(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276271
(24)【登録日】2018年1月19日
    
      
        (45)【発行日】2018年2月7日
      
    (54)【発明の名称】流体スプレーヘッドと、このような流体スプレーヘッドを有するディスペンサー装置
(51)【国際特許分類】
   B05B   1/34        20060101AFI20180129BHJP        
   B05B  11/00        20060101ALI20180129BHJP        
   B65D  47/34        20060101ALI20180129BHJP        
   B65D  83/14        20060101ALI20180129BHJP        
   B65D  83/28        20060101ALI20180129BHJP        
【FI】
   B05B1/34 101
   B05B11/00
   B65D47/34 200
   B65D83/14 200
   B65D83/28
【請求項の数】10
【全頁数】10
      (21)【出願番号】特願2015-529105(P2015-529105)
(86)(22)【出願日】2013年9月2日
    
      (65)【公表番号】特表2015-526287(P2015-526287A)
(43)【公表日】2015年9月10日
    
      (86)【国際出願番号】FR2013052008
    
      (87)【国際公開番号】WO2014037655
(87)【国際公開日】20140313
    【審査請求日】2016年7月19日
      (31)【優先権主張番号】1258233
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】FR
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター  フランス  エスアーエス
          (74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人  ナカジマ知的財産綜合事務所
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】プリオードゥ  フローラン
              
            
        
      
    
      【審査官】
        赤澤  高之
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2002−153782(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2002−306991(JP,A)      
        
        【文献】
          実公昭28−001064(JP,Y1)    
        
