(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、例えば、オイルサンプに貯留されたオイルにエアが混じっていた場合、電動ポンプ始動時にエアを噛み込んだ状態でオイルが吸入ポートからポンプ室に流入することがある。エアは粘性もなく、オイルに比べて微小な隙間でも通過可能なため、リリーフバルブが開放されていなくとも、エアのみがリリーフバルブの弁体の僅かな隙間を通過して排出されてしまうことがある。エアがリリーフバルブによって吸入ポート側に排出されると、ポンプ室に再びエアが多く含まれたオイルが吸入されることになってしまう。これが吐出ポートと吸入ポートとの間で循環すると、油圧装置に供給されるオイルの圧力が所定の圧力まで高まるのに時間がかかったり、電動ポンプがオイル自体を吐出できなくなったりするおそれがある。このため、電動ポンプの作動信頼性が低下してしまうという課題がある。このような車両用油圧回路を車両のミッション装置に適用した場合、エンジンを再スタートさせる際にアクセルペダルを踏み込んでも、ミッション内に規定の油圧が作用していないため、実際に車両が加速に転じるまでに時間差が生じ、運転者が違和感を覚えるという課題があった。
【0006】
また、リリーフバルブからの排出油路を、直接吸入ポート側に戻すように構成すると、吐出ポート、リリーフバルブおよび吸入ポートと、電動ポンプとにより閉回路が形成されてしまう。このため、吐出ポート、リリーフバルブおよび吸入ポートの油路の間でオイルの異物混入等による圧損が大きくなるおそれがある。圧損が大きくなると吐出ポートと吸入ポートとの間の圧力差が大きくなり、電動ポンプの負荷が増大し、電動ポンプの作動信頼性が低下してしまうという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、オイルの吐出圧を速やかに高めることができると共に、オイルを確実に吐出させることができ、作動信頼性を向上できる電動ポンプ、およびこの電動ポンプを用いた車両用油圧回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電動ポンプは、モータ部と、前記モータ部により駆動されるポンプ部と、一端が前記ポンプ部に連結され、オイルを前記ポンプ部へと導くための吸入ポートと、一端が前記ポンプ部に連結され、前記ポンプ部から吐出される前記オイルを被駆動部へと導くための吐出ポートと、前記吐出ポートに連結され、該吐出ポートから吐出される前記オイルの圧力が所定値以上になった場合に、該圧力を低減させるために前記吐出ポートを開放する開放ポートを有するリリーフ手段と、を備え、
ポンプ部は、前記オイルを吸入、吐出するポンプ本体と、前記ポンプ本体を前記被駆動部に取り付けるためのブラケットと、を備え、前記ブラケットに、前記吸入ポート、前記吐出ポート、および前記リリーフ手段と、を設け、前記開放ポートと前記吸入ポートは、一つの部屋で構成されており、前記吸入ポートと前記被駆動部とを連結するジョイント部材により、前記開放ポートと前記吸入ポートとが区画され、前記吸入ポートの他端、前記吐出ポートの他端、および前記開放ポートは、それぞれ別々の油路に連結されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、ポンプ部内に吸入されるオイルにエア等の異物が混入していても、リリーフ手段から排出されるオイルが直接吸入ポート側に戻ることがないので、電動ポンプがエア等の異物を含んだ状態のオイルを、直接吸入することがない。このため、オイルの吐出圧を速やかに高めることができると共に、オイルを確実に吐出させることができ、電動ポンプの作動信頼性を確実に向上することができる。
また、吸入ポート、吐出ポート、およびリリーフ手段を、それぞれ別々に設ける必要がなくなり、一体化できる。このため、部品点数を削減でき、製造コストを低減できると共に、電動ポンプの組付け性を向上できる。
さらに、開放ポートと吸入ポートとの構成を簡素化できると共に、それぞれ2つのポートの配置スペースを省スペース化できる。
