(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗布工程S2)において、前記希土類元素は、プラセオジム、ネオジム、イットリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の永久磁石材料の製造方法。
【背景技術】
【0002】
世界中でエネルギー消費の低減が益々重視されていることに伴い、省エネ・排ガス削減は各国の最も注目する課題になっている。非永久磁石モータに比べて、永久磁石モータはエネルギー効率を向上することができる。したがって、エネルギー消費を低減するために、エアコンコンプレッサ、電気自動車、ハイブリッド自動車などの分野では、いずれもネオジム-鉄-ボロン(Nd-Fe-B)系永久磁石材料を採用したモータを制造している。それらのモータの動作温度が高いため、磁石は高い固有保磁力を有することが求められ、またモータの磁束密度を増加させるために、磁石が高い磁気エネルギー積を有することも求められている。
【0003】
従来のネオジム-鉄-ボロン製造プロセスでは、高磁気エネルギー積及び高固有保磁力の要求を満足することが困難である。このような要求を達成したとしても、大量の希土類のDyとTbを使用する必要がある。世界中のジスプロシウム(Dy)とテルビウム(Tb)の埋蔵量は限られているので、DyとTbを大量に使用すると磁石の価格が上がり、希土類資源の枯渇が加速されることにもなる。
【0004】
永久磁石材料の性能を向上させるとともに希土類の使用量を減少させるために、当該業界では様々な工夫が行われてきた。例えば、希土類が12〜17原子%、Bが3〜15原子%、金属元素が0.01〜11原子%、Oが 0.1〜4原子%、Cが 0.05〜3原子%、Nが0.01〜1原子%及び残りがFeからなる焼結磁石本体を提供すること、磁石本体の表面に別種の希土類の酸化物、フッ化物及び/又は酸フッ化物を含む粉末を配置すること、及び真空で或いは不活性雰囲気中で焼結温度以下の温度で当該粉末に被覆された磁石本体を熱処理することにより、別種の希土類を磁石本体に吸蔵させること、を含む希土類永久磁石を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。当該方法は、表面に配置された重希土類の酸化物或いはフッ化物及び/又は酸フッ化物を、加熱することによって浸透させるという目的を有することを特徴とする。当該方法は、OとF等の磁石にとって有害となる成分が導入されてしまうという欠点がある。さらに重要なのは、浸透済み磁石の表面に酸化皮膜のようなものが多く生じ、研磨加工する必要があり、磁性材料の浪費をもたらす。
【0005】
また、Nd-Fe-B系の焼結磁石の表面を悪化させず、Dyを結晶粒界相に効率的に拡散させることによって磁化及び保磁力を有效に向上させることができ、後工程が不要な永久磁石の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。まず、処理室でNd-Fe-B系の焼結磁石とDyを間隔をあけて配置する。そして、減圧下で処理室を加熱し、焼結磁石を所定温度に昇温させながら、Dyを蒸発させ、蒸発したDy原子を焼結磁石の表面に供給して付着させる。その時、焼結磁石に対するDy原子の供給量を制御することによって、焼結磁石の表面にDy層を形成する前にDyを焼結磁石の結晶粒界相に均一に拡散させる。当該方法は、重希土類を含有するものを加熱して蒸気を生成することを特徴とするが、設備の製作費用が非常に高く、蒸発の效率が低いという欠点があり、実際の比較結果から、当該方法は固有保磁力(Hcj)を増加させる効果が前述の方法のように顕著ではないことが示されている。
【0006】
また、ストリップキャストで重希土類化合物を結晶粒界相に拡散させ、焼結したネオジム-鉄-ボロン系永久磁石の性能を向上させる方法が開示されており、当該方法は、焼結する前に浸透処理を行う方法であって、浸透後の磁石が高温で焼結されている間に、本来結晶粒界相に富化された重希土類は主相の内部にまで拡散してしまい、重希土類が平均化されて、効果が悪くなる(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、希土類元素の浸透の均一性と浸透の效率を著しく向上させる永久磁石材料の製造方法を提供することを目的とする。本発明はさらに永久磁石材料の保磁力を大幅に向上させるとともに、残留磁束密度の低下が少ない永久磁石材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
希土類元素を含有する物質を、少なくとも一つの方向の厚さが10mm以下である磁石の表面に塗布する塗布工程S2)と、
浸透工程S3)であって、
塗布工程S2)により得られた磁石を、真空減圧操作が可能となる通路を有する容器に入れるステップS3-1)と、
前記通路によって、前記容器の気圧が10Pa未満になるまで前記容器に対して真空減圧操作を実施するステップS3-2)と、
