートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用ゴムシートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は316.6gfであった。
【0120】
(2)フッ素含有率の測定
上記固定用ゴムシートにおける梨地処理面(第1面)のフッ素含有率(%)を、走査型顕微鏡及びエネルギー線分散型X線分析装置(例えば、製品名:JSM−6510LA,JED−2300,日本電子社製等)を用いて求めた。固定用ゴムシートの第1面のフッ素含有率は、炭素含有率を100%としたときに283%であった。
【0121】
〔比較例2〕
フレキシブルプリント基板を搬送するために用いられる、富士フイルム社製のプロリーダー(製品名)を固定用シートとし、当該固定用シートにおける一方面(フレキシブルプリント基板の載置面,第1面)の算術平均表面粗さRa、当該一方面(第1面)及びその裏面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは0.454μm、第1面及び第2面のタック値は26.2gfであった。なお、固定用シートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用シートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用シートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は72.4gfであった。
【0122】
〔比較例3〕
粘着シリコーンシートを固定用シートとし、当該固定用シートにおける一方面(第1面)の算術平均表面粗さRa、当該一方面(第1面)及びその裏面(第2面)のタック値を、実施例1と同様にして測定した。算術平均表面粗さRaは0.622μm、第1面及び第2面のタック値は105.5gfであった。なお、固定用シートの第1面にトルエンを滴下する工程、当該トルエンにPETフィルムを当接させることで固定用シートにPETフィルムを保持・固定させる工程、及びPETフィルムを剥離する工程の一連の工程を12回繰り返し行い、その後固定用シートの第1面のタック値を測定した。第1面のタック値は145.6gfであった。
【0123】
〔試験例1〕
実施例1の固定用ゴムシートをガラス基板(厚さ:0.7mm)上に載置し、当該ガラス基板及び固定用ゴムシートを密封容器内に収容し、当該容器内を真空状態にして、ガラス基板に固定用ゴムシートを密着させた。そして、当該ガラス基板をスピンコート装置の回転テーブル上に両面テープで固定し、固定用ゴムシート上に適量のトルエンを滴下し、トルエンにPETフィルム(製品名:酸化インジウムスズコートPET,シグマアルドリッチ社製)を接触させるようにしてPETフィルムを固定用ゴムシート上に載置し、PETフィルムと固定用ゴムシートの第1面との間に流体層を形成することで、PETフィルムを固定用ゴムシート上に保持・固定した。
【0124】
次に、回転テーブルを所定の回転数で回転させながら、PETフィルム上に成膜材料を滴下し、薄膜を形成した。そして、回転中にPETフィルムが固定用ゴムシートから外れてしまうか否か、PETフィルムと固定用ゴムシートとの間に気泡が挟み込まれるか否かについて目視で評価した。また、固定用ゴムシート上にトルエンを滴下し、PETフィルムを保持・固定し、スピンコーティングする工程を繰り返し(30回)行い、固定用ゴムシートの有機溶媒に対する耐久性を評価した。実施例2〜9及び比較例1の固定用ゴムシート、並びに比較例2〜3の固定用シートについても、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
表1において、スピンコート耐久性の評価は、PETフィルムが固定用ゴムシートから外れなかったものを「○」、10回に1回程度の頻度で外れてしまったものを「△」、毎回外れてしまったものを「×」とした。繰り返し耐久性の評価は、固定用ゴムシートが変質しなかったものを「○」、30回の繰り返し処理で固定用ゴムシートが変質したものを「△」、20回の繰り返し処理で固定用ゴムシートが変質したものを「×」とした。気泡の有無の評価は、PETフィルムと固定用ゴムシートとの間に気泡が存在しなかったものを「○」、わずかに(10個程度)気泡が存在したものを「△」、多くの気泡が存在したものを「×」とした。