【0012】
本発明に係る電動ポンプでは、前記ブラケットは、前記ポンプ本体と前記被駆動部との間に配置される平板状の部材であって、前記リリーフ手段は、前記ブラケットの側面から前記ブラケットを端面からみて略中央となる位置に至る間に形成されたリリーフ孔と、該リリーフ孔と前記吐出ポートとを連通する第1連通部と、前記リリーフ孔の途中から前記開放ポートに至る間に形成され、前記リリーフ孔と前記開放ポートとを連通する第2連通部と、前記リリーフ孔内に配置され、前記第2連通部を閉塞可能な弁体と、前記リリーフ孔内に配置され、前記弁体を所定の押圧力で付勢するバネ部材と、を備え、前記バネ部材のバネ力は、前記吐出ポートから吐出されるオイルの圧力が所定値以上となった場合に前記弁体が移動して前記第2連通部を開放するように設定されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、リターン手段の構成を簡素化できると共に、小型化できる。
【0016】
本発明に係る電動ポンプでは、前記ポンプ本体は、前記モータ部に取り付けられるポンプケースと、前記ポンプケースに設けられたポンプ室と、前記ポンプ室に回転自在に配置されたアウタロータと、前記モータ部の回転軸と一体回転し、前記アウタロータと協働して前記オイルを吸入して該オイルを吐出する作動室を形成するインナロータと、を有するトロコイド式ポンプであることを特徴とする。
【0017】
ここで、オイルを圧送するポンプとして、ポンプの作動室の容積変化によりオイル吐出するトロコイド式ポンプを用いた場合、オイルに混入する異物(エア等)によって性能がばらつきやすい。しかしながら、上記のように構成することで、電動ポンプの作動信頼性を向上できる。
【0018】
本発明に係る車両用油圧回路は、電動ポンプと、
オイルが供給されて駆動する
被駆動部と、前記被駆動部に連結され、車両のエンジンにより駆動される機械式ポンプと、を備え、前記被駆動部は、該被駆動部と前記電動ポンプとを連結する接続部材を含んでいる車両用油圧回路であって、
前記電動ポンプは、モータ部と、前記モータ部により駆動されるポンプ部と、一端が前記ポンプ部に連結され、前記オイルを前記ポンプ部へと導くための吸入ポートと、一端が前記ポンプ部に連結され、前記ポンプ部から吐出される前記オイルを前記被駆動部へと導くための吐出ポートと、前記吐出ポートに連結され、該吐出ポートから吐出される前記オイルの圧力が所定値以上になった場合に、該圧力を低減させるために前記吐出ポートを開放する開放ポートを有するリリーフ手段と、を備え、前記吸入ポートの他端、前記吐出ポートの他端、および前記開放ポートは、それぞれ別々の油路に連結されており、前記接続部材は、前記オイルが貯留されるオイルタンクに接続される吸入孔と、前記被駆動部に前記オイルを供給する吐出孔と、前記被駆動部から前記オイルタンクに前記オイルを戻すリターン油路に接続されるリターン孔と、を備え、前記吸入孔と前記吸入ポートとが連結され、前記吐出孔と前記吐出ポートとが連結され、前記リターン孔と前記開放ポートとが連結されることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、ポンプ部内に吸入されるオイルにエア等の異物が混入していても、リリーフ手段から排出されるオイルが直接吸入ポートに戻ることがないので、電動ポンプがエア等の異物を含んだ状態のオイルを、再び吸入することがない。また、吐出ポート、リリーフバルブおよび吸入ポートと、電動ポンプとにより閉回路が形成されることがない。このため、車両用油圧回路の作動信頼性を確実に向上することができる。
【0020】
本発明に係る車両用油圧回路では、前記開放ポートと前記吸入ポートは、一つの部屋で構成されており、前記吸入ポートと前記被駆動部とを連結するジョイント部材により、前記開放ポートと前記吸入ポートとが区画されていることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、電動ポンプ側の各ポート、および被駆動部側の油路を簡素化できる。とりわけ、電動ポンプ側の各ポート、および被駆動部側の油路の接続箇所を簡素化できるので、安価な車両用油圧回路を提供できる。
