【文献】
DEPREE, C. V. et al.,Journal of Organometallic Chemistry,1996年,Vol. 517,pp. 201-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項10〜15のいずれか一項に記載のゴム混合物を製造するための方法であって、それぞれの場合において、少なくとも1種のゴム、任意選択のシリカベースの充填剤、任意選択の硫黄含有アルコキシシラン、および請求項2〜9のいずれか一項に記載の式(I)のポリスルフィド又はその2種以上の混合物を、混合することを特徴とする、方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
10gの本発明のポリスルフィドと100mLの水との混合物は、標準圧力下に還流状態で30分間加熱してから、25℃にまで冷却した後では、2超、好ましくは2.5〜8、より好ましくは3〜7、最も好ましくは3.4〜6.2のpHを有している。その冷却した混合物は、典型的には、5mS/cm未満、より好ましくは1mS/cm未満の導電率を有している。これらの測定においては、冷却相での時間と、pHおよび導電率の値を測定する前の滞留時間とを合わせた時間が、1時間を超えないようにするべきである。
【0014】
さらに、上述のポリスルフィド後処理によって、その塩素含量が、明らかに1%を超えて、大幅に低下するということも見いだされた。本発明のポリスルフィドが、1%未満、好ましくは0.3%未満、より好ましくは0.1%未満、最も好ましくは0.03%未満の塩素含量を有していることが好ましい。
【0015】
本発明のポリスルフィドは、式(I)の化合物からなる:
【化1】
[式中、
K
1+およびK
2+はそれぞれ独立して、一価のカチオンであるか、またはプラスの一価に相当する多価カチオンの一部であり、
nは、2、3、4、5および/または6である]
【0016】
好ましい実施態様においては、K
1+およびK
2+はそれぞれ独立して、H
+、アルカリ金属カチオン、特にLi
+、Na
+、K
+、(1/2)・アルカリ土類金属カチオン、特に(1/2)・Mg
2+、(1/2)・Ca
2+、(1/3)・Al
3+、プラスの一価に相当する希土類金属カチオンの一部、または(1/2)・Zn
2+である。
【0017】
K
1+およびK
2+がそれぞれ独立して、H
+または(1/2)・Zn
2+カチオン、特には(1/2)・Zn
2+カチオンであるのが最も好ましい。
【0018】
式(I)における正式な命名法では、K
1+および/またはK
2+がH
+であるような化合物は、同様にイオンの形態にあると解釈できるかもしれないが、当業者ならばよく理解するであろうが、これらの化合物においては、極性の共有結合性のO−H結合が、イオン結合に代わって、かなりの程度存在している。本発明は、好ましくは、n=2、3、4、5および/または6で、K
1+および/またはK
2+が(1/2)・Zn
2+である、式(I)のポリスルフィド化合物を提供する。n=4で、K
1+および/またはK
2+が(1/2)・Zn
2+、特にはK
1+およびK
2+が(1/2)・Zn
2+である、式(I)のポリスルフィド化合物が極めて特に好ましい(式(II)参照)。
【化2】
【0019】
本発明のさらに好ましい実施態様は、K
1+およびK
2+がそれぞれH
+である式(I)のポリスルフィド化合物のそれであり、したがってそれは、n=2、3、4、5および/または6である、式(III)に相当する。
【化3】
【0020】
本発明のポリスルフィドは、典型的には、式(I)の複数の化合物からなっていて、この場合、n=3、n=4、n=5、およびn=6である式(I)の化合物を合計した割合は、式(I)の化合物を基準にして、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%である。本発明における式(I)の化合物に関する割合のパーセントは常に、後の実施例の文脈において規定されるように、HPLC測定における面積パーセントから直接求めたものである。
【0021】
特に好ましい実施態様においては、n=4である式(I)の化合物の割合は、式(I)の化合物を基準にして、80%より多い、より好ましくは90%より多い、さらにより好ましくは95%より多い、そして最も好ましくは96%〜99%である。
【0022】
n=2である式(I)の化合物の割合が、式(I)の化合物を基準にして、10%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満であることが好ましい。
【0023】
式(I)の化合物をベースとする本発明において好ましいポリスルフィドは、28%〜40%の間、特には32%〜36%の間の元素分析による硫黄含量を有する。
【0024】
典型的には、本発明のポリスルフィドは、式(I)の化合物の混合物として、式(I)の1分子あたり、平均して、3.5〜4.5、より好ましくは3.7〜4.3個、さらにより好ましくは3.8〜4.2個、最も好ましくは3.9〜4.1個の硫黄原子を有している。
【0025】
式(I)の化合物をベースとする好適なポリスルフィドには、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の、副生物または夾雑物、すなわち式(I)に相当しない化合物が含まれる。より詳しくは、元素の硫黄および/または硫黄供与体の含量は、式(I)の化合物を基準にして、2%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.3%未満、最も好ましくは0.1%未満であり、そしてメルカプトまたはスルフェンアミド基の加硫促進剤の含量は、式(I)の化合物を基準にして、2%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.3%未満、最も好ましくは0.1%未満である。
【0026】
本発明はさらに、2−メルカプト安息香酸をS
2Cl
2と反応させて、K
1+およびK
2+がそれぞれH
+であり、nが2、3、4、5または6、好ましくは4である、式(I)の化合物を得る、本発明の式(I)のポリスルフィドを調製するためのプロセスにも関する。その反応を、不活性な反応媒体中、保護ガスの雰囲気下、0℃〜60℃の間、特には15℃〜35℃の間の温度で実施することが好ましい。温度が極端に低いと、S
2Cl
2が直ちに完全には反応できなくて、そのため、副生物が生成し、またその反応混合物中におけるS
2Cl
2濃度上昇が蓄積して、危険な状態となる恐れがある。温度が極端に高いことも、反応生成物の品質および作業の安全性の理由から、同様に避けるべきである。
【0027】
不活性な反応媒体とは、その反応条件下では、その反応成分と、全くではないにしても、微々たる反応しかしない反応媒体であって、その反応条件下では液体である、特に脂肪族の環状および/または非環状の炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族および/または芳香族のハロ炭化水素、エーテルおよびエステル媒体である。特に好ましい反応媒体はトルエンである。典型的には、S
2Cl
