(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276455
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】歯磨き具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A46D 1/05 20060101AFI20180129BHJP
A61C 15/02 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
A46D1/05
A61C15/02 501
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-112286(P2017-112286)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-148620(P2017-148620A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年6月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314000800
【氏名又は名称】株式会社無有
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−5878(JP,A)
【文献】
実開昭64−28617(JP,U)
【文献】
特開2006−297029(JP,A)
【文献】
特開2006−68307(JP,A)
【文献】
特開2006−314621(JP,A)
【文献】
特開2001−104338(JP,A)
【文献】
実開昭51−74890(JP,U)
【文献】
特開2000−225503(JP,A)
【文献】
特開2003−25006(JP,A)
【文献】
特開2007−268100(JP,A)
【文献】
実開昭60−180415(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00−17/08
A46D 1/00−99/00
A61C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部と、複数の線条からなる歯磨き部とを有する歯磨き具を製造する方法であって、
先端部が前記歯磨き部となり残部が前記柄部となる紙軸を準備する準備工程と、
前記準備工程において準備された前記紙軸の前記先端部を当該先端部の延在方向と平行に切断する切断工程と、
前記切断工程において切断された前記先端部が板状に変形するように、当該先端部の切断面と垂直な方向から当該先端部を押圧する押圧工程と、
前記押圧工程において板状に変形した前記先端部を当該先端部の幅方向と垂直に切断することにより、当該先端部を前記複数の線条に分割する切割工程と、
を含むことを特徴とする歯磨き具の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記押圧工程においては、前記先端部の幅が前記残部の幅の2倍以上になるように、当該先端部を押圧する歯磨き具の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記押圧工程においては、前記紙軸の前記先端部を当該先端部の延在方向と垂直な方向から2枚の平板で挟むことにより、当該先端部を押圧する歯磨き具の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切割工程においては、前記紙軸の前記先端部の複数箇所を切断する歯磨き具の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切割工程においては、前記先端部の前記複数箇所を同時に切断する歯磨き具の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切割工程においては、前記紙軸を収容して固定する筒状の固定具に当該紙軸が収容された状態で、前記先端部を切断する歯磨き具の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切割工程においては、前記紙軸の前記先端部の前記幅方向と垂直な平面内で運動する刃を用いて、当該先端部を切断する歯磨き具の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切割工程においては、互いに平行に設けられた複数の前記刃を用いて、当該先端部を切断する歯磨き具の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切断工程においては、前記紙軸の前記先端部の複数箇所を切断する歯磨き具の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切断工程においては、前記先端部の前記複数箇所を同時に切断する歯磨き具の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の歯磨き具の製造方法において、
前記準備工程において準備された前記紙軸の後端部を先細りの形状に加工する加工工程を含む歯磨き具の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切割工程は、前記加工工程よりも後に実行される歯磨き具の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記加工工程においては、前記紙軸の前記後端部を刃で切削することにより、当該後端部を先細りの形状に加工する歯磨き具の製造方法。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記加工工程においては、前記紙軸の前記後端部を研磨材で研削することにより、当該後端部を先細りの形状に加工する歯磨き具の製造方法。
