【実施例】
【0223】
以下の実施例は、本発明を例示することのみを目的として提供され、本明細書に記載のように、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0224】
全ての化学物質は、化学薬品会社であるSigma Aldrich社、Fisher Scientific社及びAlfa Aesar社から購入した分析試薬グレードのものであり、それ以上精製することなく、供給された状態のまま使用した。各試薬の標準原液は、標準的技法及び容積測定用ガラス器具を使用して調製した。全ての溶液は、脱イオン水を用いて調製し、各実験の実行前(1時間未満)に新しく調製した還元剤原液を除いて、調製後にプラスチック製実験器具内に保存した。
【0225】
試薬であるモリブデン酸ナトリウム、ヒドラジン及びジチオン酸ナトリウムは、Sigma-Aldrich社から購入し、供給された状態のまま使用した。
【0226】
ポンプシステム
POM及び配位調製物において使用されたポンプシステム構成は、5mLシリンジ及び3方向電磁弁を備える3〜8個のプログラム可能なシリンジポンプ(C3000モデル、Tricontinent Ltd社製、CA、USA)を含み、ポンプを制御するためにLabVIEW(商標)ベースPCインターフェースが使用された。外径1/8インチ(約0.3mm)のFEPプラスチック配管を特定の長さに切断し、標準的HPLC低圧PTFEコネクタ及びPEEK多岐管(Thames Restek社製、UK)を使用して接続した。
【0227】
反応アレイの産生のための一般手順
POM及び配位化合物反応アレイは全て、以下の一般手順を使用して行った。試薬の原液を調製し、割り当てられたポンプへの入口に接続した。全ての試薬に対する接続配管及びポンプを、試薬溶液(3mL)でパージし、次いで反応器配管を新鮮な溶媒(20mL)で浄化した。次いで、事前に記述されたコマンドスクリプトを実行して、ポンピングシーケンスを開始させた。それぞれのプログラムされた補充点において手作業で試験管を交換しながら、50の個々の反応バッチを回収した。反応器配管体積を考慮するために、回収される最初の2回分の反応体積は常に廃棄し、各シーケンスの最後に、2回分の余分な体積の溶媒を使用して反応器ラインをパージした。次いで、回収された試料を特定の静置時間、不撹乱状態で放置し、生成物を結晶化させた。
【0228】
{Mo154}及び{Mo132}の調製のために、磁気撹拌器(Thermo Scientific社製)、pH電極(VWR International社製)及びUV−Vis反射プローブ(TP-300)を備えた10mL反応槽内に、異なる量の試薬をポンピングした。制御された反応時間後、光ファイバによりTP300ファイバプローブに接続されたDH-2000ハロゲン光源を備えたAvantes分光計Avaspec-2048を使用して、UV−Visスペクトルを取得した。pHは、SevenMulti Mettler-Toledo S80を使用して測定した。機器及びデータは全て、Labview(商標)を使用して制御及び記録された。その後、反応器から反応混合物を抽出し、追加のポンプを使用してさらなる分析のために回収した。反応器を、6mLの蒸留水で3回洗浄した。
【0229】
632nmレーザを備えたMalvern Nano Zetasizerにより、プラスチック製の使い捨てキュベットを使用してDLS実験を行った。
【0230】
532nmレーザ、50×LWD対物レンズ、600l/mm2回折格子及び100um穴を備えたホリバ−ジョバンイボン製LabRamを使用して、ラマンスペクトルを取得した。これらの条件下で、スペクトル分解能は1.7cm
−1であった。
【0231】
複数の化学的及び物理的入力でのフロー化学システムの使用
複数バッチ結晶化による自律的フロー処理システムを、以下で説明する。この方法は、分子発見のための多数の反応アレイの迅速な構築、及びスケールアップの間に必要とされるバッチ反応の連続産生の両方を行うことができる。一例として、様々なサイズ及び構造的複雑性を有するポリオキソモリブデート(POM、polyoxomolybdate)の選択の調製において、複数入力反応器構成を使用した;1、Na
8[Mo
36O
112(H
2O)
16]・58H2O={Mo
36};2、Na
15[Mo
VI126Mo
V28O
462H
14(H
2O)
70]
0.5[Mo
VI124Mo
V28O
457H
14(H
2O)
68]
0.5・約400H
2O={Mo154};3、(NH
4)
42[Mo
VI72Mo
V60O
372(CH
3COO)
30(H
2O)
72]・約300H
2O・約10CH
3COONH
4={Mo
132};4、Na
12[Mo
VI72Mo
V30O
282(SO
4)
12(H
2O)
78]・約280H
2O={Mo
102};及び5、Na
48[HxMo
368O
1032(H
2O)
240(SO
4)
48]・約1,000H
2O={Mo
368}((a)Krebs et al. Eur. J. Solid State Inorg. Chem. 1991, 28, 883-903;(b)Muller et al. Z. Anorg. Allg. Chem. 1999, 625, 1187-1192;(c)Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 3359-3363;(d)Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 1162-1167を参照されたい)。
【0232】
フロー化学システムの範囲をさらに実証するために、単一分子磁気(SMM、single molecular magnetic)特性を有するいくつかの配位クラスタの合成もまた探索した;6、Mn3O(Et−sao)3(MeOH)3(ClO4);7、Mn3O(Et−sao)3(tBuPy)3(ClO4);8、Mn5O2(Et−sao)6(MeO)(H2O)(MeOH)2;及び9、Mn6O2(Et−sao)6(Piv)2(MeOH)6((a)Inglis et al. Chem. Commun. 2008, 45, 5924-5926;(b)Inglis et al. Dalton Trans. 2009, 42, 9157-9168;(c)Inglis et al. Dalton Trans. 2009, 18, 3403-3412;(d)Kozoni et al. Dalton Trans. 2009, 42, 9117-9119を参照されたい)。
【0233】
構成は、8個のプログラム可能なシリンジポンプ(C3000モデル、Tricontinent Ltd社製、CA、USA)(ただし、これは容易に15個に拡大可能である)、及びポンプを制御するためのLabVIEW(商標)ベースPCインターフェースを使用した(
図1)。ポンプは、独立して制御可能であり、化学的入力を反応空間に送達するのに好適である。
【0234】
POM合成
POM合成のために選択された試薬セットは、希釈用の蒸留脱イオン水、モリブデン源としての2.5M Na2MoO4・2H2O、3種の酸源(5.0M HCl、1.0M H2SO4、及び50%AcOH)、4.0M AcO(NH4)、並びに2種の還元剤源、0.25M Na2S2O4及び飽和(0.23M)N2H2・H2SO4からなっていた。最も単純なPOM標的化合物1{Mo36}に対しては、8個のポンプのうちの3個のみが、水、モリブデート及びHCl原液の相対流量を徐々に変化させるために必要であり;化合物2{Mo154}、3{Mo132}、4{Mo102}、及び5{Mo368}に対しては、5個までのポンプが、追加的な還元剤及び緩衝剤原液を供給するために必要であった。したがって、試薬セットは、反応空間への化学的入力を表す。
【0235】
{Mo36}
