特許第6276479号(P6276479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276479
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】新規プロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180129BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180129BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180129BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180129BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180129BHJP
   C12P 7/42 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P7/42
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-532523(P2017-532523)
(86)(22)【出願日】2016年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2016071970
(87)【国際公開番号】WO2017022583
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-155759(P2015-155759)
(32)【優先日】2015年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-201180(P2015-201180)
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 実郎
(72)【発明者】
【氏名】壺井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史員
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0246560(US,A1)
【文献】 国際公開第2001/072967(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0102636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)からなる群から選択されるDNAからなるプロモーター:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA;
(c)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列において、1個以上5個以下の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA;及び
(d)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有するDNA。
【請求項2】
請求項記載のプロモーターを含む発現ベクター。
【請求項3】
前記プロモーターが、目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子の上流に連結されている、請求項記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記目的物質が有機酸であり、かつ前記遺伝子が有機酸合成に関わる酵素をコードする遺伝子である、請求項記載のベクター。
【請求項5】
目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に連結された請求項記載のプロモーターとを含む、DNA断片。
【請求項6】
前記目的物質が有機酸であり、かつ前記遺伝子が有機酸合成に関わる酵素をコードする遺伝子である、請求項記載のDNA断片。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれか1項記載の発現ベクター又は請求項5又は6記載のDNA断片を含む形質転換体。
【請求項8】
糸状菌である、請求項記載の形質転換体。
【請求項9】
前記糸状菌が、Acremonium属、Aspergillus属、Aureobasidium属、Bjerkandera属、Ceriporiopsis属、Chrysosporium属、Coprinus属、Coriolus属、Cryptococcus属、Filibasidium属、Fusarium属、Humicola属、Magnaporthe属、Mucor属、Myceliophthora属、Neocallimastix属、Neurospora属、Paecilomyces属、Penicillium属、Phanerochaete属、Phlebia属、Piromyces属、Pleurotus属、Rhizopus属、Schizophyllum属、Talaromyces属、Thermoascus属、Thielavia属、Tolypocladium属、Trametes属、又はTrichoderma属の糸状菌である、請求項記載の形質転換体。
【請求項10】
前記糸状菌がRhizopus属菌である、請求項記載の形質転換体。
【請求項11】
目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と該遺伝子の上流に連結された請求項記載のプロモーターとを含む発現ベクター又はDNA断片を含有する形質転換体を培養すること;及び
該培養で得られた培養物から目的物質を回収すること、
を含む、目的物質の製造方法。
【請求項12】
前記形質転換体が糸状菌である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
前記目的物質が有機酸であり、かつ前記遺伝子が有機酸合成に関わる酵素をコードする遺伝子である、請求項11又は12記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規プロモーター、該プロモーターを含有する発現ベクター及び形質転換体、ならびに該形質転換体を用いた目的物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学合成法のみならず、生物や酵素を用いた物質合成が工業的レベルで行われるようになってきている。生物や酵素による物質合成は、化学合成法と比較して合成時のエネルギーの低減を可能とし、また光学異性体を有する化合物のうち特定の構造に特化した合成を可能にする。一方、微生物による有用物質の工業生産においては、その生産性の向上が重要な課題の一つである。従来、微生物の物質生産性を向上させるための手法として、突然変異等の遺伝学的手法による生産菌の育種が行われてきた。特に最近では、微生物遺伝学及びバイオテクノロジーの発展により、遺伝子組換え技術等を用いたより効率的な微生物学的な有用物質生産が注目されている。
【0003】
糸状菌であるリゾプス属(Rhizopus)は、これまでに、乳酸生産に使用できる微生物として開示されている(特許文献1〜3)。しかしながら、リゾプス属菌では、遺伝学的背景が明らかではなかったこと、分子遺伝学的手法の導入が遅れたこと、多核細胞であるがゆえにモノクローナルな系統の単離、維持に困難が予想されることなどから、遺伝子組換え技術等に関する研究例は少ない。リゾプス属菌における遺伝子の転写に必要なプロモーターとして、ldhAプロモーター(特許文献1、非特許文献1)、pgk1プロモーター(特許文献2、非特許文献2)、pgk2プロモーター(特許文献3)、pdcA及びamyAプロモーター(非特許文献2)、tef及び18SrRNAプロモーター(特許文献4)などが報告されているが、これらプロモーターの発現強度は必ずしも包括的に調べられておらず、工業的な生産における生産コストの低減化のためには、更なる高い生産性を実現するプロモーター及び微生物が求められている。
