(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
数平均分子量が500〜5,000の高分子ジオール(a)、炭素数4〜6の直鎖アルカンジオール(b)、モノオール(c)、炭素数6〜10のジアミン(d)及び有機ジイソシアネート(e)を反応させて得られる熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)と添加剤とを含有し、下記(1)〜(5)を満たすスラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P):
(1)前記高分子ジオール(a)が、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸(f1)とエチレングリコールとを反応させて得られるポリエステルジオール(a1)及び炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(f2)と炭素数2〜6の脂肪族ジオール(g)とを反応させて得られるポリエステルジオール(a2)を含有し、前記ポリエステルジオール(a1)の数平均分子量が1,500〜3,000であり、前記ポリエステルジオール(a2)の数平均分子量が800〜1,500である;
(2)前記(a)、前記(b)、前記(c)、前記(d)及び前記(e)の合計重量に対する前記(b)の重量の割合が0.4〜1.0重量%である;
(3)前記(P)の成形皮膜の25℃での引張強度が8.0MPa以上である;
(4)前記(P)を200℃で溶融後に冷却速度35℃/分で130℃まで冷却して130℃で1時間経過後の貯蔵弾性率G’130が0.1〜5.0MPaである;
(5)数式(1)で表される貯蔵弾性率G’の比率が50%以上である。
貯蔵弾性率G’の比率=貯蔵弾性率G’50÷貯蔵弾性率G’23×100 (1)
[式中、貯蔵弾性率G’50は(P)を200℃で溶融後に冷却速度80℃/分で40℃まで冷却したときの50℃での貯蔵弾性率G’であり、貯蔵弾性率G’23は(P)を200℃で溶融後に35℃/分で23℃まで冷却して23℃で1時間経過後の貯蔵弾性率G’である。]
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のスラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)は、数平均分子量(以下、Mnと略記)が500〜5,000の高分子ジオール(a)、炭素数4〜6の直鎖アルカンジオール(b)、モノオール(c)、炭素数6〜10のジアミン(d)及び有機ジイソシアネート(e)を反応させて得られる熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)と添加剤とを含有する。
尚、本発明におけるジオールのMnはJIS K 1557−1(プラスチック−ポリウレタン原料ポリオール試験方法−第1部:水酸基価の求め方)に準拠して測定されるジオールの水酸基価から算出される値である。
【0008】
Mnが500〜5,000の高分子ジオール(a)は、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸(f1)とエチレングリコールとを反応させて得られるポリエステルジオール(a1)及び炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(f2)と炭素数2〜6の脂肪族ジオール(g)とを反応させて得られるポリエステルジオール(a2)を含有する。
【0009】
炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸(f1)としては、テレフタル酸、イソフタル酸及びオルトフタル酸等が挙げられる。
【0010】
炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(f2)としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。
【0011】
ポリエステルジオール(a1)のMnは、通常500〜5,000であり、引張強度及び伸びの観点から、好ましくは1,500〜3,000である。
【0012】
炭素数2〜6の脂肪族ジオール(g)としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、脆化等の低温特性の観点から、好ましいのは1,4−ブタンジオールである。
【0013】
ポリエステルジオール(a2)のMnは、通常500〜5,000であり、脆化等の低温特性の観点から、好ましくは800〜1,500である。
【0014】
ポリエステルジオール(a1)とポリエステルジオール(a2)の重量比[(a1):(a2)]は、脆化等の低温特性の観点から、好ましくは5:95〜30:70である。
【0015】
高分子ジオール(a)は、更に(a1)及び(a2)以外のポリエステルジオール(a3)、ポリエーテルジオール(a4)及びポリエーテルエステルジオール(a5)等を含有してもよい。(a)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
(a1)及び(a2)以外のポリエステルジオール(a3)としては、例えば(1)Mnが500未満の低分子ジオール(h)からエチレングリコールを除いた低分子ジオールと炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸(f1)又はそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸ハライド等]との縮合重合によるもの;(2)Mnが500未満の低分子ジオール(h)から炭素数2〜6の脂肪族ジオール(g)を除いた低分子ジオールと炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(f2)又はそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸ハライド等]との縮合重合によるもの;(3)Mnが500未満の低分子ジオール(h)を開始剤としてラクトンモノマーを開環重合したもの;及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0017】
