(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276368
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】力率改善コンバータ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20180129BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02M3/155 H
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-223048(P2016-223048)
(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公開番号】特開2017-112822(P2017-112822A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2016年11月16日
(31)【優先権主張番号】104142023
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514173696
【氏名又は名称】國家中山科學研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】呉祈陞
(72)【発明者】
【氏名】游國輝
(72)【発明者】
【氏名】江▲ゲン▼樟
(72)【発明者】
【氏名】戴滄禮
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/061653(WO,A1)
【文献】
特開2003−189601(JP,A)
【文献】
特表2002−522003(JP,A)
【文献】
特開平04−211813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力率改善コンバータに交流入力信号を入力し、また前記交流入力信号を直流信号に変換し、更に前記直流信号に対し力率改善を行うことで、バックエンド負荷に入力される力率を変更する力率改善コンバータの制御方法であって、前記力率改善コンバータは、整流回路と力率改善回路と制御回路とリップル計算回路とパルス幅変調回路とを含み;該制御方法は、前記整流回路を介して前記交流入力信号を整流することで、直流信号を生成する整流ステップと、前記バックエンド負荷に接続する前記制御回路を通じて帰還電圧信号と帰還インダクタ電流信号とを包括し、且つ2次側リップル信号を有する帰還出力信号を生成する帰還ステップと、前記リップル計算回路を通じて、前記交流入力信号を直流入力信号に変換することで、前記直流入力信号内にある2次側リップル信号の数値を計算するリップル計算ステップと、前記制御回路が、前記リップル計算ステップにて計算された前記2次側リップル信号の数値により、前記帰還出力信号内の2次側リップル信号を差し引き、また2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を生成するリップル相殺ステップと、前記2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を論理演算することで、制御信号を生成する論理演算ステップと、前記制御信号を前記パルス幅変調回路に入力することで、パルス幅変調信号を生成するパルス幅変調ステップと、前記パルス幅変調信号により前記力率改善回路に前記整流ステップ内で生成した前記直流信号に対し力率改善を行わせる力率改善ステップと、を含む力率改善コンバータの制御方法。
【請求項2】
前記リップル計算回路は、位相同期ループモジュールと積分器と乗算器と増幅器とを含み、前記リップル計算ステップ内において、前記2次側リップル信号の数値を計算するため、前記交流入力信号が前記位相同期ループモジュール、該積分器、該乗算器及び該増幅器の順番通り経由して論理演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の力率改善コンバータの制御方法。
【請求項3】
前記制御回路は、コンパレータと電圧誤差増幅器と乗算器と除算器と電流誤差増幅器とを含み、前記論理演算ステップが第1論理演算ステップと第2論理演算ステップとを更に含み、前記第1論理演算ステップにおいて、前記2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号が基準電圧信号と一緒に前記コンパレータ、前記電圧誤差増幅器、前記乗算器及び前記除算器の順番通り経由して論理演算を行うことで、電流コマンド信号を生成し;前記第2論理演算ステップにおいて、該電流コマンド信号は、前記帰還インダクタ電流信号と一緒に前記電流誤差増幅器、前記パルス幅変調回路の順番通り経由して論理演算を行うことで前記パルス幅変調信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の力率改善コンバータの制御方法。
