特許第6276404号(P6276404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276404
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】蓄圧器
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/10 20060101AFI20180129BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20180129BHJP
   B32B 25/10 20060101ALI20180129BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20180129BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20180129BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F15B1/10
   B32B5/26
   B32B25/10
   B32B27/34
   B32B27/28 102
   B32B27/30 Z
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-525072(P2016-525072)
(86)(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公表番号】特表2017-504765(P2017-504765A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2014003054
(87)【国際公開番号】WO2015104034
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年7月4日
(31)【優先権主張番号】102014000358.2
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503331805
【氏名又は名称】ハイダック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クロフト
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト バルテス
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−181601(JP,A)
【文献】 特開昭61−215050(JP,A)
【文献】 米国特許第04777982(US,A)
【文献】 特開2005−282773(JP,A)
【文献】 特開2003−262271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00− 1/26
B32B 1/00−43/00
F16J 3/00− 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の媒質室(6,8)の間の運動可能な分離エレメントを形成するダイヤフラム(4)を備えた蓄圧器であって、該蓄圧器が、異なる材料の互いに接触する2つ以上の層(16,18,20,22,24,26)から形成されている蓄圧器において、
フィラメントを有し且つ気密な含浸(24)を施された基礎構造(16,20)から成る少なくともつの層が、エラストマーから成る2つ以上の層(18)の間に設けられており、
前記少なくとも2つの基礎構造(16、20)の間に少なくとも1つのさらなる層が設けられており、該さらなる層のうちの少なくとも1つの層がエラストマー(18,26)から成ることを特徴とする、蓄圧器。
【請求項2】
前記フィラメントを有するそれぞれの基礎構造(16,20)が織布、編み地、ニット、又はフリースを有していることを特徴とする、請求項1に記載の蓄圧器。
【請求項3】
フィラメントを有する、含浸された基礎構造(16,20)から成る2つ以上の層が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の蓄圧器。
【請求項4】
前記含浸された基礎構造(16,20)が、好ましくはポリアミド(PA6.6)から成るプラスチック織布を有していることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄圧器。
【請求項5】
前記ダイヤフラム(4)が連続して、ニトリルゴム(NBR)から成る層(18)と、含浸された基礎構造(16)と、ニトリルゴム(NBR)から成る別の層(18)と、第2の含浸された基礎構造(20)と、ニトリルゴム(NBR)から成る第3の層(18)とを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄圧器。
【請求項6】
含浸を形成するために、前記それぞれの基礎構造(16,20)の両側に、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る被膜(24)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄圧器。
【請求項7】
前記それぞれの含浸された基礎構造(16,20)と、ニトリルゴム(NBR)から成る層(18,26)との間に、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層(22)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄圧器。
【請求項8】
前記ダイヤフラム(4)が連続して、粘着ゴム被膜(26)を備えたニトリルゴム(NBR)から成る層(18)と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層(22)と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜(24)と、基礎構造(16)と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜(24)と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層(22)と、粘着ゴム被膜(26)と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層(22)と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜(24)と、第2の基礎構造(20)と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜(24)と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層(22)と、ニトリルゴム(NBR)から成る層(18)に接触した粘着ゴム被膜(26)とを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の媒質室の間の運動可能な分離エレメントを形成するダイヤフラムを備えた蓄圧器であって、蓄圧器が、異なる材料の互いに接触する層から形成されている蓄圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような種類の蓄圧器、いわゆるダイヤフラム式蓄圧器は従来技術である。液圧系において、このような蓄圧器は緩衝器又は脈動減衰器として使用することにより、作業回路内の圧力衝撃を減衰することができる。このような蓄圧器はさらに、ポンプなしの非常用回路のためのエネルギー源として使用することができ、例えば液圧式圧縮ばね及びこれに類するものとしても適している。
【0003】
作業ガス、例えば空気、又は好ましくは窒素を有するこのような蓄圧器の使用時における欠点は、ダイヤフラムがエラストマーの化学組成、及び運転時間に応じて、封入されたガスを通すようになることにある。窒素又は空気は先ずエラストマー中に解放され、そして蒸発しながら周囲に拡散する。このようになると、蓄圧器系内に存在するガス量、及び機能力が急速に減少し、これにより蓄圧器系は役立たなくなり、しかも再利用することもできず、廃棄しなければならない。
【0004】
