(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276283
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】磁気通貨検証ヘッド
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20180129BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20180129BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20180129BHJP
G07D 7/04 20160101ALI20180129BHJP
G07D 7/00 20160101ALI20180129BHJP
【FI】
G01R33/09
H01L43/08 Z
G01N27/72
G07D7/04
G07D7/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-538279(P2015-538279)
(86)(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公表番号】特表2015-535339(P2015-535339A)
(43)【公表日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】CN2013086245
(87)【国際公開番号】WO2014067462
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】201210424954.6
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲーザ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ミンフォン
(72)【発明者】
【氏名】バイ、チエンミン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ミン
【審査官】
永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102722932(CN,A)
【文献】
特開平10−221114(JP,A)
【文献】
特開平4−13925(JP,A)
【文献】
特開平8−189932(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102010035469(DE,A1)
【文献】
特開2006−010591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
G07D 7/00
G07D 7/04
G01N 27/72
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗センサチップと、磁気通貨検証ヘッド検出面から離れる前記磁気抵抗センサチップの側に配置される別個の磁気バイアスユニットとを備える磁気通貨検証ヘッドであって、前記磁気抵抗センサチップがブリッジ回路を備え、ブリッジアームが磁気センサ素子であり、前記磁気センサ素子の感知方向が磁気通貨検証ヘッド検出面と平行であり、前記磁気バイアスユニットが凹状構造を有し、前記凹状構造は、磁気通貨検証ヘッド検出面と平行な方向で前記磁気バイアスユニットにより発生されるバイアス磁界が小さくなるように配置され、それにより、前記磁気センサ素子がそれらの線形範囲内で動作でき、
前記磁気バイアスユニットが矩形永久磁石と高透磁率磁性材料から構成される矩形リング形状磁極片とを備えることを特徴とする磁気通貨検証ヘッド。
【請求項2】
磁気抵抗センサチップと、磁気通貨検証ヘッド検出面から離れる前記磁気抵抗センサチップの側に配置される別個の磁気バイアスユニットとを備える磁気通貨検証ヘッドであって、前記磁気抵抗センサチップがブリッジ回路を備え、ブリッジアームが磁気センサ素子であり、前記磁気センサ素子の感知方向が磁気通貨検証ヘッド検出面と平行であり、前記磁気バイアスユニットが凹状構造を有し、前記凹状構造は、磁気通貨検証ヘッド検出面と平行な方向で前記磁気バイアスユニットにより発生されるバイアス磁界が小さくなるように配置され、それにより、前記磁気センサ素子がそれらの線形範囲内で動作でき、
前記磁気バイアスユニットが矩形永久磁石と高透磁率磁性材料から構成される磁極片とを備え、前記磁極片の表面が凹状矩形キャビティを有することを特徴とする磁気通貨検証ヘッド。
【請求項3】
