特許第6276687号(P6276687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6276687アイソトポローグの分離および濃縮のための方法、デバイス、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276687
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】アイソトポローグの分離および濃縮のための方法、デバイス、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 59/02 20060101AFI20180129BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   B01D59/02
   G21F9/06 591
   G21F9/06 521A
【請求項の数】30
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-506401(P2014-506401)
(86)(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公表番号】特表2014-516313(P2014-516313A)
(43)【公表日】2014年7月10日
(86)【国際出願番号】US2012020927
(87)【国際公開番号】WO2012145046
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年1月10日
(31)【優先権主張番号】13/090,879
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513261417
【氏名又は名称】エクセロン ジェネレーション カンパニー、エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】513261428
【氏名又は名称】インダストリアル アイディア パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】エイヴェリー、ランダール、エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ブース、チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】モーザー、キース
【審査官】 森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0279129(US,A1)
【文献】 米国特許第06984327(US,B1)
【文献】 特開昭50−152997(JP,A)
【文献】 特表2008−503336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 59/00−59/50
G21F 9/06
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソトポローグの混合物を分離するための方法であって、
a)第1の凍結温度を有する第1のアイソトポローグと第2の凍結温度を有する第2のアイソトポローグの混合物を含む液体流を提供する工程であって、前記第1のアイソトポローグの前記凍結温度は、前記第2のアイソトポローグの前記凍結温度を下回るものである、前記提供する工程と、
b)前記第1のアイソトポローグの前記凍結温度と前記第2のアイソトポローグの前記凍結温度との間の温度に維持されるフィルタ媒体を含む濾過デバイス内に前記液体流を導入する工程であって、前記フィルタ媒体は、前記第1および第2のアイソトポローグの第3のアイソトポローグを備え、および前記第2のアイソトポローグの少なくとも一部が凍結または結晶化し、かつ前記濾過デバイス内に残り、前記第1のアイソトポローグを含む濾液が前記濾過デバイスから出るように、前記第2のアイソトポローグを選択的に凍結または結晶化させることができるものである、前記導入する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記フィルタ媒体は、前記第2のアイソトポローグの少なくとも一部を核形成することによって選択的に捕捉することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体流中の前記第1のアイソトポローグは水であり、前記液体流中の前記第2のアイソトポローグは酸化トリチウムであり、前記フィルタ媒体中に存在する前記第3のアイソトポローグは酸化重水素である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタ媒体は、0℃超〜3.82℃未満の範囲の温度に維持される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1の工程b)の前に、前記液体流が0℃超〜3.82℃未満の範囲の温度に調節される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルタ媒体は、0℃超〜1.0℃の範囲の温度に維持される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
c)前記濾液中に存在する水を凍結させることなく、かつ前記フィルタ媒体中に存在する凍結した酸化重水素を融解させることなく、前記濾過デバイスから前記濾液を回収する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
記フィルタ媒体は凍結した酸化重水素を含みかつ425μm未満の粒子径を有する複数の微細化された粒子として提供される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
工程b)の前に、前記第2のアイソトポローグは、20,000pCi超の濃度で工程a)の前記液体流中に存在し、及び、工程b)の後に、前記濾液中に存在する第2のアイソトポローグの前記濃度は、20,000pCi未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
c)ある量の第2のアイソトポローグが前記濾液中に残留しているかどうかを判定するために、工程b)の前記濾液を分析する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記濾液中にある量の前記第2のアイソトポローグが残留していることが分かり、かつ前記濾液中に残留する第2のアイソトポローグの前記量が所定の閾値量を超える場合、前記濾液は工程b)の前記フィルタ内に再導入される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記濾液中に残留する前記第2のアイソトポローグの量が所定の閾値量よりも少ないことが分かった場合、前記濾液は次いで廃棄される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項1の工程b)の後、凍結した酸化重水素を含む前記フィルタ媒体および凍結した酸化トリチウムが収集され、第2世代フィルタ媒体を提供するために再利用される、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記再利用の工程は、i)組み合わされた融液流を提供するために、凍結した酸化重水素を含む前記フィルタ媒体および凍結した酸化トリチウムを一緒に融解させる工程、及びii)前記組み合わされた融液流を再凍結させる工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1および第2のアイソトポローグを含む混合流体からアイソトポローグを分離するためのデバイスであって、
