特許第6276809号(P6276809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276809
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】基板位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   H05K13/04 P
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-148230(P2016-148230)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-18962(P2018-18962A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2017年8月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】二宮 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 健介
(72)【発明者】
【氏名】梅村 信行
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−182280(JP,A)
【文献】 特開平11−261299(JP,A)
【文献】 特開2010−160006(JP,A)
【文献】 特開2008−047905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
B65G 49/00−49/08
H01L 21/677
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の所定範囲に対し所定の光を照射可能な照射手段と、
前記所定の光が照射された前記基板の所定範囲を撮像可能な撮像手段と、
少なくとも前記撮像手段と前記基板とを相対移動可能な移動手段とを備え、
前記基板に設けられた複数の認識対象のうちの所定の認識対象に対応する位置へ前記撮像手段を相対移動させる移動処理と、該所定の認識対象を所定の撮像条件の下で撮像する撮像処理と、前記撮像処理により得られた画像データを基に該所定の認識対象を認識する認識処理とを、前記複数の認識対象について順次実行することにより、前記基板の位置を検出可能な基板位置検出装置であって、
前記複数の認識対象のうちの所定の認識対象に係る前記撮像処理の終了後、該所定の認識対象とは異なる他の認識対象に対応する位置へ前記撮像手段を相対移動させる前記移動処理を実行しつつ、該所定の認識対象に係る前記認識処理を実行可能とすると共に、
少なくとも前記複数の認識対象すべてについて前記認識処理を実行した後、前記複数の認識対象のうち最後以外の認識対象を認識できなかった場合には、該認識対象に対応する位置に再び移動して再び該認識対象を撮像する再撮像処理と、前記再撮像処理により得られた画像データを基に該認識対象を認識する再認識処理とを実行可能としたことを特徴とする基板位置検出装置。
【請求項2】
前記再撮像処理を実行する際に前記撮像条件を変更する変更処理を実行可能としたことを特徴とする請求項1に記載の基板位置検出装置。
【請求項3】
前記撮像条件として、前記照射手段から照射される光の光量を変更可能としたことを特徴とする請求項2に記載の基板位置検出装置。
【請求項4】
前記撮像条件として、前記照射手段から照射される光の照射角度を変更可能、又は、前記照射手段から光を照射する少なくとも1つの光源を変更可能としたことを特徴とする請求項2又は3に記載の基板位置検出装置。
【請求項5】
前記撮像条件として、前記照射手段から照射される光の色を変更可能としたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基板位置検出装置。
【請求項6】
前記基板は、電子部品が実装されるプリント基板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の位置を検出する基板位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板に電子部品を実装する製造ラインにおいては、まず半田印刷装置によりプリント基板に対しクリーム半田を印刷する(半田印刷工程)。続いて、部品実装装置によりプリント基板に対し電子部品を実装する(実装工程)。ここで、電子部品は、クリーム半田の粘性等によって仮止めされた状態となる。その後、かかるプリント基板をリフロー炉へ導き、半田付けを行う(リフロー工程)。
【0003】
また、このような製造ラインにおいては、例えば部品実装前にクリーム半田の印刷状態を検査する半田印刷検査装置や、部品実装後のプリント基板に係る検査を行う実装検査装置なども設けられている。
【0004】
近年では、プリント基板の集積度の向上や実装部品の小型化などに伴い、上記各種装置においてプリント基板の高精度な位置決めが求められている。そのため、上記各種装置にて各種作業が実行される前段階には、プリント基板の位置を検出して補正処理などが行われる。
【0005】
一般には、プリント基板に設けられた複数の認識マークをそれぞれカメラで撮像し、その画像データを基に認識マークを認識することにより、プリント基板の傾きや位置ズレなど把握する。