本発明に係る車両用油圧回路では、前記ポンプ部は、前記オイルを吸入、吐出するポンプ本体と、前記ポンプ本体を前記被駆動部に取り付けるためのブラケットと、を備え、前記ブラケットに、前記吸入ポート、前記吐出ポート、および前記リリーフ手段と、を設けたことを特徴とする。
本発明に係る車両用油圧回路では、前記ブラケットは、前記ポンプ本体と前記被駆動部との間に配置される平板状の部材であって、前記リリーフ手段は、前記ブラケットの側面から前記ブラケットを端面からみて略中央となる位置に至る間に形成されたリリーフ孔と、該リリーフ孔と前記吐出ポートとを連通する第1連通部と、前記リリーフ孔の途中から前記開放ポートに至る間に形成され、前記リリーフ孔と前記開放ポートとを連通する第2連通部と、前記リリーフ孔内に配置され、前記第2連通部を閉塞可能な弁体と、前記リリーフ孔内に配置され、前記弁体を所定の押圧力で付勢するバネ部材と、を備え、前記バネ部材のバネ力は、前記吐出ポートから吐出されるオイルの圧力が所定値以上となった場合に前記弁体が移動して前記第2連通部を開放するように設定されていることを特徴とする。
本発明に係る車両用油圧回路では、前記開放ポートと前記吸入ポートは、一つの部屋で構成されており、前記吸入ポートと前記被駆動部とを連結するジョイント部材により、前記開放ポートと前記吸入ポートとが区画されていることを特徴とする。
本発明に係る車両用油圧回路では、前記ポンプ本体は、前記モータ部に取り付けられるポンプケースと、前記ポンプケースに設けられたポンプ室と、前記ポンプ室に回転自在に配置されたアウタロータと、前記モータ部の回転軸と一体回転し、前記アウタロータと協働して前記オイルを吸入して該オイルを吐出する作動室を形成するインナロータと、を有するトロコイド式ポンプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ポンプ部内に吸入されるオイルにエア等の異物が混入していても、リリーフ手段から排出されるオイルが直接吸入ポート側に戻ることがないので、電動ポンプがエア等の異物を含んだ状態のオイルを、直接吸入することがない。このため、オイルの吐出圧を速やかに高めることができると共に、オイルを確実に吐出させることができ、電動ポンプの作動信頼性を確実に向上することができる。
また、吐出ポート、リリーフバルブおよび吸入ポートと、電動ポンプとにより閉回路が形成されることがない。このため、車両用油圧回路の作動信頼性を確実に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(車両用油圧回路)
図1は、車両用油圧回路の概略構成図である。
同図に示すように、車両用油圧回路1は、車両に搭載された被駆動部としてのミッション3と、オイルタンク(オイルサンプ)4と、オイルタンク4に貯留されたオイルをミッション3に供給するための機械式ポンプ5、および電動ポンプ6と、ミッション3側に設けられ、電動ポンプ6とミッション3とを連結する接続部材2と、を主構成としている。
【0026】
機械式ポンプ5は不図示のエンジンに連結されており、このエンジンの駆動力を利用して駆動するようになっている。通常、車両用油圧回路1は、機械式ポンプ5をメインポンプとして使用し、エンジンが停止した際に機械式ポンプ5に代わって電動ポンプ6を駆動させ、ミッション3にオイルを供給する。
【0027】
また、車両用油圧回路1は、機械式ポンプ5とオイルタンク4とを連結する第1吸入油路7と、機械式ポンプ5とミッション3とを連結する第1吐出油路8と、ミッション3とオイルタンク4とを連結する第1リターン油路(システムリターン油路)9と、を備えている。
そして、機械式ポンプ5が駆動すると、第1吸入油路7を介してオイルタンク4から機械式ポンプ5にオイルが吸入され、このオイルが第1吐出油路8を介してミッション3に圧送される。ミッション3で使用されたオイルは、第1リターン油路9を介してオイルタンク4に戻される。