遠位端および近位端を有する内部チャンバを画定する筐体と、
前記内部チャンバ内に収容されるフィルタ媒体であって、第3のアイソトポローグを含む、フィルタ媒体と、
前記内部チャンバおよび前記アイソトポローグの混合流体の源と連通する前記筐体の前記近位端において画定される入り口と、
前記内部チャンバおよび前記フィルタ媒体と連通する前記筐体の前記遠位端において画定される出口と、を備え、
前記第1、第2、および第3のアイソトポローグは、各々、異なる凍結温度を有し、前記第3のアイソトポローグの前記凍結温度は、前記第1のアイソトポローグの前記凍結温度と前記第2のアイソトポローグの前記凍結温度の間であり、
前記入り口を通って前記内部チャンバに進入すると、前記混合流体内に存在する前記第2のアイソトポローグの少なくとも一部が凍結して前記フィルタ媒体中に残留し、前記第1のアイソトポローグを含む濾液が前記出口を通って前記チャンバから出る、デバイス。
【請求項16】
前記液体流中の前記第1のアイソトポローグは水であり、前記液体流中の前記第2のアイソトポローグは酸化トリチウムであり、前記フィルタ媒体中に存在する前記第3のアイソトポローグは酸化重水素である、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記フィルタ媒体は、0℃超〜3.82℃未満の範囲の温度である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記フィルタ媒体は、0℃超〜1.0℃の範囲の温度に維持される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
記フィルタ媒体は酸化重水素を含み、かつ425μm未満の粒子径を有する複数の微細化された粒子として提供される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
アイソトポローグの混合流体からアイソトポローグを連続的に分離するためのシステムであって、
遠位端および近位端を有する内部チャンバを画定する筐体と、
前記内部チャンバの前記遠位端と連通するように位置付けられる磨砕機と、
前記筐体の前記内部チャンバに位置付けられるフィルタ媒体と、
前記筐体の前記内部チャンバ内の前記フィルタ媒体に圧力をかけるための手段であって、前記圧力をかけるための手段は流体透過性であり、前記フィルタ媒体は、前記磨砕機と前記圧力をかけるための手段との間で前記内部チャンバ内に位置付けられる、手段と、
前記内部チャンバおよび前記フィルタ媒体と連通する、前記筐体内に画定される第1の入り口と、
前記内部チャンバおよび前記フィルタ媒体と連通する、前記筐体内に画定される第2の入り口と、
前記内部チャンバと連通する、前記筐体内に画定される第1の出口と、を備え、
前記圧力をかけるための手段は、前記磨砕機および前記第1の出口の間に位置付けられ、前記フィルタ媒体は、前記アイソトポローグの混合物から分離されるべき第1のアイソトポローグの凝固点よりも高い凝固点を有し、前記フィルタ媒体の前記凝固点は、前記アイソトポローグの混合物中に存在する第2のアイソトポローグの凝固点よりも低い凝固点を有し、第1および第2のアイソトポローグの第3のアイソトポローグを備える、
システム。
【請求項21】
前記アイソトポローグの混合流体が前記第1の入り口を通って前記内部チャンバに進入すると、前記フィルタ媒体は、前記混合流体中に含まれる第2のアイソトポローグを凍結または結晶化させるように構成され、前記第2のアイソトポローグの少なくとも一部が前記フィルタ媒体中に含まれた状態に留まり、前記第1の出口が第1のアイソトポローグを含む濾液を受け取るように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記磨砕機は、前記フィルタ媒体の一部および前記フィルタ媒体中に含まれる前記第2のアイソトポローグを磨砕するように構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
少なくとも1つの加熱手段を有する融液ループをさらに備え、前記融液ループは、前記磨砕機と連通して位置付けられ、かつ前記磨砕機によって磨砕された前記フィルタ媒体の前記一部および前記第2のアイソトポローグを融解および均質化するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記システムは、さらに、前記磨砕されたフィルタ媒体を再凍結する手段、および前記再凍結した磨砕されたフィルタ媒体を前記第2の入り口を通って前記内部チャンバに返却する手段を有する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記システムは、さらに、前記フィルタ媒体を約0.1〜0.5℃の温度で維持する手段を有する、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記圧力をかけるための手段は、前記内部チャンバの前記近位端から前記磨砕機に向けて前記フィルタ媒体を付勢するように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の入り口は、前記内部チャンバの前記遠位端から第1の所定距離だけ離間され、前記第2の入り口は、前記内部チャンバの前記遠位端から第2の所定距離だけ離間され、前記第2の所定距離は、前記第1の所定距離よりも長い、請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記圧力をかけるための手段は、前記内部チャンバの前記近位端から所定距離だけ2軸運動するように構成されるピストンを備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記圧力をかけるための手段は、前記内部チャンバ内にフィルタ媒体を注入するように構成されるスクリューフィードを備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記フィルタ媒体は、酸化重水素の氷である、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年4月20日に出願された米国特許出願第13/090,879号に対する優先権の利益を主張するものであり、その開示全体が、参照により、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
アイソトポローグとは、それらの同位体組成のみが異なる分子である。通常水または「軽」水(H0)の水素に関連するアイソトポローグは、単一の重水素同位体を有する「半重水」(HDOまたはH0)、2つの重水素同位体を含む「重水」(D0または0)、単一のトリチウム同位体を有するトリチウム水(HTOまたはHOH)、および「超重水」(T0または0)を含む。本開示の目的のために、「トリチウム水」という用語は、一方または両方の水素原子がトリチウム同位体で置換された任意の水分子を指して使用される。トリチウム水は、電子力発電所の副産物である。
