特許第6276377号(P6276377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276377
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】開放時間が延長された水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20180129BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 22/16 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 22/12 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 24/10 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20180129BHJP
   C04B 103/14 20060101ALN20180129BHJP
   C04B 103/24 20060101ALN20180129BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B24/06 A
   C04B22/08 Z
   C04B22/16 A
   C04B22/12
   C04B22/08 B
   C04B22/14 A
   C04B22/06 Z
   C04B22/10
   C04B22/08 A
   C04B24/12 A
   C04B24/38 B
   C04B24/10
   C04B24/04
   C04B103:14
   C04B103:24
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-501900(P2016-501900)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-511217(P2016-511217A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】US2014025631
(87)【国際公開番号】WO2014151388
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】61/787,219
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591223105
【氏名又は名称】ハーキュリーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート アドルフ ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ハッコー
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー アドルフ キンドラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ ルイーズ ナイルズ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ワンダーリッヒ
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−235361(JP,A)
【文献】 特開2006−265083(JP,A)
【文献】 特開平04−342450(JP,A)
【文献】 特開平09−255390(JP,A)
【文献】 特表2010−528972(JP,A)
【文献】 特開2002−332483(JP,A)
【文献】 特開平02−293363(JP,A)
【文献】 特表2011−516707(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0169183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
C04B 103/14
C04B 103/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マンガン、ポリリン酸リチウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのセメント遅延剤と
オシアン酸ナトリウムである促進剤と、
を含む開放時間が延長された水硬性組成物。
【請求項2】
セルロースエーテルをさらに含む請求項に記載の水硬性組成物。
【請求項3】
前記セルロースエーテルがアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マンガン、ポリリン酸リチウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのセメント遅延剤と、
オシアン酸ナトリウムである促進剤と、
を含むドライセメントモルタル。
【請求項5】
前記セメント遅延剤がドライセメントモルタルの総重量に対して0.001〜0.5重量%の範囲内である、請求項に記載のドライセメントモルタル。
【請求項6】
前記セメント遅延剤がドライセメントモルタルの総重量に対して0.005〜0.3重量%の範囲内である、請求項に記載のドライセメントモルタル。
【請求項7】
前記セメント遅延剤がドライセメントモルタルの総重量に対して0.01〜0.05重量%の範囲内である、請求項に記載のドライセメントモルタル。
【請求項8】
前記促進剤がドライセメントモルタルの総重量に対して0.01〜1重量%の範囲内である、請求項に記載のドライセメントモルタル。
【請求項9】
前記促進剤がドライセメントモルタルの総重量に対して0.05〜0.5重量%の範囲内である、請求項に記載のドライセメントモルタル。
【請求項10】