(特許文献1)米国特許第6268189号明細書
(特許文献2)国際公開第2001/73083号
(特許文献3)国際公開第2001/72967号
(特許文献4)米国特許出願公開第2010/112651号明細書
(非特許文献1)Applied Microbiology and Biotechnology (2004) vol.64:237-242
(非特許文献2)Archives of Microbiology (2006) vol.186:41-50
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本発明は、下記(a)〜(d)からなる群から選択されるDNAからなるプロモーター:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA;
(c)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列において、1又は複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA;及び
(d)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有するDNA、
を提供する。
【0005】
別の一態様において、本発明は、上記プロモーターを含む発現ベクターを提供する。
【0006】
別の一態様において、本発明は、目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に連結された上記プロモーターとを含むDNA断片を提供する。
【0007】
別の一態様において、本発明は、上記発現ベクター又はDNA断片を含む形質転換体を提供する。
【0008】
さらなる一態様において、本発明は、上記形質転換体を培養すること;及び
該培養で得られた培養物から目的物質を回収すること、
を含む目的物質の製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0009】
本明細書において、塩基配列の同一性とは、比較する2つの塩基配列を必要に応じて間隙を導入して整列(アラインメント)させて得られる最大の塩基配列の同一性(%)をいう。本発明において、塩基配列およびアミノ酸配列の配列同一性は、Lipman−Pearson法(Science,1985,227:1435−1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0010】
本明細書において、「プロモーター活性」とは、DNA(遺伝子)のmRNAへの転写を促進する活性を意味する。プロモーター活性は、適当なレポーター遺伝子を用いることにより確認することができる。例えば、プロモーターの下流に検出可能なタンパク質をコードするDNA、すなわち、レポーター遺伝子を連結し、そのレポーター遺伝子の遺伝子産物の生産量を測定することにより、プロモーター活性を確認可能である。レポーター遺伝子の例としては、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)遺伝子、β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子、GFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子等の蛍光タンパク質の遺伝子、などが挙げられる。あるいは、プロモーター活性は、レポーター遺伝子から転写されたmRNAの発現量を定量RT−PCR等で測定することによっても確認することができる。
【0011】
本明細書において、微生物の機能や性状、形質に対して使用する用語「本来」とは、当該機能や性状、形質が当該微生物の野生型に存在していることを表すために使用される。対照的に、用語「外来」とは、当該微生物に元から存在するのではなく、外部から導入された機能や性状、形質を表すために使用される。例えば、ある微生物に外部から導入された遺伝子は、外来遺伝子である。外来遺伝子は、それが導入された微生物と同種の微生物由来の遺伝子であっても、異種の生物由来の遺伝子(異種遺伝子)であってもよい。
【0012】
本明細書において、遺伝子に関する「上流」及び「下流」とは、該遺伝子の転写方向の上流及び下流をいう。例えば、「プロモーターの下流に配置された遺伝子」とは、DNAセンス鎖においてプロモーターの3'側に遺伝子が存在することを意味し、遺伝子の上流とは、DNAセンス鎖における該遺伝子の5'側の領域を意味する。また本明細書において、プロモーターと遺伝子との「作動可能な連結」とは、該プロモーターが該遺伝子の転写を誘導し得るように連結されていることをいう。プロモーターと遺伝子との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
【0013】
本発明は、新規プロモーター、該プロモーターを含有する発現ベクター及び形質転換体、ならびに該形質転換体を用いた目的物質の製造方法の提供に関する。
【0014】
本発明者らは、糸状菌由来のプロモーターについて検討したところ、高い転写活性を有する新規なプロモーターを見出した。
【0015】
本発明のプロモーターは、転写活性が高く、制御対象とする遺伝子の転写量を顕著に向上させることができる。本発明のプロモーターによれば、目的物質の微生物学的製造の効率を向上させることができる。
【0016】
一実施形態において、本発明のプロモーターは、配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列からなるDNAである。別の一実施形態において、本発明のプロモーターは、配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列からなるDNAと実質的に同一の塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNAを包含する。好ましくは、本発明のプロモーターは、配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列からなるDNAのプロモーター活性に対して、10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上のプロモーター活性を有する。
【0017】
本発明のプロモーターの例としては、以下の(a)〜(d)で規定されるDNAからなるプロモーターが挙げられる。
(a)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA
(c)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列において、1又は複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA
(d)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有するDNA
【0018】
上記(a)の、配列番号1〜3で示される塩基配列からなるDNAは、Rhizopus属由来のプロモーターである。配列番号1で示される塩基配列からなるDNAは、Rhizopus delemar由来のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)をコードする遺伝子であるadh1のプロモーターである。配列番号2で示される塩基配列からなるDNAは、Rhizopus delemar由来のコンカナマイシン応答酵素(CIPC)をコードする遺伝子であるcipCのプロモーターである。配列番号3で示される塩基配列からなるDNAは、Rhizopus delemar由来のチアミン合成酵素(NMT1)をコードする遺伝子であるnmt1のプロモーターである。