磁気抵抗センサチップと、磁気通貨検証ヘッド検出面から離れる前記磁気抵抗センサチップの側に配置される別個の磁気バイアスユニットとを備える磁気通貨検証ヘッドであって、前記磁気抵抗センサチップがブリッジ回路を備え、ブリッジアームが磁気センサ素子であり、前記磁気センサ素子の感知方向が磁気通貨検証ヘッド検出面と平行であり、前記磁気バイアスユニットが凹状構造を有し、前記凹状構造は、磁気通貨検証ヘッド検出面と平行な方向で前記磁気バイアスユニットにより発生されるバイアス磁界が小さくなるように配置され、それにより、前記磁気センサ素子がそれらの線形範囲内で動作でき、
前記磁気バイアスユニットが2つの別個に配置される矩形永久磁石を備え、非磁性材料または軟強磁性材料が前記矩形永久磁石間に配置されることを特徴とする磁気通貨検証ヘッド。
【請求項4】
前記磁気センサ素子の検出方向と平行な方向で前記磁気バイアスユニットにより発生される磁界が25ガウス未満であることを更に特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気通貨検証ヘッド。
【請求項5】
前記磁気センサ素子は、磁気トンネル接合TMR素子、巨大磁気抵抗GMR素子、または、異方性磁気抵抗AMR素子であることを更に特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気通貨検証ヘッド。
【請求項6】
前記磁気トンネル接合TMR素子、巨大磁気抵抗GMR素子、または、異方性磁気抵抗AMR素子は、直列に、並列に、あるいは、直列と並列との組み合わせで接続されることを更に特徴とする請求項5に記載の磁気通貨検証ヘッド。
【請求項7】
前記磁気抵抗センサチップおよび前記磁気バイアスユニットを収容するための金属ケーシングを更に備え、前記金属ケーシングは、前記磁気通貨検証ヘッド検出面と反対の側に開口を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気通貨検証ヘッド。
【請求項8】
前記磁気抵抗センサチップおよび前記磁気バイアスユニットを収容するための金属ケーシングを更に備え、前記金属ケーシングには接地端子が設けられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気通貨検証ヘッド。
【請求項9】
前記金属ケーシングは、構成部品を固定するために射出成形材料で満たされることを更に特徴とする請求項7および請求項8に記載の磁気通貨検証ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗センサ技術に関し、特に、磁気通貨検証ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
通貨検証ヘッドは、自動販売機、銀行券計数、および、偽造検出などの用途では日常生活で一般に使用される。一般に、銀行券は、非常に弱い磁気信号をもたらす磁気インクおよび他の磁気セキュリティ機能部とを使用する。したがって、通貨検証ヘッドで使用されるセンサは、高い感度、低いノイズ、および、高い信号対雑音比を有する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は、紙幣上の磁気インクによってもたらされる磁界の垂直成分を検出する既存の通貨検証ヘッド技術を示す。一般に、使用される材料はアンチモン化インジウム(InSb)である。このタイプのセンサは以下の不都合を有する。
【0004】
(1)低い感度および低い信号対雑音比。
【0005】
(2)InSbホール効果センサは温度に大きく依存し、それにより、補償するための複雑な回路を必要とする。
【0006】
(3)磁気バイアスデバイスは、ホール効果センサの信号対雑音限界を克服するべく、センサに固有のノイズよりも大きい大きさを有する信号を発生させるのに十分な磁界を生み出すように選択されなければならない。したがって、ホール効果センサを使用するときには、磁気通貨検証ヘッドが大きくなる傾向がある。
【0007】
(4)平坦な前面上に1つの磁極を有するモノリシック磁気バイアスデバイスによってもたらされる磁界は、紙幣によりもたらされる磁界の検出を困難にする面内成分を有する。
【0008】
したがって、紙幣によってもたらされるこの磁界を正確に測定するための通貨検証ヘッドを開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するために、本発明は、媒体によってもたらされる磁界の面内成分を検出する磁気抵抗センサを使用できる磁気通貨検証ヘッドを提供しようとする。これらのセンサは、磁気トンネル接合センサであることが好ましいが、巨大磁気抵抗センサまたは異方性磁気抵抗センサを含んでもよい。