前記促進剤がドライセメントモルタルの総重量に対して0.1〜0.3重量%の範囲内である、請求項に記載のドライセメントモルタル。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の水硬性組成物、および任意の成分を混合するステップ、ならびに
加工に必要な量の水を前記水硬性組成物、および前記任意の成分の混合物に添加混合するステップ
を含むセメント系タイル接着剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119(e)条に基づき、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/787,219号の優先権を主張し、その全内容はここで本明細書に参照により明示的に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
1.本出願において開示および特許請求される本発明の概念の分野
本出願において開示および特許請求される本発明の概念は、一般的には開放時間が延長された水硬性組成物に関する。より具体的には、その組成物は、少なくとも1つのセメント遅延剤および少なくとも1つの促進剤を含む。本出願において開示および特許請求される本発明の概念はさらに、加工性、硬化時間、強度発現および耐タレ性のような他のセメントタイル接着特性の低下なく、開放時間が延長された水硬性組成物を含むドライモルタル組成物に関する。
【0003】
2.本出願において開示および特許請求される本発明の概念の背景および適用可能な態様
美しい外観、設置のしやすさ、衛生特性、建物の洗浄、維持および管理のしやすさ、等のため、建物の施工の仕上げ材料としてタイルが長く用いられてきた。
【0004】
従来のセメント系タイル接着剤(CTA)は、セメントおよび砂の単純な乾燥混合物であった。乾燥混合物を水と混合し、ウェットモルタルを形成する。これらの従来のモルタルは、それ自体では、流動性またはコテ塗り施工性に乏しい。結果として、これらのモルタルの塗布は労働集約的である。
【0005】
さらに、水分の空気中への蒸発およびCTAが塗布される多孔性基板による水分の吸収により、ウェットモルタル中の水分は、時間とともに枯渇する。結果として、モルタル中に十分な水分が残らず、開放時間、修正時間が非常に短くなり、さらには基板への接着に問題が生じる。また、セメントの適切な水和のための十分な水分の不足はCTAの不十分かつ不完全な強度発現を引き起こす。
【0006】
最近では、一般的に、蒸発および基板の吸収による水分損失を低減するため、モルタルにセルロースエーテルが添加される。セルロースエーテルは保水性をもたらし、よって水分損失は大幅に低減されるが、完全には防止されない。しかしながら、一定の加工性、許容可能な修正および開放時間、ならびにとくに適切な強度発現がもたらされる。
【0007】
モルタルの開放時間は、塗布したモルタルにまだタイルを配置することができ、タイル接着剤でのタイルの十分なぬれが確保される時間である。開放時間の終わりは、タイルの裏側のCTAの不十分なぬれにより示される。開放時間は、乾燥だけでなくセメントの硬化に関する他の化学および物理反応、ならびにセルロースエーテルおよび再分散性ポリマー粉末のような他の用いられる添加剤の効果により限定される。
【0008】
有機および/または無機セメント水和遅延剤をセメントモルタルに添加することにより開放時間を延長させる方法は広く用いられてきた。遅延剤の添加により水和反応は減速または遅延される。結果としてモルタルの硬化が変化し、開放時間が延長される。
【0009】
硬化時間は、ASTM C266−65において定義される。基本的には、硬化時間とは、モルタルが所定の粘度で硬化するのにかかる時間である。モルタルまたはコンクリートのようなセメント系水硬性組成物を用いる施工には、加工性の確保、施工時間の短縮および硬化設備の簡素化の観点から、硬化時間の制御が望まれる。施工時間を短縮するためのとくに硬化促進効果に対する要求の増加に伴い、高い硬化促進効果を有する硬化促進剤が開発された。
【0010】
セメント水和反応および結果として硬化時間の遅延は、一般的には強度発現の低下を伴う。一般的には、セメント水和が遅くなると、すなわち、硬化時間が長くなると、水分損失およびよって強度発現不足のリスクが高くなる。
【0011】
セメント系タイル接着剤がセメント遅延剤の添加により長い開放時間を有する場合、長い開放時間が構築される。しかしながら、硬化時間が望ましくなく延長される。したがって、長い開放時間とともに同程度の硬化時間を有するセメント系タイル接着剤のニーズがある。
【発明の概要】
【0012】
驚くべきことに、セメント硬化遅延を補正するため促進剤が添加される場合、セメント遅延剤の使用による開放時間の増加は逆転されないことが見出された。遅延剤−促進剤の組み合わせは、組み合わせにより遅延剤単独の場合と比較してより長い開放時間を有することもできることを意味する、相乗効果を生み出すことができることも見出された。
【0013】
[発明の詳細な説明]
本発明の概念の少なくとも1つの実施形態について、例となる図面、実験、結果、および実験室手順により詳細に説明する前に、本発明の概念は、その用途において以下の説明に記載または図面、実験および/もしくは結果に例示される施工の詳細および要素の配置に限定されないことが理解されるべきである。本発明の概念は、他の実施形態または各種方法での実施が可能である。そのようなものとして、本明細書において用いられる用語は、考えられるもっとも広い範囲および意味を与えられることを意図し、実施形態は網羅的ではなく例示的であることを意図する。また、本明細書において用いられる表現および用語は説明を目的とし、限定的とみなされるべきでないことが理解されるべきである。
【0014】