2との副反応を回避する目的で、無水または乾燥反応媒体が使用される。反応媒体として混合物を使用することもまた可能である。反応生成物が、完全とはいえなくても、極めてわずかしか溶解しないような、反応媒体および反応条件を使用することが好ましい。
【0028】
典型的には、最初に保護ガスの下で反応媒体を仕込み、メルカプト安息香酸を導入してから、S
2Cl
2を添加するが、その間、その反応混合物を冷却する。メルカプト安息香酸とS
2Cl
2とを同時に導入することもできる。メルカプト安息香酸を最初に仕込み、反応媒体と同時に導入することもまた可能である。メルカプト安息香酸とS
2Cl
2は、化学量論から求められる割合で使用するのが好ましく、その偏差は、±5%未満、好ましくは±2%未満、より好ましくは±1%未満である。S
2Cl
2が過剰になるのを回避するのが特に好ましい。
【0029】
式(I)のポリスルフィドの合成において使用する不活性ガスは、好ましくは貴ガスまたは窒素、特には窒素である。好ましい実施態様においては、特に、反応混合物に不活性ガス、特に窒素を通過させるか、および/または減圧を適用することによって、反応の間に生成するHClガスを、できるだけ速やかに混合物から全面的または部分的に除去する。
【0030】
本発明のプロセスにはさらに、そうして得られた式(I)のポリスルフィドを、水または、水と、その中にポリスルフィドが、溶解度を有しているとしても、好ましくは極めて低い溶解度しか有しない、反応条件下では液体である、環状および/または非環状の炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族および/または芳香族のハロ炭化水素、エーテルおよびエステル媒体から選択される不活性な有機媒体、より好ましくはトルエンとの混合物と接触させる工程、ならびに60℃を超える温度、好ましくは80℃〜120℃に加熱する工程が含まれる。その加熱時間は、好ましくは30分間よりも長く、より好ましくは1時間〜10時間、さらにより好ましくは2時間〜6時間である。S
2Cl
2とメルカプト安息香酸との反応、およびそれに続く水を用いた処理は、中間体を単離することなく、特にはワンポットプロセスで実施することが好ましい。好ましい実施態様においては、水をフィードした後で、その反応懸濁液を、還流状態にまで加熱するか、および/またはその反応媒体の一部を、水との共沸混合物として蒸留除去する。
【0031】
また別な実施態様においては、上記の水を用いた処理に代えるか、またはその後に、その中でK
1+および/またはK
2+がH
+である式(I)のポリスルフィドを、カチオンのK
1+および/またはK
2+を含む金属塩と接触させ、好ましくは水性分散体の中で60℃を超える温度、好ましくは80℃〜120℃に加熱すると、カチオンのK
1+および/またはK
2+の内の少なくとも1個が、H
+以外のカチオンであるような本発明の式(I)のポリスルフィドが得られる。その加熱時間は、好ましくは30分間よりも長く、より好ましくは1時間〜10時間、さらにより好ましくは2時間〜6時間である。カチオンのK
1+および/またはK
2+の内の少なくとも1個が、H
+以外のカチオンであるような式(I)のポリスルフィドの調製におけるpHは、好ましくは2〜8の範囲、特には3〜7の範囲である。使用される金属塩の溶液は、好ましくは硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、二水素リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、硝酸塩、塩化物、および酢酸塩、特には硫酸塩である。アルカリ金属水酸化物、特にアルカリ金属水酸化物の水溶液を、最適な反応pH範囲を設定するための補助的塩基として使用することが好ましい。金属塩との反応によって得られた式(I)の化合物、特にその中のK
1+および/またはK
2+が(1/2)・Zn
2+である式(I)の化合物は、10gのポリスルフィドを100mLの水の中で還流状態で30分間加熱してから冷却して25℃とした後で、必要とされるpHを有していないが、驚くべきことには、その中でK
1+および/またはK
2+がH
+である本発明の式(I)の化合物と同様に、加硫ゴム混合物の性能プロフィールにおいて顕著な改良を示す。
【0032】
本発明におけるプロセスは、バッチモード、連続モード、あるいはカスケードモードで実施することができる。
【0033】
本発明におけるプロセスでは、10gの式(I)の化合物を100mLの水と混合し、還流状態で30分加熱してから、次いで25℃にまで冷却すると、2超、好ましくは2.5〜8、より好ましくは3〜7、極めて好ましくは3.4〜6.2のpHを有する、式(I)の化合物が得られる。その冷却した混合物は、典型的には、5mS/cm未満、より好ましくは1mS/cm未満の導電率を有している。
【0034】
本発明のポリスルフィドの塩素含量は、1%未満、好ましくは0.3%未満、より好ましくは0.1%未満、さらにより好ましくは0.03%未満である。
【0035】
本発明におけるプロセスによれば、極めて狭い硫黄分布範囲を有する、すなわちn=4を有する式(I)の化合物の割合が極めて高く、そしてn=2を有する式(I)の化合物の割合が極めて低い、特にn=2、3、5および6を有する式(I)の化合物の割合が極めて低い、式(I)の化合物をベースとするポリスルフィドを調製することがさらに可能となる。
【0036】
得られた式(I)のポリスルフィドを、水または、水と、その中にポリスルフィドが、溶解度を有しているとしても、好ましくは極めて低い溶解度しか有しない、反応条件下では液体である、環状および/または非環状の炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族および/または芳香族のハロ炭化水素、エーテルおよびエステル媒体から選択される不活性な有機媒体、より好ましくはトルエンとの混合物と接触させる工程、ならびに60℃を超える温度、好ましくは80℃〜120℃に加熱する工程を含む本発明におけるプロセスによって、その中でK
1+およびK
2+がそれぞれH
+であり、そしてその中で、式(I)の化合物を基準にして、n=4を有する化合物の割合が、80%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超、最も好ましくは96%〜99%である、式(I)のポリスルフィドを得ることが可能である。これらのポリスルフィドは、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも302℃、さらにより好ましくは少なくとも304℃を終端とする融点範囲を特徴としている。融点範囲の終端は、Buechi Melting Point B−545融点測定装置を用いて、視覚的に正確に測定することができる。温度290℃から開始し、加熱速度は1℃/分である。さらに、これらのポリスルフィドは、新規な結晶多形(以後において、明確に区別できるように「ベータ結晶多形」と呼ぶ)の状態にあって、反応混合物から直接得られるポリスルフィド(以後では、「アルファ結晶多形」と呼ぶ)とは異なっている。ベータ結晶多形は、X線回折図(Cu K−アルファ線)において、回折角2θ(゜)=27.2にメインピークを、そしてさらに、回折角2θ(゜)=21.0および13.5に強いピークを示すが、それに対して、アルファ結晶多形は、回折角2θ(゜)=26.6にメインピークを、そしてさらに回折角2θ(゜)=21.1および14.6に強いピークを示す。回折角2θ(゜)の記述には、±0.1の標準変動範囲が含まれている。本発明は、好ましくは、回折角2θ(゜)=27.2にメインピークを有するベータ結晶多形のポリスルフィドを与える。驚くべきことには、得られたポリスルフィドの持つ固有の臭気が弱いので、これらの化合物に通常伴う強い臭気の不快さを免れることも可能であった。