Mnが500未満の低分子ジオール(h)としては、炭素数2〜8の脂肪族ジオール類[直鎖ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等)、分岐鎖を有するジオール(プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール及び1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール等)等];環状基を有するジオール類[炭素数6〜15の脂環基含有ジオール{1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び水添ビスフェノールA等}、炭素数8〜20の芳香環含有ジオール(m−又はp−キシリレングリコール等)、単環フェノール類(カテコール及びハイドロキノン等)のオキシアルキレンエーテルジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールS及びビスフェノールF等)のオキシアルキレンエーテルジオール、多核フェノール類(ジヒドロキシナフタレン等)のオキシアルキレンエーテルジオール及びビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等];これらのAO付加物(分子量500未満)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。低分子ジオールの内で好ましいのは脂肪族ジオール及び脂環基含有ジオールである。
【0018】
ラクトンモノマーとしてはγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
(a1)及び(a2)以外のポリエステルジオール(a3)の具体例としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテルジオール(a4)としては、前記低分子ジオール(h)のAO付加物が挙げられ、これらの内で好ましいのは、ビスフェノール類のAO付加物、更に好ましいのはビスフェノール類のエチレンオキサイド付加物である。
【0021】
ポリエーテルエステルジオール(a5)としては、ポリエステルジオール(a1)〜(a3)において原料の低分子ジオールに代えて上記ポリエーテルジオール(a4)を用いたもの、例えば上記ポリエーテルジオール(a4)の1種以上と前記ポリエステルジオールの原料として例示した芳香族ジカルボン酸(f1)又は脂肪族ジカルボン酸(f2)及びこれらのエステル形成性誘導体の1種以上とを縮重合させて得られるものが挙げられる。
【0022】
ポリエステルジオール(a3)、ポリエーテルジオール(a4)及びポリエーテルエステルジオール(a5)のMnは、引張強度及び伸びの観点から、好ましくは500〜5,000であり、更に好ましくは1,500〜3,000である。
【0023】
本発明における炭素数4〜6の直鎖アルカンジオール(b)としては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられ、耐折れしわ性及び引張強度の観点から好ましいのは1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールである。(b)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
モノオール(c)としては、炭素数1〜8の脂肪族モノオール類[直鎖モノオール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びオクタノール等)及び分岐鎖を有するモノオール(イソプロピルアルコール、ネオペンチルアルコール、3−メチル−ペンタノール及び2−エチルヘキサノール)等];炭素数6〜10の環状基を有するモノオール類[脂環基含有モノオール(シクロヘキサノール等)及び炭素数7〜12の芳香環含有モノオール(ベンジルアルコール及びナフチルエタノール等)等];これらの2種以上の混合物が挙げられる。また、ポリエステルモノオール、ポリエーテルモノオール及びポリエーテルエステルモノオール等の高分子モノオールもモノオール(c)として使用できる。これらの内で好ましいのは炭素数6〜10の脂肪族モノオール及び炭素数7〜12の芳香環含有モノオールである。
【0025】
炭素数6〜10のジアミン(d)としては、炭素数6〜10の脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン及びイソホロンジアミン等);炭素数6〜10の脂肪族ジアミン(ヘキサメチレンジアミン等);炭素数8〜10の芳香脂肪族ジアミン(キシリレンジアミン等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの内で好ましいのは脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンであり、特に好ましいのはイソホロンジアミン及びヘキサメチレンジアミンである。
【0026】
有機ジイソシアネート(e)としては、以下のものが挙げられる。
(i)炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等];
(ii)炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート[イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート及びビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等];
(iii)炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート[m−又はp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等];
(iv)芳香族ジイソシアネート[1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略記)、粗製TDI、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI及び1,5−ナフチレンジイソシアネート等];
(v)これらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基又はウレア基等を有するジイソシアネート変性物)。
これらの内で耐候性の観点から好ましいのは脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートであり、更に好ましいのはHDI、IPDI及び水添MDIである。
(d)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の合計重量に対する(b)の重量の割合は、通常0.4〜1.0重量%である。
【0028】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の190℃での溶融粘度は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の溶融性の観点から、300〜1,000Pa・sが好ましく、更に好ましくは300〜700Pa・sである。尚、本発明における溶融粘度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0029】
