コンプリメンタリー接続される第1と第2のトランジスタを備え、前記第1と第2のトランジスタの開閉により圧電素子を充放電させ、この充放電によって前記圧電素子を駆動させる圧電素子駆動回路において、
前記第1のトランジスタが閉じることによって前記圧電素子を充電し、前記第2のトランジスタが閉じることによって前記圧電素子を放電する場合に、
前記第1のトランジスタのエミッタと接地線との間に前記圧電素子が接続され、
前記第1のトランジスタのエミッタと前記第2のトランジスタのエミッタが接続され、
前記第2のトランジスタのコレクタは前記接地線に接続され、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの各ベースには、前記第1と第2のトランジスタを開閉するための信号が入力し、
前記第1のトランジスタのベースにコレクタが接続され、ベースが前記接地線に接続される第3のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタのベースに入力される前記信号は、前記第3のトランジスタのエミッタに入力されて前記第3のトランジスタを介して入力され、
前記第3のトランジスタは、前記信号がない時に開き、前記第1のトランジスタのベースに流れる電流を遮断し、前記第1のトランジスタを強制的に開くことで、前記圧電素子を充電するとき以外では前記第1のトランジスタの閉動作を阻止する充電タイミング制御回路を備え、
複数の前記圧電素子駆動回路が共通の接地線に接続されていて、それぞれの圧電素子駆動回路にはそれぞれ駆動する圧電素子が接続されることを特徴とする圧電素子駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は圧電素子駆動回路10を適用したインクジェット方式の液滴塗布装置1の外観構成図を示す。この液滴塗布装置1は、例えば液晶表示パネルの製造装置に用いられ、塗布対象物として液晶表示パネル製造用のガラス基板Kに塗布液等の液体(液滴)を塗布するのに用いられる。この液滴塗布装置1は、例えば液晶表示パネルの製造装置に限らず、液体を塗布するものであれば、他の装置にも適用できる。
【0015】
この液滴塗布装置1は、ステージ2と、回転機構(不図示)と、Y軸移動機構3と、複数の塗布ヘッド4と、支持部材5と、制御部6と、架台7とを備える。ステージ2は、ガラス基板Kを水平状態、すなわちX軸方向とX軸方向に直交するY軸方向とに沿う状態で載置する。回転機構は、ステージ2をθ方向、すなわちX軸方向及びY軸方向を含む平面内の回転方向に回転させる。Y軸移動機構3は、架台7上に設けられ、回転機構を介してステージ2をY軸方向に移動させる。複数の塗布ヘッド4は、それぞれステージ2上のガラス基板Kに向けて塗布液を液滴として吐出する。支持部材5は、門型に形成され、Y軸移動機構3を跨いで架台7上に設けられ、各塗布ヘッド4をそれぞれ支持する。制御部6は、上記各部、すなわちステージ2や回転機構、Y軸移動機構3、複数の塗布ヘッド4等をそれぞれ制御する。
【0016】
具体的に説明すると、ステージ2は、回転機構上に載置され、この回転機構によりθ方向に回転可能に設けられている。なお、ステージ2は、当該ステージ2上にガラス基板Kをその自重により載置するものに限らず、例えばガラス基板Kを保持するために静電チャックや吸着チャック等の保持機構を設けるようにしてもよく、又は、ガラス基板Kを支持する複数の支持ピン等を設け、これら支持ピン等をステージ2上に出没可能に設けてもよい。
【0017】
回転機構は、Y軸移動機構3上に載置され、ステージ2と共にY軸移動機構3によりY軸方向に移動可能に設けられている。この回転機構は、制御部6に電気的に接続され、当該制御部6により駆動制御される。この回転機構としては、例えばモータを駆動源とする回転機構等を用いる。
【0018】
Y軸移動機構3は、架台7上に載置され、回転機構をステージ2と共にY軸方向に案内して移動させる。このY軸移動機構3は、制御部6に電気的に接続され、当該制御部6により駆動制御される。このY軸移動機構3は、例えばリニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構やモータを駆動源とする送りネジ移動機構等を用いる。
【0019】
