(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マーク表示部(50)は、前記本体掴み部(19)と重ならないように前記本体掴み部(19)の外側へ延びる部分(52,53)を含む、請求項2に記載の管継手(1)。
製品出荷時において、前記第1始点マーク(23)が前記第1終点マーク(60)の範囲内に収まるように前記第1ナット(20)が前記継手本体(10)に締め付けられ、かつ、前記第2始点マーク(33)が前記第2終点マーク(70)の範囲内に収まるように前記第2ナット(30)が前記継手本体(10)に締め付けられている、請求項1〜7の何れか1項に記載の管継手(1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された方法では、継手本体に対するナットの締付角を管理するために、ナットの外周面に基準線を設ける作業や、ナットの締付完了後に管継手に治具を装着してナットの締付角が管理値の範囲内であるか否かを判定するなどの作業が必要であり、簡易的にナットの締付角を管理することが困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ナットの締付角の管理をより簡易化することが可能な管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る管継手(1)は、一方向(P)に延びる内部通路(11)と、前記内部通路(11)の一端側の第1端部(15)と、前記内部通路(11)の他端側の第2端部(14)と、を有する継手本体(10)と、前記第1端部(15)において前記継手本体(10)に対して回転可能に螺合し、第1始点マーク(23)が外周面に形成された第1ナット(20)と、前記第2端部(14)において前記継手本体(10)に対して回転可能に螺合し、第2始点マーク(33)が外周面に形成された第2ナット(30)と、を備える。前記継手本体(10)には、前記第1始点マーク(23)から前記回転方向に所定の締付角だけ離れた第1終点マーク(60)及び前記第2始点マーク(33)から前記回転方向に所定の締付角だけ離れた第2終点マーク(70)が一の方向から目視可能な範囲に設けられたマーク表示部(50)が設けられている。
【0007】
上記管継手(1)では、第1始点マーク(23)が第1終点マーク(60)に合うように第1ナット(20)を所定の締付角だけ回転させ、かつ第2始点マーク(33)が第2終点マーク(70)に合うように第2ナット(30)を所定の締付角だけ回転させることにより、治具を用いずに各ナット(20,30)の締付角を管理することができる。また上記管継手(1)では、マーク表示部(50)には一の方向から目視可能な範囲に第1及び第2終点マーク(60,70)が設けられているため、作業者は各ナット(20,30)について締付角の確認のときに目視方向を変える必要がない。そのため、上記管継手(1)によれば、ナットの締付角の管理をより簡易化することができる。
【0008】
ここで、「所定の締付角」とは、第1及び第2ナット(20,30)が工具により継手本体(10)に対して本締めされて締付が完了するまでの第1及び第2ナット(20,30)の回転角を意味する。
【0009】
また、「一の方向から目視可能な範囲」とは、後の実施形態で詳述するように、管継手(1)を用いた配管(2)の接続作業において通常の作業姿勢にある作業者が、その視点を定点に置いたときに見渡せる範囲を意味する。
【0010】
上記管継手(1)において、前記継手本体(10)は、前記第1及び第2ナット(20,30)との締結時に工具により掴まれる部分であり、角柱状の本体掴み部(19)を有していてもよい。前記マーク表示部(50)は、前記角柱の周面のうち少なくとも一つの面(19A)に設けられていてもよい。
【0011】
本体掴み部(19)は継手本体(10)と各ナット(20,30)との締結時に工具により掴まれる部分であり、当該締結時に作業者が目視確認し易い部分である。そのため、当該本体掴み部(19)にマーク表示部(50)を設けることにより、終点マーク(60,70)をより見易くすることができる。
【0012】
上記管継手(1)において、前記マーク表示部(50)は、前記本体掴み部(19)と重ならないように前記本体掴み部(19)の外側へ延びる部分(52,53)を含んでいてもよい。
【0013】