本発明の熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、更に好ましくは70〜300μmである。また、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)は、真球状でも非真球状でもよい。尚、本発明における体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定される。
【0030】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の130℃での貯蔵弾性率G’
130は、耐熱性及び(U)の溶融性の観点から、0.2〜10MPaが好ましく、更に好ましくは0.5〜2MPaである。尚、本発明における貯蔵弾性率G’
130は、実施例に記載の方法で測定される。
【0031】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)のMnは、好ましくは10,000〜40,000、更に好ましくは20,000〜30,000である。本発明における熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)のMnは実施例に記載の方法で測定される。
【0032】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の製造方法としては以下の方法等が挙げられる。
(1)有機溶媒の存在下又は非存在下であらかじめ高分子ジオール(a)と直鎖アルカンジオール(b)とモノオール(c)の混合物と有機ジイソシアネート(e)を、上記混合物中の水酸基と有機ジイソシアネート(e)のイソシアネート基のモル比が、1:1.2〜1:4.0となるように反応させ、得られた末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(Up)を、水及び分散安定剤存在下で、ジアミン(d)で伸長反応させる方法。尚、低分子ジアミンはブロックされた直鎖脂肪族ジアミン(例えばケチミン化合物)等を使用することができる。
(2)上記ウレタンプレポリマー(Up)を、非極性有機溶媒及び分散安定剤存在下で、ジアミン(d)で伸長反応させる方法。
(3)高分子ジオール(a)、直鎖アルカンジオール(b)、モノオール(c)、ジアミン(d)及び有機ジイソシアネート(e)をワンショットで反応させる方法。
【0033】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の製造に用いる有機溶媒としては、炭素数3〜9のケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びジエチルケトン等)、炭素数4〜8のエーテル(テトラヒドロフラン等)及び炭素数3〜6のエステル(酢酸メチル及び酢酸エチル等)が挙げられる。有機溶媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の製造に用いる分散安定剤としては、水溶性高分子(メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩類、ポリビニルピロリドン及びジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩等)、無機粉末(炭酸カルシウム粉末、リン酸カルシウム粉末、ハイドロキシアパタイト粉末及びシリカ粉末等)、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。分散安定剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
ウレタンプレポリマー(Up)を製造する際の反応温度は、ウレタン化を行う際に通常採用される温度と同じでよく、有機溶媒を使用する場合は通常20℃〜100℃であり、有機溶媒を使用しない場合は通常20℃〜140℃、好ましくは80℃〜130℃である。
上記ウレタン化反応において、反応を促進するために必要によりポリウレタンに通常用いられる触媒を使用することができる。触媒としては、例えばアミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン及びトリエチレンジアミン等)、錫系触媒(トリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート及びジブチルチンマレート等)等が挙げられる。
【0036】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)を粉末状とする方法としては、(U)が水又は水と有機溶媒との混合物に分散された分散体を得た後、分散媒を除去する方法や、塊状又はペレット状の(U)を得て粉砕する方法等が挙げられる。
【0037】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)を分散体として得る方法としては、特に限定されず、例えば前記ウレタンウレア樹脂(U)の製造方法における(1)の方法、国際公開第2011/070784号や国際公開第2013/018747号に記載の方法等が挙げられる。
【0038】
(U)の分散体の製造に用いる乳化・分散装置としては、一般に乳化機、分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えば、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)及びTKオートホモミキサー(プライミクス社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(プライミクス社製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(日本コークス工業社製)、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工社製)等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー(みずほ工業社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)及びAPVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業社製)等の膜乳化機及びバイブロミキサー(冷化工業社製)等の振動式乳化機並びに超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。この内、粒径分布の観点で好ましいのは、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0039】
塊状又はペレット状の熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の製造方法としては、例えばニーダー等のバッチ式混練機及びサイドフィーダーが付属したスクリュー式押出機等が使用できる。次いで、液体窒素等によって冷却し、ターボミル等の衝撃式粉砕機で粉砕することにより、粉末状の熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)を得ることができる。
