(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276469
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ブタ用飼料中のナラシンの抗ウイルス作用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/351 20060101AFI20180129BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20180129BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20180129BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20180129BHJP
A23K 20/195 20160101ALI20180129BHJP
A23K 50/30 20160101ALI20180129BHJP
【FI】
A61K31/351
A61P31/14
A61K9/08
A61K9/14
A23K20/195
A23K50/30
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-519530(P2017-519530)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公表番号】特表2017-536345(P2017-536345A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】US2015059848
(87)【国際公開番号】WO2016077282
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2017年4月11日
(31)【優先権主張番号】62/079,159
(32)【優先日】2014年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・アラン・マーステラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェーン・グランビル・オーウェンズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・リー・パルス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジョン・リッター
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・シャーン・ローゼンクランズ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エドマンド・ウェバー
【審査官】
伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−81753(JP,A)
【文献】
特表平8−509372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/351
A23K 20/195
A23K 50/30
A61K 9/08
A61K 9/14
A61P 31/14
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幼ブタのブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)感染の治療方法であって、ナラシンを経口的に許容可能な担体と共に前記ブタに投与することを含む前記方法。
【請求項2】
前記経口的に許容可能な担体が動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、および動物飼料以外の固形組成物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナラシンの濃度が、ナラシンおよび前記経口的に許容可能な担体を含む組成物に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、および約60mg/kgからなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
幼ブタのブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)感染の治療方法であって、ナラシンを動物飼料と共に前記ブタに投与することを含み、ナラシンが前記動物飼料に対して約60mg/kgの濃度で存在する前記方法。
【請求項5】
幼ブタのPEDV感染の治療薬の製造のためのナラシンの使用。
【請求項6】
ナラシンが、動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、および動物飼料以外の固形組成物からなる群より選択される経口的に許容可能な担体との組成物の中に存在する、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ナラシンが前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、および約60mg/kgの濃度で存在する、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