上記構成によれば、継手本体(10)と第1及び第2ナット(20,30)との締結時において、工具によりマーク表示部(50)の全体が隠れることを防ぐことができる。これにより、作業者はマーク表示部(50)を目視確認しつつ各ナット(20,30)の締付作業を容易に行うことができる。
【0014】
上記管継手(1)において、前記第1及び第2ナット(20,30)は、前記継手本体(10)との締結時において工具により掴まれるナット掴み部(21,31)と、前記ナット掴み部(21,31)と前記一方向(P)に隣接し、前記第1及び第2始点マーク(23,33)が形成されるマーク形成部(22,32)と、を有していてもよい。
【0015】
上記構成によれば、継手本体(10)と第1及び第2ナット(20,30)との締結時において、工具により第1及び第2始点マーク(23,33)が隠れることを防ぐことができる。これにより、作業者は第1及び第2始点マーク(23,33)を目視確認しつつ各ナット(20,30)の締付作業を容易に行うことができる。
【0016】
上記管継手(1)において、前記マーク表示部(50)は、前記継手本体(10)に貼り付け可能なシール部材により構成されていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、シール部材の貼り付けにより継手本体(10)においてマーク表示部(50)を容易に設けることができる。
【0018】
上記管継手(1)において、前記第1終点マーク(60)は、第1管理マーク(61)と、前記第1管理マーク(61)よりも前記回転方向の下流側に設けられた第1増締マーク(62)と、を含んでいてもよい。前記第2終点マーク(70)は、第2管理マーク(71)と、前記第2管理マーク(71)よりも前記回転方向の下流側に設けられた第2増締マーク(72)と、を含んでいてもよい。
【0019】
上記構成によれば、第1及び第2管理マーク(61,71)により第1及び第2ナット(20,30)の締付量を通常の管理値の範囲内に調整すると共に、第1及び第2増締マーク(62,72)により第1及び第2ナット(20,30)の増締量も管理することができる。
【0020】
上記管継手(1)において、前記第1始点マーク(23)は、前記第1終点マーク(60)側を指す形状を有していてもよい。前記第2始点マーク(33)は、前記第2終点マーク(70)側を指す形状を有していてもよい。
【0021】
上記構成によれば、第1始点マーク(23)を第1終点マーク(60)に合わせ易くなり、第2始点マーク(33)を第2終点マーク(70)に合わせ易くなる。このため、第1及び第2ナット(20,30)の締付角の管理がより容易になる。
【0022】
上記管継手(1)では、製品出荷時において、前記第1始点マーク(23)が前記第1終点マーク(60)の範囲内に収まるように前記第1ナット(20)が前記継手本体(10)に締め付けられ、かつ、前記第2始点マーク(33)が前記第2終点マーク(70)の範囲内に収まるように前記第2ナット(30)が前記継手本体(10)に締め付けられていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、製品出荷時において第1及び第2ナット(20,30)の締付が完了しているため、現地での作業工数を削減し、現地での作業ミスを防止することができる。
【0024】
上記管継手(1)は、前記継手本体(10)に挿入される配管(2)の周囲を囲む環形状を有するフェルール(41,42)をさらに備えていてもよい。上記管継手(1)は、前記フェルール(41,42)の先端部を前記配管(2)の外周面(2A)に食い込ませることにより前記配管(2)を固定してもよい。
【0025】
上記構成によれば、第1及び第2ナット(20,30)の締付角を管理することで、継手本体(10)と第1及び第2ナット(20,30)との隙間を管理する場合に比べて、フェルール(41,42)の食い込みによる配管(2)変形量のばらつきを抑え、当該変形量をより安定させることができる。
【0026】
上記管継手(1)において、前記第1始点マーク(23)は、
前記第1ナット(20)が前記継手本体(10)に対して本締めされる前の状態において、前記第1終点マーク(60)に対して前記回転方向に60°以上120°以下だけ離れていてもよい。前記第2始点マーク(33)は、
前記第2ナット(30)が前記継手本体(10)に対して本締めされる前の状態において、前記第2終点マーク(70)に対して前記回転方向に60°以上120°以下だけ離れていてもよい。
【0027】
上記のように、第1始点マーク(23)と第1終点マーク(60)との間の角度、及び第2始点マーク(33)と第2終点マーク(70)との間の角度は、ナット締付角の管理値に応じて適宜設計することができる。