【0003】
トリチウムは、TまたはHとして化学的に表記される水素の放射性同位体である。トリチウムは、重水減速型原子炉において最も多く生成される。生成されるトリチウム水は比較的少量である。それにもかかわらず、トリチウム水が環境に漏れるリスクを減少するために、原子力発電所を数年運転した後に減速材からトリチウム水を浄化することが望ましいかもしれない。トリチウム水と通常水の溶液または混合物からトリチウム水を適切に浄化または分離することができる設備は非常に少ない。設備不足のために、比較的少量のトリチウム水を含む比較的大量の汚染溶液をOntario Power Generationのトリチウム水除去設備等の場所まで長距離にわたって輸送する必要がある。Ontario Powerの設備は、1年当たり2.5千トン(2,500Mg)の汚染重水を処理することが可能であり、約2.5kgのトリチウム水を生成する。
【0004】
トリチウム水は、加圧軽水炉においても生成される。発生頻度は、化学反応シムとしてのホウ素10の使用と直接的に関連している。シムは、高エネルギーの中性子を熱に変換するために使用される。この同位体の生成は、この反応によるものである。
【数1】
【0005】
トリチウム水の半減期は12.4年である。これは原子炉水中で濃縮するのに十分長い期間であるため厄介である。トリチウム水は、原子炉内で有害な反応性の影響は引き起こさないが、わずかな漏出から重大な汚染のリスクをもたらす。トリチウムは、化学的に水素と同一であるため、トリチウム水(HTO)としてOHに結合しやすく、有機結合(OBT)を形成しやすい。HTOおよびOBTは、汚染された有機食品または含水食品を消費することによって容易に摂取される。トリチウムは強力なβ放射体ではないため、外的には危険ではないが、吸入された場合、食品もしくは水を介して摂取された場合、または皮膚を通して吸収された場合、放射線障害となる。トリチウム水分子の形態で毛穴を通って吸収され得、細胞傷害および癌発生率増加の原因となる。
【0006】
HTOは、1回の摂取による全体的な影響を低減し、かつ環境からのHTOの長期生体内蓄積を妨げる、人体内で7〜14日という短い生物学的半減期を有する。HTOは組織内に蓄積しない。
【0007】
余分な水を除去することによるトリチウム水の富化およびトリチウム水の濃縮により、非常に低いレベルの汚染物質を浄化設備に輸送する費用を大幅に削減することができる。輸送コストのために、トリチウム水として低濃度のトリチウムから出発する場合、利用可能なプロセスは商業的に魅力的ではない。トリチウム水は水によく類似した物理的および化学的特徴を有するため、通常の化学的または熱力学的測定の妨げになるという事実に起因して、トリチウム水の濃縮について実証された低費用プロセスは存在しない。これらの密接な類似性のために、以前は水からトリチウム水を効率的に分離するプロセスを定義することが困難であった。したがって、本開示は、より経済的な廃棄を可能にするために、トリチウム水の分離および濃縮を含む、アイソトポローグの分離のための改良された方法、デバイス、およびシステムを提供する。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2005/0279129号明細書
(特許文献2) 米国特許第6,984,327号明細書
(特許文献3) 米国特許第5,876,596号明細書
(特許文献4) 米国特許第4,705,635号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、概して、アイソトポローグの混合物から1つ以上のアイソトポローグを分離または濃縮するための方法、デバイス、およびシステムに関する。例えば、いくつかの実施形態によれば、方法、デバイス、およびシステムは、原子力発電プロセスの一般的な副産物である水と酸化トリチウムの水溶液から酸化トリチウムを分離および濃縮するために使用することができる。
【0009】
第1の態様において、アイソトポローグの混合流体からアイソトポローグを分離するための方法が提供される。この方法は、最初に、第1の凍結温度を有する第1のアイソトポローグと第2の凍結温度を有する第2のアイソトポローグの混合物を含む液体流を提供することであって、第1のアイソトポローグの凍結温度は、第2のアイソトポローグの凍結温度を下回ることを、提供することと、続いて、第2のアイソトポローグの少なくとも一部がフィルタ内に残留し、第1のアイソトポローグを含む濾液がフィルタから出るように、第2のアイソトポローグを選択的に捕捉することができるフィルタ内に液体流を導入することとを含む。
【0010】
別の態様において、アイソトポローグの混合流体からアイソトポローグを分離するためのデバイスが提供される。このデバイスは、遠位端および近位端を有する内部チャンバを画定する筐体と、内部チャンバ内に収容される濾過媒体であって、第3のアイソトポローグを含む、濾過媒体と、内部チャンバおよびアイソトポローグの混合流体の源と連通する筐体の近位端において画定される入り口と、内部チャンバおよび濾過媒体と連通する筐体の遠位端において画定される出口と、を備える。使用において、入り口を通って内部チャンバに進入すると、混合流体内に存在する第2のアイソトポローグの少なくとも一部が凍結して濾過媒体中に残留し、第1のアイソトポローグを含む濾液が出口を通ってチャンバから出る。
【0011】
さらなる態様において、混合流体中に存在するアイソトポローグの混合物からアイソトポローグを連続的に分離するためのシステムが提供される。システムは、遠位端および近位端を有する内部チャンバを画定する筐体と、内部チャンバの遠位端と連通するように位置付けられる磨砕機と、フィルタ媒体の源と、フィルタ媒体に圧力をかけるための手段であって、フィルタ媒体は、磨砕機と圧力をかけるための手段との間で内部チャンバ内に位置付けられる、手段と、内部チャンバおよび溶液と連通する、筐体内に画定される第1の入り口と、内部チャンバおよびフィルタ媒体の源と連通する、筐体内に画定される第2の入り口と、内部チャンバと連通する、筐体内に画定される第1の出口とを備える。使用において、第1の入り口を通って内部チャンバに進入すると、溶液中に存在する所望されない材料の少なくとも一部が凍結してフィルタ媒体中に残留し、濾過された溶液を含む濾液が出口を通ってチャンバから出る。
【0012】
さらなる利点は以下の説明において一部記載されるか、または実践によって学習されてもよい。該利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される要素および組み合わせによって実現および達成される。上記の一般的な説明および以下の詳細な説明はどちらも例示的および説明的であるに過ぎず、請求されるように限定的ではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図面は、実施形態を示し、説明と相まって、方法およびシステムの原則を説明する役割を果たす。
【0014】
図1】本発明の一態様による例示的な濾過デバイスの略図である。
図2】水と酸化トリチウムの混合物から酸化トリチウムを除去するための例示的な分離プロセスを示すフローチャートである。さらに、図2は、例示的な分離プロセスの間に用いられる酸化重水素濾過媒体の後続処理のための例示的な再利用プロセスのフローチャート図も提供する。
