(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276331
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】切替弁および内燃機関
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20180129BHJP
F16C 7/06 20060101ALI20180129BHJP
F02B 75/04 20060101ALI20180129BHJP
F02D 15/02 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
F16K11/07 J
F16C7/06
F16K11/07 C
F16K11/07 D
F16K11/07 E
F02B75/04
F02D15/02 A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-127266(P2016-127266)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2017-15256(P2017-15256A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年6月29日
(31)【優先権主張番号】10 2015 110 664.7
(32)【優先日】2015年7月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ポール
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102012112461(DE,A1)
【文献】
実開昭51−039832(JP,U)
【文献】
特開平08−303618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00−11/24; 3/00− 3/36
F16K 31/44−31/62;35/00
F02B 75/04
F02D 15/02
F16C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に偏心調節デバイスの油圧チャンバ内の油圧作動油の流れを制御するための、調節可能な圧縮比を有する内燃機関用の切替弁(10)であって、
表面に溝(14)が形成された切替要素(12)を有し、
スリーブ形状接続区域(16)を有し、
前記スリーブ形状接続区域(16)が、前記切替弁(10)を第1の油圧作動液ライン(18)と接続する第1の穴(17)と、前記切替弁(10)を第2の油圧作動液ライン(20)と接続する第2の穴(19)と、前記切替弁(10)を排出ダクト(22)に接続する排出穴(21)とを有し、
前記切替要素(12)の前記表面と前記接続区域(16)の対応する案内面との間に隙間を形成することによって、前記切替要素(12)が、前記接続区域(16)内で可動であるように案内され、
前記切替要素(12)を、任意選択で第1の切替え位置(S1)または第2の切替え位置(S2)に移動させることができ、前記第1の切替え位置(S1)で、前記切替要素(12)に形成された前記溝(14)が、前記第1の油圧作動液ライン(18)を排出ダクト(22)に接続し、前記第2の切替え位置(S2)で、前記切替要素(12)に形成された前記溝(14)が、前記第2の油圧作動液ライン(20)を前記排出ダクト(22)に接続し、
前記切替要素(12)を前記第1の切替え位置(S1)および前記第2の切替え位置(S2)に固定することができる、切替弁(10)において、
前記切替要素と前記接続区域との間の前記隙間を少なくとも一部封止するための少なくとも1つの封止要素(28、29、30、31、32)が、前記切替要素(12)の前記表面および/または前記接続区域(16)の前記案内面に形成され、
前記溝(14)を環状に取り囲む封止要素(30)が、前記切替要素(12)の前記表面に形成される、
及び/又は
前記切替要素(12)が前記第1の切替え位置を取るときに前記第2の穴(19)を封止する第1の封止要素(31)、および/または前記切替要素(12)が前記第2の切替え位置を取るときに前記第1の穴(17)を封止する第2の封止要素(32)が、前記切替要素(12)の前記表面に形成される、ことを特徴とする、切替弁(10)。
【請求項2】
前記切替要素(12)に形成された前記溝(14)と、前記切替要素に形成されたラッチング溝(26、27)とが、径方向で見たときに互いに反対側に位置する前記切替要素(12)の前記表面の区域に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の切替弁。
【請求項3】
少なくとも1つの封止要素(28、29)が前記切替要素(12)の前記表面に形成され、前記少なくとも1つの封止要素(28、29)が、前記切替要素(12)の軸方向で見たときに、前記切替要素(12)の前記表面に形成された前記ラッチング溝(26、27)の片側に位置決めされることを特徴とする、請求項2に記載の切替弁。