【0019】
上記(b)についての、配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列とは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3で示される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を意味する。上記(b)のDNAの例としては、配列番号1で示される塩基配列と91%の同一性を有する配列番号24で示される塩基配列からなる、Rhizopus oryzaeのadh1プロモーターDNAが挙げられる。
【0020】
上記(c)についての、配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列において、1又は複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列とは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3で示される塩基配列に対して、1又は複数個の塩基の欠失、置換、又は付加を有する塩基配列である。本明細書中、「1又は複数個の塩基」とは、1個以上10個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下、さらに好ましくは1個以上2個以下の塩基をいう。また、上記「塩基の欠失」とは配列中の塩基の欠落もしくは消失を意味し、上記「塩基の置換」は配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていることを意味し、上記「塩基の付加」とは配列に塩基が付け加えられていることを意味する。「付加」には、配列の一端又は両端への塩基の付加、及び配列中の塩基の間に別の塩基が挿入されることが含まれる。
【0021】
上記(d)における「ストリンジェントな条件」としては、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)記載のサザンハイブリダイゼーション法の条件、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに42℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
【0022】
本発明のプロモーターの取得方法としては、特に制限されず、通常の化学合成法又は遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号1〜3で示される塩基配列に基づいて、本発明のプロモーターDNAを人工合成することができる。DNAの人工合成には、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。あるいは、Rhizopus delemar等の微生物から、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Joseph Sambrook,David W.Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)記載の方法に従って、配列番号1〜3で示されるプロモーター配列をクローニングすることができる。
【0023】
本発明のプロモーターDNAはまた、配列番号1〜3で示される塩基配列のDNAに突然変異を導入したものであってもよい。突然変異導入の手法としては、例えば、紫外線照射及び部位特異的変異導入法が挙げられる。部位特異的変異導入の手法としては、Splicing overlap extension(SOE)PCR(Horton et al.,Gene 77,61−68,1989)を利用した方法、ODA法(Hashimoto−Gotoh et al.,Gene,152,271−276,1995)、Kunkel法(Kunkel,T.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1985,82,488)等が挙げられる。あるいは、Site−Directed Mutagenesis System Mutan−SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、TransformerTM Site−Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD−Plus−Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販の部位特異的変異導入用キットを利用することもできる。突然変異導入したDNAから所望のプロモーター活性を有するものを選択することによって、本発明のプロモーターDNAを取得することができる。例えば、変異導入したDNAの下流に目的遺伝子を作動可能に連結し、該目的遺伝子の発現量解析を行うことにより、プロモーター活性を有するDNAとして確認することができる。
【0024】
塩基配列に対する塩基の置換、欠失又は付加の方法は、例えば、Dieffenbachら(Cold Spring Harbar Laboratory Press,New York,581−621,1995)に記載されている。該手法を用いることによって、配列番号1〜3で示される塩基配列に対して1個又は複数個の塩基が置換、欠失又は付加された塩基配列を取得することができる。
【0025】
本発明のプロモーターは、その下流に配置された遺伝子の発現を制御する機能を有する。本発明のプロモーターを利用することによって、転写活性に優れた発現制御領域を有するDNA断片を得ることができる。例えば、目的遺伝子と、その上流に作動可能に連結された本発明のプロモーターとを含むDNA断片を構築することができる。該DNA断片には、本発明のプロモーター及び目的遺伝子の他に、該プロモーターの転写活性を向上させるようなシス作用エレメントが含まれていてもよい。さらに、該DNA断片は、両末端に制限酵素認識配列を有するように構築することができる。該制限酵素認識配列を使用して、プロモーターをベクターに導入することができる。すなわち、公知のベクターを制限酵素で切断し、そこに、本発明のプロモーターを含み端部に制限酵素切断配列を有するDNA断片を添加することによって、本発明のプロモーターをベクターに導入することができる(制限酵素法)。
【0026】
あるいは、本発明のプロモーターを、目的遺伝子の発現を可能とする発現ベクターに組み込むことで、当該目的遺伝子の発現を転写レベルで向上させることができる発現ベクターが得られる。該発現ベクターにおいては、本発明のプロモーターは、目的遺伝子をコードするDNAの上流に作動可能に連結され得る。本発明のプロモーターを有する発現ベクターは、宿主細胞の染色体に導入する形態や染色体外に保持する形態のいずれであってもよい。またあるいは、目的遺伝子とその上流に作動可能に連結された本発明のプロモーターとを有するDNA断片を構築し、それを宿主細胞のゲノムに直接導入してもよい。なお、糸状菌では、複製起点を持たない線状DNAや環状DNAを細胞に導入するだけで、そのDNAが細胞に保持される例も知られている(Skory et al.,Current Genetics,45,302−310,2004)。したがって、宿主細胞が糸状菌の場合、導入される発現ベクターやDNA断片には複製起点は必ずしも必要ではない。
【0027】