【0037】
本発明の式(I)のポリスルフィドは、調製した後では、0〜35℃の間の温度で保存することが好ましい。
【0038】
驚くべきことには、本発明の式(I)のポリスルフィドが、ゴム混合物の流動性を改良し、良好な性能プロフィール、特に低転がり抵抗性を有する加硫物を与えるということが今や見いだされた。
【0039】
本発明はさらに、2−メルカプト安息香酸とS
2Cl
2とを、好ましくは不活性な反応媒体中、保護ガスの雰囲気下、0℃〜60℃の間、特には15℃〜35℃の間の温度で反応させることによって、K
1+およびK
2+がそれぞれH
+であり、nが2、3、4、5または6、好ましくは4である式(I)の化合物を得て、次いで、その中ではポリスルフィドが、溶解度を有しているとしても、好ましくは極めて低い溶解度しか有しない、反応条件下では液体である、環状および/または非環状の炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族および/または芳香族のハロ炭化水素、エーテルおよび/またはエステル媒体から選択される不活性な有機媒体、特にトルエンの中に懸濁させ、そして、水と、60℃を超える温度、特には80℃〜120℃の範囲の温度で接触させる後処理をすることにより得ることが可能な式(I)のポリスルフィドもまた提供する。水をフィードした後に、その反応懸濁液を還流状態で加熱するか、および/またはその反応媒体の一部を、特に水との共沸混合物として蒸留除去することが、最も好ましい。式(I)のポリスルフィドが、式(I)の化合物の全量を基準にして、80%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超、最も好ましくは96%〜99%の割合でn=4である化合物を含み、ベータ結晶多形の形態にあることが、最も好ましい。
【0040】
したがって、本発明はさらに、それぞれ、少なくともゴムと本発明の式(I)のポリスルフィドとを含むゴム混合物も提供する。
【0041】
本発明は特に、少なくともゴム、硫黄含有アルコキシシラン、シリカベースの充填剤、および本発明の式(I)の化合物をそれぞれ含むゴム混合物を提供する。
【0042】
本発明の式(I)のポリスルフィドはさらに、不活性な有機または無機の担持体の上に部分的または全面的に吸収させた形で使用してもよい。好ましい担持体物質は、シリカ、天然および合成のケイ酸塩、アルミナ、および/またはカーボンブラックである。
【0043】
好ましいゴム混合物の中での本発明の式(I)のポリスルフィドの全含量は、0.1〜15phr、より好ましくは0.3〜7phr、さらにより好ましくは0.5〜3phr、最も好ましくは0.7〜1.5phrである。phrという単位は、そのゴム混合物中で使用されているゴム100重量部を基準にした重量部を表している。
【0044】
本発明のゴム混合物を製造するためには、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することが可能である。好ましい合成ゴムとしては、たとえば以下のものが挙げられる:
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/アクリル酸C
1〜C
4−アルキル・コポリマー
CR:ポリクロロプレン
IR:ポリイソプレン
SBR:スチレン/ブタジエンコポリマー(スチレン含量が、重量で1%〜60%、好ましくは20%〜50%)
IIR:イソブチレン/イソプレン・コポリマー
NBR:ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(アクリロニトリル含量が、重量で5%〜60%、好ましくは10〜50%)
HNBR:部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエン・コポリマー
およびそれらのゴムの2種以上の混合物。
【0045】
本発明のゴム混合物が、少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムとを、より好ましくはSBR:BRの重量比が(60:40)から(90:10)までで、含んでいることが好ましい。
【0046】
一つの有利な実施態様においては、本発明のゴム混合物にはさらに、少なくとも1種のNRゴムが含まれる。それらに、少なくとも1種のSBRゴム、少なくとも1種のBRゴム、および少なくとも1種のNRゴムが含まれているのがより好ましく、SBRゴム対BRゴム対NRゴムの重量比が(60〜85):(10〜35):(5〜20)であれば、最も好ましい。
【0047】
本発明のゴム混合物に好適な硫黄含有アルコキシシランとしては、たとえば以下のものが挙げられる:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(たとえば、Si 69、Evonik製)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(たとえば、Si 75、Evonik製)、3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンチオール、ポリエーテル官能化メルカプトシラン(たとえば、Si 363、Evonik製)、チオエステル官能化アルコキシシラン(たとえばNXTまたはNXT Z(Momentive(旧GE)製))。硫黄含有アルコキシシランの混合物を使用することもまた可能である。計量性および/または分散性を改良する目的で、液状の硫黄含有アルコキシシランを担持体に適用してもよい(乾燥液体(dry liquid))。活性成分の含量は、乾燥液体100重量部あたり、30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部である。
【0048】
本発明のゴム混合物の中の硫黄含有アルコキシシランの割合は、それぞれの場合において100%活性成分として計算して、好ましくは2〜20phr、より好ましくは3〜11phr、最も好ましくは5〜8phrである。硫黄含有アルコキシシランの量が、本発明の式(I)のポリスルフィドの量に等しいか、またはそれ以上であることが好ましい。硫黄含有アルコキシシラン対本発明の式(I)のポリスルフィドの重量比が、(1.5:1)から(20:1)まで、さらにより好ましくは(3:1)から(15:1)まで、最も好ましくは(5:1)から(10:1)までであれば、より好ましい。
【0049】
本発明における好ましいゴム混合物にはさらに、1種または複数のシリカベースの充填剤が含まれる。この目的のためには、以下の物質を使用することが好ましい:
