特許第6276255号(P6276255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276255
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04186 20160101AFI20180129BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20180129BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20180129BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01M8/04186
   H01M8/04 N
   H01M8/04007
   H01M8/04701
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-510870(P2015-510870)
(86)(22)【出願日】2013年4月29日
(65)【公表番号】特表2015-516108(P2015-516108A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】GB2013051087
(87)【国際公開番号】WO2013167868
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】1208312.7
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508269433
【氏名又は名称】エイエフシー エナジー ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】オースティン ジェイムズ アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アクター ナヴィード
(72)【発明者】
【氏名】トマス マルタン
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−35470(JP,A)
【文献】 特開昭58−108672(JP,A)
【文献】 特表2011−505519(JP,A)
【文献】 特開2004−119184(JP,A)
【文献】 特公昭49−28060(JP,B1)
【文献】 特開平11−162490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、アノード及びカソードである対向する電極間に液体電解質チャンバを含む少なくとも1つの燃料電池と、ダクトを通して電極に隣接するガスチャンバへガス流を供給するための手段とを含み、さらに、液体電解質貯蔵タンクと、液体電解質を前記液体電解質貯蔵タンクから前記液体電解質チャンバの各々へ供給する手段とを含む液体電解質燃料電池システムであって、前記システムは、前記ガスチャンバへつながる前記ダクト内にガスヒータ及び加湿チャンバを含み、前記液体電解質を前記加湿チャンバへ供給し、ガスが前記液体電解質と接触することにより加湿されるようにする手段を含み、前記加湿チャンバは、前記ガス流方向と位置合わせされてガス流路を定める複数のバッフルと、電解質が前記バッフルの表面の上に流れるようにする手段と、前記ガス流路の各々の底部に前記電解質のプールを集める手段とを有するハウジングを備える、液体電解質燃料電池システム。
【請求項2】
前記ガスヒータは、前記ガスの温度を、前記燃料電池又は複数の燃料電池の動作温度の5℃以内まで上昇させる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記ガスヒータは、前記ガスを、流体との熱交換によって加熱する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
熱交換に用いられる前記流体は、前記燃料電池又は複数の燃料電池を通って流れた電解質である、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記ガスヒータは、前記液体電解質との直接接触によって前記ガスを加熱するので、前記ガスは同時に加熱及び加湿される、請求項1〜4のいずれか一に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記加湿チャンバは、前記ハウジングを備え、前記システムはまた、前記加湿チャンバから前記ガスチャンバへ前記加湿されたガスを運ぶ前記ダクト内に追加の水を噴霧する噴霧ノズルを備える、請求項1〜5のいずれか一に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池システムはまた、前記加湿チャンバから前記ガスチャンバへ前記加湿されたガスを運ぶ前記ダクト内にベンチュリ形状の狭窄部を有し、前記噴霧ノズルは、前記ベンチュリ形状の狭窄部の中心に細いオリフィスを定める、請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記加湿チャンバに供給された前記液体電解質は、前記燃料電池又は複数の燃料電池を通過した電解質、又は、前記燃料電池又は複数の燃料電池に供給された電解質から取り出された電解質である、請求項1〜7のいずれか一に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