引き続き真空減圧している過程で前記通路を密封するステップS3-3)と、
前記容器に密封された磁石を熱処理するステップS3-4)と
を含む浸透工程S3)と、
を含む永久磁石材料の製造方法を提供する。
【0010】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、塗布工程S2)において、前記希土類元素を含有する物質は、
a1)希土類元素の単体、
a2)希土類元素を含有する合金、
a3)希土類元素を含有する化合物、又は
a4)以上の物質の混合物
から選ばれる。
【0011】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、塗布工程S2)において、前記希土類元素は、プラセオジム、ネオジム、イットリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから選ばれる少なくとも1種である。
【0012】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、塗布工程S2)において、前記磁石の少なくとも一つの方向の厚さが、5mm以下である。
【0013】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、浸透工程S3)において、前記容器及び前記通路の材料は、いずれも石英であり、前記通路の内径は、3〜15mmである。
【0014】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、ステップS3-1)において、塗布工程S2)により得られた少なくとも二つの磁石をそれぞれの面積の最も大きい表面を接触面として整列配置し、且つ圧力作用で互いに密接させ、前記容器内に入れる。
【0015】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、ステップS3-1)において、前記圧力作用における圧力は、少なくとも5MPaである。
【0016】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、ステップS3-2)において、前記通路によって前記容器の気圧が5Pa未満になるまで前記容器に対して真空減圧作業を実施し、且つ、
ステップS3-4)において、熱処理温度は600〜1200℃であり、熱処理時間は0.5〜10時間である。
【0017】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、前記製造方法は、さらに、
磁石を製造する磁石製造工程S1)と、
磁石を時効処理する時効処理工程S4)と、
を含む。
【0018】
本発明に係る製造方法によれば、好ましくは、前記磁石製造工程S1)は、
ネオジム-鉄-ボロン磁石の原料を溶融し、溶融したネオジム-鉄-ボロン磁石の原料を、厚さが0.01〜5mmである母合金に形成する溶融工程S1-1)と、
溶融工程S1-1)により得られた母合金を解砕して、平均粒度D50が20μm以下である磁性粉末にする製粉工程S1-2)と、
配向磁界の作用で製粉工程S1-2)により得られた磁性粉末をプレスして、密度が3.0g/cm
3〜5g/cm
3である焼結グリーン体を成形する成形工程S1-3)と、
成形工程S1-3)により得られた焼結グリーン体を焼結成形し、磁石を形成する焼結工程S1-3)であって、焼結温度は、900〜1300℃であり、焼結時間は、0.5〜10時間であり、磁石密度は、6.0g/cm
3〜9.0g/cm
3である、焼結工程S1-4)と、
を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、特定の厚さを有する磁石の表面に希土類元素を含有する物質を塗布し、且つ塗布した磁石に対して特定の真空処理を採用した後、更に熱処理と時効処理を行うことにより、ネオジム-鉄-ボロン系永久磁石材料を製造する。本発明の製造方法を採用すれば、希土類元素を均一に浸透させ、且つ浸透效率を向上させることができる。本発明の好適な態様によれば、本発明に係る製造方法は、希土類元素を磁石に均一に浸透させることができるため、磁石の保磁力を大幅に向上させるとともに、残留磁束密度の低下が少ない。本発明のより好適な態様によれば、磁石の製造工程において時効処理を行わないため、製造コストが節約できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的実施形態を参照して本発明についてさらに説明するが、本発明の保護範囲はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る「残留磁束密度」とは、飽和磁気ヒステリシス曲線において磁界強度がゼロである箇所の磁束密度の数値を指し、一般的にはBr或いはMrで表し、単位はテスラ(T)、或いはガウス(Gs)である。
【0022】
