(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被マスキング部の一部には穴が形成されており、前記マスキング体を前記被マスキング部に装着したときに、前記シール材が少なくとも前記穴の周縁部に接触するように、前記シール材を有することを特徴とする請求項1または2に記載のマスキング体。
前記マスキング部材には、前記マスキング体を被マスキング部に対して着脱するときに、前記マスキング部材を把持することのできる把持部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のマスキング体。
粘着力以外の力によって被マスキング部に装着可能なマスキング部材における前記被マスキング部に対向する部分の少なくとも一部に、ペトロラタム、パラフィンロウおよび流動パラフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする、25℃での粘度が50,000〜300,000mPa・sである高粘度体のシール材を付着させ、これをマスキング体とし、
得られた前記マスキング体を、被マスキング部に装着する
ことを特徴とするマスキング方法。
前記被マスキング部の一部には穴が形成されており、前記マスキング体を前記被マスキング部に装着したときに、前記シール材が少なくとも前記穴の周縁部に接触するように、前記シール材を前記マスキング部材に付着させることを特徴とする請求項7または8に記載のマスキング方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔マスキング体〕
図1〜
図3に示すように、本発明の一実施形態に係るマスキング体1は、粘着力以外の力によって、被塗装体4の被マスキング部42に装着可能なマスキング部材2と、シール材3とを有し、当該シール材3を、マスキング部材2における被マスキング部42に対向する部分(対向面211)の少なくとも一部に有する。なお、本実施形態における被塗装体4は、磁性体、例えば鋼板、鋼材等の金属材料からなる。また、本実施形態における被マスキング部42は、被塗装体4の穴41の周りの円形部分とするが、これに限定されるものではない。
【0027】
1.マスキング部材
本実施形態に係るマスキング部材2は、粘着力以外の力によって、被塗装体4の被マスキング部42に装着可能なものである。この力によってマスキング部材2を被マスキング部42に装着することにより、マスキング作業が容易になるとともに、被マスキング部42に装着したマスキング部材2が当該被マスキング部42からずれることを防止することができる。
【0028】
本明細書における「粘着力」とは、マスキングテープ等で使用されるような粘着剤による粘着力を意味する。粘着力以外の力としては、例えば、磁力、嵌合力、螺合による力等、またはそれらを組み合わせた複合力が挙げられる。マスキング部材2の製造の容易性等を考慮すると、特に磁力が好ましい。磁力を利用する場合、マスキング部材2は、強磁性体を含有することが好ましい。なお、「強磁性体を含有する」には、「強磁性体からなる」の意味を含むものとする。
【0029】
一方、「嵌合力」とは、嵌め合った部材同士を引き離すのに必要な力をいい、通常は部材同士の摩擦抵抗によって生じる。かかる嵌合力としては、例えば、穴とその穴に挿入される物との嵌合による嵌合力や、凹部と凸部との嵌合による嵌合力等が挙げられる。具体例としては、被マスキング部の一部に穴が形成されており、マスキング部材2がその穴に嵌合する凸部を有する場合には、マスキング部材2は、その穴と凸部との嵌合による嵌合力によって被マスキング部に装着可能となる。
【0030】
また、螺合による力の具体例としては、被マスキング部の一部に穴または雌ねじ部が形成されており、マスキング部材2がその穴または雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有する場合には、マスキング部材2は、その穴または雌ねじ部と雄ねじ部との螺合による力によって被マスキング部に装着可能となる。
【0031】
本実施形態におけるマスキング部材2は、一例として、
図1〜
図3に示すように、円柱状の本体部21と、本体部21の一方の端部側(
図3中、上側の端部側)に設けられた円柱状の把持部22と、本体部321の他方の端部側(
図3中、下側の端部側)に設けられた円柱状の凸部23とから構成される。本実施形態のマスキング部材2においては、円柱状の本体部21における凸部23側の端面が、被マスキング部42に対向する対向面211となっている。
【0032】
本実施形態におけるマスキング部材2の把持部22は、本体部21の径よりも小さい径を有し、それによって手で把持し易いものとなっている。ただし、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、本体部21自体が手で把持し易い大きさであれば、把持部22を特に設ける必要はない。また、把持部22は円柱状に限定されず、例えば、角柱状であってもよいし、立設した半円盤状であってもよく、把持のし易さと、製造コストとを考慮して適宜定めることができる。
【0033】
本実施形態におけるマスキング部材2の凸部23は、被塗装体4の被マスキング部42の中央に形成された穴41に対して挿脱可能なように、略一定の太さの円柱状となっている。すなわち、凸部23の直径は、穴41の直径よりも小さく設定されているか、穴41の直径と略同じに設定されている。かかる凸部23を有するマスキング部材2は、当該凸部23を被マスキング部42の穴41に対して挿入することにより、被マスキング部42に対して容易に位置決めをすることができる。また、マスキング体1を塗料に浸漬したときに、穴41から被マスキング部42に塗料が入り難くなる。