【請求項15】
請求項11又は12に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記加工工程においては、前記紙軸の前記後端部を型に押し付けることにより、当該後端部を先細りの形状に加工する歯磨き具の製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れかに記載の歯磨き具の製造方法において、
前記切割工程よりも後に、前記複数の線条の延在方向を揃えるように、前記紙軸の前記先端部を整形する整形工程を含む歯磨き具の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記整形工程においては、出口の径が入口の径より小さい筒状の整形具に、前記紙軸を当該紙軸の後端部側から通すことにより、前記先端部を整形する歯磨き具の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れかに記載の歯磨き具の製造方法において、
前記紙軸における前記先端部の近傍部分を弓形に成形する成形工程を含む歯磨き具の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記成形工程は、前記切割工程よりも後に実行される歯磨き具の製造方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の歯磨き具の製造方法において、
前記成形工程においては、前記紙軸の前記近傍部分を型に押し付けることにより、当該近傍部分を弓形に成形する歯磨き具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯を磨くための歯磨き具を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯磨き具としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された歯磨き具は、柄部、及びブラシ部を備えている。柄部は、2枚の長方形状の厚紙が折畳み機構を介して連結されてなる。ブラシ部は、柄部の先端に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−110727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の歯磨き具においては、ブラシ部が、歯を磨くための歯磨き部として機能する。すなわち、柄部を手に持ってブラシ部で歯を擦ることにより、歯を磨くことができる。しかしながら、この歯磨き具を製造するには、柄部に対して歯磨き部を取り付ける工程が必要となる。かかる工程の存在は、歯磨き具の製造工程の複雑化を招く要因となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、柄部に対する歯磨き部の取付工程が不要な歯磨き具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による歯磨き具の製造方法は、柄部と、複数の線条からなる歯磨き部とを有する歯磨き具を製造する方法であって、先端部が上記歯磨き部となり残部が上記柄部となる紙軸を準備する準備工程と、上記準備工程において準備された上記紙軸の上記先端部が板状に変形するように、当該先端部の延在方向と垂直な方向から当該先端部を押圧する押圧工程と、上記押圧工程において板状に変形した上記先端部を当該先端部の幅方向と垂直に切断することにより、当該先端部を上記複数の線条に分割する切割工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この製造方法においては、柄部及び歯磨き部の双方を構成する紙軸が準備される。紙軸の先端部は、当該先端部の延在方向と垂直な方向から押圧されることにより、板状に変形させられる。その後、板状に変形した先端部が当該先端部の幅方向と垂直に切断されることにより、当該先端部が複数の線条に分割される。このようにして複数の線条に分割された紙軸の先端部が歯磨き部となり、紙軸の残部が柄部となる。このため、柄部に対して歯磨き部を取り付ける工程を行うことなく、柄部及び歯磨き部を有する歯磨き具を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柄部に対する歯磨き部の取付工程が不要な歯磨き具の製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による歯磨き具の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】準備工程において準備される紙軸30を示す斜視図である。
【
図3】加工工程において後端部36が加工された紙軸30を示す斜視図である。
【
図4】切断工程において用いられる刃52について説明するための側面図である。
【
図5】紙軸30の先端部32に刃52が入った状態を示す側面図である。
【
図6】刃52で切断された後の先端部32を示す正面図である。
【
図7】押圧工程において用いられる平板54について説明するための側面図である。
【