        【文献】
          特開2001−046920(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2001−029479(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B  1/00−17/06
B05D  1/00−  7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  流体スプレーヘッドであって、
  吐出軸Xを有するスプレー吐出口(21)と、
  スプレー吐出口(21)の上流側にあり、吐出軸Xに対して実質的に直交する端壁(12)と、内周側壁(25)を含む渦巻チャンバー(20)と、
  渦巻チャンバー(20)内に渦巻を発生させるように、渦巻チャンバー(20)に、吐出軸Xを横切る方向に開口する流路出口(131)を有する渦巻流路(13)と、を備え、
  渦巻流路(13)は、その流路出口(131)から渦巻チャンバー(20)まで伸びる噴出軸Yを定義しており、
  渦巻流路(13)の噴出軸Yが、端壁(12)と内周側壁(25)から離れる方向に伸び、渦巻チャンバー(20)内を端壁(12)と内周側壁(25)に沿って通過しないように,端壁(12)と内周側壁(25)とが流路出口(131)に隣接しており、
  ヘッド本体(1)とノズル(2)とを備え、
  ヘッド本体(1)は、端壁(12)と円錐形状側壁(14)を形作るピン(11)を形成し、
  ノズル(2)は、ピン(11)の周囲に係合して、ピン(11)との間に渦巻チャンバー(20)と渦巻流路(13)が形成され、
  ノズル(2)は、正面壁(24)と、内周側壁(25)と円錐形状部(26)とを形成し、円錐形状部(26)は、ピン(11)の円錐形状側壁(14)に気密に接触して、渦巻流路(13)を形成すると共に、ノズル(2)は、吐出軸Xに対して円対称であり、
  かつ、前記ヘッド本体(1)内の共通ダクト(17)に流入する流体は、前記渦巻流路(13)を介してのみ、前記渦巻チャンバー(20)に流出するように構成されている
  ことを特徴とする流体スプレーヘッド。
【請求項2】
  端壁(12)は、実質的に平坦であって、流路出口(131)は、端壁(12)において渦巻チャンバー(20)に開口されている
  ことを特徴とする請求項1に記載の流体スプレーヘッド。
【請求項3】
  渦巻チャンバー(20)は、スプレー吐出口(21)が形成された正面壁(24)を含み、噴出軸Yは、正面壁(24)に向けられている
  ことを特徴とする請求項1または2に記載の流体スプレーヘッド。
【請求項4】
  内周側壁(25)は、実質的に円筒状であることを特徴とする
  請求項1から3までのいずれかに記載の流体スプレーヘッド。
【請求項5】
  渦巻流路(13)の噴出軸Yは、端壁(12)と内周側壁(25)の間を横切る方向に伸び、端壁(12)と内周側壁(25)に対して45°の角度をなして伸びている
  ことを特徴とする請求項2または4に記載の流体スプレーヘッド。
【請求項6】
  渦巻流路(13)は、吐出軸Xと同軸上の円対称軸を有する円錐形状側壁14に形成されている
  ことを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の流体スプレーヘッド。
【請求項7】
  流路出口(131)は、接線方向からずれた方向において渦巻状のチャンバー(20)に開口されている
  ことを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の流体スプレーヘッド。
【請求項8】
  渦巻チャンバー(20)は、吐出軸X方向における厚みをEとし、吐出軸Xに直交する方向における直径Dとしたとき、比率E/Dが、およそ0.8未満であって、Eがおよそ
0.5mm未満である  
  ことを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の流体スプレーヘッド。
【請求項9】
  渦巻流路(13)は、直線状である
  ことを特徴とする請求項1から8までのいずれかに記載の流体スプレーヘッド。
【請求項10】
  流体ディスペンサー装置であって、
  貯蔵容器と、
  貯蔵容器に搭載されたポンプ装置と、
  請求項1から9までのいずれかに記載の流体スプレーヘッドと
を備えた
  ことを特徴とする流体ディスペンサー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  この発明は、流体スプレーヘッドおよびディスペンサー装置に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  流体スプレーヘッドは、1つの吐出軸を有するスプレー吐出口を有し、スプレー吐出口の上流には、複数の内壁に囲まれてなる渦巻チャンバー(swirl chamber)があり、そして、渦巻流路(swirl channels)は、渦巻チャンバーの内壁面にそれぞれ流路出口を形成し、それらの出口は、吐出軸を横切って渦巻チャンバーに流入するように開口しており、その結果、渦巻チャンバー内に渦巻流を発生させる。各渦巻流路は、流路出口から渦巻室まで伸びる噴出軸(projection axis)を形作る。
【0003】
  例えば、このようなスプレーヘッドは、1本以上の手の指によって駆動可能なプッシャーの形であるかもしれない。
  この発明の望ましい適用分野は、香水や化粧品および薬剤の分野であるが、他の分野を除外するものではない。
  従来技術として、特許文献1が知られており、それには、吐出口、渦巻チャンバー、および接線方向に横切るように渦巻チャンバーに開口している渦巻流路を含む、スプレーヘッドが開示されている。
【0004】
  従来の方法では、渦巻流路は、スプレー吐出口の吐出軸に直交する平面内で形成されている。結果として、渦巻流路から流入する流体の流れは、渦巻チャンバーの端壁に沿って当該チャンバー内に流入してくる。加えて、渦巻流路が渦巻チャンバーに接線方向に開口しており、流体の流れは、チャンバーの円筒状の内側壁面に沿って通過することにもなる。
【0005】
  こうして、流体の流れは、渦巻チャンバーの端壁と側壁の双方の壁面に沿って通過することになり、それによってかなりの水頭損失を生み出すことになる。
  また、寄生的で制御しえない流れ(parasitic and uncontrolled flow)の現象も発生する。
  特許文献1には、別の実施例として、渦巻流路が、円錐形状の表面に形成され、頂点部にスプレー吐出口が形成された円錐状の側壁を形成する渦巻チャンバーの端壁の、接線方向に当該渦巻流路が開口されている構成が開示されている。
【0006】
  より正確には、スプレー吐出口と円錐形状の内壁を有するノズルに、端壁と円錐状の側面を有するピンが挿入されて、渦巻状の流路が形成される。
  そして、渦巻流路から流入してきた流体の流れは、渦巻チャンバーに入り込み、その円錐形状の内壁に沿ってスプレー吐出口に向かって通過する。
  再度、流体の流れが渦巻チャンバーの円錐形状の内壁面に沿って通過する結果として、かなりの水頭損失が、制御できない寄生的な流れ現象と共に発生する。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】フランス特許出願公開第2399282号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
  上記特許文献1における2つの実施例では、渦巻チャンバーは、かなりの水頭損失と、スプレー吐出口を介して吐出される噴霧の品質を損なうような流動現象を生じせしめる。
  本発明の目的は、上述のような、渦巻チャンバーと渦巻流路を備えたほとんどのディスペンサーヘッドにおいて見いだされる従来技術の欠点を改善することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0009】
  上記目的を達成するために、本発明は、渦巻チャンバー内を、その端壁あるいは周囲の側壁に沿って流動しないで通過するように渦巻流路の噴出軸Yが、流路出口に隣接している渦巻チャンバーの端壁と周囲の側壁から離れて伸びるような構成を提案するものである。
 