【請求項4】
前記整流ステップを行う前、電磁障害フィルタを通じて、前記交流入力信号の電磁ノイズを抑制するフィルタリングステップを更に含むことを特徴とする請求項3に記載の力率改善コンバータの制御方法。
【請求項5】
前記整流回路は、ブリッジ式整流器で、前記力率改善回路が昇圧型回路アーキテクチャとすることを特徴とする請求項1に記載の力率改善コンバータの制御方法。
【請求項6】
交流入力信号を受信し、また該交流入力信号を整流することで直流信号を生成するために用いられる整流回路と、前記整流回路に接続し、また前記直流信号に対し力率改善を行うことでバックエンド負荷に入力される力率を変更する力率改善モジュールとを含む力率改善コンバータであって、前記力率改善モジュールは、少なくとも1個のインダクタと1個のスイッチング素子とを包括する力率改善回路と、前記バックエンド負荷に接続することで、帰還電圧信号と帰還インダクタ電流信号とを包括し、且つ2次側リップル信号を有する帰還出力信号を生成する制御回路と、前記制御回路と前記バックエンド負荷に接続し、受信した前記交流入力信号により前記交流入力信号を直流入力信号に変換することで、前記直流入力信号内にある2次側リップル信号の数値を算出し、前記制御回路が前記算出した2次側リップル信号の数値により、前記帰還出力信号内の前記2次側リップル信号を差し引くことで、制御信号を生成するリップル計算回路と、前記制御回路と前記力率改善回路に接続し、前記制御信号を受信してパルス幅変調信号を生成することで、前記力率改善回路内の前記スイッチング素子の切替を制御するパルス幅変調回路と、を含むことを特徴とする力率改善コンバータ。
【請求項7】
前記制御回路は、コンパレータと電圧誤差増幅器と乗算器と除算器と電流誤差増幅器と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の力率改善コンバータ。
【請求項8】
前記制御回路は、前記算出した2次側リップル信号の数値を通じて、前記帰還出力信号内の2次側リップル信号を差し引き、また2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を生成し、前記2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号は基準電圧信号と一緒に前記コンパレータ、前記電圧誤差増幅器、前記乗算器及び前記除算器の順番通り経由して論理演算を行うことで、電流コマンド信号を生成し、前記電流コマンド信号が前記帰還インダクタ電流信号と一緒に前記電流誤差増幅器、前記パルス幅変調回路の順番通り経由して論理演算を行うことで、前記パルス幅変調信号を生成することを特徴とする請求項7に記載の力率改善コンバータ。
【請求項9】
前記リップル計算回路は、位相同期ループモジュールと積分器と乗算器と増幅器とを含み、前記2次側リップル信号の数値を計算するため、前記交流入力信号が前記位相同期ループモジュール、前記積分器、前記乗算器及び前記増幅器の順番通り経由して論理演算を行うことを特徴とする請求項8に記載の力率改善コンバータ。
【請求項10】
前記交流入力信号を受信し、また前記整流回路に接続することで、前記交流入力信号の電磁ノイズを抑制するための電磁障害フィルタを更に含むことを特徴とする請求項9に記載の力率改善コンバータ。
【請求項11】
前記整流回路は、ブリッジ式整流器で、前記力率改善回路が昇圧型回路アーキテクチャとすることを特徴とする請求項6に記載の力率改善コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源コンバータ及びその制御方法に関し、特に、力率改善コンバータ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷は、電力供給装置にとって、抵抗のインピーダンス、インダクタンスのインピーダンス、キャパシタンスのインピーダンス又はその組み合わせとして表現する場合がある。負荷に入力される電流と負荷に印加される電圧が同一の場合、力率が1に近づく。力率が1より小さい時、伝送する電力が電流と電圧の間の位相が不一致又はノイズの流入により損失する可能性がある。従来、公共電力システムの交流電源を直流電圧に変換する時、大容量のコンデンサを並列に接続する方式によって直流リンク(DC Bus)電圧の2次側リップル成分を低下することで、後置電圧変換器に比較的安定した直流リンク電圧を供給する。ただしこの回路の電流の歪み程度が非常に大きく且つ大量の高調波成分を含有し、力率の低下が起きる。ノイズを下げると共に効率を上げるため、電力供給装置内に通常アクティブ方式の力率改善(PFC)回路を配置している。アクティブ方式の力率改善回路は、パワースイッチの高周波切替を利用して交流入力電流が交流入力電圧にトラッキングさせることで、正弦波形に近づけ且つ位相が同じ入力電流を得て、従って力率を上げ、電流の高調波を下げる。
【0003】
