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特許6276367マルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276367
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】マルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20180129BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20180129BHJP
【FI】
   H02M7/49
   H02M7/48 F
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-222707(P2016-222707)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2017-147926(P2017-147926A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0019097
(32)【優先日】2016年2月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハク−ジュン・リー
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−220332(JP,A)
【文献】 特開2016−171742(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0180369(US,A1)
【文献】 特開2008−141804(JP,A)
【文献】 特開2005−253229(JP,A)
【文献】 特開2012−228025(JP,A)
【文献】 特開2000−060142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベルインバータの各電力セルの状態を感知して故障有無を判別するステップ;
故障と判別された電力セルを迂回させ、各相別に正常動作状態の電力セルを直列に連結するステップ;
各相の相電圧指令と、各相を構成する正常動作状態の電力セルの直流端電圧の和を用いたバウンド関数出力値との差値を利用してオフセット電圧値を算出するステップ;及び
前記各相の相電圧指令と前記算出されたオフセット電圧値を利用して三相線間出力電圧の平衡を維持させる各相の極電圧指令を算出するステップを含む、マルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法。
【請求項2】
前記バウンド関数出力値は、下記の式で表され、
【数1】
ここで、bound(a,b,x)関数は、xがaより小さい場合は、aを出力値とし、xがbより大きい場合は、bを出力値とし、xがa以上、またはb以下である場合は、xを出力値とする関数であり、
adc、Vbdc、Vcdcは、a相の直流端電圧、b相の直流端電圧、c相の直流端電圧であり、v*as、v*bs、v*csは、三相の相電圧指令である、請求項1に記載のマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法。
【請求項3】
前記オフセット電圧値を算出するステップは、
各相を構成する正常動作状態の電力セルの直流端電圧の和をそれぞれ算出するステップ;
前記算出されたそれぞれの直流端電圧の和が最大値及び最小値に設定され、前記各相の相電圧指令を入力とするバウンド関数の出力値をそれぞれ出力するステップ;
各相の相電圧指令と、前記出力されたそれぞれのバウンド関数出力値の差値をそれぞれ算出するステップ;及び
前記算出されたそれぞれの差値を累積してオフセット電圧値で出力するステップを含む、請求項1または2に記載のマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法。
【請求項4】
前記オフセット電圧値を出力するステップは、
下記の式で表されるオフセット電圧値snを出力し、
【数2】
ここで、bound(a,b,x)関数は、xがaより小さい場合は、aを出力値とし、xがbより大きい場合は、bを出力値とし、xがa以上、またはb以下である場合は、xを出力値とする関数であり、
adc、Vbdc、Vcdcは、a相の直流端電圧、b相の直流端電圧、c相の直流端電圧であり、v*as、v*bs、v*csは、三相の相電圧指令である、請求項3に記載のマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法。
【請求項5】
前記算出された各相別の極電圧指令をパルス幅制御(Pulse Width Modulation:PWM)を通してスイッチング制御信号を生成し、各電力セルに出力するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法。
【請求項6】
前記極電圧指令を算出するステップは、