− シリカ、特に沈降シリカまたはヒュームドシリカ、たとえばケイ酸塩の溶液を沈降させるか、またはハロゲン化ケイ素を火炎加水分解させて製造し、5〜1000、好ましくは20〜400m
2/g(BET表面積)の比表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。シリカは、任意選択により、他の金属酸化物たとえば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物との混合酸化物として存在させてもよい、
− 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属ケイ酸塩たとえばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸カルシウム、20〜400m
2/g、好ましくは100〜400m
2/gのBET表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの、
− 天然のケイ酸塩、たとえばカオリンおよびその他の天然産のシリカ、
− ガラス繊維(マットおよびストランドの形態のものを含む)、
− ガラスのマイクロビーズ。
【0050】
言うまでもないことであるが、追加の充填剤を使用することも可能である。この目的に特に適しているのは、サーマルブラック法、ファーネスブラック法、またはガスブラック法によって製造され、20〜200m
2/gのBET表面積を有するカーボンブラック、たとえばSAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、またはGPFカーボンブラックである。
【0051】
充填剤の全含量は、好ましくは10〜200phr、より好ましくは50〜160phr、最も好ましくは60〜120phrである。シリカベースの充填剤の重量での割合は、全充填剤含量の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%である。
【0052】
特に好ましい実施態様は、シリカ、カーボンブラック、および本発明の式(I)のポリスルフィドの組合せである。この場合においては、シリカ対カーボンブラックの比率は、任意の限界内で変化させることが可能であるが、タイヤにおける使用では、シリカ:カーボンブラックの重量比が(20:1)から(1.5:1)であることが好ましい。
【0053】
好ましい実施態様においては、本発明のゴム混合物にはさらに、1種または複数の架橋剤も含まれる。この目的のためには、硫黄ベースまたはペルオキシド系の架橋剤が特に適しているが、硫黄ベースの架橋剤が特に好ましい。
【0054】
使用されるペルオキシド系架橋剤としては、好ましくは、以下のもの挙げられる:ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
【0055】
これらのペルオキシド系架橋剤と同様に、架橋収率を向上させるのに役立つ可能性があるさらなる添加剤を使用するのも、有利となる可能性がある:この目的に適した例は以下のものである:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
【0056】
使用される架橋剤は、原子状の可溶性もしくは不溶性の形態の硫黄であっても、あるいは硫黄供与体の形態であってもよい。有用な硫黄供与体としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。
【0057】
原理的には、本発明のゴム混合物の架橋は、硫黄または硫黄供与体単独で実施するか、または加硫促進剤を併用して実施することができるが、加硫促進剤の好適な例としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲネート、ビ−もしくはポリ−環状アミン、グアニジン誘導体、ジチオホスフェート、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。さらには、亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、環状のジスルファンもまた好適である。本発明のゴム混合物が、硫黄ベースの架橋剤および加硫促進剤を含んでいることが好ましい。
【0058】
架橋剤として硫黄、酸化マグネシウムおよび/または酸化亜鉛を使用し、それに対して、公知の加硫促進剤たとえば、メルカプトベンゾチアゾール、チアゾールスルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、グアニジン、キサントゲネート、およびチオホスフェートなどを加えるのが特に好ましい。
【0059】
架橋剤および加硫促進剤は、0.1〜10phr、より好ましくは0.1〜5phrの量で使用することが好ましい。
【0060】
本発明のゴム混合物には、以下のようなさらなるゴム助剤が含まれていてもよい:たとえば、反応促進剤、老化安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、特にオゾン亀裂防止剤、難燃剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、連鎖延長剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物、および活性剤、特にトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、および加硫戻り安定剤。
【0061】
これらのゴム助剤は、その加硫物の最終用途を含めた因子によって決まってくる慣用される量で使用される。典型的な量は、0.1〜30phrである。
【0062】
使用される老化安定剤としては、好ましくは以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノールたとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基を含む立体障害フェノール、チオエーテル含有の立体障害フェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、および立体障害チオビスフェノール。
【0063】
ゴムの変色がさほど重要でないのならば、たとえば以下のようなアミン系の老化安定剤を使用することも可能である:ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするもの、たとえば、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)。
【0064】
さらなる老化安定剤としては、以下のものが挙げられる:ホスファイトたとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)。これらのものは通常、上述のフェノール性老化安定剤と組み合わせて使用される。ペルオキシドを用いて加硫されたNBRゴムでは特に、TMQ、MBI、およびMMBIが使用される。
【0065】