【0028】
上記管継手(1)において、前記第1及び第2終点マーク(60,70)は、前記第1及び第2ナット(20,30)の本締め時において、一の方向から目視可能な範囲にあるように設けられていることが好ましい。前記本締め時は、前記第1始点マーク(23)が前記第1終点マーク(60)の範囲内に収まるように前記第1ナット(20)が締め付けられ、かつ、前記第2始点マーク(33)が前記第2終点マーク(70)の範囲内に収まるように前記第2ナット(30)が締め付けられる時である。
【0029】
上記構成によれば、本締め時において各ナット(20,30)の締付角の確認を目視方向を変えずに行うことができるため、ナットの締付角を容易に管理することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ナットの締付角の管理をより簡易化することが可能な管継手を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0033】
[管継手の構造]
まず、本発明の実施形態に係る管継手1の構造について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は、管継手1の軸回りにおける一方向から見た全体図である。
図2は、管継手1の軸回りにおける他方向(
図1と異なる方向)から見た全体図である。
図3は、管継手1の構成部品である継手本体10の全体図である。
図4は、管継手1の管軸方向P(一方向)に沿った断面図である。
【0034】
管継手1は、冷媒や水などの流体が流れる配管2の終端部同士を繋ぐためのものである。管継手1は、継手本体10と、第1ナット20と、第2ナット30と、フロントフェルール41と、バックフェルール42と、マーク表示部50と、を有する。
【0035】
配管2は、円筒形状からなり、冷媒や水などの流体が流れる内部通路を有する。配管2は、銅、アルミニウム又は鋼などの金属素材からなる。
【0036】
継手本体10は、黄銅などの金属素材からなり、略円筒形状を有する。継手本体10には、配管2の終端部が挿入される内部通路11が管軸方向Pに沿って形成されている。内部通路11は、継手本体10の内周面により画定されている。
【0037】
継手本体10は、本体掴み部19と、第1及び第2首部16,17と、第1及び第2端部15,14と、を有する。本体掴み部19は、第1及び第2ナット20,30との締結時にスパナやレンチなどの工具により掴まれる部分であり、継手本体10の外周面において管軸方向Pの中央部に設けられている。本体掴み部19は、管軸方向Pから見たときの形状が六角形状であり、その周面において六つの本体平面19Aを有する。本体平面19Aは、第1及び第2端部15,14よりも径方向外側に突出している。
【0038】
第1端部15は、管軸方向Pにおける継手本体10の一端側に設けられ、円筒状の第1首部16を介して本体掴み部19に接続されている。第1端部15の外周面には、第1ナット20が螺合する第1本体ネジ部15Aが形成されている。第1本体ネジ部15Aは、複数のネジ山を有する三角ネジでもよいがこれに限定されず、台形ネジ、角ネジ又は丸ネジなどの他種類のネジでもよい。
【0039】
第2端部14は、管軸方向Pにおける継手本体10の他端側に設けられ、円筒状の第2首部17を介して本体掴み部19に接続されている。第2端部14の外周面には、第2ナット30が螺合する第2本体ネジ部14Aが形成されている。このように、継手本体10は、管軸方向Pにおける両端部の外周面に第1及び第2本体ネジ部15A,14Aがそれぞれ形成された雄ネジとして機能する部材である。
【0040】
継手本体10の内周面は、本体内周面12と、本体傾斜面13と、を含む。本体内周面12は、挿入された配管2の外周面が摺接する面であり、管軸方向Pに対して平行な面である。本体内周面12の内径は、配管2の外径よりも僅かに大きくなっている。本体傾斜面13は、本体内周面12に連設され、継手本体10の内径が端部に向かって拡大されるように管軸方向Pに対して傾斜している。
【0041】
継手本体10は、内部通路11に挿入された配管2の終端面を当接させるための当接壁18を有する。当接壁18は、本体内周面12よりも内径が小さく、継手本体10の内周面から径方向内側へ突出し、当該内周面の周方向に沿って環状に形成されている。
【0042】