幼ブタのPEDV感染を治療するための組成物であって、ナラシンと経口的に許容可能な担体を含む前記組成物。
【請求項9】
前記経口的に許容可能な担体が動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、および動物飼料以外の固形組成物からなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ナラシンの濃度が、前記組成物に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、および約60mg/kgからなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼ブタ(nursery pig)をブタ流行性下痢ウイルス感染について治療するためのナラシン含有組成物およびナラシンの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)感染に関連する症状の治療についての分野内にある。PEDVは、感染したブタのうち最大で100%の死亡率の原因となるが、より高齢のブタでは限定的な死亡率を有するコロナウイルスである。米国では毎日10000頭を超える子豚がPEDVで死ぬこともある。したがって、PEDVは豚肉製品の価格および入手しやすさに対して著しい経済的影響を有している。
【0003】
米国では現在のところ2種類のPEDVワクチンが市販されている。両方のワクチンが妊娠中の雌ブタでの使用について認可されており、それによって雌ブタの乳汁中の抗体を介して受動免疫を養育中の子豚に提供することができる。しかしながら、これらのワクチンの効力はまだ実証されておらず、それらのワクチンは注射によって個体毎に雌ブタに投与されなければならず、そして母体由来の抗体のレベルは子豚の腸が巨大分子の吸収を終止した後に低下し始める。
【0004】
ナラシンはストレプトマイセス属(Streptomyces)の種によって生産されるポリエーテルイオノフォアであり、ストレプトマイセス・ライディカス(S. lydicus)およびストレプトマイセス・グラニュロルバー(S. granuloruber)の培養物から精製され得る。ナラシンは肥育豚の体重増を向上させるために多くの国々で監督官庁によって認可されている。ナラシンは、デング熱の原因であるフラビウイルスを感染させた培養ヒト細胞に添加されるとそのウイルスの複製を阻害することが示されている(Lowら著、Antiviral Therapy誌、第16巻:1203〜18頁、2011年)。しかしながら、飼料と共に投与されるとき、ナラシンは飼料に対して約83mg/kgの濃度で提供されると、少なくともチアムリンが存在するときには幼ブタにとって有毒であることが報告されている。
【0005】
PEDVに対する新規の治療、特に離乳後のブタ、例えば幼ブタを保護することになる治療が必要とされている。一度に多数の動物に対して経口的に行うことができる治療も有利となる。PEDVはエアロゾル化したウイルスによって伝播することが示されているので、感染したブタからのウイルスの排出を減少させることになる治療によってこのウイルスが原因の疾患の封じ込めが促進されることになる。
発明の概要
【0006】
以上より、本発明は、幼ブタをPEDV感染について治療する方法であって、ナラシンを経口的に許容可能な担体と共に前記ブタに投与することを含む前記方法を提供する。その経口的に許容可能な担体は動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、および動物飼料以外の固形組成物からなる群より選択される。本方法において使用されるナラシンの濃度は、前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、または約60mg/kgからなる群より選択される。本発明は、幼ブタをPEDV感染について治療する方法であって、ナラシンを経口的に許容可能な担体と共に前記ブタに投与することを含み、その経口的に許容可能な担体が動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、および動物飼料以外の固形組成物からなる群より選択され、且つ、ナラシンの濃度が、前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、および約60mg/kgからなる群より選択される前記方法も提供する。
【0007】
本発明は、幼ブタをPEDV感染について治療する方法であって、ナラシンを動物飼料と共に前記ブタに投与することを含み、ナラシンの濃度が前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、または約60mg/kgであり得る前記方法も提供する。本発明は、幼ブタをPEDV感染について治療する方法であって、ナラシンを動物飼料と共に前記ブタに投与することを含み、ナラシンの濃度が前記経口的に許容可能な担体に対して約60mg/kgである前記方法も提供する。
