(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276594
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】法面の掘削方法及び装置と、法面の地中連続壁施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-3174(P2014-3174)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132072(P2015-132072A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年11月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウエブサイトの掲載日:平成25年11月8日、ウェブサイトのアドレス:http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/20131108_01.html
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】林 幹朗
(72)【発明者】
【氏名】山之口 寛
(72)【発明者】
【氏名】仲井 幹雄
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−167762(JP,A)
【文献】
特開2001−311176(JP,A)
【文献】
特開昭53−144101(JP,A)
【文献】
特開平07−305346(JP,A)
【文献】
米国特許第05118230(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00〜 17/20
E02F 5/00〜 7/10
E21D 1/00〜 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面の山側及び谷側に沿って略平行に作業構台を、前記法面の山側及び谷側に打ち込んだ杭の上にそれぞれ構築して設置し、
前記作業構台の上に敷設された左右方向に延びる一対のレール上に門型クレーンを走行可能に配置し、
前記門型クレーンに掘削機を吊り下げ、
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台上の前記左右方向に延びる一対のレール上を走行する前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機の下降を伴う掘削により、前記法面を前記作業構台の左右方向に沿って鉛直方向に掘削することを特徴とする法面の掘削方法。
【請求項2】
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台上の前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機による、前記作業構台の左右方向に沿った前記法面の鉛直方向の掘削を、前記作業構台上の前記左右方向に延びる一対のレール上を前記門型クレーンが走行する度に繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の法面の掘削方法。
【請求項3】
法面の山側及び谷側に沿って打ち込んだ杭の上にそれぞれ構築して略平行に設置した作業構台と、
前記作業構台の上に敷設された左右方向に延びる一対のレール上に走行可能に配置した門型クレーンと、
前記門型クレーンに吊り下げた掘削機と、を備えることを特徴とする法面の掘削装置。
【請求項4】
法面の山側及び谷側に沿って略平行に作業構台を、前記法面の山側及び谷側に打ち込んだ杭の上にそれぞれ構築して設置し、
前記作業構台の上に敷設された左右方向に延びる一対のレール上に門型クレーンを走行可能に配置し、
前記門型クレーンに掘削機を吊り下げ、
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台上の前記左右方向に延びる一対のレール上を走行する前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機の下降を伴う掘削により、前記法面を前記作業構台の左右方向に沿って鉛直方向に掘削し、
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台上の前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機の下降を伴う掘削による、前記作業構台の左右方向に沿った前記法面の鉛直方向の掘削を、前記作業構台上の前記左右方向に延びる一対のレール上を前記門型クレーンが走行する度に繰り返し行って、前記法面に前記作業構台の左右方向に沿って連続する鉛直方向の掘削溝を形成して、
前記掘削溝内に地中連続壁を構築することを特徴とする法面の地中連続壁施工方法。
【請求項5】
前記地中連続壁としてアスファルトマスチックや遮水シートを用いて遮水壁を構築することを特徴とする請求項4に記載の法面の地中連続壁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面の掘削方法と、その方法に用いる装置と、その法面の掘削を含む地中連続壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
法面において、例えば遮水壁等の地中連続壁を構築するために掘削する場合、従来は大型クレーンに掘削機を吊り下げて法面の掘削を行っていた。
なお、立坑の掘削ではあるが、特許文献1には、地上部に設置された架台上を走行する門型クレーンに吊り下げた掘削機により立坑を掘削する工法が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−97892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
法面の地中連続壁の構築において、従来のように、掘削機が吊り下げられる大型クレーンを用いる場合、コストが高く付くことに加え、その大型クレーンが走行するために広い作業エリアを要するが、法面の山側及び谷側とも制限のある狭隘箇所では対応できない。
また、特許文献1のように、掘削機を吊り下げる門型クレーンが、平坦な地上部に設置された架台上を走行する方式のものでは、法面の掘削には対応できない。
【0005】
本発明の課題は、法面の掘削において、コストが高い大型クレーンを用いずに、山側及び谷側とも制限のある狭隘箇所でも掘削可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
法面の山側及び谷側に沿って略平行に作業構台
を、前記法面の山側及び谷側に打ち込んだ杭の上にそれぞれ構築して設置し、
前記作業構台の上に
敷設された左右方向に延びる一対のレール上に門型クレーンを走行可能に配置し、
前記門型クレーンに掘削機を吊り下げ、
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台