図8】先端部32が平板54で挟まれている状態を示す側面図である。
【
図9】先端部32が板状に変形した紙軸30を示す平面図である。
【
図10】切割工程において紙軸30が固定具40に収容された状態を示す断面図である。
【
図11】切割工程において用いられる刃56について説明するための断面図である。
【
図12】紙軸30の先端部32に刃56が入った状態を示す断面図である。
【
図13】刃56で切断された後の先端部32を示す正面図である。
【
図14】切割工程において先端部32が複数の線条22に分割された紙軸30を示す平面図である。
【
図15】整形工程において用いられる整形具60について説明するための断面図である。
【
図16】紙軸30が整形具60を通過する途中の様子を示す断面図である。
【
図17】紙軸30が整形具60を通過した後の様子を示す断面図である。
【
図18】歯磨き具1の製造方法の変形例を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明による歯磨き具の一実施形態を示す側面図である。歯磨き具1は、柄部10、及び歯磨き部20を備えている。柄部10は、歯磨き具1の使用者が手で持つ部分である。柄部10は、丸棒状をしている。柄部10の一端側に、歯磨き部20が設けられている。柄部10の他端部は、先細りの形状をしている。柄部10及び歯磨き部20は、全体が1枚の紙シートによって構成されている。換言すれば、1枚の紙シートが、柄部10及び歯磨き部20の双方を構成している。
【0012】
歯磨き部20は、歯を磨くための部分である。歯磨き部20は、複数の線条22からなる。各線条22は、上記紙シートの一部である細長い紙片によって構成されている。各線条22を構成する紙片は、柄部10と連続している。すなわち、複数の線条22は、柄部10の一端から分岐している。歯磨き部20には、口腔用の薬剤(例えば歯磨き)が予め含浸又は付着していてもよい。薬剤は、液体状、ペースト状、ジェル状、粉末状の何れであってもよい。
【0013】
図2〜
図17を参照しつつ、本発明による歯磨き具の製造方法の一実施形態として、歯磨き具1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、準備工程、加工工程、切断工程、押圧工程、切割工程、及び整形工程を含んでいる。
【0014】
準備工程は、紙軸30を準備する工程である(
図2参照)。紙軸30は、1枚の矩形状の紙シートを丸めて棒状にしたものである。この工程においては、紙シートを棒状に丸めて紙軸30を形成してもよいし、既製品の紙軸30を調達してもよい。紙軸30は、その先端から一定長さの部分である先端部32と、先端部32以外の部分である残部34とからなる。ただし、先端部32の長さd1は、残部34の長さd2よりも小さい。先端部32の長さd1は、例えば、5〜15mm程度である。残部34の長さd2は、例えば、55〜75mm程度である。また、紙軸30の太さd3(直径)は、例えば、1.5〜4mm程度である。紙軸30においては、先端部32が歯磨き部20となり、残部34が柄部10となる。紙軸30には、必要に応じて、防水加工ないし撥水加工を施してもよい。
【0015】
加工工程は、準備工程において準備された紙軸30の後端部36を先細りの形状に加工する工程である(
図3参照)。後端部36は、紙軸30の後端から一定長さの部分である。後端部36は、残部34の一部を構成している。例えば、紙軸30の後端部36を刃で切削することにより、後端部36を先細りの形状に加工することができる。詳細には、例えば、紙軸30を溝に嵌めて固定し、高速回転するp枚刃(pは2以上5以下の整数)で後端部36を削ってもよい。切削後に後端部36の表面を研磨してもよい。
【0016】
上記加工は、後端部36を研磨材で研削することにより行ってもよいし、後端部36を型に押し付けることにより行ってもよい。研磨材で研削する場合、目の粗さが相異なる複数の研磨材を用いることが好ましい。例えば、比較的目の粗い第1の研磨材で後端部36を研削した後、比較的目の細かい第2の研磨材で後端部36を研削することが考えられる。また、第1の研磨材よりも目が細かくかつ第2の研磨材よりも目が粗い第3の研磨材を用いて、第1の研磨材、第3の研磨材、第2の研磨材の順番で後端部36を研削してもよい。研磨材としては、例えば、紙やすりを用いてもよい。
【0017】
切断工程は、準備工程において準備された紙軸30の先端部32を当該先端部32の延在方向と平行に切断する工程である。本実施形態においては、紙軸30の先端部32の複数箇所を同時に切断する。この切断工程は、押圧工程よりも先に実行される。
【0018】
切断工程においては、例えば、2枚の刃52を用いて先端部32を切断する(
図4参照)。これらの刃52は、互いに平行に配置されている。各刃52は、先端部32の延在方向(
図4の左右方向)に平行な平面内で運動する。刃52は、往復運動しながら先端部32を切断するものであってもよいし、回転運動しながら先端部32を切断するものであってもよい。
【0019】
図5に示すように、紙軸30の先端部32に2枚の刃52を同時に入れて、先端部32をその延在方向と平行に切断する。これにより、
図6に示すように、先端部32には、2つの切り口C1,C2が生じる。切り口C1と切り口C2とは、互いに平行である。これらの切り口C1,C2は、先端部32を上下に3等分する位置に存在する。
【0020】