本発明に係る「固有保磁力」とは、磁石の飽和磁化状態から磁界をゼロまで単調減少してから反対方向に増加する場合、磁化強度が飽和磁気ヒステリシス曲線にそってゼロに減少する時の磁界強度を指し、一般的にはHcj或いはMHcで表し、単位はエールステッド(Oe)である。
【0023】
本発明に係る「磁気エネルギー積」とは、減磁曲線の任意の点の磁束密度(B)と対応する磁界強度(H)との積を指し、一般的にはBHで表す。BHの最大値は「最大磁気エネルギー積」と呼ばれ、一般的には(BH)maxで表し、単位はガウス・エールステッド(GOe)である。
【0024】
本発明に係る希土類元素は、プラセオジム、ネオジム或いは「重希土類元素」を含むが、これらに限定されず、好ましくは、「重希土類元素」である。本発明に係る「重希土類元素」は、「イットリウム族元素」とも呼ばれ、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等の9種の元素を含む。
【0025】
本発明に係る「不活性雰囲気」とは、希土類磁石と反応せず、且つその磁性に影響を与えない雰囲気をさす。本発明において、前記「不活性雰囲気」は、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス)からなる雰囲気を含む。
【0026】
本発明に係る「真空」とは、絶対真空度で表される状態を指し、その数値は小さいほど、真空度が高くなることを示す。
【0027】
本発明に係る「平均粒度D50」とは、粒度分布曲線において累積分布が50%である時の粒子の相当径の最大値を指す。
【0028】
本発明に係る永久磁石材料の製造方法は、塗布工程S2)と浸透工程S3)を含む。好ましくは、本発明に係る製造方法は、さらに、磁石製造工程S1)と時効処理工程S4)を含み、且つ磁石製造工程S1)が塗布工程S2)の前に行われ、時効処理工程S4)が浸透工程S3)の後で行われる。
【0029】
本発明において、前記磁石は、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石或いはその他の磁石であってもよく、好ましくは、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石である。以下、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を例として説明する。
【0030】
<磁石製造工程S1)>
本発明の磁石製造工程S1)は焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を製造するための工程である。本発明において、磁石製造工程S1)は、
ネオジム-鉄-ボロン磁石の原料を溶融して、溶融したネオジム-鉄-ボロン磁石の原料を母合金に形成する溶融工程S1-1)と、
溶融工程S1-1)により得られた母合金を解砕して磁性粉末にする製粉工程S1-2)と、
配向磁界の作用で、製粉工程S1-2)により得られた磁性粉末をプレスして焼結グリーン体に成形する成形工程S1-3)と、
成形工程S1-3)により得られた焼結グリーン体を焼結成形し、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を形成する焼結工程S1-4)と、
を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の好適な実施形態によれば、磁石製造工程S1)は、さらに
焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を焼戻し処理する焼戻し処理工程S1-5)、及び/又は
焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を切断する切断工程S1-6)
を含んでもよい。
【0032】
溶融工程S1-1)
ネオジム-鉄-ボロン磁石の原料及びこれから製造される母合金の酸化を防止するために、本発明の溶融(製錬)工程S1-1)は真空或いは不活性雰囲気中で行うことが好ましい。溶融工程S1-1)において、ネオジム-鉄-ボロン磁石の原料及びこれらの配合比率は特に制限されるものではなく、当該分野の周知の原料と配合比率を使用してもよい。本発明の溶融工程S1-1)において、溶融プロセスはインゴットキャストプロセス或いはストリップキャストプロセス(Strip Casting)を採用することが好ましい。インゴットキャストプロセスは、溶融したネオジム-鉄-ボロン磁石の原料を冷却して凝固させ、合金インゴット(母合金)を製造するものである。ストリップキャストは、溶融したネオジム-鉄-ボロン磁石の原料を急冷して凝固させ、且つ、振って合金片(母合金)にするものである。本発明の一つの好適な実施形態によれば、溶融プロセスはストリップキャストプロセスを採用する。本願の発明者は、インゴットキャストプロセスに比べて、ストリップキャストプロセスが、磁性粉末の均一性に影響するα-Feの発生を回避でき、且つ団塊状のネオジムリッチ相の発生を回避でき、これにより母合金の主相であるNd