【請求項4】
第1の封止要素(28)が前記切替要素(12)の前記表面に形成され、前記第1の封止要素(28)が、前記切替要素(12)の前記軸方向で見たときに、互いに並んで位置決めされた前記ラッチング溝(26、27)の第1の側に位置決めされることと、第2の封止要素(29)が前記切替要素の前記表面に形成され、前記第2の封止要素(29)が、前記切替要素の前記軸方向で見たときに、前記ラッチング溝の第2の側に位置決めされることとを特徴とする、請求項3に記載の切替弁。
【請求項5】
前記第1の封止要素(28)が、前記切替要素(12)の周方向で見たときに一周にわたって延びており、さらに、前記切替要素(12)の前記軸方向で見たときに前記溝(14)の第1の側に位置決めされることと、前記第2の封止要素(29)も、前記切替要素(12)の前記周方向で見たときに一周にわたって延びており、さらに、前記切替要素(12)の前記軸方向で見たときに前記溝(14)の第2の側に位置決めされることとを特徴とする、請求項4に記載の切替弁。
【請求項6】
前記接続区域(16)の軸方向で見たときに前記第1の穴(17)および前記第1の油圧作動液ライン(18)の側に位置決めされ、かつ前記排出穴(21)および前記排出ダクト(22)とは反対側に面する第1の封止要素と、前記接続区域(16)の前記軸方向で見たときに前記第2の穴(19)および前記第2の油圧作動液ライン(20)の側に位置決めされ、かつ前記排出穴(21)および前記排出ダクト(22)とは反対側に面する第2の封止要素とが、前記接続区域(16)の前記案内面に形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の切替弁。
【請求項7】
前記切替要素(12)の前記溝(14)がT字形に形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の切替弁。
【請求項8】
前記第1の切替え位置(S1)で、前記溝(14)が、前記スリーブ形状接続区域(16)の前記第1の穴(17)および前記排出穴(21)の領域内に配置され、かつ前記第2の切替え位置(S2)で、前記溝(14)が、前記スリーブ形状接続区域(16)の前記第2の穴(19)および前記排出穴(21)の領域内に配置され、前記排出穴(21)が、前記スリーブ形状接続区域(16)の前記第1および第2の穴(17、19)の間の領域内に配置されることを特徴とする、請求項7に記載の切替弁。
【請求項9】
前記切替要素(12)を、ラッチングボール(24)およびばね(25)によって前記第1の切替え位置(S1)または前記第2の切替え位置(S2)に係止することができ、前記ラッチングボール(24)および前記ばね(25)が、前記切替要素(12)に形成されたラッチング溝(26、27)と協働し、前記ばね(25)が、前記切替要素(12)の移動方向に対して横方向で、前記ラッチングボール(24)にばね張力を印加するように設計されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の切替弁。
【請求項10】
調節可能な圧縮比を有し、かつ請求項1〜9のいずれか一項に記載の切替弁(10)を有する内燃機関であって、コネクティングロッド構成(1)を有し、前記コネクティングロッド構成(1)が、油圧式に調節可能な偏心調節デバイス(6)を有し、前記偏心調節デバイス(6)が、小端部(2)および/または大端部(3)に構成され、かつコネクティングロッド実効長(leff)を調節するという目的を有し、前記偏心調節デバイス(6)の調節経路を前記切替弁(10)によって制御することができる、内燃機関。
【請求項11】
前記切替弁(10)が前記コネクティングロッド構成(1)に組み込まれることを特徴とする、請求項10に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切替弁および内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、高い圧縮比により内燃機関の効率に良い影響がもたらされる。圧縮比は、一般に、圧縮前の全シリンダ体積と圧縮後の残りのシリンダ体積との比と定義される。外部点火式の内燃機関、特に概して一定の圧縮比を有するスパーク発火エンジンでは、内燃機関のいわゆる「ノッキング」が定格動作モードで生じないような高さまでの圧縮比の値を選択しなければならない。しかし、はるかにより頻繁に生じる内燃機関の部分負荷範囲に関して、すなわちシリンダ充填量が小さいときには、「ノッキング」を生じずに圧縮比に関してより高い値を選択することができる。圧縮比を可変に設定することができる場合、内燃機関の重要な部分負荷範囲を改良することができる。
【0003】