Krebsらによる最初に報告された{Mo36}構造の合成は、モリブデン酸ナトリウムの水溶液の酸性化を含み、これはその後標的化合物の結晶を沈殿させる(Krebs et al. Eur. J. Solid State Inorg. Chem. 1991, 28, 883-903)。しかしながら、ほとんどの合成と同様に、最善の合成条件のみが報告されており、これらの発見に至った困難な作業は、たとえ言及されているとしてもほとんど議論されていない。
【0236】
したがって、本研究の最初の焦点は、人間による入力を最小限としながらこのスクリーニングプロセスを反復することができる、フロー化学システムを調製することであった。{Mo36}構造は、「発見アレイ」用の試験化合物として選択された。ポンプは、生成条件の実験的スキャン全体にわたり、モリブデートに対する酸の相対比、及び全体的な試薬濃度(POM形成及び結晶化の2つの主要なパラメータ)の両方を徐々に増加させながら、様々な流量で動作するようにプログラムされた。
図2に示されるように、Moに対する酸の体積を、(行に沿って)0%〜90%まで変動させ、全試薬体積に対する追加の水の体積を、(列の下に向けて)80%〜0%まで変動させた。これらの2つのパラメータの独立した変動により、それぞれ{Mo36}標的を結晶化させる能力を有する50の混合生成物をもたらす50の異なる反応混合物の形成が得られた。相対流量及び試薬濃度は、反応空間への物理的入力を表す。
【0237】
任意の特定の点で動作する全てのポンプの合計流量は、一定の出力流速及び反応体積を維持するために、12.5mL 分
−1に設定した。出力フロー組成の変動は、個々の化学的入力の互いに対する流量を変動させることにより制御した。
【0238】
比較的広い穴(内径1.6mm)を有する配管(6.22m)1本を、混合多岐管の後ろに設置して、典型的にはモリブデート塩の酸性化後に観察される一時的沈殿物の回収の前の溶解を可能にした。直径は、そのような沈殿物の形成後のシステムの閉塞を回避するために十分広くなるように選択され、配管の長さは、回収される反応体積と一致するように選択された。相対流量は、30秒毎に変化させ、したがって各反応混合物に対して6.25mL(すなわち1/2分×12.5mL 分
−1)の反応体積とし、配管の総体積は、12.5mL(すなわち2×反応体積又は1分間の滞留時間)であった。個々の反応混合物は、回収中の試験管の交換を可能とするために1.5秒の遅延で30秒毎に回収した。したがって、50の反応、高希釈から低希釈、及び高pHから低pHまでのスキャン条件の全体の実行は、完了するのに35分未満を要した。
【0239】
反応混合物の組成がプログラムされた流量からの理論値に一致することの確認として、「発見アレイ」内の個々の反応のpHを回収直後に測定した(
図3a)。pHは、反応のアレイにわたり周期的に高から低に変動することが観察され得るが、これは、事前にプログラムされたスクリーニングシーケンス(
図1)により課される条件に直接的に対応する。反応番号1(又は
図2からのaA)は、酸を含有せず、希釈係数は8:2である。したがって、反応体積の80%は、純粋に水原液に由来し、残り20%は、2.5M Na
2MoO
4・2H
2O原液に由来する。したがって、約6〜7の比較的高いpHは、この組成の溶液に一致する。
【0240】
反応2〜10(又はaB〜aJ)から、全体的な傾向は、希釈係数を8:2で一定に維持してMoに対する酸含量を増加させると、pHが漸減することである。反応番号11(bA)において、pHは、流量が0%酸まで戻ると再び急上昇するが、今回は6:4の低減された希釈係数に起因して若干高いMo濃度である。この傾向は、酸対Moの比及び希釈係数が事前にプログラムされたスクリーニングシーケンスにより決定付けられるように変動すると、アレイの残りにわたって反復する。
【0241】
溶液を不撹乱状態及び空気開放状態で24時間放置した後、50の反応のうち3つ、すなわち反応番号26(cF)、36(dF)及び46(eF)が、無色柱状結晶を沈殿させた。
【0242】
単結晶X線回折及びIR分光法を使用して、結晶性生成物を純粋な{Mo36}として確認した。結晶性生成物をもたらす条件は、低pH及び高Mo濃度を有し、これは、従来のバッチ合成に関して報告されている条件(Krebs et al. Eur. J. Solid State Inorg. Chem. 1991, 28, 883-903)に一致する。残りの反応溶液は、無色溶液として残留するか、又は非晶質白色粉末を沈殿させた。動的光散乱(DLS、Dynamic Light Scattering)測定を使用して、無色溶液中で濃縮モリブデート種を特定することを試みた(
図14を参照されたい)。1.7〜2.0nmの粒径が、低pHにおいてより希薄な溶液に対して一貫して観察されたが、これは、{Mo36}と同様のサイズの濃縮モリブデン種の形成を示している。実際に、これらの溶液のいくつかをさらに数日放置した後、少量の無色柱状結晶が形成し、これは結晶学的な単位格子マッチングにより{Mo36}と特定された。
【0243】
図15は、反応番号36(左列)及び46(右列)からの条件を使用して産生された、複数反復バッチにおける{Mo36}の質量収率を示す。反応番号36(dF)からの条件を使用して生成された10の反応に対する平均収率=924±62mg(0.137mmol、78.7%)である。反応番号46(eF)からの条件を使用して生成された10の反応に対する平均収率=1254±43mg(0.185mmol、85.3%)である。
【0244】
{Mo
154}
発見アレイ構成のための次の標的構造は、Mullerら((a)Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1995, 34, 2122-2124、(b)Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1996, 35, 1206-1208を参照されたい)によりはじめて特性決定された、還元「モリブデン青環」2{Mo154}である。還元環は、典型的には、還元剤(例えば亜ジチオン酸ナトリウム)による酸性化モリブデート溶液の部分還元を介してバッチ式で生成される。
【0245】
上で使用されたフロー化学システムは、0.25M Na
2S
2O
4の溶液を含有する追加のポンプ(追加の化学的入力)により提供された。ポンプは、反応パラメータのスキャン中にMo源に対して10mol%の還元剤を提供するようにプログラムされた。このプロセスにおいて、相対試薬比及び希釈度もまた、実験の実行にわたり徐々に改変された(上述のように、これらは反応空間への物理的入力である)。
【0246】
50全ての反応に対して一定の還元環境を提供するために、ジチオナイトポンプ流量は、モリブデートポンプ流量に直接対応するように設定した。還元剤ポンプ流量は、新たな物理的入力(すなわち可変パラメータ)として設定することができたが、還元剤を10mol%超まで増加させると、非晶質ポリマー酸化モリブデン種のレベルの増加がもたらされることが周知である(Muller et al. Z. Anorg. Allg. Chem. 1999, 625, 1187-1192を参照されたい)。この追加的入力を提供することにより、構造決定に好適な高品質の結晶性生成物を単離する能力を増加させずに、アレイ寸法が増加しただろう。
【0247】
{Mo154}発見アレイにおいて、測定pH値における同様のパターンが観察された。予想されるように、事前にプログラムされた試薬流量に従い酸含量及び希釈比が変動すると、pHはアレイにわたり変動する(
図3bを参照されたい)。ここでも、アレイからの50の反応を不撹乱状態で24時間放置し、結晶化させた。同じく、50の反応のうち3つ、すなわち反応番号26(cF)、35(dE)及び45(eE)が、結晶性材料を沈殿させた。残りの反応は、沈殿物を生成しなかったか、又は結晶学的分析には好適でない暗色非晶質沈殿物を生成した。
【0248】
上述のように、結晶性生成物をもたらした低pH及び高Mo濃度は、元の報告されたバッチ条件に一致した(Muller et al. Z. Anorg. Allg. Chem. 1999, 625, 1187-1192)。生成物は、結晶学的単位格子チェック、IR及び吸光度分光法により、{Mo154}と確認された。pH測定に加えて、吸光度分光法もまた使用して、反応アレイにわたる反応組成の変化を監視した。