【0040】
本発明のスラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)及び添加剤を含有する。
【0041】
添加剤としては無機フィラー、顔料、可塑剤、離型剤、安定剤及びブロッキング防止剤(粉体流動性向上剤)等が挙げられる。添加剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
無機フィラーとしては、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー及び金属粉末等が挙げられる。これらのうち、熱可塑性樹脂の結晶化促進の観点から、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン及び炭酸カルシウムが好ましく、更に好ましくはカオリン及びタルクである。
【0043】
無機フィラーの体積平均粒径は、熱可塑性樹脂中への分散性の観点から、0.1〜30μmが好ましく、更に好ましくは1〜20μm、特に好ましくは5〜10μmである。
無機フィラーの添加量は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の重量に対して、0〜40重量%が好ましく、1〜20重量%が更に好ましい。
【0044】
顔料としては特に限定されず、公知の有機顔料及び無機顔料を使用することができる。有機顔料としては、不溶性又は溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料及びキナクリドン系顔料等が挙げられ、無機系顔料としては、クロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物(酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛及び酸化アルミニウム等)、金属塩類[硫酸塩(硫酸バリウム等)、珪酸塩(珪酸カルシウム及び珪酸マグネシウム等)、炭酸塩(炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等)及び燐酸塩(燐酸カルシウム及び燐酸マグネシウム等)等]、金属粉末(アルミ粉末、鉄粉末、ニッケル粉末及び銅粉末等)及びカーボンブラック等が挙げられる。顔料の平均粒径については特に限定はないが、通常0.2〜5.0μm、好ましくは0.5〜1μmである。
顔料の添加量は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の重量を基準として、通常10重量%以下、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%である。
【0045】
可塑剤としては、フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル及びセバシン酸−2−エチルヘキシル等);トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);脂肪族リン酸エステル(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート及びトリブトキシホスフェート等);芳香族リン酸エステル[トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート及びトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート等];ハロゲン脂肪族リン酸エステル[トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(βークロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等];及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
可塑剤の添加量は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは0〜50重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0046】
離型剤としては公知の離型剤等が使用でき、フッ素化合物型離型剤[リン酸トリパーフルオロアルキル(炭素数8〜20)エステル(トリパーフルオロオクチルホスフェート及びトリパーフルオロドデシルホスフェート等)];シリコーン化合物型離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン及びカルボキシル変性ジメチルポリシロキサン等);脂肪酸エステル型離型剤[炭素数10〜24の脂肪酸のモノ又は多価アルコールエステル(ブチルステアレート、硬化ひまし油及びエチレングリコールモノステアレート等)等];脂肪族酸アミド型離型剤[炭素数8〜24の脂肪酸のモノ又はビスアミド(オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド及びエチレンジアミン等のジステアリン酸アミド等)等];金属石鹸(ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛等);天然又は合成ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及びポリブロピレンワックス等);及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
離型剤の添加量は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは0〜1重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0047】
安定剤としては、スラッシュ成形用材料に用いられる通常の紫外線吸収剤や酸化防止剤の他、分子中に炭素−炭素二重結合(置換基を有していてもよいエチレン結合等)(但し芳香環中の二重結合は除く)又は炭素−炭素三重結合(置換基を有していてもよいアセチレン結合)を有する化合物等が使用できる。
【0048】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系[2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等];サリチル酸系[フェニルサリシレート等];ヒンダードアミン系[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等]等が挙げられる。
【0049】