記加湿チャンバは、前記カソードにつながるガス・ダクト内に設けられる、請求項1〜8のいずれか一に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記加湿チャンバは、前記アノードにつながるガス・ダクト内に設けられる、請求項1〜9のいずれか一に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記加湿チャンバは前記液体電解質貯蔵タンク内にある、請求項1〜10のいずれか一に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これに限定されないが好ましくはアルカリ型燃料電池を組み込む、液体電解質燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、比較的クリーンで効率的な電力の源として識別されている。アルカリ型燃料電池は、これが比較的低温で動作し、効率的であり、機械的かつ電気化学的に耐久性があるので、特に関心のあるものである。酸燃料電池及び他の液体電解質を採用する燃料電池もまた関心のあるものである。こうした燃料電池は、典型的には、燃料ガスチャンバ(燃料ガス、典型的には水素を収容する)、及びさらに別のガスチャンバ(酸化剤ガス、通常は空気を収容する)から分離された電解質チャンバを含む。電解質チャンバは、電極を用いてガスチャンバから分離されている。アルカリ型燃料電池用の典型的な電極は、電極に機械的強度をもたらす導電性金属、典型的にはニッケルを含み、電極はまた、活性炭及び触媒金属、典型的には白金を含むことができる触媒コーティングを組み込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
動作中、各電極で化学反応が起こり、電気を発生させる。例えば、燃料電池に水素ガス及び空気が供給され、それぞれアノードチャンバ及びカソードチャンバに供給された場合、反応は以下のようになり、アノードでは、
【化1】
となり、カソードでは、
【化2】
となるので、全体的な反応は、水素と酸素を加えて水をもたらす、同時に電気が発生し、ヒドロキシル・イオンが、電解質を通ってカソードからアノードへ拡散する。水は、アノードで起こる反応によって生成されるが、両方の電極で蒸発もするので、電解質の濃度が変化することにより、問題が生じることがある。水は蒸発するだけでなく、電気化学反応で使い果たされるので、こうした蒸発は、カソードにおいて特別な問題となることがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の燃料電池システムは、従来技術の1つ又はそれ以上の問題に対処する又はこれらを緩和する。
【0005】
本発明によれば、各々が、アノード及びカソードである対向する電極間に液体電解質チャンバを含む少なくとも1つの燃料電池と、ガス流を、ダクトを通して電極に隣接するガスチャンバへ供給するための手段とを含み、さらに、液体電解質貯蔵タンクと、液体電解質を液体電解質貯蔵タンクから液体電解質チャンバの各々へ供給する手段とを含む液体電解質燃料電池システムが提供され、本システムは、ガスチャンバへつながるダクト内のガスヒータ及び加湿チャンバと、液体電解質を加湿チャンバへ供給し、ガスが液体電解質と接触することにより加湿されるようにする手段とを含む。
【0006】
使用中、ガスヒータは、ガスの温度を、燃料電池又は複数の燃料電池の動作温度の5℃以内、より好ましくは2℃以内まで上昇させることが好ましい。これは電気ヒータとすることができ、又は代替的に、例えば、燃料電池又は複数の燃料電池を通って循環した電解質などの加熱流体との熱交換を含むことができる。これは、直接的又は間接的熱伝達を含むことができる。
【0007】
加湿チャンバは、ガスヒータから分離されていても、又はこれと一体であってもよい。加湿チャンバは、これを通って流れるガスに大幅な圧力降下を課さないように設計されることが好ましい。例えば、気泡形成は、ガスを液体と接触させるのに効果的な方法であるが、気泡が形成される液体表面の下方の深さだけが理由だとしても、圧力降下を招くことは避けられない。気泡が、表面の50mm下方の深さに形成された場合には、少なくとも500Paの圧力が要求される。加湿チャンバの1つの設計では、ガス流路を定めるようにガス流方向と位置合わせされた複数のバッフルと、電解質がバッフルの表面の上に流れるようにする手段と、各ガス流路の底部に電解質のプールを集める手段とを組み込む。こうした電解質のプール内の液体の深さは、堰又はオーバーフローによって維持することができる。
【0008】
加湿チャンバに供給された液体電解質は、燃料電池又は複数の燃料電池を通過した電解質とすることができ、又は、燃料電池又は複数の燃料電池に供給された電解質から取り出された電解質とすることができる。
【0009】
本発明を用いない燃料電池システムの動作においては、電極、特にカソードからの正味の水分蒸発があり、これは、電解質が水酸化カリウムの水溶液である場合、電極の孔内に結晶水酸化カリウム又は炭酸カリウムの形成をもたらすことがあることが見出された。このことは、ガス状反応物の質量輸送を妨げる。本発明のシステムは、本発明により処理されるガス流は動作温度に近い温度で電解質からの水蒸気により加湿されるので、蒸発による水分損失を大幅に低減させ、電解質の材料により電極内に固形材料が形成されるリスクを抑える。
【0010】