一般的な昇圧方式のPFC回路は、デュアルループで制御し、電流制御ループを利用して変換器の入力インピーダンスという抵抗を見せ、電圧制御ループが主に出力電圧を調整するためのものである。力率は出力電圧上の120Hzのリップル影響を受けるため、電圧ループの補償は出力電圧の安定を考慮する以外に、出力電圧リップルによる高調波歪みを減らす必要もある。よって入力電流の歪みを避けるため、従来の方法は電圧ループの帯域幅を20Hz程度か、更に低く設計するが、この方法はシステムの負荷変動に対する過渡応答が遅くなる。負荷変動の過渡応答を加速する場合、電圧ループの帯域幅を広げる必要があるが、こうすると入力電流の波形に著しく歪みを与える。そのため両者に配慮することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、PFC電圧ループの応答速度を速く、同時に入力電流の低歪み率を保有することで、バックエンド負荷に入力される力率を上げることである。
【0005】
本発明の別の目的は、PFC回路出力の直流リンク静電容量を下げることで、コストを削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的及び他の目的を達成するため、本発明は力率改善コンバータに交流信号を入力し、また該交流信号を直流信号に変換し、更に該直流信号に対し力率改善を行うことで、バックエンド負荷に入力される力率を変更する力率改善コンバータの制御方法を提供する。前記力率改善コンバータは、整流回路と力率改善回路と制御回路とリップル計算回路とパルス幅変調回路とを含む。該制御方法は、該整流回路を介して該交流入力信号を整流することで、直流信号を生成する整流ステップと、該バックエンド負荷に接続する該制御回路を通じて帰還電圧信号と帰還インダクタ電流信号とを包括し、且つ2次側リップル信号を有する帰還出力信号を生成する帰還ステップと、該リップル計算回路を通じて、該交流入力信号を直流入力信号に変換することで、該直流入力信号内にある2次側リップル信号の数値を計算するリップル計算ステップと、該制御回路が該算出した2次側リップル信号の数値により、該帰還出力信号内の2次側リップル信号を差し引き、また2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を生成するリップル相殺ステップと、該2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を論理演算することで、制御信号を生成する論理演算ステップと、該制御信号を該パルス幅変調回路に入力することで、パルス幅変調信号を生成するパルス幅変調ステップと、該パルス幅変調信号により力率改善回路に該整流ステップ内で生成した該直流信号に対し力率改善を行わせる力率改善ステップと、を含む。
【0007】
本発明の一実施例において、該リップル計算回路は、位相同期ループモジュールと積分器と乗算器と増幅器とを含み、該リップル計算ステップ内において、該2次側リップル信号の数値を計算するため、該交流入力信号が該位相同期ループモジュール、該積分器、該乗算器及び該増幅器の順番通り経由して論理演算を行う。
【0008】
本発明の一実施例において、該制御回路は、コンパレータと電圧誤差増幅器と乗算器と除算器と電流誤差増幅器とを含み、該論理演算ステップが第1論理演算ステップと第2論理演算ステップとを更に含み、該第1論理演算ステップにおいて、該2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号が基準電圧信号と一緒に該コンパレータ、該電圧誤差増幅器、該乗算器及び該除算器の順番通り経由して論理演算を行うことで、電流コマンド信号を生成する。該第2論理演算ステップにおいて、該電流コマンド信号は、該帰還インダクタ電流信号と一緒に該電流誤差増幅器、該パルス幅変調回路の順番通り経由して論理演算を行うことで該パルス幅変調信号を生成する。
【0009】
本発明の一実施例において、該整流ステップを行う前、電磁障害フィルタを通じて、該交流入力信号の電磁ノイズを抑制するフィルタリングステップを更に含む。
【0010】
本発明の一実施例において、該整流回路は、ブリッジ式整流器で、該力率改善回路が昇圧型回路アーキテクチャとする。
【0011】
上記目的及び他の目的を達成するため、本発明は、交流入力信号を受信し、また該交流入力信号を整流することで直流信号を生成するために用いられる整流回路と、該整流回路に接続し、また該直流信号に対し力率改善を行うことでバックエンド負荷に入力される力率を変更する力率改善モジュールとを含む力率改善コンバータを更に提供する。前記力率改善モジュールは、少なくとも1個のインダクタと1個のスイッチング素子とを包括する力率改善回路と、該バックエンド負荷に接続することで、帰還電圧信号と帰還インダクタ電流信号とを包括し、且つ2次側リップル信号を有する帰還出力信号を生成する制御回路と、該制御回路と該バックエンド負荷に接続し、受信した該交流入力信号により該交流入力信号を直流入力信号に変換することで、該直流入力信号内にある2次側リップル信号の数値を算出し、前記制御回路が該算出した2次側リップル信号の数値により、該帰還出力信号内の2次側リップル信号を差し引くことで、制御信号を生成するリップル計算回路と、該制御回路と該力率改善回路に接続し、該制御信号を受信してパルス幅変調信号を生成することで、該力率改善回路内の該スイッチング素子の切替を制御するパルス幅変調回路と、を含む。