発現ベクターとしては、宿主細胞内で安定に保持され増殖が可能なものであるならば特に限定されず、例えばpUC18/19、pUC118/119、pBR322、pMW218/219、pPTR1/2(TaKaRa)、pRI909/910(TaKaRa)、pDJB2(D.J.Ballance et al.,Gene,36,321−331,1985)、pAB4−1(van Hartingsveldt W et al.,Mol Gen Genet,206,71−75,1987)、pLeu4(M.I.G.Roncero et al.,Gene,84,335−343,1989)、pPyr225(C.D.Skory et al.,Mol Genet Genomics,268,397−406,2002)、pFG1(Gruber,F.et al.,Curr Genet,18,447−451,1990)等が挙げられる。
【0028】
上記発現ベクターやDNA断片において本発明のプロモーターの下流に配置される目的遺伝子は特に限定されない。例えば、目的遺伝子は、目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子である。目的遺伝子は、異種発現産物をコードする異種遺伝子であっても、宿主細胞が本来有する発現産物をコードする遺伝子であっても、その他の任意のタンパク質、ペプチド、核酸などをコードする遺伝子であってもよい。目的遺伝子がコードする物質の例としては、酵素、ホルモン、サイトカイン、その他生理活性ペプチド、トランスポーター、ノンコーディングRNAなどが挙げられる。酵素の例としては、酸化還元酵素(Oxidoreductase)、転移酵素(Transferase)、加水分解酵素(Hydrolase)、脱離酵素(Lyase)、異性化酵素(Isomerase)、合成酵素(Ligase又はSynthetase)、解糖系の酵素、乳酸合成酵素(LDH等)、TCA回路の酵素などが挙げられる。目的遺伝子の好ましい例としては、宿主細胞が本来有する発現産物、例えば、解糖系の酵素、乳酸合成酵素(LDH等)、TCA回路の酵素、トランスポーター、ノンコーディングRNAなどをコードする遺伝子が挙げられ、より好ましくは、乳酸合成酵素、フマル酸合成酵素、コハク酸合成酵素、リンゴ酸合成酵素、α-ケトグルタル酸合成酵素、有機酸原料取り込みトランスポーター、解糖系の酵素、有機酸排出トランスポーター等の、宿主細胞の有機酸合成に関与する酵素が挙げられる。
【0029】
本発明のプロモーターは、微生物における有機酸代謝経路上にない酵素の遺伝子に対するプロモーターであることから、微生物に本来存在する有機酸の合成に関与するプロモーターとは競合しない。したがって、本発明のプロモーターは、微生物学的な有機酸生産において、該有機酸の合成に関与する酵素をコードする遺伝子のプロモーターとして好適に使用することができる。有機酸としては、好ましくは乳酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸及びα−ケトグルタル酸が挙げられる。
【0030】
本発明のプロモーターを含む発現ベクター又はDNA断片を、一般的な形質転換法、例えばエレクトロポレーション法、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、パーティクル・ガン法、アグロバクテリウム法等を用いて宿主細胞に導入することによって、本発明の形質転換体を得ることができる。
【0031】
上記ベクターやDNA断片を導入する宿主細胞としては、その細胞内で、本発明のプロモーターがプロモーターとして機能するものであれば特に限定されないが、通常は真核生物、好ましくは真菌、より好ましくは糸状菌が挙げられる。好ましい糸状菌としては、例えば、Acremonium属、Aspergillus属、Aureobasidium属、Bjerkandera属、Ceriporiopsis属、Chrysosporium属、Coprinus属、Coriolus属、Cryptococcus属、Filibasidium属、Fusarium属、Humicola属、Magnaporthe属、Mucor属、Myceliophthora属、Neocallimastix属、Neurospora属、Paecilomyces属、Penicillium属、Phanerochaete属、Phlebia属、Piromyces属、Pleurotus属、Rhizopus属、Schizophyllum属、Talaromyces属、Thermoascus属、Thielavia属、Tolypocladium属、Trametes属、及びTrichoderma属の糸状菌が挙げられ、このうち、Rhizopus oryzae、Rhizopus arrhizus、Rhizopus chinensis、Rhizopus nigricans、Rhizopus tonkinensis、Rhizopus tritici、Rhizopus delemar等のRhizopus属糸状菌が好ましく、Rhizopus oryzae及びRhizopus delemarがより好ましく、Rhizopus delemarがさらに好ましい。
【0032】
上記形質転換体は、目的物質の製造に利用することができる。例えば、目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に作動可能に連結された本発明のプロモーターとを有する発現ベクター又はDNA断片で形質転換された宿主細胞を適当な培地で培養し、本発明のプロモーターの制御下で該遺伝子を発現させ、目的物質を生産させる。該宿主細胞の培養条件は、該宿主細胞の増殖及び目的物質の生産が可能な条件であるならば特に限定されない。培養終了後、培養物から目的物質を回収することにより、目的物質を取得することができる。目的物質としては、上述した目的遺伝子にコードされる物質、及び該物質の働きで合成される生成物、例えば上述した有機酸生産に関与する酵素により生成される有機酸、等が挙げられる。有機酸としては、好ましくは乳酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸及びα−ケトグルタル酸が挙げられる。
【0033】
糸状菌を宿主とした目的物質の生産は、糸状菌を一般的な培養方法に従って培養し、培地から目的物質を回収することにより行うことができる。例えば、有機酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子とその上流に連結された本発明のプロモーターを有する発現ベクターにより形質転換した糸状菌の胞子又は菌糸体又はその混合物を、適切な培地で10℃〜50℃、好ましくは25℃〜35℃にて、数日間培養することで、有機酸を生産することができる。培養日数は目的の有機酸が充分に産生される期間であればよい。例えば、目的の有機酸が乳酸であれば、前述の温度にて、1〜168時間、好ましくは2〜72時間、特に好ましくは4〜24時間培養することにより、導入した遺伝子に依存してL−乳酸またはD−乳酸が産生される。培地は、糸状菌が健全に生育し、かつ目的の有機酸を生産することが可能な培地である限り特に限定されない。例えば、グルコース等の単糖、オリゴ糖、デンプン等の多糖を基質とした固体培地、液体培地や、市販のPDB培地(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー)、PDA培地(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー)等を使用することができる。
【0034】
より効率的に糸状菌を宿主とした形質転換体を用いて有機酸を生産するには、以下に示すような工程で生産を行ってもよい。すなわち、形質転換体の胞子懸濁液を調製し(工程A)、それを培養液で培養して胞子を発芽させ菌糸体を調製すること(工程B1)、好適にはさらに当該菌糸体を増殖させ(工程B2)、次いで調製した菌糸体を培養して有機酸を生産させること(工程C)により、効率よく有機酸を製造することができる。