【0008】
さらに、本発明は幼ブタのPEDV感染の治療に使用されるナラシンを提供する。ナラシンは、例えば、限定されないが、動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、または動物飼料以外の固形組成物などの経口的に許容可能な担体と共に組成物として幼ブタに提供され得る。この組成物中に存在するナラシンの濃度は前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、または約60mg/kgであり得る。本発明は、幼ブタのPEDV感染の治療に使用されるナラシンであって、動物飼料と共に投与され、且つ、濃度が前記動物飼料に対して約30mg/kgから約60mg/kgである前記ナラシンも提供する。本発明は、幼ブタのPEDV感染の治療に使用されるナラシンであって、動物飼料と共に投与され、且つ、濃度が前記動物飼料に対して約60mg/kgである前記ナラシンも提供する。
【0009】
さらに、本発明は、経口的に許容可能な担体と共に幼ブタのPEDV感染の治療に使用されるナラシンであって、前記経口的に許容可能な担体が動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、または動物飼料以外の固形組成物を含み、且つ、濃度が前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、または約60mg/kgであり得る前記ナラシンを提供する。さらに、本発明は、動物飼料と共に幼ブタのPEDV感染の治療に使用されるナラシンであって、濃度が前記動物飼料に対して約30mg/kgから約60mg/kgである前記ナラシンも提供する。さらに、本発明は、動物飼料と共に幼ブタのPEDV感染の治療に使用されるナラシンであって、濃度が前記動物飼料に対して約60mg/kgである前記ナラシンも提供する。
【0010】
さらに、本発明は、幼ブタのPEDV感染を治療するための医薬の調製におけるナラシンの使用を提供する。その医薬は、例えば、限定されないが、動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、または動物飼料以外の固形組成物などの経口的に許容可能な担体と共にナラシンを含む組成物であり得る。この組成物中に存在するナラシンの濃度は前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、または約60mg/kgであり得る。さらに、本発明は、幼ブタのPEDV感染を治療するための医薬の調製におけるナラシンの使用であって、その医薬がナラシンと動物飼料であり、且つ、ナラシンの濃度が前記動物飼料に対して約30mg/kgから約60mg/kgである前記使用を提供する。さらに、本発明は、幼ブタのPEDV感染を治療するための医薬の調製におけるナラシンの使用であって、その医薬がナラシンと動物飼料であり、且つ、ナラシンの濃度が前記動物飼料に対して約60mg/kgである前記使用を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、幼ブタに抗ウイルス作用を提供する組成物であって、ある濃度のナラシンと経口的に許容可能な担体を含む前記組成物を提供する。その経口的に許容可能な担体は動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、または動物飼料以外の固形組成物を含み得る。上記組成物中のナラシンの濃度は前記組成物に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、または約60mg/kgであり得る。さらに、本発明は、幼ブタに抗ウイルス作用を提供する組成物であって、ある濃度のナラシンと動物飼料を含み、ナラシンの濃度が前記動物飼料に対して約30mg/kgから約60mg/kgである前記組成物を提供する。さらに、本発明は、幼ブタに抗ウイルス作用を提供する組成物であって、ある濃度のナラシンと動物飼料を含み、ナラシンの濃度が前記動物飼料に対して約60mg/kgである前記組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、ある濃度のナラシンと経口的に許容可能な担体を含む組成物であって、幼ブタに抗ウイルス作用を提供する組成物であり、前記経口的に許容可能な担体が動物飼料、動物飼料以外の液体組成物、および動物飼料以外の固形組成物からなる群より選択され、且つ、ナラシンの濃度が前記経口的に許容可能な担体に対して約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、および約60mg/kgであり得る前記組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