酸化防止剤としては、フェノール系[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール及びブチル化ヒドロキシアニソール等];ビスフェノール系[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等];リン系[トリフェニルフォスファイト及びジフェニルイソデシルフォスファイト等]等が挙げられる。
【0050】
分子中に炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸と2〜10価の多価アルコール(2〜10価の多価アルコール、以下同様)とのエステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等];(メタ)アリルアルコールと2〜6価の多価カルボン酸とのエステル[ジアリルフタレート及びトリメリット酸トリアリルエステル等];多価アルコールのポリ(メタ)アリルエーテル[ペンタエリスリトール(メタ)アリルエーテル等)];多価アルコールのポリビニルエーテル(エチレングリコールジビニルエーテル等);多価アルコールのポリプロペニルエーテル(エチレングリコールジプロペニルエーテル等);ポリビニルベンゼン(ジビニルベンゼン等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの内、安定性(ラジカル重合速度)の観点から、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステルが好ましく、更に好ましくはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。
安定剤の添加量は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%である。
【0051】
ブロッキング防止剤(粉体流動性向上剤)としては、公知の無機系ブロッキング防止剤及び有機系ブロッキング防止剤等を使用することができる。無機系ブロッキング防止剤としてはシリカ、タルク、酸化チタン及び炭酸カルシウム等が挙げられる。有機系ブロッキング防止剤としては粒子径10μm以下の熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂及びエポキシ系樹脂等)及び粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂[熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂及びポリ(メタ)アクリレート樹脂等]等が挙げられる。
ブロッキング防止剤(流動性向上剤)の添加量は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の重量に基づいて、好ましくは0〜5重量%、更に好ましくは0.5〜1重量%である。
【0052】
添加剤の添加量の合計値は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の重量を基準として、0.01〜50重量%が好ましく、更に好ましくは1〜30重量%である。
【0053】
添加剤は、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)を製造前の原料中、ウレタンプレポリマー(Up)製造時、ウレタンプレポリマー(Up)製造後、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)製造後のいずれの段階で添加してもよいが、添加剤が可塑剤、離型剤又はブロッキング防止剤(粉体流動性向上剤)である場合は熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)製造後に添加することが好ましい。
【0054】
添加剤が液状物である場合、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)と添加剤を混合することにより、添加剤が(U)中にしみこみ、添加剤が(U)に含浸されたスラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)が得られる。
【0055】
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)を得た後に添加剤と混合する場合の混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機及び流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置[ヘンシエルミキサ(登録商標)等]、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)及び円錐型スクリュー混合機[ナウタミキサ(登録商標、以下省略)等]が挙げられ、これらの中で好ましいのは、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)及び円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ等)である。
【0056】
本発明のスラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)の成形皮膜の25℃での引張強度は、通常8.0MPa以上であり、好ましくは9.0MPa以上である。引張強度が8.0MPa以上であれば、表皮取り回し時に表皮の裂け等が発生しない。尚、本発明における引張強度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0057】
スラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)を200℃で溶融後に冷却速度35℃/分で130℃まで冷却して130℃で1時間経過後の貯蔵弾性率G’
130は、通常0.1〜5.0MPaであり、好ましくは0.2〜1.0MPaである。
130℃での貯蔵弾性率G’
130が0.1MPa以上であれば、耐熱性が良好であり、5.0MPa以下であれば、粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)の低温溶融性が良好である。尚、本発明における貯蔵弾性率G’
130は、実施例に記載の方法で測定される。
【0058】
スラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)の数式(1)で表される貯蔵弾性率G’の比率は、通常50%以上、好ましくは60%以上である。貯蔵弾性率G’の比率が50%以上であれば、リアルステッチ縫製時に表皮が変形せず、しわが発生することがない。
貯蔵弾性率G’の比率=貯蔵弾性率G’
50÷貯蔵弾性率G’
23×100 (1)
【0059】
数式(1)における貯蔵弾性率G’
50は(P)を200℃で溶融後に冷却速度80℃/分で40℃まで冷却したときの50℃での貯蔵弾性率G’であり、貯蔵弾性率G’