オゾン抵抗性は、たとえば以下のような抗酸化剤の手段により改良することができる:N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)、エノールエーテル、または環状アセタール。
【0066】
加工助剤は、ゴム粒子の間で活性でなければならず、また混合、可塑化、および成形の際の摩擦力に耐えられなければならない。本発明のゴム混合物の中に存在させうる加工助剤としては、プラスチックの加工で慣用されるすべての潤滑剤、たとえば以下のものが挙げられる:炭化水素たとえば、オイル、パラフィンおよびPEワックス、6〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、カルボン酸たとえば脂肪酸およびモンタン酸、酸化させたPEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、およびたとえばアルコールのエタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールと酸成分としての長鎖カルボン酸とからのカルボン酸エステル。
【0067】
燃焼性を抑制し、燃焼の際の煙の発生を低下させるために、本発明のゴム混合物の組成に難燃剤が含まれていてもよい。この目的のためには、たとえば、三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、または炭酸マグネシウムが使用される。
【0068】
架橋させる前に、さらなるプラスチックをゴム加硫物に添加してもよいが、それらは、たとえばポリマー性加工助剤または耐衝撃性改良剤として機能する。それらのプラスチックは、好ましくは、以下のものからなる群より選択される:エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、分岐状もしくは非分岐状のC
1〜C
10アルコールのアルコール成分を有するアクリレートおよびメタクリレートをベースとするホモポリマーおよびコポリマー、特に好ましいのは、C
4〜C
8アルコール、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノールおよび2−エチルヘキサノールの群からの同一または異なったアルコール残基を有するポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルコポリマー、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー。
【0069】
好ましい実施態様においては、本発明のゴム混合物が、0.1〜15phrの加硫戻り安定剤の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS番号:151900−44−6)を含むが、このものは、tanδ(60℃)、すなわち転がり抵抗性の低下を可能とし、摩耗値を改良し、スコーチ時間および加硫時間を短縮する。
【0070】
好ましくは、それから170℃/t95で硬化させた加硫物が、0.16未満、より好ましくは0.12未満、特には0.10未満の60℃での損失係数tanδを有し、それと同時に、66を超える23℃でのショアーA硬度を有することが、本発明のゴム混合物の特徴である。それと組み合わせて、本発明のゴム混合物は、2000秒未満の加硫時間、および15MPaを超える300弾性率値も達成することができる。
【0071】
本発明はさらに、少なくとも1種のゴムを、少なくとも1種のシリカベースの充填剤、硫黄含有アルコキシシラン、および少なくとも1種の本発明のポリスルフィド混合物と混合することによる、ゴム混合物を製造するためのプロセスも提供する。これには、好ましくは10〜150phr、より好ましくは30〜120phr、最も好ましくは50〜100phrの充填剤、0.1〜15phr、より好ましくは0.3〜7phr、さらにより好ましくは0.5〜3phr、最も好ましくは0.7〜1.5phrの本発明の式(I)のポリスルフィド、ならびに2〜20phr、より好ましくは3〜11phr、最も好ましくは5〜8phrの硫黄含有アルコキシシランを使用することが含まれる。さらに、その混合プロセスにおいて、上述のさらなる充填剤、架橋剤、加硫促進剤、およびゴム助剤を、好ましくは先に規定した量で、添加してもよい。
【0072】
多段混合プロセスにおいては、本発明の式(I)のポリスルフィドを、その混合プロセスの第一部で添加し、1種または複数の架橋剤、特に硫黄、および任意選択の加硫促進剤を、それより後の混合ステージで添加することが好ましい。ゴム組成物の温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120℃〜170℃である。混合の過程での剪断速度は、1〜1000sec
−1、好ましくは1〜100sec
−1である。好ましい実施態様においては、第一の混合ステージの後でそのゴム混合物を冷却し、それより後のステージで、架橋剤ならびに、架橋収率を向上させるために役立つ任意選択の架橋促進剤および/または添加剤を、140℃未満、好ましくは100℃未満で添加する。本発明の式(I)のポリスルフィドを、後の混合ステージで、より低い温度たとえば40〜100℃で、たとえば硫黄および架橋促進剤と共に添加することも同様に可能である。
【0073】
ゴムと、充填剤および本発明の式(I)のポリスルフィドとのブレンドを、慣用される混合装置、たとえばローラー、インターナルミキサー、および混合エクストルーダーの中で実施することもできる。
【0074】
任意選択の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンの添加は、多段の混合プロセスの第一のステージで実施することが好ましい。
【0075】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物を加硫するためのプロセスも提供するが、それは、好ましくは100〜200℃、より好ましくは130〜180℃のブレンド温度で実施する。一つの好ましい実施態様においては、加硫を、10〜200barの圧力で実施する。
【0076】
本発明にはさらに、本発明のゴム混合物を加硫することによって得ることが可能なゴム加硫物も含まれる。それらの加硫物は、特にタイヤにおいて使用した場合には、優れた性能プロフィールおよび予想も出来なかったような低い転がり抵抗性という利点を有している。
【0077】
本発明のゴム加硫物は、改良された性質を有する成形品の製造、たとえばケーブルシース、ホース、伝動ベルト、コンベア用ベルト、ロールカバー、タイヤ、靴底、ガスケットリング、および制動要素などの製造に好適である。
【0078】
本発明のゴム加硫物はさらに、フォームを製造するためにも使用できる。この目的のためには、化学的発泡剤または物理的発泡剤をそれに添加する。有用な化学的発泡剤としては、この目的のために公知であるすべての物質が含まれるが、たとえば以下のものが挙げられる:アゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、p−トルエン−スルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラゾール、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン、炭酸亜鉛、または炭酸水素ナトリウム、およびそれらの物質を含む混合物。好適な物理的発泡剤の例は、二酸化炭素またはハロ炭化水素である。
