(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ダクトは、通常、金属製または高分子樹脂製等の材質で、形状は角形、円形または楕円形の筒形状を有しており、直管、曲管(エルボ)、分岐管等を組み合わせてなる。そして、ダクトは、気体を運ぶ管であり、主に建築物内の空調、換気、または排煙等の目的で配設されるものである。
【0003】
ダクトを配設し、空調、換気、および排煙等を行うことにより、建築物内部は快適な環境に保たれるが、汚れた空気の輸送によりダクトの管の内壁には油や粉塵、付着物等の汚れが堆積していくことになる。ダクト内の汚れの堆積は、結果として、ダクトの機能低下、ひいてはダクトの閉塞を引き起こす。ダクトが閉塞した場合、ダクトそのものを全て取り替える必要が生じることさえある。また、飲食店、例えば焼肉店の排煙用ダクトの場合、堆積された汚れには油分を含んでいるため、悪臭の発生や発火の恐れもある。
【0004】
このようなダクト内の汚れの堆積による、ダクトの機能低下を避けるためには、定期的な清掃、または洗浄が必要不可欠である。しかし、内部に作業者が清掃器具を持ち込み、作業するにはダクトは開口が狭く、内部の清掃や洗浄は非常に困難である。従来、このようなダクトの清掃や洗浄の方法としては、例えば、汚れが軽度の場合には、水を流してその水圧で汚れを除去する方法、外部からブラシを挿入し、浮かせた粉塵を集塵機で吸い込む方法が挙げられ、また、汚れが酷い場合には、ダクトの内部に薬品や熱湯を流して汚れを溶解、剥離させる方法が挙げられる。しかし、水などの液体を用いて天井のダクトを洗浄すると部屋中が水浸しになるという問題がある。また、ダクトの入口付近に、例えば焼肉用テーブルがある場合、それを取り外して洗浄を行う必要がある。またダクトが折れ曲がっている場合には内部までの洗浄は困難である。
【0005】
特許文献1には、挿抜方向に沿った軸心周りに回転することにより、流体輸送管に接続された弁取付用の分岐管内を掃除し、分岐管内の流体を排出する機能を有する分岐管内掃除装置が開示されている。当該掃除用具の利点は管の内面から掻き落とされた物を、管内に残さず、排出管内流体とともに外部に排出できることにある。当該掃除装置は、流体輸送管に用いられるものであり、また、掃除具の軸は可撓性を有しない。
【0006】
特許文献2には、ダクト内面に強固に付着している塵芥を清掃するための空調ダクトノズルおよび空調ダクト清掃装置が開示されている。当該清掃装置は、高圧空気を導くホースの先端にシャフトを取り付け、シャフトの外周面に高圧空気を略半径方向に噴射する複数の噴射口を形成し、またカバーの内周面には羽根車を有する。当該清掃装置は、放出空気によって空調ダクトの内面の塵芥を浮き飛ばすとともに、ノズルの推進力を得ることができ、ノズルは空調ダクトの内壁面に沿って旋回しながら推進することで付着している塵芥を清掃することができる。しかし、当該清掃装置は高圧の空気によって吹き飛ばすことができる塵芥には有効であるが、強固に堆積した汚れを掻き落とす効果を有しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、堆積した油やスス、粉塵等で汚れたダクト、特に飲食店における排煙用ダクト内壁を洗浄することができる新たなダクト洗浄用具を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ダクト洗浄用具の先端に取り付けられた洗浄ブラシを、エアコンプレッサーにより発生される圧縮空気の力を利用して回転させることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明として、例えば、下記のものを挙げることができる。
[1]回転羽根を有するボックス、前記回転羽根と連動して回転する着脱自在のブラシ、および前記ボックスを担持する緩衝ボックスを含み、回転羽根を有する前記ボックスには当該回転羽根を回転させる動力となる圧縮空気を送り込むための孔と、送り込まれた圧縮空気を逃がすための孔とを有することを特徴とする、ダクト洗浄用具。