押圧工程は、準備工程において準備された紙軸30の先端部32が板状に変形するように、当該先端部32の延在方向と垂直な方向から当該先端部32を押圧する工程である。具体的には、切断工程において切断された先端部32の切断面と垂直な方向から先端部32を押圧する。このとき、先端部32の幅が残部34の幅(直径)の2倍以上になるように、当該先端部32を押圧することが好ましい。
【0021】
押圧工程においては、2枚の平板54を用いて先端部32を押圧する(
図7参照)。これらの平板54は、互いに平行に配置されている。また、これらの平板54は、切り口C1,C2に対しても平行である。一方の平板54は先端部32の上側に位置し、もう一方の平板54は先端部32の下側に位置している。
【0022】
図8に示すように、平板54どうしを近づけるように動かして、先端部32を挟み込む。このように紙軸30の先端部32を当該先端部32の延在方向と垂直な方向から2枚の平板54で挟むことにより、当該先端部32を押圧する。これにより、
図9に示すように、先端部32は、押し潰されて板状に変形する。
【0023】
切割工程は、押圧工程において板状に変形した先端部32を当該先端部32の幅方向と垂直に切断することにより、当該先端部32を複数の線条22に分割する工程である。本実施形態においては、先端部32の複数箇所を同時に切断する。この切割工程は、加工工程よりも後に実行される。
【0024】
切割工程においては、固定具40に紙軸30が収容された状態で、先端部32を切断する(
図10参照)。同図は、固定具40の中心軸を含む断面を示している。固定具40には、紙軸30の残部34のみが収容されている。すなわち、先端部32の切断は、先端部32の全体が固定具40から露出した状態で行われる。
【0025】
固定具40は、筒状をしており、紙軸30を収容して固定する。詳細には、固定具40は、円筒状をしており、その内径は紙軸30の太さd3に略等しい。紙軸30の中心軸と固定具40の中心軸とが一致するように紙軸30が固定具40に収容されることにより、紙軸30が固定具40に固定される。
【0026】
さらに、切割工程においては、刃56を用いて先端部32を切断する(
図11参照)。本実施形態においては、複数(具体的には6枚)の刃56が設けられている。これらの刃56は、互いに平行に配置されている。各刃56は、先端部32の幅方向(
図11の上下方向)と垂直な平面内で運動する。刃56は、往復運動しながら先端部32を切断するものであってもよいし、回転運動しながら先端部32を切断するものであってもよい。
【0027】
図12に示すように、紙軸30の先端部32に6枚の刃56を同時に入れて、板状の先端部32をその幅方向と垂直に切断する。これにより、
図13に示すように、先端部32には、6つの切り口C3〜C8が生じる。同図は、刃56で切断された後の先端部32を固定具40の中心軸の方向から見た図である。これらの切り口C3〜C8は、互いに平行である。また、切り口C3〜C8は、切断工程において生じた切り口C1,C2に対して垂直である。切り口C3〜C8は、先端部32を幅方向に7等分する位置に存在する。このように先端部32は、切断されることにより、複数の線条22に分割される(
図14参照)。その後、必要に応じて、線条22に付着した削りかす等を除去する。かかる除去には、例えば、エアーを噴射するブロワーを用いることができる。
【0028】
整形工程は、複数の線条22の延在方向を揃えるように、紙軸30の先端部32を整形する工程である。この整形工程は、切割工程よりも後に実行される。整形工程においては、整形具60を用いて先端部32を整形する(
図15参照)。整形具60は、筒状をしている。詳細には、整形具60は、入口60aから出口60bに向かうにつれて次第に径が小さくなるテーパ状をしている。これにより、整形具60においては、出口60bの径が入口60aの径より小さくなっている。出口60bの径は、紙軸30の太さd3に略等しい。
図16及び
図17に示すように、整形具60に紙軸30をその後端部36側から通すと、先端部32が出口60bを通過する際に整形具60から力を受ける。これにより、複数の線条22の延在方向が揃うように先端部32が整形される。以上により、
図1に示す歯磨き具1が得られる。歯磨き具1は、必要に応じて、1本ずつあるいは複数本ずつ包装袋に詰められる。なお、歯磨き具1を包装袋に詰めるのに先立って、歯磨き具1に滅菌処理を施してもよい。
【0029】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態の製造方法においては、柄部10及び歯磨き部20の双方を構成する紙軸30が準備される。紙軸30の先端部32は、その延在方向と垂直な方向から押圧されることにより、板状に変形させられる。その後、板状に変形した先端部32がその幅方向と垂直に切断されることにより、当該先端部32が複数の線条22に分割される。このようにして複数の線条22に分割された紙軸30の先端部32が歯磨き部20となり、紙軸30の残部34が柄部10となる。このため、柄部10に対して歯磨き部20を取り付ける工程を行うことなく、柄部10及び歯磨き部20を有する歯磨き具1を得ることができる。したがって、柄部10に対する歯磨き部20の取付工程が不要な歯磨き具1の製造方法が実現されている。
【0030】
また、紙軸30は、紙シートが幾重にも重なった構造を有する。それゆえ、板状に変形した先端部32をその幅方向と垂直に切断した場合、1回の切断で多数の線条22を得ることができる。このため、紙軸30の先端部32を幅方向と垂直に切断することにより、多数の線条22からなる歯磨き部20を効率良く形成することができる。このように歯磨き部20を構成する線条22の本数を多くすることは、歯の広範囲を同時に磨くのに有利である。