【0035】
<工程A:胞子懸濁液の調製>
形質転換した糸状菌の胞子を、例えば、無機寒天培地(組成例:2%グルコース、0.1%硫酸アンモニウム、0.06%リン酸2水素カリウム、0.025%硫酸マグネシウム・7水和物、0.009%硫酸亜鉛・7水和物、1.5%寒天、いずれも濃度は%(w/v))、PDA培地、等の培地に接種し、10〜40℃、好ましくは27〜30℃にて、7〜10日間静置培養を行なうことにより胞子を形成させ、生理食塩水などに懸濁することで、胞子懸濁液の調製することができる。胞子懸濁液には菌糸体が含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0036】
<工程B1:菌糸体の調製>
上記で得られた胞子懸濁液を、培養液に接種して培養し、胞子を発芽させて菌糸体を得る。培養液に接種する糸状菌の胞子数は、1×102〜1×108個−胞子/mL−培養液、好ましくは1×102〜5×104個−胞子/mL−培養液、より好ましくは5×102〜1×104個−胞子/mL−培養液、さらに好ましくは1×103〜1×104個−胞子/mL−培養液である。
【0037】
本工程で使用する胞子発芽用の培養液には、市販の培地、例えば、ポテトデキストロース培地(以下、PDB培地という場合もある。例えばベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー製のものがある。)、Luria−Bertani培地(以下、LB培地という場合もある。LB培地は商標名「ダイゴ」として日本製薬社より入手できる。)、Nutrient Broth(以下、NB培地という場合もある。例えばベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー製のものがある。)、Sabouraud培地(以下、SB培地という場合もある、例えばOXOID社製のものがある)等が利用できる。また、当該培養液には、発芽率と菌体生育の観点から、炭素源としてグルコース、キシロースなどの単糖、シュークロース、ラクトース、マルトースなどのオリゴ糖、又はデンプン等の多糖;グリセリン、クエン酸などの生体成分;窒素源として硫酸アンモニウム、尿素等、アミノ酸等;その他無機物としてナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、リン酸等の各種塩類を適宜添加することができる。単糖、オリゴ糖、多糖及びグリセリンの好ましい濃度は0.1〜30%(w/v)、クエン酸の好ましい濃度は0.01〜10%(w/v)、硫酸アンモニウム、尿素及びアミノ酸の好ましい濃度は0.01〜1%(w/v)、無機物の好ましい濃度は0.0001〜0.5%(w/v)である。
【0038】
工程B1においては、上記培養液を用いて、上記形質転換体の糸状菌を培養する。培養は、通常の手順にて行なえばよい。例えば、培養液を含む培養容器に、糸状菌胞子を接種し、好ましくは80〜250rpm、より好ましくは100〜170rpmで攪拌しながら、25〜42.5℃の培養温度制御下で、好ましくは24〜120時間、より好ましくは48〜72時間培養する。培養に供する培養液の量は、培養容器にあわせて適宜調整すればよいが、例えば、200mL容バッフル付フラスコの場合は50〜100mL程度、500mL容バッフル付フラスコの場合は100〜300mL程度であればよい。この培養により、糸状菌胞子は発芽し、菌糸体へと成長する。
【0039】
<工程B2:菌糸体の増殖>
有機酸生産能向上の観点から、工程B1で得られた菌糸体をさらに培養して増殖させる工程(工程B2)を行うことが好ましい。工程B2で使用する増殖用の培養液は特に限定されないが、通常使用されるグルコースを含む無機培養液であればよく、例えば、7.5〜30%グルコース、0.001〜2%硫酸アンモニウム、0.001〜0.6%リン酸2水素カリウム、0.01〜0.1%硫酸マグネシウム・7水和物、0.005〜0.05%硫酸亜鉛・7水和物、及び3.75〜20%炭酸カルシウム(いずれも濃度は%(w/v))を含有する培養液等が挙げられ、好ましくは、10%グルコース、0.1%硫酸アンモニウム、0.06%リン酸2水素カリウム、0.025%硫酸マグネシウム・7水和物、0.009%硫酸亜鉛・7水和物、及び5.0%炭酸カルシウム(いずれも濃度は%(w/v))を含有する培養液が挙げられる。当該培養液の量は、培養容器にあわせて適宜調整すればよいが、例えば、500mL容三角フラスコの場合は50〜300mL、好ましくは100〜200mLであればよい。この培養液に、工程B1で培養した菌体を、湿重量として1〜20g−菌体/100mL−培地、好ましくは3〜10g−菌体/100mL−培地となるよう接種し、100〜300rpm、好ましくは170〜230rpmで攪拌しながら、25〜42.5℃の培養温度制御下で、12〜120時間、好ましくは24〜72時間培養する。
【0040】
<工程C:有機酸生産>
上記の手順(B1又はB1及びB2)で得られた糸状菌の菌糸体を培養して当該菌に有機酸を生産させ、その後生産された有機酸を回収することができる。
工程(C)で使用される有機酸生産用培養液は、グルコース等の炭素源、硫酸アンモニウム等の窒素源及び各種金属塩等を含み、有機酸を生産できる培養液であればよい。当該工程(C)に使用される培養液としては、例えば、7.5〜30%グルコース、0.001〜2%硫酸アンモニウム、0.001〜0.6%リン酸2水素カリウム、0.01〜0.1%硫酸マグネシウム・7水和物、0.005〜0.05%硫酸亜鉛・7水和物、及び3.75〜20%炭酸カルシウム(いずれも濃度は%(w/v))を含有する培養液等が挙げられ、好ましくは、12.5%グルコース、0.1%硫酸アンモニウム、0.06%リン酸2水素カリウム、0.025%硫酸マグネシウム・7水和物、0.009%硫酸亜鉛・7水和物、及び5.0%炭酸カルシウム(いずれも濃度は%(w/v))を含有する培養液が挙げられる。
【0041】
工程(C)で使用する培養液の量は、培養容器にあわせて適宜調整すればよいが、例えば、200mL容三角フラスコの場合は20〜80mL程度、500mL容三角フラスコの場合は50〜200mL程度であればよい。この培養液に、上述の菌体を、湿重量として5g〜90g−菌体/100mL−培養液、好ましくは5g〜50g−菌体/100mL−培養液の量となるように接種し、100〜300rpm、好ましくは170〜230rpmで攪拌しながら、25〜45℃の培養温度制御下で、2時間〜72時間、好ましくは4時間〜36時間培養する。
【0042】
上記培養液から培養上清を回収することにより、有機酸を得ることができる。必要に応じて、傾斜法、膜分離、遠心分離、電気透析法、イオン交換樹脂の利用、蒸留、塩析等の方法、又はこれらの組み合わせにより、当該培養液中の有機酸を有機酸塩として回収した後、回収された有機酸塩から有機酸を単離又は精製してもよい。
【0043】
本発明の例示的実施形態として、以下の物質、製造方法、用途、あるいは方法をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0044】
<1>下記(a)〜(d)からなる群から選択されるDNAからなるプロモーター:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA;
(c)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列において、1又は複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有するDNA;及び
(d)配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有するDNA。
