特許第6276572号(P6276572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6276572-ガスケットの成形型および製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276572
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ガスケットの成形型および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   B29C33/42
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-252993(P2013-252993)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-110288(P2015-110288A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 信行
(72)【発明者】
【氏名】行木 英人
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−125336(JP,A)
【文献】 特開2007−301874(JP,A)
【文献】 特開2015−100963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/42
F16J 15/00
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレス状のガスケットを一体成形する成形型であって、
前記成形型のパーティング面にキャビティ空間としての成形溝を有し、
前記成形溝はその一部に反転部を有し、
前記反転部は、2本の直線部を有し、前記2本の直線部の端部同士が円弧状の曲線部で連結され、
前記2本の直線部の他方の端部同士は、複数の円弧状の曲線部の連続により連結されていることを特徴とするガスケットの成形型。
【請求項2】
請求項1記載の成形型において、
前記2本の直線部は、線対称位置に配置され、かつその間隔が一端から他端へかけて漸次拡大するように配置され、この間隔が拡大された方の端部同士が前記円弧状の曲線部で連結されていることを特徴とするガスケットの成形型。
【請求項3】
請求項1または2記載の成形型を用いてガスケットを成形することを特徴とするガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封技術に係るガスケットの成形型および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエンドレス状のガスケットの一種として、平面円形のリング状をなすOリングが広く知られており、このOリングは製品仕様に応じて様々な大きさに成形されている。
【0003】
このなかで、直径寸法が例えば1600mmを超えるような大径のOリングを成形する場合、これを製品形状そのままのかたちで一体成形しようとすると、使用する成形型の大きさは一辺が2000mmにも及び、製造設備がきわめて大型化してしまうことになる。
【0004】
また、一つのOリングを円周方向に分断成形してから繋ぎ加工を行なう方法が開発されているが、この方法によると、製造に手間と時間がかかるほか、成形品の繋ぎ部に凹凸が発生し、強度不足が発生しやすい。
【0005】
上記問題に鑑み、本願出願人は先に、図3に示す成形型51を提案している(特許文献1参照)。
【0006】
すなわちこの成形型51は、エンドレス状のガスケットを一体成形する成形型であって、互いに隣り合うよう平行に並べた2本分の成形溝53,54を渦巻き状に配置した成形部52を複数有し、前記渦巻き状の成形溝53,54はその内端部にそれぞれ反転部55を有するとともにその外端部同士を一連に連結してなる構造を備えており、この成形型51によれば、大径のガスケットを一体成形する成形型の平面形状を可及的に小さくし、もって製造設備を小型化することができ、また一体成形であることから製造に手間や時間がかからず、繋ぎ部に強度不足が発生するのを抑制することができる。
【0007】
しかしながら上記成形型51によると、渦巻状の中心部に位置するS字状の反転部55において、成形品であるガスケットに癖(成形癖、すなわちガスケットを型から取り出してもガスケットが規定の製品形状とならずに円周上一部で蛇行するような形状が残ること)が付くことがあり、癖の矯正処理後もガスケットの一部に変形が残る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−301874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて、上記先行技術に更なる改良を施し、成形品であるガスケットの反転部に癖が付きにくい構造のガスケットの成形型を提供し、またその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による成形型は、エンドレス状のガスケットを一体成形する成形型であって、前記成形型のパーティング面にキャビティ空間としての成形溝を有し、前記成形溝はその一部に反転部を有し、前記反転部は、2本の直線部を有し、前記2本の直線部の端部同士が円弧状の曲線部で連結され、前記2本の直線部の他方の端部同士は、複数の円弧状の曲線部の連続により連結されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2による成形型は、上記した請求項1記載の成形型において、前記2本の直線部は、線対称位置に配置され、かつその間隔が一端から他端へかけて漸次拡大するように配置され、この間隔が拡大された方の端部同士が前記円弧状の曲線部で連結されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3による製造方法は、上記した請求項1または2記載の成形型を用いてガスケットを成形することを特徴とする。
【0013】