【発明の効果】
【0010】
  これにより、渦巻流路出口から流出される流体の流れは、もはや渦巻チャンバーの内壁に沿った寄生層流の現象(parasitic laminar flow phenomena )を伴わないようにすることができる。
  よって、流体は、渦巻チャンバーの内壁による重大な影響を受けずに渦巻を形成することができる。
【0011】
  換言すれば、渦巻は、主に渦巻チャンバーの内壁から離れて流れながら形成される。そのため、渦巻チャンバー内の水頭損失は、かなり減少する。これにより、小さな断面積の渦巻流路の使用を可能にする。
  具体的に、小さな断面積の渦巻流路によって既に水頭損失が生じていても、本発明では渦巻チャンバー内において、水頭損失は少しだけ増加するに過ぎないからである。
【0012】
  その上、端壁が内周側壁に接続されている部分で、流路の出口が渦巻チャンバー内に開口されている。
  そして、渦巻流路から流入する流体の流れは、渦巻チャンバーの側壁面と端壁面に関して実質的に対称的に渦巻チャンバーに流入する。これにより寄生的な乱流をかなり減少させることができる。
【0013】
  ここで、端壁は、実質的に平坦であって、流路出口は、当該端壁において渦巻チャンバーに開口されていることが望ましい。
  渦巻チャンバーは、スプレー吐出口が形成された正面壁を含み、噴出軸は、正面壁に向けられていることが望ましい。
  本発明の他の態様として、内周側壁は、実質的に円筒状であることを特徴としてもよい。
【0014】
  端壁と正面壁は、平行であって、平坦であってもよい。変形例として、端壁は凹形状や凸形状であってもよい。正面壁も同様である。また、内周側壁はわずかに円錐形状となっているとしてもよい。
  本発明における望ましい態様によれば、渦巻流路の噴出軸は、端壁と内周側壁の間を横切る方向に伸び、望ましくは、端壁と内周側壁に対して約45°の角度をなして伸びていることとしてもよい。
【0015】
  これにより、渦巻流路の噴出軸は、渦巻チャンバー内にあって、端壁と内周側壁の双方から離れる方向、望ましくは完全に対称な態様で伸びる。
  本発明における別の望ましい特徴によれば、渦巻流路は、吐出軸と同軸上に回転中心を有する円錐形状側壁に形成されていることが望ましい。
  このようにすれば、渦巻流路は、吐出軸に対して直交する端壁と、望ましくは円筒状の内周側壁の双方に対して斜め方向に開口することができる。
【0016】
  渦巻流路の出口は、円筒状の内周側壁に直接隣接するような態様で端壁に形成されるのが望ましい。
  円錐状側壁によって斜めに配された結果として、渦巻チャンバー内に流入した流れは、端壁と内周側壁から離れるようにして、スプレー吐出口が形成され正面壁の方向に流れる。
【0017】
  具体的な実施例では、スプレーヘッドは、ヘッド本体とノズルを備え、ヘッド本体は、端壁と円錐形状側壁を形作るピンを形成し、ノズルは、ピンの周囲に係合し、ノズルとピンの間に渦巻チャンバーと渦巻流路が形成される。
  ノズルは、正面壁と、内周側壁と円錐形状部とを形成し、円錐形状部は、ピンの円錐形状側壁と密に接触し、渦巻流路を形成する。ノズルは、望ましくは吐出軸に対して円対称であることとしてもよい。
【0018】
  本発明の他の望ましい態様では、流路出口は、接線方向からずれた方向において渦巻チャンバーに開口されている。これにより、渦巻流路から流入する流体の流れが、渦巻チャンバーの内周側壁に沿って流れるのを一層回避することができる。
  渦巻チャンバーは、吐出軸X方向における厚みをEとし、吐出軸Xに直交する方向における直径Dとしたとき、比率E / Dが、およそ0.8未満であって、Eがおよそ0.5mm未満であることが望ましい。
【0019】
  本発明の別の態様として、渦巻流路は、直線状である。
  これにより、特に、渦巻流路の横断面積が小さい場合における、水頭損失を最小にすることができる。
  本発明はさらに、貯蔵容器と、貯蔵容器に搭載されたポンプ装置と、上記の流体スプレーヘッドをポンプ装置に連結させた流体ディスペンサー装置であってもよい。
【0020】
  流体スプレーヘッドは、ポンプ装置の出口に取着され、もしくはポンプ装置に組み込まれる。ほとんどの場合、流体スプレーヘッドは、ポンプ装置のアクチュエータロッドの自由端に取着されたプッシャー(押下部材)の形をとる。
  本発明の趣旨は、渦巻流路から流入する流体の流れが、渦巻チャンバーの内側壁から離れるように流れるようにし、これにより水頭損失を低減し寄生層流現象を最小にすることにある。
【0021】
  当然、流体の流れは、渦巻流路から、内部側壁の一つを介して渦巻チャンバー内に流れ込むが、直ちに内部側壁から離れる方向に向かって流れる。
  以下、添付の図面を参照しながら本発明についてさらに説明するが、これらの図面は非限定的な例として、本発明の実施の形態を示すものである。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係るディスペンサーヘッドの分解斜視図である。
 