図3】アイソトポローグの混合液中に存在するアイソトポローグの連続的な分離のための例示的なシステムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、図面、および特許請求の範囲、ならびにそれらの前後の説明を参照するとより理解されやすい可能性がある。しかしながら、本発明のデバイス、システム、および/または方法を開示および説明する前に、別途指定のない限り、本発明は、開示される特定のデバイス、システム、および/または方法に限定されるものではなく、それ自体は当然変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、具体的な態様を説明する目的で使用されているに過ぎず、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
【0016】
以下の本発明の説明は、本発明の教示をその最良の状態で、現在既知である実施形態において可能にするものとして提供される。この目的を達するために、関連技術分野の当業者は、本発明の有益な結果をなおも得ながら、本明細書に記載される種々の実施形態に対して多くの変更が行われ得るということを認識および理解するであろう。本発明の所望の利点のうちのいくつかは、他の特徴を利用することなく、本発明の特徴のうちのいくつかを選択することによって得ることができることも明らかであろう。したがって、関連技術分野の当業者は、本発明に対する多くの変更および適応が可能であり、それらは、ある状況においては望ましくすらあり、また本発明の一部であるということを認識するであろう。よって、以下の説明は、本発明の原理の例示として提供されるのであって、それを限定するものではない。
【0017】
全体を通して使用されるように、単数形「a」「an」および「the」は、文脈上、別途明確に規定されない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「アイソトポローグ」に対する言及は、文脈上、別途指示されない限り、2つ以上のそのようなアイソトポローグを含むことができる。
【0018】
本明細書において、範囲は「約」ある特定の値からおよび/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の態様は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、上記「約」の使用により、値が近似値として表される場合、その特定の値は別の態様を形成することを理解されたい。各範囲の端点は、他の端点に関係して、および他の端点とは独立して、の両方において有意であることをさらに理解されたい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「任意選択的」または「任意選択的に」という用語は、続いて記載される事象または状況が起こってもまたは起こらなくてもよく、その説明は、前記事象または状況が起こった場合およびそれが起こらなかった場合を含むことを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「水」という用語は、化学式HOを有する通常水または軽水を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「酸化重水素」という用語は、化学式DOまたはHDOを有する、水素に関連する水のアイソトポローグを指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「酸化トリチウム」という用語は、化学式TOまたはHTOを有する、任意の形態の水素に関連する水の放射性アイソトポローグを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「汚染物質」という用語は、任意の量の酸化トリチウムを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「汚染溶液」という用語は、任意の量の酸化トリチウムを含む溶液または液体水流を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「冷却した」または「冷却する」という用語は、例えば汚染溶液を含む液体流から顕熱を除去し、0℃超〜3.82℃以下の温度をもたらすことを含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「供給物」という用語は、フィルタに進入する際に冷却される汚染溶液を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「フィルタ媒体」という用語は、微細化された酸化重水素の氷または微細化された汚染氷のいずれか、または両方の組み合わせを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「濾液」という用語は、フィルタを通過する際にフィルタ媒体に捕捉されない汚染溶液の一部を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「捕捉」という用語は、凍結、吸着、核形成、またはフィルタ媒体の結晶格子内への封入を、部分的または全体的のいずれかで使用して、汚染溶液から汚染物質を除去する化学的、物理的、または機械的プロセスを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「フィルタ」という用語は、供給物を受容する、フィルタ媒体を含む、および濾液を生成する機能を有する汚染物質を捕捉するように設計された、操作の単にを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「氷」という用語は、水、ならびに酸化重水素および酸化トリチウムを含む水のアイソトポローグのいずれかの物質の固相状態を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「汚染氷」という用語は、酸化重水素および酸化トリチウムの溶液の物質の状態における固相を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アイソトポローグ」という用語は、それらの同位体組成のみが異なる分子を指す。ある化学種のアイソトポローグは、親原子とは異なる数の中性子を含む少なくとも1つの原子を有する。一例は水であり、その水素に関連するアイソトポローグのうちのいくつかは、「軽水」(HOHもしくはHO)、プロチウムと等しい割合で重水素同位体を含む「半重水」(HDOもしくはHO)、1分子当たり2つの水素の重水素同位体を含む「重水」(DOもしくはO)、および「超重水」、または水素原子がトリチウム同位体で置換されたトリチウム水(TOもしくはO)である。
【0034】
上に要約したように、一態様において、本発明は、概して、アイソトポローグの混合物を分離するための方法を提供する。アイソトポローグは、それらの同位体組成のみが異なる分子である。よって、ある化学種のアイソトポローグは、親原子とは異なる数の中性子を含む少なくとも1つの原子を有する。よくあることであるが、アイソトポローグは、異なる物理的特性および/または化学的特性、例えば、異なる融点、凝固点、または結晶点等を呈する。本発明の方法は、これらの分離を促進するための手段として、種々のアイソトポローグ間の物理的特性または化学的特性における違いを利用する。
【0035】