[2]さらに、前記ボックスに圧縮空気を送り込むためのエアホース、前記エアホースを介して前記ボックスと連通するエアコンプレッサー、前記エアホースを挿通する可撓性の中空部材、または前記中空部材を介して前記緩衝ボックスと連通する吸引機を含む、上記[1]に記載のダクト洗浄用具。
[3]さらに、前記エアホースと共に前記中空部材を挿通する可撓性で伸縮可能なフレキシブル中空部材を含む、上記[1]または[2]に記載のダクト洗浄用具。
[4]前記ダクトが排煙用ダクトまたは飲食店における排煙用ダクトである、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のダクト洗浄用具。
【0011】
[5]上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のダクト洗浄用具を用いることを特徴とする、ダクト洗浄方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、例えば、次の事項を挙げることができる。
大型のエアコンプレッサーを用いれば、多くのダクトを一度に洗浄することができる。また、エアコンプレッサーは、現場近くで調達することが容易であり、ダクト洗浄用具を作動するための動力源の長時間の携行を不要にすることができる。エアコンプレッサーにより発生される圧縮空気は、吸引機による吸引の補助にもなり、吸引機の負担を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
本発明に係るダクト洗浄用具(以下、「本発明洗浄用具」という。)は、回転羽根を有するボックス(以下、単に「回転羽根ボックス」という。)、前記回転羽根と連動して回転する着脱自在のブラシ(以下、単に「ブラシ」という。)、および前記ボックスを担持する緩衝ボックス(以下、単に「緩衝ボックス」という。)を含み、回転羽根ボックスには当該回転羽根を回転させる動力となる圧縮空気を送り込むための孔と、送り込まれた圧縮空気を逃がすための孔とを有することを特徴とする。
【0015】
1 回転羽根ボックス
本発明洗浄用具は、回転羽根ボックスを含む。
回転羽根ボックスは、通常、円筒形で金属製であり、圧縮空気を当該ボックスに送り込むための孔(以下、「吸入孔」という。)、および送り込まれた圧縮空気を逃がすための孔(以下、「排出孔」という。)を有する。また、回転羽根ボックスは、圧縮空気の力により回転する回転羽根を有し、かかる回転羽根は、回転軸により中空保持されている。回転羽根ボックスの前方(ブラシ側)は、通常、閉鎖されている。
【0016】
吸入孔は、回転羽根が圧縮空気によって回転するよう圧縮空気が送り込まれる位置に設けられ、通常、回転羽根に近接した位置に存在する。吸入孔の数は、適宜選択されるが、1〜3個が適当であり、1または2個が好ましい。吸入孔の形は、通常、円形である。また、吸入孔には、通常、圧縮空気の流通路である後述のエアホースを連結するためのノズルを設けることができる。
【0017】
排出孔は、通常、回転羽根ボックスの背面および/または側面に設けられるが、背面に設けられるのが好ましい。排出孔の大きさは、孔の形、数等を考慮し適宜選択される。排出孔の数は、孔の大きさ、位置等を考慮し、1個以上で適宜選択される。排出孔の形としては、圧縮空気を逃がすことができれば特に制限されず、例えば、円形、楕円形、四角形、扇形、スリット形を挙げることができる。
【0018】
回転羽根ボックスの材質は、通常、金属である。かかる金属としては、例えば、ステンレススチール、スチール、鉄、真鍮が挙げられる。
回転羽根の羽根の枚数は適宜選択されるが、3〜8枚程度が適当である。回転羽根の材質は、回転羽根ボックスと同様のものを挙げることができる。
【0019】
2 ブラシ
本発明洗浄用具は、ブラシを含む。
【0020】
ブラシは、その回転によりダクト内壁を洗浄することができるものであれば特に制限されない。通常、軸および軸に放射状に植え付けられた毛を有する。このようなブラシとしては、例えば、チューブブラシ、ローラーブラシ、カップブラシが挙げられる。これらの中でもチューブブラシが好ましい。ブラシの毛の材質はダクト内壁に堆積した汚れを掻き取ることができれば特に制限されないが、例えば、真鍮、鉄、ステンレススチール等の金属、ナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂、植物繊維、動物毛等の天然素材が挙げられる。これらの中でも真鍮、鉄、ステンレススチール等の金属であることが好ましい。特に、金属製ワイヤーブラシが好適である。