【0034】
ただし、マスキング部材2において上記のような凸部23は必須ではなく、省略されてもよい。また、被マスキング部に穴がなければ、上記のような凸部23は不要である。
【0035】
本実施形態におけるマスキング部材2の本体部21の形状は円柱状であるが、これに限定されるものではなく、例えば、円錐状、円錐台状、円盤状等いずれであってもよい。また、被マスキング部の形状が円形でない場合には、その形に応じて設計されればよく、例えば、角柱状、角錐状、角錐台状、所望の形状を有するシート状等であってもよい。
【0036】
なお、本実施形態におけるマスキング部材2において、本体部21の把持部22側の周縁部、把持部22の本体部21と反対側の周縁部および凸部23の本体部21と反対側の周縁部は、面取りがされていてもよい。
【0037】
マスキング部材2を構成する材料は特に限定されないが、マスキング体1を使用した塗装工程において焼付工程等の加熱工程がある場合には、マスキング部材2は耐熱性に優れた材料からなることが好ましい。これにより、マスキング部材2の変形、溶融等を防止して、正確な形状のマスキング部材2を繰り返し使用することができる。
【0038】
強磁性体を含有し、好ましくは耐熱性を有するマスキング部材2としては、例えば、強磁性体の成形体、磁性粉末の焼結体、磁性成分および樹脂を含有する材料(以下「複合材料C」という。)の成形体等が挙げられる。
【0039】
なお、マスキング部材2は、単一の部材からなる必要はなく、異なる部材を組み合わせたものであってもよい。その場合、部材ごとに材料が異なってもよく、例えば、上記の強磁性体を含有する材料からなる部材と、強磁性体を含有しない部材とを組み合わせたものであってもよい。ただし、強磁性体を含有する材料からなる部材は、マスキング部材2の本体部21の全部または一部を構成することが好ましい。
【0040】
本実施形態に係るマスキング体1が、例えば焼付塗装等、加熱工程下で使用される場合、上記強磁性体は、加熱工程の温度よりも高いキューリー温度を有することが好ましい。焼付塗装における加熱工程の温度は、通常120〜160℃であるため、強磁性体のキューリー温度は、それ以上であることが好ましい。強磁性体のキューリー温度が加熱工程の温度よりも低いと、磁化していた強磁性体の磁力が加熱工程の途中で減少し、マスキング部材2が被マスキング部42から離脱してしまうおそれがある。
【0041】
上記強磁性体の成形体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の金属やそれらの合金(例えばステンレススチール)または酸化物の鋳造物、鍛造物、切削物等が挙げられる。
【0042】
上記磁性粉末の焼結体としては、一般的な磁石が主として例示される。例えば、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト等のフェライト系、アルミニウム−ニッケル−コバルト合金のようなアルニコ系、希土類−遷移金属系(例:SmCo系,SmFeN系,NbFeB系)等の希土類系などの強磁性体の粉末を焼結した磁石が挙げられる。
【0043】
複合材料Cで使用可能な磁性成分としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の金属やそれらの合金(例えばステンレススチール)または酸化物、あるいはストロンチウムフェライト、バリウムフェライト、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト等のフェライト系、アルミニウム−ニッケル−コバルト合金のようなアルニコ系、希土類−遷移金属系(例:SmCo系,SmFeN系,NbFeB系)等の希土類系などの強磁性体が挙げられる。これらの中でも、磁気力をコントロールすることが容易という観点から、フェライト系が好ましく、中でもストロンチウムフェライトおよびバリウムフェライトがより好ましい。
【0044】
磁性成分の形状としては、マスキング部材2の成形加工のしやすさなどの観点から粉体形状が好ましい。粉体形状の場合、粒径は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることが特に好ましく、0.5〜3μmであることがさらに好ましい。なお、磁性成分の粒径は、例えばコールターカウンター法により測定することができる。
【0045】
一方、この複合材料Cで使用可能な樹脂は、磁性成分との組み合わせで所望の成形性、耐熱性等が得られる樹脂であれば、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0046】
本実施形態に係るマスキング体1が、例えば焼付塗装等、加熱工程下で使用される場合、熱硬化性樹脂は、耐熱性に優れるため好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アリルエステル樹脂等が挙げられ、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