一実施形態において、本発明の方法は、これらの種々のアイソトポローグの混合物を分離するための手段として、種々のアイソトポローグ間の凝固点または結晶点における違いを利用する。この実施形態によれば、方法は、最初に、第1の凍結温度を有する第1のアイソトポローグと第2の凍結温度を有する第2のアイソトポローグの混合物を含む液体流を提供することであって、第1のアイソトポローグの凍結温度は、第2のアイソトポローグの凍結温度を下回ることを、提供することを含む。次いで、第2のアイソトポローグの少なくとも一部が凍結または結晶化してフィルタ内に残留し、第1のアイソトポローグを含む濾液がフィルタから出るように、第2のアイソトポローグを選択的に凍結させるかまたは結晶化することができる濾過デバイス内に液体流が導入される。
【0036】
第2のアイソトポローグを選択的に凍結させるかまたは結晶化することができる濾過デバイスは、例えば、第1のアイソトポローグの凍結温度と第2のアイソトポローグの凍結温度の間の温度に維持される任意のフロースルー型濾過媒体であり得る。液体流中の第2のアイソトポローグの凍結温度は濾過媒体が維持されている温度よりも高いため、液体流が温度制御されたフィルタを通過すると、濾過媒体が第2のアイソトポローグを凍結させるおよび結晶化するための核形成部位としての役割を果たす。また、濾過媒体は、第1のアイソトポローグの凝固点または結晶点よりも高い温度に維持されるため、第1のアイソトポローグを含む濾液は凍結せずに濾過媒体を通過する。
【0037】
本発明の方法は、水と酸化トリチウムを含む液体流からの酸化トリチウムの除去に特に適している。当業者は理解するように、標準的な大気圧条件下において、水の凝固点は約0.0℃であり、酸化トリチウムの凝固点は約4.49℃である。よって、第1のアイソトポローグとしての水と第2のアイソトポローグとしての酸化トリチウムの混合物を含む液体流を、0℃超〜4.49℃未満の範囲の温度に維持された濾過媒体を含む濾過デバイスに通過させることにより、酸化トリチウムの少なくとも一部が、核形成し、凍結し、液体流から結晶化してフィルタ内に残留する一方で、水を含む濾液はフィルタを通過し続ける。
【0038】
本発明のある実施形態に関する以下の考察において、通常水または軽水は、第1の例示的なアイソトポローグと称され、トリチウム水は、第2の例示的なアイソトポローグと称される。さらに、他の例示的な実施形態において、酸化重水素は、濾過媒体としての使用に好適な第3のアイソトポローグとさらに称される。しかしながら、この使用は便宜のためであるに過ぎず、本明細書に記載される本発明の方法は、水と酸化トリチウムを含む液体流からの酸化トリチウムの除去に特に適しているという事実を反映する。よって、これらの例示的な考察は、これらのアイソトポローグの使用、またはこれらのアイソトポローグを分離および/または濃縮するための方法のみに限定することは意図されない。
【0039】
開示される方法のさらなる実施形態において、液体流中に存在する第1および第2のアイソトポローグの第3のアイソトポローグから濾過媒体が構成されることが特に有利であり得る。例えば、第1のアイソトポローグとしての水と第2のアイソトポローグとしての酸化トリチウムを含む例示的な液体流を再び参照すると、凍結した酸化重水素または酸化重水素の氷が例示的な濾過媒体として使用されてもよい。当業者は理解するように、標準的な大気圧条件下において、酸化重水素の凝固点は約3.82℃である。よって、第1のアイソトポローグとしての水と第2のアイソトポローグとしての酸化トリチウムの混合物を含む液体流を、0℃超〜3.82℃未満の範囲の温度に維持された濾過媒体として酸化重水素の氷を含む濾過デバイスに通過させることにより、液体流中の酸化トリチウムの少なくとも一部が、重水素の氷と接触した時点で核形成および凍結する一方で、水を含む濾液はフィルタを通過し続ける。
【0040】
開示される方法のさらなる実施形態において、例示的な液体から酸化トリチウムを除去するための濾過媒体は、濾過媒体が約4.49℃〜0℃の温度に維持される限り、水のアイソトポローグ以外の材料であってもよく、酸化トリチウムを凍結させるための核形成部位を提供し、酸化トリチウムの氷の構造を容易に受け入れることができる結晶構造を提供する。このために、実験の結果は、ステンレススチールウール等の材料は、酸化トリチウムの氷を捕捉するのに好適な結晶構造を呈さないため、濾過媒体ほど良好には機能しないことを示している。通常(軽)水の氷についても実験が試行されたが、4.49℃〜0℃の温度で維持されると融解するため、濾過媒体ほど良好に機能しない。
【0041】
濾過媒体を本明細書に記載される所望の温度に維持することは、例えば、従来の冷蔵技術を含む、従来既知であるいずれの温度調節のための手段を使用して達成されてもよい。例示的な実施形態において、濾過デバイスは、それ自体が所望の温度に維持された氷浴中に浸漬されてもよい。
【0042】
任意選択的に、濾過デバイスに液体流を導入する前に、方法は、液体流の温度を濾過媒体が維持される温度よりも低い温度に調節することをさらに含んでもよい。例えば、液体流が水と酸化トリチウムの混合物を含み、濾過媒体が0℃超〜3.82℃未満の範囲の温度に維持された重水素の氷を含む実施形態を再び参照すると、フィルタに液体流を導入する前に、液体流の温度が同様に0℃超〜3.82℃未満の範囲であることを任意選択的に確実にすることが有利であり得る。理解されるように、重水素の氷濾過媒体の融点よりも高い温度の液体流は、続いて、濾過媒体ならびに濾過媒体中で結晶化および収集されたいずれの酸化トリチウムの融解も引き起こし得る。しかしながら、液体流を、濾過媒体中で核形成または結晶化した酸化重水素の氷または酸化トリチウムの氷のいずれかの凝固点よりも低い温度に調節することにより、フィルタを通過する溶液は、フィルタ内に残留する酸化重水素の氷または捕捉された酸化トリチウムのいずれも融解させない。さらに、液体流は、液体流中の水の凝固点よりも温かい温度でなおも維持されるため、水自体は、濾液としてフィルタ媒体を通過する際に凍結しない。
【0043】
濾過媒体の場合と同様に、液体流の温度を本明細書に記載される所望の温度に調節することは、例えば、従来の冷蔵技術を含む、従来既知であるいずれの温度調節のための手段を使用して達成されてもよい。例示的な実施形態において、液体流は、供給ラインにおける液体流の滞留時間が液体流の所望の冷却をもたらすように、それ自体が冷却された供給ラインを通って供給源からフィルタまで移動することができる。例示的な態様において、供給ラインはまた、それ自体が所望の温度に維持された氷浴に浸漬されてもよい。
【0044】
濾過デバイスは、濾液を通過させる一方で、アイソトポローグの混合液中に存在する所望のアイソトポローグを選択的に凍結させるかまたは結晶化することができるいずれのフィルタであってもよい。例えば、水と酸化トリチウムの混合物を含む液体流に関連して上述したように、濾過デバイスは、好適な濾過媒体として凍結した酸化重水素を含むことができる。微細化された酸化重水素の氷粒子を提供するために、従来の粉砕デバイスを使用して酸化重水素の氷を粉砕することができる。例えば、粉砕は、限定されないが、圧壊、磨砕、研削、噴霧凍結、極低温瞬間冷却、断熱式降雪機、および解体壁晶析装置を含む、微細化された氷または汚染氷結晶を生成するための商業的に利用可能な機械的方法または技術によって行われてもよい。凍結した酸化重水素の表面を微細化することにより、フィルタ媒体を通過する液体流が接触できる表面積を大幅に増加させることが可能となり、よって反応速度が大幅に増加する。例えば酸化重水素の氷等の濾過媒体は、任意の所望の粒子径分布を提供するように粉砕されてもよい。当業者は本開示を考慮して理解するように、濾過媒体の粒子径の特徴は、例えば、濾過媒体の所望の表面積、流入する供給物を受け入れることができる濾過媒体床の所望の細孔容積もしくは開放空間容積、またはフィルタを通る所望の流量を含む種々の要因に依存して、容易にカスタマイズすることができる。種々の好ましい実施形態において、濾過媒体として使用される酸化重水素の氷は、425μm未満の粒子径を有する複数の微細化された氷粒子を提供するように粉砕することができる。