【
図2】
図1におけるディスペンサーヘッド本体の細部の拡大正面図である。
 
【
図3】組立てた状態における
図1のスプレーヘッドの水平断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0023】
  本発明に係るスプレーヘッドは、どのような流体ディスペンサー装置、例えばポンプ装置、バルブ装置、絞り出し容器などの吐出口として使用することができる。
  本発明に係るスプレーヘッドは、1本以上の指によって手動により駆動可能なプッシャーとして有利に適用できる。
  プッシャーは、ポンプ装置あるいはバルブ装置に組み込まれてもよい。好ましくは、内部に流出ダクトを有するアクチュエータロッドの自由端に取着されるのがよい。
 
【0024】
  ポンプ装置の場合には、アクチュエータロッドには、容器の開口部に固定的に取着されたポンプ本体のシリンダー内を気密な状態で摺動するピストンが取着される。
  従来の方法では、ポンプ装置は、アクチュエータロッドによって動作する吸引弁と吐出弁を有するポンプ室を備える。そして、ばねに抗してアクチュエータロッドをポンプ本体内に押し込むことによって、ポンプ室の容積は減少し、これにより内部の流体に圧力が加えられる。圧力が所定の値に達すると、吐出弁が開き、圧力を受けた流体が、アクチュエータロッドを介して、本発明のスプレーヘッドを組み込んだプッシャーに到達する。
 
【0025】
  本発明の非制限的な具体例においては、スプレーヘッドは適切なプラスチック材料を射出成型してなるヘッド本体1を含む。
  ヘッド本体1は 単一の部品として作成されてもよい。
  従来と同様、ヘッド本体1は、ポンプ装置もしくはバルブ装置のアクチュエータロッドの自由端に取着される接続用スリーブを備える。
 