第1ナット20は、黄銅などの金属素材からなる環状部材であり、配管2が挿入される挿入穴を有する。第1ナット20は、内周面において第1ナットネジ部20Aを有する。当該第1ナットネジ部20Aと第1本体ネジ部15Aとが螺合する態様で、第1ナット20は継手本体10に外嵌されている。第1ナット20は、継手本体10と螺合した状態で、管軸方向Pを中心として第1回転方向D1に回転可能となっている。
【0043】
第1ナット20は、第1ナット掴み部21と、第1マーク形成部22と、を有する。第1ナット掴み部21は、継手本体10との締結時において工具により掴まれる部分であり、六角柱状に形成されている。第1ナット掴み部21は、その周面において六つのナット平面21Aを有する。
【0044】
第1マーク形成部22は、第1ナット掴み部21よりも外径が小さい円筒形状からなり、管軸方向Pにおいて第1ナット掴み部21に連設されている。第1マーク形成部22は、第1本体ネジ部15Aに第1ナット20が外嵌された状態では、第1ナット掴み部21と本体掴み部19との間に位置している。第1マーク形成部22の円筒面には、第1始点マーク23が形成されている。第1始点マーク23は、継手本体10に対する第1ナット20の締付角の管理に用いられる目印であり、マーキングなどの任意の方法によって当該円筒面上に描かれている。具体的には、第1始点マーク23は、本体掴み部19側を指す形状(ポイント形状)を有している。
【0045】
第1ナット20の内周面は、管軸方向Pの外側に向けて内径が徐々に縮径するテーパ面である第1ナット傾斜面25と、当該第1ナット傾斜面25に連設され、かつ管軸方向Pに平行な第1ナット内周面24と、を有する。第1ナット内周面24の内径は、配管2の外径と略同じである。第1ナット20の挿入穴は、第1ナット内周面24により画定されている。
【0046】
第2ナット30は、以下に説明するように、基本的に第1ナット20と同様の構成を有する。
【0047】
第2ナット30は、黄銅などの金属素材からなる環状部材であり、配管2が挿入される挿入穴を有する。第2ナット30は、内周面において第2ナットネジ部30Aを有する。当該第2ナットネジ部30Aと第2本体ネジ部14Aとが螺合する態様で、第2ナット30は継手本体10に外嵌されている。第2ナット30は、継手本体10と螺合した状態で、管軸方向Pを中心として第2回転方向D2(第1回転方向D1と逆方向)に回転可能となっている。
【0048】
第2ナット30は、第2ナット掴み部31と、第2マーク形成部32と、を有する。第2ナット掴み部31は、継手本体10との締結時において工具により掴まれる部分であり、六角柱状に形成されている。第2ナット掴み部31は、その周面において六つのナット平面31Aを有する。
【0049】
第2マーク形成部32は、第2ナット掴み部31よりも外径が小さい円筒形状からなり、管軸方向Pにおいて第2ナット掴み部31に連設されている。第2マーク形成部32の円筒面には、第2始点マーク33が形成されている。第2始点マーク33は、継手本体10に対する第2ナット30の締付角の管理に用いられる目印であり、マーキングなどの任意の方法によって当該円筒面上に描かれている。具体的には、第2始点マーク33は、本体掴み部19側を指す形状(ポイント形状)を有している。
【0050】
第2ナット30の内周面は、管軸方向Pの外側に向けて内径が徐々に縮径するテーパ面である第2ナット傾斜面35と、当該第2ナット傾斜面35に連設され、かつ管軸方向Pに平行な第2ナット内周面34と、を有する。第2ナット内周面34の内径は、配管2の外径と略同じである。第2ナット30の挿入穴は、第2ナット内周面34により画定されている。
【0051】
フロントフェルール41は、黄銅などの金属素材からなり、継手本体10に挿入された配管2の外周面2Aを取り囲む円環形状を有する。フロントフェルール41は、管軸方向Pにおいて継手本体10と第1及び第2ナット20,30との間に配置されている。フロントフェルール41は、配管2の外周面と摺接し、管軸方向Pに平行な内周面を有する。フロントフェルール41は、先端部及び後端部を有し、当該後端部から当該先端部に向かって外径が徐々に小さくなる形状を有する。フロントフェルール41は、先端部を配管2の外周面に食い込ませることにより当該配管2を継手本体10に固定する。
【0052】
バックフェルール42は、黄銅などの金属素材からなり、継手本体10に挿入された配管2の外周面2Aを取り囲む円環形状を有する。バックフェルール42は、フロントフェルール41と略同じ内径の内周面を有し、かつ軸方向の長さがフロントフェルール41よりも短くなっている。バックフェルール42は、管軸方向Pにおいて継手本体10と第1及び第2ナット20,30との間に配置され、かつ管軸方向Pにおいてフロントフェルール41と隣接している。