本明細書においてとくに定義されない限り、本出願において開示および特許請求される本発明の概念に関して用いられる科学および技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によりとくに要求されない限り、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含むものとする。一般的には、本明細書に記載される化学に関連して用いられる用語、およびその技術は、当技術分野において十分に知られ、一般的に用いられるものである。反応および精製技術は、製造業者の仕様に従って、または当技術分野において一般的に達成されるように、もしくは本明細書に記載されるように行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医療および医薬品化学に関連して用いられる用語、ならびにその実験室手順および技術は、当技術分野において十分に知られ、一般的に用いられるものである。化学合成、化学分析、医薬品調剤、製剤、および送達、ならびに患者の治療には標準的な技術が用いられる。
【0015】
本明細書に記載されるすべての特許、特許出願公開、および非特許文献は、本出願において開示および特許請求される本発明の概念が属する技術分野における当業者の技術レベルを示す。本出願のいずれかの部分において参照されるすべての特許、特許出願公開、および非特許文献は、各個別の特許または文献が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されたのと同じように、それらの全開示が本明細書に参照により明示的に組み入れられる。
【0016】
本明細書において開示および特許請求される組成物および/または方法のすべては、本開示に照らして過度の実験なく製造および実行することができる。本発明の組成物および方法は好適な実施形態に関して記載されるが、当業者には本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物および方法に、ならびにその方法のステップおよびステップの連鎖において変形を適用してもよいことが明らかとなるだろう。当業者には明らかなすべてのこうした同様の置換および変更は、添付の特許請求の範囲により定義されるような本発明の概念の精神、範囲および概念内に含まれると考えられる。
【0017】
本開示に従って用いられる場合、下記の用語は、とくに指示のない限り、下記の意味を有すると理解されるものとする。
【0018】
「a」または「an」の語は、特許請求の範囲および/または明細書において「〜を含む」の語とともに用いられる場合、「1つ」を意味してもよいが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも矛盾しない。特許請求の範囲における「または」の語は、択一のみを指す明らかな指示がない、または選択肢が相互排他的でない限り「および/または」の意味で用いられるが、本開示は択一のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本出願全体を通して、「約」の語は、値が装置に内在する誤差の変動、値を決定するのに用いられる方法、および/または実験対象間に存在するばらつきを含むことを示すのに用いられる。「少なくとも1」の語は、1および、これらに限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100、等を含む、1より大きないずれかの数を含むと理解されるだろう。「少なくとも1」の語は、付随する語に応じて、100または1000以上まで拡大してもよく、また、より高い上限は良好な結果ももたらし得るため、100/1000の数は限定的とみなされるべきでない。さらに、「X、YおよびZの少なくとも1つ」の語は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、YおよびZの組み合わせを含むことが理解されるだろう。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「〜からなる」、「〜を有する」、「〜を含む」または「〜を含有する」の語は、包含的または無制限であり、追加の挙げられていない要素または方法ステップを除外しない。
【0020】
「またはこれらの組み合わせ」の語は、本明細書において用いられる場合、その語の前に挙げられた項目のすべての順列および組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、またはこれらの組み合わせ」とは、A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、および特定の文脈において順序が重要である場合、加えてBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABの少なくとも1つを含むことを意図する。この例を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB、等のような1つ以上の項目または用語の繰り返しを含有する組み合わせが明示的に含まれる。当業者であれば、一般的には、とくに文脈から明らかでない限り、いずれかの組み合わせにおける項目または用語の数に制限がないことを理解するだろう。
【0021】
本明細書には、開放時間が延長された水硬性組成物が開示される。水硬性組成物は、セメント系タイル接着剤のようなセメントモルタルの製造に用いることができる。具体的には、水硬性組成物は少なくとも1つのセメント遅延剤および少なくとも1つの促進剤を含む。