【0079】
本発明はさらに、ゴム混合物およびそれらの加硫物を製造するための本発明の式(I)のポリスルフィドの使用も提供する。ゴム混合物のそれぞれが、少なくともゴム、充填剤および、本発明の式(I)のポリスルフィドを含んでいるのが好ましく、少なくともゴム、硫黄含有アルコキシシラン、シリカベースの充填剤、および本発明の式(I)のポリスルフィドを含んでいることがより好ましい。
【0080】
驚くべきことには、少なくとも1種の硫黄含有アルコキシシラン、特にビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンチオール、ポリエーテル官能化メルカプトシランまたはチオエステル官能化アルコキシシランと、本発明の式(I)のポリスルフィドとを含む混合物は、反応性の基にも関わらず、その成分と十分な混和性を有していて、そのため、ゴム混合物の中に均質に導入し、所望の比になるように正確に配合することが可能となる、ということが見いだされた。
【0081】
したがって、本発明には、添加剤として使用することが可能な混合物、ならびに、それらの混合物を製造するための、硫黄含有アルコキシシラン、特にビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンチオール、ポリエーテル官能化メルカプトシランまたはチオエステル官能化アルコキシシランおよび本発明の式(I)のポリスルフィドの使用、もまた包含される。アルコキシシラン、特にビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンおよび/またはビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファンの、本発明の式(I)のポリスルフィドに対する重量比は、好ましくは(1.5:1)から(20:1)まで、より好ましくは(3:1)から(15:1)まで、最も好ましくは(5:1)から(10:1)までである。
【0082】
ゴム混合物または加硫物の性質の測定:
ムーニー粘度の測定:
粘度は、ゴム(およびゴム混合物)が、加工に抵抗する力から直接求めることができる。ムーニー剪断ディスク型粘度計においては、その上下をサンプル物質で囲まれた溝付きのディスクを、加熱可能なチャンバーの中で、約2回転/分の速度で回転させる。そのために必要とされる力を、トルクとして測定するが、これがそれぞれの粘度に相当する。そのサンプルは、一般的には、100℃で1分間予熱し、測定にさらに4分間かけるが、その間温度は一定に保つ。粘度は、具体的な試験条件と共に報告する:たとえば、ML(1+4)100℃(ムーニー粘度、大ローター、予備加熱時間および試験時間(分)、試験温度)。
【0083】
スコーチ特性(スコーチ時間t5):
さらに、上で記したのと同じ試験を使用して、混合物のスコーチ特性を測定することもできる。選択した温度は130℃であった。トルク値が、最小値を通り過ぎた後で、最小値に比較して5ムーニー単位だけ上がるまで(t5)、ローターを回転させ続ける。その数値(単位:秒)が高いほど、スコーチの発生が遅い。実務的には、300秒を超えるスコーチ時間が通常有利である。
【0084】
レオメーター(バルカメーター)加硫時間、170℃/t95:
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)加硫プロファイルおよびそれに伴う分析データは、ASTM D5289−95に従い、Monsanto MDR 2000レオメーター上で測定する。加硫時間は、ゴムの95%が架橋したところの時間で求める。選択した温度は170℃であった。
【0085】
硬度の測定:
本発明のゴム混合物の硬度を測定するために、表1の配合に従ったゴム混合物から、厚み6mmのミルドシートを作成した。そのミルドシートから直径35mmの試験片を切り出し、それらについて、デジタルショアー硬度試験器(Zwick GmbH & Co.KG.Ulm)の手段によりショアーA硬度値を測定した。ゴム加硫物の硬度が、その剛性の第一の指標を与える。
【0086】
引張試験:
引張試験は、エラストマーの荷重限界を直接求めるのに役立ち、DIN 53504に従って実施する。破断の際の長さにおける増加は、開始時の長さを基準とし、破断時伸びに相当する。さらに、特定の伸びの段階、通常は50%、100%、200%、および300%でかかる力も測定して、歪み値として表す(所定の300%の伸びでの引張強さ、すなわち300弾性率)。
【0087】
動的減衰:
動的試験方法を使用して、周期的に負荷を変化させる条件下で、エラストマーの変形特性の特性解析をする。外側から加わる応力によって、ポリマー鎖のコンフォメーションに変化が起きる。損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’との比から、損失係数tanδが間接的に求められる。60℃での損失係数tanδが、転がり抵抗性に比例するので、最小とするべきである。
【0088】
摩耗:
摩耗が、摩滅、したがって製品の耐用寿命の目安になる。摩耗は、DIN 53516に従って測定した。経済的および環境保護の理由から、その目的は低い値である。
【実施例】
【0089】
実施例1
【化4】
装置:温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)および配管付き還流冷却器、スターラー、ガス導入管を備えた、2000mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:118.0g=0.75molのメルカプト安息香酸(Merck製、98%以上)、900mLのトルエン(p.A.、Merck製、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:51.15g=0.375molの二塩化二硫黄(99%以上、Merck製)
【0090】
窒素でパージした装置に、最初に、乾燥トルエンおよびメルカプト安息香酸を仕込む。次いで窒素気流下にあるその懸濁液に、二塩化二硫黄を、温度0〜5℃、約1時間以内で、滴下により添加する。計量添加速度は、温度が5℃を超えないように調節するべきである。その反応が終了した後、その混合物の撹拌を、窒素気流下、室温で一夜続ける。次いで、その反応溶液を、D4フリットを通して吸引濾過し、約200mLの乾燥トルエンを用いて2回洗浄する。その反応生成物を、真空乾燥キャビネット中で室温(約25℃)で乾燥させる。
【0091】
収量:144.6g(104.1%)の次の理想式のポリスルフィド混合物
【化5】
元素分析:
C:45.0%、H:3.0%、O:16.7%、S:33.6%、Cl:1.4%
【0092】
Buechi Melting Point B−545融点測定装置を使用して、融点範囲および融点範囲の終端を肉眼で測定した。温度290℃から開始し、加熱速度は1℃/分であった。
融点範囲:296〜299℃、融点範囲(終端):299℃
【0093】
X線回折の分析を行った。
回折計:PANalytical X’Pert PRO