前記各相の相電圧指令と前記算出されたオフセット電圧値をそれぞれ足して三相線間出力電圧の平衡を維持させる各相の極電圧指令を算出する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法。
【請求項7】
前記極電圧指令を算出するステップは、
下記の式で表される極電圧指令を算出し、
【数3】
ここで、v*as、v*bs、v*csは、三相の相電圧指令であり、vsnは、オフセット電圧である、請求項6に記載のマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法に関し、詳細には、CHBマルチレベルインバータの電力セルの故障時、正常動作中の電力セルを迂回させず、オフセット電圧(または零相分電圧)を用いた三相平衡電圧制御を行うことで三相線間出力電圧を平衡に維持させ、連続的な動作を可能とする電圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチレベルインバータは、中電圧(medium voltage)が適用される分野、特に、電動機駆動分野で主に研究されてきた。
【0003】
中電圧(medium voltage)以上の大型交流電動機の可変速駆動のための電圧型インバータの適用には、インバータを構成するスイッチング素子の定格電圧、耐圧の限界により困難が存在する。
中電圧以上の電圧型インバータとしては、スイッチング素子の直列連結を利用して連結された素子の数だけ等価の耐圧特性を有する2レベルインバータが挙げられる。しかし、このような中電圧2レベルインバータを利用して電動機を駆動する場合、高いdv/dtによる電動機劣化、絶縁等の問題と電圧反射問題、高い全高調波歪率(Total Harmonic Distortion;THD)、高いスイッチング損失等の問題等が存在し、実際、産業界に適用するには困難がある。
【0004】
このような問題点を克服するために、様々な種類のマルチレベルインバータが開発されており、その中で直列H−bridgeマルチレベルインバータ(Cascaded H−bridge Multilevel Inverter;CHB)は、入・出力電圧、電流品質の側面で最も優れた特性を示している。CHBマルチレベルインバータの各相は、単相H−bridgeインバータで構成された電力セルの直列連結を通して具現される。
【0005】
CHBマルチレベルインバータは、モジュール化可能性及び高い信頼性、動作の連続性、低い入力電流全高調波歪率(Total Harmonic Distortion;THD)等の長所を有している。そして、このような長所により盛んに商用化がなされ、現在、多くのメーカーにより中電圧電動機駆動のためのインバータ製品として発売されている。
【0006】
CHBマルチレベルインバータの電力セル(Cell)は、三相整流回路、直流端キャパシタ、H−bridge回路からなっており、N個の電力セルが直列連結されて一つの相(phase)をなすようになる。N個の電力セルのうちk個の電力セルの故障時、CHBマルチレベルインバータは、k個の電力セルを迂回(bypass)させて連続的な動作を可能とする。一方、一つの相でk個の電力セルを迂回させる場合、各線間電圧(line−to−line voltage)に不平衡が発生し、このような不平衡を解消するためには、他の相もまたk個の電力セルを迂回させなければならない。このような場合、CHBマルチレベルインバータは、元来持っていた余裕率(redundancy)が減少するだけでなく、出力電圧もまた(N−k)/Nだけ減少するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、CHBマルチレベルインバータの電力セルの故障時、正常動作中の電力セルを迂回させず、オフセット電圧(または零相分電圧)を用いた三相平衡電圧制御を行うことで三相線間出力電圧を平衡に維持させ、連続的な動作を可能とするマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、以上において言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、下記の記載から提案される実施例の属する技術分野における通常の知識を有する者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、CHBマルチレベルインバータの各電力セルの状態を感知して故障有無を判別するステップ、故障と判別された電力セルを迂回させ、各相別に正常動作状態の電力セルを直列に連結するステップ、各相の相電圧指令と、各相を構成する正常動作状態の電力セルの直流端電圧の和を利用してオフセット電圧値を算出するステップ、及び前記各相の相電圧指令と前記算出されたオフセット電圧値を利用して三相線間出力電圧の平衡を維持させる各相の極電圧指令を算出するステップを含むマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法が提供される。
【0010】
前記オフセット電圧値を算出するステップは、各相の相電圧指令と、各相を構成する正常動作状態の電力セルの直流端電圧の和を用いたバウンド関数出力値の差値を利用してオフセット電圧値を算出することができる。
【0011】