【0022】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念の水硬性組成物において、促進剤は、セメントの水和を促進することができる材料であり、一般的には無機化合物および有機化合物に分類される。適切な無機化合物としては、これらに限定されないが、塩化カルシウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような塩化物、亜硝酸ナトリウムおよび亜硝酸カルシウムのような亜硝酸塩、硝酸ナトリウムおよび硝酸カルシウムのような硝酸塩、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウムおよびミョウバンのような硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムおよびチオシアン酸カルシウムのようなチオシアン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムのような水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸リチウムのような炭酸塩、ならびに水ガラス、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムのようなアルミナ類似体を挙げることができる。適切な有機化合物としては、これらに限定されないが、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンのようなアミン、ギ酸カルシウムおよび酢酸カルシウムのような有機酸のカルシウム塩、ならびにマレイン酸無水物を挙げることができる。
【0023】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念の実施において、セメント遅延剤を添加してもよい。セメント遅延剤の例としては、これらに限定されないが、グルコン酸、グルクロン酸、クエン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、ムチン酸、マロン酸、リンゴ酸、およびクロトン酸のようなカルボン酸およびその塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアンモニウムを含むこれらの無機塩、グルコース、グルコン酸ナトリウム、フルクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アラビノース、リボース、スクロース、マンノースのような糖および対応する塩、オリゴ糖、デキストラン、リグノスルホン酸塩、ホスホン酸およびその塩、ならびにホウ酸を挙げることができる。
【0024】
セメント遅延剤は縮合リン酸またはその塩とすることができる。縮合リン酸またはその塩は、それぞれ2つ以上のリン酸またはリン酸塩単位を含む。縮合リン酸およびその塩は、二、オリゴ、およびポリリン酸およびそれらの塩とすることができる。1つの非限定的な実施形態では、縮合リン酸塩は、ポリリン酸塩である。ポリリン酸塩の例としては、これらに限定されないが、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マンガン、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0025】
水硬性組成物は、さらにセルロースエーテルを含む。セルロースエーテルは、一般的には保水剤として用いられ、得られるウェットモルタルの良好な保水性が達成される。保水性は、いずれかの結合剤を含む、モルタルの適切な水和のために含水量を制御し、モルタルの良好な加工性を達成するのに必要である。モルタルの適切な水和性能から得られる二次的な有益効果は、モルタルの少ないクラック形成および適切な強度発現である。
【0026】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念におけるセルロースエーテルは、任意でそれぞれ2つ以上の異なるアルキルおよび/またはヒドロキシアルキル置換基を有する、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースもしくはアルキルヒドロキシアルキルセルロース、または2つ以上のセルロース誘導体の混合物からなる群から選択することができる。
【0027】
あるいは、または加えて、本出願において開示および特許請求される本発明の概念による水硬性組成物は、例えば、これらに限定されないが、ペクチン、グアーガム、グアーエーテルのようなグアー誘導体、アラビアガム、キサンタンガム、デキストラン、冷水可溶性デンプン、デンプンエーテルのようなデンプン誘導体、キチン、キトサン、キシラン、ウェランガム、スクシノグリカンガム、デュータンガム、スクレログルカンガム、ジェランガム、マンナン、ガラクタン、グルカン、アルギン酸塩、アラビノキシラン、セルロース繊維、およびこれらの組み合わせを含む、1つ以上の水溶性または少なくとも水膨潤性の多糖を含んでもよい。
【0028】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念との文脈において用いることができるセルロースエーテルのいくつかの例としては、ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HPHEC)、カルボキシ−アルキルセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えば、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)およびカルボキシメチル−ヒドロキシプロピルセルロース(CMHPC)、スルホアルキルセルロース、例えば、スルホエチルセルロース(SEC)およびスルホプロピルセルロース(SPC)、カルボキシアルキルスルホアルキルセルロース、例えば、カルボキシメチルスルホエチルセルロース(CMSEC)およびカルボキシメチルスルホプロピルセルロース(CMSPC)、ヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(HESEC)、ヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HPSEC)およびヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HEHPSEC)、アルキルヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース、例えば、メチルヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(MHESEC)、メチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