図4は、5×10反応アレイに対する吸光度スペクトルの3Dプロットを示す。約750nmにおける吸光度(Mo青種を示す)は、pHの周期的変動と一致することが観察され、ここでも、得られた反応条件が事前にプログラムされた流量に一致することを示した。
【0249】
図16は、反応番号25(左列)、35(中央列)及び45(右列)からの条件を使用して産生された、複数反復バッチにおける{Mo154}の質量収率を示す。反応番号(cE)からの条件を使用して生成された10の反応に対する平均収率=226±16mg(7.33×10
−3mmol、39.9%)である。反応番号35(dE)からの条件を使用して生成された10の反応に対する平均収率=257±29mg(8.24×10
−3mmol、34.0%)である。反応番号(eE)からの条件を使用して生成された10の反応に対する平均収率=389±27mg(1.26×10−2mmol、41.1%)である。
【0250】
{Mo
132}
次に、化合物3、{Mo132}ケプレラート球状クラスタを標的とした(Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 3359-3363)。上で使用したフロー化学システムを、この調製における使用のために構成した。したがって、AcOH及びAcO(NH
4)試薬ポンプをHClポンプの代わりに使用し、N2H2・H2SO4ポンプをNa
2S
2O
4ポンプの代わりに使用した。約pH4の緩衝溶液を提供するように、AcOHに対する(NH4)OAcの流量の比を1:1に設定した。
【0251】
全体的な希釈度に加えて、緩衝試薬に対する還元モリブデンの比を改変しながら、発見アレイ実験を上述のように行った。還元剤の量は、{Mo132}標的におけるMoV:MoVIの近似比に従い、20mol%に設定した。ここでも、アレイ内の反応のpHは、周期的に変動した(
図13を参照されたい)。この反応スキャンにおいて、pHは概して、濃縮HCl溶液の代わりに酢酸緩衝原液を使用することにより、約4〜5の比較的狭いpH範囲内に維持された。4日間の静置期間後の反応物の検査では、純粋な{Mo132}標的の結晶が、反応番号29(cH)及び39(dH)において形成されたことが明らかとなった。微小な暗褐色多面体結晶は、結晶学的単位格子チェック、IR及び可視吸光度分光法により、{Mo132}と確認された(Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 3359-3363)。
【0252】
化合物4及び5は、ジチオナイト還元剤が10mol%に設定され、H2SO4に対する還元モリブデートの比がスキャンにわたり変動される条件下で、同じ反応スクリーンから単離された。このスクリーニング方法を使用して最も複雑なPOM構造のいくつかに到達し得る証拠として、この発見アレイスキャンのための元の標的は、実際には化合物5、{Mo368}「レモン」であった(Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 1162-1167)。しかしながら、この生成物の結晶化に成功した条件(画分28、cI)の発見に加え、4{Mo102}ケプレラートを直接反応溶液から結晶化する条件(画分29、cJ)もまた発見された((a)Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 1614-1616、(b)Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 2085-2090、(c)Henry et al. J. Mol. Liq. 2005, 118, 155-162を参照されたい)。
【0253】
図17は、反応番号29(左列)、39(右列)からの条件を使用して産生された、複数反復バッチにおける{Mo132}の質量収率を示す。反応番号29(cI)からの条件を使用して生成された10の反応に対する平均収率=67±6mg(2.34×10
−3mmol、49.4%)である。反応番号39(dI)からの条件を使用して生成された10の反応に対する平均収率=87±3mg(3.04×10
−3mmol、48.2%)である。
【0254】
一般的反応条件
各反応番号に対して分配された各試薬の体積に従い、反応の成功のための理論的組成及び生成物収率を以下のように計算した。
【0255】
{Mo36}、反応番号26(cF)は、H2O(2.5mL)、2.5M Na2MoO4(1.875mL)及び5.0M HCl(1.875mL)で構成され、2日間静置した後、{Mo36}の大型の無色柱状単結晶(単位格子マッチ)を生成した(284mg、4.12×10−2mmol、31.6%)。
【0256】
{Mo36}、反応番号36(dF)は、H2O(1.25mL)、2.5M Na2MoO4(2.5mL)及び5.0M HCl(2.5mL)で構成され、2日間静置した後、{Mo36}の大型の無色柱状単結晶及び分岐状凝集物(単位格子マッチ)を生成した(995mg、0.147mmol、84.7%)。
【0257】
{Mo36}、反応番号46(eF)は、2.5M Na2MoO4(3.125mL)及び5.0M HCl(3.125mL)で構成され、2日間静置した後、{Mo36}の大型の無色柱状単結晶及び分岐状凝集体(単位格子マッチ)を生成した(1.25g、0.185mmol、85.2%)。
【0258】
{Mo154}、反応番号25(cE)は、H2O(2.5mL)、2.5M Na2MoO4(1.125mL)、0.25M Na2S2O4(1.125mL)及び5.0M HCl(1.5mL)で構成され、2日間静置した後、{Mo154}の青黒い四角形単結晶(単位格子マッチ)を生成した(221mg、7.17×10−3mmol、39.0%)。
【0259】
{Mo154}、反応番号35(dE)は、H2O(1.25mL)、2.5M Na2MoO4(1.5mL)、0.25M Na2S2O4(1.5mL)及び5.0M HCl(2.0mL)で構成され、2日間静置した後、{Mo154}の青黒い四角形単結晶(単位格子マッチ)を生成した(297mg、9.63×10−3mmol、39.3%)。
【0260】
{Mo154}、反応番号45(eE)は、2.5M Na2MoO4(1.875mL)、0.25M Na2S2O4(1.875mL)及び5.0M HCl(2.5mL)で構成され、2日間静置した後、{Mo154}の青黒い四角形単結晶(及び少量の粉末状沈殿物)(単位格子マッチ)を生成した(368mg、1.19×10−2mmol、38.9%)。
【0261】
{Mo132}、反応番号29(cI)は、H2O(2.5mL)、2.5M Na2MoO4(0.25mL)、0.23M N2H4・HSO4(0.5mL)、50%AcOH(1.5mL)及び4.0M AcO(NH4)(1.5mL)で構成され、4日間静置した後、{Mo132}の微小褐色立方単結晶(単位格子マッチ)を生成した(61mg、2.13×10−3mmol、45.0%)。
【0262】
{Mo132}、反応番号39(dI)は、H2O(1.25mL)、2.5M Na2MoO4(0.333mL)、0.23M N2H4・HSO4(0.667mL)、50%AcOH(2.0mL)及び4.0M AcO(NH4)(2.0mL)で構成され、4日間静置した後、{Mo132}の微小褐色立方単結晶(単位格子マッチ)を生成した(87mg、3.04×10−3、48.2%)。
【0263】
{Mo102}、反応番号29(cI)は、H2O(2.5mL)、2.5M Na2MoO4(0.375mL)、0.25M Na2S2O4(0.375mL)及び1.0M H2SO4(3.0mL)で構成され、2週間静置した後、{Mo102}の大型の青黒い四角形単結晶を生成した(5.2mg、2.345×10−4mmol、2.5%)。
【0264】