ジオメトリー:透過
一次モノクロメーター:焦点法X線ミラー
検出器:PixCEL 2D
線源:Cu K−アルファ
管電圧:40kV
管電流:40mA
測定範囲:2〜80゜(2θ)
ステップ幅(2θ):0.013゜
ステップ時間:100秒
評価ソフトウェア:PANalytical HighScorePlus v.3
このX線回折図(Cu K−アルファ線)は次の三つの最大ピークを示している:
回折角2θ(゜):26.6、相対強度:100%
回折角2θ(゜):14.6、相対強度:75%
回折角2θ(゜):21.1、相対強度:54%
このX線回折図(Cu K−アルファ線)では、回折角2θ(゜)=27.2にはピークは存在しない。
【0094】
回折角2θ(゜)=26.6のメインピークから、この反応生成物がアルファ結晶多形であることは明らかである。
【0095】
この反応生成物は、極めて強い臭気を有している。
【0096】
10gのポリスルフィド混合物と100mLの水との混合物は、還流状態で30分間加熱してから25℃にまで冷却した後では、1.2のpHおよび14mS/cmの導電率を示した。
【0097】
実施例2
【化6】
装置:温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)および配管付き還流冷却器、スターラー、ガス導入管を備えた、2000mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:118.0g=0.75molのメルカプト安息香酸(Merck製、98%以上)、900mLのトルエン(p.A.、Merck製、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:51.15g=0.375molの二塩化二硫黄(99%以上、Merck製)
【0098】
窒素でパージした装置に、最初に、乾燥トルエンおよびメルカプト安息香酸を仕込む。次いで窒素気流下にあるその懸濁液に、二塩化二硫黄を、温度20〜25℃、約30分間以内で、滴下により添加する。計量添加速度は、温度が25℃を超えないように調節するべきである。その反応が終了した後、その混合物の撹拌を、窒素気流下、20〜25℃で1時間続ける。次いで、20mLの脱イオン水および180mLのトルエンを添加し、その混合物を、窒素気流下で2時間、還流状態で加熱する。次いで、窒素気流下、標準圧力下で約200mLを蒸留除去する。
【0099】
その混合物を室温にまで冷却する。次いで、その反応溶液を、D4フリットを通して吸引濾過し、約200mLの乾燥トルエンを用いて2回洗浄する。その反応生成物を、真空乾燥キャビネット中で室温(約25℃)で乾燥させる。
【0100】
収量:139.5g(100.4%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化7】
元素分析:
C:45.2%、H:2.7%、O:18.1%、S:33.6%、Cl:0.05%
【0101】
Buechi Melting Point B−545融点測定装置を使用して、融点範囲および融点範囲の終端を肉眼で測定した。温度290℃から開始し、加熱速度は1℃/分であった。
融点範囲:302〜305℃、融点範囲(終端):305℃
【0102】
そのX線回折図(Cu K−アルファ線)は次の三つの最大ピークを示している:
回折角2θ(゜):27.2、相対強度:100%
回折角2θ(゜):21.0、相対強度:30%
回折角2θ(゜):13.5、相対強度:24%
回折角2θ(゜)=27.2のメインピークから、その反応生成物がベータ結晶多形であることは明らかである。
【0103】
RP−HPLCおよび飛行時間型質量分析法(TOF MS)により、その反応生成物を分析した。
【0104】
UV検出器を用いたHPLC測定での面積パーセントから、K
1+およびK
2+がH
+である式(I)の化合物についてのパーセントを直接求めた。
n=2の化合物:1%未満、n=3の化合物:1%、n=4の化合物:97%、n=5の化合物:1%、n=6の化合物:1%未満。
HPLC装置:Agilent 1100シリーズ(脱気装置、二連(binary)ポンプ、カラムオーブン、波長可変検出器、およびオートサンプラー付き)
固定相:Inertsil ODS−3、粒子径:3μm
カラム長さ:150mm
カラム内径:2.1mm
移動層相:A:100%水+25mmol酢酸アンモニウム
B:(95%メタノール:5%水)+25mmol酢酸アンモニウム
【0105】
【表1】
【0106】
カラム温度:40℃
流速:0.3mL/分
測定時間:72分
注入量:5μL
UV検出器の波長:225nm
【0107】
分析する反応生成物のサンプル50mgを50mLのメスフラスコに秤り込み、約10mLのテトラヒドロフランを加えて溶解させ、標線までテトラヒドロフランを加えて混合物を作成した。
【0108】
この反応生成物は、固有の臭気をわずかしか有していない。
【0109】
10gのポリスルフィド混合物と100mLの水との混合物は、還流状態で30分間加熱してから25℃にまで冷却した後では、3.4のpHおよび0.2mS/cmの導電率を示した。
【0110】
実施例3
【化8】
装置:温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)および配管付き還流冷却器、スターラー、ガス導入管を備えた、2000mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:236.0g=1.5molのメルカプト安息香酸(Merck製、98%以上)、1000mLのトルエン(p.A.、Merck製、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:102.3g=0.75molの二塩化二硫黄(99%以上、Merck製)
【0111】
窒素でパージした装置に、最初に、乾燥トルエンおよびメルカプト安息香酸を仕込む。次いで窒素気流下にあるその懸濁液に、二塩化二硫黄を、温度20〜25℃、約30分間以内で、滴下により添加する。計量添加速度は、温度が25℃を超えないように調節するべきである。その反応が終了した後、その混合物の撹拌を、窒素気流下、20〜25℃で1時間続ける。次いで、100mLの脱イオン水を添加し、その混合物を、窒素気流下で4時間、還流状態で加熱する。
【0112】
その混合物を室温にまで冷却する。次いで、その反応溶液を、D4フリットを通して吸引濾過し、約300mLのトルエンを用いて2回洗浄する。その反応生成物を、真空乾燥キャビネット中約50℃で乾燥させる。
【0113】
収量:279g(100.4%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化9】
元素分析:
C:45.3%、H:2.9%、O:17.4%、S:34.5%、Cl:0.02%
【0114】
Buechi Melting Point B−545融点測定装置を使用して、融点範囲および融点範囲の終端を肉眼で測定した。温度290℃から開始し、加熱速度は1℃/分であった。
融点範囲:302〜305℃、融点範囲(終端):305℃
【0115】