【0053】
バックフェルール42は、先端部及び後端部を有し、当該後端部から当該先端部に向かって外径が徐々に小さくなる形状を有する。バックフェルール42は、第1及び第2ナット20,30の締結前の状態において、先端部がフロントフェルール41の後端部に当接し、かつ後端部が第1及び第2ナット傾斜面25,33に当接するように配置されている。バックフェルール42は、先端部を配管2の外周面に食い込ませることにより、フロントフェルール41と同様に配管2を継手本体10に固定する。
【0054】
[マーク表示部の構造]
次に、マーク表示部50の構造について、
図1及び
図2を参照して説明する。マーク表示部50は、継手本体10に対する第1及び第2ナット20,30の締付角の管理に用いられる部材である。マーク表示部50は、シール部材からなる四角形状の薄い銘板であり、本体掴み部19における一つの本体平面19Aに貼り付けられている。
【0055】
マーク表示部50の管軸方向Pと直交する方向の長さL1は本体平面19Aの長さL2と略同じである。一方、マーク表示部50の軸方向Pと平行な方向の幅W1は本体平面19Aの幅W2よりも大きい。つまり、マーク表示部50は、長さ方向において本体平面19Aに収まり、幅方向において本体平面19Aからはみ出ている。
【0056】
マーク表示部50は、第1終点マーク60と、第2終点マーク70と、を含む。第1終点マーク60は、継手本体10に対する第1ナット20の締付角の管理において、第1始点マーク23を合わせるための目印である。第2終点マーク70は、継手本体10に対する第2ナット30の締付角の管理において、第2始点マーク33を合わせるための目印である。第1終点マーク60はマーク表示部50の幅方向における第1ナット20側の略半分の領域に設けられ、第2終点マーク70はマーク表示部50の幅方向における第2ナット30側の略半分の領域に設けられている。
【0057】
マーク表示部50において、第1及び第2終点マーク60,70は、一方向から目視可能な範囲内に設けられている。つまり、第1及び第2終点マーク60,70は、管継手1を用いた配管2の接続作業において通常の作業姿勢にある作業者が管継手1を把持し、その視点を定点に置いたときに見渡せる範囲に設けられている。本実施形態では、本体掴み部19が六角柱の形状を有するため、通常の作業姿勢で管継手1を把持して視点を定めた作業者は、少なくとも隣接する二つの本体平面19A(
図1,2では、二つの本体平面19A)を視認することができる。この視認可能な範囲が本発明における「一の方向から目視可能な範囲」に相当し、当該範囲に第1及び第2終点マーク60,70が設けられている。具体的には、マーク表示部50は、一つの本体平面19Aを利用し、当該本体平面19A内に収まるように設けられている。なお、第1及び第2終点マーク60,70が一方向から目視可能な範囲にあればよく、マーク表示部50は二つ以上の本体平面19Aに亘るように設けられていてもよい。
【0058】
第1終点マーク60は、第1管理マーク61と、当該第1管理マーク61と隣接する第1増締マーク62と、を含む。第1管理マーク61及び第1増締マーク62は、略同じ大きさの四角形状を有する。
【0059】
第1管理マーク61は、継手本体10に対する第1ナット20の締付角が予め定められた管理値の範囲内であることを確認するための目印である。即ち、第1始点マーク23が第1管理マーク61に収まるように(つまり、第1始点マーク23と第1管理マーク61とが管軸方向Pにおいて重なるように)第1ナット20を締め付けることで、締付角を管理値の範囲内に調整することができる。第1管理マーク61は、第1増締マーク62と区別されるように異なる色で表示され、第1増締マーク62よりも第1回転方向D1の上流側に設けられている。
【0060】
第1増締マーク62は、継手本体10に対する第1ナット20の増締量を確認するための目印である。この増締量とは、第1ナット20の緩みなどに対応するため、第1ナット20を継手本体10に対して通常の管理値の範囲を超えてさらに締め込むときの締込量である。第1増締マーク62は、このような第1ナット20の通常の管理値の範囲を超えた締込量を確認するための目印になる。即ち、第1始点マーク23が第1増締マーク62に収まるように(つまり、第1始点マーク23と第1増締マーク62とが管軸方向Pにおいて重なるように)第1ナット20を締め付けることで、第1ナット20の増締量を適切な範囲に調整することができる。