【0010】
本発明の1つの態様によれば、磁気通貨検証ヘッドは、
磁気抵抗センサチップを備え、前記磁気抵抗センサチップがブリッジ回路を含み、ブリッジアームが磁気センサ素子であり、磁気センサ素子の感知方向が磁気通貨検証ヘッド検出面と平行であり、および、
磁気抵抗センサチップは、磁気通貨検証ヘッド検出面から離れて位置されるとともに、磁気バイアスユニットとは別個に配置され、前記磁気バイアスユニットが凹状構造を有し、凹状構造は、磁気通貨検証ヘッド検出面と平行な方向で磁気バイアスユニットにより発生されるバイアス磁界が小さくなるように配置され、それにより、磁気センサ素子がそれらの線形範囲内で動作できる。
【0011】
好ましくは、磁気バイアスユニットが永久磁石を更に備え、磁気抵抗センサチップに面する永久磁石の側が凹部を有する。
【0012】
好ましくは、磁気バイアスユニットが矩形永久磁石であり、前記矩形永久磁石は、磁気抵抗センサチップに面する側に、磁気通貨検証ヘッド検出面に対して垂直にカットされる凹状溝または窪みを含む。
【0013】
好ましくは、磁気バイアスユニットが矩形永久磁石と高透磁率磁性材料から構成される磁極片とを備え、磁極片の表面が凹状矩形キャビティを有する。
【0014】
好ましくは、磁気バイアスユニットが矩形永久磁石と高透磁率磁性材料から構成される矩形リング形状磁極片とを備える。
【0015】
好ましくは、磁気バイアスユニットが2つの別個に配置される矩形永久磁石を備える。
【0016】
また、非磁性材料または軟強磁性材料が2つの矩形永久磁石間に配置される。
【0017】
好ましくは、磁気センサ素子の検出方向と平行な方向で磁気バイアスユニットにより発生される磁界が25ガウス未満である。
【0018】
好ましくは、磁気センサ素子は、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、巨大磁気抵抗(GMR)素子、または、異方性磁気抵抗(AMR)素子である。
【0019】
好ましくは、前記TMR、GMR、または、AMR磁気センサ素子は、直列に、並列に、あるいは、直列と並列との組み合わせで接続される。
【0020】
好ましくは、磁気通貨検証ヘッドは、磁気抵抗センサチップおよび磁気バイアスユニットを収容するための金属ケーシングを更に備え、前記金属ケーシングは、磁気通貨検証ヘッド検出面と反対の側に開口を有する。
【0021】
好ましくは、磁気通貨検証ヘッドは、磁気抵抗センサチップおよび磁気バイアスユニットを収容するための金属ケーシングを更に備え、前記金属ケーシングには接地端子が設けられる。
【0022】
好ましくは、金属ケーシングは、構成部品を固定するために射出成形材料で満たされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0024】
(1)本発明の磁気通貨検証ヘッドは、硬質または軟質の強磁性材料を含む通貨の検出に適する。
【0025】
(2)本発明の磁気通貨検証ヘッドは、磁気抵抗センサとしてTMR、GMR、または、AMR素子を含むとともに、InSbホール素子と比べて高い感度および高い信号対雑音比を有し、それにより、より高い感度とより高い信号対雑音比とを有する磁気通貨検証ヘッドがもたらされる。
【0026】
(3)磁気抵抗素子製造プロセスは比較的簡単であり、また、材料は、温度および応力の影響に対する感受性が殆どなく、高い歩留まりをもって製造することができ、それにより、磁気通貨検証ヘッド製造プロセスは比較的簡単で低コストである。
【0027】
(4)陥凹部を有する磁気バイアスユニットの使用は、磁気抵抗センサ素子の検出方向と平行な方向で小さい或いはゼロである磁界成分をもたらし、それにより、磁気センサがその線形範囲内で動作でき、磁気通貨検証ヘッドの最適な動作が保証される。
【0028】
(5)磁気通貨検証ヘッドセンサチップがグラジオメーターセンサブリッジ回路を組み込むため、磁気通貨検証ヘッドはコモンモード磁界または外部磁気干渉に影響されにくい。
【0029】
(7)結果として得られる磁気通貨検証ヘッドは、偽造検出のため或いはレジ型装置においても使用され得る。
【0030】
(8)開示された磁気通貨検証ヘッドは、PCBを出力ピンに接続するためにフレキシブルプリント回路基板を使用し、前記フレキシブル回路基板は、永久磁石の形状を制限せず、したがって、永久磁石の設計に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来技術例1に記載される磁気通貨検証ヘッドの従来技術型の実施を示す。
【
図2(A)】
図1に示される矩形永久磁石における磁界分布の図を示す。