そのX線回折図(Cu K−アルファ線)は次の三つの最大ピークを示している:
回折角2θ(゜):27.2、相対強度:100%
回折角2θ(゜):21.0、相対強度:22%
回折角2θ(゜):13.5、相対強度:21%
回折角2θ(゜)=27.2のメインピークから、その反応生成物がベータ結晶多形であることは明らかである。
【0116】
RP−HPLCおよび飛行時間型質量分析法(TOF MS)により、その反応生成物を分析した。
【0117】
UV検出器を用いたHPLC測定での面積パーセントから、K
1+およびK
2+がH
+である式(I)の化合物についてのパーセントを直接求めた。
n=2の化合物:1%未満、n=3の化合物:1%未満、n=4の化合物:97%、n=5の化合物:1%、n=6の化合物:1%未満。
【0118】
この反応生成物は、固有の臭気をわずかしか有していない。
【0119】
10gのポリスルフィド混合物と100mLの水との混合物は、還流状態で30分間加熱してから25℃にまで冷却した後では、3.5のpHおよび0.1mS/cmの導電率を示した。
【0120】
実施例4
【化10】
装置:温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)および配管付き還流冷却器、スターラー、pH電極を備えた、2000mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:74.1gの実施例1のポリスルフィド混合物、700mLの水
フィード:35.9g=0.2molのZnSO
4・H
2O(Aldrich製、100%)、300mLの水に溶解
フィード:160.0g=0.4molのNaOH溶液(10%)
【0121】
窒素でパージした装置にまず、水および実施例1からのポリスルフィド混合物を仕込み、95〜100℃にまで加熱する。次いで窒素気流下にあるその混合物に、ZnSO
4溶液を、温度95〜100℃、約1時間以内で、滴下により添加する。その混合物をさらに1時間撹拌する。それに続けて、NaOH溶液を、95〜100℃で1時間以内で計量添加する。その混合物を約100℃でさらに1時間撹拌する。冷却してから、D4フリットを通してその反応生成物を吸引濾過し、水を500mLずつ用いて、洗浄水の導電率が0.3mS/cm未満になるまで洗浄する。その反応生成物を、真空乾燥キャビネット中50℃で乾燥させる。
【0122】
収量:79.3g(91.4%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化11】
元素分析:
C:37.8%、H:2.1%、O:16.0%、S:29.7%、Zn:16%、Cl:110ppm
【0123】
その反応生成物は、固有の臭気をわずかしか有していない。
【0124】
10gのポリスルフィド混合物と100mLの水との混合物は、還流状態で30分間加熱してから25℃にまで冷却した後では、5.9のpHおよび0.6mS/cmの導電率を示した。
【0125】
実施例5
【化12】
装置:温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)および配管付き還流冷却器、スターラー、pH電極を備えた、2000mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:74.1gの実施例1のポリスルフィド混合物、700mLの水
フィード:35.9g=0.2molのZnSO
4・H
2O(Aldrich製、100%)、300mLの水に溶解
フィード:160.0g=0.4molのNaOH溶液(10%)
【0126】
窒素でパージした装置にまず、20〜25℃で、水および実施例1からのポリスルフィド混合物を仕込む。次いで窒素気流下にあるその混合物に、ZnSO
4溶液を、温度20〜25℃、約1時間以内で、滴下により添加する。その混合物をさらに1時間撹拌する。それに続けて、NaOH溶液を、20〜25℃で1時間以内で計量添加する。次いでその混合物を、穏やかに還流する条件にまで加熱して、約100℃でさらに1時間撹拌する。冷却してから、D4フリットを通してその反応生成物を吸引濾過し、水を500mLずつ用いて、洗浄水の導電率が0.3mS/cm未満になるまで洗浄する。その反応生成物を、真空乾燥キャビネット中50℃で乾燥させる。
【0127】
収量:79.0g(91.0%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化13】
元素分析:
C:38.5%、H:2.2%、O:16.0%、S:29.7%、Zn:14%、Cl:80ppm
【0128】
この反応生成物は、固有の臭気をわずかしか有していない。
【0129】
10gのポリスルフィド混合物と100mLの水との混合物は、還流状態で30分間加熱してから25℃にまで冷却した後では、6.0のpHおよび0.4mS/cmの導電率を示した。
【0130】
ゴム混合物およびゴム加硫物の製造
表1に記載のゴム配合を、下記の多段プロセスによってそれぞれ混合した。
【0131】
第一混合ステージ:
・ 最初にBUNA(登録商標)CB 24およびBUNA(登録商標)VSL 5025−2を、インターナルミキサーに仕込み、約30秒間混合した。
・ VULKASIL(登録商標)Sの2/3、SI(登録商標)69の2/3、本発明の式(I)のポリスルフィドの全量の2/3を添加し、約60秒間混合。
・ VULKASIL(登録商標)Sの1/3、SI(登録商標)69の1/3、本発明の式(I)のポリスルフィドの全量の1/3、およびTUDALEN 1849−1を添加し、約60秒間混合。
・ CORAX(登録商標)N 339、EDENOR(登録商標)C 18 98−100、VULKANOX(登録商標)4020/LG、VULKANOX(登録商標)HS/LG、ZINKWEISS ROTSIEGEL、およびANTILUX(登録商標)654を添加し、約60秒間混合。混合は、温度150℃で実施した。
【0132】
第二混合ステージ:
第一混合ステージが完了したら、その混合物を下流のローラー系に引き取り、成形してシートとし、室温で24時間保存した。ここでの加工温度は、60℃未満であった。
【0133】
第三混合ステージ:
第三の混合ステージは、ニーダー中150℃での、さらなる混練である。
【0134】
第四混合ステージ:
添加剤のMAHLSCHWEFEL 90/95CHANCEL、VULKACIT(登録商標)CZ/C、VULKACIT(登録商標)D/Cをローラー上、80℃未満の温度で添加。
【0135】
次いでそのゴム混合物を、170℃で完全に加硫させた。製造されたゴム調製物、およびそれからの加硫物の性質を表2に示す。
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
試験した、本発明のゴム混合物を含む加硫物2、3および5は、参照例に比較して、高い硬度値および300弾性率値、改良された転がり抵抗性、およびより低いムーニー粘度を示している。比較的に高い塩素含量および比較的に高い残存酸度を有する式(I)の化合物を含むゴム混合物1に比較して、本発明のゴム混合物2、3および5は、摩耗および転がり抵抗性の面では明らかに改良を示しながらも、ムーニー粘度は維持または低下している。