(MHPSEC)およびメチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(MHEHPSEC)、アルキルセルロース、例えば、メチルセルロース(MC)およびエチルセルロース(EC)、第2級または第3級アルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えば、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)およびエチルヒドロキシプロピルセルロース(EHPC)、エチルメチルヒドロキシエチルセルロース(EMHEC)、エチルメチルヒドロキシプロピルセルロース(EMHPC)、アルケニルセルロースならびにイオン性および非イオン性アルケニルセルロース混合エーテル、例えば、アリルセルロース、アリルメチルセルロース、アリルエチルセルロースおよびカルボキシ−メチルアリルセルロース、ジアルキルアミノアルキルセルロース、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルセルロースおよびN,N−ジエチルアミノエチルセルロース、ジアルキルアミノアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルヒドロキシエチルセルロースおよびN,N−ジメチルアミノエチルヒドロキシプロピルセルロース、アリール−、アリールアルキル−およびアリールヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ベンジルセルロース、メチルベンジルセルロースおよびベンジルヒドロキシエチルセルロース、ならびにC〜C15炭素原子を含むアルキル残基またはC〜C15炭素原子を含むアリールアルキル残基を有する、上記セルロースエーテルの疎水性修飾グリシジルエーテルとの反応生成物がある。
【0029】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念に従って、セルロースエーテルは、Brookfield RVT粘度計で、20℃、20rpmおよび2重量%の濃度で、適切なスピンドルを用いて測定されるように、500〜130,000mPasのBrookfield水溶液粘度を有する、MHECおよびMHPCとすることができる。
【0030】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念に従って、水硬性組成物は、約0.005〜約80重量%の追加の添加剤を有してもよい。1つの非限定的な実施形態では、添加剤の量は、約0.5〜約30重量%とすることができる。用いられる添加剤としては、これらに限定されないが、有機または無機増粘剤および/または二次保水剤、耐タレ剤、空気連行剤、湿潤剤、消泡剤、超可塑剤、分散剤、カルシウム錯化剤、撥水剤、再分散性粉末、バイオポリマー、繊維、カルシウムキレート剤、フルーツ酸、ならびに界面活性剤を挙げることができる。本明細書では、水硬性組成物に減水剤(流動化もしくは分散剤または超可塑剤)のいずれかを用いてもよい。減水剤の例としては、これらに限定されないが、メラミン系、リグニン系、およびポリカルボン酸塩系化合物を挙げることができる。本明細書に用いられる消泡剤としては、これらに限定されないが、ポリエーテル、シリコーン、アルコール、鉱物油、植物油、および非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0031】
添加剤の他の具体的な例としては、これらに限定されないが、ゼラチン、ポリエチレングリコール、カゼイン、リグニンスルホン酸塩、ナフタレン−スルホン酸塩、スルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリアクリル酸塩、ポリカルボン酸エーテル、ポリスチレンスルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ギ酸カルシウムのような1〜4個の炭素原子を有する有機酸のカルシウム塩、アルカン酸塩の塩、硫酸アルミニウム、金属アルミニウム、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール、ならびに酢酸ビニル、マレイン酸エステル、エチレン、スチレン、ブタジエン、バーサチック酸ビニル、およびアクリルモノマーをベースとするホモ、コ、またはターポリマーを挙げることができる。
【0032】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念による水硬性組成物は、当業者に知られる幅広いさまざまな技術により調製することができる。例としては、これらに限定されないが、単純ドライブレンド、噴霧乾燥プロセス中の異なる成分の組み合わせ、溶液または融液の乾燥材料上への噴霧、共押出、または共研磨を挙げることができる。
【0033】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念による水硬性組成物は、ドライモルタル製剤、セメント系タイル接着剤、セメント系遅延剤、防水膜、およびETICSのような絶縁システム用の鉱物コーティングの製造に用いることもできる。ドライセメントモルタルを製造する場合、ドライセメントモルタル組成物の成分に水硬性組成物を添加混合することができる。
【0034】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念に従って、ドライセメントモルタルは、ドライセメントモルタルの総重量に対して約10〜85重量%の量で存在する水硬性セメント成分を含む。1つの非限定的な実施形態では、セメント成分の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して約25〜80重量%である。別の非限定的な実施形態では、セメント成分の添加量は、30〜70重量%である。また別の非限定的な実施形態では、セメント成分の添加量は、35〜70重量%である。