【
図2(B)】
図1に示される磁気通貨検証ヘッドの検出面における磁界成分を示す。
【
図3(A)】従来技術例2に記載される矩形永久磁石における磁界分布の図を示す。
【
図3(B)】従来技術例2に記載される磁気通貨検証ヘッドの検出面における磁界成分を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る磁気通貨検証ヘッドの概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態で使用されるセンサシップの平面図を示す。
【
図6(A)】本発明の好ましい実施形態における磁界分布を示す。
【
図6(B)】本発明の好ましい実施形態における磁気通貨検証ヘッドの検出面での磁界成分を示す。
【
図7(A)】本発明の好ましい実施形態2の磁気バイアスユニットの周囲の磁界分布を示す。
【
図7(B)】本発明の好ましい実施形態2における磁気通貨検証ヘッドの検出面での磁界成分を示す。
【
図7(C)】好ましい実施形態2で使用される磁極片の斜視図を示す。
【
図8(A)】本発明の好ましい実施形態3の磁気バイアスユニットの周囲の磁界分布を示す。
【
図8(B)】本発明の好ましい実施形態3における磁気通貨検証ヘッドの検出面での磁界成分を示す。
【
図8(C)】好ましい実施形態3で使用される磁極片の斜視図を示す。
【
図9(A)】本発明の好ましい実施形態4の磁気バイアスユニットの周囲の磁界分布を示す。
【
図9(B)】本発明の好ましい実施形態4における磁気通貨検証ヘッドの検出面での磁界成分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付図面と関連して以下に記載される実施形態は、本発明の詳細な実施を与える。特定の実施形態において、同様の参照数字は、同様の特徴または要素を特定する。
【0033】
従来技術例1:
図1は、磁気通貨検証ヘッドの第1の例の図面を示す。磁気通貨検証ヘッドは、センサチップ11と、プリント回路基板(PCB)12と、入力/出力ピン13と、金属ケース14と、永久磁石15と、射出成形体とを金属シェル本体(図示せず)の内側に含む。金属ケーシング14は、組み立てのために使用される検査面とは反対側の開口と、入力/出力接続ピンとを有する。磁気抵抗センサチップ11は、検出面を備える金属ケース14の部分の近傍に位置され、検出面に対して垂直な磁化率は小さい。センサチップ11および永久磁石15はPCB12の両側にそれぞれ位置される。永久磁石15の磁化方向は
図1の右側に示される。PCB12は永久磁石15と直接に接触している必要がない。センサチップ11の入力および出力はそれぞれPCB12上の対応する端子と接続され、PCB12はセンサチップ11を支持できる。入力・出力ピン13は、入力・出力ピン13を磁気抵抗センサチップ11の対応する入力接続部および出力接続部に接続するようにPCB12に電気的に接続される。入力・出力ピン13の他端は、磁気通貨検証ヘッドのインタフェースとしての機能を果たす。InSbホール素子センサチップ11を使用すると、感知方向は、磁気通貨検証ヘッドの検出面17に対して垂直である。金属ケーシング14は接地ピン16を有する。接地ピン16および金属ケーシング14は、金属ケース14の外側からの電磁妨害を遮蔽するために使用されるとともに、静電放電を防ぐ。永久磁石15の形状は矩形であってもよい。射出成形体は、それがPCB12と共に金属ケーシング14内に嵌合できるようにするとともに永久磁石15の形状およびサイズと適合してそれらを金属ケーシング14内に固定できるサイズおよび形状を有し、また、射出成形体は、永久磁石15とPCB12との間の電気的な絶縁を行なう。
【0034】
例1に示される磁気通貨検証ヘッドがInSbホール効果センサチップを使用すると、磁気通貨検証ヘッドは、感度が低くなり、SNRが悪化する。InSbホール素子のための製造プロセスは複雑であり、また、InSbホール素子は温度および応力の影響に晒されるため、製造プロセスの歩留まりは低く、それにより、非常に複雑で高価な磁気通貨検証ヘッドがもたらされる。更なる面倒な事態は、出力ピンがPCBに対して直接に接続されるからであり、また、出力リードピンが永久磁石を直接に通り抜けることができず、出力ピンの位置が永久磁石のサイズを制限し、設計上の困難が増大する。更に、磁気通貨検証ヘッドの比較例1で使用される永久磁石は矩形であるため、TMRセンサチップを使用すると、矩形永久磁石がMTJ素子の感知方向に沿って大きな磁界成分をもたらし、それにより、MTJ素子がその線形応答領域から逸脱し、また、矩形永久磁石がMTJ素子を飽和状態へともたらす場合さえあり、したがって、磁気通貨検証ヘッドの性能に影響を及ぼすとともに、場合により、機能し得ない磁気通貨検証ヘッドをもたらすことさえある。