【0021】
また、本発明洗浄用具に使用されるブラシは、洗浄するダクト内の大きさ(内径)に応じて選択される。ダクト内壁の洗浄に適したブラシは、通常、軸周りの毛の直径がダクトの内径と同等か、それよりやや小さいものである。
【0022】
本発明洗浄用具に好適なブラシは、ワイヤーチューブブラシ等の名称で一般に市販されており、容易に入手することができる。また、当該ブラシと回転羽根の回転軸との連結手段は特に制限されないが、例えば、溶接、ねじの螺合、ねじ止め、ピン止め、接着が挙げられる。
【0023】
3 緩衝ボックス
本発明洗浄用具は、緩衝ボックスを含む。
【0024】
緩衝ボックスは、回転羽根ボックスより一回り以上大きく、回転羽根ボックスを緩衝ボックスの内側の側面に担持することができる。そして、緩衝ボックスは、ブラシ側(前方)が開放されており、回転羽根ボックスを担持しても、ブラシで掻き落とされた汚れが入り込むことができる空間と、回転羽根ボックスから排出される圧縮空気が、後述する中空部材に移動していくことができる空間とを有する。また、緩衝ボックスは、当該中空部材と連通する開口部を有する。緩衝ボックスと当該中空部材とは、強固に連結されるが、着脱自在であってもよい。
【0025】
緩衝ボックスの周囲には、、毛の長さが数センチのブラシ(以下、「補助ブラシ」という。)を、その毛が緩衝ボックスに対しほぼ垂直方向に直立するように巻き付けることができる。この補助ブラシにより、ダクト内にビスなどの出っ張りがあっても、よりスムーズに本発明洗浄用具を取り扱うことができる。補助ブラシは、緩衝ボックスの後方(中空部材側)に設置するのが適当であり、最後方に設置するのが好ましい。補助ブラシの毛の長さは、適宜選択されるが、通常、1〜3cm程度である。補助ブラシの幅は、適宜選択されるが、通常、0.5〜2cm程度である。補助ブラシの毛の材質としては、前記ブラシと同様のものを挙げることができるが、金属製が好ましい。
補助ブラシは、通常、溶接や接着剤により緩衝ボックスに固定される。
【0026】
緩衝ボックスの材質は、通常、金属である。かかる金属としては、例えば、ステンレススチール、スチール、鉄、真鍮が挙げられる。
回転羽根ボックスは、通常、溶接により緩衝ボックスに担持される。
【0027】
4 エアホース、エアコンプレッサー
本発明洗浄用具は、回転羽根ボックスに圧縮空気を送り込むためのエアホース(以下、単に「エアホース」という。)、または前記エアホースを介して回転羽根ボックスと連通するエアコンプレッサー(以下、単に「エアコンプレッサー」という。)を含むことができる。
【0028】
エアホースは、エアコンプレッサーで発生された圧縮空気を、回転羽根ボックスに供給するためのものであり、圧縮空気の流通路となる。エアホースは、圧縮空気の圧力に耐えられ、通常、エアホースとして用いられるものであれば特に制限されない。市販のものを利用することができる。
エアホースの長さは、適宜選択され、回転羽根ボックスとエアコンプレッサーとを十分に連通することができればよい。
【0029】
エアコンプレッサーは、回転羽根を介して先端に取り付けられたブラシを回転させる動力となる圧縮空気を発生させるためのものである。圧縮空気を連続的に発生させ、吐出することができるものであれば特に制限されず、オイルタイプでもオイルフリータイプでもよい。また、10Lタンク程度の小型エアコンプレッサーでも、80Lタンクの大容量のものやトラック等に搭載して移動するような大型のものでもよく、同時に作動させる本発明洗浄用具の数や洗浄するダクトの長さなどにより適宜選択される。一般に、同時に作動させる本発明洗浄用具が多くなるほど大型のエアコンプレッサーが必要となる。
エアコンプレッサーは、現場まで携行することができるが、現場ないし現場近くで調達することもでき、エアコンプレッサーの大きさ、重量、能力などによってはその方が簡便である。