【0061】
第2終点マーク70は、以下に説明するように、第1終点マーク60と基本的に同様の構成を有する。
【0062】
第2終点マーク70は、第2管理マーク71と、当該第2管理マーク71と隣接する第2増締マーク72と、を含む。第2管理マーク71及び第2増締マーク72は、略同じ大きさの四角形状を有する。
【0063】
第2管理マーク71は、継手本体10に対する第2ナット30の締付角が予め定められた管理値の範囲内であることを確認するための目印である。即ち、第2始点マーク33が第2管理マーク71に収まるように第2ナット30を締め付けることで、締付角を管理値の範囲内に調整することができる。第2管理マーク71は、第2増締マーク72と区別されるように当該第2増締マーク72と異なる色(第1管理マーク61と同じ色)で表示され、第2増締マーク72よりも第2回転方向D2の上流側に設けられている。
【0064】
第2増締マーク72は、継手本体10に対する第2ナット30の増締量を確認するための目印である。即ち、第2始点マーク33が第2増締マーク72に収まるように第2ナット30を締め付けることで、第2ナット30の増締量を適切な範囲に調整することができる。第2増締マーク72は、第2管理マーク71よりも第2回転方向D2の下流側に設けられている。
【0065】
マーク表示部50は、その表面が4つの領域に分割され、各領域に第1及び第2管理マーク61,71並びに第1及び第2増締マーク62,72が設けられている。第1及び第2管理マーク61,71は互いに対角上に設けられ、第1及び第2増締マーク62,72は互いに対角上に設けられている。即ち、第1管理マーク61を起点とした時計回りにおいて、第1管理マーク61、第2増締マーク72、第2管理マーク71、第1増締マーク62の順で各々のマークが設けられている。
【0066】
マーク表示部50は、本体平面19Aに貼り付けられるマーク中央部51と、本体平面19Aに貼り付けられず、本体掴み部19の外側に位置する第1及び第2マーク側部52,53と、を有する。第1マーク側部52は、本体掴み部19と重ならないようにマーク中央部51から第1ナット20側に向かって延設され、第2マーク側部53は本体掴み部19と重ならないようにマーク中央部51から第2ナット30側に向かって延設されている。第1マーク側部52には第1管理マーク61及び第1増締マーク62が各々設けられ、第2マーク側部53には第2管理マーク71及び第2増締マーク72が各々設けられている。
【0067】
[ナット締付角の管理]
次に、継手本体10に対する第1及び第2ナット20,30の締付角の管理について、
図5及び
図6を主に参照して説明する。
図5は、管継手1を第1ナット20側から見た模式図である(
図1,2中矢印V)。
図6は、管継手1を第2ナット30側から見た模式図である(
図1,2中矢印VI)。
【0068】
まず、第1ナット20が継手本体10の第1端部15に外嵌される。第1始点マーク23は、第1終点マーク60に対して第1回転方向D1の上流側に60°以上120°以下だけ離れた状態になる。
【0069】
一方、第2ナット30が継手本体10の第2端部14に外嵌される。第2始点マーク33は、第2終点マーク70に対して第2回転方向D2の上流側に60°以上120°以下だけ離れた状態となる(
図6)。
【0070】
次に、本体掴み部19及び第1ナット掴み部21が各々工具により掴まれ、第1ナット20を継手本体10に対して第1回転方向D1に所定の締付角(420°以上450°以下)だけ回転させることにより、第1ナット20が継手本体10に対して本締めされる。このとき、第1始点マーク23は第1終点マーク60を通過した後さらに一回転して第1終点マーク60に至り、第1管理マーク61に収まる。このように、第1始点マーク23を第1管理マーク61に合わせることで、第1ナット20の締付角を管理値(420°以上450°以下)の範囲に容易に調整することができる。
【0071】
一方、本体掴み部19及び第2ナット掴み部31が各々工具により掴まれ、第2ナット30を継手本体10に対して第2回転方向D2に所定の締付角(420°以上450°以下)だけ回転させることにより、第2ナット30が継手本体10に対して本締めされる。このとき、第2始点マーク33は第2終点マーク70を通過した後さらに一回転して第2終点マーク70に至り、第2管理マーク71に収まる。このように、第2始点マーク33を第2管理マーク71に合わせることで、第2ナット30の締付角を管理値(420°以上450°以下)の範囲に容易に調整することができる。上記第1及び第2ナット20,30の本締め時において、第1及び第2終点マーク60,70は、