各塗布ヘッド4は、門型の支持部材5における梁部にX軸方向に沿って、例えば直線状又は千鳥状に配設されている。これら塗布ヘッド4は、それぞれ液滴を吐出する複数の吐出孔と、これら吐出孔にそれぞれ連通する複数の液室と、これら液室の容積をそれぞれ可変する複数の圧電素子、ここでは例えば
図2に示すように2つの圧電素子P1、P2とを各々内蔵している。各吐出孔は、塗布ヘッド4の吐出面に所定のピッチ(間隔)で直線状に並べて形成されている。これら吐出孔の数は、通常数十個から数百個程度である。各吐出孔の直径は、数μmから数十μm程度である。吐出孔のピッチは、数十μmから数百μm程度である。各塗布ヘッド4は、それぞれ制御部6に電気的に接続され、この制御部6によって駆動制御される。
【0020】
各塗布ヘッド4は、例えば各圧電素子P1、P2に対する充放電が行われると、このときの各圧電素子P1、P2の収縮・復元により各液室の容積を変化させ、これら液室内の塗布液を各吐出孔から液滴として吐出する。
【0021】
液晶表示パネルのガラス基板K上における配向膜形成用の塗布液は、当該塗布液を貯留する液体タンクからチューブ等を介して各塗布ヘッド4の各液室内に供給され、各液室を塗布液により満たす。なお、配向膜形成用の塗布液としては、例えばポリイミド(PI)溶液を用いる。この状態で、各圧電素子P1又はP2が駆動すると、当該駆動した圧電素子P1又はP2に対応する液室内の塗布液がその液室に連通する吐出孔から押し出され、液滴として各吐出孔から吐出される。
【0022】
支持部材5は、各塗布ヘッド4を支持するもので、門型に形成されたコラムである。この支持部材5は、その梁部がX軸方向に沿うように位置付けられる。この支持部材5の脚部は、架台7の上面に固定されて設けられている。各塗布ヘッド4は、梁部の前面、すなわち
図1中の手前側の面に設けられている。
【0023】
制御部6は、架台7内に設けられ、上記各部、すなわちステージ2や回転機構、Y軸移動機構3、複数の塗布ヘッド4等を集中的に制御するマイクロコンピュータと、塗布に関する塗布情報や各種プログラム等を記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を有する。塗布情報は、例えばドットパターン等の所定の塗布パターン、塗布ヘッド4の吐出周波数及びガラス基板Kの移動速度に関する情報等を含む。
【0024】
この制御部6は、塗布動作を行う場合、塗布情報に基づいて回転機構、Y軸移動機構3及び各塗布ヘッド4等を動作制御する。
【0025】
制御部6は、塗布動作において、回転機構を制御し、ステージ2上のガラス基板Kを所望の向きに合わせる。この状態で、制御部6は、Y軸移動機構3及び各塗布ヘッド4を制御し、Y軸移動機構3により各塗布ヘッド4とステージ2上のガラス基板Kとを相対移動させながら各塗布ヘッド4を動作制御してステージ2上のガラス基板Kに各液滴を塗布し、このガラス基板K上に複数の配向膜を形成する。これら配向膜は、多面取りを目的としてガラス基板Kに設けられた複数の表示領域上にそれぞれ形成される。
【0026】
図2はインクジェット方式の液滴塗布装置1に設けられる圧電素子駆動回路10の構成図を示す。この圧電素子駆動回路10には、複数の圧電素子、ここでは説明を分かり易くするために2つの圧電素子P1、P2が設けられている。これら圧電素子P1、P2は、それぞれ塗布ヘッド4における液室に設けられ、当該液室の容積を拡大・復元することにより液室内への塗布液の吸込み及び液室内からの塗布液の吐出しを行う。なお、この圧電素子駆動回路10は、各圧電素子P1、P2毎にそれぞれ圧電素子駆動回路10−1、10−2として設けられるが、複数の圧電素子駆動回路が設けられていても、これら圧電素子駆動回路の全体も便宜的に圧電素子駆動回路と称する。
【0027】
2つの波形発生器A1、A2が2つの圧電素子P1、P2に対応して設けられている。これら波形発生器A1、A2は、それぞれ図示しない上位のCPUからFPGA(Field Programmable Gate Array)を通して入力される塗布データ等の吐出制御信号(ファィヤーパルス)FPに基づく各パルス状の電流信号D1、D2を出力する。
【0028】