{Mo368}、反応番号28(cH)は、H2O(2.5mL)、2.5M Na2MoO4(0.562mL)、0.25M Na2S2O4(0.562mL)及び1.0M H2SO4(2.625mL)で構成され、2週間静置した後、{Mo368}の微小な青黒い細長六角形単結晶(単位格子マッチ)を生成した(12mg、1.5×10−4mmol、3.9%)。
【0265】
{Mo154}の平行UV−vis分析
{Mo154}発見アレイに対して回収された各反応物のアリコート(0.2mL)を、新鮮な脱イオン水(3mL)で希釈し、速やかにUVスペクトルを測定した。次いで、50スペクトルの完全データセットを使用して、本明細書に示される3Dスペクトルを編集した。
【0266】
分析
X線回折構造分析及び結晶学的データ:好適な単結晶を選択し、フォンブリンオイルを使用して細いガラス繊維の末端に載せた。Bruker Apex II Quasar x-ray Diffractometerで、強化X線ビーム[λMo−Kα=0.71073Å、グラファイト単色化]を用い、150Kで化合物4及び8のX線回折強度データを測定した。Apex2ソフトウェアパッケージ及び構造解を使用してデータ削減を行い、WinGXを介してSHELXS-97及びSHELXL-97を使用して精密化を行った。多面体結晶モデルを用いた数値解析吸収補正を使用して、入射及び回折ビーム吸収効果の補正を適用した。
【0267】
{Mo102}の結晶構造において、Mo原子位置は、サルフェートリガンドのかなり明確な位置無秩序である。クラスタ、溶媒分子及びNa原子上のオキソ及びサルフェートリガンドは、結晶学のみで完全に解析するのは困難である。したがって、最終的な分子式は、元素分析、熱重量分析及び結晶学の組合せにより決定された。構造の高溶媒含量に起因して、反射データは弱く、いくつかのcheckcif警告を生じる。複数のバッチに対して数回データを収集したが、構造は非常に明確で再現性がある。
【0268】
{Mn5}において、クラスタ上の全ての原子は非常に明確であり、溶媒部分のみが無秩序であったが、主要な構造は非常に明確である。全体的な化合物の式は、主に結晶学及びCHN分析により決定された。結合原子価計算を行い、Mn中心の酸化状態を決定した。
【0269】
X線データ
H716Mo102Na12O688S12、Mr=22176.2g mol;結晶サイズ0.09×0.08×0.04mm3;六方晶系、空間群、R−3m、a=32.2189(13)、c=54.059(2)Å、V=48598(4)Å3、Z=3、T=150K、ρ計算値=2.273g cm
−3、μ(Mo Kα)=2.078mm
−1、113168測定反射、10858独立(Rint=0.177)(全ての計算において使用された);構造解及び精密化は、WINGXを使用して行われた。最終R1=0.121及びwR2=0.389(全データ)。
【0270】
C60H78Mn5N6O21、Mr=1493.98g mol
−1;結晶サイズ0.30×0.10×0.04mm
3;斜方晶系、空間群、Pca21、a=22.3613(3)、b=15.2985(3)、c=42.4185(7)Å、V=14511.1(4)Å3、Z=8、T=150K、ρ計算値=1.368g cm−3、μ(Mo Kα)=0.917mm−1、55250測定反射、22958独立(Rint=0.054)(全ての計算において使用された);構造解及び精密化は、5WINGX[S4]を使用して行われた。最終R1=0.065及びwR2=0.188(全データ)。
【0271】
化合物の元素分析−計算値(実測値)
[Mn3O(C9H9NO2)3(OH2)3(ClO4)]、C 39.36(39.53)、H 4.04(4.01)、N 5.10(5.13);
[Mn3O(C9H9NO2)3(C9H13N)3(ClO4]、C 55.18(55.19)、H 5.66(5.68)、N 7.15(7.19);
[Mn5O2(C9H9NO2)6(CH3O)(H2O)3]、C 48.19(47.24)、H 4.63(4.24)、N 6.13(5.94);
[Mn6O2(C9H9NO2)6(C5H9O2)2(H2O)6]、C 46.56(46.99)、H 5.13(4.62)、N 5.09(5.15)。
【0272】
収率
化合物1〜5の結晶の調製は、標的化合物が結晶化した溶液を産生するために使用された流量への直接的な関連性を提供した。したがって、次いでポンプを反復的にこれらの流量で動作するようにプログラムし、所望の溶液組成物のそれぞれの複数のバッチを回収して、それにより標的生成物のそれぞれの生成を直接的にスケールアップすることができる。
【0273】
化合物1〜3に対して回収された結晶化の複数のバッチにわたり、得られた結晶性材料の収率は、バッチの各セット全体で一貫して高い値を維持した。条件36(dF)の反復バッチからの{Mo36}の平均収率は、10の反応にわたり78.7±5.3%であり、条件25(cE)の反復バッチからの{Mo154}の平均収率は、10の反応にわたり39.9±2.8%であり、条件29(cI)の反復バッチからの{Mo132}の平均収率は、10の反応にわたり49.4±4.4%であった。これは、文献において以前に報告された単一バッチ手順に一致している((a)Inglis et al. Chem. Commun. 2008, 45, 5924-5926、(b)Inglis et al. Dalton Trans. 2009, 42, 9157-9168、(c)Inglis et al. Dalton Trans. 2009, 18, 3403-3412、(d)Kozoni et al. Dalton Trans. 2009, 42, 9117-9119を参照されたい)。個々のバッチ収率を、
図15〜17に示す。
【0274】
配位化合物
組み合わされた発見及びスケールアップ合成アプローチの大まかな範囲をさらに実証するために、様々な配位化合物を標的とした。選択された化合物は、以下の形態であった:Mn
3O(Et−sao)
3(MeOH)
3(ClO
4)(6)、Mn
3O(Et−sao)
3(tBuPy)
3(ClO
4)(7)、Mn
5O
2(Et−sao)
6(MeO)(H
2O)(MeOH)2(8)、及びMn
6O
2(Et−sao)
6(Piv)
2(MeOH)
6(9)。オキシムベースの{Mn3}から{Mn6}クラスタは単分子磁気(SMM)挙動を示すことが知られているため、これらの化合物は、その興味深い磁気特性で知られている((a)Inglis et al. Chem. Commun. 2008, 45, 5924-5926、(b)Inglis et al. Dalton Trans. 2009, 42, 9157-9168、(c)Inglis et al. Dalton Trans. 2009, 18, 3403-3412、(d)Kozoni et al. Dalton Trans. 2009, 42, 9117-9119を参照されたい)。SMMの合成及び物理分析は、情報蓄積、分子スピントロニクス、量子計算及び磁気冷凍においてこれらの材料が有し得る潜在的応用に起因して、配位化学における集中的研究領域である((a)Bogani et al. Nat. Mater. 2008, 7, 179-186、(b)Evangelisti et al. J. Mater. Chem. 2006, 16, 2534-2549、(c)Zheng et al. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 1057-1065、(d)Leuenberger et al. Nature 2001, 410, 789-793、(e)Lehmann et al. Nat. Nano 2007, 2, 312-317、(f)Karotsis et al. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 12983-12990を参照されたい)。しかしながら、POMと同様に、このさらなる注目は、SMM発見及び合成のスケールアップが、そのようなシステムのより広範な開拓及び調査を妨げる主要な障壁であるにもかかわらず、標準的な卓上バッチ手順を超える新たな合成法の開発をもたらしていない。