【0028】
接続部材2は、電動ポンプ6とオイルタンク4とを連結する第2吸入油路10と、電動ポンプ6と第1吐出油路8とを連結する第2吐出油路11と、電動ポンプ6と第1リターン油路9とを連結する第2リターン油路12と、を備えている。
そして、機械式ポンプ5が停止して電動ポンプ6が駆動すると、第2吸入油路10を介してオイルタンク4から電動ポンプ6の後述するポンプ室24にオイルが吸入され、このオイルが第2吐出油路11および第1吐出油路8を介してミッション3に圧送される。
【0029】
また、接続部材2の第2吐出油路11の途中には、逆止弁13が設けられており、機械式ポンプ5を駆動させた際、機械式ポンプ5から圧送されたオイルが第2吐出油路11を逆流しないようになっている。また、機械式ポンプ5によって付与される油圧は、電動ポンプ6による油圧よりも高く設定されており、機械式ポンプ5が作動中に、電動ポンプ6が作動しても逆止弁13が開くことはなく、ミッション3には規定の油圧が付与されるようになっている。
さらに、第2吐出油路11内のオイルの圧力が所定値以上になった場合、その圧力を開放するために、後述するリリーフ手段42により、オイルを第2リターン油路12を介して第1リターン油路9に戻すようになっている。
【0030】
(電動ポンプ)
電動ポンプ6は、モータ部14と、モータ部14に連結されモータ部14と同軸上に配置されたポンプ部15と、を備えている。
モータ部14は、例えば樹脂により形成されたモータケース16と、モータケース16内にインサート成形によって固定されたステータ17と、ステータ17の径方向内側に、回転自在に設けられたロータ18と、を備えたいわゆるブラシレスモータである。モータ部14に外部電源(例えば、バッテリ)からの電力を供給することにより、ロータ18が回転する。ロータ18の回転軸19は、ポンプ部15内に向かって突出しており、このポンプ部15と連結されている。
【0031】
ポンプ部15は、モータ部14側に配置され、オイルを吸入、吐出するポンプ本体21と、ポンプ本体21のモータ部14とは反対側に配置され、接続部材2に電動ポンプ6を固定するためのブラケット22と、を備えている。
ポンプ本体21は、モータ部14およびブラケット22に挟持されるように固定されたポンプケース23を有している。ポンプケース23は、例えばアルミダイキャストにより形成されている。ポンプケース23内には、略円筒状のポンプ室24が形成されており、ここに略リング状のアウタロータ25が回転自在に設けられている。
【0032】
また、アウタロータ25の径方向内側には、インナロータ26が回転自在に設けられている。このインナロータ26に、モータ部14の回転軸19の一端が固定されている。
そして、これらアウタロータ25とインナロータ26とにより、いわゆるトロコイド式ポンプが構成される。すなわち、アウタロータ25の図示しない内歯と、インナロータ26の図示しない外歯とにより形成される空間の容積を変化させることで、オイルを吸入してこのオイルを吐出する作動室27が形成される。
【0033】
図2は、ブラケット22をポンプ本体21側からみた平面図、
図3は、ブラケット22を接続部材2側からみた平面図、
図4は、
図2のA矢視図、
図5は、
図4のB−B線に沿う断面図である。
図2〜
図5に示すように、ブラケット22は、例えばアルミダイキャストにより形成され、ポンプケース23の端面23aと接合可能に平板状に形成されている。そして、ブラケット22は、ポンプケース23側の端面22aとは反対側の端面22bに、接続部材2が連結される。
なお、ポンプケース23の端面23aには、このポンプケース23とブラケット22との間のシール性を確保するための図示しないOリングが設けられている。
また、以下の説明では、ブラケット22において、ポンプケース23側の端面22aを、ポンプケース側端面22aと称し、ポンプケース側端面22aとは反対側の端面22bを接続部材側端面22bと称して説明する。