ここで、圧電素子P1側の圧電素子駆動回路10−1について説明すると、圧電素子駆動回路10−1には、第1のスイッチング素子としての電流増幅用のNPN型トランジスタ(以下、第1のトランジスタと省略する)Qa1と、第2のスイッチング素子としてのPNP型トランジスタ(以下、第2のトランジスタと省略する)Qb1とが設けられている。これら第1のトランジスタQa1と第2のトランジスタQb1とは、コンプリメンタリー接続されている。すなわち、第1のトランジスタQa1のベースと第2のトランジスタQb1のベースとが接続され、かつ第1のトランジスタQa1のエミッタと第2のトランジスタQb1のエミッタとが接続されている。第1のトランジスタQa1のコレクタには、例えば出力電圧70Vの直流電源DCVが接続され、同第1のトランジスタQa1のエミッタに出力線L1を介して圧電素子P1が接続され、かつ第2のトランジスタQb1のコレクタが接地線Lcに接続されている。
【0029】
上記波形発生器A1の出力端は、第1のトランジスタQa1のベースと第2のトランジスタQb1のベースとに共通接続されている。
【0030】
圧電素子駆動回路10−1には、圧電素子P1への充電を第1のトランジスタQa1が閉じた(導通した)ときのみに行わせる、言い換えれば、圧電素子P1を充電するとき以外ではトランジスタQa1が閉じることを阻止、つまり、強制的に開かせる(非導通とする)充電タイミング制御回路20−1が設けられている。この充電タイミング制御回路20−1は、第1のトランジスタQa1のベースと波形発生器A1の出力端との間に、第3のスイッチング素子としてのPNP型トランジスタ(以下、第3のトランジスタと省略する)Qc1を接続した構成である。
【0031】
この第3のトランジスタQc1は、コレクタを第1のトランジスタQa1のベースに接続し、エミッタを波形発生器A1の出力端に接続し、ベースをベース抵抗Ra1を介して接地している。なお、この第3のトランジスタQc1のエミッタは、波形発生器A1の出力端と共に、第2のトランジスタQb1のベースに接続されている。この第3のトランジスタQc1は、圧電素子P1の放電時に開くことにより第1のトランジスタQa1のベースへの電流(ベース電流)の流れを強制的に無くす。
【0032】
第1のトランジスタQa1のエミッタと第2のトランジスタQb1のエミッタとの間には、逆流防止素子としてのダイオードD1aが接続されている。すなわち、第2のトランジスタQb1は、コレクタ・エミッタ間に規定の電圧以上の電圧が加わると、コレクタからベース、エミッタを通って電流が流れてしまうことがある。このダイオードD1aは、第2のトランジスタQb1のコレクタ・ベース・エミッタを通して第1のトランジスタQa1及び圧電素子P1に向かって逆流する電流を遮断する。このダイオードD1aは、第1のトランジスタQa1のエミッタから第2のトランジスタQb1のエミッタに向かって順方向、すなわちアノードが第1のトランジスタQa1のエミッタに接続され、カソードが第2のトランジスタQb1のエミッタに接続されている。
【0033】
一方、圧電素子P2側の圧電素子駆動回路10−2は、上記圧電素子駆動回路10−1と同一構成を有するもので、第1のトランジスタQa2と第2のトランジスタQb2とがコンプリメンタリー接続され、かつ第1と第2のトランジスタQa2、Qb2の各ベースが互いに接続され、さらに同トランジスタQa2、Qb2の各エミッタが互いに接続されている。第1のトランジスタQa2のコレクタには直流電源DCVが接続され、同トランジスタQa2のエミッタには出力線L2を介して圧電素子P2が接続され、第2のトランジスタQb2のコレクタが接地線Lcに接続されている。上記波形発生器A2の出力端は、第1と第2のトランジスタQa2、Qb2の各ベースに共通接続されている。
【0034】
充電タイミング制御回路20−2は、圧電素子P2への充電を第1のトランジスタQa2が閉じたときのみに行わせるもので、第1のトランジスタQa2のベースと波形発生器A2の出力端との間に第3のトランジスタQc2が接続されている。この第3のトランジスタQc2は、コレクタを第1のトランジスタQa2のベースに接続し、エミッタを波形発生器A2の出力端に接続し、ベースを抵抗Ra2を介して接地している。この第3のトランジスタQc2は、圧電素子P2の放電時に開くことにより第1のトランジスタQa2のベース電流の流れを強制的に無くす。
【0035】
逆流防止素子としてのダイオードD1bが第1のトランジスタQa
2のエミッタと第2のトランジスタQb