【0035】
水硬性セメント成分の例としては、これらに限定されないが、ポルトランドセメント、ポルトランド−スラグセメント、ポルトランド−シリカヒュームセメント、ポルトランド−ポゾランセメント、ポルトランド−バーントシェールセメント、ポルトランド−石灰石セメント、ポルトランド−複合セメント、高炉セメント、ポゾランセメント、複合セメント、およびアルミン酸カルシウムセメントを挙げることができる。
【0036】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念に従って、ドライセメントモルタルはさらに骨材を含む。骨材の例としては、これらに限定されないが、シリカ砂、ドロマイト、石灰石、軽量骨材(例えばパーライト、発泡ポリスチレン、中空ガラス球)、ゴムクラム(自動車タイヤから再生)、およびフライアッシュを挙げることができる。本出願において開示および特許請求される本発明の概念のドライセメントモルタルについて、骨材は、最大5mmの粒径を有することもできる。1つの非限定的な実施形態では、骨材は、最大2mmの粒径を有することができる。
【0037】
骨材は細骨材とすることができる。「細」とは、骨材が最大約2.0mm、または最大約1.0mmの粒径を有することを意味する。1つの非限定的な実施形態では、骨材は、最大1mmの粒径を有することができる。粒径の下限は少なくとも0.0001mmとすることができる。1つの非限定的な実施形態では、粒径の下限は、少なくとも0.001mmとすることができる。
【0038】
骨材の量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して約20〜90重量%とすることができる。1つの非限定的な実施形態では、骨材の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して約25〜70重量%である。別の非限定的な実施形態では、骨材の添加量は、30〜65重量%である。また別の非限定的な実施形態では、骨材の量は、約50〜70重量%である。
【0039】
ドライセメントモルタルには、促進剤をドライセメントモルタルの総重量に対して0.01〜1.0重量%の量で添加することができる。1つの非限定的な実施形態では、促進剤の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して0.05〜0.5重量%である。別の非限定的な実施形態では、促進剤の添加量は、0.1〜0.3重量%である。
【0040】
セメント遅延剤の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して0.001〜0.5重量%の範囲内とすることができる。1つの非限定的な実施形態では、セメント遅延剤の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して0.005〜0.3重量%である。別の非限定的な実施形態では、セメント遅延剤の添加量は、0.01〜0.05重量%である。
【0041】
減水剤の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して約0.01〜約5重量%の範囲内とすることができる。最適量は、そのタイプまたは等級に応じて決定され得る。タイルセメントモルタル組成物の例では、最小限の量の水で良好な流動性を得ることが必要であるため、減水剤が用いられる。減水剤の使用量が小さすぎる場合、その目的にとって効果的でない場合があり得る。減水剤の使用量が大きすぎる場合、ブリーディングおよび骨材沈降のような材料分離を引き起こし、強度低下または風解をもたらし得る。
【0042】
消泡剤の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して0.1〜5重量%の範囲内である。1つの非限定的な実施形態では、消泡剤の添加量は、ドライセメントモルタルの総重量に対して0.2〜4重量%の範囲内である。
【0043】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念の実施では、必要に応じて、本体への接着性または耐摩耗性を向上させるため、ポリマーエマルジョンを用いてもよい。ポリマーエマルジョンは、液体または再分散性粉末の形態をとってもよい。現場混合用のプレミックスとして商業的に入手可能なほとんどのエマルジョンは、粉末(再分散性)タイプのポリマーエマルジョンである。
【0044】
水再分散性ポリマー粉末は、水中で一次粒子に分解した後、水中で分散(「再分散」)したものである。こうした水再分散性ポリマー粉末のドライミックスモルタルにおける使用は一般的であり、タイプおよび添加割合に応じて、多数の特性のほんのいくつかとして、すべての種類の基板への接着性、モルタルの変形性、曲げ強度および耐摩耗性を向上させることが知られる。ポリマー粉末は、非分岐または分岐C〜C15アルキルカルボン酸のビニルエステル、C〜C15アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、ジエン、およびハロゲン化ビニルの群から選択される1つ以上のモノマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーおよび/またはターポリマーから選択される1つ以上の化合物を含むことができる。
【0045】
1つの非限定的な実施形態では、ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、酢酸1−メチルビニル、ピバリン酸ビニル、約1〜約60重量%のエチレン含有量を有する酢酸ビニル−エチレンコポリマー、約1〜約40重量%のエチレン含有量および約20〜約90重量%の塩化ビニル含有量を有するビニルエステル−エチレン−塩化ビニルコポリマー、約1〜約50重量%のラウリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、および約5〜約11個の炭素原子を有するα−分岐モノカルボン酸ビニルエステル、とくにバーサチック酸ビニルエステルのような1つ以上の共重合性ビニルエステルを有し、約1〜約40重量%のエチレンも含有し得る、酢酸ビニルコポリマー、ならびに約1〜約60重量%のアクリル酸エステル、とくにアクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシルを有し、1〜40重量%のエチレンも含有し得る、酢酸ビニル−アクリル酸エステルコポリマーとすることができる。