前記オフセット電圧値を算出するステップは、各相を構成する正常動作状態の電力セルの直流端電圧の和をそれぞれ算出するステップ、前記算出されたそれぞれの直流端電圧の和が最大値及び最小値に設定され、前記各相の相電圧指令を入力とするバウンド関数の出力値をそれぞれ出力するステップ、各相の相電圧指令と、前記出力されたそれぞれのバウンド関数出力値の差値をそれぞれ算出するステップ、及び前記算出されたそれぞれの差値を累積してオフセット電圧値で出力するステップを含むことができる。
【0012】
前記オフセット電圧値を出力するステップは、
下記の式で表されるオフセット電圧値snを出力し、
【数1】
ここで、bound(a,b,x)関数は、xがaより小さい場合は、aを出力値とし、xがbより大きい場合は、bを出力値とし、xがa以上、またはb以下である場合は、xを出力値とする関数であり、Vadc、Vbdc、Vcdcは、a相の直流端電圧、b相の直流端電圧、c相の直流端電圧であり、v*as、v*bs、v*csは、三相の相電圧指令である。
【0013】
前記マルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法は、前記算出された各相別の極電圧指令をパルス幅制御(Pulse Width Modulation:PWM)を通してスイッチング制御信号を生成し、各電力セルに出力するステップをさらに含むことができる。
【0014】
前記極電圧指令を算出するステップは、前記各相の相電圧指令と前記算出されたオフセット電圧値をそれぞれ足して三相線間出力電圧の平衡を維持させる各相の極電圧指令を算出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、CHBマルチレベルインバータで相電圧指令とリミッタを利用して計算されたオフセット電圧(または零相分電圧)を注入して三相平衡電圧制御を行うことにより、電力セルの故障時にも正常動作中の電力セルを迂回させずに三相線間出力電圧を平衡に維持させることができる。
【0016】
これにより、CHBマルチレベルインバータは、他の相の余裕率を失うことがなく、数個の電力セルの故障時はもちろん、一レッグの全体電力セルの故障時にも線形制御領域内で可能な限り最大の線間電圧を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの構造を説明するための図である。
図2】本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータで電力セルの構成を説明するための図である。
図3】本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータで任意の電力セルに故障が発生した時の最大電圧ベクトル図である。
図4】本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータで各電力セルの直流端電圧の総和を計算する過程を説明するための図である。
図5】本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法を説明するための図である。
図6】本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの極電圧指令からのスイッチング制御信号生成を説明するための図である。
図7】CHBマルチレベルインバータの各相に印加される極電圧指令が各電力セルに伝達されることを説明するための図である。
図8】本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な変更を加えることができ、種々の実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳述しようとする。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る好ましい一実施例を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの構造を説明するための図である。
【0021】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータ100は、三相多巻線変圧器110、及び複数の電力セル120を含んで構成され得、電源系統10と電動機20との間に連結される。CHBマルチレベルインバータ100は、制御器200の制御を受けて動作する。
【0022】
三相多巻線(multi−winding)変圧器110は、各電力セル120に独立した直流端電圧を提供する。各巻線間には、位相差が存在する。これは、各電力セル120を構成する整流回路を多パルス(multi−pulse)形式で構成するためのものである。このような位相差により各電力セルの入力電流は重畳し、三相多巻線変圧器110の入力電流は、低いTHDを有するようになる。
【0023】
複数の電力セル120は、各相別に複数の電力セルが直列連結を通して構成される。各電力セルは、低圧スイッチング素子で構成された単相H−ブリッジ(bridge)インバータの構造で多数個の電力セルの直列連結を通して中電圧以上の電圧出力を得ることができる。そして、電力セルの数によって出力電圧レベル(level)数が増加するため、正弦波に近い出力電圧波形を得ることができる。即ち、多数個の電力セルの直列連結を通して非常に低いTHDを有する中電圧以上の出力電圧波形を得ることができる。