【0012】
本発明の一実施例において、該制御回路は、コンパレータと電圧誤差増幅器と乗算器と除算器と電流誤差増幅器と、を含む。
【0013】
本発明の一実施例において、該制御回路は、該算出した2次側リップル信号の数値を通じて、該帰還出力信号内の2次側リップル信号を差し引き、また2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を生成し、該2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号は基準電圧信号と一緒に該コンパレータ、該電圧誤差増幅器、該乗算器及び該除算器の順番通り経由して論理演算を行うことで、電流コマンド信号を生成し、該電流コマンド信号が該帰還インダクタ電流信号と一緒に該電流誤差増幅器、該パルス幅変調回路の順番通り経由して論理演算を行うことで、該パルス幅変調信号を生成する。
【0014】
本発明の一実施例において、該リップル計算回路は、位相同期ループモジュールと積分器と乗算器と増幅器とを含み、該2次側リップル信号の数値を計算するため、該交流入力信号が該位相同期ループモジュール、該積分器、該乗算器及び該増幅器の順番通り経由して論理演算を行う。
【0015】
本発明の一実施例において、該交流入力信号を受信し、また該整流回路に接続することで、該交流入力信号の電磁ノイズを抑制するための電磁障害フィルタを更に含む。
【0016】
本発明の一実施例において、該整流回路は、ブリッジ式整流器で、該力率改善回路が昇圧型回路アーキテクチャとする。
【発明の効果】
【0017】
よって、本発明は、帰還信号内の二次リップル成分の除去を通じて力率改善コンバータの応答速度を速くすると共に電流歪み率を下げることで、バックエンド負荷に入力される力率を上げる効果を奏することができる。これ以外に、本発明はPFC回路出力の直流リンク静電容量を下げることによって、コスト削減の効果を奏することができる。
【0018】
以上の概要と次の詳細な説明及び添付図面は、いずれも本発明が予定目的を達成するために採用する方式、手段及び効果を更に説明するためのものである。本発明の他の目的及び利点について、後記の説明及び図面内で記述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来の力率改善コンバータの回路を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る力率改善コンバータのブロック図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る力率改善コンバータの制御方法の流れを示す模式図である。
【
図4】本発明の別の実施例に係る力率改善コンバータの制御方法の流れを示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る率改善コンバータの回路を示す模式図である。
【
図6】
図1の回路を示す模式図に基づいて得た入力と出力信号のシミュレーション結果である。
【
図7】
図5の回路を示す模式図に基づいて得た入力と出力信号のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、特定の具体的実施例を通じて本発明の実施形態を説明し、当業者は本明細書に開示されている内容から本発明その他の利点及び効果を容易に理解できる。
【0021】
図1は、従来の力率改善(PFC)コンバータの回路を示す模式図で、
図5が本発明の一実施例に係る力率改善コンバータの回路を示す模式図である。
図1及び
図5を参照すると、本実施例において、帰還直流リンク電圧の二次リップル成分を除去するため、主に従来の力率改善コンバータ内にリップル計算回路7を加える。
【0022】
一実施例において、本発明は力率改善コンバータ100を提供し、
図2と
図5を参照すると、該力率改善コンバータは、整流回路2と力率改善モジュール8とを含み、前記整流回路2が交流入力信号1を受信し、また該交流入力信号1を整流することで直流信号を生成するために用いられ、該力率改善モジュール8が該整流回路2に接続し、また該直流信号に対し力率改善を行うことでバックエンド負荷4に入力した力率を変更する。
【0023】
上記実施例において、該力率改善モジュール8は、力率改善回路3と制御回路6とリップル計算回路7とパルス幅変調回路5とを含む。前記力率改善回路3は、少なくとも1個のインダクタ31と1個のスイッチング素子32とを包括する。該制御回路は、該バックエンド負荷4に接続することで、帰還電圧信号v