成形品であるガスケットに癖が付きにくくなる条件としては、成形型のパーティング面に設ける成形溝の各曲線部の曲率半径を可及的に大きくすることのほかに、中心部の曲率が変化する反転部にその一部として直線部を設けることが考えられ、すなわち反転部に2本の直線部を設け、この2本の直線部の端部同士を円弧状の曲線部で連結することが考えられる。反転部はその名のとおり、成形溝が90度より大きな角度で方向転換する部位であって、その一部に直線部が設けられると、この直線部に発生する癖は小さいため、反転部のトータルとしての癖の大きさを抑制することが可能とされる。反転部がS字状の場合はS字の上半分の円弧の下側に反対向きの円弧が連なるかたちであるので、反転部に癖が付きやすいところ、本発明では円弧の下側に直線部が連なるかたちとなるので、反転部に癖が付きにくい。
【0014】
2本の直線部は互いに平行に配置しても良いが、2本の直線部間の間隔を一端から他端へかけて漸次拡大するように配置しても良く、この場合は間隔が拡大された方の端部同士を円弧状の曲線部で連結することにより曲線部の曲率半径が大きく設定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0016】
すなわち本発明によれば以上説明したように、反転部に2本の直線部を設け、この2本の直線部の端部同士を曲線部で連結することにより、反転部に生じる癖を小さくすることができる。したがって反転部に癖が付きにくくなり、癖付きによるガスケットの変形を抑制することができる。また、2本の直線部を平行ではなく配置して間隔が大きいほうの端部に曲線部を設けることにより曲線部の曲率半径が大きく設定されるので、反転部に生じる癖を一層小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る成形型におけるパーティング面の平面図
図2】同成形型の要部拡大断面図
図3】従来例に係る成形型におけるパーティング面の平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る成形型1を型開きした状態の、パーティング面2の平面を示している。
【0020】
当該実施例に係る成形型1は、エンドレス状のガスケットとして平面円形のリング状とされる大径のOリングを一体的に型成形するものであって、そのパーティング面2の平面上に、製品キャビティ空間としてエンドレス状の成形溝3が1本設けられ、この成形溝3の一部に反転部4が設けられている。反転部4は、2本の直線部5,6を有し、この2本の直線部5,6の端部b,c同士が円弧状の曲線部7でなだらかに連結されている。
【0021】
また、2本の直線部5,6は、線(中心線)Aを中心とする線対称位置に配置され、かつその間隔が一端(図では下端)から他端(図では上端)へかけて漸次拡大するように逆ハの字状に配置され、この間隔が拡大された方の端部b,c同士が前記円弧状の曲線部7でなだらかに連結されている。
【0022】
また、エンドレス状の成形溝3はその全体として、以下に列記する各部位の組み合わせによって構成されており、各部位がなだらかに連結されている。
・図上左側のa−b間の直線部5
・点Bを中心とするb−c間の円弧状の曲線部7
・図上右側のc−d間の直線部6
・点Cを中心とするd−e間の円弧状の曲線部8
・点Dを中心とするe−f間の円弧状の曲線部9
・点Eを中心とするf−g間の円弧状の曲線部10
・点Fを中心とするg−h間の円弧状の曲線部11
・点Gを中心とするh−i間の円弧状の曲線部12
・点Hを中心とするi−j間の円弧状の曲線部13
・点Iを中心とするj−a間の円弧状の曲線部14
【0023】
点BおよびFは、線A上に配置されている。点CとI、DとH、EとGはそれぞれ、線Aを中心とする線対称位置に配置されている。曲線部8と14、9と13、10と12はそれぞれ、曲率半径を等しく設定されている。したがってエンドレス状の成形溝3はその全体としても、線Aを中心とする線対称形状とされている。
【0024】
また、図2の断面に示すように、成形溝3の外周側および内周側にはそれぞれバリ溝15やカミキリ溝16が設けられている。また、当該成形型1は1対の分割型1A,1Bの組み合わせよりなることから、各分割型1A,1Bのパーティング面2にそれぞれ上記成形溝3、バリ溝15およびカミキリ溝16などが設けられている。
【0025】
上記構成を備える成形型1においては上記したように、反転部4に2本の直線部5,6が設けられ、この2本の直線部5,6の端部b,c同士が円弧状の曲線部7で連結されているために、これら直線部5,6および曲線部7の組み合わせによって成形される成形品の反転部には従来のS字状対比で、癖(成形癖)が付きにくい。
【0026】
また、2本の直線部5,6が線Aを中心とする線対称位置に配置され、かつその間隔が一端から他端へかけて漸次拡大するよう逆ハの字状に配置されて、この間隔が拡大された方の端部b,c同士が円弧状の曲線部7で連結されているために、曲線部7の曲率半径がa−d間距離(直線部5,6の一端間距離)ではなくb−c間距離(直線部5,6の他端間距離)によって規定され、よってa−d間距離で規定される場合よりも曲線部7の曲率半径が大きく設定されている。したがってこのようにこの曲線部7の曲率半径が大きいことからしても、上記成形品の反転部に癖が付きにくい。
【0027】
尚、このような効果を十分に獲得するには、直線部5,6の長さL,Lを少なくとも30mm以上、一層好ましくは60mm以上に設定し、また曲線部7の曲率半径およびその他の曲線部8〜14の曲率半径をそれぞれR70以上に設定するのが好適である。
【0028】
本発明の製造方法としては、上記成形型1を用いて、平面円形のリング状とされる大径のOリングを一体的に型成形する。Oリングは一般にゴム生地によって成形される。Oリングは例えば半導体製造装置に使用される。上記実施例における直線部5,6および曲線部7の組み合わせより反転部4は、図3に示したような渦巻き状の成形溝の中心部に配置されても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 成形型
1A,1B 分割型
2 パーティング面
3 成形溝
4 反転部
5,6 直線部
7〜14 曲線部
15 バリ溝
16 カミキリ溝
A 線対称中心線
図1
図2
図3