【0046】
所望に応じて、ポリマーは、ポリマーの全体重量に対して、約0.1〜約10重量%の機能性コモノマーを含有してもよい。これらの機能性コモノマーは、これらに限定されないが、アクリル酸のようなエチレン性不飽和モノカルボンもしくはジカルボン酸、(メタ)アクリルアミドのようなエチレン性不飽和カルボキシアミド、ビニルスルホン酸のようなエチレン性不飽和スルホン酸および/もしくはその塩、アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、メタクリル酸アリルおよびシアヌル酸トリアリルのようなポリエチレン性不飽和コモノマー、ならびに/またはN−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびそのエーテル、例えばそのイソブトキシもしくはn−ブトキシエーテルを含んでもよい。
【0047】
メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは、これらに限定されないが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびメタクリル酸エチルの1,3−ブタジエンとのコポリマーとすることができる。
【0048】
ビニル芳香族化合物は、これらに限定されないが、スチレン、メチルスチレン、およびビニルトルエン、それぞれ約10〜約70重量%のスチレン含有量を有する、スチレン−アクリル酸n−ブチルまたはスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシルのようなスチレン−ブタジエンコポリマーおよびスチレン−アクリル酸エステルコポリマーとすることができる。
【0049】
ハロゲン化ビニルは塩化ビニルとすることができる。塩化ビニルポリマーは、これらに限定されないが、ビニルエステル/塩化ビニル/エチレンコポリマー、塩化ビニル−エチレンコポリマーおよび塩化ビニル−アクリル酸塩コポリマーとすることができる。
【0050】
1つの非限定的な実施形態では、オレフィンは、エチレンおよびプロピレンとすることができ、ジエンは1,3−ブタジエンおよびイソプレンとすることができる。
【0051】
ポリマーは従来の方法で調製することができる。1つの非限定的な実施形態では、ポリマーは、エマルジョン重合プロセスにより調製することができる。用いられる分散物は、乳化剤または他には保護コロイドで安定化してもよく、その例としては、ポリビニルアルコールがある。水再分散性ポリマー粉末を調製するため、この方法で得ることができるポリマー分散物を乾燥させることができる。乾燥は噴霧乾燥、凍結乾燥、または分散物の凝固およびその後の流動床乾燥により行ってもよい。水再分散性ポリマー粉末は、保護コロイドおよびブロッキング防止剤から選択される1つ以上の化合物を含んでもよい。欧州特許第EP1498446A1号は、こうした水再分散性ポリマー粉末の製造方法および例について開示し、その全内容はここで本明細書に参照により明示的に組み入れられる。
【0052】
ポリマーエマルジョンの添加量は、システム全体の総重量に対して、固体としての計算で、0.5〜15%の範囲内とすることができる。1つの非限定的な実施形態では、ポリマーエマルジョンの添加量は、システム全体の総重量に対して、固体としての計算で、0.5〜10重量%の範囲内とすることができる。ポリマーエマルジョンの添加量がその範囲より小さい場合、所望の耐久性および接着力を達成できない場合があり得る。ポリマーエマルジョンの添加量がその範囲より大きい場合、空気連行が外観損傷および強度低下のような欠陥をもたらす可能性があり得る。
【0053】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念の水硬性組成物は、別々にまたは前述した成分と組み合わせて調製し、ドライセメント系タイル接着剤を形成することができる。具体的には、セメント、骨材、減水剤(流動化または分散剤)、消泡剤、セメント遅延剤、促進剤、水溶性セルロースエーテルおよび任意の他の成分を含み、セメントモルタル組成物は、セメント、骨材、促進剤、セメント遅延剤、水溶性セルロースエーテルおよび任意の他の成分を組み合わせ、これらを均一に混合し、これに水を添加し、さらに混合することにより調製される。
【0054】
すでに上記のとおり、本出願において開示および特許請求される本発明の概念によるドライセメントモルタルは、標準的なドライモルタル製剤および上記詳述された水硬性組成物を含む。1つの非限定的な実施形態では、水硬性組成物は、ドライセメントモルタルの総重量に対して、約0.3〜約70重量%の量で存在することができる。別の非限定的な実施形態では、水硬性組成物は、ドライセメントモルタルの総重量に対して、約0.4〜約30重量%で存在することができる。また別の非限定的な実施形態では、修飾組成物は、ドライセメントモルタルの総重量に対して、約0.5〜約15重量%とすることができる。
【0055】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念のドライセメントモルタルは、消石灰、石膏、ポゾラン、高炉スラグ、水硬活性ヒドロケイ酸カルシウムおよび水硬性石灰の少なくとも1つの鉱物結合剤を組み合わせて有することもできる。少なくとも1つの鉱物結合剤は、約0.1〜70重量%の量で存在することができる。
【0056】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念は、ドライセメントモルタルの製造方法にも関する。その方法は、上記詳述された水硬性組成物を標準的なドライモルタル製剤に添加混合するステップを含む。水硬性組成物のコンパウンドを個別または組み合わせて、標準的なドライモルタル製剤に添加混合することができる。