【0275】
ポンプ及び配管を備える使用されたフロー化学システムは、POM試薬セット(すなわち化学的入力)を様々なSMM合成に関連するセットにより置き換えたことを除き、以前のPOMの例から不変のままであった(
図5を参照されたい)。SMM合成のために選択された試薬セットは、希釈用の試薬グレードMeOH;Mn源としてのMeOH中の0.5M Mn(ClO4)2・6H2O;塩基としてのMeOH中の0.5Mトリエチルアミン(TEA);並びにリガンドとしてのMeOH中の0.25Mエチルサリチルオキシム(Et−saoH2)、MeOH中の1.5M 4−tert−ブチルピリジン(tBuPy)、MeOH中の0.125Mピバル酸(Piv)、及びMeOH中の0.125M 2−ヒドロキシメチルピリジン(HMP)からなっていた。POMベースプロセスと同様に、配位クラスタのファミリーは、直接的で迅速な様式で得られた。
【0276】
Mn3O(Et−sao)3(MeOH)3(ClO4)
SMM化合物Mn3O(Et−sao)3(MeOH)3(ClO4)(6)にまつわる反応パラメータをスキャンするために、POM発見と同様のスキャンプログラムを適用した。開始点(反応番号1、aA)を、8:2(すなわち、体積で80%MeOH及び20%試薬溶液)の初期希釈比に設定し、Mn対TEA比を1:1の一定体積比に設定し、Et−saoH2リガンドをまず0%に設定した。次いで、Mnに対するEt−saoH2含量を、第1の行にわたって10%の増分で90体積%に増加させた。アレイにおける第2の行(行b)は、6:4に設定された希釈比で出発し、Et−saoH2含量は0%にリセットされた。次いで、TEA及びMnに対するEt−saoH2の比を、アレイの各行にわたって増加させ、一方希釈係数は列の下に向けて減少させた。驚くべきことに、アレイにおける50の反応のうちほぼ半数が、4〜5日間の静置後に暗色の四角/矩形ブロック結晶の形成をもたらした(結晶学的単位格子チェック及びCHN元素分析により化合物6として特性決定された)。アレイからの多数の結晶化の成功により、各反応に対する理論的Mn含量に基づいて、生成物の収率マップを計算した(
図6を参照されたい)。収率マップグラフを検査すると、リガンド対Mn比が1:1に維持される限り、濃度と共に増加する生成物収率の全体的な傾向が示される。これは、生成物構造及び元の報告されたバッチ調製の条件と一致している(Inglis et al. Chem. Commun. 2008, 45, 5924-5926を参照されたい)。
【0277】
他のクラスタ
クラスタプロセスを拡大するために、同様のフロー化学システムを、化合物7、Mn3O(Et−sao)3(tBuPy)3(ClO4)、化合物8、Mn5O2(Et−sao)6(MeO)(H2O)(MeOH)2及び化合物9、Mn6O2(Et−sao)6(Piv)2(MeOH)6に対して設定した。
【0278】
化合物7に対して、開始点(反応番号1、aA)を8:2(すなわち、体積で80%MeOH及び20%試薬溶液)の初期希釈比に設定し、Et−saoH2対Mn対TEAの比を2:1:1の一定体積比に設定し、Mnに対するリガンドの量はまず0%であった。tBuPy量(Mnに対する体積による量)及び希釈比の変動はその後、アレイ出力における複数の反応において、化合物7の結晶化の成功をもたらした。
【0279】
同様に、化合物8及び9は、Et−saoH2、Mn及びTEA入力に対する他のリガンド源の変動により得られた。
【0280】
結論
上記は、無機クラスタの分子発見のためのフロー化学システムである。システムは、化学的入力試薬溶液の流量の自動化調節を使用する。システムはまた、所望の生成物が特定後すぐにスケールアップされ得るようにする。
【0281】
直接的にスケールアップ可能な反応条件の自動化された発見の概念の最初の証拠として、極めて困難なナノスケールポリオキソモリブデート構造の選択を合成した。オキシムベースMn SMMの小ファミリーを得るための合成アプローチの適用は、配位化学分野全体にわたるこの技術の可能な拡大及び使用の範囲をさらに実証する。クラスタ合成においてそのような方法を使用する能力は、複雑な超分子(supermoecular及びsupramolecular)システムが発見され、それらの合成が最適化される様式を大幅に改変する、このアプローチの可能性を実証する。本明細書に記載のように、また以下で例示されるように、オンライン溶液ベース分析技術((a)Lange et al. Chemical Science 2011, 2, 765-769、(b)McMullen et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 7076-7080、(c)Parrott et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 3788-3792、(d)Rasheed et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 357-358、(e)Miras et al. Science 2010, 327, 72-74を参照されたい)と共にこの技術を採用することは、無機ナノ材料系及び複雑な有機反応系等の、所望の生成物の合成を発見、最適化及びスケールアップすることができる、完全に自動化された反応構成をもたらす。
【0282】
自己組織化ナノクラスタ
最小限の人間による入力で自己組織化ナノクラスタを調製するためのプロセスを、以下に説明する。コンピュータ制御された進化的アルゴリズムの使用は、進化的な様式での自己組織化ナノ構造の開発のための主要な実現技術である。無作為基点から開始し、いかなる以前の情報もなしに、システムは、ユーザの仕様を満足する生成物に向かって適者生存のメカニズムに従い進化する。概念の証拠として、本発明者は、シンプレックスベースアルゴリズムにより制御される完全自動化システムが、最小限の人間のインタラクションで2つの異なる複雑なPOMを合成することができる構成を開発した。
【0283】
混合反応生成物を監視し、進化的アルゴリズムで動作する制御システムにフィードバックを提供するために、in−situ分析技術が開発されたが、制御システムは、後の調製を誘導するように意思決定することができる。各化合物を自己組織化させるのに必要な反応条件に対応する化学的な適応度地形が決定された。これは、自己組織化ナノ材料の合成を誘導するために進化的アルゴリズムが使用されたプロセスの最初の例と考えられる。
【0284】
この例において、コンピュータ制御反応システムを使用して、例えば
図20に示されるような他の可能性の広範なコンビナトリアルライブラリから、2つの異なる複雑な自己組織化ナノ構造材料を選択的に生成することが可能であることが示される。このシステムにおいて、2種のポリオキソメタレート(POM)、すなわち大型のモリブデン環{Mo
154}及びケプレラートボール{Mo
132}が、最小限の人間による入力を使用して合成されている。
【0285】
異なる反応構成において、各化合物を選択的に生成するために、方向に基づくNelder-Meadシンプレックスアルゴリズムを使用して、POMの構成要素からなる3つ及び4つのパラメータが同時に最適化された。in−situ UV−Vis分光法及びpH測定を使用して、反応の進行が監視された。取得されたデータを使用して、進化の各サイクルの適応度が計算され、これがアルゴリズムに供給されて、所望の生成物まで知的に進化した。
【0286】
環の適応度関数は、pH1で最適であり、色は青色であり、ボールの適応度関数は、pH4で最適であり、色は褐色である。単一目的最適化問題を確認するために、パラメータは両方とも正規化され、集計された。DLS及びラマン分光法によるさらなる特性決定により、実験結果が検証された。フローシステム構成の概略図を、
図19に示す。
【0287】
標的