一方、熱可塑性樹脂であっても、上記加熱工程の温度よりも高い融点を有するものであれば、使用することができる。焼付塗装等における加熱工程の温度は、通常120〜160℃であるため、その温度よりも高い融点を有する熱可塑性樹脂を使用すればよく、好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上の融点を有する熱可塑性樹脂を使用する。
【0048】
上記のような熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン1212、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン6T等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられ、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。上記の中でも、寸法安定性および耐薬品性に優れているポリアミド樹脂が好ましく、特にナイロン6が好ましい。ポリアミド樹脂の融点は、一般的には170℃以上であり、ナイロン6の融点は約220℃である。
【0049】
ここで、マスキング部材2は、弾性を有するものであってもよい。マスキング部材2が弾性を有する場合、シール材3との相互作用もあって、被マスキング部への密着性が向上する。具体的には、マスキング部材2のショアD硬度が、5〜100であることが好ましく、特に10〜60であることが好ましい。この場合、複合材料Cの樹脂として、熱可塑性エラストマーおよび/またはゴムを使用することが好ましい。
【0050】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)のようなオレフィン系エラストマー、スチレンとブタジエンとの共重合体からなるSBR等のスチレン系エラストマー、シリコン系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ナイロン系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、およびそれらのエラストマーに反応部位(二重結合、無水カルボキシル基等)を導入した変性物などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記の中でも成形性、耐熱性および弾性のバランスに優れているエステル系エラストマー(ポリエステルエラストマー)が好ましく、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体であるポリエステルエラストマーがより好ましく、ハードセグメントがポリエステルでありソフトセグメントがポリエーテルであるポリエステルエラストマーが特に好ましい。そのような好ましいポリエステルエラストマーの具体例として、東洋紡社製のペルプレンシリーズや東レ・デュポン社製のハイトレルシリーズ等が挙げられる。
【0052】
一方、ゴムとしては、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
上記ゴムの中でも、アクリルゴムが好ましく、特にアミン系架橋剤に基づく架橋構造を有するアクリルゴムが好ましい。かかる材料は耐熱性に優れるため、マスキング部材2がマスキング中に180℃程度の高温環境下に置かれても、変形、溶融といった問題が生じにくい。また、上記材料は、そのような高温環境下に長時間置かれても硬度が上昇しにくい(耐熱硬化性に優れる)ため、得られるマスキング部材2は、弾性を維持した状態で、繰り返し使用することができる。
【0054】
ここで、本明細書における「アクリルゴム」とは、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位からなる単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位からなる共重合体、ならびに(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位と(メタ)アクリル酸エステル以外の化合物(典型的には重合性不飽和結合を有する化合物であり、本実施形態において、「その他の重合化合物」ともいう。)に由来する構成単位との共重合体からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる重合体および/またはその重合体と架橋剤との架橋反応生成物を含有し、ゴム状弾性体としての機械的性質を有する材料を意味する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0055】
アクリルゴムを形成するために使用される(メタ)アクリル酸エステルのエステル基の構造は特に限定されず、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよいし、アルキル位に官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよい。
【0056】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルについて具体例を示せば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いや入手のしやすさなどの観点から、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびメタアクリル酸メチルが好ましい。