【0045】
図1を参照して、例示的な濾過デバイス100を示す。図示されるように、濾過デバイスは、内部チャンバ112を画定し、近位端114および遠位端116を有する、例えば円筒状フィルタチューブ等の容器または筐体110を備えることができる。第1の入り口118は、円筒部の近位端において画定されてもよく、アイソトポローグ118の混合液に内部チャンバとの流体連通を提供する。出口120は、円筒部の遠位端において画定されてもよく、同じように円筒部の内部チャンバから出る濾液に流体連通を提供する。入り口118を介してチャンバに進入する液体流が円筒部内の濾過媒体に接触するように、凍結した酸化重水素の氷粒子122の充填ベッド等の好適な濾過媒体が内部チャンバ内に収容される。濾過媒体に接触すると、液体流中に存在する第2のアイソトポローグ、例えば酸化トリチウム等が、核形成および結晶化し、濾過媒体に捕捉された状態を保つ一方で、第1のアイソトポローグ、例えば水等を含む濾液は、濾過媒体を通過し、続いて出口120から出る。
【0046】
濾過デバイスから出る濾液は収集することができ、例えば、もし存在する場合は、どれくらいの量の第2のアイソトポローグが濾液中に残留しているかを分析することができる。そのような分析は、手動で行われてもよいか、または、例えば、液体シンチレーション測定等の方法を使用した、濾液の自動検査もしくは分析試験であってもよい。例えば、液体流が水と酸化トリチウムの混合物を含む上述の実施形態を再び参照して、もし存在する場合は、どれくらいの量の酸化トリチウムがフィルタを通過した濾液中に残留しているかを測定するために、液体シンチレーション測定を使用して濾液を分析することができる。ある量の第2のアイソトポローグが濾液中に残留し、濾液中に残留する第2のアイソトポローグの量が所定の閾値量を超えていることが分かった場合、濾液をフィルタ内に再導入することによって濾液を再処理することができる。この濾液を再処理するステップは、任意選択的に、まだ濾過デバイスに進入していない追加の液体流を用いて分析された濾液を均質化することを含んでもよい。
【0047】
代替の実施形態において、濾液の分析後に、濾液中に残留する第2のアイソトポローグの量が所定の閾値量よりも少ないことが分かった場合、該濾液は直接廃棄されてもよい。液体水流からの酸化トリチウムの除去の例示的な実施形態を参照して、濾液の「廃棄」は、濾液中の酸化トリチウムの濃度が関連する管轄の法的に許容される値の範囲内になった時点で、従来の水路への廃棄を含むことができる。例えば、米国では、トリチウムの特定の活性が20,000pCi/リットル未満である場合、水流を水路に廃棄することは法的に認められている。したがって、いくつかの実施形態において、開示される方法は、濾液の廃棄を可能にする様式でアイソトポローグの混合物からアイソトポローグを捕捉および分離することができる。例えば、濾液が米国の水路に許容範囲で廃棄され得るように、方法は、液体水流中に存在する酸化トリチウムの濃度を20,000pCiを超える閾値から閾値20,000pCiを下回る濃度に低下させることができる。
【0048】
また、濾過媒体は、必要に応じて任意選択的な処理ステップに供されてもよい。例えば、経時的に、その後の濾過媒体の廃棄、濾過媒体によって捕捉されたアイソトポローグの廃棄、または濾過媒体を再利用するために、濾過媒体を除去することが有利であるかもしれない。微粒子状の酸化重水素の氷を含む例示的な濾過媒体を再び参照して、濾過媒体を再利用することができる。この再利用プロセスは、濾過媒体によって捕捉されたあらゆる酸化トリチウムと一緒に酸化重水素の氷を除去することと、組み合わされた融液流を提供するために、凍結した酸化重水素フィルタ媒体および凍結した酸化トリチウムを一緒に融解させることと、融液流を均質化することと、続いて均質化された融液流を再凍結させて第2世代または再利用された濾過媒体を提供することとを含むことができる。再凍結すると、組み合わされた酸化重水素および酸化トリチウムは、濾過媒体として濾過デバイス内に再充填される前に、本明細書に記載される任意の所望の粒子径分布に再び粉砕することができる。この任意選択的な再利用ステップにより、微細化された酸化重水素の氷の表面上で捕捉された酸化トリチウム等の分離されたアイソトポローグを、均質化および再凍結させることによって結晶格子内に確実に組み入れることができる。これにより、フィルタ内のフィルタ媒体を通過する際に、分離されたアイソトポローグが液体流中に再導入されるのを防止する。またこれにより、フィルタ媒体は、汚染氷中の汚染物質のレベルが汚染溶液中の汚染物質のレベルよりも高い場合であっても、アイソトポローグ汚染物質を効果的に捕捉および分離し続けることが可能となる。しかしながら、水からの酸化トリチウムの除去の例示的な実施形態において、高濃度の酸化トリチウムを含む濾過媒体のその後の廃棄は、認可を受けている廃棄設備による特別な処理を必要とすることを理解されたい。
【0049】
当業者は理解するように、液体水流から酸化トリチウムを濃縮または分離しようとする場合、含まれるトリチウムの偶発的な放出または漏出が確実に起こらないように特別の配慮がなされてもよい。酸化トリチウムの凍結または結晶化によってトリチウムの分離が達成され得る開示される方法に関連して、凍結した酸化トリチウムが昇華して周囲環境に流出するリスクを防止するかまたは最小限に留めるために、任意選択的なステップが採択されてもよい。このために、開示される方法のさらなる実施形態において、そのような酸化トリチウムの昇華を防止するために、濾過デバイスを取り巻く環境条件が周囲条件または大気条件から変更されてもよい。例えば、濾過デバイスは、水浴に浸漬されてもよい。必要に応じて、水浴は、上述のように、酸化重水素濾過媒体およびその中に収集された酸化トリチウムが融解するのを防止するのに十分低い温度に維持されてもよい。さらに、水浴は、酸化トリチウムの氷が昇華する可能性を最小限に留める。ある実施形態によれば、少なくとも2.5インチの水深の水浴中に濾過デバイスを維持することが好ましい可能性があることが分かっている。酸化トリチウムの昇華を防止するためのさらなる試みにおいて、濾過デバイスは、大気条件よりも大幅に低い圧力に維持されてもよい。例えば、圧力が6mm水銀柱以下である環境に濾過デバイス維持することも、同様に、凍結した酸化トリチウムが昇華し得るリスクを最小限に留めるのに効果的であり得ることが分かっている。さらなる実施形態において、方法は、上述のように、水浴中および減圧条件下の両方に濾過デバイスを維持することを含むことができる。
【0050】