2のエミッタとの間に接続されている。このダイオードD1bは、上記ダイオードD1aと同様に、第2のトランジスタQb2のコレクタ・ベース・エミッタを通して第1のトランジスタQa2及び圧電素子P2に向かって逆流する電流を遮断する。このダイオードD1bは、第1のトランジスタQa2のエミッタから第2のトランジスタQb2のエミッタに向かって順方向、すなわちアノードが第1のトランジスタQa2のエミッタに接続され、カソードが第2のトランジスタQb2のエミッタに接続されている。
【0036】
次に、上記の如く構成された各駆動回路10−1、10−2の動作について説明する。
【0037】
圧電素子P1側の圧電素子駆動回路10−1において、波形発生器A1から電流信号D1の出力が開始すると、当該第3のトランジスタQc1のエミッタ・ベースを通してベース抵抗Ra1に電流が流れ、第3のトランジスタQc1が閉じ、当該第3のトランジスタQc1のエミッタ・コレクタを通して第1のトランジスタQa1のベースに電流が流れる。これにより、第1のトランジスタQa1は閉じるので、直流電源DCVから電流が第1のトランジスタQa1のコレクタ・エミッタを通り、さらに出力線L1を通して圧電素子P1に流れ、この圧電素子P1において充電が行われる。この充電により圧電素子P1は収縮動作し、液室内を膨張させ、インク等の液体を液室内に吸い込む。
【0038】
この充電により圧電素子P1が所定の電圧に到達すると、この到達した時点で波形発生器A1から出力される電流信号D1を停止し、これに伴い、圧電素子P1への上記充電動作が停止し、圧電素子P1の電圧が所定の電圧に維持される。なお、このとき第3のトランジスタQc1は、開かなくてもよい。
【0039】
一方、波形発生器A1から電流信号D1の出力が無くなると、第1のトランジスタQa1が開き、第2のトランジスタQb1が閉じる。これにより、圧電素子P1は放電し、この放電電流は、ダイオードD1aを通り、第2のトランジスタQb1のエミッタ・コレクタを通って接地線Lcに流れる。圧電素子P1は、放電に伴って伸び(復元)し、この復元によって液室内が縮小し、液室内の塗布液を塗布ヘッド4の吐出孔から吐出する。
【0040】
なお、圧電素子P2側の圧電素子駆動回路10−2においても、圧電素子P1側の圧電素子駆動回路10−1と同様の動作を行うので、その説明は省略する。
【0041】
ここで、圧電素子P1側の圧電素子駆動回路10−1が駆動し、圧電素子P2側の圧電素子駆動回路10−2が非駆動であるときに、圧電素子P1が放電すると、この放電電流は、上記の通りダイオードD1aを通り、第2のトランジスタQb1のエミッタ・コレクタを通って接地線Lcに流れる。
【0042】
この放電電流の流れる線路には、インダクタンス成分が存在するので、このインダクタンス成分によって電圧降下が生じる。このインダクタンス成分は、放電電流の流れる線路の長さが長くなる程大きな値となり、電圧降下も大きくなる。この電圧降下によって非駆動である圧電素子P2側の圧電素子駆動回路10−2の電位が高くなると、放電電流は、
図2の破線に示すよう接地線Lcから非駆動側の第2のトランジスタQb2のコレクタ・ベースを通って流れる。ここで、第3のトランジスタQc2が無かったとした場合、放電電流が第1のトランジスタQa2のベースに流れ、この第1のトランジスタQa2を閉じさせてしまう。第1のトランジスタQa2が閉じると、当該第1のトランジスタQa2のベース・エミッタを通って直流電源DCVから電流が圧電素子P2に流れ込み、非駆動側の圧電素子P2を充電してしまう。この圧電素子P2は、非駆動であるのに拘わらず充電され、放電するものとなり、塗布液を吐出してしまうおそれがある。
【0043】
しかしながら、本駆動回路では、第3のトランジスタQc2が介在されているので、波形発生器A1から電流信号D1の出力が無くなった(ゼロになった)ときの圧電素子P1の放電時、この第3のトランジスタQc2
は開いており、第1のトランジスタQa2へのベース電流を断つので、電流増幅用の第1のトランジスタQa2は開き、直流電源DCVからの電流が当該第1のトランジスタQa2のコレクタ・エミッタを通って圧電素子
P2に流れることがなく、圧電素子
P2を充電することがない。
図3は本駆動回路による駆動側と非駆動側との各圧電素子への充電電圧の変化を示す。同図に示すように非駆動側の圧電素子P2には電圧がほとんど加わらないことが分かる。これによって、圧電素子P1からの放電電流によって非駆動の圧電素子P2を充電しまうおそれが防止され、非駆動の圧電素子P2の収縮・復元によって塗布液を誤吐出することを防ぐことができる。
【0044】