【0035】
従来技術の通貨検証ヘッドにおけるタイプの矩形磁石により生み出される磁界の分布が
図2(A)に詳しく示される。ここで、矩形断面を有する永久磁石15は、線AAによって示される検出面40に対して垂直な方向で磁化される。磁気センサ41は、BBとして示される線に沿って検出面40よりも下側に位置される。永久磁石15は、一定のB場23の等高線によって表わされる磁界をもたらす。
図2(B)は、検出面に対して接線28および法線27である線のB場23成分を示す。プロットの水平軸29は、線AAに沿う検出面に沿った距離を示す。ホールセンサを利用する従来の通貨検証ヘッドでは、法線成分27のみが信号をもたらし、したがって、B場の接線成分28は信号を誘発せず、そのため、大きな接線B場の存在は、通貨検証ヘッドの性能を低下させない。
【0036】
磁気センサセンシングが40の面と平行な方向で磁界を検出する場合、バイアス磁石構造は、磁界センサの近傍で永久磁石によって引き起こされる平行磁界成分を減少させることを目的として改良されなければならない。
【0037】
従来技術例2
これらの問題を解決するための効果的な方法は、検出素子に対してバイアス磁石サイズを増大させることである。
図3(A)および
図3(B)は、第2の例の従来技術構造の矩形永久磁石の磁界分布および磁界強度分布を示す。
図3(A)と
図2(A)との比較から、バイアス磁石35が隣接するセンサ素子41よりもかなり大きいことが分かる。
図3(A)に示されるように、永久磁石35は、線AAによって示される検出面40に対して垂直な方向で磁化21される。磁気センサチップ41は、BB41として示される線に沿って検出面40よりも下側に位置される。永久磁石35は、B場等高線23によって表わされる磁界をもたらす。
図3(B)は、検出面に対して接線28および法線27であるB場23を示す。プロットの水平軸29は、線AAに沿う検出面に沿った距離を示す。先の例と比べると、磁界28の平行成分が明らかに小さい。
【0038】
残念ながら、ケース2に伴う問題があり、すなわち、磁気通貨検証ヘッドのサイズが大きく、それにより、ヘッドをシステムに組み込む困難性が増大する。また、更に大きい永久磁石および磁気通貨ヘッドは製品コストを増大させる。
【0039】
本発明の実施形態
図4は、本発明に従う磁気通貨ヘッドの想定し得る実施形態の概略図を示す。この特定の実施形態は、検出面40の下側に設置される、磁気抵抗センサチップ41と、プリント回路基板42と、出力リードピン43と、金属シェル44と、溝形状磁気バイアスユニット45と、フレキシブルプリント回路基板(FPC)46と、第1の射出成形体47と、第2の射出成形体50とを含む。磁気バイアスユニットには該ユニットの側部に凹部が形成され、例えば、矩形永久磁石が一方側に矩形の溝または窪みを有する。金属ケーシング44は、非磁性耐摩耗材料から構成されるとともに、検出面40から離れたその側に開口を有する。磁気抵抗センサチップ41は、検出面40に近接して金属ハウジング44内に装着される。ハウジングの外側検出面40と磁気抵抗センサチップとの間の距離は0.2mm以下である。磁気抵抗センサチップ41および磁気バイアスユニット45はPCB42の両側に位置され、また、磁気バイアスユニット45の凹部はPCB42の方へ向く。
図4に示されるように、磁気バイアスユニット45の磁化方向は検出面40に対して垂直である。第2の射出成形体50は、PCB42を磁気バイアスユニット45から絶縁するために、PCB42と磁気バイアスユニット45との間に位置される。センサチップ41の入力端子および出力端子はそれぞれ、例えば、PCB42上の対応する端子と接続され、それにより、PCB42はセンサチップ41を強固に支持することができる。第1の射出成形体47は、陥凹部を有する磁気バイアスユニット45の側と反対側にある。入力および出力リードピン43は、第1の成形体47内に固定されて第1の成形体47を貫通する。FPC46の一端は、PCB42の対応する電気端子と接続され、また、FPC46の他端は入力および出力リードピン43と電気的に接続され、それにより、入力および出力リードピン43は、磁気抵抗センサチップ41とのインタフェースを形成する。入力/出力ピン43の他端は、磁気通貨検証ヘッドの端子としての機能を果たす。磁気抵抗センサチップ41は少なくとも1つのブリッジ回路を含み、ブリッジ回路は少なくとも1つのブリッジアームを備え、好ましくは、それぞれの脚は、トンネル磁気抵抗TMR素子、巨大磁気抵抗GMR素子、または、異方性磁気抵抗AMR素子などの少なくとも1つの素子を備えてもよい。