2Fe
14Bの結晶粒子の寸法の微細化に寄与することを意外にも見出した。本発明のストリップキャストプロセスは、真空溶融急速凝固炉内で行うことが好ましい。本発明の合金片(母合金)の厚さは、0.01〜5mmであってもよく、好ましくは、0.05〜1mm、より好ましくは、0.1〜0.5mmであり、酸素含有量は、2000ppm以下であってもよく、好ましくは、1500ppm以下であり、より好ましくは、1200ppm以下である。
【0033】
製粉工程S1-2)
母合金及びこれを解砕して得られた磁性粉末の酸化を防止するために、本発明の製粉工程S1-2)は真空或いは不活性雰囲気中で行うことが好ましい。本発明の製粉プロセスS1-2)は、
母合金を解砕して粒度が大きい磁性粗粉末にする粗解砕工程S1-2-1)と、
粗解砕工程S1-2-1)より得られた磁性粗粉末を磨いて磁性微粉末にする粉磨き工程S1-2-2)と、
を含むことが好ましい。
【0034】
本発明において、粗解砕プロセスS1-2-1)より得られた磁性粗粉末の平均粒度D50は、500μm以下であってもよく、好ましくは、350μm以下であり、より好ましくは、300〜100μmである。本発明において、粉磨きプロセスS1-2-2)より得られた磁性微粉末の平均粒度D50は、20μm以下であってもよく、好ましくは、10μm以下であり、より好ましくは、1〜5μmである。
【0035】
本発明の粗解砕工程S1-2-1)では、機械解砕プロセス及び/又は水素解砕プロセス(Hydrogen Decrepitation)を採用して母合金を解砕して磁性粗粉末にする。機械解砕プロセスは、機械解砕装置を使用して母合金を解砕して磁性粗粉末にする。前記機械解砕装置は、ジョークラッシャー或いはハンマークラッシャーから選ばれるものであってもよい。水素解砕プロセスは、まず母合金に水素吸蔵させ、母合金と水素ガスとの反応により母合金の格子の体積膨張を引きおこして母合金を解砕して磁性粗粉末を形成し、そして、前記磁性粗粉末を加熱して水素放出するステップを含む。本発明の一つの好適な実施形態によれば、本発明の水素解砕プロセスは、水素解砕炉内で行うことが好ましい。本発明の水素解砕プロセスにおいて、水素吸蔵温度は、50℃〜400℃であり、好ましくは、100℃〜300℃であり、水素吸蔵圧力は、50〜600kPaであり、好ましくは、100〜500kPaであり、水素放出温度は、500〜1000℃であり、好ましくは、700〜900℃である。
【0036】
本発明の粉磨き工程S1-2-2)では、ボールミルプロセス及び/又はジェットミルプロセス(Jet Milling)を採用し前記磁性粗粉末を解砕して磁性微粉末にする。ボールミルプロセスでは、機械ボールミル装置を採用して前記磁性粗粉末を解砕して磁性微粉末にする。前記機械ボールミル装置は、回転ボールミル、振動ボールミル或いは高エネルギーボールミルから選ばれるものであってもよい。ジェットミルプロセスは、気流を利用して磁性粗粉末を加速させて互いに衝突させて解砕するものである。前記気流は、窒素ガス流であってもよく、好ましくは、高純度の窒素ガス流である。前記高純度の窒素ガス流におけるN
2の含有量は99.0wt%以上であってもよく、好ましくは、99.9wt%以上である。前記気流の圧力は、0.1〜2.0MPaであってもよく、好ましくは、0.5〜1.0MPaであり、より好ましくは、0.6〜0.7MPaである。
【0037】
本発明の一つの好適な実施形態によれば、まず、水素解砕プロセスによって母合金を解砕して磁性粗粉末にし、そして、ジェットミルプロセスによって前記磁性粗粉末を解砕して磁性微粉末にする。
【0038】
本発明の別の実施形態によれば、製粉工程S1-2)は、液体急冷法(Magnequench)で磁性粉末を製造してもよい。液体急冷法は当該分野で既知のものを使用してもよく、ここに贅言を重ねることはしない。
【0039】
成形工程S1-3)
磁性粉末の酸化を防止するために、本発明の成形工程S1-3)は真空或いは不活性雰囲気中で行うことが好ましい。本発明の磁性粉末プレスプロセスはモールドプレスプロセス及び/又は等方圧プレスプロセスを採用することが好ましい。モールドプレスプロセス及び等方圧プレスプロセスは当該分野の既知のものを採用してもよく、ここに贅言を重ねることはしない。
本発明の成形工程S1-3)において、配向磁界方向と磁性粉末のプレス方向は相互に平行配向し又は互いに垂直配向する。配向磁界強度は特に制限されるものではないが、実際のニーズに応じて定めてもよい。本発明の好適な実施形態によれば、配向磁界強度は、少なくとも0.5テスラ(T)であり、好ましくは、少なくとも0.7Tである。本発明の好適な実施形態によれば、配向磁界強度は3T未満であり、好ましくは、2.5T未満である。本発明の好適な実施形態によれば、配向磁界強度は、0.7〜2Tである。本発明の成形プロセスS1-3)により得られた焼結グリーン体の密度は、3.0g/cm
3〜5g/cm
3であってもよく、好ましくは、3.5g/cm