【0024】
制御器200は、CHBマルチレベルインバータ100の動作を制御することができる。制御器200は、CHBマルチレベルインバータ100で任意の電力セルが故障した場合、相電圧指令とリミッタを利用して計算されたオフセット電圧(または零相分電圧)を注入して三相平衡電圧制御を行うことにより、電力セルの故障時にも正常動作中の電力セルを迂回させず、三相線間出力電圧を平衡に維持させることができる。
【0025】
これにより、CHBマルチレベルインバータ100は、他の相の余裕率を失うことがなく、数個の電力セルの故障時はもちろん、一レッグの全体電力セルの故障時にも線形制御領域内で可能な限り最大の線間電圧を出力することができる。
【0026】
図2は、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータで電力セルの構成を説明するための図である。
【0027】
図2を参照すると、電力セル120は、電力セル入力部121、整流部122、平滑直流端キャパシタ123、単相H−ブリッジインバータ124、迂回コンタクタ(bypass contactor)125を含んで構成される。
【0028】
電力セル入力部121は、三相多巻線変圧器110の出力部と連結される。整流部121は、電力セル入力部121から印加される三相交流電圧を直流電圧に整流(rectification)する。平滑直流端キャパシタ123は、直流端電圧を平滑にする。単相H−ブリッジインバータ124は、単相電圧を出力する。迂回コンタクタ(bypass contactor)125は、電力セルの故障時、該当電力セルを迂回(bypass)させるようにする機能を果たす。迂回コンタクタ125は、正常状態の場合、Aと連結され、電力セル120の故障時、電力セルを迂回させる必要性が存在するとき、迂回コンタクタ125は、Bと連結される。
【0029】
このように、各電力セル120の出力端には、迂回コンタクタ125が取り付けられていることで、該当電力セル120の故障時には該当電力セル120を迂回させ、故障した電力セルの取り替え時間の間、システムが停止することなく連続的な運転が可能となる。
【0030】
図3は、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータで任意の電力セルに故障が発生した時の最大電圧ベクトル図である。
【0031】
図3を参照すると、各相の電力セルの個数が5である状態で、A相電力セルの2つが故障状況であるとき、出力される最大電圧のベクトル図が見られる。部材番号21は、a相の一電力セルの出力電圧値を示す。部材番号22は、b相の一電力セルの出力電圧値を示す。部材番号23は、c相の一電力セルの出力電圧値を示す。従って、線間電圧Vbc、Vab、Vcaがある。
【0032】
三相の相電圧指令をv*as、v*bs、v*csとし、そのオフセット電圧(または零相分電圧)をvsnとすると、極電圧指令v*an、v*bn、v*cnは、相電圧指令とオフセット電圧(または零相分電圧)の和からなり、式(1)のように表され得る。
【数2】
式(1)
【0033】
一方、各相で出力できる最大電圧は、各電力セルの直流端電圧の総和からなり、式(2)のように定義される。
【数3】
式(2)
ここで、Vkdcaは、a相の一電力セルの直流端電圧を意味し、これは、b、c相にも同一である。
【0034】
図4は、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータで各電力セルの直流端電圧の総和を計算する過程を説明するための図である。図4を参照すると、各電力セルに対して電力セルの直流端電圧が測定される(31)。正常動作可能なN個の電力セル電圧が全て足される(32)。
【0035】
即ち、Naは、a相を構成する電力セルの中で正常動作が可能な電力セルの個数を意味し、これは、b、c相にも同様に適用され得る。
【0036】
従って、各相の出力可能な最大極電圧は、式(3)のように表され得る。
【数4】
式(3)
【0037】
即ち、a相の極電圧は、−a相直流端電圧と+a相直流端電圧との間にあるようになり、b相の極電圧は、−b相直流端電圧と+b相直流端電圧との間にあるようになり、c相の極電圧は、−c相直流端電圧と+c相直流端電圧との間にあるようになる。
【0038】
ここで、各直流端電圧の最大値は、三相の相電圧指令とオフセット電圧を足した値の最大値と同一である。
【0039】
従って、任意の電力セルの故障時、各相が出力できる最大極電圧は、全て異なるようになる。式(3)に表された範囲を全て満たすことのできるオフセット電圧を注入する場合、線形制御範囲内で三相平衡である最大の極電圧、即ち、最大の線間電圧を出力できるようになる。
【0040】
各線間電圧の最大値は、各相を構成する電力セルの直流端電圧の和を利用して式(4)のように表され得る。
【数5】
式(4)
【0041】
また、平衡状態の出力可能な線間電圧は、式(5)のように表され得る。
【数6】
式(5)
【0042】