自然進化に平行して、システム内の染色体は、4つのパラメータ、又は遺伝子で構成される。これらのパラメータは、異なる生成物を合成するために必要な4つの化学的入力、すなわちモリブデン、酸、還元剤及び緩衝剤を含む。モリブデン源としてNa2MoO4・2H2Oの水溶液を使用し、還元剤としてNa2S2O4及びヒドラジンを使用した。pHは、HClを用いて調整され、緩衝溶液は、AcOH及びNH4OAcを混合することにより形成された。標的ポリオキソメタレートは、{Mo154}と呼ばれる(10)Na15[MoVI126MoV28O462H14(H2O)70]0.5[MoVI124MoV28O457H14(H2O)68]0.5・約400H2O、及び{Mo132}と呼ばれる(11)(NH4)42[MoVI72MoV60O372(CH3COO)30(H2O)72]・約300H2O・約10CH3COONH4であった(
図7を参照されたい)。
【0288】
プロセスステップ
まず、無作為な量の化学的入力を、反応空間内で混合した。追加速度は、全ての試薬が同時に混合されることを確実とし、混合における問題を排除するように導入される体積に関連した。このプロセスを、N+1回反復した(Nは、化学的入力の数、すなわちポンプの数である)。その後、反応空間に添加される試薬の量をシステムに決定させた。各ポンプに、任意の反応混合物に0mL〜5mLの範囲の任意の体積の試薬を提供させた。これは、システムへのさらなる物理的入力としてみなすことができる。
【0289】
【表1】
【0290】
まず、構成A及びBに対して、上記表1に示されるように3つのパラメータのみを変動させて各化合物を合成した。最初に比較的希薄な条件を用いて、3つの化学的入力(3つのポンプ)を使用した。構成Aに対する反応混合物は、モリブデン源、HCl及びジチオン酸ナトリウム(還元剤として)の水溶液の組合せからなっていた。構成Bは非常に類似していたが、酸溶液は、AcOH(50%)及びNH4OAc(4M)の溶液(1:1体積比)を混合することにより得られた緩衝液と交換された。
【0291】
反応物を特性決定するための分析システムとしてUV−Vis分光法を選択し、J1と表記される適応度関数を計算した。好適なスペクトルを得るには、比較的希薄な条件が必要であった。適応度関数は、単回測定に基づいた。実際に、これは
J
1=A
max−A
min [1]
と定義されたが、式中、Amax及びAminは、化合物が吸収すると予想される波長での吸光度に対応する。定義上、シンプレックスアルゴリズムは、関数を最小化するように設計される。それにもかかわらず、このシステムにおいて、化合物10及び11の量を最大化することが目的である。したがって、適応度関数を最大化するようにアルゴリズムを修正した。
【0292】
2つの理由から、異なる反応混合物のpHを試験した。まず初めに、これは各化合物が形成されるpH範囲に関する情報を提供する。この情報は、より多数のパラメータが同時に最適化された場合、後に使用された。さらに、化合物調製は文献において十分説明されているため、最適化の結果を検証するためにpHを監視した。
【0293】
{Mo154}
{Mo154}の場合、最大波長を750nmに、また最小波長を400nmに設定した。アルゴリズムは、18サイクル後に最適解のセットを発見した(
図8a)。UV−Visスペクトルは、750nmに最大値を有する幅広いピークを示した。最適化された組成物のpH値は、約pH2.1±0.1であり、Moに対する還元剤の最適な量は、7.5%〜18%の範囲内にあることが判明した。これらの条件下で、{Mo154}化合物が形成されるはずである((a)Muller et al. Acc. Chem. Res. 1999, 33, 2-10、(b)Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1995, 34, 2122-2124を参照されたい)。
図8は、サイクル10からのUV−Visスペクトルの例を示し、これは、J1の最高値の1つを有していた。
【0294】
{Mo132}
同様の条件下で化合物{Mo132}を合成するために、HClの化学的入力を、酢酸及び酢酸アンモニウムの緩衝溶液で置き換えた(表1、構成B)。{Mo132}に対応する吸光度ピークは、455nmの波長にあると予想された。それにもかかわらず、反応の初期段階において、緑色の溶液が観察され、これは数時間後に褐色に変化した。ゆえに、ここでも選択された最大値は750nmであり、最小値は450nmであった。プロセスは何とか薄緑色の溶液を生成したが、これは長時間(約5時間)かけて褐色に変化した。得られた混合生成物の酸性度は、一貫してpH4.3±0.1であったが、これは、{Mo132}を形成することが予想されるpHに対応する(Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1995, 34, 2122-2124)。しかしながら、Moに対する還元剤の量は、60%〜100%の範囲内にあることが判明し、これは通常報告されているもの(Muller et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 3359-3363)より高い。結果として、淡褐色沈殿物が観察されたが、これは恐らく、モリブデン種及び塩の混合物に対応する。
【0295】
DLS測定
構成Aにおける生成物のDLS測定は、モリブデン環に関して本発明者らによりつい最近報告された値と一致して、3.6nmの粒径を有するナノ粒子の存在を示した(Miras et al. submitted to J. Am. Chem. Soc. - Solution Phase Monitoring of the Structural)。
【0296】
構成Bにおいて得られた生成物試料は、{Mo132}のサイズに一致して、2.8nmの粒径を有するナノ粒子の存在を示した(Muller et al. Coord. Chem. Rev. 2001, 222, 193-218)。
【0297】
これらの結果は、本システムが、UV−Visのみを使用して、10及び11が自己組織化する組成及びpH値に関していかなる予備知識もなしに、両方の化合物を合成することができることを証明している。特筆すべきことに、3つの化学的入力を用いた実験は、各化合物が形成されるpHの範囲を発見するために有用であった。
【0298】
図9は、{Mo154}及び{Mo132}の調製中に得られた2つの溶液に対するDLS結果を示す。結果は、3.6nm({Mo154}に対応)及び2.8nm({Mo132}に対応)の流体力学直径を有するナノ粒子の存在を示している。
【0299】
{Mo154}及び{Mo132}
{Mo154}及び{Mo132}の両方を別個に合成することに成功した後、4つの化学的入力が提供されるより困難なシナリオを試みた。ここでは、モリブデン源、還元剤、酸及び緩衝剤を反応空間に供給するために4つのポンプが提供された(表1、構成Cを参照されたい)。より高濃度の試薬、及び還元剤としてのヒドラジンの使用は、所望の生成物の結晶化に有利であると予想された。重要なことに、これらの条件下で、{Mo154}及び{Mo132}の両方を形成することができる。
【0300】
化合物10及び11の最初の調製物からのUV−visスペクトルは非常に類似しており、したがって、UV−visのみを使用して生成物を区別することは不可能である。ゆえに、適応度関数を構築するには、第2の分析技術が必要である。各化合物が明確な範囲のpH値を形成することが以前の実験において観察されていることから、in−situ pH測定を分析システムにおける使用に選択した。
【0301】
多目的最適化問題は、優位性ベースの方法を使用して解くことができる(Yu et al. Introduction to Evolutionary Algorithms 2010, Springer-Verlag, London)。このようにして、UV−Vis及びpH読取値に対応する結果が正規化され、重み因子Xを使用して以下の全体的J2値に対する各パラメータの重要性を制御しながら、単一の総適応度関数[2]に加えられた:
【0302】
【数1】
【0303】