好ましくは、前記TMR、GMR、AMR磁気センサ素子は、直列に、並列に、あるいは、直列と並列との組み合わせで接続される。本実施形態では、磁気抵抗センサチップ41がフルブリッジ形態を有し、その場合、各アームが少なくとも1つの磁気検出素子を備える。磁気通貨検証ヘッド49の磁性部品の感知方向は検出面と平行であり、また、磁気検出素子49の感知方向は、磁気バイアスユニット45の磁気凹部の方向に対して垂直である。好ましくは、金属ケーシング44は接地リードピン48上に設けられ、それにより、接地された金属筐体は、金属ハウジング44の外側からの電磁妨害を遮蔽するとともに、ESD問題を排除する。第2の成形体50は、PCB42と磁気バイアスユニット45との間で金属ケーシング44内に嵌め込まれ、それにより、PCB42と磁気バイアスユニット45とを金属ハウジング44の内側に強固に固定する。好ましくは、第1の射出成形体47と第2の射出成形体50とがスナップ嵌合できる。
【0040】
図5は、磁気通貨検証ヘッドの好ましい実施のためのフルブリッジ磁気抵抗センサチップの概略平面図を示す。図示のように、磁気抵抗センサチップ41は、磁気バイアスユニット45の凹状側よりも上側に位置される。この領域90では、永久磁石45によって生み出される磁界の成分が磁気抵抗センサチップ41と平行であり、永久磁石45は25ガウス未満を発生させ、この領域の磁気バイアスユニット45内で、検出面40における磁束密度は磁気センサ素子91を飽和させない。したがって、我々は、検出領域内において磁気素子がその線形領域内で動作するようにすることができる。磁気検出素子49の感知方向と平行な方向で、検出領域90のサイズ範囲はおおよそ1mm〜10mmである。
【0041】
磁気通貨検証ヘッドを使用すると、紙幣が検出面上にわたって移動し、結果として、磁気抵抗センサチップが紙幣の磁性特徴を検出し、それにより、出力ピンで信号が形成されて、紙幣の磁気識別が可能となる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態にしたがって実施される磁気通貨検証ヘッドは、硬質または軟質の磁性材料から構成される銀行券識別マークを識別するために使用されてもよい。磁気通貨検証ヘッドにおいては、磁気通貨ヘッド検出面と平行な方向で磁界を検出することが好ましく、したがって、TMR、GMR、または、AMR検出素子が好ましい。InSbホール素子と比べて、これらの磁気抵抗部品のより高い感度およびSNRは、より高い感度および信号対雑音比を有する磁気通貨検証ヘッドの実現を可能にする。これらの磁性部品は、温度および応力の影響に対する低い感受性をもって製造するのが比較的簡単であり、それにより、高い歩留まりがもたらされ、結果として、磁気抵抗磁気通貨検証ヘッド製造プロセスが比較的簡単で低コストである。磁気抵抗磁気通貨検証ヘッドは、PCBと出力ピンとを相互接続するためにFPCを使用するため、フレキシブル回路基板の形状が永久磁石の形状を制限せず、また、これは永久磁石の設計を簡略化する。磁気通貨検証ヘッドの永久磁石は陥凹構造を有するため、磁気抵抗の近傍でのそれらの検出方向に沿う永久磁石の磁界は非常に小さく或いはゼロに近く、それにより、磁気抵抗素子はそれらの線形領域内で動作し、その結果、磁気抵抗磁気通貨検証ヘッドが最適に動作できることが確保される。磁気抵抗磁気通貨検証ヘッドは、グラジオメーターブリッジ回路形態を成す磁性素子から構成される磁気抵抗センサチップを使用し、それにより、磁気通貨検証ヘッドの外側から発する電磁信号に起因する紙からのコモンモード磁界干渉が効果的に抑制される。磁気抵抗ヘッドは、紙幣検出器で使用され得るが、販売システムのポイントでも使用され得る。
【0043】
磁気バイアスユニット45を実施するための幾つかの手段がある。そのような手段は、前述したような凹構造を有する永久磁石、または、永久磁石+磁極片、または、幾つかの矩形永久磁石の組み合わせであってもよい。これらの磁気バイアスユニット構造は有利であり、それらは容易で低コストである。以下、磁気バイアスユニットの好ましい実施の幾つかの例について説明する。
【0044】
例1
図6(A)は、凹状矩形永久磁石に関する本発明の例1に係る磁界の分布を示す。
図6(A)の永久磁石55は、検出面40に最も近い表面に切り込まれるスロットを含み、該スロットは、永久磁石55の表面に対して垂直な方向でカットされる。永久磁石55の磁化51は、検出面40に対して垂直に設定される。検出面40の中心において、溝52の影響に起因する磁界53は、検出面40に対して垂直であり、したがって、TMR素子41などの磁気抵抗センサチップの近傍の水平磁界成分が排除される。
【0045】