【0057】
エステル部分が有する官能基として、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、エポキシ基などが例示される。こうした官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリル酸4−(グリシジルオキシ)ブチル等、アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)メチル等の(メタ)アクリル酸エポキシアルキルが例示される。
【0058】
一方、(メタ)アクリル酸アミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが例示される。
【0059】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、その中でもアクリル酸メトキシエチルが特に好ましい。すなわち、アクリルゴムは、アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を有する重合体を含むことが好ましい。この場合には、耐熱硬化性に優れるアクリルゴムが得られやすい。また、耐油性が高いアクリルゴムも得られやすい。
【0060】
アクリルゴムを形成するために使用される(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸アミドは、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。アクリルゴムが複数種類の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を有する共重合体に基づく成分を含む場合には、その(メタ)アクリル酸エステルは(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルゴムが(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を有する共重合体に基づく成分を含むことにより、耐熱性に優れ、かつ耐熱硬化性に優れるアクリルゴムが得られやすい。
【0061】
アクリルゴムを形成するために使用されるその他の重合性化合物の種類は、(メタ)アクリル酸エステルと重合反応し得る限り、特に限定されない。典型的には、前述した重合性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。そのような化合物として、エチレン、プロピレン、n−ブテン、ノルボルネン、シクロヘキセンなどオレフィン類;スチレンおよびその誘導体などエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸;フマル酸モノエチル、フマル酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノブチルなどの炭素数3〜11のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステル;酢酸ビニル、アクリロニトリル等の化合物などが挙げられる。なお、その他の重合性化合物のうち、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸は、アクリルゴム重合体中で、ジカルボン酸無水物の形の構成単位として含有され、架橋の際に加水分解してカルボキシル基を生成してもよい。
【0062】
これらの中でも、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸などのカルボキシル基を有する化合物が、後述するアミン系架橋剤との反応点をなすことができるため好ましい。なお、この化合物におけるカルボキシル基は、上記のとおり酸無水物の形式であってもよい。
【0063】
アクリルゴムを形成するために他の重合性化合物を使用する場合、その他の重合性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル、さらに必要に応じ使用されるその他の重合性化合物が複数種類の化合物からなる場合において、それらの化合物に由来する構成単位のアクリルゴム中の比率は任意であり、そのアクリルゴムを含有するマスキング材の用途などを考慮して適宜設定すればよい。例えば、ブチル基のようにアルキル基が嵩高い(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率が多い場合には、脆化温度が低いアクリルゴムが得られる傾向があり、カルボキシル基を有するその他の重合性化合物の比率が多い場合には、アミン系架橋剤との架橋反応の程度が高くなり、硬質なアクリルゴムが得られる傾向がある。
【0065】
前述した通り、アクリルゴムは、アミン系架橋剤に基づく架橋構造を有することが好ましい。本明細書における「アミン系架橋剤」とは、2官能以上のアミン系化合物を意味し、少なくとも1個以上の活性水素を有する窒素原子を2個以上有する化合物であれば特に制限はない。このようなアミン系架橋剤に基づく架橋構造を有するアクリルゴムは、例えば180℃の高温環境下に曝されても過度に軟化することが防止される。また、他の架橋剤、例えばイソシアネート系の架橋剤に基づく架橋構造と比べて、耐熱硬化性に優れる。このため、マスキング部材2を繰り返し使用しても、マスキング部材2が有する弾性に基づく被マスキング部に対する密着性が低下しにくい。