【0045】
<2>上記(b)で示されるDNAが、配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列と、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAである、<1>記載のプロモーター。
【0046】
<3>上記(c)で示されるDNAが、配列番号1〜3のいずれかで示される塩基配列に対して、好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下、さらにより好ましくは1個以上2個以下の塩基の欠失、置換、又は付加を有する塩基配列からなるDNAである、<1>記載のプロモーター。
【0047】
<4><1>〜<3>のいずれか1項記載のプロモーターを含む発現ベクター。
【0048】
<5>好ましくは、目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子と作動可能に連結された<1>〜<3>のいずれか1項記載のプロモーターとを含む、<4>記載の発現ベクター。
【0049】
<6>好ましくは、上記プロモーターが、目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子の上流に連結されている、<4>記載の発現ベクター。
【0050】
<7>好ましくは、上記遺伝子が有機酸合成に関わる酵素をコードする遺伝子である、<5>又は<6>記載の発現ベクター。
【0051】
<8>目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に連結された<1>〜<3>のいずれか1項記載のプロモーターとを含む、DNA断片。
【0052】
<9>好ましくは、上記遺伝子が有機酸合成に関わる酵素をコードする遺伝子である、<8>記載のDNA断片。
【0053】
<10><4>〜<7>のいずれか1項記載の発現ベクター、又は<8>若しくは<9>記載のDNA断片を含む、形質転換体。
【0054】
<11>好ましくは糸状菌である、<10>記載の形質転換体。
【0055】
<12>上記糸状菌が、
好ましくは、Acremonium属、Aspergillus属、Aureobasidium属、Bjerkandera属、Ceriporiopsis属、Chrysosporium属、Coprinus属、Coriolus属、Cryptococcus属、Filibasidium属、Fusarium属、Humicola属、Magnaporthe属、Mucor属、Myceliophthora属、Neocallimastix属、Neurospora属、Paecilomyces属、Penicillium属、Phanerochaete属、Phlebia属、Piromyces属、Pleurotus属、Rhizopus属、Schizophyllum属、Talaromyces属、Thermoascus属、Thielavia属、Tolypocladium属、Trametes属、又はTrichoderma属の糸状菌であり、
より好ましくはRhizopus属菌であり、
さらに好ましくはRhizopus oryzae又はRhizopus delemarであり、
なお好ましくはRhizopus delemarである、
<11>記載の形質転換体。
【0056】
<13>目的物質またはその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と該遺伝子の上流に連結された<1>〜<3>のいずれか1項記載のプロモーターとを含む発現ベクター又はDNA断片を含有する形質転換体を培養すること;及び
該培養で得られた培養物から目的物質を回収すること、
を含む、目的物質の製造方法。
【0057】
<14>上記目的物質が有機酸であり、かつ上記遺伝子が有機酸合成に関わる酵素をコードする遺伝子である、<13>記載の製造方法。
【0058】
<15>上記有機酸がフマル酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸又はα-ケトグルタル酸である、<14>記載の製造方法。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
実施例1 プロモーターの同定
(1)ゲノム抽出
PDA培地にRhizopus delemar JCM(Japan Collection of Microorganisms/理研)5557株(以降、5557株と表記)の胞子を植菌後、30℃で5日間培養を行った。培養後、菌体を3mL用メタルコーン(安井器械)とともに3mL破砕チューブに入れ、直ちに液体窒素中で10分間以上凍結させた。その後、マルチビーズショッカー(安井器械)を用いて1700rpmで10秒間菌体の破砕を行った。破砕後の容器にTE Buffer(pH8.0)(ニッポンジーン)を400μL加え転倒混和し、250μLを1.5mLチューブに移した。該菌体溶液から、"Genとるくん(酵母用)"(タカラバイオ)を用いて、プロトコールに従いゲノム抽出を行った。得られたゲノム溶液50μLに対し、RNaseA(ロシュ)を1μL添加し、37℃で1時間反応させた。反応後、等量のフェノールクロロホルムを加え、タッピングにより混和した後、4℃、14500rpmで5分間遠心し、上清を新しい1.5mLチューブに移した。再度フェノールクロロホルム処理を繰り返し、次いでエタノール沈殿を行い、5557株の精製ゲノム溶液を得た。
【0061】
(2)ゲノム配列解析
ゲノム配列解析はMiSeqシーケンサー(Illumina)を用いて行った。すなわち上記(1)で得られた5557株の精製ゲノム溶液をNextera XT DNA Sample Preparation Kit(Illumina)を用いて処理し、得られたサンプルをMiSeqに供した。操作は推奨プロトコールに従い行った。MiSeqにて分析後、出力された配列情報をCLC Genomics Workbench(CLC bio)にて解析した。参照配列には、Broad Institute(www.broadinstitute.org/scientific−community/science/projects/fungal−genome−initiative/mucorales−genomes)より取得したRhizopus delemar RA 99−880株のゲノム配列を用いた。
【0062】
(3)total RNA抽出
5557株の菌体6g−湿重量を、液体培地40mL(0.1g/L(NH42SO4、0.6g/L KH2PO4、0.25g/L MgSO4・7H2O、0.09g/L ZnSO4・7H2O、50g/L 炭酸カルシウム、100g/Lグルコース)に植菌し、35℃、170rpmで8時間培養した。培養液中から菌体をろ過、回収し、0.85%生理食塩水100mLで2回洗浄を行った。洗浄後、吸引濾過により余分な水分を取り除いた後、0.3gを量りとり3mL用メタルコーン(安井器械)とともに3mL破砕チューブに入れ、直ちに液体窒素に投入し、凍結させた。得られた凍結菌体をマルチビーズショッカー(安井器械)を用いて1700rpmで10秒間破砕した。破砕後の菌体にRLT bufferを500μL添加し、転倒混和後、450μLをRNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)に供し、total RNA抽出を行った。得られたRNA溶液40μLに1μLのDNaseI(TaKaRa)及び5μLの10×DNaseI buffer(USB Corporation)を添加し、RNase free waterで50μLにフィルアップした後、37℃で30分以上反応させて溶液中の残存DNAを除去した。DNaseIをさらに1μL追加し、37℃で30分間反応させた後にフェノール/クロロホルム抽出を行い、次いでエタノール沈殿を行った。沈殿を50μLの滅菌水に溶解し、Qubit(Life Technologies)を用いてRNA溶液の濃度及び純度を測定した。また、該RNA溶液を適宜希釈し、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent)及びRNA6000 Pico Kit(Agilent)を用いて抽出したRNAの検定を行った。