ある特許文献によれば、弾性的な高気密プラスチック・ダイヤフラムにおいて透過抵抗を高めるために従来技術では、ドクター塗布(Aufrakeln)、噴霧塗布、流延塗布、又はブラシ塗布(Streichen)によって架橋ポリシロキサンから成る被膜を被着することにより、ダイヤフラムの多層構造を設けることが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、従来技術に相当する別の特許文献の解決手段の場合、多層ダイヤフラム・ユニットのために第1及び第2のプラスチック・ダイヤフラムが設けられており、第1プラスチック・ダイヤフラムはエラストマーから成り、第2プラスチック・ダイヤフラムはポリエステル膜である(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第4231927号
【特許文献2】独国特許第4405009号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来技術から出発して、本発明は、長い運転時間にわたって安定的な、さらに改善された透過抵抗が際立つダイヤフラムを有する蓄圧器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、このような課題は、請求項1の特徴を全体として有する蓄圧器によって解決される。これによれば、本発明は、多層ダイヤフラム・ユニットが、フィラメントを有し且つ気密な含浸を施された基礎構造から成る少なくとも1つの層を有しており、この層が、エラストマーから成る層の間に設けられていることを特徴とする。多層ダイヤフラム・ユニットの構成部分として、フィラメントを有する構造を使用すると、支持体上に被着された被膜が剥離又は破裂するおそれが回避される。このようなおそれは従来技術において、運転中にダイヤフラムが実施する屈曲運動(Walkbewegungen)に起因するものであり、このような屈曲運動は、運転経過中に亀裂形成を、そしてその結果剥離又は破裂を招くことがある。これとは異なり、含浸剤を浸透させて基礎構造のフィラメントを包囲することにより、本発明に基づいて、フィラメントを有する基礎構造に気密な含浸を施すと、透過抵抗を高いままにした状態で、緊密な分離不能の結合が生じる。
【発明の効果】
【0009】
基礎構造は、プラスチックから成る織布、編み地(Gestrick)、ニット(Gewirk)、又はフリースから形成できると特に有利である。ポリアミド(PA6.6)から形成されたプラスチック織布が設けられていると有利である。
【0010】
有利な実施形態では、ダイヤフラムは連続して、ニトリルゴム(NBR)から成る層と、含浸された基礎構造と、ニトリルゴム(NBR)から成る別の層と、第2の含浸された基礎構造と、ニトリルゴム(NBR)から成る第3の層とを有することができる。ダイヤフラム・ユニットの構成部分として気密に含浸された2つの基礎構造が設けられていると、特に高い透過係数を達成することができる。
【0011】
含浸を形成するために、それぞれの基礎構造の両側に、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る被膜を設けることができると、特に有利である。
【0012】
さらに、それぞれの含浸された基礎構造と、ニトリルゴム(NBR)から成る層との間に、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層を設けることができると、特に有利である。
【0013】
特に有利な実施例において、ダイヤフラムは連続して、粘着ゴム被膜を備えたニトリルゴム(NBR)から成るバリア層と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成る層と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜と、基礎構造と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層と、粘着ゴム被膜と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜と、第2の基礎構造と、ポリビニルアセテート(PVAc)から成る含浸用被膜と、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るバリア層と、ニトリルゴム(NBR)から成る層に接触した粘着ゴム被膜とを有する。
【0014】
図面に基づき本発明を以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による蓄圧器の1実施例を示す概略的な長手方向断面図である。
図1a図1aは、実施例のダイヤフラムの、図1に印を付けられた部分領域を著しく拡大して示す、原寸に比例していない概略図である。
図2図2は、変更実施例のダイヤフラムの部分領域を示す、図1aに対応する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、溶接構造として形成された蓄圧器ハウジング2を備えた、本発明による蓄圧器を示している。蓄圧器ハウジング2内では、多層状に形成されたダイヤフラム4が運動可能な分離エレメントとして、流体側6をガス側8から分離している。ガス側8には、充填接続部10を介して作業ガス、例えば窒素を充填することができる。流体側6には、液圧系(図示せず)との結合部として流体接続部12が位置している。ダイヤフラム4の中央領域内では、ダイヤフラムの、流体接続部12に向いた側に弁皿14が位置している。弁皿14は、流体側6が充分に空にされ、これに相応してダイヤフラム4が引き出されると、流体接続部12を閉じる。図1に示されたダイヤフラム4は、蓄圧器が完全に空にされ無圧のときに占める位置にある。
【0017】
図1aは、ダイヤフラム4の実施例に対応する層構造を概略的に示している。図示の例では、気密に含浸された、フィラメントを有する基礎構造16が、エラストマー18、例えばNBRから形成された2つの層の間に位置している。基礎構造16に気密な含浸を施すために、その両側にポリビニルアセテートから成る被覆体が被着されている。このような下塗り被膜(Grundierungsschicht)は図1aでは認識されない。基礎構造16自体はポリアミドPA6.6から成るプラスチック織布から形成されている。図1aの例のダイヤフラム4は、気密に含浸された第2の基礎構造20を有している。この第2の基礎構造は、第1の基礎構造16と同様に、エラストマー18から形成された層の間に位置している。第1基礎構造16のように、第2の基礎構造20も、ポリアミドPA6.6から成るプラスチック織布によって形成されている。同様に両側にはポリビニルアセテートから成る下塗り用含浸被膜が設けられている。実際の構成では、所与の層から形成されたダイヤフラム4の総厚は0.6mmである。
【0018】
図2の実施例では、ダイヤフラム4は、第1の実施例で設けられた層に加えて、第1及び第2の基礎構造16及び20の含浸用下塗り被膜のそれぞれの側に、エチレン−ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)から成るそれぞれ1つのバリア層22を有している。このバリア層22は、第1及び第2の基礎構造16及び20の両側で、図2では認識される含浸用下塗り被膜24に接触している。エラストマー18から成る両方の外側層18と後続のバリア層22との間には、そして第1及び第2の基礎構造16及び20の互いに隣り合うバリア層22の間にも、粘着ゴム被膜26が位置している。
【0019】
第1の上記例と同様に、ダイヤフラム4は、より多数の層を有する図2の例でも総厚0.6mmで形成することができる。例えばエラストマー18及び粘着ゴム被膜26から成る外側の層の厚さはそれぞれ0.15mmであり得る。下塗り層24及びバリア層22を含む第1及び第2の基礎構造16及び20の厚さは、それぞれ0.13mmであってよく、そして中央の粘着ゴム被膜26の被膜厚は0.04mmであってよい。第1及び第2の基礎構造16及び20に並んで両側に配置されたエチレン−ビニルアルコール−コポリマーEVOHから成る2つの対を成す付加的なバリア層22によって、ダイヤフラム4の最高の気密性が達成される。
【0020】
気密な含浸24はその場で基礎構造内に導入され、さもなければ通常使用される、接着剤層の形態を成す付着・結合層をこの領域では完全に省くことができる。基礎構造内に取り込まれた含浸剤はこうしてまた、補強という意味で織布層を剛化する。
図1-1a】
図2