【0066】
アミン系架橋剤としては、例えば、1,4−ブタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサ−2−スピロ[5.5]ウンデカン等の脂肪族ポリアミン;ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン;カルバジン酸、6−アミノヘキシルカルバミド酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバミド酸等のアミノカルバミド酸;さらにはこれらのポリアミンやアミノカルバミド酸の塩などが挙げられる。アミン系架橋剤は、1種類の化合物から構成されていてもよいし、複数種類の化合物から構成されていてもよい。上記の中でも、アミン系架橋剤としては、耐熱硬化性を向上させる観点から、アミノカルバミド酸および/またはその塩が好ましい。
【0067】
上記アクリルゴムにおけるアミン系架橋剤に基づく架橋の程度(換言すれば、架橋点の存在密度)は特に限定されない。架橋点の存在密度が過度に低い場合には、耐熱硬化性に優れるアクリルゴムを得ることが困難となることが懸念される。一方、架橋点の存在密度が過度に高い場合には、マスキング部材2に含まれる他の成分(特に磁性体)の含有量との関係で、マスキング部材2が過度に硬質化して変形しにくくなり、被マスキング部の形状にマスキング部材2が追従できなくなってマスキング機能が低下してしまうことが懸念される。したがって、架橋点の存在密度は、マスキング部材2を構成する材料の組成を考慮して、適宜設定される。
【0068】
架橋剤による架橋反応の反応を促進する観点から、上記アクリルゴムは、架橋促進剤を含有することが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミン等のアミノ化合物、塩化第一スズ、ジメチル二塩化スズ、トリメチルスズヒドロキシド、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズスルフィド、塩化第二鉄、鉄アセチルアセテート、ナフテン酸コバルト、硝酸ビスマス、オレイン酸鉛、三塩化アンチモン等の金属化合物などを用いることができる。
【0069】
複合材料Cは、老化防止剤を含有してもよく、特にアクリルゴムを含有する場合には、老化防止剤を含有することが好ましい。老化防止剤の種類としては、酸化防止効果が高ければ特に限定するものではないが、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のアミン−ケトン系老化防止剤;4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第二級アミン系老化防止剤;2−メルカプトベンツイミダゾールの亜鉛塩や2−メルカプトメチルベンツイミダゾールの亜鉛塩等のベンツイミダゾール系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスフェイト等の亜リン酸系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。また、老化防止剤は、耐熱性などの観点から、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを含有することが好ましい。
【0070】
老化防止剤の含有量は特に限定されないが、通常、樹脂成分100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.01〜0.7質量部であることが特に好ましい。
【0071】
複合材料Cにおける磁性成分の含有量は、複合材料Cを構成する樹脂100体積部に対して、10〜80体積部であることが好ましく、15〜70体積部であることが特に好ましく、20〜60体積部であることがさらに好ましい。磁性成分の含有量が10体積部以上であれば、当該磁性成分の磁力によって、マスキング部材2を被マスキング部42に装着することができる。また、磁性成分の含有量が80体積部以下であると、マスキング部材2の成形を容易に行うことができる。
【0072】
複合材料Cは、上記の樹脂および磁性成分の他、分散剤等の添加物を含有していてもよい。
【0073】
マスキング部材2は、常法によって製造することができる。マスキング部材2が複合材料Cからなる場合、使用する樹脂が熱硬化性樹脂であれば、圧縮成形または押出成形によって製造することが好ましく、使用する樹脂が熱可塑性樹脂であれば、射出成形または押出成形によって製造することが好ましい。マスキング部材2の着磁は常法によって行うことができ、公知の着磁・脱磁装置等を使用して行うことができる。
【0074】
2.シール材
本実施形態に係るマスキング体1におけるシール材3は、ペトロラタム、パラフィンロウおよび流動パラフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする半固体または高粘度体である。なお、ここでいう「主成分」とは、構成成分中、最も多い成分をいい、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を占める成分をいう。
【0075】
本実施形態に係るマスキング体1は、上記のシール材3を、マスキング部材2における被マスキング部42に対向する部分(対向面211)の少なくとも一部に有する。上記のような材料からなるシール材3を有することにより、