dと帰還インダクタ電流信号I
sとを包括し、且つ2次側リップル信号を有する帰還出力信号を生成する。該リップル計算回路7は、該制御回路6と該バックエンド負荷4に接続し、受信した該交流入力信号1により該交流入力信号1を直流入力信号に変換することで、該直流入力信号内にある2次側リップル信号の数値を算出し、前記制御回路6が該算出した2次側リップル信号の数値により、該帰還出力信号内の2次側リップル信号を差し引き、また2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号v
dfbを生成し、該2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号v
dfbが、更にその後の論理演算を経た後、制御信号V
conを生成する。パルス幅変調回路5は、該制御回路6と該力率改善回路3に接続し、該制御信号V
conを受信してパルス幅変調信号を生成することで、該力率改善回路3内の該スイッチング素子32の切替を制御する。
【0024】
一実施例において、該制御回路6は、コンパレータ61と電圧誤差増幅器62と乗算器63と除算器64と電流誤差増幅器65とを含む。該2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号v
dfbは基準電圧信号V
d*と一緒に該コンパレータ61、該電圧誤差増幅器62、該乗算器63及び該除算器64の順番通り経由して論理演算を行うことで、電流コマンド信号I
s*を生成し、該電流コマンド信号I
s*が該帰還インダクタ電流信号I
sと一緒に該電流誤差増幅器65、該パルス幅変調回路5の順番通り経由して論理演算を行うことで、該パルス幅変調信号を生成する。
【0025】
一実施例において、該リップル計算回路7は、位相同期ループモジュール71と積分器72と乗算器73と増幅器74とを含み、該2次側リップル信号の数値を計算するため、該交流入力信号1が該位相同期ループモジュール71、該積分器72、該乗算器73及び該増幅器74の順番通り経由して論理演算を行う。
【0026】
一実施例において、該交流入力信号1を受信し、また該整流回路2に接続することで、該交流入力信号1の電磁ノイズを抑制するための電磁障害フィルタ(図示せず)を更に含む。
【0027】
一実施例において、該整流回路2は、ブリッジ式整流器で、該力率改善回路3が昇圧型回路アーキテクチャとする。
【0028】
図2は、本発明の一実施例に係る力率改善コンバータのブロック図で、
図3が本発明の一実施例に係る力率改善コンバータの制御方法の流れを示す模式図である。
図2と
図3を参照すると、本実施例内で提供する力率改善コンバータの制御方法は、力率改善コンバータ100に交流信号1を入力し、また該交流信号1を直流信号に変換し、更に該直流信号に対し力率改善を行うことで、バックエンド負荷4に入力される力率を変更する。該力率改善コンバータ100は、整流回路2と力率改善回路3と制御回路6とリップル計算回路7とパルス幅変調回路5とを含む。該制御方法は、該整流回路2を介して該交流入力信号1を整流することで、直流信号を生成する整流ステップS1と、該バックエンド負荷4に接続する該制御回路6を通じて帰還電圧信号と帰還インダクタ電流信号とを包括し、且つ2次側リップル信号を有する帰還出力信号を生成する帰還ステップS2と、該リップル計算回路7を通じて、該交流入力信号1を直流入力信号に変換することで、該直流入力信号内にある2次側リップル信号の数値を算出するリップル計算ステップS3と、該制御回路6が該算出した2次側リップル信号の数値により、該帰還出力信号内の2次側リップル信号を差し引き、また2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を生成するリップル相殺ステップS4と、該2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号を論理演算することで、制御信号を生成する論理演算ステップS5と、該制御信号を該パルス幅変調回路5に入力することで、パルス幅変調信号を生成するパルス幅変調ステップS6と、該パルス幅変調信号により力率改善回路3に該整流ステップS1内で生成した該直流信号に対し力率改善を行わせる力率改善ステップS7と、を含む。
【0029】
図5は、本発明の一実施例に係る率改善コンバータの回路を示す模式図である。一実施例において、
図5に示されるように、該リップル計算回路7は、位相同期ループモジュール71と積分器72と乗算器73と増幅器74とを含み、該リップル計算ステップS3内において、該交流入力信号1が該位相同期ループモジュール71を経由してcos2ωt信号(入力電圧の位相がsinωtと仮定)を得てからこのcos2ωt信号を該積分器72及び該増幅器74を通じて調整した後、直流電圧の2次側リップル信号v
dffを得る。更に実際に帰還された直流リンク電圧v
dと該2次側リップル信号v