また、第1のトランジスタQa2のエミッタと第2のトランジスタQb2のエミッタとの間に逆流防止素子としてのダイオードD1bを接続したので、第2のトランジスタQb2のコレクタ・エミッタ間に規定の電圧以上の電圧が加わり、当該第2のトランジスタQb2のコレクタからベース、エミッタを通って電流が逆流したとしても、ダイオードD1bによって逆流する電流を遮断できる。したがって、このダイオードD1bによって、圧電素子P1からの放電電流が圧電素子P2に第2のトランジスタQb2のコレクタ・エミッタの経路で流れることによって生じる圧電素子P2の充電をも防ぐことが可能となる。これによっても、非駆動の圧電素子P2による誤吐出が防止される。
【0045】
ここで、圧電素子P1に加わる電圧の保持について説明する。
圧電素子P1の充電時、上記の通り、当該圧電素子P1が所定の電圧に到達した時点で波形発生器A1から出力される電流信号D1が停止すると、圧電素子P1への上記充電動作が停止する。このとき圧電素子P1の電圧は所定の電圧に維持しようとするが、波形発生器A1の出力電流をゼロにしてしまうと、第3のトランジスタQc1の電位が低下してしまう。
【0046】
このため、ダイオードD1aから第2のトランジスタQb1、第3のトランジスタQc1、ベース抵抗Ra1に流れる電流は、第2のトランジスタQb1のベース電流となり、当該第2のトランジスタQb1を閉じる。この第2のトランジスタQb1が閉じることにより圧電素子P1からは、大きな放電電流が流れてしまう。
【0047】
従って、圧電素子P1に加わる電圧を保持するためには、上記第3のトランジスタQc1の電位を保持すればよい。なお、波形発生器A1から出力される電流信号D1の電流量が少ない場合には、別経路から電流を補えばよい。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、
図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0049】
図4はインクジェット方式の液滴塗布装置1に設けられる圧電素子駆動回路10の構成図を示す。この圧電素子駆動回路10は、圧電素子駆動回路10−1において、上記第1の実施の形態における第3のトランジスタQc1のベース抵抗Ra1を、例えば2つの抵抗Ra1、Rb1に分割し、これら抵抗Ra1、Rb1を直列接続している。
圧電素子駆動回路10−2も圧電素子駆動回路10−1と同様に、上記第1の実施の形態における第3のトランジスタQc2のベース抵抗Ra2を、例えば2つの抵抗Ra2、Rb2に分割し、これら抵抗Ra2、Rb2を直列接続している。
【0050】
このような構成であれば、例えば、圧電素子P1の充電に伴って当該圧電素子P1の充電電圧を例えば倍率1倍(×1)の波形発生器A1aを通して抵抗Rb1に導けば、第3のトランジスタQc1のエミッタ電位が維持される。これにより、第2のトランジスタQb1は閉じることなく、圧電素子P1の放電を軽減できる。
【0051】
一方、圧電素子P2の充電に伴っても、当該圧電素子P2の充電電圧を例えば倍率1倍(×1)の波形発生器A2aを通して抵抗Rb2に導けば、第3のトランジスタQc2のエミッタ電位が維持され、第2のトランジスタQb2は閉じることなく、圧電素子P2の放電を軽減できる。
【0052】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、
図4と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図5はインクジェット方式の液滴塗布装置1に設けられる圧電素子駆動回路10の構成図を示す。この圧電素子駆動回路10は、圧電素子駆動回路10−1において、第1のトランジスタQa1のエミッタにダイオードD1aのアノードを接続し、カソードを各抵抗Ra1、Rb1の接続点に接続する。
【0053】
この圧電素子駆動回路10は、圧電素子駆動回路10−1において、抵抗Rb1への電流供給を第1のトランジスタQa1のエミッタからダイオードD1aを通して行う。これにより、圧電素子P1を例えば所定の電圧、例えば70Vに充電したときの抵抗Ra1の電位差は、70Vから約1Vに低下するので、抵抗Ra1に流れる電流量が少なくなる。
【0054】