(特許文献1)では、調節可能な圧縮比を有する内燃機関を開示している。大端部および小端部を有するコネクティングロッドは、大端部によってクランクシャフトに接続することができ、小端部によって内燃機関のシリンダピストンに接続することができる。コネクティングロッドには、偏心体および偏心ロッドを有する偏心調節デバイスが割り当てられる。
【0004】
(特許文献1)から知られている偏心体は、小端部の中心点に対して偏心に配置され、かつ中心点を有するピストンピン穴を有する。このピストンピン穴にピストンピンが収容される。偏心調節デバイスは、コネクティングロッド実効長leffを調節する役割を果たす。ピストンピン穴の中心点と大端部の中心点との間の距離がコネクティングロッド長と定義される。偏心調節デバイスの偏心ロッドは、偏心体を回転させるために、したがってコネクティングロッド実効長leffを変えるために移動させることができる。すべてのコネクティングロッドにピストンが割り当てられる。ピストンは、油圧チャンバ内に変位可能に取り付けられるか、または案内される。油圧チャンバ内には、偏心ロッドに割り当てられたピストンに作用する油圧が生じる。油圧チャンバ内の作動油の量に応じて、偏心ロッドの移動が可能な場合と可能でない場合がある。
【0005】
偏心調節デバイスの調節は、内燃機関の慣性力および負荷力の作用によって開始される。これらの力は、内燃機関の行程中に偏心調節デバイスに作用する。行程中、偏心調節デバイスに作用する力の作用方向は常に変化する。調節運動はピストンによって補助される。ピストンは、油圧作動油を供給されて偏心ロッドに作用する。それにより、偏心調節デバイスに作用する力の力方向の変化により偏心調節デバイスが元に戻ることが防止される。ピストンと協働する偏心ロッドは、両側で偏心体に接続される。
【0006】
油圧チャンバであって、ピストンがその中に案内される油圧チャンバには、大端部から油圧作動油供給ラインを通して油圧作動油を供給または充填することができる。逆止弁により、油圧チャンバから油圧作動油供給ラインに油圧作動油が逆流するのを防止する。切替弁が、コネクティングロッドの穴内に収容される。油圧チャンバは、油圧作動油放出ラインを介して、切替弁を収容する穴に接続される。切替弁の切替え位置により、どの油圧チャンバが油圧作動油を充填され、およびどの油圧チャンバが空にされるかが決定される。偏心調節デバイスの調節方向または回転方向はそれに応じたものとなる。
【0007】
上述したように、油圧チャンバ内に案内される偏心ロッドのピストンに作用する油圧作動油は、大端部から油圧作動油供給ラインを通して油圧チャンバに供給される。それにより、コネクティングロッドは、大端部でクランクシャフトに作用する。その際、クランクシャフト、特にそのクランクシャフトジャーナルと大端部との間に半割ベアリングメタルが配置される。
【0008】
油圧チャンバは、切替弁の切替え位置に応じて、油圧作動油放出ラインを通して排出することができる。偏心調節デバイスの調節方向または回転方向はそれに応じたものとなる。
【0009】
(特許文献1)から知られている切替弁は、作動要素、戻しばね、および制御ピストンを備える。
【0010】
(特許文献2)では、特許請求項1の前段に記載の、調節可能な圧縮比を有する内燃機関用の切替弁を開示している。この文献に開示される切替弁は、切替要素と接続区域とを有する。切替要素は、切替要素の表面と接続区域の対応する案内面との間に隙間を形成することによって2つの切替え位置の間で可動であるように接続区域内で案内される。切替弁の有効性はその気密性に応じて決まる。
【0011】
従来技術から知られている切替弁によって偏心調節デバイスの調節方向または回転方向に効果的に影響を及ぼすことが既に可能であるが、改良されたより効果的な切替弁が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2010 016 037 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2012 112 461 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、調節可能な圧縮比を有する内燃機関用の新規の切替弁、およびそのような切替弁を備える内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の主題は、特許請求項1に記載の切替弁によって実現される。本発明によれば、切替要素と接続区域との間の隙間を少なくとも一部封止するための少なくとも1つの封止要素が、切替要素の表面および/または接続区域の案内面に形成される。このようにして、切替弁の有効性を高めることができる。また、切替弁は、容易に製造および取付けを行うことができ、設置スペースをあまり必要としない。
【0015】
本発明の改良形態によれば、切替要素の溝を取り囲む封止要素が、切替要素の表面に形成される。このようにして、良好な封止と、切替弁の有効性の改良とを実現することができる。
【0016】