3〜4.5g/cm
3である。
【0040】
焼結工程S1-4)
焼結グリーン体の酸化を防止するために、焼結工程S1-4)は真空或いは不活性雰囲気中で行うことが好ましい。本発明の好適な実施形態によれば、焼結工程S1-4)は真空焼結炉内で行う。焼結温度は、900〜1300℃であってもよく、好ましくは、1000〜1200℃であり、より好ましくは、1000〜1080℃であり、焼結時間は、0.5〜10時間であってもよく、好ましくは、1〜6時間である。本発明の成形プロセスS1-4)より得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の密度は、6.0g/cm
3〜9.0g/cm
3であってもよく、好ましくは、6.5g/cm
3〜8.0g/cm
3である。
【0041】
切断工程S1-5)
本発明の切断工程S1-5)では、切断プロセスはスライス加工プロセス及び/又はワイヤ放電切断プロセスを採用する。本発明において、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を、少なくとも一つの方向の厚さが10mm以下であり、好ましくは、5mm以下となるように切断する。好ましくは、前記10mm以下の厚さの方向、好ましくは5mm以下の厚さの方向は焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の配向方向である。本発明では、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を、少なくとも一つの方向の厚さが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上になるように切断する。
【0042】
本発明では、磁石製造工程S1)は塗布工程S2)の前に行うことが好ましい。磁石製造工程S1)では、時効処理を行っても、行わなくてもよい。コストを節約するために、好ましくは、磁石製造工程S1)は時効処理を行わない。
【0043】
<塗布工程S2)>
本発明の塗布工程S2)は、希土類元素を含有する物質を焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面に塗布する工程である。本発明の希土類元素を含有する物質は、
a1)希土類元素の単体、
a2)希土類元素を含有する合金、
a3)希土類元素を含有する化合物、又は
a4)以上の物質の任意的な混合物
から選ばれる。
【0044】
本発明の希土類元素を含有する合金a2)は、希土類元素を含有するとともに、他の金属元素も含む。好ましくは、前記他の金属元素は、アルミニウム、ガリウム、マグネシウム、スズ、銀、銅、及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種である。
【0045】
本発明の希土類元素を含有する化合物a3)は、希土類元素を含有する無機化合物或いは有機化合物である。希土類元素を含有する無機化合物は希土類元素の酸化物、水酸化物或いは無機酸塩を含むが、これらに限定されない。希土類元素を含有する有機化合物は、希土類元素を含有する有機酸塩、アルコキシド或いは金属錯体を含むが、これらに限定されない。本発明の一つの好適な実施形態によれば、本発明の希土類元素を含有する化合物は、希土類元素のハロゲン化物、例えば、希土類元素のフッ化物、塩化物、臭化物或いはヨウ化物である。
【0046】
本発明の希土類元素を含有する物質における希土類元素は、プラセオジム、ネオジム或いはイットリウム族元素(重希土類元素)から選ばれ、例えば、イットリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから選ばれる少なくとも1種である。本発明の好適な実施形態によれば、前記希土類元素は、ジスプロシウム或いはテルビウムの少なくとも1種である。
【0047】
本発明の塗布工程S2)で採用される塗布プロセスは、当該分野における通常の塗布プロセスを採用してもよく、例えば、湿式法塗布、乾式法塗布或いはそれらの組み合わせを採用して塗布する。
【0048】
本発明の湿式法塗布は、下記の塗布プロセス或いはそれらの組み合わせを採用することが好ましい。
希土類元素を含有する物質を液体媒体に溶融して溶液状態の塗布液を形成し、前記溶液状態の塗布液を用いて焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面に塗布する塗布プロセスS2-1)、或いは、
希土類元素を含有する物質を液体媒体に分散させて懸濁液或いはエマルション状態の塗布液を形成して、前記懸濁液或いはエマルション状態の塗布液を用いて焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面に塗布する塗布プロセスS2-2)、或いは、