【0034】
ブラケット22の外周部には、このブラケット22とポンプケース23およびモータケース16とを不図示のボルトによって締結固定するための2つの雌ネジ部32が刻設されている。雌ネジ部32は、ブラケット22を厚さ方向に貫通するように形成されている。
また、ブラケット22の外周部には、このブラケット22を接続部材2に不図示のボルトによって締結固定するための3つのボルト座33(第1ボルト座33a、第2ボルト座33b、第3ボルト座33c)が、周方向にほぼ等間隔で3箇所形成されている。各ボルト座33には、不図示のボルトを挿通可能な挿通孔33dが形成されている。
【0035】
さらに、ブラケット22のポンプケース側端面22aには、モータ部14の回転軸19に対応する箇所に、この回転軸19の一端を受け入れる凹部31が形成されている。この凹部31に回転軸19の一端が当接することにより、回転軸19の振れを抑制できる。
また、ブラケット22には、ポンプケース23のポンプ室24に対応する箇所に、吸入ポート28および吐出ポート29が形成されている。
【0036】
より具体的には、吸入ポート28は、ポンプ室24のオイル吸入側に対応する位置に、ブラケット22を厚さ方向に貫通するように丸孔状に形成された第1通路28aと、ポンプケース側端面22a側に溝状に形成され、凹部31に向かって延びる第2通路28bと、第2通路28bに連なるように溝状に形成され、凹部31に周囲に沿って平面視略C字状に延びる第3通路28cとにより構成されている。第2通路28bと第3通路28cは、ブラケット22単体では、ポンプケース側端面22a側が開口しているが、この開口が、ポンプケース側端面22aとポンプケース23の端面23aとを重ね合わせることにより閉塞され、オイルが通流する流路となる。
【0037】
一方、吐出ポート29は、ポンプ室24のオイル吐出側に対応する位置に、ブラケット22を厚さ方向に貫通するように形成されている。そして、吐出ポート29は、段付き孔状に形成されている。すなわち、吐出ポート29は、ポンプケース側端面22a側に形成された丸孔状の第1通路29aと、接続部材側端面22b側に形成され、第1通路29aよりも開口面積の小さい第2通路29bとが連通形成されたものである。また、第2通路29bの形状は、吸入ポート28の第3通路28cの形状と凹部31を中心に略点対称となるように、平面視で略C字状になっている。
【0038】
また、ブラケット22の接続部材側端面22bには、吸入ポート28に対応する位置に開放ポート37が形成されている。開放ポート37は、後述のリリーフバルブ42から排出されたオイルを排出するためのものであって、接続部材側端面22bの吸入ポート28に対応する位置にザグリ加工を施すことにより形成される。
なお、吸入ポート28と開放ポート37との区画方法については後述する。
【0039】
また、ブラケット22の第2ボルト座33bと第3ボルト座33cとの間の側面22c、換言すれば、ブラケット22をポンプケース側端面22aからみたとき(
図2参照)、吐出ポート29側(
図2における下側)となる側面22cには、リリーフ孔34が形成されている。リリーフ孔34は、ブラケット22の側面22cから凹部31を避けてブラケット22のほぼ中央に至る間に形成されている。また、リリーフ孔34は、側面22c側がブラケット22の中央側よりも段差により拡径された段付き孔状に形成されている。すなわち、リリーフ孔34は、側面22c側の大径孔34aと、大径孔34aにおける側面22cとは反対側端に連通形成された小径孔34bとにより構成されている。
【0040】
また、ブラケット22には、リリーフ孔34の小径孔34bの先端部と、吐出ポート29とを連通する第1連通孔35が形成されている。
さらに、ブラケット22には、リリーフ孔34の大径孔34aにおける小径孔34b側と開放ポート37とを連通する第2連通孔36が形成されている。
また、ブラケット22の大径孔34aには、小径孔34b側から順に弁体38、コイルバネ39が収納されている。そして、大径孔34aにおけるブラケット22の側面22c側には、雌ネジ部40が刻設されており、ここにキャップボルト41がワッシャ41aを介在させて螺入されている。