代替として、または追加として、切替要素の軸方向で見たときに、切替要素の表面に形成されたラッチング溝の片側に位置決めされた少なくとも1つの封止要素、好ましくは、切替要素の軸方向で見たときに、互いに並んで位置決めされたラッチング溝の第1の側に位置決めされた第1の封止要素と、切替要素の軸方向で見たときに、互いに並んで位置決めされたラッチング溝の第2の側に位置決めされた第2の封止要素とが、切替要素の表面に形成される。このようにして、良好な封止と、切替弁の有効性の改良とを実現することができる。
【0017】
代替として、または追加として、接続区域の軸方向で見たときに第1の穴および油圧作動液ラインの側に位置決めされ、排出穴および排出ダクトとは反対側に面する封止要素が、接続区域の案内面に形成され、および/または接続区域の軸方向で見たときに第2の穴および第2の油圧作動液ラインの側に位置決めされ、排出穴および排出ダクトとは反対側に面する第2の封止要素が、接続区域の案内面に形成される。このようにして、良好な封止と、切替弁の有効性の改良とを実現することができる。
【0018】
代替として、または追加として、切替要素が第1の切替え位置を取るときに第2の穴を封止する第1の封止要素、および/または切替要素が第2の切替え位置を取るときに第1の穴を封止する第2の封止要素が、切替要素の表面または接続区域の案内面に形成される。このようにして、良好な封止と、切替弁の有効性の改良とを実現することができる。
【0019】
調節可能な圧縮比を有する本発明による内燃機関が、特許請求項12で定義されている。
【0020】
本発明の好ましい改良形態は、従属請求項および以下の説明で見ることができる。限定としてではなく、本発明の例示的実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】調節可能な圧縮比を有する内燃機関、特に切替弁を有するコネクティングロッド構成の詳細図である。
【
図3】第1の切替え位置での切替弁の概略図である。
【
図4】第2の切替え位置での切替弁の概略図である。
【
図6】本発明に従った、第1の変形形態による切替弁の詳細図である。
【
図7】
図6の本発明による詳細を示す第2の斜視図である。
【
図8】本発明に従った、第2の変形形態による切替弁の詳細図である。
【
図9】本発明に従った、さらなる変形形態による切替弁の詳細図である。
【
図10】切替弁の第1の切替え位置で、
図9からの詳細をスリーブ形状接続区域と共に示す図である。
【
図11】切替弁の第2の切替え位置で、
図9からの詳細をスリーブ形状接続区域と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、調節可能な圧縮比を有する内燃機関のコネクティングロッド構成の概略図である。このコネクティングロッド構成1は、コネクティングロッド1aと、好ましくは油圧式に調節可能な偏心デバイス6とを有する。偏心デバイス6は、少なくとも部分的に小端部2内に配置される。
【0023】
偏心デバイス6は、小端部2の中心軸8に対して偏心に配置された、中心軸3aを有するピストンピン穴を有する。このピストンピン穴にピストンピンが収容される。偏心デバイス6は、コネクティングロッド実効長leffを調節する役割を果たす。
【0024】
ピストンピン穴の中心軸8から大端部3の中心軸3aまでの距離が、コネクティングロッド長leffとして定義される。
【0025】
偏心デバイス6の回転は、内燃機関の行程中に偏心デバイス6に作用する内燃機関の負荷力および慣性力の作用によって開始される。行程中、偏心デバイス6に作用する力の作用方向は、連続的に変化する。
【0026】
回転運動または調節運動はピストンによって補助される。ピストンは、油圧作動液、特にエンジンオイルを供給され、コネクティングロッド構成1に組み込まれる。ピストンは、偏心デバイス6に作用する力の力方向の変化により偏心デバイス6が元に戻るのを防止する。
【0027】
ピストンは、両側で偏心ロッド4、5によって偏心デバイス6の偏心体9に動作接続される。偏心デバイス6は、ピストンと、偏心ロッド4、5と、偏心体9とを有することができる。ピストンは、油圧作動液ライン(
図1には図示せず)を通して、大端部3から逆止弁(
図1には図示せず)を介して油圧作動液を供給される。上記に関連して、この逆止弁により、油圧作動液がピストンのピストン体積から油圧作動液ライン内に戻り、内燃機関の内燃室内に逆流するのを防止する。
【0028】
ピストン体積は、切替弁10と協働する第1の油圧作動液ライン18および第2の油圧作動液ライン20に接続される。
【0029】
図2は、コネクティングロッド構成における切替弁の概略詳細図である。
図2に、切替弁10が設置された状態で示されている。切替弁10は、タップ要素12と、スリーブ形状接続区域16とを有する。タップ要素12は、スリーブ形状接続区域16内に配置されて可動に案内される。
【0030】