本システムは、カソードにつながるガス・ダクト内に加湿チャンバを含むことが好ましい。同様の加湿チャンバを、アノードにつながるガス・ダクト内にも設けることができる。
【0011】
ここで、添付図面を参照して、単なる一例として本明細書をさらに及びより具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の燃料電池システムの流体流の概略図を示す。
図2図1の燃料電池システムの加湿チャンバの部分的に切り欠いた斜視図を示す。
図3図2の加湿チャンバの線3−3における長手方向断面図を示す。
図4】付加的な加湿装置の長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、燃料電池システム10は、例えば、6モル/リットルの濃度の水酸化カリウム水溶液を電解質12として使用する燃料電池スタック20(概略的に示す)を含む。燃料電池スタック20には、燃料として水素ガス、酸化剤として空気、及び電解質12が供給され、燃料電池スタック20は、約65°又は70℃の電解質温度で動作する。水素ガスは、水素貯蔵シリンダ22から調整器24及び制御弁26を通って燃料電池スタック20に供給され、排気ガス流は、第1のガス出口ダクト28を通って出てくる。空気はブロワ30により供給され、空気がダクト36を通って燃料電池スタック20へ流れる前に、空気をスクラバ32及びフィルタ34に通すことにより、あらゆるCO2が除去され、使用済み空気は、第2のガス出口ダクト38を通って出ていく。
【0014】
燃料電池スタック20は、その詳細な構造が本発明の主題ではないので概略的に示されるが、本例では、燃料電池のスタックからなり、各々の燃料電池は、アノードとカソードである対向する電極間に液体電解質チャンバを含む。各電池において、空気はカソードに隣接するガスチャンバを通って流れ、使用済み空気として出てくる。同様に、各電池において、水素はアノードに隣接するガスチャンバを通って流れ、排気ガス流として出てくる。
【0015】
燃料電池スタック20の動作は電気を発生させ、上述の化学反応により水も生成する。さらに、水はアノード及びカソード両方のガスチャンバで蒸発するので、排気ガス流及び使用済み空気の両方とも水蒸気を含有する。蒸発の速度は、反応ガスに曝される電極の表面積、反応ガスの流量、及び動作温度に依存する。蒸発の速度はまた、アノード及びカソードのガスチャンバ内の水蒸気の分圧にも依存する。全体として結果的に、電解質12からの一定の水分損失となり、水分損失は、例えば凝縮器39を設けることにより、出口ダクト38内の使用済み空気から(又は排気ガスから)の水蒸気を凝縮することにより防止することができる。さらに、カソードで起こっている化学反応は、ヒドロキシル・イオンを生成し、水を消費するので、カソードの近くの電解質が濃縮される。
【0016】
電解質12は、通気口41が設けられた電解質貯蔵タンク40内に貯蔵される。ポンプ42は、電解質を貯蔵タンク40から、通気口45が設けられたヘッダタンク44内に循環させ、ヘッダタンク44はオーバーフロー管46を有するので、電解質は貯蔵タンク40に戻る。これは、ヘッダタンク44内の電解質のレベルが一定であることを保証する。電解質は、一定の圧力でダクト47を通って燃料電池スタック20に供給され、使用済み電解質は、戻りダクト48を通って貯蔵タンク40に戻る。貯蔵タンク40は、熱交換器49を含み、過剰な熱を除去する。
【0017】
ダクト36において、空気流は、熱交換器50、次いで加湿チャンバ52を通過する。電解質は、ダクト47からダクト53を通して取り出され、加湿チャンバ52に供給される。加湿チャンバ52を通って流れた電解質は、電解質流出ダクト54を通って出て、貯蔵タンク40に戻る。
【0018】
修正形態において、戻りダクト48からの電解質を熱交換器50に供給することができるので、燃料電池スタック20に供給された空気は、燃料電池スタック20を通って流れた電解質と熱を交換する。別の修正形態では、電解質は、ダクト53によって、戻りダクト48(供給ダクト47ではなく)から取り出され、加湿チャンバ52に供給される。この場合、別個の熱交換器50は不要であるほど、加湿チャンバ52は十分に温かいのがよく、加湿チャンバ52は、電解質と直接接触することにより、空気流の加熱及び加湿を同時に行う。
【0019】
ここで図2及び図3を参照すると、加湿チャンバ52は、ほぼ矩形のハウジング60で構成され、このハウジング60は、該ハウジング60の上壁から底壁のすぐ上まで延びる平行なバッフル63により幾つかの流路62(図2には5つが示される)に細分されている。バッフル63は、ハウジング60の端部までは延びないので、各端部にガス分配空間64がある。空気を加湿チャンバ52に供給するダクト36は、ハウジング60の上壁を通して一方の端部(図示のように左側の端部)においてガス分配空間64と連通し、一方、加湿された空気を燃料電池スタック20に運ぶダクトは、ハウジング60の端部壁を通して、反対側の端部においてガス分配空間64と連通する。
【0020】