【0026】
  当該接続用スリーブは、内部ダクトと流路を介してハウジング10に連通している。
  ハウジング10は、好ましくは円筒状であって、ヘッド本体1の外周縁において水平方向に開口している。
  ハウジング10は、当該ハウジング10から外側に向けて突出するピン11を内部に収容する。ハウジング10内部であってピン11の回りに環状の空間が形成される。
 
【0027】
  図3で見て取れるように、従来通り、ノズル2が、ピン11の周囲のハウジング10の内側に固定的に嵌め込まれている。
  接続スリーブ21から、ノズル2内に形成されたスプレー吐出口21まで流体が移動できるように、一連の内部ダクトがピン11とノズル2の間に形成されている。
  図示されていないが、スプレーヘッドには、ノズル2が見える状態でヘッド本体1を魅力的な方法で被服するカバー用のフープ(hoop)を備えていてもよい。
 
【0028】
  図2を参照するに、ハウジング10とそれに包含されているピン11が、大きく拡大されて見ることができる。
  本実施例では、ハウジング10は、実質的に円筒状の形状を有している。
  ピン11は、ハウジング10内で、ハウジング10と実質的に同軸上に配されており、その横断面が、2つの湾曲部111と2つの平坦部112を有する長方形状になっている。
 
【0029】
  ハウジング10から外側に面しているピン11の正面部は、次に述べるような複雑な構造を有している。
  再度、
図2を参照すると、正面部は、主に円錐状側壁14によって形作られており、後に説明するように、円錐状側壁14の円対称軸がピン11の軸および吐出軸Xと同軸上となるように配される。
 
【0030】
  円錐形状側壁14は、その外周部で切除されると共に、その中心でも切除され、端壁12が形成されている。この端壁12は、本実施例では、実質的に平坦で、かつ、円錐形状側壁14の対称軸に対して直交するように形成されている。
  本発明で、円錐形状側壁14には、円錐形状側壁14における平坦部112から端壁12まで伸び、流路出口131に開口する2本の溝もしくは切り込み13’が形成されている。
 
【0031】
  なお、溝もしくは切り込み13’は、端壁12に、その非接線方向から到達している。
  
図2で示す共通ダクト17を介して、ハウジング10が、接続スリーブを構成する筒状部に連通している。
  ノズル2およびハウジング10とピン11との協働を詳細に説明するため、次の
図3が参照される。
 
【0032】
  ノズル2は、スプレー吐出口21を通過する吐出軸Xを中心にして円対称であることが望ましい。これにより、ノズル2をヘッド本体1のハウジング10に挿入する際に、ノズル2の回転方向を特定する必要はなくなる。
  スプレー吐出口21は、厚みの小さなディスペンサー壁22に形成される。
  スプレー吐出口21は、完全もしくは実質的に円筒状であって、ディスペンサー壁22を厚み方向に貫通する穿孔という形で形成される。
 
【0033】
  ノズル2の、ディスペンサー壁22の周りには、上質の噴霧の形成を促進するための拡散用円錐部23が形成されている。
  ディスペンサー壁22の内側には、完全もしくは実質的に平坦であるか、あるいは少し凹形、凸面、あるいは円錐形状の正面壁24が形成される。
  正面壁24の中心部にスプレー吐出口21が形成される。
 
【0034】
  ノズル2は、吐出軸Xの周りに円筒状の内周側壁25を形成する。
  変形例として、内周側壁25は、円錐状もしくはさらに複雑な形状であっても構わない。
  ノズル2の内周側壁25よりさらに内側には、ピン11の円錐形状側壁14と同じ立体角を有する円錐形状部26が形成される。それ故、円錐形状部26と円錐形状側壁14を、きわめて気密な状態で接触させることができ、それらの間には、切り込みまたは溝からなる渦巻流路13が形成される。
 
【0035】
  渦巻流路13は、流路出口131を介して、ピン11の端壁12と正面壁24とノズル2の内周側壁25で形成された実質的に円筒形状の空間に繋がっている。
  内容積は、流路出口131を入口とし、スプレー吐出口21を出口とする渦巻チャンバー20の内容積となる。
  流路出口131は、内周側壁25に対し直接接線方向に向いているのではなく、渦巻チャンバー20の内側に向けて少しずれている。
 