図3に示すように、マスキング部材2の対向面211と、被マスキング部42とは、シール材3を介して隙間なく密着する。したがって、マスキング体1を装着した被塗装体4を塗装(浸漬塗装を含む)するときに、マスキング部材2の本体部21の外側からも、被塗装体4の穴41からも、マスキング体1(マスキング部材2の対向面211)と被マスキング部42との間に塗料が浸入することが防止され、したがって、被マスキング部42に塗料が付着せず、優れたマスキング効果が得られる。
【0076】
ここで、シール材3が、塗装後に被塗装体4の被マスキング部42やその周囲等に残存した場合は、以下のような作用効果が奏される。すなわち、ペトロラタム、パラフィンロウおよび流動パラフィンは、グリースや油(高粘度の油)と異なり、塗料を弾いたりしないため、後工程の塗装に悪影響を及ぼさない。また、ペトロラタム、パラフィンロウおよび流動パラフィンは導電性を有するため、被マスキング部42が導電体の露出部の場合、シール材3は、被マスキング部42の通電性を妨げない。さらに、ペトロラタム、パラフィンロウおよび流動パラフィンは防錆性を有するため、被マスキング部42が鉄、銅、アルミニウム等の錆びやすい金属の露出部の場合であっても、被マスキング部42が錆びることを抑制することができる。
【0077】
本実施形態に係るマスキング体1は、上記のシール材3を、マスキング部材2における被マスキング部42に対向する部分(対向面211)の少なくとも一部に有するが、マスキング部材2を被マスキング部42に対して押し当てることにより、シール材3は押し潰されて、マスキング部材2の対向面211と被マスキング部42との間の全面に行き渡り、前述した塗料の浸入を防止し、優れたマスキング効果を得ることができる。
【0078】
マスキング体1におけるシール材3の量としては、マスキング部材2を被マスキング部42に装着したときに、マスキング部材2の対向面211と被マスキング部42との間の全面に存在するシール材3の厚さが50〜2,000μmとなる量であることが好ましく、特に200〜1,000μmとなる量であることが好ましい。シール材3の厚さが上記の範囲にあれば、シール材3による密着作用が十分に得られる。
【0079】
本実施形態では被塗装体4に穴41が存在するが、このような場合、マスキング体1は、被マスキング部42に装着したときに、シール材3が少なくとも上記穴41の周縁部に接触するように、シール材3を有することが好ましい。これにより、被塗装体4の穴41から塗料が浸入することを効果的に防止し、優れたマスキング効果を得ることができる。
【0080】
マスキング部材2に対しシール材3を付着させる方法は、特に限定されることはない。例えば、マスキング部材2の少なくとも対向面211がシール材3に接触するように、マスキング部材2をシール材3に埋没または浸漬させてもよいし、刷毛等によってシール材3をマスキング部材2の対向面211に塗布してもよい。
【0081】
なお、
図1〜
図3では、シール材3は、マスキング部材2の凸部23の全体にも付着しているが、これに限定されるものではなく、凸部23の一部のみに付着していてもよいし、凸部23には全く付着していなくてもよい。ただし、被塗装体4の穴41とマスキング部材2の凸部23との間に間隙が存在する場合には、その間隙を埋めるようにシール材3が凸部23に付着していることが好ましい。これにより、被塗装体4の穴41から塗料が浸入することをより効果的に防止し、確実にマスキングすることができる。
【0082】
ペトロラタムとしては、JIS K 2235(石油ワックス)に規定される1号〜4号の他、白色ワセリン、黄色ワセリン等を使用することができる。また、流動パラフィンとしては、例えば、ヌジョール、ホワイト油、白色鉱油、水パラフィン、ミネラルオイル、ミネラルオイルホワイト、医療用パラフィン、パラフィンファックス、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ホワイトスピリット、石油スピリット、ペトロリウムスピリット、ミネラルシンナー等を使用することができる。
【0083】
シール材3が高粘度体の場合、シール材3は、25℃での粘度が50,000〜300,000mPa・sであることが好ましく、特に80,000〜250,000mPa・sであることが好ましく、さらには100,000〜200,000mPa・sであることが好ましい。シール材3の25℃での粘度が上記の範囲にあることにより、常温雰囲気下で、マスキング部材2の対向面211と被マスキング部42とを良好に密着させることができる。
【0084】
また、マスキング体1を使用した塗装工程において焼付工程等の加熱工程がある場合には、シール材3は、180℃での粘度が20〜100mPa・sであることが好ましく、特に40〜85mPa・sであることが好ましく、さらには60〜70mPa・sであることが好ましい。シール材3の180℃での粘度が上記の範囲にあることにより、加熱工程においてもシール材3が融け出すことが抑制され、マスキング部材2の対向面211と被マスキング部42とを密着させた状態を維持することができる。
【0085】
なお、本明細書における粘度は、B型粘度計を使用して測定した値である。
【0086】