23は(P)を200℃で溶融後に35℃/分で23℃まで冷却して23℃で1時間経過後の貯蔵弾性率G’である。
尚、本発明における貯蔵弾性率G’
50及びG’
23は、実施例に記載の方法で測定される。
【0060】
本発明のスラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)は、スラッシュ成形法で表皮等の樹脂成形物を製造するための材料として特に有用である。スラッシュ成形法としては、本発明の粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)が入ったボックスと加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後、冷却後、固化させ、表皮を製造する方法を挙げることができる。
金型温度は好ましくは200〜300℃、更に好ましくは200〜250℃である。
【0061】
スラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)で成形された表皮厚さは、0.3〜1.5mmが好ましい。スラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)は、比較的低温領域での成形が可能であり、成形の温度としては200〜250℃が可能である。
【0062】
成形表皮は、表面を発泡型に接するようにセットし、ウレタンフォームを流し、裏面に5mm〜15mmの発泡層を形成させて、樹脂成形品とすることができる。スラッシュ成形用粉末状熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P)で成形された樹脂成形品は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル及びドアトリム等に好適に使用される。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部は重量部、%は重量%を示す。
【0064】
製造例1 [熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U−1)の製造]
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、ポリエステルポリオール(a1)としてのMnが2300ポリエチレンイソフタレート282.9部及びポリエステルポリオール(a2)としてのMnが1,000のポリブチレンアジペート424.4部、モノオール(c)としてのベンジルアルコール9.34部並びに直鎖アルカンジオール(b)としての1,4−ブタンジオール5.88部を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、50℃まで冷却した。続いて、有機溶媒としてのメチルエチルケトン150.0部及び有機ジイソシアネート(e)としてのヘキサメチレンジイソシアネート132.0部を投入し、90℃で6時間反応させた。次いで、70℃に冷却した後、安定剤としてのイルガノックス1010[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製]1.4部を加え、均一に混合してウレタンプレポリマー(Up−1)の溶液を得た。得られたプレポリマー溶液のイソシアネート基含有量は、1.63%であった。続いて、反応容器に、分散安定剤としてのサンスパールPS−8[三洋化成工業(株)製]5.9部を水152部に溶解した水溶液157.9部と有機溶媒としてのメチルエチルケトン37.1部を加えて20℃で均一に撹拌後、ウルトラディスパーサー[ヤマト科学(株)製]を用いて周速23m/s(回転数:10,000rpm)の攪拌下にジアミン(d)としてのヘキサメチレンジアミン1.7部を加え1分間混合した。続いて、75℃に温調したプレポリマー(Up−1)の溶液103.3部を投入し、周速23m/sで2分間混合し後、混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換し、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U−1)を得た。
【0065】
製造例2〜4及び比較製造例1〜5 [熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U−2)〜(U−4)及び比較用の熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U’−1)〜(U’−5)の製造]
仕込み原料を表1に記載のものに代える以外は実施例1と同様にして、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U−2)〜(U−4)及び比較用の熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U’−1)〜(U’−5)を得た。尚、比較製造例2では直鎖アルカンジオール(b)を使用しなかった。
【0066】
製造例1〜4及び比較製造例1〜5で得られた(U−1)〜(U−4)及び(U’−1)〜(U’−5)の溶融粘度、Mn及び体積平均粒径を表1に示す。尚、各物性値の測定方法は以下の通りである。
【0067】
<190℃での溶融粘度測定方法>
以下の条件で等速昇温し、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)の190℃での溶融粘度を測定した。
・装置:フローテスターCFT−500[島津(株)製]
・荷重:5kg・f
・ダイ:穴径0.5mm、長さ1.0mm
・昇温速度:5℃/分
【0068】
<Mnの測定方法>
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定した。
・装置:「HLC−8120」[東ソー(株)製]
・カラム:「TSK GEL GMH6」2本[東ソー(株)製]
・測定温度:40℃
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:100μl
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
尚、Mnの測定には、試料をテトラヒドロフランに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液として用いた。
【0069】
<体積平均粒径の測定方法>
レーザー回折式粒子径分布測定装置[日機装(株)製「Microtrac MT3000II」]を用いて測定し、得られた相対累積粒径分布曲線において累積量が50%のときの粒径(d
50)を体積平均粒径とした。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1 [熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P−1)の製造]