【0063】
(4)網羅的転写量解析
網羅的転写量解析は、MiSeqシーケンサー(Illumina)を用いて行った。上記(3)で抽出したtotal RNA溶液から、TruSeq RNA sample Prep v2 LS Kit(Illumina)を用いてサンプルを調製した。その際、RNAのフラグメント長は150塩基になるよう調製した。調製したサンプルをMiSeqに供し、転写量解析を行った。出力データの解析にはCLC Genomics Workbench(CLC bio)を用いてcontigの形成を行い、転写量はRPKM値(Reads Per Kilobase of exon per Million mapped fragments)で算出した。RPKM値とは各RNA配列に対してマッピングしたマップリード数を、サンプルごとの総リード数及びRNA配列の長さで標準化した値であり、以下の式で求められる。
RPKM =C/NL
C:一つのRNA配列に対してマップされたリードの総数
N:全RNA配列に対してマップされた総リード数(million)
L:コンティグの配列長(kbase)
【0064】
(5)高発現プロモーター配列の同定
得られたRNA配列をクエリにして、Broad Instituteより取得したR.delemar RA 99−880株の遺伝子配列とNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)より取得した遺伝子配列をデータベースとしてBLAST解析を行うことで、5557株ゲノムのアノテーション付けを行った。得られたアノテーション情報と上記(4)の転写量解析の結果から、転写量の高いゲノム領域を同定した。
【0065】
その結果、adh1遺伝子、cipC遺伝子、及びnmt1遺伝子としてアノテーションされた5557株ゲノム領域の転写量が顕著に高いことが判明した。表1に、各遺伝子のRPKM値と、参考として既知のプロモーターの中で最もプロモーター活性の高いプロモーターを有するPDCAをコードする遺伝子(pdcA)のRPKM値を示す。5557株ゲノムのadh1、cipC及びnmt1の上流1000bp、729bp、及び1000bp領域(それぞれ、配列番号1〜3)を、各遺伝子のプロモーター配列として取得した。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例2 形質転換体の作製
(1)トリプトファン栄養要求性株の作製
遺伝子導入の宿主株として用いたトリプトファン栄養要求性株は、5557株へのイオンビーム照射による変異導入株の中から選抜し取得した。イオンビーム照射は、独立行政法人日本原子力研究開発機構・高崎量子応用研究所のイオン照射施設(TIARA)において行った。照射は、AVFサイクロトロンを用いて125+を加速し、220MeVのエネルギーで100〜1250Gray照射した。照射した菌体より胞子を回収し、その中から、trpC遺伝子領域に1塩基欠損変異を有し、トリプトファン栄養要求性を示すRhizopus delemar 02T6株を取得した。
【0068】
(2)プラスミドベクター作製
(i)pUC18へのtrpC遺伝子領域の導入
5557株のゲノムDNAを鋳型に、プライマーoJK162(配列番号4)及びoJK163(配列番号5)を用いたPCRにてtrpC遺伝子のDNA断片を合成した。次に、プラスミドpUC18を鋳型に、プライマーoJK164(配列番号6)及びoJK165(配列番号7)を用いたPCRにてDNA断片を増幅した。以上の2断片をIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech)を用いて連結しプラスミドpUC18−trpCを構築した。
【0069】
(ii)adh1プロモーター及びターミネーターのクローニング
5557株のゲノムDNAを鋳型に、adh1のプロモーター断片とターミネーター断片を、それぞれプライマーoJK202(配列番号8)及びoJK204(配列番号9)、ならびにoJK205(配列番号10)及びoJK216(配列番号11)を用いたPCRにて増幅した。次に、(i)で得られたプラスミドpUC18−trpCを鋳型に、プライマーoJK210(配列番号12)及びoJK211(配列番号13)を用いたPCRにてDNA断片を増幅した。以上の3断片を(i)と同様の手順で連結してプラスミドpUC18−trpC−Padh−Tadhを構築した。得られたプラスミドには、trpC遺伝子領域の下流にadh1プロモーター及びターミネーターが順に配置されている。さらにadh1ターミネーターの下流にはNot I制限酵素認識配列が配置されている。
【0070】
(iii)βグルクロニダーゼ遺伝子(以下、GUS)のクローニング
pBI121(TaKaRa)を鋳型に、プライマーoUT1(配列番号14)及びoUT2(配列番号15)を用いたPCRにてβグルクロニダーゼ(以下、GUS)遺伝子のDNA断片を増幅した。次に、(ii)で得られたプラスミドpUC18−trpC−Padh−Tadhを鋳型に、プライマーoJK268−1(配列番号16)及びoJK269−4(配列番号17)を用いてDNA断片を増幅した。以上の2断片を(i)と同様の手順で連結してプラスミドベクターpUC18−trpC−Padh−GUS−Tadhを構築した。得られたプラスミドには、adh1プロモーターとターミネーターの間にGUS遺伝子が挿入されている。
【0071】
(iv)cipCプロモーターのクローニング
5557株のゲノムDNAを鋳型に、cipCのプロモーター断片を、プライマーoJK838(配列番号18)及びoJK839(配列番号19)を用いたPCRにて増幅した。次に、実施例2(2)で作製したプラスミドベクターpUC18−trpC−Padh−GUS−Tadhを鋳型に、プライマーoJK842(配列番号20)及びoJK843(配列番号21)を用いたPCRにてDNA断片を増幅した。以上の2断片を(i)と同様の手順で連結してプラスミドベクターpUC18−trpC−PcipC−GUS−Tadhを構築した。pUC18−trpC−PcipC−GUS−Tadhには、cipCプロモーターとadh1ターミネーターの間にGUS遺伝子が挿入されている。
【0072】
プラスミドベクターpUC18−trpC−Padh−GUS−Tadh及びpUC18−trpC−PcipC−GUS−Tadhの作製に用いたPCRプライマーを表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
(3)宿主株への遺伝子導入
上記(2)で作製したプラスミドベクターpUC18−trpC−Padh−GUS−Tadh及びpUC18−trpC−PcipC−GUS−Tadhを、それぞれNot I制限酵素で処理した。得られた各DNA溶液(1μg/μL)10μLを金粒子溶液(60mg/mL)100μLに加え混合した後、0.1Mスペルミジンを40μL加え、ボルテックスでよく攪拌した。さらに2.5M CaCl2を100μL加え、ボルテックスで1分間攪拌し、次いで6000rpmで30秒間遠心し、上清を除いた。得られた沈殿に70%EtOHを200μL加え、30秒間ボルテックスで攪拌した後、6000rpmで30秒間遠心し、上清を除いた。得られた沈殿を100μLの100%EtOHで再懸濁した。
【0075】