本明細書に開示される方法は、液体水流からの酸化トリチウムの分離等のアイソトポローグの連続的な分離を可能にする。図2を参照すると、開示される方法の例示的な順序を示すフローチャートが提供される。図示されるように、ステップ202で、水と酸化トリチウムの混合物を含む汚染溶液または液体流200が、例えば、約1.0℃等の所定温度まで冷却される。冷却ステップの後、次いで液体流は、微細化された酸化重水素の氷粒子等の濾過媒体を含むフィルタ204に導入される。次いで、ステップ208で濾液206が回収され、分析される。分析およびなおも存在する酸化トリチウムのレベルの測定後、ステップ210で、濾液は、供給流として濾過プロセスに戻るように誘導されてもよいか、または次の廃棄プロセス212に誘導されてもよいかのいずれかである。
【0051】
図2をさらに参照し、かつ上記ステップ200〜212に記載される濾過ループプロセスと組み合わせて、酸化重水素濾過媒体も連続的な再利用ループまたは廃棄ループに供されてもよい。図示されるように、濾液206の回収後、捕捉された酸化トリチウムを含む酸化重水素濾過媒体は、ステップ214でフィルタから除去し、融解させ、均質化することができる。均質化の後、融解した均質化材料を再利用ループに送るか、またはステップ218を介して該材料を廃棄するかどうかの決定216が行われてもよい。均質化された融液流が再利用される場合、組み合わされた液体酸化重水素および酸化トリチウムがステップ220で再凍結される。次いで、再凍結した材料は、ステップ222の間に粉砕され、ステップ224で濾過デバイス内に再充填され、次いで、再び濾過ループから液体供給流を受け取ることができる状態となる。
【0052】
図3に示されるように、溶液中に存在するアイソトポローグの混合物からアイソトポローグを連続的に分離するためのシステム300が提供される。一態様において、分離されるアイソトポローグは、水溶液中に存在する酸化トリチウムである。しかしながら、当業者には理解され得るように、システムは、アイソトポローグの混合物からいずれのアイソトポローグを分離するようにも変更することができる。一態様において、システム300は、フィルタ媒体302の源、筐体304、フィルタ媒体に圧力をかけるための手段306、および磨砕機308のうちの少なくとも1つを備える。別の態様において、筐体は、遠位端312および近位端314を有する内部チャンバ310を画定する。一態様において、筐体は、実質的に円形の断面領域を有する円筒形状であってもよく、実質的に正方形および実質的に長方形等の他の断面領域もまた企図される。別の態様において、筐体の遠位端および近位端312、314が周囲環境と連通するように、筐体304の遠位端および近位端は開放していてもよい。
【0053】
筐体の内部チャンバ310と連通するための複数の入り口および/または出口が筐体304内に画定されてもよい。一態様において、第1の入り口316が筐体304内に画定されてもよい。この態様において、第1の入り口は、内部チャンバおよび溶液と連通することができる。別の態様において、第2の入り口318が、内部チャンバ310およびフィルタ媒体302の源と連通する筐体内に画定されてもよい。さらに別の態様において、第1の入り口316は、内部チャンバ310の遠位端312から第1の距離だけ離間されてもよく、第2の入り口は、内部チャンバの遠位端312から第2の距離だけ離間されてもよく、第2の距離は第1の距離よりも長くてもよい。代替として、第2の距離は、第1の距離より短いかまたは等しくてもよい。別の態様において、第1および第2の入り口が、圧力をかけるための手段306と磨砕機308との間の位置において画定されるように、第1および第2の入り口316、318が筐体304内に画定されてもよい。別の態様において、第1の出口320が、内部チャンバと連通する筐体304内に画定されてもよい。さらなる態様において、圧力をかけるための手段306が磨砕機308と第1の出口320との間に位置付けられるように、第1の出口320が筐体内に画定されてもよい。
【0054】
磨砕機308は、内部チャンバ310の遠位端312と連通するように位置付けられてもよい。一態様において、内部チャンバ310の遠位端312に進入するおよび/またはそこから出るいずれの材料も磨砕機308を通過しなければならないように、磨砕機は内部チャンバの遠位端を密封することができる。別の態様において、磨砕機は、氷を磨砕するために構成することができる。さらに別の態様において、磨砕機308は、所望の速度で磨砕機を操作するように構成されるモータ322に連結されてもよい。
【0055】
一態様によれば、圧力をかけるための手段306は、例えば、限定されないが、ピストンを備えることができる。別の態様において、圧力をかけるための手段は、内部チャンバ310の近位端314から所定距離だけ2軸運動するように構成されてもよい。例えば、圧力をかけるための手段がピストンを備える場合、ピストンは、内部チャンバの近位端から遠位端312に向かう方向に、所定距離だけ軸方向に移動することができる。所定距離、または所定距離と内部チャンバ310の近位端314との間の任意の位置に到達すると、ピストンは、内部チャンバの近位端に向かって軸方向に移動することができる。代替の態様において、圧力をかけるための手段は、スクリュー駆動部等の別個の供給機構を備えることができる。スクリュー駆動部は、チャンバ内に追加のフィルタ媒体を注入し、それによってチャンバを加圧するように構成されてもよい。
【0056】
別の態様において、圧力をかけるための手段306は、流体透過性であってもよい。例えば、水等の液体および/または蒸気等の気体は、圧力をかけるための手段を通過することができるが、氷等の固体は圧力をかけるための手段306を通過することができない。さらなる態様において、内部チャンバの近位端に進入するおよび/またはそこから出るいずれの材料も圧力をかけるための手段を通過しなければならないように、圧力をかけるための手段は内部チャンバ310の近位端314を密封することができる。よって、別の例において、水は、圧力をかけるための手段306を通って内部チャンバの近位端312から出ることができるが、氷は、内部チャンバの近位端から出ることができない。
【0057】
一態様において、フィルタ媒体は、磨砕機308と圧力をかけるための手段306の間で筐体304の内部チャンバ310内に位置付けられてもよい。別の態様において、フィルタ媒体は、固体材料であってもよい。さらに別の態様において、フィルタ媒体302は、例えば、限定されないが、酸化重水素の氷等の氷であってもよい。
【0058】
システム300は、少なくとも1つの加熱手段と、加熱手段から所望の材料に熱を伝達するための手段とを備える、融液ループ324をさらに備えることができる。一態様において、融液ループ324は、従来の融液加熱器326および熱伝達ライン328を備えることができる。融液ループは、材料の温度を所定量だけ上昇させるように構成されてもよい。例えば、融液ループは、分析、さらなる処理、および/または廃棄のために、フィルタ媒体によって一緒に捕捉されたあらゆるトリチウム氷とともにフィルタ媒体を融解させるように構成されてもよい。別の例において、融液ループ324は、混合物中のある材料が融解する一方で、混合物中の他の材料は凍結した状態のままであるように、氷混合物の温度を所定量だけ上昇させるように構成されてもよい。一態様において、融液ループは、磨砕機によって磨砕されたトリチウム氷から磨砕機308によって磨砕されたフィルタ媒体302の一部を分離するように構成されてもよい。
【0059】
一態様において、システム300は、筐体304を冷却するための手段をさらに備えることができる。理解され得るように、筐体を冷却するための手段は、電気冷蔵システム、極低温流体、水浴等を備えることができる。別の態様において、筐体を冷却するための手段は、筐体304の少なくとも一部を取り囲む少なくとも1つの絶縁層をさらに備えることができる。一態様において、筐体304は、約0.1℃〜3.7℃の温度に維持されてもよい。別の態様において、筐体304は、約0.1℃〜0.5℃の温度に維持されてもよい。