【0031】
さらに、切割工程に先立って、押圧工程において先端部32を板状に変形させている。このように先端部32を平たくしておくことにより、先端部32を切断しやすくなる。
【0032】
歯磨き具1において歯磨き部20は、紙製の複数の線条22からなるため柔らかい。それゆえ、歯磨き具1には、歯や歯肉を傷つけにくいという利点がある。このため、歯磨き具1は、子供にも安心して使用することができる。また、歯磨き時に線条22が柄部10から分離して口内に残ってしまった場合であっても、口の中を傷つける心配が少ない。
【0033】
押圧工程においては、先端部32をその延在方向と垂直な方向から2枚の平板54で挟むことにより、当該先端部32を押圧している。これにより、先端部32を板状に変形させることを容易に行うことができる。ただし、押圧工程において平板54を用いることは、必須でない。
【0034】
切割工程においては、紙軸30の先端部32の複数箇所を切断している。これにより、1箇所のみを切断する場合に比して、より多くの線条22からなる歯磨き部20を形成することができる。
【0035】
切割工程においては、先端部32の複数箇所を同時に切断している。これにより、1箇所ずつ順番に切断する場合に比して、先端部32の切断を短時間で行うことができる。
【0036】
切割工程においては、固定具40に紙軸30が収容された状態で、先端部32を切断している。これにより、紙軸30を安定的に固定しておくことができるため、先端部32の切断を行いやすくなる。ただし、切割工程において固定具40を用いることは、必須でない。
【0037】
切割工程においては、紙軸30の先端部32の幅方向と垂直な平面内で運動する刃56を用いて、先端部32を切断している。かかる刃56を用いることにより、先端部32を幅方向と垂直に容易に切断することができる。
【0038】
切割工程においては、互いに平行に設けられた複数の刃56を用いて、先端部32を切断している。これにより、切断部32の複数箇所を同時に切断することを容易に行うことができる。
【0039】
押圧工程よりも先に、先端部32をその延在方向と平行に切断する切断工程が実行されている。このようにして先端部32に予め切れ目(切り口C1,C2)を入れておくことにより、切割工程においてより多くの線条22を得ることができる。
【0040】
切断工程においては、紙軸30の先端部32の複数箇所を切断している。これにより、1箇所のみを切断する場合に比して、切割工程においてより多くの線条22を得ることができる。
【0041】
切断工程においては、先端部32の複数箇所を同時に切断している。これにより、1箇所ずつ順番に切断する場合に比して、先端部32の切断を短時間で行うことができる。
【0042】
紙軸30の後端部36を先細りの形状に加工する加工工程が実行されている。このように後端部36を先細りの形状に加工することにより、歯磨き具1においては、後端部36で歯間の清掃をしやすくなる。ただし、加工工程を実行することは、必須でない。
【0043】
切割工程は、加工工程よりも後に実行されている。この場合、切割工程を加工工程よりも先に実行する場合に比して、加工工程を容易に行うことができる。加工工程の前に先端部32が切断されていると、後端部36を先細りの形状に加工する際、先端部32が邪魔になりやすいからである。ただし、切割工程を加工工程よりも後に実行することは、必須でない。切割工程は、加工工程より先に実行されてもよい。
【0044】
複数の線条22の延在方向を揃えるように、紙軸30の先端部32を整形する整形工程が実行されている。このように先端部32を整形することにより、歯磨き具1の美観を向上させることができる。ただし、整形工程を実行することは、必須でない。
【0045】
整形工程においては、整形具60に紙軸30を後端部36側から通すことにより、先端部32を整形している。これにより、先端部32の整形を容易に行うことができる。ただし、整形工程において整形具60を用いることは、必須でない。例えば、先端部32を押圧することにより、先端部32を整形してもよい。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、全体が一直線状に延びる柄部10が形成される場合を例示した。しかし、
図18に示すように、一部が曲線状に延びる柄部10を形成してもよい。同図においては、柄部10における歯磨き部20の近傍部分が曲線状に延びている。柄部10がこのような形状をしている場合、歯の裏側を磨きやすくなる。この場合、紙軸30における先端部32の近傍部分を弓形に成形する成形工程が実行される。成形工程は、切割工程よりも後に実行されることが好ましい。成形工程においては、例えば、紙軸30の上記近傍部分を型に押し付けることにより、当該近傍部分を弓形に成形することができる。
【0047】
上記実施形態においては、切断工程において先端部32の複数箇所を切断する場合を例示した。しかし、切断工程においては、先端部32の1箇所のみを切断してもよい。なお、切断工程を実行することは、必須でない。
【0048】
上記実施形態においては、切割工程において先端部32の複数箇所を切断する場合を例示した。しかし、切割工程においては、先端部32の1箇所のみを切断してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 歯磨き具
10 柄部
20 歯磨き部
22 線条
30 紙軸
32 先端部
34 残部
36 後端部
40 固定具
52 刃
54 平板
56 刃
60 整形具
60a 入口
60b 出口