【0127】
表1に示すように、実施例1〜9の固定用ゴムシートは、スピンコート耐久性及び繰り返し耐久性が良好であり、フレキシブル基材の固定用ゴムシートとして好適であることが確認された。特に、実施例1〜5の固定用ゴムシート(フッ素含有有機化合物を含む表面処理剤にて第1面を表面処理したもの)においては、フレキシブル基材との間に気泡を挟みこむこともなく、より好適であることが確認された。また、実施例9の固定用ゴムシート(第1面にDLC膜が形成されているもの)においても、フレキシブル基材との間に気泡を挟みこむこともなく、より好適であることが確認された。実施例6〜8の固定用ゴムシートは、第1面に梨地加工処理が施されていることから、フレキシブル基材との間に空隙を作り易く、気泡を挟み込んでしまったものと思われる。また、実施例6〜8の固定用ゴムシートは、第1面に梨地加工処理が施されていることで、フレキシブル基材との接触面積が小さいため、高速回転になるほどにフレキシブル基材が外れやすい傾向が見受けられたが、実施例7のようにフッ素系表面処理剤にて表面処理することで、フレキシブル基材との粘着性を向上させることができるものと考えられる。
【0128】
一方、比較例2及び3の固定用シートは、スピンコート耐久性に関して実施例1〜8と大差のない結果を示したものの、繰り返し耐久性に難があることが確認された。具体的には、比較例2においては、固定用シートに含まれるアルミナが第1面に析出し、表面の平坦性が悪化してしまった。比較例3においては、第1面側が変質して凹凸が形成されてしまい、表面の平坦性が悪化してしまった。そのため、比較例2及び3の固定用シートでは、複数回の繰り返し使用により、第1面の平坦性が悪化し、薄膜形成に悪影響を及ぼすものと推認される。
【0129】
また、実施例1〜8の固定用ゴムシートは、流体層(トルエン層)に曝された後であっても、第1面のタック値に変化はないが、比較例2及び3の固定用シートは、流体層(トルエン層)に曝されることで、第1面のタック値が増大してしまうことが確認された。そのため、実施例1〜8の固定用ゴムシートにおいては、複数回繰り返して使用しても、フレキシブル基材の剥離容易性を維持することができる一方、比較例2及び3の固定用シートにおいては、複数回の繰り返し使用により、フレキシブル基材の剥離がより困難になるものと推認される。
【0130】
なお、実施例1〜9及び比較例1〜3の固定用ゴムシートにおいて、いずれも、フレキシブル基材と固定用ゴムシートとの間に形成した流体層(トルエン層)は、スピンコート装置による高速回転時に揮発してしまっていた。
【0131】
〔試験例2〕
実施例1〜7及び実施例9、並びに比較例1〜3の固定用ゴムシートの第1面上にトルエンを滴下し、トルエンにPETフィルム(製品名:ルミラー,東レ社製)を接触させるようにしてPETフィルムを固定用ゴムシート上に載置した後、PETフィルムと固定用ゴムシートの第1面との間に形成したトルエンからなる流体層を揮発させた。そして、当該固定用ゴムシートからのPETフィルムの剥離容易性につき、5名のパネラーによる官能評価試験を行った。
【0132】
官能評価試験の結果、実施例1〜7及び実施例9の固定用ゴムシートにおいては、5名のパネラーともに、相対的にPETフィルムを剥がし易いという結果になり、一方、比較例1の固定用ゴムシート及び比較例2,3の固定用シートにおいては、5名のパネラーともに、相対的にPETフィルムを剥がし難いという結果になった。特に、第1面のタック値が110gf以上である比較例1の固定用ゴムシートにおいては、PETフィルムを剥がし難い結果となった。
【0133】
上記試験例2の結果から、固定用ゴムシートの第1面の算術平均表面粗さRaが1.5〜2.5μmの範囲内であって、第1面のタック値が110gf未満であれば、フレキシブル基材を剥がし易くなることが明らかとなった。
【0134】
試験例1において確認されたように、フレキシブル基材と固定用ゴムシートとの間に形成した流体層(トルエン層)は、スピンコート装置による高速回転時に揮発する。そのため、フレキシブル基材が容易に剥離されるか否かは、固定用ゴムシートの第1面の表面状態によると考えられる。その点、実施例1〜8の固定用ゴムシートのように、算術平均表面粗さRaが1.5〜2.5μmの範囲内であって、タック値が110gf未満であるという表面状態が、フレキシブル基材の剥離容易性に影響を与えたものと考えられる。