希土類元素を含有する物質のメッキ液を提供して、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を前記メッキ液に浸漬し、無電解メッキ、電解メッキ或いは電気泳動によって焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面に希土類元素を含有する物質のメッキ皮膜を形成する塗布プロセスS2-3)。
【0049】
塗布プロセスS2-1)及びS2-2)において、塗布液を塗布する形態は、特に制限されるものではなく、当該分野における通常の塗布形態、例えば、ディップコート、ブラシコート、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーン印刷或いはインクジェット印刷を採用してもよく。塗布液の液体媒体は、水、有機溶剤或いはそれらの組み合わせから選ばれてもよい。
【0050】
塗布プロセスS2-3)において、無電解メッキ、電解メッキ、及び電気泳動プロセスは、特に制限されるものではなく、当該分野における通常のプロセスを採用してもよい。
【0051】
本発明の乾式法塗布は、下記の塗布プロセス或いはそれらの組み合わせを採用することが好ましい。
希土類元素を含有する物質を粉末とし、前記粉末を焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面に塗布する塗布プロセスS2-4)、或いは、
気相蒸着プロセスによって、希土類元素を含有する物質を焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面に蒸着する塗布プロセスS2-5)。
【0052】
本発明の塗布プロセスS2-4)はフレームスプレー法(溶射法)、流動床法、静電粉体スプレー法、静電流動床法、静電粉体振動法の少なくとも1種を採用することが好ましい。本発明の好適な実施形態によれば、塗布工程S2)では上記の塗布プロセスS2-4)を採用して乾式法塗布を行う。
【0053】
本発明の塗布プロセスS2-5)は化学気相蒸着(chemical vapor deposition、CVDと略記する)、及び物理気相蒸着(physical vapor deposition、PVDと略記する)の少なくとも1種を採用することが好ましい。
【0054】
<浸透工程S3)>
本発明の浸透工程(すなわち拡散工程)S3)は好ましくは、
塗布工程S2)により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を、真空減圧操作が可能となる通路を有する容器に入れるステップS3-1)と、
前記通路によって前記容器の気圧が10Pa未満になるまで前記容器に対して真空減圧操作を実施するステップS3-2)と、
引き続き真空減圧している過程で前記通路を密封するステップS3-3)と、
前記容器内に密封された焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を熱処理するステップS3-4)と、
を含む。
【0055】
本発明において、後続の熱処理及び/又は時効処理において融解されることを防止するために、前記容器及び通路のいずれも耐高温材料を採用する。好ましくは、前記耐高温材料は、石英である。好ましくは、前記通路の内径は、3〜15mmであり、好ましくは、5〜12mmであり、より好ましくは、6〜10mmである。そのような構成を採用することは、通路を密封する操作にとってより都合がよい。
【0056】
ステップS3-1)では、塗布工程S2)により得られた少なくとも二つの焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石をそれぞれの面積の最も大きい表面を接触面として整列配置し、且つ圧力作用で互いに密接させ、前記容器に入れる。本発明の圧力作用における圧力は、少なくとも5MPaであってもよく、好ましくは、5〜1000MPaであり、より好ましくは、50〜500MPaである。
【0057】
ステップS3-2)において、前記容器の気圧は5Pa未満であってもよく、好ましくは、1Pa未満であり、より好ましくは、0.0001Pa未満である。前記通路を密封する方式は、ソルダーシールであってもよい。
【0058】
ステップS3-4)において、熱処理温度は、600〜1200℃であってもよく、好ましくは、800〜1000℃であり、熱処理時間は、0.5〜10時間であり、好ましくは、2〜8時間であり、より好ましくは、3〜6時間である。
【0059】
<時効処理工程S4)>
本発明の時効処理工程S4)は、焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石に対して時効処理を行うための工程である。本発明において、時効処理の温度は、300〜900℃であってもよく、好ましくは、400〜600℃であり、時効処理の時間は、0.5〜10時間であってもよく、好ましくは、1〜6時間であり、より好ましくは、2〜5時間である。本発明の好適な実施形態によれば、時効処理工程S4)は、浸透工程S3)の後に行われる。