次に、上記(1)で作製した02T6株の胞子に対し、上記の各DNA−金粒子溶液を用い、GDS−80(ネッパジーン)にて遺伝子導入を行った。遺伝子導入後の胞子は、無機寒天培地(20g/Lグルコース、1g/L硫酸アンモニウム、0.6g/Lリン酸2水素カリウム、0.25g/L硫酸マグネシウム・7水和物、0.09g/L硫酸亜鉛・7水和物、15g/L寒天)上で、30℃の条件で1週間程静置培養した。生育した菌体を、adh1プロモーター下流にGUS遺伝子が連結したDNA配列が導入されたPadh1−GUS株、及びcipCプロモーター下流にGUS遺伝子が連結したDNA配列が導入されたPcipC−GUS株としてそれぞれ取得した。
【0076】
実施例3 Padh1−GUS株及びPcipC−GUS株におけるプロモーター活性の評価
Padh1−GUS株又はPcipC−GUS株の菌体2.5g−湿重量を、液体培地40mL(0.1g/L(NH42SO4、0.6g/L KH2PO4、0.25g/L MgSO4・7H2O、0.09g/L ZnSO4・7H2O、50g/L炭酸カルシウム、100g/Lグルコース)に植菌し、35℃、170rpmで8時間培養した。培養液中から菌体をろ取し、0.85%生理食塩水100mLで2回洗浄した。洗浄後、吸引濾過により余分な水分を取り除き、0.3gを量りとりメタルコーン入りチューブに入れ、直ちに液体窒素に投入し、10分間以上凍結させた。凍結した菌体の入ったチューブをマルチビーズショッカーで1700rpm、10秒間処理し、菌体を破砕した。破砕後サンプルに抽出バッファー(50mM NaPi(pH7.2)、10mM EDTA、0.1%Triton−X−100、0.1%N−ラウロイルサルコシンNa、1mM DTT)を1mL添加して懸濁し、得られた懸濁液900μLを1.5mLチューブに移し、4℃、1500rpmで10分間遠心した。上清500μLを新しい1.5mLチューブに移し、再度4℃、1500rpmで10分間遠心した。得られた上清100μLを粗酵素液として使用した。得られた粗酵素液のタンパク質量を、Quick StartTM Bradford Protein Assay(Bio−Rad)にて測定した。
【0077】
βグルクロニダーゼ(GUS)は、4−メチルウンベリフェロンD−グルクロニドを分解し、4−メチルウンベリフェロンを生成する。4−メチルウンベリフェロンの生成量に基づいて粗酵素液のGUS酵素活性を定量した。粗酵素液10μLをGUS活性測定用バッファー(50mM NaPi(pH7.2)、10mM EDTA、0.1%Triton−X−100、0.1%N−ラウロイルサルコシンNa、1mM DTT、1.16mM 4−メチルウンベリフェロンD−グルクロニド)90μLに添加し、37℃で60分間インキュベート後、900μLの0.2M Na2CO3を加えて反応を停止させた。反応液の吸光度を、インフィニットM1000 PRO(TECAN)により測定した(励起:365nm、測定:455nm)。バッファー中の4−メチルウンベリフェロンD−グルクロニドに代えて、4−メチルウンベリフェロンを所定の希釈系列で添加した溶液の吸光度を同様の条件で測定し、検量線を作製した。該検量線に基づいて、反応液中の4−メチルウンベリフェロン量を求めた。さらにそこから、反応1分間あたりに粗酵素液中に生成される4−メチルウンベリフェロン(nmol)量を求め、これを1Unitとした。1Unitを粗酵素液中のタンパク質量で割った値をGUS活性値(Unit/mg−protein)として算出した。測定はn=3で行った。結果を表3に示す。adh1プロモーター−GUS遺伝子構築物を導入したPadh1−GUS株及びPcipC−GUS株では、異種タンパク質であるGUSが発現していることが確認された。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例4 既知プロモーターとの対比
(1)PpdcA−GUS株の作製
既知のプロモーターであるpdcAプロモーターの断片を、5557株のゲノムDNAを鋳型に表4記載のプライマーoJK855(配列番号22)及びoJK856(配列番号23)を用いたPCRにて増幅し、次いで実施例2(2)(iv)と同様の手順でpUC18−trpC−PpdcA−GUS−Tadhを構築した。pUC18−trpC−PpdcA−GUS−Tadhには、pdcAプロモーターとadh1ターミネーターの間にGUS遺伝子が挿入されている。また、adh1ターミネーターの下流にはNot I制限酵素認識配列が配置されている。
続いて、実施例2(3)と同様の方法で、pdcAプロモーター下流にGUS遺伝子が連結したDNA配列が導入されたPpdcA−GUS株を取得した。
【0080】
【表4】
【0081】
(2)プロモーター活性の比較
実施例3と同様の手順でPpdcA−GUS株のGUS活性値を測定した。得られたPpdcA−GUS株の活性値、ならびに実施例3で測定したPadh1−GUS株及びPcipC−GUS株の活性値を表5に示す。PpdcA−GUS株と比較し、Padh1−GUS株とPcipC−GUS株は顕著に高いGUS活性を有しており、この結果は、既知のプロモーターの中で最もプロモーター活性の高いpdcAプロモーターよりも、adh1プロモーター及びcipCプロモーターの活性が顕著に高いことを表す。さらに、実施例1で測定した転写量(RPKM値、表1)が表5に示すGUS活性値と相関していたことから、表1で最大のRPKM値を示すnmt1プロモーターは、adh1及びcipCプロモーターよりもさらにプロモーター活性が高いことが示唆された。したがって、adh1プロモーター、cipCプロモーター及びnmt1プロモーターは、任意の遺伝子をより高発現させることができるプロモーターである。
【0082】
【表5】
【0083】
実施例5 Rhizopus oryzae由来adh1プロモーターの活性
(1)PRoadh1−GUS株の作製
Rhizopus oryzae由来adh1プロモーターを導入した形質転換体であるRhizopus delemar PRoadh1−GUS株を作製した。
【0084】
Rhizopus oryzae由来adh1(以下、Roadh1)プロモーターの断片(配列番号24)を、Rhisopus oryzae NBRC5384株(以下、5384株)のゲノムDNAを鋳型に表6記載のプライマーoJK1165(配列番号25)及びoJK1166(配列番号26)を用いたPCRにて増幅し、次いで実施例2(2)(iv)と同様の手順でプラスミドベクターpUC18−trpC−PRoadh1−GUS−Tadhを構築した。pUC18−trpC−PRoadh1−GUS−Tadhには、Roadh1プロモーターとadh1ターミネーターの間にGUS遺伝子が挿入されている。また、adh1ターミネーターの下流にはNot I制限酵素認識配列が配置されている。続いて、得られたpUC18−trpC−PRoadh1−GUS−Tadhを、実施例2(3)と同様の方法でRhizopus delemar 02T6株に導入し、Roadh1プロモーター下流にGUS遺伝子が連結したDNA配列が導入された形質転換体PRoadh1−GUS株を取得した。
【0085】
【表6】
【0086】
(2)PRoadh1−GUS株におけるRoadh1プロモーター活性の確認
実施例3と同様の手順で、PRoadh1−GUS株の菌体6.0g−湿重量を培養し、培養物から粗酵素液を調製し、粗酵素液のタンパク質量を測定し、次いで粗酵素液のGUS活性を定量した。結果を表7に示す。Roadh1プロモーター−GUS遺伝子構築物を導入したPRoadh1−GUS株で、異種タンパク質であるGUSが発現していることが確認された。この結果は、形質転換体内でRhizopus oryzae由来のadh1プロモーターがプロモーター活性を有していたことを表す。
【0087】
【表7】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]