図1に示すように一の方向から目視可能な範囲にあるため、作業者は目視方向を変えずに各ナット20,30の本締め作業を行うことができる。
【0072】
また第1ナット20を継手本体10に対して第1回転方向D1にさらに回転させて締め込むことにより、当該第1ナット20を増締することができる。このとき、第1始点マーク23を第1増締マーク62に収まるように合わせることで、第1ナット20の締込量が大きくなり過ぎず、第1ナットネジ部20A及び第1本体ネジ部15Aが破壊されることを防ぐことができる。つまり、作業者は、第1増締マーク62を第1ナット20の増締量の調整の目安として利用することができる。また第2ナット30を継手本体10に対して第2回転方向D2にさらに回転させて締め込むことにより、同様に第2ナット30を増締することができる。この場合でも、第1ナット20の増締時と同様に、第2増締マーク72を第2ナット30の増締量を調整するための目安として利用することができる。
【0073】
また第1及び第2ナット20,30の締付時において、作業者は、工具により掴まれない第1及び第2マーク形成部22,32において第1及び第2始点マーク23,33をそれぞれ目視確認し、かつ本体掴み部19の外側に突出した第1及び第2マーク側部52,53において第1及び第2終点マーク60,70をそれぞれ目視確認することができる。つまり、各マークが工具によって遮られないため、各マークを容易に目視確認することができる。
【0074】
[作用効果]
次に、上記管継手1の特徴的な構成及びその作用効果について説明する。
【0075】
上記管継手1は、第1及び第2端部15,14を有する継手本体10と、第1端部15において回転可能に螺合し、第1始点マーク23が形成された第1ナット20と、第2端部14において回転可能に螺合し、第2始点マーク33が形成された第2ナット30と、を備える。継手本体10には、第1始点マーク23から第1回転方向D1に所定の締付角だけ離れた第1終点マーク60及び第2始点マーク33から第2回転方向D2に所定の締付角だけ離れた第2終点マーク70が一の方向から目視可能な範囲に設けられたマーク表示部50が設けられている。
【0076】
上記管継手1では、第1始点マーク23が第1終点マーク60に合うように第1ナット20を所定の締付角だけ回転させ、かつ第2始点マーク33が第2終点マーク70に合うように第2ナット30を所定の締付角だけ回転させることにより、治具を用いずに各ナット20,30の締付角を管理することができる。また、マーク表示部50には一の方向から目視可能な範囲に第1及び第2終点マーク60,70が設けられているため、各ナット20,30について締付角の確認のときに目視方向を変える必要がない。そのため、上記管継手1によれば、ナット20,30の締付角の管理をより簡易化することができる。
【0077】
上記管継手1において、継手本体10は、第1及び第2ナット20,30との締結時に工具により掴まれる角柱状の本体掴み部19を有する。マーク表示部50は、当該角柱の周面のうち一つの面である本体平面19Aに設けられている。
【0078】
本体掴み部19は継手本体10と各ナット20,30との締結時に工具により掴まれる部分であり、当該締結時に作業者が目視確認し易い部分である。そのため、当該本体掴み部19にマーク表示部50を設けることにより、終点マーク60,70をより見易くすることができる。
【0079】
上記管継手1において、マーク表示部50は、本体掴み部19と重ならないように当該本体掴み部19の外側へ延びる第1及び第2マーク側部52,53を有する。これにより、継手本体10と第1及び第2ナット20,30との締結時において、工具によりマーク表示部50の全体が遮られることを防止できる。これにより、マーク表示部50を目視確認しつつ各ナット20,30の締付作業を容易に行うことができる。
【0080】
上記管継手1において、第1及び第2ナット20,30は、継手本体10との締結時において工具により掴まれる第1及び第2ナット掴み部21,31と、第1及び第2ナット掴み部21,31と管軸方向Pに隣接し、第1及び第2始点マーク23,33が形成される第1及び第2マーク形成部22,32と、を有する。
【0081】