〔マスキング方法/塗装部材の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るマスキング方法/塗装部材の製造方法の一例について、以下説明する。被塗装体4としては、塗装前の自動車用鋼板とし、被マスキング部42としては、上記自動車用鋼板における穴41の周りの円形部分とするが、これに限定されるものではない。かかる円形部分は、自動車のアース端子部として利用され得る。
【0087】
最初に、
図1および
図2に示すように、マスキング部材2における、被マスキング部42に対向する対向面211の少なくとも一部に、シール材3を付着させて、これをマスキング体1とする。なお、
図1および
図2では、シール材3は、マスキング部材2の対向面211の全面および凸部23の全体に付着しているが、これに限定されるものではない。
【0088】
次に、
図3に示すように、得られたマスキング体1におけるマスキング部材2の凸部23を、被塗装体4の穴41に挿入しつつ、マスキング部材2の対向面211を、被マスキング部42に対して押し当て、マスキング体1を被マスキング部42に装着する。このとき、マスキング体1は、粘着力以外の力、例えば磁力や嵌合力によって、被マスキング部42に付着する。また、マスキング部材2の対向面211と、被マスキング部42とは、シール材3を介して隙間なく密着する。
【0089】
この状態で、塗装、および所望によりその塗料の加熱硬化、場合によっては水研ぎおよびその後の加熱硬化を所望の回数繰り返す。マスキング体1は、マスキング部材2の対向面211と被マスキング部42とが、シール材3を介して隙間なく密着することで、優れたマスキング性能を発揮する。すなわち、マスキング部材2の本体部21の外側からも、被塗装体4の穴41からも、マスキング体1(マスキング部材2の対向面211)と被マスキング部42との間に塗料が入り込むことが防止され、被マスキング部42に塗料が付着しない。最後の塗装およびその塗料の加熱硬化の工程が終了したら、マスキング部材2の把持部22を持って、マスキング部材2を被マスキング部42から取り外す。これにより、被マスキング部42に塗膜が形成されていない塗装部材が得られる。
【0090】
マスキング部材2を取り外したときに、シール材3は、被塗装体4の被マスキング部42に残存してもよい。前述した材料からなるシール材3は、後工程の塗装に悪影響を及ぼさず、また、被マスキング部42の通電性を妨げず、さらには、被マスキング部42に対して防錆効果をも発揮する。
【0091】
取り外したマスキング部材2は、当該マスキング部材2が変形、変質等して正確な形状を維持できなくなるまで、上記と同様にしてマスキングに繰り返し使用することができる。本実施形態に係るマスキング体1によれば、マスキング部材2(特に対向面211)が多少変形した場合であっても、シール材3の存在によって、マスキング部材2の対向面211と被マスキング部42との密着性は維持されるため、マスキング部材2を繰り返し使用することのできる回数は多い。
【0092】
上記の塗装処理の詳細は限定されず、マスキング体1が装着された被塗装体4を塗料中に浸漬する処理であってもよいし、塗料をスプレーで吹き付ける処理であってもよい。また、塗料の成分を被塗装体の表面に堆積させるにあたり、塗料中に浸漬する被塗装材に対して電解法による表面処理がなされてもよい。なお、本実施形態において、「塗料」とは塗装処理に用いる液状組成物を意味し、染料および/または顔料からなる着色材料を含有する場合もあれば、着色顔料を含有しない場合もある。したがって、色塗装の下塗りとなる電着液の成分を被塗装体上に堆積させる電解法による表面処理や、着色塗膜上に形成されるクリアコートを堆積させるための処理も、本実施形態に係る塗装処理に含まれる。さらには、塗膜層と被塗装体との密着性を向上させるために必要に応じて行われる表面調整処理、具体的にはエッチング処理やリン酸塩処理等において使用される処理用液状組成物も、本実施形態においては「塗料」の概念に含まれ、そのような処理用液状組成物を用いて行われる表面調整処理も、本実施形態においては塗装処理の概念に含まれるものとする。
【0093】
上記塗装処理として、電着塗装を行うこともできる。電着塗装においては、被塗装体4を電着塗料中に浸漬する。この場合、単なる塗料への浸漬による塗装(以下、「単純浸漬塗装」ともいう。)とは異なり塗料物質を電解により析出させるため、単純浸漬塗装に比べて一般的に塗料への浸漬時間は長くなる。また、電着塗装では、一般的にマスキング材は被マスキング部のごく近傍で電気化学反応が生じるため、マスキング材が化学的に変質しやすい。したがって、電着塗装に使用されるマスキング材は、単純浸漬塗装に使用されるマスキング材に比べて優れたマスキング機能が求められる。シール材3を使用したマスキング体1は、この要請に十分応えることができる。
【0094】
上記のような塗装処理を行った後、通常は、塗料が付着した被塗装体4を加熱して、被塗装体の表面に塗膜を形成する。この加熱温度は、塗料の種類および塗装方法により決定されるものであるが、一般的に、単純浸漬塗装の場合には120℃〜160℃程度であり、電着塗装の場合には180℃程度である。マスキング体1のシール材3が、180℃において前述した物性(粘度)を有する場合には、かかる加熱工程においてもシール材3が被マスキング部42から融け出すことが抑制され、マスキング部材2の対向面211と被マスキング部42とを密着させた状態を維持することができる。また、マスキング部材2が耐熱性に優れた材料からなる場合には、マスキング部材2の変形、溶融等を防止して、正確な形状のマスキング部材2の繰り返し使用を可能にすることができる。