【0036】
  渦巻チャンバー20は、吐出軸X方向においておよそ0.5mmの厚みを有し、吐出軸Xと直交する方向における直径Dは、およそ0.7ミリである。
  なお、経験的に、比率E/Dは、およそ0.8未満であることが望ましい。
  本発明では、渦巻流路13は直線状であることが望ましく、2本の流路出口131を介して渦巻チャンバー20に流入する噴出軸Yが定義できる。それらの軸は、端壁12や内周側壁25に沿うことなく、渦巻チャンバー20に斜めに伸びている。
 
【0037】
  図3から分かるように、2本の噴出軸Yは、端壁12の実質的に内周側壁25との境界部から渦巻チャンバー20内に伸びている。
  2本の噴出軸Yは、端壁12と内周側壁25に対しておよそ45°の角度をなして渦巻チャンバー20内に伸びている。
  結果として、流体の流れは、端壁12、内周側壁25から離れ、直接的かつ積極的にスプレー吐出口21が形成されている正面壁24に向かって流入する。
 
【0038】
  当然ながら、渦巻チャンバー20内に実質的に接線方向に向けて流入した結果、渦巻流路13から流入した流体の流れは、スプレー吐出口21を通過する前に渦巻もしくは竜巻を発生させる。
  もし、噴出軸Yに沿って渦巻チャンバー20に流入する流体の流れが、端壁12と内周側壁25に沿って通過しないようにするならば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、端壁12や内周側壁25は様々な形状を取り得る。
 
【0039】
  本発明の目的は、渦巻チャンバー20の内壁に沿ってどのような層流でも発生することを回避することである。
  もし、端壁12が実質的もしくは全体的に吐出軸Xに対して直交し、そして内周側壁25が実質的もしくは全体的に円筒状であれば、円錐形状部26内側に渦巻流路13を形成することによって、渦巻流路13は吐出軸Xに対して斜め方向に向くため、渦巻チャンバー20に流入する流体の流れは、そのいずれの内壁面に沿って通過しない。
 
【0040】
  渦巻流路13の上流には、ピン11とノズル2によって2つの供給流路15が形成される。この供給流路15の上流側には両方の供給流路15と連通する環状の流路16があり、環状の流路16はさらに上流側において
図2に示す共通ダクト17に連通されている。
  本実施例では、供給流路15はピン11の平坦部112とノズル2の内側壁27との間に形成されている。
 
【0041】
  ハウジング10内にノズル2を固定的かつ気密な状態で保持するため、ノズル2には、ハウジング10の内側面に気密に係合するような突出形状を有する気密連結手段28が形成されている。
  渦巻流路13から、いずれの内周側壁25に沿って通過することなしに渦巻チャンバー20内に流体の流れが生じる結果、層流の寄生容積に関連する現象を回避することができ、渦巻チャンバー20内での水頭損失が減少する。
 
【0042】
  このような特徴によれば、渦巻流路13を小さな流路断面積として、そこで大きな水頭損失を発生させてもよいので、有利である。
  そして、渦巻流路13の小さな流路断面積により発生する水頭損失によって、水頭損失のない渦巻チャンバー20内部における渦巻あるいは竜巻の発生を可能にする。
  上記では本発明のスプレーヘッドについて、2本の渦巻流路13を有する場合について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、渦巻流路13は、1本だけ、もしくは2本を超える本数であっても構わない。
 
【0043】
  本実施例では、渦巻流路13は、共通の内部ダクト17と共通の環状の流路16によって流れが供給される。しかしながら、渦巻流路13への水流の供給が、それぞれ独立したダクトによって完全に個別に供給するようにしても構わない。
  本発明によって、水頭損失が小さく、寄生層流の影響の存しないスプレーヘッドを提供することができる。