式中、Xは、重み因子であり、Amax及びAminは、試験された最大及び最小波長での吸光度に対応し、Arangeは、最大吸光度と最小吸光度との間の予想される最大差であり、pHexpは、観察されるpHの実験値であり、pHobjは、所望のpHであり、pHrangeは、予想される変動範囲である。このように、アルゴリズムは、最大及び最小吸光度が予想される波長、並びに異なる化合物が形成するpHの入力を必要とする。各寄与の相対値、並びに吸光度及びpH変動に対する2つの範囲値は、尺度を正規化するように機能する。
【0304】
全てのパラメータが正確に定義されれば、最適なJは1となる傾向を有するはずである。試験された波長間の吸光度の変化は、予備実験において観察されたように、0.4を超えることは予想されなかった。ゆえに、Arangeは0.4に設定された。pHの範囲に関して、モリブデンの最初の溶液は7.3のpHを有し、一方HClの濃度は0.1Mである。アルゴリズムが大量の任意の試薬を導入することを決定する可能性は低いと考えられたため、pH値は、5以下だけ変動すると予想された。ゆえに、これは、pH結果を正規化するために使用される値であった。
【0305】
【表2】
【0306】
以前の実験において、pHが、ポリオキソメタレートの自己組織化のための決定因子であることが観察されている。上述のように、自己組織化反応の初期段階における{Mo154}及び{Mo132}のU10V−Visスペクトルは、非常に類似している。したがって、試験された全ての場合においてこのパラメータにより高い重みを適用する優位性ベースのアプローチが使用された。
【0307】
まず、前の実験の場合と同じUV−Vis分析の波長を選択し、pH
objを1.7に設定した(表2、番号1)。これらの条件下で、48サイクル後に達成された適応度因子の値は、0.85であった。適応度関数の高い値にもかかわらず、モリブデンに対するヒドラジンの比は、過剰に高いことが判明した。これは、酸の濃度が高いサイクルにおいて観察された沈殿Mo種の形成により説明することができ、これは、アルゴリズムによりモリブデンの量を低減することによって補償された。
【0308】
単一の総適応度関数を使用することの周知の制限は、相反する効果を有する可能性である。この点は、一実験において観察され(表2、番号2)、結果の好適なセットは、確立された値から比較的遠いpHで見出された。実際に、適応度関数を最大化するように機能したUV−Visスペクトルから得られた最適値により、pHは、55サイクル後に約pH1.3の値に安定した。
【0309】
{Mo154}の形成は、1.4から始まるpHで生じ得るが、これは測定誤差の範囲内である(Shishido et al. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 10588-10595)。したがって、J2の値が予想より低かったとしても、所望の生成物が形成された。最小波長を990nmに設定して、10を合成するための別のアプローチを試みた(表2、番号3)。適応度関数は、2.0〜2.3の範囲内のpH値及び0.3〜0.35:1の還元剤対Moの比で最大化された。これは、還元されるべきモリブデン中心の数が考慮される理論的予想値よりも高い。
【0310】
図10に示されるように、スキャンされた4つのパラメータの濃度プロファイルにおける大きな変動が、最適化の初期段階中に観察された。その後、システムは、約50サイクル後に好適な組成を発見でき、次いで化学的及び物理的入力の細かい精密化のために変動はほとんど必要なかった。
【0311】
この試験の間、5サイクルにわたり、サイクル35で酸溶液を除去することにより、最適化アルゴリズムの堅牢性を試験した。これにより、実験pHの増加がもたらされ、その結果、システムの適応度の急激な低下がもたらされた。それにもかかわらず、酸溶液を再び接続した後、適応度値は3サイクル以内に回復した。
【0312】
化合物11の合成は、単純に最小波長を450nmに、また目標pHを4.3に設定することにより達成された。わずか23サイクルで、観察されるJ2の値は0.98超であった。この合成は、使用した高濃度の緩衝剤に起因して、10と比較してより容易であったが、この高濃度の緩衝剤は、pHの変換を、{Mo132}クラスタを形成するために必要な範囲まで促進した。ここでも、ヒドラジン対Moのモル比は約0.45:1であったが、これは文献において報告されている条件より高い。これは、調合物が、通常生成物の結晶化のために最適化されることに起因する。それにもかかわらず、より多量の還元剤は、結晶化により得られる量より多量の生成物の沈殿に有利であり、より高収率の単離材料をもたらすことが示されている。
【0313】
本明細書において提供されるシステムは、反応の初期段階における溶液中の生成物の量を最大化するように設計される。したがって、多量の還元剤は、モリブデン中心の還元に有利であるため、論理的には、多量の還元剤が両方の生成物の形成に有利となるはずである。それにもかかわらず、興味深いことに、過剰の還元剤はモリブデンの過剰還元をもたらし得ることが分かる。両方の化合物の形成は、自己組織化が迅速で効率的であることを示す。
【0314】
構成Cでの両方の化合物の合成において得られたJ2値の組合せは、各生成物が合成された2つの明確な領域を有する化学的な適応度地形を示す。{Mo154}は、より広範な範囲のpH値及び試薬組成で形成され得る。これは、これらの化合物に関して報告されている異なる構造変動に一致している(Shishido et al. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 10588-10595)。{Mo132}は、より狭い条件枠内で形成される。自己組織化プロセスの複雑性は、複数解が存在しないことにより最適化が比較的単純な作業である他の種類の化学システムとは対照的に、複数の最適点の存在により反映される(Moore et al. Chemical Science 2011, 2, 417-424)。両方の化合物が明確に異なる条件下で形成されるとしても、多目的最適化アプローチの使用は、所望の化合物を効率的に合成するための基礎である。ゆえに、適応度関数[2]が正確なパラメータでプログラムされる限り、アルゴリズムは、試験されたいかなる場合においても好適な解を発見することができる。
【0315】
図11は、pH及びMo源に対する還元剤(ヒドラジン)の比の関数としての、{Mo154}及び{Mo132}の合成のために得られた複合的な適応度地形を示す。結果は、J関数が最大化された空間領域を示している。
【0316】
結晶化
回収した試料は、結晶化させるために1ヶ月超放置した。化合物10の場合、大量の沈殿物があったが、光学顕微鏡観察では、単結晶X線回折により特性決定されるのに十分大きな結晶の存在は示されなかった。それにもかかわらず、粉末のラマン分光法による特性決定では、{Mo154}の存在が確認された(
図12)。{Mo154}の結晶試料は、参照として使用され、有意な差は観察されなかった。実験の条件は結晶化のために最適化されていないため、XRDに好適な結晶が特定され得なかったことは驚くべきことではない。{Mo132}の場合、沈殿した粉末から得られたラマンスペクトルは、Muellerらにより最近報告されたデータと一致した。
【0317】
ラマン分析は、溶液から光学顕微鏡(Olympus 100x)を使用して検出された微細結晶を用いて行った。これらの結果により、使用された実験条件下での化合物10及び11の形成が確認される。
【0318】
結論
上で説明されているのは、Nelder-Mead最適化アルゴリズムを使用することにより、複雑な自己組織化ポリオキソメタレートを進化的な様式で合成するために自律的構成を使用するプロセスである。構成の効率は、反応空間に供給する3つの化学的入力を使用して、{Mo154}及び{Mo132}を別個に合成することにより実証された。流量及び体積の制御は、反応混合物へのさらなる物理的入力を提供した。
【0319】
UV−Vis分光法は、プロセスの効率的監視を提供することが示され、また、適応度関数を計算し、それによりさらなる生成物の調製を制御するためにスペクトルが使用された。{Mo154}及び{Mo132}の両方の形成が、DLSにより確認された。これらの実験は、各化合物が形成されるpH範囲に関する追加的情報を提供する。