【0095】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0096】
例えば、マスキング部材2の把持部22および/または凸部23は省略されてもよいし、被マスキング部42には穴41がなくてもよい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0098】
〔実施例1〕
ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン社製,ハイトレル4047N)100体積部と、ストロンチウムフェライトからなる磁性粉47体積部とを混合して、成形原料としての組成物を得た。この組成物を用いて、磁場中にある金型を用いた射出成形および着磁により、
図1〜
図3中の符号2に示す形状からなるマスキング部材(ショアD硬度:40)を得た。
【0099】
このマスキング部材の本体部(対向面)の直径は30mm、本体部の高さは6mm、凸部の直径は6mm、長さは5mm、把持部の直径は14mm、高さは10mmであった。
【0100】
得られたマスキング部材における被マスキング部に対向する対向面の全面および凸部の全体に、
図1〜
図3に示すように、シール材としてのワセリン(カルメット・ペンレコ社製,Penreco Ultima)を厚さが500μmとなるように付着させて、これをマスキング体とした。
【0101】
〔実施例2〕
シール材として、ワセリン(純正化学社製,ワセリン)を使用する以外、実施例1と同様にしてマスキング体を作製した。
【0102】
〔実施例3〕
アクリル酸エチル(EA)に由来する構成単位、アクリル酸n−ブチル(BA)に由来する構成単位およびアクリル酸メトキシエチル(MEA)に由来する構成単位をモル比として1:7:4の割合で含有し、さらにカルボキシ基を有する化合物に由来する構成単位を微量含んでなるアクリル酸エステル共重合体を用意した。そして、アクリルゴムを構成するための当該アクリル酸エステル共重合体100質量部およびアミン系架橋剤である6−アミノヘキシルカルバミド酸1質量部と、老化防止剤としての4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン0.5質量部とを混合し、アクリルゴム組成物を得た。ポリエステルエラストマーの替わりに、得られたアクリルゴム組成物を用いたこと以外、実施例1と同様にして、マスキング部材、そしてマスキング体を作製した。マスキング部材のショアD硬度は13.5であった。
【0103】
〔比較例1〕
従来のマスキングテープ(スリーエム社製,製品名「ファインラインマスキングテープ2800」)を用意し、これを比較例1のマスキング体とした。
【0104】
〔比較例2〕
実施例1と同様にして作製したマスキング部材のみ(シール材無し)を、比較例2のマスキング体とした。
【0105】
〔比較例3〕
シール材として、グリース(協同油脂社製,ワンルーバーMP)を使用する以外、実施例1と同様にしてマスキング体を作製した。
【0106】
〔試験例1〕(浸漬試験)
実施例および比較例で作製したマスキング体を、直径5mmの穴を有する平板状のステンレス鋼板(SUS304;厚さ0.5mm;比透磁率:1.4)に装着し(マスキング部材の凸部をステンレス鋼板の穴に挿入し、マスキング部材の対向面を、シール材を介してステンレス鋼板に密着させ)、これをサンプルとした。なお、比較例1のマスキング体(マスキングテープ)については、2kgのローラーを用いて貼り付けた。
【0107】
得られたサンプルを、水系の電着塗料(日本ペイント社製,製品名「パワートップUエクセル250」;液温23℃)を満たした槽に浸漬し、浸漬開始から10分後に取り出した。
【0108】
次いで、ステンレス鋼板からマスキング部材またはマスキングテープを取り外し、ステンレス鋼板の被マスキング部への塗料の付着の有無を確認した。評価基準は次のとおりである。
A:付着無し
F:付着あり
評価結果を表1に示す。なお、この評価において付着あり(F)と評価された比較例2のサンプルについては、試験例2および3の評価を実施しなかった。
【0109】
〔試験例2〕(繰り返し使用試験)
試験例1において評価がAだったサンプル(実施例1〜3および比較例1,3)について、試験例1で行ったマスキング体装着−浸漬−マスキング部材取り外しの作業を5回繰り返し行った。なお、シール材を有するマスキング体については、上記作業1回ごとにシール材を新たにマスキング部材に付着させて、上記の繰り返し使用試験を行った。上記作業を5回行った後のステンレス鋼板の被マスキング部への塗料の付着の有無を確認した。評価基準は次のとおりである。
A:付着無し
F:付着あり
評価結果を表1に示す。
【0110】
〔試験例3〕(塗料の弾き評価)
試験例1において塗装したステンレス鋼板からマスキング部材またはマスキングテープを取り外した後、被マスキング部の周囲における塗料の弾きを目視により確認した。評価基準は次のとおりである。
A:弾き無し
F:弾きあり
評価結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1から分かるように、実施例で得られたマスキング体は、マスキング性能に優れており、5回の繰り返し使用の後でもマスキング性能が維持されていた。また、実施例のマスキング体で使用したシール材は、塗料を弾かなかったため、被マスキング部に残存しても、後工程の塗装に悪影響を及ぼさない。