【0060】
使用において、フィルタ媒体は、第2の入り口318を通してフィルタ媒体の源から筐体304の内部チャンバ310内に入れられてもよい。一態様において、フィルタ媒体は、酸化重水素の氷であってもよい。上述のように、フィルタ媒体は、スクリュー供給機構等の圧力をかけるための手段306によって内部チャンバ310内に強制的に注入されてもよい。分離されるべきアイソトポローグを含む溶液は、第1の入り口316を通してチャンバ310内に入れられてもよい。別の態様において、分離されるべきアイソトポローグは酸化トリチウムであってもよく、溶液中に存在する酸化トリチウムの少なくとも一部は、凍結してトリチウム氷になることができる。別の態様において、溶液は、酸化トリチウムが内部チャンバに進入する前に溶液中で凍結してトリチウム氷になるような温度を有することができる。内部チャンバ310に進入すると、溶液中に存在するいずれの水も非凍結状態に留まることができ、圧力をかけるための手段306を通過して筐体の出口320から出ることができる。トリチウム氷の少なくとも一部が、フィルタ媒体中に含まれることができる。
【0061】
圧力をかけるための手段306は、内部チャンバ310の遠位端312に向かって所定距離だけ移動することができ、その結果、フィルタ媒体302および該フィルタ媒体中に含まれる任意の濾液(例えば、トリチウム氷)を磨砕機308に向けて付勢する。磨砕機に接触すると、フィルタ媒体の少なくとも一部およびトリチウム氷が、磨砕機によって小さな氷粒子に磨砕され得る。一態様において、融液ループ324から磨砕機によって形成された粒子に熱を伝達することができ、この熱は、粒子の温度を粒子の融点を超えて上昇させるのに十分であり得る。融解後、存在する酸化トリチウムの濃度および/または量を測定するために、粒子を均質化して分析することができる。この分析に少なくとも部分的に基づいて、融解した均質化粒子を再凍結させ、再凍結した均質化粒子材料をさらに処理するために第2の入り口318を通して内部チャンバ310に送るか、または融解した均質化粒子を廃棄するかの決定を行うことができる。代替として、別の態様において、融液ループ324から磨砕機によって形成された粒子に熱を伝達することができ、この熱は、フィルタ媒体が融解して液体になことができる一方で、酸化トリチウムは固体のままでいられるように、粒子の温度を上昇させるのに十分であり得る。フィルタ媒体は、分離、再凍結させて氷にし、再使用するために内部チャンバ304に戻すことができる。所望されない材料は、分析して、再処理のために内部チャンバに戻されてもよいか、または廃棄されてもよい。
(実施例)
【0062】
以下の実施例は、開示される方法、デバイス、およびシステム、ならびに特許請求の範囲がどのように作製および評価されるかの完全な開示および説明を当業者に提供するために記載され、純粋に例示的であることが意図されるのであって、本開示を限定することは意図されない。数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を期すよう努力がなされてはいるが、ある程度の誤差および偏差が考慮されるべきである。別途記載のない限り、部は重量部であり、温度は摂氏であるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【0063】
混合液からトリチウム水を分離または濃縮するための濾過媒体として微細化された重水素の氷を使用して、いくつかの実験を行った。これらの実験によれば、1本のプラスチック製医療用注射器(60ml)がフィルタカートリッジとして使用された。フィルタ媒体が注射器から出るのを防ぐために、従来のフィルタペーパーからなる充填材料を底部に充填した。次いで、微細化された重水素の氷を注射器に充填した。次いで、濾過媒体の早期融解を防止するために、注射器を水/水氷スラリ中に保存した。トリチウム水および通常水を含む供給液を注射器の上部に導入する前に、予め約0.5℃に冷却した。冷却した時点で、次いで供給物を注射器に導入した。次いで、重力下で注射器に供給液を通し、得られた濾液を収集した。これらの実験(実験1〜5)の第1のサブセットでは、濾液を保持せずに、当然ながら注射器から出した。実験6〜9に従って、供給液を30または60秒間注射器内に保持し、その後、濾液を注射器から出した。
【0064】
種々のパラメータを測定したこれらの実験の結果をデータとして下の表1および2に記載する。具体的には、表1は、初期供給物および得られた濾液の両方について質量およびトリチウムの活性を報告している。
【0065】
【表1】
【0066】
同様に、表2は、分離前(前)および分離後(後)の濾過媒体の質量を報告している。また表2は、分離後の濾過媒体のトリチウム活性、および質量の増加についても報告している。汚染されていない酸化重水素の氷を濾過媒体として使用する場合、事前の測定値は活性を反映しないことに留意されたい。
【0067】
【表2】
【0068】
上記表1および2のデータを用いて、次に濾過媒体の有効性を評価した。濾過サイクル後にフィルタ媒体中に残留したトリチウムの活性は、初期供給流にて測定された活性と比較して平均6.8倍濃縮されていた。同様に、得られた濾液の分析により、濾液中のトリチウムの活性が、初期供給流の活性と比較して平均16%低下したことが示された。
【0069】
表3も同様に、表1に反映される実験の質量バランスおよびトリチウム活性バランスが、プラスマイナス(+/−)6%の範囲内であったことを示す。よって、これらの実験は、汚染された通常水の供給物からトリチウム水を分離および濃縮する際に、濾過媒体として重水素の氷が使用される上述の実施形態に従う方法およびシステムがいかに効果的であるかを示している。
【0070】
【表3】
【0071】
例えば、ステンレススチールウールの使用を含む、次の濾過媒体を評価するための追加実験も行った。これらの実験のために、銅管にステンレススチールウールを充填し、1.9℃未満まで冷却した。トリチウム汚染水の供給液を充填済みの銅管に通過させた後、分離またはその結果としてのトリチウム活性の濃縮が生じなかったことが分かった。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、スチールウール濾過媒体が、酸化トリチウムの氷が組み入れられるべき核形成部位または結晶格子構造のいずれも有しなかったためであると考えられる。
【0072】
さらに、凍結した軽水または通常水を濾過媒体として使用した多くの実験も試みられたが、初期供給物の活性の濃縮または分離は得られなかった。ここでも同様に、理論に拘束されることを望むものではないが、これは、供給物が濾過媒体の凍結温度で運転されていたため、この一連の実験は成績不良であったと考えられる。これにより濾過媒体の連続的な融解が生じ、よって酸化トリチウムの任意の有意義な核形成が妨げられた。
【0073】
最後に、いくつかのフィルタを連続して使用して一連の濃度を調べようとする一連の実験を行った。これらの実験において、前のフィルタから出た濾液を次のフィルタのための供給物として使用した。このデータの大半が良好な濃度を生成したが、比較的不良な実験温度の制御により、データが信憑性のないものとなることが証明された。
図1
図2
図3