図6(B)は、図中の検出面40に沿う磁界強度を示し、この場合、破線57は、検出面40における磁界強度の垂直成分であり、細い実線58は、磁界強度成分の検出面40と平行であり、垂直軸56は磁界強度であり、また、水平軸は、検出面40の中心からの距離である。図から分かるように、磁界強度55の平行成分は、スロットの真上の検出面40の部分で小さく、また、この方向での磁界の値は、
図2および
図3に示される従来技術構造よりもかなり小さい。
【0046】
言うまでもなく、窪みの使用によることを含むこのスロット付き特徴の目的を達成するための他の方法がある。
【0047】
例2
図7(A)は、例2の磁気通貨検証ヘッドにおける磁力線の分布を示す。
図7(A)は、検出面40と平行な磁界成分を調整するために使用される“磁極片”64とも称される軟強磁性合金シートから構成されるトップカバーを伴う矩形断面を有する永久磁石65を示す。磁極片64は、通常、パーマロイなどの軟強磁性合金から形成される。永久磁石65の磁化方向61は検出面40に対して垂直であり、また、検出面での磁界分布を決定する磁極片64の磁化方向は、永久磁石の磁化方向によって決定される。磁極片の凹状スロット62は、検出面40と平行な方向の磁界を減らす役目を果たす。
【0048】
図7(B)は、例2に記載される実施のための検出面40に沿う磁界成分を示し、この場合、破線67は、検出面40に対して垂直な磁界成分を示し、細い実線68は、検出面40と平行な磁界成分を示し、垂直軸66は磁束密度であり、また、水平軸は、検出面の中心からのオフセット距離40を表わす。図から分かるように、検出面40と平行な磁界強度は、磁極片64のスロットよりも上側の領域で小さく、また、磁界の平行成分の値は、
図2および
図3に示される従来技術ケースに例示される値よりもかなり小さい。
【0049】
図7(C)は、例2に記載される磁極片64の斜視図であり、この場合、溝構造62は、鋳造、スタンピング加工、切断、および、他の方法によって実現され得る。
【0050】
例3
図8(A)は、本発明の磁気バイアスユニットによってもたらされる磁界の分布の第3の例を示す。
図8(A)は、永久磁石によってもたらされる検出面40と平行な方向の磁界を調整するために使用される磁極片74とも称される軟強磁性合金シートによって覆われる矩形永久磁石75を示す。磁極片74は、通常、パーマロイなどの軟強磁性合金から形成される。永久磁石75の磁化方向71は検出面40に対して垂直であり、また、検出面での磁界分布を決定する磁極片74の磁化方向は、永久磁石75の磁化方向によって決定される。磁極片74の開口72は、検出面40と平行な磁界を減らす役目を果たす。
【0051】
図8(B)は、図中の検出面40に沿う磁界分布を示し、この場合、破線77は、検出面40上の磁界の垂直成分であり、細い実線78は、検出面40上の磁界の平行成分であり、垂直軸76は磁気誘導であり、また、水平軸は、検出面40の中心からの距離である。図から分かるように、検出面40と平行な磁界強度は、磁極片74の穴よりも上側の領域で小さく、また、磁界の平行成分の値は、
図2および
図3に示される従来技術ケースに例示される値よりもかなり小さい。
【0052】
図8(C)は、例3に記載される磁極片74の斜視図であり、この場合、穴72は、鋳造、スタンピング加工、切断、および、他の方法によって実現され得る。
【0053】
例4
図9(A)は、バイアスユニットによってもたらされる例4の磁気ヘッドにおける磁界分布の磁力線を示す。この構造では、2つの矩形永久磁石85間にスペーサ層84があり、また、スペーサ層84のための材料は、非磁性金属材料、プラスチック非磁性材料、非磁性セラミック材料、または、鉄などの軟強磁性材料であってもよい。永久磁石85の磁化方向は検出面40に対して垂直である。スペーサ層84よりも上側の領域では、検出面40と平行な磁界の成分がゼロである。
【0054】
図9(B)は、図中の検出面40に沿う磁界分布を示し、この場合、破線87は、検出面40上の磁界の垂直成分であり、細い実線88は、検出面40上の磁界の平行成分であり、垂直軸86は磁気誘導であり、また、水平軸は、検出面40の中心からの距離である。図から分かるように、検出面40と平行な磁界強度は、スペーサ層84よりも上側の領域で小さく、また、磁界の平行成分の値は、
図2および
図3に示される従来技術ケースに例示される値よりもかなり小さい。
【0055】
本発明の好ましい実施形態の実施は、先に挙げられた特定の例に範囲が制限されない。当業者において、本発明は、特定の例の様々な変更および変形によって達成されてもよい。本明細書中に記載される本発明の思想および原理の範囲内の任意の変更は、本発明の範囲内と見なされる。