【0060】
実施例1
S1)磁石製造工程:
溶融工程S1-1):重量百分率で、Ndが23.5%、Prが5.5%、Dyが2%、Bが1%、Coが1%、Cuが0.1%、Zrが0.08%、Gaが0.1%、及び残部がFeである原料を配合して、原料を真空溶融急速凝固炉内に入れて溶融させ、平均の厚さ0.3mmの合金片を製造する。
製粉工程S1-2):水素解砕炉で、溶融工程S1-1)により得られた合金片を水素吸蔵処理及び水素放出処理を行うことにより、前記合金片を解砕して粒径が300μmである磁性粗粉末を形成し、前記磁性粗粉末を窒素ガスを媒介とするジェットミルで磨いて平均粒度D50が4.2μmである磁性微粉末にする。
成形工程S1-3):窒素ガスで保護される成形プレス機で、磁界1.8Tを加えて製粉工程S1-2)により得られた磁性微粉末を配向・成形させて焼結グリーン体を形成し、成形密度は、4.3g/cm
3である。
焼結工程S1-4):成形工程S1-3)により得られた焼結グリーン体を真空焼結炉に入れ、高温焼結して焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を形成し、前記真空焼結炉での真空度は、約0.1Paであり、焼結温度は、1050℃であり、焼結時間は、5時間であり、得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の密度は7.6g/cm
3に達し、サイズは、50mm×40mm×30mmである。
S1-5)切断工程:焼結工程S1-4)により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を切断して、サイズが38mm×23.5mm×4mmである磁石にする。
【0061】
塗布工程S2)
磁石製造工程S1)により得られ、且つ切断された焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面にフッ化テルビウムの粉末を塗布する。
【0062】
浸透工程S3):
S3-1)塗布工程S2)により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を石英容器に入れ、当該石英容器は直径7mmの石英管1本によって密封連通される。
S3-2)前記石英管によって石英容器の気圧が1Pa未満になるまで真空減圧する。
S3-3)引き続き真空減圧している過程で石英管をソルダーシールする。
S3-4)焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を熱処理し、熱処理温度は、900℃であり、熱処理時間は、5時間である。
【0063】
時効処理工程S4):
真空条件で、浸透工程S3)により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を時効処理し、時効処理温度は、500℃であり、時効処理時間は、3時間である。
【0064】
実施例2
実施例1のステップS3-1)を以下のステップに変更する以外、他の条件は実施例1と同様である。塗布工程S2)により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を4mmの厚さ方向に沿って整列配置し、治具によって整列配置された焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の両端に500MPaの圧力を加え、そして当該圧力を加えられた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を石英容器に入れ、当該石英容器は、直径7mmの石英管1本によって密封連通される。
【0065】
比較例1
実施例1においてS1-4)焼結工程により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を時効処理し、時効処理温度は、500℃であり、時効処理時間は、3時間である。
【0066】
比較例2
実施例1においてS2)塗布工程により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石を常圧での黒鉛ケースに入れて熱処理し、熱処理温度は、900℃であり、熱処理時間は、5時間であり、そして時効処理し、時効処理温度は、500℃であり、時効処理時間は、3時間である。
【0067】
実験例1
実施例1-2、比較例1-2により得られた焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石をそれぞれ切断して9*9*4mmの磁石にし、それらの「残留磁束密度」(Br)と「固有保磁力」(Hcj)を測定し、実験の結果を表1に示す。
【0068】
本発明は上述した実施形態に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、当業者が想到し得る種々の変更、改良、代替はすべて本発明の範囲内に含まれる。