この結果、波形発生器A1から出力される電流信号D1の電流量が少なくなっても、圧電素子P1の電圧を所定の電圧に維持できる。これにより、上記第1の実施の形態で説明したように、波形発生器A1から出力される電流信号D1の電流量が少なくなっても、圧電素子P1の電圧を所定の電圧に維持できる。
なお、圧電素子駆動回路10−2においても、その構成、作用は圧電素子駆動回路10−1と同様である。
【0055】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、
図5と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図6はインクジェット方式の液滴塗布装置1に設けられる圧電素子駆動回路10の構成図を示す。この圧電素子駆動回路10は、圧電素子駆動回路10−1において、第3のトランジスタQc1のベースには、当該第3のトランジスタQc1に対するノイズ成分の影響を防止するコンデンサC1が接続されている。
【0056】
このコンデンサC1は、一端が第3のトランジスタQc1のベースに接続され、他端が接地線Lcに接続されている。このコンデンサC1は、第3のトランジスタQc1のベース・コレクタ間の浮遊容量による電荷をチャージする。これにより、第3のトランジスタQc1のベース・コレクタ間の浮遊容量による電荷を無くすことができ、当該電荷によって第3のトランジスタQc1にベース電流が流れることがなく、第3のトランジスタQc1を誤動作させることがない。
【0057】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、
図6と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図7はインクジェット方式の液滴塗布装置1に設けられる圧電素子駆動回路10の構成図を示す。この圧電素子駆動回路10は、圧電素子駆動回路10−1と波形発生器A1との回路構成を示す。なお、圧電素子駆動回路10−2と波形発生器A2との回路構成は、圧電素子駆動回路10−1と波形発生器A1との回路構成と同一なので省略する。
【0058】
この圧電素子駆動回路10−1は、圧電素子P1を所定電圧、例えば70Vに充電する機能と、電圧70Vに充電された圧電素子P1の充電電圧を70Vに維持する機能とを有する。
波形発生器A1は、上位のCPUからFPGA(Field Programmable Gate Array)を通して入力される塗布データ等の吐出し制御信号FPに基づくパルス状の電流信号D1を出力する。この波形発生器A1は、平滑回路Hと、この平滑回路Hの出力端に接続されたパルス幅変調アナログデジタル変換器(以下、AD変換器と称する)PWM ADCと、このAD変換器PWM ADCの出力端にコンデンサCpを介して接続されたトランジスタQ1と、一端がトランジスタQ1のソースに接続され、他端が第2のトランジスタQb1及び第3のトランジスタQc1に接続されたコイルLと、このコイルLの他端に接続され、かつ検出端をAD変換器PWM ADCに接続されたアッテネータATTとを有する。なお、トランジスタQ1のソースには、ダイオードD1が接続され、アッテネータATTに対してトランジスタQ2が並列接続されている。吐出制御信号FPは、平滑回路Hを通してAD変換器PWM ADCに入力すると共に、反転回路Bを介してトランジスタQ2に入力する。
【0059】
次に、上記の通り構成された駆動回路10−1の動作について説明する。
(a)先ず、圧電素子P1を例えば充電電圧70Vに充電する動作である。
各トランジスタQ1、Q2は、それぞれ吐出制御信号FPに基づいてAD変換器PWM ADCにより設定された時間だけ閉じる。これにより、直流電源DCVからの電流は、トランジスタQ1を通ってコイルLに流れ、このコイルLは充電される。なお、上記設定された時間は、圧電素子P1を70Vに充電できる時間だけ第1のトランジスタQa1を閉じてエネルギーを蓄える時間である。すなわち、第1のトランジスタQa1が閉じることによって圧電素子P1は、直流電源DCVに接続され、通電される時間に応じた電圧が充電される。この圧電素子P1を充電電圧70Vに充電するのに例えば1秒を要する(実際はもっと短い)とすれば、コイルLには、第1のトランジスタQa1を1秒間だけ閉じておけるエネルギーを蓄えておけばよい。
【0060】