【0030】
5 中空部材
本発明洗浄用具は、エアホースを挿通する可撓性の中空部材(以下、単に「中空部材」という。)を含むことができる。
【0031】
中空部材は、エアホースを緩衝ボックスないし回転羽根ボックスに導くための通路となり、またブラシでダクト内壁から掻き落とされた粉塵や油といった汚れをダクト外へ排出する際の通路にもなる。
【0032】
中空部材は、通常、管状であり、気密性であり、その中空部に前記エアホースが挿入され、エアホースを覆う形で配置される。その材質は、可撓性を有していれば特に制限されないが、通常は樹脂製のものが使用される。かかる樹脂としては、例えば、合成ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンが挙げられる。
【0033】
中空部材の長さは、洗浄するダクトの長さなどに応じて適宜選択される。中空部材の横手断面は、通常、円形であり、その大きさ(内径)は適宜選択されるが、エアホースが挿通でき、ブラシにより掻き落とされた汚れが移動でき、ダクト外へ排出できるものであればよい。
【0034】
中空部材は、緩衝ボックスと連結され、緩衝ボックスと後述する吸引機との間に介在する。中空部材は、その吸引機と接続するための枝分かれ部分を途中に有することができる。枝分かれ部分を途中に有さず1本のホース状の中空部材である場合、少なくとも二股に分かれており、一方が中空部材と連結されると共にエアホースが挿通され、他方が吸引機と接続される分岐管を中空部材と一緒に用いることができる。
中空部材の枝分かれ部分または分岐管と吸引機とは、気密性のホースを介して接続される。
【0035】
当該分岐管は、少なくとも二股に分かれていればよく、それ以上に分岐する管を有していてもよい。また、当該分岐管は、通常、エアホースが挿通される部分が直管であり、当該直管より垂直または斜め方向に一以上の分岐する管を有する。
【0036】
当該分岐管の材質は特に制限されないが、金属、樹脂が挙げられる。かかる金属としては、例えば、ステンレススチール、スチール、鉄、真鍮が挙げられる。かかる樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンが挙げられる。また、当該分岐管は、通常、気密性である。
【0037】
6 吸引機
本発明洗浄用具は、中空部材を介して緩衝ボックスと連通する吸引機(以下、単に「吸引機」という。)を含むことができる。かかる吸引機により、ブラシでダクト内壁から掻き落とされた粉塵や油といった汚れをダクト外へ速やかに排出することができる。
【0038】
吸引機としては、ダクト内壁から掻き落とされた粉塵や油といった汚れを吸引することができるものであれば特に制限されないが、例えば、バキューム、掃除機、集塵機、電動ポンプ、ガソリンポンプが挙げられる。これらの中でもバキュームや掃除機、集塵機が好ましい。また、バキュームの中でも業務用の強力なもの、例えば、高真空・大風量タイプのものが好ましい。
本発明洗浄用具に適した吸引機としては、例えば、東浜工業株式会社製のパワーバッククリーナー TVC−3200型が挙げられる。
【0039】
7 その他
7.1 フレキシブル中空部材
本発明洗浄用具は、エアホースと共に中空部材を挿通する可撓性で伸縮可能なフレキシブル中空部材(以下、単に「フレキシブル中空部材」という。)を更に含むことができる。かかるフレキシブル中空部材は、通常、管状であり、中空部材の長手方向に、例えば蛇腹式(アコーディオン式)に収縮させることにより、伸長状態から収縮状態に縮めることができ、また逆に収縮状態から伸長状態に伸ばすことができる。フレキシブル中空部材は、ダクト洗浄後、エアホースや中空部材、緩衝ボックスといった部品、またはそれらに加えてブラシをダクト内から回収する際に、収縮状態から伸長状態に伸ばすことにより、それら部品等をカバーすることができ、それらに付着した粉塵や油といった汚れの飛散、落下などを防止する機能を有する。
【0040】