グラム陽性細菌、嫌気性細菌および真菌に対する有用な治療薬としての、抗コクシジウム薬としての、および反芻動物における飼料利用を向上させるための薬剤としてのナラシン、およびナラシンの作製方法および使用方法が米国特許第4038384号明細書(1977年7月26日に公開)、米国特許第4309504号明細書(1982年1月5日に公開)、および米国特許第4342829号明細書(1982年8月3日に公開)に列挙されている。Bergら著、J. Antibiot.誌、第31巻:1〜6頁(1978年)および“Narasin, a new polyether antibiotic: discovery and fermentation studies、第38章、471〜485頁、第18巻、Developments in Industrial Microbiology[微生物学学会の出版物(1977年)]も参照されたい。
【0014】
本明細書において使用される場合、「治療すること(treating)」、「治療するため(to treat)」、または「治療(treatment)」という用語は既存の症状、障害、状態、または疾患を抑止すること、遅らせること、止めること、抑制すること、改善すること、またはそれの進行もしくは重症度を元に戻すことを含む。治療は予防的または治療的に適用され得る。
【0015】
本明細書において使用される場合、「幼ブタ(nursery pig)」は、離乳したが、まだ肥育豚ではないブタである。ブタの離乳は約3週齢(約21日齢)で起こることが典型的であるが、それは早くても1週齢(約7日齢)および遅くても6週齢(約42日齢)で起こり得る。離乳したブタはもう生命維持のために雌ブタの乳汁だけに頼ることはなく、むしろ固形飼料組成物を消費する。
【0016】
本明細書において使用される場合、「肥育豚」は少なくとも約50ポンドの体重のブタ、または約10週齢のブタである。「肥育(growing−finishing)」、「肥育(grow−finish)」および「肥育(grower−finisher)」という用語は同義語である。「ブタ」という用語はイノシシ属のあらゆるメンバーを含む。
【0017】
本明細書において使用される場合、「動物飼料」には、栄養価のために家畜によって消費される食用可能な物質が含まれる。動物飼料には飼料、例えば動物の栄養要求に合う組成物が含まれ、動物の栄養要求に合わない組成物も含まれる。
【0018】
一実施形態ではその組成物はナラシン用の経口的に許容可能な担体を含む。「経口的に許容可能な担体」には経口投与に適切なあらゆる生理学的に許容可能な担体が含まれる。経口的に許容可能な担体には、限定されないが、動物飼料製品中での使用に適切な、および/または動物への経口投与に適切な動物飼料組成物、水性組成物、および液体組成物および固形組成物が含まれる。適切な担体が当技術分野において知られており、それらには米国特許第6780628号明細書に記載されるものが含まれる。
【0019】
次の実験例は幼ブタにおけるウイルスの排出を減少させるための、またはウイルス感染の症状を改善するためのナラシンの使用を例示している。本発明はこの特定の例示的実施例またはどの好ましい実施形態にも限定されず、且つ、本発明はブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)ウイルス、ブタサーコウイルス(PCV)、またはブタコロナウイルスなどの他のウイルスの治療に適用可能である。
【実施例】
【0020】
実験計画
実験施設にPEDV感染が無い81匹の離乳期(21.8±0.6日)の商業的な交雑種の子豚(ウィルソン・プレーリービュー・ファーム、バーリントン、ウィスコンシン)が到着し、6匹が曝露前期間(7日前から0日目)の間に潜在的な交換用の動物として使用された。6匹の子豚を0日目のPEDV曝露の直前に取り除かれ、小屋当たり5匹の子豚を含む15の小屋(n=75動物)を設定した。処置当たり5つの小屋があった。ブロック内の残りのセンチネル子豚について、一方の性別の総計で39匹の子豚と他方の性別の36匹の子豚を使用した。処置群当たり5つの小屋(25匹の子豚)を使用することによって成長能力とウイルス排出の発生について処置群間で有意差(P<0.10)が検出されると推定した。
【0021】
75匹の子豚を対照(イオノフォア無し)、ナラシン(30mg/kg)およびナラシン(60mg/kg)の3つの処置群に無作為に割り当てた。それらの子豚は環境に順応し、0日目でのPEDVによる曝露の前の7日間にわたって毎日給餌された。処置は曝露後に14日間にわたって継続した。それらの3つの処置群のブタに4×10
4TCID
50/mLのPEDV単離物PEDV/USA/NC/2013/49469(アイオワ州立大学獣医学部)を経口投与した。臨床パラメーター、下痢についての臨床スコア、鬱とやせ細り、食物消費率、および体重変化率の変化についてそれらの子豚を毎日モニターし、且つ、ウイルスの排出を測定するためにウイルススワブを毎日採取した。
【0022】
統計的方法
ウイルス排出値をSAS社のRMANOVAおよびPROC MIXED法(SAS社、ケーリー、ノースカロライナ州)によって評価した。他の分析変数には成長能力データ(毎日の体重増の平均値すなわちADG、毎日の飼料摂取量の平均値すなわちADFI、および飼料効率(単位飼料消費量当たりの単位体重増)すなわちG:F)、下痢の発生率と重症度、鬱、およびやせ細りのスコア、および腸組織学スコアおよび免疫組織化学が含まれた。成長能力の結果の分析は一般化線形混合モデルとSAS社のPROC MIXED法を使用して実施された。
【0023】
スコアデータ(下痢、鬱、およびやせ細り)の発生率と重症度を日々の頻度と平均スコアによってまとめた。