【0057】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念によるドライセメントモルタルを調製する場合、水硬性組成物中の必須および任意の化合物の相対量は、最終ドライセメントモルタル中に必要な総量に調節されるべきである。標準的なドライモルタル製剤中にすでに存在する化合物の量を考慮して適切な量の必須および任意の化合物を有する水硬性組成物を調製することは、当業者の知識内である。例えば、限定ではなく、標準的なドライモルタル製剤がすでにセルロースエーテルを含む場合、本出願において開示および特許請求される本発明の概念による水硬性組成物に追加の量のセルロースエーテルを必ずしも添加する必要はない。最終ドライセメントモルタル中の各種化合物の総量は、当業者が彼らの知識および通常の試験に基づき識別することができる適切な範囲内とするべきである。
【0058】
本出願において開示および特許請求される本発明の概念は、硬化時間を減少させることなくドライセメントモルタルの開放時間を増加させる方法も提供する。開放時間を増加させる方法は、a)上記詳述された水硬性組成物を標準的なドライモルタル製剤に添加混合するステップであって、水硬性組成物のコンパウンドを個別にまたは組み合わせて標準的なドライモルタル製剤に添加混合することができるステップ、b)水を修飾ドライモルタル製剤に添加混合するステップ、およびc)含水修飾ドライモルタル製剤をいずれかの標準的な方法で加工するステップを含む。
【0059】
最終用途のため、ドライセメントモルタルは水と混合し、湿潤材料として塗布することができる。本出願において開示および特許請求される本発明の概念に従って、組成物は、ドライセメント系タイル接着製剤中に用いられる場合、十分な量の水と混合し、セメント系タイル接着モルタルを製造することができる。水/セメント比(水係数)は、セメント系モルタルの強度性能に影響を及ぼすことができる。必要な水の量が高いと、通常は引張強度のような強度値が低下する。しかしながら、多価金属塩は、高い水分レベルでの強度性能不足を相殺することができる。
【0060】
セメントモルタルの場合、水は、セメントモルタルの総重量に対して10〜80重量%の量で添加することができる。1つの非限定的な実施形態では、水は、17〜37重量%の量で添加することができる。別の非限定的な実施形態では、水は、20〜35重量%の量で添加することができる。
【0061】
下記の実施例は本出願において開示および特許請求される本発明の概念を例示し、とくに指示のない限り、部およびパーセントは重量による。各実施例は、本出願において開示および特許請求される本発明の概念の限定ではなく、本出願において開示および特許請求される本発明の概念の説明として提供される。実際、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本出願において開示および特許請求される本発明の概念に各種変更および変形を行うことができることは当業者には明らかとなるだろう。例えば、1つの実施形態の一部として例示または説明される特徴は、別の実施形態上で用い、またさらなる実施形態をもたらすことができる。よって、本出願において開示および特許請求される本発明の概念はこうした変更および変形を添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に含まれるものとすることが意図される。
【実施例】
【0062】
すべての実施例はセメント系タイル接着剤において行った。実施例に用いたセルロースエーテル、セメント遅延剤および促進剤を以下に記載する。
【0063】
【表1】
遅延剤:
A.ポリリン酸ナトリウム
B.グルコン酸ナトリウム
促進剤:
A.チオシアン酸ナトリウム、テクニカルグレード
B.ギ酸カルシウム
C.塩化カルシウム
【0064】
実施例1
目に見える開放時間の増加
下記セメント系タイル接着製剤を用いて性能特性を試験した:
【0065】
【表2】
【0066】
セメント系タイル接着剤を調製し、混合し、開放時間についてISO13007−2に従って試験した。開放時間決定のため、予め混合されたモルタルをクシメゴテ(6×6×6mm)で繊維セメント板に塗布した。5分毎に5×5cmの陶器質およびせっ器質タイルを30秒間2kg重量の負荷によりはめ込んだ。
【0067】
タイルを取り外し、タイルの裏側を評価した。50%超がセメント系タイル接着剤で覆われていた場合、まだ開放時間である。50%未満がセメント系タイル接着剤で覆われていた場合、開放時間は終了である。
【0068】
試料を通る超音波速度の測定によって硬化時間を決定した。さらに水和が進むと、モルタル試料を通る超音波が速くなった。セメントおよびモルタル製剤に応じて超音波の速度は約2400m/sの値に近づいた。水和の半分が完了し、よって1200m/sの速度に達した後、硬化時間を比較した。試験結果を表1に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表1からわかるように、遅延剤のみの添加は参照と比較して開放時間を15分(試料1)および30分(試料3)増加させるが、硬化も450分(試料1)および550分(試料3)遅延させる。遅延剤および促進剤の組み合わせが添加される場合、開放時間は参照と比較して25分(試料2)および10分(試料4〜6)延長される。しかしながら、硬化時間は参照と同程度またはそれより速い。
【0071】
もちろん、開示情報の説明を目的として成分または方法の考えられるすべての組み合わせについて記載することはできないが、当業者であれば開示情報の多くのさらなる組み合わせおよび順列が可能であることを認識することができる。したがって、開示情報は添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に属するすべてのこうした代替、変更および変形を包含することを意図する。