【0041】
キャップボルト41を螺入することにより、コイルバネ39が僅かに圧縮変形され、弁体38に、小径孔34b側に向かう押圧力が付勢される。弁体38は、コイルバネ39によって、通常は大径孔34aにおける小径孔34b側の段差部34cに当接している。この段差部34cに弁体38が当接した状態では、この弁体38によって第2連通孔36が閉塞されている。また、コイルバネ39のバネ力は、吐出ポート29(第1連通孔35)を通流するオイルの圧力が所定値以上高くなった場合に、弁体38がバネ力に抗してスライド移動し、第2連通孔36が開放されてオイルの圧力が開放されるような力に設定されている。
【0042】
これにより、吐出ポート29を通流するオイルの圧力が所定値以上高くなった場合、吐出ポート29のオイルは、第1連通孔35、リリーフ孔34、第2連通孔36を介して開放ポート37に導かれる。すなわち、リリーフ孔34、第1連通孔35、第2連通孔36、弁体38、コイルバネ39、およびキャップボルト41は、吐出ポート29を通流するオイルの余剰圧力を低減するためのリリーフバルブ42として機能する。
【0043】
このように構成されたブラケット22は、接続部材2に取り付けた状態で、接続部材2の第2吸入油路10と吸入ポート28の第1通路28aとが同軸上に配置され、これら第2吸入油路10と第1通路28aとが吸入側ジョイントパイプ43を介して連結される。
また、接続部材2の第2吐出油路11と吐出ポート29の第1通路29aとが同軸上に配置され、これら第2吐出油路11と第1通路29aとが吐出側ジョイントパイプ44を介して連結される。そして、各ジョイントパイプ43,44の軸方向両端側には、それぞれOリング45a,45bが装着され、第2吸入油路10と吸入ポート28の第1通路28aとの接続箇所のシール性、および第2吐出油路11と吐出ポート29の第1通路29aとの接続箇所のシール性が確保されている。
【0044】
ここで、ブラケット22の接続部材側端面22bにおいて、同一位置に形成されている吸入ポート28と開放ポート37は、接続部材2の第2吸入油路10と吸入ポート28の第1通路28aとを吸入側ジョイントパイプ43を介して連結することにより、この吸入側ジョイントパイプ43が隔壁となって区画される。すなわち、開放ポート37は、吸入側ジョイントパイプ43の周囲に設けられた状態になる。
また、開放ポート37は、接続部材2にブラケット22を取り付けた状態で、接続部材2の第2リターン油路12と連結されるようになっている。
なお、ブラケット22の接続部材側端面22bには、このブラケット22と接続部材2との間のシール性を確保するために環状溝22d内に図示しないOリングが設けられており、開放ポート37から吐出されたオイルが外部に流出しないようになっている。
【0045】
(車両用油圧回路の動作)
次に、
図1に基づいて、車両用油圧回路1の動作について説明する。
同図に示すように、車両のミッション3を駆動させる場合、不図示のエンジンが駆動している間は、機械式ポンプ5が作動される。つまり、エンジンの動力が機械式ポンプ5に伝達されてこの機械式ポンプ5が駆動し、オイルタンク4から第1吸入油路7を介してオイルが吸入される。機械式ポンプ5に吸入されたオイルは、第1吐出油路8を介してミッション3に圧送される。ミッション3で使用されたオイルは、第1リターン油路9を介してオイルタンク4に戻される。
【0046】
一方、例えば、アイドルストップ等によりエンジンが停止した際には、電動ポンプ6を使用してミッション3にオイルを供給する。この場合、不図示のバッテリ等から電力が供給されてモータ部14が駆動すると、このモータ部14の回転軸19に連結されているポンプ部15のインナロータ26、アウタロータ25が回転する。すると、オイルタンク4のオイルが、第2吸入油路10、吸入ポート28を介してポンプ本体21に吸入される。そして、吐出ポート29、第2吐出油路11にオイルが圧送され、その油圧により逆止弁13を開放させ、第1吐出油路8を介してミッション3にオイルが圧送される。