【0024】
食物製剤
食物製剤をProvimi社(ルイスバーグ、オハイオ州)において製造し、食事形状で与えた。食物の組成がミネソタバレー・テスティングラボラトリーズ社(ニューアルム、ミネソタ州)によって分析され、栄養分析値が製剤レベルに等しいことが分かった。ナラシンレベルはコーヴァンス・ラボラトリーズ社(グリーンフィールド、インディアナ州)によって分析され、それらのナラシンレベルはそれぞれ0mg/kg、30mg/kg、および60mg/kgという製剤レベルに等しい0mg/kg、29.8mg/kg、および64.1mg/kgであることが分かった。
【0025】
それらの実験用食物にラクトパミン(仕上げ期飼料添加薬)は検出されなかった。
【0026】
成長能力
平均体重(BW)、毎日の体重増の平均値(ADG)、毎日の飼料摂取量の平均値(ADFI)、飼料効率(G:F)、および飼料転換率(F:G)に対するナラシン内包レベルの効果が表1に示されている。
【0027】
30mg/kgと60mg/kgのナラシンの給餌によって全体的なADG(それぞれ7.7%および7.7%)およびG:F(それぞれ7.9%および5.9%)が対照(0mg/kg)と比較して数の上では増加した。
【表1】
【0028】
60mg/kgのナラシンの給餌によって7日前から0日目の期間においてADG(18.8%)が減少した(P<0.10)が、30mg/kgと60mg/kgのナラシンの給餌によって0日目から5日目の期間(表1)におけるADG(それぞれ58.3%および100%)が対照と比較して増加した(P<0.10)。加えて、30mg/kgではなく60mg/kgのナラシンの給餌によって0日目から5日目の期間(78.7%)においてG:Fが0mg/kgのナラシンと比較して増加した(P<0.10)。5日目から14日目の期間ではADG、ADFI、G:F、またはF:Gについて統計学的な差が存在しなかった。全体的な(0日目から14日目)成長能力に対してナラシンレベルは何の効果もなかった(P>0.10)。
【0029】
臨床スコアリング
表2は下痢、鬱、およびやせ細りを測定するために使用されたスコアリングシステムを示している。表3は0mg/kg、30mg/kg、または60mg/kgのナラシンが食餌に含まれた幼ブタにおける下痢、鬱、およびやせ細りの平均スコアを比較している。
【表2】
【0030】
14日間の期間にわたって測定された下痢スコアの平均値はナラシンレベルの上昇によって数の上では減少した(0mg/kg、30mg/kg、および60mg/kgについてそれぞれ1.49、1.45、および1.37)。下痢の重症度はナラシンレベルの上昇によって低下した(0mg/kg、30mg/kg、および60mg/kgについてそれぞれ3.16、2.72、および2.48;表3)。
【0031】
14日間の期間にわたって測定された鬱スコアの平均値はナラシンレベルに影響されなかったが、動物で観察された鬱の低い発生率に留意されたい(0mg/kg、30mg/kg、および60mg/kgのナラシンについてそれぞれ5匹、4匹、および3匹の動物)。その条件を示す比較的に少ない動物に基づいたものではあるが、鬱の重症度はナラシンレベルの上昇によって低下した(表3)。
【0032】
14日間の期間にわたって測定されたやせ細りスコアの平均値または重症度に対するナラシンレベルの効果はほとんどなかった(表3)。
【表3】
【0033】
ウイルス排出
幼ブタの日内ウイルス排出(表4)およびPEDVを排出している幼ブタのパーセンテージ(表5)に対すナラシンレベル(0mg/kg、30mg/kg、60mg/kg)の効果が比較されている。試験0日目から14日目まで毎日検査時に全てのブタから糞スワブを収集した。各試料にブタ個体識別コード、小屋番号、および試料採取日をラベルした。全ての試料を収集時に凍結し、分析のために必要とされるまで貯蔵した。0日目、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、および14日目に収集された糞スワブ試料だけを分析に送った。糞スワブ試料をアイオワ州立獣医診断検査室(ISVDL)に送り、PEDVのウイルス排出を判定するためにリアルタイムRT−PCRを使用してそれらの試料を分析した。
【0034】
対照と比較すると、30mg/kgのナラシンを給餌されたブタは試験2日目と3日目により低い(P<0.10)ウイルス排出を有し、試験7日まで数の上では一貫してより低いウイルス排出を有した。60mg/kgのナラシンを給餌されたブタは試験2日目、3日目、4日目、5日目、および6日目により低い(P<0.10)ウイルス排出を有し、試験7日目および8日目に数の上ではより低いウイルス排出を有した(表4)。
【0035】
PEDVを排出するブタのパーセンテージに対するナラシンレベルの効果はなかった(P>0.10)が、排出期間は概ねナラシンレベルが上昇すると減少した。
【表4】
【0036】
組織学
腸組織学スコアおよび免疫組織化学に対するナラシン内包レベルの効果を分析した。差は有意ではなかった(P>0.05)が、ナラシンレベルが0mg/kgから上昇する(30mg/kg、60mg/kg)につれ組織学スコアは2から0へ減少し、一方で免疫組織化学スコアは60mg/kgのレベルでのみ(3から2へ)減少した。