即ち、任意の電力セルが故障した場合、出力可能な線間電圧が全て異なるようになり、三相平衡である線間電圧を出力するためには、式(4)に表された出力可能な線間電圧のうち最小にならなければならない。
【0043】
線間電圧が式(5)のように制限された状態で三相平衡状態である線間電圧を出力するためのオフセット電圧は、下記のように構成される。
【0044】
式(6)のように、各相の電圧指令値がリミッタを過ぎた値を定義することができる。
【数7】
式(6)
ここで、bound関数は、式(7)のように定義された関数である。
【数8】
式(7)
【0045】
即ち、bound(a,b,x)関数は、xがaより小さい場合は、aを出力値とし、xがbより大きい場合は、bを出力値とし、xがa以上、またはb以下である場合は、xを出力値とする関数である。
【0046】
これを利用して、オフセット電圧は、式(8)のように表され得る。
【数9】
式(8)
【0047】
式(8)に表されたようにオフセット電圧を注入する場合、CHBマルチレベルインバータ100は、電力セルの故障時にも最大の三相平衡状態である線間電圧を出力することができる。このようなオフセット電圧計算方法は、正常動作である時も同様に適用される。
【0048】
仮に、電力セルの故障がない場合は、「0」であるオフセット電圧指令を出力して、極電圧指令には相電圧指令だけが含まれる。しかし、任意の電力セルに故障が発生した場合は、相電圧指令にオフセット電圧が含まれた極電圧指令を作るようになる。
【0049】
即ち、式(8)から計算されたオフセット電圧と元来の相電圧指令を足して、式(1)に表された各相の極電圧指令v*an、v*bn、v*cnを作ることができる。
【0050】
図5は、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法を説明するための図である。
【0051】
第1制限器(limiter)211は、a相の相電圧制限器である。第2制限器212は、b相の相電圧制限器である。第3制限器213は、c相の相電圧制限器である。ここで、第1制限器211、第2制限器212、第3制限器213の最大制限値と最小制限値は、図4において計算される出力可能な最大電圧で動作可能な電力セルの直流端電圧の和で示すことができる。
【0052】
従って、第1制限器211の最大値はVadcであり、最小値は−Vadcであり、第2制限器212の最大値はVbdcであり、最小値は−Vbdcであり、第3制限器213の最大値はVcdcであり、最小値は−Vcdcである。この値は、式(2)により求められる。
【0053】
第1演算器214は、a相の相電圧指令と第1制限器211を通過したa相の相電圧指令との間の差を求める。同様に、第2演算器215は、b相の相電圧指令と第2制限器212を通過したb相の相電圧指令との間の差を求める。同様に、第3演算器216は、c相の相電圧指令と第3制限器213を通過したc相の相電圧指令との間の差を求める。
【0054】
第4演算器217は、第1演算器214の演算値と第2演算器215の演算値を累積する。第5演算器218は、第4演算器217の演算値と第3演算器216の演算値を累積する。ここで、第5演算器218の演算値は、オフセット電圧の負(negative)の値で計算される。
【0055】
第6演算器219は、第5演算器218の演算値である負のオフセット値とa相の相電圧指令の差を求め、該当電圧をa相の極電圧指令v*anで出力する。
【0056】
第7演算器220は、第5演算器218の演算値である負のオフセット値とb相の相電圧指令の差を求め、該当電圧をb相の極電圧指令v*bnで出力する。
【0057】
第8演算器221は、第5演算器218の演算値である負のオフセット値とc相の相電圧指令の差を求め、該当電圧をc相の極電圧指令v*cnで出力する。
【0058】
即ち、第6演算器219、第7演算器220、第8演算器221の演算は、式(1)に表されている。
【0059】
図7は、CHBマルチレベルインバータの各相に印加される極電圧指令が各電力セルに伝達されることを説明するための図である。
【0060】
図7を参照すると、極電圧(pole voltage)指令は、制御器200から印加され、v*an、v*bn、v*cnで表される。極電圧指令は、相電圧指令とオフセット電圧または零相分電圧の和で示される。
【0061】
PWMモジュール230、240、250は、極電圧指令の印加を受けてパルス幅制御(Pulse Width Modulation:PWM)を通してスイッチング制御信号
【数10】
を生成し、各電力セルに出力する。
【0062】
図6は、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの極電圧指令からのスイッチング制御信号生成を説明するための図である。
【0063】
このとき、極電圧指令をv*xyに代表して表示すると、PWMモジュール230、240、250は、極電圧指令v*xyと直流端電圧Vdcの三角波と比較してスイッチング制御信号
【数11】
を生成し、各電力セルに出力する。
【0064】
より具体的に、PWMモジュール230、240、250は、極電圧指令v*xyと負の極電圧指令−v*xyをそれぞれ直流端電圧Vdcの三角波と比較し、それぞれの比較結果によってスイッチング制御信号Sa、Sbをそれぞれ生成する。
【0065】