上の前記左右方向に延びる一対のレール上を走行する前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機
の下降を伴う掘削により
、前記法面を前記作業構台の左右方向に沿って鉛直方向に掘削する、法面の掘削方法を特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の法面の掘削方法であって、
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台上の前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機による
、前記作業構台の左右方向に沿った前記法面の鉛直方向の掘削を、前記作業構台上
の前記左右方向に延びる一対のレール上を前記門型クレーンが走行する度に繰り返し行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
法面の山側及び谷側に沿って
打ち込んだ杭の上にそれぞれ構築して略平行に設置した作業構台と、
前記作業構台の上に
敷設された左右方向に延びる一対のレール上に走行可能に配置した門型クレーンと、
前記門型クレーンに吊り下げた掘削機と、を備える、法面の掘削装置を特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、
法面の山側及び谷側に沿って略平行に作業構台
を、前記法面の山側及び谷側に打ち込んだ杭の上にそれぞれ構築して設置し、
前記作業構台の上に
敷設された左右方向に延びる一対のレール上に門型クレーンを走行可能に配置し、
前記門型クレーンに掘削機を吊り下げ、
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台
上の前記左右方向に延びる一対のレール上を走行する前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機
の下降を伴う掘削により
、前記法面を前記作業構台の左右方向に沿って鉛直方向に掘削し、
前記法面の山側及び谷側に沿って略平行な前記作業構台上の前記門型クレーンに吊り下げられた前記掘削機
の下降を伴う掘削による
、前記作業構台の左右方向に沿った前記法面の鉛直方向の掘削を、前記作業構台上
の前記左右方向に延びる一対のレール上を前記門型クレーンが走行する度に繰り返し行って
、前記法面に前記作業構台の左右方向に沿って連続する鉛直方向の掘削溝を形成して、
前記掘削溝内に地中連続壁を構築する、法面の地中連続壁施工方法を特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載の法面の地中連続壁施工方法であって、
前記地中連続壁としてアスファルトマスチックや遮水シートを用いて遮水壁を構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、法面において、コストが高い大型クレーンを用いずに、山側及び谷側とも制限のある狭隘箇所でも掘削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を適用した法面の掘削施工の一実施形態の構成を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1及び
図2は本発明を適用した法面の掘削施工の一実施形態の構成を示すもので、1は法面、3は作業構台、5は門型クレーン、7は巻上げ機、9は掘削機である。
【0014】
図示のように、法面1には、その山側及び谷側に沿って略平行に作業構台3が、法面1に打ち込んだ杭4の上に構築して設置されている。
この作業構台3の上には、法面1の山側及び谷側に沿って略平行する一対のレール(図略)が敷設されていて、そのレール上に門型クレーン5が走行可能に配置されている。
そして、門型クレーン5に搭載した巻上げ機7から垂下するワイヤ8の下端に掘削機9が吊り下げられている。
【0015】
ここで、門型クレーン5、巻上げ機7及び掘削機9は、図示しないCCDカメラ及び無線送受信機を搭載し、無人で遠隔操作される。
【0016】
図1及び
図2は法面1の掘削溝11の施工を示すものである。
すなわち、無人遠隔制御式の門型クレーン5、巻上げ機7及び掘削機9による法面1の掘削溝11、その遮水壁の施工は次のように行う。
【0017】
1)法面1を、その山側及び谷側に沿って略平行な作業構台3上の無人遠隔制御式の門型クレーン5の巻上げ機7に吊り下げた掘削機9の下降を伴う掘削により掘削溝11を形成する。この掘削溝11は、図示のように、難透水層12に達するまで行う。
2)法面1の山側及び谷側に沿って略平行な作業構台3上の門型クレーン5に吊り下げられた掘削機9による法面1の掘削を、
図2に矢印で示したように、作業構台3上を門型クレーン5が走行する度に繰り返し行って連続する掘削溝11を形成する。
3)安定液で満たされた掘削溝11にアスファルトマスチックを打設し、または図示しない遮水シートを挿入して、遮水壁を構築する。
【0018】
以上、実施形態の法面の地中連続壁施工方法によれば、法面1において、その山側及び谷側に沿って略平行な作業構台3の上を走行する門型クレーン5に吊り下げられた掘削機9により法面1を掘削して、遮水壁を構築するため、コストが高い大型クレーンを用いずに、山側及び谷側とも制限のある狭隘箇所でも掘削して、法面1に遮水壁を構築することができる。
【0019】
このように、法面1において、その山側及び谷側に沿って略平行な作業構台3の上を走行する門型クレーン5に吊り下げられた掘削機9により法面1を掘削して、遮水壁を構築したことによる効果を次に挙げる。
【0020】
1)法面1の山側及び谷側に沿って略平行な作業構台3上に設置したレールを自走する門型クレーン5に掘削機9を搭載することで、従来の地中連続壁の施工機械(大型クレーン)に比べ軽量化することができるため、作業構台の仕様を落とすことができ、工期短縮が図れる。
2)遮水壁をアスファルトマスチックや遮水シートで構築し、鋼材などを使用しないため、鋼材間の継手がなく、遮水性に優れる。
3)地中連続壁に鋼材を使用しないため、鋼材建て込みによるクレーン作業が必要なく、作業エリアの縮小と工期の短縮が図れる。
4)無人遠隔操作による門型クレーン5、巻上げ機7及び掘削機9で施工するため、例えば高線量区域の対象法面において、作業員の被爆量低減が可能である。
5)法面1の地中連続壁構築以外の掘削についても対応可能である。
【0021】
(変形例)
以上の実施形態においては、法面の遮水壁構築としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、遮水壁に限らず、法面の連続地中壁構築であってもよい。
また、その他、具体的な細部構造等について適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
1 法面
3 作業構台
4 杭
5 門型クレーン
7 巻上げ機
8 ワイヤ
9 掘削機
11 掘削溝
12 難透水層