電解質12は、電解質12を運ぶダクト53に接続されたダクト66を通って加湿チャンバ52に供給される。ダクト66はハウジング60の上部を横切って延び、図示のようにバッフル63の左側端部の近くで、バッフル63上方のハウジング60の上壁を通る小さい開口部68(図3を参照)を通して流路62と連通する。開口部68は、典型的には、0.5mmから3mmまでの間の直径のものであり、例えば1.5mmの直径である。電解質は、開口部68から、空気が流れるべき流路62内に落ちる液滴又は液体噴流のカーテンを形成し、電解質はバッフル63からも滴り落ちる。電解質は、ハウジング60の底部でプールのように集められる。バッフル63は底壁と接触しないので、電解質のプールは連続的であり、バッフル63によって分割されない。流出ダクト54は、例えば10mmとすることができる、ハウジング60の底部における均一な電解質12の深さがあることを保証するような位置で、右側端部(図示のように)においてハウジング60の端部壁と連通する。次いで、上述のように、電解質はダクト54から流出し、タンク40に戻る。
【0021】
空気流量が大きいと、加湿チャンバ52内での空気と電解質水溶液との接触時間が減り、従って加湿の程度が下がるので、空気流量が大き過ぎない限り、加湿チャンバ52は、空気流の十分な加湿をもたらす。
【0022】
上述の燃料電池システム10は、本発明の範囲内にとどまりながら、種々の方法で修正することができることが理解されるであろう。例えば、流路62の数及び流路62の寸法は、説明されたものと異なっていてもよい。本発明は、ガス流を燃料電池又は複数の燃料電池の動作温度まで加熱し、ガス流がその動作温度において水蒸気で飽和されるように動作させることができる。代替的に、ガス流を動作温度よりわずかに高い温度まで加熱し、それによって水蒸気を運ぶための能力を高め、これにより、他の場合には加湿チャンバ52と燃料電池スタック20との間で空気ダクト36において起こり得る濃縮の程度を下げることができる。
【0023】
ガス流は、加湿チャンバ52を通過した後で、水蒸気で飽和することはできないが、チャンバ52から出てきたときに、少なくとも65%の、又は75%を上回る、又は80%を上回る相対湿度を達成するように加湿するべきである。空気流の加湿は、空気流中の酸素の分圧を下げるので、燃料電池スタック20の性能に影響を与えることが理解されるであろう。従って、燃料電池スタック20の性能及びその寿命の両方を最適化するように、加湿の程度を選択する必要がある。
【0024】
加湿チャンバ52により達成される加湿の程度が不十分である場合には、加湿チャンバ52と燃料電池スタック20の間に、破線で示されるダクト56を介して、加湿空気を運ぶダクト36の中に付加的な水を噴霧することができる。水は噴霧ノズルを通して導入することができるので、霧状ミストの形の液滴が、ダクト36を通って加湿チャンバ52の下流に流れる加湿空気全体にわたって分散される。
【0025】
ここで図4を参照すると、この図は、水の液滴を導入するのに用いられる、ダクト56に対応することができるスプレー噴射システム70を示す。リザーバ71は、水を収容し、この水は電解質と同じ温度であるのが好ましい。このリザーバ71は、ポンプ72及び流量制御弁73を介して噴射ノズル74に接続される。噴射ノズル74は、長手方向断面で示され、加湿チャンバ52から燃料電池スタック20へ空気を運ぶダクト36の軸に沿って延びる管75から成り、この管75は細いオリフィス76へテーパしている。管75は、オリフィス76がダクト36内のベンチュリ形状の狭窄部77の中心になるように取り付けられる。この構成は、霧状ミストの形態の水の液滴がダクト36を通って流れる空気全体にわたって分散されるようにし、狭窄部77は、液滴のミストを空気流内に十分に混合するのを保証する助けとなる。
【0026】
空気が燃料電池スタック20内のカソード区画に達するときまでに、全ての液滴が蒸発するのを保証するために、ダクト36に沿って、スプレー噴射システム70と燃料電池スタック20との間に十分な距離があることが望ましい。このことは、空気流の予熱により助けることができる。
【0027】
燃料電池システム10は、単なる一例として説明されることが理解されるであろう。システム10に対して、種々の代案及び修正を行うことができる。例えば、加湿チャンバ52を貯蔵タンク40内に配置することができ、又は実際に、加湿チャンバ52は、電解質貯蔵タンク40の少なくとも一部とすることができるので、代案として、電解質貯蔵タンク40を通すことにより、空気流を加湿することができる。スプレー噴射システム70は、加湿チャンバ52と共に用いるのではなく、加湿チャンバ52の代わりに用いることができる。
【0028】
ガス流を加湿するための液体として電解質を用いる潜在的な利点は、蒸発による水分損失が抑制されるだけでなく、さらに、ガス流が蒸気としてにせよ、又は小さい液滴としてにせよ、少量の電解質、つまり本例では水酸化カリウムを運ぶことができることである。このことは、電解質内でのイオン/電子伝導ネットワークを生成する助けになり得る。
【符号の説明】
【0029】
10:燃料電池システム
12:電解質
20:燃料電池スタック
22:水素貯蔵シリンダ
24:調整器
26:制御弁
28:第1のガス出口ダクト
30:ブロワ
32:スクラバ
34:フィルタ
36:ダクト
38:第2のガス出口ダクト
39:凝縮器
40:電解質貯蔵タンク
41、45:通気口
42:ポンプ
44:ヘッダタンク
46:オーバーフロー管
47:供給ダクト
48:戻りダクト
49、50:熱交換器
52:加湿チャンバ
53、54、56、66:ダクト
60:ハウジング
62:流路
63:バッフル
64:ガス分配空間
68:開口部
70:スプレー噴射システム
71:リザーバ
72:ポンプ
73:流量制御弁
74:噴射ノズル
75:管
76:オリフィス
77:狭窄部
図1
図2
図3
図4