ナウタミキサ内に、熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U−1)100部、可塑剤としてのポリエチレングリコールジ安息香酸エステル[三洋化成工業(株)社製;サンフレックス EB−300]12部、安定剤としての分子中に炭素−炭素二重結合を有する化合物のジペンタエリスリトールペンタアクリレート[三洋化成工業(株)社製;ネオマー DA−600]1.0部及び紫外線吸収剤としてのビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)[商品名:TINUVIN 765、BASFジャパン(株)製]0.3部並びに顔料としてのカーボンブラック1部を投入し、70℃で4時間含浸させた。続いて、内添離型剤としてのジメチルポリシロキサン[日本ユニカー(株)製;L45−1000]0.06部を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。最後に、ブロッキング防止剤としての架橋ポリメチルメタクリレート[ガンツ化成(株);ガンツパールPM−030S]0.5部を投入混合することで熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P−1)を得た。
【0072】
実施例2〜4及び比較例1〜5 [熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P−2)〜(P−4)及び比較用の熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P’−1)〜(P’−5)の製造]
熱可塑性ウレタンウレア樹脂(U−1)を表2に記載のものに代える以外は実施例1と同様にして、熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P−2)〜(P−4)及び比較用の熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P’−1)〜(P’−5)を得た。
【0073】
得られた熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P−1)〜(P−4)及び(P’−1)〜(P’−5)について以下の方法で測定又は評価した結果を表2に示す。
【0074】
<貯蔵弾性率G’の測定法>
各条件での貯蔵弾性率G’を、下記の条件で測定した。
・装置:動的粘弾性測定装置「RDS−2」(Rheometric Scientific社製)
・周波数:1Hz
(1)130℃での貯蔵弾性率G’
130の測定方法
測定試料を測定装置の冶具(冶具の直径:8mm)にセットした後、200℃まで昇温して200℃で1分間溶融させて冶具に密着させ、冷却速度35℃/分で130℃まで冷却して測定を開始し、130℃で1時間経過後の貯蔵弾性率G’を読み取った。
【0075】
(2)50℃での貯蔵弾性率G’
50の測定方法
測定試料を測定装置の冶具(冶具の直径:8mm)にセットした後、200℃まで昇温して200℃で1分間溶融させて冶具に密着させた後、測定を開始して、冷却速度80℃/分で40℃まで冷却して温度に対して貯蔵弾性率G’がプロットされた曲線グラフを得て、このグラフから50℃における貯蔵弾性率G’を読み取った。
【0076】
(3)23℃での貯蔵弾性率G’
23の測定方法
測定試料を測定装置の冶具(冶具の直径:8mm)にセットした後、200℃まで昇温して200℃で1分間溶融させて冶具に密着させ、冷却速度35℃/分で23℃まで冷却して測定を開始し、23℃で1時間経過後の貯蔵弾性率G’を読み取った。
【0077】
<表皮の作製>
予め210℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物を充填し10秒間保持した後、余分な熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物を排出し、型を60秒間水冷して厚さ1.0mmの成形表皮を作製した。また、充填後の保持時間を6秒にする以外は、前記と同様にして厚さ0.5mmの成形表皮を作製した。
【0078】
<引張強さ及び切断時伸びの測定方法>
測定はJIS K 6251:2010に準じて行った。即ち、厚さ0.5mm及び1.0mmの成形表皮からJIS K 6251:2010の引張試験片ダンベル1号形を3枚打ち抜き、その中心に40mm間隔で標線を引いた。板厚は標線間5カ所の最小値を採用した。これを25℃雰囲気下にてオートグラフに取り付け、200mm/分の速さで引っ張り、引張強さ及び切断時伸びを測定した。
【0079】
<裏面溶融性>
厚さ0.5mm及び1.0mmの成形表皮裏面中央部を目視で観察し、以下の判定基準で溶融性を評価した。
5:均一で光沢がある。
4:一部未溶融のパウダーが有るが、光沢がある。
3:裏面全面に凹凸があり、光沢はない。表面に貫通するピンホールはない。
2:裏面全面にパウダーの形状の凹凸があり、かつ表面に貫通するピンホールがある。
1:パウダーが溶融せず、成形品にならない。
【0080】
<湿熱老化試験引裂強度>
厚さ1.0mmの成形表皮を、温度80℃湿度95%RHにセットされた恒温恒湿機中に400時間静置した後、表皮の引裂強さをJIS K 6252:2007に準じて測定して、初期強度と比較した。引裂強さの測定は、JIS K 6252:2007の切込みなしアングル型を3枚打ち抜き、板厚は切断部分付近5ヶ所の最小値を採用した。これを25℃雰囲気下にてオートグラフに取り付け、200mm/分の速さで引っ張り、引裂強さを測定した。
【0081】
<表皮脱型後1.5分後の折れしわ角度>
厚さ0.5mm及び1.0mmの成形表皮を4cm×2.5cmの大きさに切り取り、脱型後1.5分後にサンプルを半分に折り曲げ、荷重700g・fを30秒間かける。荷重を開放した後10分後にサンプルの折れている角度を測定した。
【0082】
<熱老化後の融着試験>
厚さ1.0mmの成形表皮を、縦60mm、横95mmの大きさに切り、シートの裏面に、コールドカッター(刃の厚み0.3mm)で表面に対しておよそ直角に深さ0.4〜0.6mm、長さ60mmの切り目を入れた。成形表皮を離型紙に挟み、離型紙の上から重量95〜100g、寸法(縦、横、高さ)が縦100mm×横100mm×厚み1.2mmの鉄板を離型紙が隠れるように載せ、空気中、常圧下130℃で100時間放置した後、上記シートの切り目が融着していないか目視で観察した。
以下の基準で評価した。
○:カッターの切り目が全く融着していない。
△:カッターの切り目が部分的に融着している。
×:カッターの切り目が融着している。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例1〜4の熱可塑性ウレタンウレア樹脂組成物(P−1)〜(P−4)を使用して成形した成形物は、引張強度に優れ、折れしわの発生もないことから、スラッシュ成形用の材料として有用であることが分かった。