ミッション3で使用されたオイルは、機械式ポンプ5の駆動時と同様、第1リターン油路9を介してオイルタンク4に戻される。
【0047】
ここで、機械式ポンプ5による油圧が第1吐出油路8に残存しており、逆止弁13が開放せずに吐出ポート29を通流するオイルの圧力が所定値以上に高まった場合、リリーフバルブ42が作動し、吐出ポート29のオイルがリリーフバルブ42を介して開放ポート37に導かれる。開放ポート37に導かれたオイルは、第2リターン油路12、第1リターン油路9を介してオイルタンク4に戻される。なお、リリーフバルブ42の動作については、前述したので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0048】
上述の実施形態のように、電動ポンプ6に設けられた吸入ポート28、吐出ポート29、および開放ポート37は、それぞれ別々の油路(第2吸入油路10、第2吐出油路11、および第2リターン油路12)に連結されている。そして、第2吸入油路10は、オイルタンク4に接続され、第2リターン油路12も第1リターン油路9を介してオイルタンク4に接続されている。
このため、電動ポンプ6内に吸入されるオイルにエア等の異物が混入していても、リリーフバルブ42のリリーフ孔34と弁体38との隙間を通過して排出されるエアが直接吸入ポート28側に戻ることがないので、電動ポンプ6がエア等の異物を含んだ状態のオイルを、直接吸入することがない。このため、オイルの吐出圧を速やかに高めることができると共に、オイルを確実に吐出させることができる。よって、電動ポンプ6の作動信頼性を確実に向上することができる。
【0049】
また、ブラケット22に、吸入ポート28と吐出ポート29とリリーフバルブ42とを一体的に設けたので、これら吸入ポート28、吐出ポート29、およびリリーフバルブ42をそれぞれ別々に設ける場合と比較して部品点数を削減できる。このため、製造コストを低減できると共に、電動ポンプ6の組付け性を向上できる。
【0050】
さらに、ブラケット22にリリーフ孔34、第1連通孔35、および第2連通孔36を形成すると共に、リリーフ孔34内に弁体38、コイルバネ39を収納し、キャップボルト41によって弁体38とコイルバネ39のリリーフ孔34からの抜けを防止している。そして、これらリリーフ孔34、第1連通孔35、第2連通孔36、弁体38、コイルバネ39、およびキャップボルト41をリリーフバルブ42として機能させているので、リリーフバルブ42の構成を簡素化できると共に小型化できる。
【0051】
そして、ブラケット22の同一位置に吸入ポート28と開放ポート37とを形成し、これら吸入ポート28と開放ポート37とを、吸入側ジョイントパイプ43によって区画している。このため、吸入ポート28および開放ポート37の構成を簡素化できると共に、それぞれ2つのポート28,37の配置スペースを省スペース化できる。
また、ポンプ部15を、アウタロータ25とインナロータ26とからなるいわゆるトロコイド式ポンプとした場合であっても、オイルにエア等の異物の混入時にポンプ性能の低下を抑えることができる。このため、電動ポンプ6、車両用油圧回路1の作動信頼性を向上できる。
【0052】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0053】
例えば、上述の実施形態では、ブラケット22に、吸入ポート28と吐出ポート29とリリーフバルブ42とを一体的に設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、吸入ポート28、吐出ポート29および開放ポート37がそれぞれ別々の油路に連結されていれば、吸入ポート28、吐出ポート29、リリーフバルブ42をそれぞれ別々に設けてもよい。
また、リリーフバルブ42を市販されているものに代えて、リリーフバルブ42のみをブラケット22とは別体としてもよい。