これにより、継手本体10と第1及び第2ナット20,30との締結時において、工具により第1及び第2始点マーク23,33が遮られることを防止できる。このため、第1及び第2始点マーク23,33を目視確認しつつ各ナット20,30の締付作業を容易に行うことができる。
【0082】
上記管継手1において、マーク表示部50は、継手本体10に貼り付け可能なシール部材により構成されている。これにより、当該シール部材を貼り付けることで継手本体10においてマーク表示部50を容易に設けることができる。
【0083】
上記管継手1において、第1終点マーク60は、第1管理マーク61と、第1管理マーク61よりも第1回転方向D1の下流側に設けられた第1増締マーク62と、を含む。第2終点マーク70は、第2管理マーク71と、第2管理マーク71よりも第2回転方向D2の下流側に設けられた第2増締マーク72と、を含む。
【0084】
これにより、第1及び第2管理マーク61,71により第1及び第2ナット20,30の締付量を通常の管理値の範囲内に調整すると共に、第1及び第2増締マーク62,72により第1及び第2ナット20,30の増締量も管理することができる。
【0085】
上記管継手1において、第1始点マーク23は、第1終点マーク60側を指す形状を有している、第2始点マーク33は、第2終点マーク70側を指す形状を有している。
【0086】
これにより、第1始点マーク23を第1終点マーク60に合わせ易くなり、第2始点マーク33を第2終点マーク70に合わせ易くなる。このため、第1及び第2ナット20,30の締付角の管理がより容易になる。
【0087】
上記管継手1では、製品出荷時において、第1始点マーク23が第1終点マーク60の範囲内に収まるように第1ナット20が継手本体10に締め付けられ、かつ、第2始点マーク33が第2終点マーク70の範囲内に収まるように第2ナット30が継手本体10に締め付けられていてもよい。これにより、製品出荷時において第1及び第2ナット20,30の締付が完了しているため、現地での作業工数を削減し、現地での作業ミスを防止することができる。
【0088】
上記管継手1は、継手本体10に挿入される配管2の周囲を囲む環形状を有するフェルール41,42を備えている。上記管継手1は、フェルール41,42の先端部を配管2の外周面2Aに食い込ませることにより配管2を固定する。
【0089】
上記構成によれば、第1及び第2ナット20,30の締付角を管理することで、継手本体10と第1及び第2ナット20,30との隙間を管理する場合に比べて、フェルール41,42の食い込みによる配管2変形量のばらつきを抑え、当該変形量をより安定させることができる。
【0090】
上記管継手1において、第1始点マーク23は、第1終点マーク60に対して第1回転方向D1に60°以上120°以下だけ離れている。第2始点マーク(33)は、第2終点マーク70に対して第2回転方向D2に60°以上120°以下だけ離れている。
【0091】
上記のように、第1始点マーク23と第1終点マーク60との間の角度、及び第2始点マーク33と第2終点マーク70との間の角度は、ナット締付角の管理値に応じて適宜設計することができる。
【0092】
上記管継手1において、第1及び第2終点マーク60,70は、第1及び第2ナット20,30の本締め時において、一の方向から目視可能な範囲にあるように設けられている。上記本締め時は、第1始点マーク23が第1終点マーク60の範囲内に収まるように第1ナット20が締め付けられ、かつ、第2始点マーク33が第2終点マーク70の範囲内に収まるように第2ナット30が締め付けられる時である。これにより、各ナット20,30の締付角の確認を目視方向を変えずに行うことができるため、各ナット20,30の本締め作業を容易に行うことができる。
【0093】
[変形例]
最後に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0094】
上記実施形態において、複数の本体平面19Aに亘ってマーク表示部50が設けられてもよい。つまり、複数の本体平面19Aに亘ってシール部材からなるマーク表示部50が貼り付けられてもよい。
【0095】
上記実施形態において、第1始点マーク23が表示されたシール部材が第1マーク形成部22に貼り付けられ、第2始点マーク33が表示されたシール部材が第2マーク形成部32に貼り付けられてもよい。
【0096】
今回開示された実施形態及びその変形例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。