各トランジスタQ1、Q2を共に所定時間だけ閉じた後、これらトランジスタQ1、Q2を開くと、コイルLに蓄えられたエネルギーによって第1のトランジスタQa1のベースに電流が流れる。この電流は、コイルLに蓄えられたエネルギーが無くなると止まる。すなわち、各トランジスタQ1、Q2を共に開いてからコイルLに蓄えられたエネルギーが無くなるまでの時間が1秒になるように、各トランジスタQ1、Q2を閉じておく時間が例えば実験等により求められて予め設定される。
【0061】
なお、コイルLに蓄えるエネルギーの大きさは、コイルLに通電する時間の長さでコントロールできる。このコイルLに通電する時間が長ければ長い分だけ、蓄えられるエネルギーも大きくなる。ただし、蓄えられるエネルギーの大きさには、コイルLの容量によって上限がある。
【0062】
(b)次に、圧電素子P1の充電電圧を70Vに維持する動作である。
【0063】
圧電素子P1の充電電圧は、第1のトランジスタQa1のエミッタ・ベースから第3のトランジスタQc1のコレクタ・エミッタ、アッテネータATTを介してAD変換器PWM ADCにより検出される。
【0064】
このAD変換器PWM ADCは、例えば、圧電素子P1の充電電圧70Vに対して許容できる下限値が予め設定され、この許容下限値と上記アッテネータATTを介して検出される圧電素子P1の充電電圧とを比較し、圧電素子P1の充電電圧が許容下限値に到達すると、圧電素子P1の充電電圧を70Vに戻すのに必要なエネルギーをコイルLに蓄える。すなわち、充電電圧70Vに対して許容下限値を例えば69.5Vとした場合、アッテネータATTを介して検出される電圧値が69.4Vであれば、圧電素子P1を0.6V分充電する必要があるので、圧電素子P1を0.6V分充電できる時間t1だけ第1のトランジスタQa1を閉じることになる。
【0065】
しかるに、第1のトランジスタQa1を時間t1だけ閉じておける分のエネルギーをコイルLに蓄えさせることが必要になるので、当該エネルギーをコイルLに蓄えさせる時間だけ、各トランジスタQ1、Q2を閉じる。これらトランジスタQ1、Q2の閉じる時間とコイルLに蓄えられるエネルギーとの関係や、コイルLに蓄えたエネルギーと第1のトランジスタQa1が閉じられる時間との関係は、それぞれ予め実験等により求められる。又、AD変換器PWM ADCに設定される許容下限値は、液滴の吐出量の要求精度に基づいて決定される。
【0066】
例えば、圧電素子P1の充電電圧が0.5V程度まで低下しても、液滴の吐出量の要求精度に問題が無いのであれば、許容下限値を69.5Vに設定すればよい。圧電素子P1の充電電圧が0.3Vまで低下してしまうと液滴の吐出量の要求精度が満たせないというのであれば、許容下限値を69.8Vに設定するなどすればよい。
【0067】
このような構成であれば、圧電素子P1の充電電圧を検出し、この充電電圧と許容下限値とをAD変換器PWM ADCにより比較し、圧電素子P1の充電電圧が許容下限値に到達すると、圧電素子P1の充電電圧を70Vに戻すのに必要なエネルギーをコイルLに蓄えるようにしたので、圧電素子P1ら放電した分の電圧を追加充電することができ、設定時間待機している期間中に、放電によって圧電素子P1の充電電圧が低下することを防止できる。
【0068】
すなわち、圧電素子P1の充放電によって必要量の液滴を吐き出させるために例えば圧電素子P1を充電電圧70Vに充電する必要があるとすれば、当該充電電圧70Vになるまでに要する時間だけ圧電素子P1には、直流電源DCVの出力電圧を印加する。次に、圧電素子P1は、充電電圧70Vの状態で予め設定された時間だけ待機し、この後に放電する。
【0069】
ところが、充電電圧70Vの充電状態で待機しても、圧電素子P1の充電電圧がダイオードD1aから第2のトランジスタQb1を通って徐々に放電される。このため、圧電素子P1の充電電圧70Vが設定時間待機している間に、放電によって例えば65Vまで下がってしまうようなことが生じる。充電電圧65Vまで下がると、圧電素子P1は、当該充電電圧65V分の復元力しか作用させることができないので、液滴の吐出量がその分だけ少なくなる。
【0070】
これに対して本駆動回路10−1であれば、圧電素子P1の充電電圧を70Vに戻すのに必要なエネルギーをコイルLに蓄えるので、上記の通り圧電素子P1ら放電した分の電圧を追加充電することができ、設定時間待機している期間中に、放電によって圧電素子P1の充電電圧が低下することを防止できる。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。