【0320】
より困難なシナリオにおいて、大型の{Mo132}ケプレラート及び{Mo154}環を合成し、それらを区別することが可能であることが、その両方を潜在的に形成し得る反応条件下で証明された。溶液のUV−Visスペクトル及びpHの同時最適化に基づく多目的最適化アプローチの使用は、材料を形成する上で非常に効果的であった。ラマン分光法では、両方のクラスタの存在が確認された。
【0321】
進化化学物質
本発明のプロセスはまた、特に逐次的有機反応における、有機化合物の調製のための方法の進化における使用に好適である。
【0322】
有機化学は、特性若しくは標的ベース(又はそれらの組合せ)であってもよい適応度関数を使用して誘導され得る。乱数の種、変異、及びセンサに基づく入力を使用した適応度関数は、アレイ全体が合成及び試験されることを必要とせずに、反応の組合せアレイを介した経路上に合成経路を誘導する。これは、フローシステムにおいて一連の反応を順次組み合わせる。
【0323】
例示的システムは、「n」個の直交官能基を有するコア骨格、及び官能基当たり「m」個の異なる試薬を使用し得る。また、システムは、フロー反応器内での「o」個の異なる滞留時間、及び「p」個の他の条件、例えば温度、濃度を許容し得る。1つの状況において、3つの異なる滞留時間oがあってもよく、これは3つの異なる結果(m、n及びpの各組合せに対して)をもたらし得る。コアが3つの官能基を有し、各基が、3つの異なる滞留時間及び3つの異なる温度で、9つの試薬の1つと反応し得る場合、243の異なる生成物の可能性が存在する。さらなる選択肢が存在する場合、可能な生成物の数は大幅に増加する。
【0324】
完了に至らない反応(例えば、最初の構成において許容される滞留時間で)でも、可能な反応空間の進化的探索における有用な情報をまだ提供することに留意することが重要であるが、これは、そのような結果が、極めて反応性の系と組み合わされると、高度の変動性をもたらすためである。完了に至っていない反応は、その反応への入力が所望の生成物の結果に関連付けられた場合、後に「再開」されてもよい。
【0325】
実際に、極めて変動性の反応の使用は、進化的な力学を確立するための良好な手法であり、多くのライブラリ/アレイが、コンビナトリアルケミストリーの文献から利用可能である。
【0326】
進化化学物質(ECE、Evolved-Chemical-Entity)プロセスにおいて、全ての選択肢を通して一度に1つの経路のみが採択され、各選択肢が記録されることに留意することが重要である。各経路からの生成物が測定され、所望の結果(標的アッセイ又は分子)と比較され、ユーザ仕様に対する適応度値が割り当てられる。経路からの情報のフィードバックは、適応度と合わせて、及び無作為変異の可能性と合わせて、進化を生じさせる。
【0327】
概念的プロセスの証明において、2段階反応の生成物を調査した。第1のステップはディールス−アルダー(Diels−Alder)反応であり、第2のステップとしてアミノ化が続いた。一般的反応スキームを以下に示す。
【0328】
【化1】
【0329】
進化的ステップの検証のために、最初の実験は、試薬と比較した生成物のIR吸収における変化により定義された適応度関数を検討した。IR分光法は、フローシステムにおける生成物及び試薬の両方の迅速な分析を可能にし、システムが生成物から試薬に極めて迅速にフィードバックできるようにする。IR分光法は、化学者がある特定の主要な共有結合(例えばカルボニル結合)の存在及び非存在を決定できるようにする上で有用であることが周知である。
【0330】
反応系は、フローシステムにおけるアルデヒド化合物(1−3)との反応のためのコアシクロペンタジエン(B)を提供した。得られた環状付加物(B1−3)をアミン(4−6)と反応させ、9種の可能なイミン生成物(B1−3、4−6)を提供させた。さらなる研究の一部として、そのイミンを還元し、得られたアミンを反応させて第3アミン生成物を提供させることができる。最初の実験は、最初の2つの反応ステップを考慮した。
【0331】
この例において、自動化された様式で8つのシリンジポンプを使用したフローシステムにおいて、化合物の2つの産生が自動的に産生された。1つのシリンジポンプは、シクロペンタジエンを供給し、3つのポンプは、各アルデヒド化合物を供給し、3つのポンプは、各アミンを供給し、最後のポンプは、洗浄サイクルのために含められた。ディールス−アルダー反応を触媒するために、PTA(0.05mol%)の供給もまた提供された。
【0332】
シクロペンタジエン、及びアルデヒド化合物の1つが、第1の反応器(R1)に供給された。生成物材料は第2の反応器(R2)に導入され、これにアミン化合物の1つが供給された。
【0333】
無水THF中の3M試薬溶液を使用して実験を行った。産生物B1−3及びB1−3、4−6を以下に示す。
【0334】
【化2】
【0335】
R1において、コア分子Bを、等モル体積のジエノフィル1−3及び触媒と合わせた。R2において、反応器R1からの混合物を添加すると、無水THF中の1.5M溶液が得られ、それにTHF中の3M溶液の1つを、環状付加物B1−3の流量の半分の流量で流入させて、アミン4−6のアルデヒド:アミン比を1:1(mmol:mmol)に維持した。
【0336】
それぞれの完全な反応後に得られた、化合物B1−3、4−6を含有する反応混合物を、自動化された様式でスペクトルを得るようにプログラムされたATR−IRフローセルと同調させて分析した。各合成サイクルが完了した後、システムをポンプ番号8(溶媒のみ)で清浄化して、新たなスペクトルの収集を開始する前にフローATR−IRセルを清浄化した。R1がATR−IRフローセルに直接接続されて2段階反応と同じ滞留時間が維持された別個の実験において、第1の産生に対するIRスペクトルを取得した。以下の表において、これらの実験を行うために使用された2つの産生の自動化された合成に対するフロー条件を報告する。
【0337】
【表3】
【0338】
予想されるように、より高い温度又はより長い滞留時間で行われた実験は、より高い変換速度を提供する実験である。例えば、最も短いt
R(表3、番号3及び7)で行われた2つの実験において、化合物B(アルデヒド部分のピークが1699cm
−1にある)のB1(アルデヒド部分のピークが1715cm
−1にある)への変換は、50℃よりも20℃で行われた場合により低い。
【0339】
実験は、計画されたフロー構成の条件に近づくように無作為に行われたが、この構成は、反応結果に従い可能な経路のネットワーク上を移動し、知的アルゴリズムにより良好な結果を有するものを発見する。それを達成するために、各実験から収集されたATR−IRデータは、一般的反応の結果に相関する普遍的な数学的パラメータを発見するために、異なるように半自動的に処理された。最初の新たなフロー構成は、取得されたIRスペクトルをシミュレートされたものと比較するようにプログラムされたが、選択されたものとの(80%の)類似性を有するスペクトルが発見されたら、反応物質の混合は自動的に停止されるべきである。
【0340】
反応が生じたかどうかを導出するために、実験スペクトルを、出発材料からのスペクトルの合計と逐一比較し、最小2乗誤差(MSE)の計算を可能にしたが、これは、1つのスペクトルが他のスペクトルとどれ程異なっているかを示す。第1の産生において、実験のそれぞれのMSEの値は、環状付加物内のコア分子の変換が30%を超える場合、10
−3より高く、化合物B1、B2及びB3の結果が以下の表に要約される。
【0341】
【表4】
【0342】
このようにして、新たな反応及び産生物を探すための観察可能な適応度関数としてMSEを使用することができる。また、IRスペクトル間の差が分子多様性の良好な指標である場合(新たな結合が新たな振動屈曲、伸縮及び他のモードを提供する)、この実装は、限定された試薬プールからの新たな分子多様性の進化を可能にする。
【0343】
参考文献
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