フレキシブル中空部材の内径は、中空部材の外径より大きく、通常、ダクトのほぼ外径までである。フレキシブル中空部材の内径がダクトの外径と同程度である場合、フレキシブル中空部材をダクトに直接接続ないし固定することもできる。その際、ロープやベルト等の適当な補強部材で当該接続ないし固定を補強することができる。フレキシブル中空部材の径が、ダクトの径より小さい場合は、例えば、中空のジョイント部材を使用し、中空部材とダクトとを接続することもできる。その接続において、ロープやベルト等の適当な補強部材で接続を補強(固定)することができる。フレキシブル中空部材をダクトに直接またはジョイント部材を用いて接続することにより、一人でも、また片手でも容易にフレキシブル中空部材を収縮状態から伸長状態に伸ばすことができる。
【0041】
フレキシブル中空部材の伸長状態における長手方向の長さとしては、エアホースや中空部材の長さに応じて適宜選択されるが、例えば、中空部材の分岐部(分岐管を用いる場合はその分岐部)からブラシの根元ないし先端までの長さを挙げることができる。また、それ以上であってもそれ以下であってもよい。また、フレキシブル中空部材の収縮状態における長軸方向の長さは、伸長状態の1/3〜1/20の長さが適当であり、1/5〜1/20の長さが好ましい。
【0042】
フレキシブル中空部材は、長手方向に山折りと谷折りの繰り返しである蛇腹構造を有していることが好ましく、山折り部分または谷折り部分に環状またはらせん状のワイヤー等からなる補強部材を有していることがより好ましい。
【0043】
フレキシブル中空部材の材質としては、可撓性を有していれば特に制限されないが、通常、軽金属製、樹脂製、またはそれらの複合素材のもの、あるいはそれらと環状またはらせん状のワイヤーからなるものを挙げることができる。当該軽金属としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。当該樹脂としては、例えば、合成ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンが挙げられる。フレキシブル中空部材は、通常、気密性を有する。
フレキシブル中空部材として好適な性質を有するものは、フレキシブルダクト、フレキシブルチューブ等の商品名でダクト製品として市販されている。これら市販品をフレキシブル中空部材としてそのまま、または適宜加工して使用することができる。
【0044】
フレキシブル中空部材は、ダクト洗浄作業の開始時に、通常、収縮状態のものが当該ダクトの挿入口に配置、または接続され、当該フレキシブル中空部材の中空部を通して、ブラシ、緩衝ボックス、エアホース、エアホースを覆う中空部材などがダクト内に挿入される。ダクト洗浄後には、フレキシブル中空部材を収縮状態から伸長状態に伸ばし、エアホースや中空部材、緩衝ボックスといった部品、またはそれらに加えてブラシなどをフレキシブル中空部材で覆いながらダクト内から回収する。これにより、洗浄の過程で付着した粉塵や油といった汚れが、周囲、例えば焼肉テーブル上や店内へ飛散、落下することを防止することができる。
【0045】
7.2 ダクト
本発明洗浄用具で洗浄することができるダクトは、本発明洗浄用具を使用することができるダクトであれば特に制限されないが、例えば、排煙用ダクトや換気用ダクトを挙げることができる。本発明洗浄用具は、排煙用ダクトに用いられることが好ましい。排煙用ダクトは、通常、工場や焼肉店等の飲食店において、建造物内より煙を除去するために配設されるものである。煙は不完全燃焼の結果にできる微粒子を含む空気の固まりであり、通常、スス、粉塵、油分、有害な微粒子等を含むことが多いため、排煙用ダクトは特に油分の汚れや粉塵の蓄積が顕著である。
【0046】
7.3 本発明洗浄用具の使用方法
本発明洗浄用具は、次のようにして使用することができる。
エアホースを中空部材ないし分岐管に挿通し、ブラシが装着された本発明洗浄用具に当該エアホースおよび中空部材を取り付け、その中空部材に必要に応じて分岐管を取り付け、中空部材の枝分かれ部分または分岐管と吸引機とを適当な吸引ホースを介して連結し、任意にフレキシブル中空部材をセットする。この組み立てる順番は適宜選択される。
【0047】