例えば、PWMモジュール230、240、250は、極電圧指令v*xyが直流端電圧Vdcの三角波より大きければ、スイッチング制御信号Saを「1」と生成して各電力セルに出力する。そして、極電圧指令v*xyが直流端電圧Vdcの三角波より大きければ、スイッチング制御信号Saを「0」と生成して各電力セルに出力する。
【0066】
また、PWMモジュール230、240、250は、負の極電圧指令−v*xyが直流端電圧Vdcの三角波より大きければ、スイッチング制御信号Sbを「1」と生成して各電力セルに出力する。そして、負の極電圧指令−v*xyが直流端電圧Vdcの三角波より大きければ、スイッチング制御信号Sbを「0」と生成して各電力セルに出力する。
【0067】
以後、PWMモジュール230、240、250は、生成されたスイッチング制御信号Sa、Sbとそれぞれ相補的(complementary)関係を有する
【数12】
を生成して各電力セルに出力する。
【0068】
PWMモジュール230、240、250から出力されるスイッチング制御信号
【数13】
によって、各電力セル内に備えられているスイッチング素子のオン/オフが決定される。
【0069】
図8は、本発明の一実施例に係るCHBマルチレベルインバータの三相平衡電圧制御方法を説明するための図である。
【0070】
図8を参照すると、制御器200は、CHBマルチレベルインバータ100の各電力セル120の状態を感知して故障有無を判別する(S1)。
【0071】
制御器200は、故障が感知された電力セル120に対して迂回動作を行い、正常動作を行う電力セル120を各相別に連結して回路を構成する(S2)。
【0072】
制御器200は、各相を構成する正常動作状態の電力セルの直流端電圧の和をそれぞれ算出する(S3)。ここで、各電力セルの直流端電圧の総和は、各相別に出力可能な最大電圧となる。これによって、a相の出力可能な最大電圧と、b相の出力可能な最大電圧と、c相の出力可能な最大電圧が算出される。ここで算出されたそれぞれの直流端電圧の和が、バウンド(bound)関数の最大値及び最小値に設定される。
【0073】
制御器200は、各相の相電圧指令をバウンド関数に入力し、バウンド関数の出力値をそれぞれ出力する(S4)。バウンド関数の出力値は、各相の相電圧指令がバウンド関数の最大値及び最小値により制限された値である。
【0074】
a相の相電圧指令がバウンド関数に入力され、バウンド関数の出力値でa相の制限された相電圧指令が算出される。同様に、b相の相電圧指令がバウンド関数に入力され、バウンド関数の出力値でb相の制限された相電圧指令が算出される。同様に、c相の相電圧指令がバウンド関数に入力され、バウンド関数の出力値でa相の制限された相電圧指令が算出される。
【0075】
制御器200は、各相の相電圧指令と、それぞれのバウンド関数出力値の差値をそれぞれ算出する(S5)。
【0076】
これによって、a相の相電圧指令と、制限されたa相の相電圧指令の差を求めて第1値が出力される。同様に、b相の相電圧指令と、制限されたb相の相電圧指令の差を求めて第2値が出力される。同様に、c相の相電圧指令と、制限されたc相の相電圧指令の差を求めて第3値が出力される。
【0077】
制御器200は、算出されたそれぞれの差値を累積してオフセット電圧値で出力する(S6)。即ち、各相の相電圧指令と、制限された各相の相電圧指令の差から算出された値を累積してオフセット電圧値が算出される。これによって、第1値に第2値と第3値が累積される。
【0078】
制御器200は、各相の相電圧指令と算出されたオフセット電圧値をそれぞれ足して各相の極電圧指令を算出する(S7)。これによって、a相の相電圧指令とオフセット電圧値を足してa相の極電圧指令が算出される。同様に、b相の相電圧指令とオフセット電圧値を足してb相の極電圧指令が算出される。同様に、c相の相電圧指令とオフセット電圧値を足してc相の極電圧指令が算出される。
【0079】
制御器200は、このように算出された各相別の極電圧指令をパルス幅制御(Pulse Width Modulation:PWM)を通してスイッチング制御信号を生成し、各電力セルに出力する(S8)。
【0080】
このように、CHBマルチレベルインバータ100で任意の電力セルが故障した場合、相電圧指令とリミッタを利用して計算されたオフセット電圧(または零相分電圧)を注入して三相平衡電圧制御を行うことにより、電力セルの故障時にも正常動作中の電力セルを迂回させず、三相線間出力電圧を平衡に維持させることができる。
【0081】
これによって、CHBマルチレベルインバータ100は、他の相の余裕率を失うことがなく、数個の電力セルの故障時はもちろん、一レッグの全体電力セルの故障時にも線形制御領域内で可能な限り最大の線間電圧を出力することができる。
【0082】
以上において、本発明に係る実施例が説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、これより様々な変形及び均等な範囲の実施例が可能であるという点が理解できるだろう。従って、本発明の正しい技術的保護範囲は、下記の特許請求の範囲により定められるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8