スリーブ形状接続区域16は第1の穴17を有する。第1の穴17は、第1の油圧作動液ライン18に接続される。また、スリーブ形状接続区域16は第2の穴19を有する。第2の穴19は、第2の油圧作動液ライン20に接続される。さらに、スリーブ形状接続区域16は排出穴21を有する。排出穴21は、排出ダクト22に接続される。
【0031】
図3は、第1の切替え位置S1での、油圧作動液の流れを制御するための切替弁10の概略図である。切替弁10は、タップ要素12と、スリーブ形状接続区域16とを有する。タップ要素12は、スリーブ形状接続区域16内に少なくとも一部挿入される。タップ要素12の表面に溝14が形成される。溝14は、T字形に形成される。
【0032】
スリーブ形状接続区域16は第1の穴17を有する。第1の穴17により、切替弁10を第1の油圧作動液ライン18に接続する。また、スリーブ形状接続区域16は第2の穴19を有する。第2の穴19は、切替弁10を第2の油圧作動液ライン20に接続するのに適している。さらに、スリーブ形状接続区域16は排出穴21を有する。排出穴21は、切替弁10を排出ダクト22に接続するのに適している。
【0033】
第1の切替え位置S1で、タップ要素12、特にその表面に形成された溝14は、第1の穴17および排出穴21の領域内に配置される。したがって、第1の穴17に接続された油圧作動液ライン18は排出されうる。
【0034】
図4は、第2の切替え位置での、油圧作動液の流れを制御するための切替弁の概略図である。第2の切替え位置S2では、タップ要素12、特にその表面に形成された溝14は、第2の穴19および排出穴21の領域内に配置される。したがって、第2の穴19に接続された油圧作動液ライン20は排出されうる。
【0035】
図5は、さらなる好ましい例示的実施形態による切替弁10の長手方向断面図である。
図5は、第1の切替え位置S1で、切替弁10、特に切替弁10に配置されたタップ要素12を示す。
【0036】
タップ要素12は、好ましくは、ラッチングボール24およびばね25によって第1の切替え位置S1に固定または係止される。ラッチングボール24およびばね25は、タップ要素12に形成されたラッチング溝26と協働する。全体として2つのラッチング溝26、27が設けられる。ラッチングボール24を収容するためのそれぞれのラッチング溝26、27は、切替弁10の第1および第2の切替え位置S1、S2に関して設けられる。
【0037】
したがって、切替要素12は、好ましくは、ラッチングボール24およびばね25によって形成されるラッチング要素によって第1の切替え位置S1および第2の切替え位置S2で係止することができる。その際、ラッチング要素は、切替要素12の切替え位置に応じて、切替要素12の表面に形成された複数のラッチング溝26、27の1つに係合する。切替え位置での切替要素12の係止は、別の方法で行うこともできる。
【0038】
ラッチング溝は、ここでは、ボルト状またはピン状の切替要素12の軸方向A(
図5参照)で見たときに互いに並んで位置決めされ、切替要素12の径方向R(
図5参照)で見たときに、溝14が形成される切替要素12の表面の区域と反対側に位置する切替要素12の表面の区域に形成される。
【0039】
また、
図5から、油圧作動液ライン18、20が、切替弁10の接続区域16の外部に導かれていることが明らかである。穴17、19が、油圧ライン18、20の一端で接続区域16を通って外部から内部に延びている。
【0040】
特に、切替要素12の表面と接続区域16の対応する案内面との間に隙間を形成することによって、切替弁10の切替要素12は、その接続区域16内で可動に案内される。
【0041】
切替要素12と接続区域16との間の隙間を少なくとも一部封止するための少なくとも1つの封止要素が、接続区域16に面する切替要素12の表面、および/または切替要素12に面する接続区域16の案内面に形成される。
【0042】
第1の変形形態によれば、少なくとも1つの封止要素が切替要素12の表面に形成される。この封止要素は、切替要素12の軸方向Aで見たときに切替要素12の表面に形成されたラッチング溝26、27の片側に位置決めされる。
【0043】
例えば、
図6は、第1の封止要素28が切替要素12の表面に形成されていることを示す。第1の封止要素28は、切替要素12の軸方向Aで見たときに、互いに並んで位置決めされたラッチング溝26、27の第1の側、具体的にはラッチング溝26に隣接する、またはラッチング溝27から離れた側に位置決めされる。
【0044】
さらに、第2の封止要素29が切替要素12の表面上に形成される。第2の封止要素29は、切替要素12の軸方向Aで見たときに、互いに並んで位置決めされたラッチング溝26、27の第2の側、具体的にはラッチング溝27に隣接する、またはラッチング溝26から離れた側に位置決めされる。
【0045】
上記に関連して、切替要素12の周方向で見たとき、封止要素28、29は、好ましくは周方向に形成される。その結果、