そして、本発明洗浄用具を洗浄対象のダクト内に挿入し、エアコンプレッサーを作動させる。エアコンプレッサーの作動により発生した圧縮空気がエアホースを通じて回転羽根ボックスに送られ、回転羽根ボックス内の回転羽根が回転すると共に、それに連動して先端のブラシが回転することにより、ダクト内壁の汚れを洗浄することができる。
【0048】
また、ダクト内壁をブラシで洗浄しながら、または洗浄後、吸引機を作動することにより、掻き落とされたダクト内壁の汚れを吸い込み、ダクト外へ排出することができる。その際、エアコンプレッサーを作動しながら吸引機による排出作業を行うと、エアコンプレッサーによる圧縮空気の力が加わることから、汚れをダクト外へ効果的に排出することができる。
【実施例】
【0049】
以下、図面を用いて本発明洗浄用具ないしそれを含む洗浄装置をより具体的に説明するが、本発明は図面に記載の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
図1は、本発明洗浄用具を含む洗浄装置Aの一例であり、
図2は、その中の回転羽根ボックス2を担持した緩衝ボックス8付近の拡大断面図である。
図1において、中空部材7等は、途中、記載が省略されている。
【0051】
この一例においては、複数の羽根を有する回転羽根1が回転羽根ボックス2の長手中心線を貫く回転軸1’に保持され前方(ブラシ側)付近に配置され、回転羽根1を回転させるための圧縮空気を回転羽根ボックス2内に送り込むための吸入孔が回転羽根1の傍に2つ設けられている。そして、その吸入孔に設置されているノズルにエアホース5が繋がれ、かかるエアホース5は、緩衝ボックス8の開口部から出て、中空部材7および分岐管10の中空部を通り、エアコンプレッサー6に接続されている。回転羽根ボックス2の後方(中空部材側)には、回転羽根1を回転させるために送り込まれた圧縮空気を逃がすための排出孔3が2つ設けられている。
【0052】
回転軸1’は、回転羽根ボックス2から突出し、ジョイントを介して着脱自在の金属製のブラシ4が装着されている。
【0053】
緩衝ボックス8は前方(ブラシ側)が開放されており、緩衝ボックス8の側面前方に、それより小さい回転羽根ボックス2が溶接により担持されている。回転羽根ボックス2が緩衝ボックス8より小さいため、ブラシ4によって掻き落とされたダクト内壁の汚れが緩衝ボックス8に入り込む空間があり、また、回転羽根ボックス2の排出孔3から出てきた圧縮空気が中空部材7へと移動していくことができる空間が存在する。
【0054】
中空部材7は、樹脂製であり、一方で緩衝ボックス8と、他方で金属製の分岐管10と連結している。分岐管10の斜め方向に延びる開口部には、ホース12を介して吸引機9が連結されている。
【0055】
図3は、本発明洗浄用具を含む洗浄装置Aの使用状態(作業例)を示している。当該図において、下方にあるダクト20は、焼肉ロースターを上部に有する焼肉用テーブル30からの煙を吸い込む排煙用ダクトである。本発明洗浄用具を含む洗浄装置Aに使用されるブラシ4の直径は、ダクト20の内径に合わせて選択されている。緩衝ボックス8の後方には補助ブラシ13が巻き付けられている。また、収縮状態のフレキシブル中空部材11が焼肉テーブル30上のダクト20の入り口に接続されており、ダクト洗浄後にフレキシブル中空部材11を伸長し、その中空部を通過させて、ブラシ4、緩衝ボックス8等、エアホース5、中空部材7などを回収することができる。それにより掻き落とされた油や粉塵等の汚れの飛散、落下などを少しでも防ぐことができる。
【解決手段】本発明として、例えば、回転羽根を有するボックス、前記回転羽根と連動して回転する着脱自在のブラシ、および前記ボックスを担持する緩衝ボックスを含み、回転羽根を有する前記ボックスには当該回転羽根を回転させる動力となる圧縮空気を送り込むための孔と、送り込まれた圧縮空気を逃がすための孔とを有することを特徴とするダクト洗浄用具を挙げることができる。
本発明によれば、例えば、大型のエアコンプレッサーを用いることにより、多くのダクトを一度に洗浄することができる。また、エアコンプレッサーは、現場近くで調達することが容易であり、ダクト洗浄用具を作動するための動力源の長時間の携行を不要にすることができる。