dff相を減算することで、電圧誤差増幅器62に入る帰還信号v
dfbに2次側リップル信号を有させず、積分器72の時間定数は二次リップル周波数より遥かに高く設定できるため、本発明が提供する方法は電圧回路の設計の時、該二次リップルの制限を受けない。
【0030】
図4は、本発明の別の実施例に係る力率改善コンバータの制御方法の流れを示す模式である。
図3、
図4及び
図5を参照すると、一実施例において、該制御回路6は、コンパレータ61と電圧誤差増幅器62と乗算器63と除算器64と電流誤差増幅器65とを含み、該論理演算ステップが第1論理演算ステップS51と第2論理演算ステップS52とを更に含み、該第1論理演算ステップS51において、該2次側リップル信号を有しない帰還電圧信号v
dfbが基準電圧信号V
d*と一緒に該コンパレータ61、該電圧誤差増幅器62、該乗算器63及び該除算器64の順番通り経由して論理演算を行うことで、電流コマンド信号I
s*を生成する。該第2論理演算ステップS52において、該電流コマンド信号I
s*は、該帰還インダクタ電流信号Isと一緒に該電流誤差増幅器65、該パルス幅変調回路5の順番通り経由して論理演算を行うことで該パルス幅変調信号を生成する。
【0031】
一実施例において、該整流ステップS1を行う前、先にフィルタリングステップ(図示せず)を行うこともでき、該交流入力信号を電磁障害フィルタに入力することで、該交流入力信号1の電磁ノイズを抑制する。
【0032】
上記実施例において、例を挙げると、該整流回路2は、ブリッジ式整流器とすることができ、該力率改善回路3が昇圧型回路アーキテクチャを採用できる。
【0033】
図6は、
図1の回路を示す模式図に基づいて得た入力と出力信号のシミュレーション結果である。該シミュレーション結果は、出力静電容量C
oが1000μFの状態において、負荷が500Wから1kWに変化するシミュレーション結果である。
図7は、
図5の回路を示す模式図に基づいて得た入力と出力信号のシミュレーション結果である。該シミュレーション結果は、出力静電容量C
oが500μFの状態において、負荷が500Wから1kWに変化するシミュレーション結果である。
【0034】
他のシミュレーションパラメータは均しく同一条件において、
図1の回路を示す模式図内にリップル計算回路7を加えて
図5の回路を示す模式図を形成し、また本発明が提供する制御方法を通じるだけで、二次リップル成分を非常に低く下げることができる。
図6及び
図7を参照すると、
図6は従来の力率改善コンバータを利用した制御方法が、比較的大きな出力コンデンサ(1000μF)を並列に接続したとしても、出力電圧の応答速度がやはり非常に遅く、回復時間が約40msであることを示している。
図7は、本発明の力率改善コンバータを利用した制御方法が比較的小さい出力コンデンサ(500μF)を並列に接続したとしても、帰還電圧(v
dfb)の二次リップル成分を非常に低く下げ、且つ出力電圧の応答速度も比較的速く、回復時間が約10msであることを示している。これ以外に、シミュレーションファームウェアの分析を経たところ、
図6内の電流歪み率(THD)が1kWの時に8.2%で、
図7内の電流歪み率(THD)が1kWの時わずか2.2%であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
従来技術と比べると、本発明の力率改善(PFC)コンバータ及びその制御方法は、主に従来のPFCコンバータに1個のリップル計算回路を加え、該リップル計算回路で計算した二次リップル数値を通じて帰還直流リンク電圧の二次リップル成分を除去することで、従来のPFC制御回路における二次リップルが帯域幅を制限する欠点を改善し、従ってPFC回路の応答速度を速くすると共に電流歪み率を下げる。このほかに、本発明は、PFC回路出力の直流リンク静電容量を下げることで、コスト削減の効果を奏することができる。
【0036】
上記実施例は、あくまでも本発明の特徴及び効果を明らかにするものであって、本発明の実質的技術内容の範囲を限定することではない。当業者は均しく本発明の精神及び範疇から外れることなく上記実施例を修飾と変化できる。よって、本発明の権利保護範囲は、後記の特許請求事項の範囲内に記載されている通りとする。
【符号の説明】
【0037】
1 交流信号
2 整流回路
3 力率改善回路
4 負荷
5 パルス幅変調回路
6 制御回路
7 リップル計算回路
8 力率改善モジュール
31 インダクタンス
32 スイッチング素子
61 コンパレータ
62 電圧誤差増幅器
63 乗算器
64 除算器
65 電流誤差増幅器
71 位相同期ループモジュール
72 積分器
73 乗算器
74 増幅器
100 力率改善コンバータ
K
v ゲイン
K
s ゲイン
S1 整流ステップ
S2 帰還ステップ
S3 リップル計算ステップ
S4 リップル相殺ステップ
S5 論理演算ステップ
S6 パルス幅変調ステップ
S7 力率改善ステップ
S51 第1論理演算ステップ
S52 第2論理演算ステップ