図7に従って、第1の封止要素28は、切替要素12の軸方向で見たときにT字形の溝14の第1の側に位置決めされ、かつ第2の封止要素29は、切替要素12の軸方向で見たときにT字形の溝14の第2の側に位置決めされる。したがって、切替弁の切替要素12と切替弁の接続区域16との間の隙間を効果的に封止することができる。
【0046】
本発明の第2の変形形態によれば、
図8に従って、切替要素12のT字形の溝14を取り囲む封止要素30が、切替弁の切替要素12の表面に形成される。したがって、切替弁の切替要素12と切替弁の接続区域16との間の隙間を効果的に封止することができる。また、
図8における変形形態は、
図6および
図7における変形形態と組み合わせることもできる。
【0047】
封止要素28、29、30は、切替要素12の溝に挿入されるOリング状の封止要素、または切替要素12の表面上に加硫される封止要素でよい。
【0048】
代替として、または追加として、切替要素12と接続区域16との間の隙間を封止する封止要素を、切替要素12が案内される接続区域16の案内面に形成することができる。
【0049】
このタイプの第1の封止要素は、接続区域16の軸方向で見たときに排出穴21および排出ダクト22とは反対の、第1の穴17および第1の油圧作動液ライン18の側に位置決めすることができる。このタイプの第2の切替要素は、接続区域16の軸方向で見たときに排出穴21および排出ダクト22とは反対の、第2の穴19および第2の油圧作動液ライン20の側に位置決めすることができる。このようにして、切替要素12と接続区域16との間の隙間をやはり効果的に封止することができる。
【0050】
第1の封止要素31が切替弁10の切替要素12の表面または切替弁10の接続区域16の案内面に形成され、切替要素12が第1の切替え位置S1(
図10参照)を取るときに第1の封止要素31が第2の穴19を封止する本発明の一変形形態(
図9、
図10、および
図11参照)が好ましい。
【0051】
さらに、切替要素12が第2の切替え位置S2(
図11参照)を取るときに第1の穴17を封止する第2の封止要素32が、切替弁10の切替要素12の表面または切替弁10の接続区域16の案内面に形成される。
【0052】
切替要素12が第1の切替え位置S1(
図10参照)を取るとき、切替要素12に形成された溝14が、第1の油圧作動液ライン18、したがって第1の穴17を排出ダクト22に接続する。その結果、したがって、第2の穴19が高圧側となり、第2の穴19を封止する第1の封止要素31によって封止される。
【0053】
切替要素12が第2の切替え位置S2(
図11参照)を取るとき、切替要素12に形成された溝14は、第2の油圧作動液ライン20、したがって第2の穴19を排出ダクト22に接続する。その結果、したがって、第1の穴17が高圧側となり、第1の穴17を封止する第2の封止要素32によって封止される。
【0054】
このようにしてもたらされるスリーブ形状接続区域16の穴17、19の封止(これらの穴17、19は、切替要素12のそれぞれの切替え位置で高圧側となり、したがって排出ダクト22に結合されない)は、切替弁10の有効性を改良するのに特に有利である。ここで、
図9〜
図11で切替要素12の表面にあるそれぞれの封止要素31および32が、少なくとも切替弁12のそれぞれの切替え位置で穴17、19を取り囲む。これらの穴17、19は、それぞれの切替え位置で封止すべきものである。
【0055】
上述したように、封止要素31、32は、接続区域16の案内面に形成することもできる。
【0056】
また、接続区域16の案内面全体に、穴17、19によってのみ途切れる封止要素が設けられてもよい。
【0057】
上述したように、封止要素は、切替要素12の表面に形成された溝または接続区域16の案内面に形成された溝に挿入されるOリング状の封止要素でよい。
【0058】
さらに、封止要素は、切替要素12の表面上または接続区域16の案内面上に加硫された封止要素でもよい。
【0059】
さらに、
図9〜
図11は案内要素33を示す。案内要素33は、第1の端部で、切替要素12の対応する穴35内に突出し、第2の端部で、接続区域16の細長い穴34内に突出する。案内要素33と細長い穴34との相互作用により、接続区域16内での切替要素12の軸方向変位が制限され、また、切替要素12の相対周方向位置が接続区域16内で固定される。案内要素33は、
図5の断面でも見ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 コネクティングロッド構成
2 小端部
3 大端部
6 偏心調節デバイス
10 切替弁
12 切替要素
14 溝
16 接続区域
17 第1の穴
18 第1の油圧作動液ライン
19 第2の穴
20 第2の油圧作動液ライン
21 排出穴
22 排出ダクト
24 ラッチングボール
25 ばね
26、27 ラッチング溝
28、29、30、31、32 封止要素
leff コネクティングロッド実効長
S1 第1の切替え位置
S2 第2の切替え位置