【0006】
かかる認識マークを利用した位置検出技術の1つとして、例えばプリント基板上の第1位置にて第1認識マークを所定のカメラで撮像した後、該カメラを第2認識マークに対応する第2位置へ移動しつつ、先に第1位置にて撮像して得られた画像データを基に第1認識マークの認識処理を行い、その後、第2位置にて第2認識マークを撮像し、その画像データを基に第2認識マークの認識処理を行うといったように、基板の位置検出の高速化を図った従来技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、プリント基板の状態や種類、認識マークを撮像した際の撮像条件など様々な理由により、撮像して得られた画像データから認識マークを適切に認識できない場合がある。かかる場合、従来では、認識エラーとなり、製造ラインが停止し、作業者による人為的な調整作業が行われていた。
【0008】
そのため、1回でも認識エラーが発生すると、生産性が著しく低下するおそれがあった。認識エラーは、僅かながらも(例えば1〜5%程度)プリント基板の製造ラインにおいては必ず発生するエラーであるため、特許文献1等のように基板の位置検出の高速化を図った従来技術であっても全体としての処理能力は低くなるおそれがあった。
【0009】
これに対し、近年では、認識マークの認識に失敗した場合に、作業者による人為的な作業を介さず、照明の輝度などを変更して認識マークの撮像処理及び認識処理を再試行(リトライ)する技術もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−261299号公報
【特許文献2】特開2009−182280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に係る技術では、プリント基板上の第1位置にて第1認識マークをカメラで撮像した後、該第1認識マークを適切に認識できるか否かに拘わらず(再試行するか否かに拘わらず)、毎回、第1認識マークの認識処理の結果が出るまでは(再試行の必要の有無が判るまでは)、該カメラを第1位置に待機させ、第2認識マークに対応する第2位置へ移動させることができない。
【0012】
そのため、仮に全ての認識マークについて再試行することなく認識できたとしても、プリント基板の位置検出に要する時間は、特許文献1に係る技術よりも長くなり、基板の位置検出の高速化を図ることが難しくなる。結果として、生産性が低下するおそれがある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板の位置検出の高速化を図ると共に、生産性の低下抑制等を図ることのできる基板位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0015】
手段1.基板の所定範囲に対し所定の光を照射可能な照射手段と、
前記所定の光が照射された前記基板の所定範囲を撮像可能な撮像手段と、
少なくとも前記撮像手段と前記基板とを相対移動可能な移動手段とを備え、
前記基板に設けられた複数の認識対象(例えば認識マーク)のうちの所定の認識対象に対応する位置へ前記撮像手段を相対移動させる移動処理と、該所定の認識対象を所定の撮像条件の下で撮像する撮像処理と、前記撮像処理により得られた画像データを基に該所定の認識対象を認識する認識処理とを、前記複数の認識対象について順次実行することにより、前記基板の位置を検出可能な基板位置検出装置であって、
前記複数の認識対象のうちの所定の認識対象に係る前記撮像処理の終了後、該所定の認識対象とは異なる他の認識対象に対応する位置へ前記撮像手段を相対移動させる前記移動処理を実行しつつ、該所定の認識対象に係る前記認識処理を実行可能とすると共に、
少なくとも前記複数の認識対象すべてについて前記認識処理を実行した後、前記複数の認識対象のうち最後以外の認識対象を認識できなかった場合には、該認識対象に対応する位置に再び移動して再び該認識対象を撮像する再撮像処理と、前記再撮像処理により得られた画像データを基に該認識対象を認識する再認識処理とを実行可能としたことを特徴とする基板位置検出装置。
【0016】
尚、上記「認識処理(再認識処理)」においては、少なくとも撮像処理(再撮像処理)により得られた画像データから認識対象を認識できたか否かさえ把握できていればよい。つまり上記「認識処理(再認識処理)」を実行する段階において、必ずしも認識対象の位置情報(座標)を算出する必要はない。
【0017】
上記手段1によれば、所定の認識対象に係る撮像処理の終了後、他の認識対象に対応する位置へ撮像手段を相対移動させている間に、該所定の認識対象に係る認識処理を実行することができる。つまり、所定の認識対象に係る撮像処理の終了後、該認識対象を適切に認識できたか否かに拘わらず、認識処理の結果を待たずに、他の認識対象に対応する位置へ撮像手段の相対移動を開始することができる。結果として、全ての認識対象について再試行(再撮像処理及び再認識処理)をすることなく認識できた場合には、特許文献1に係る技術と同様に、基板の位置検出の高速化を図ることができる。
【0018】
一方、全ての認識対象について一通り認識処理を実行した後、認識できない認識対象があった場合には、自動的に再試行(再撮像処理及び再認識処理)を実行する構成となっている。つまり、装置(製造ライン)を停止して、作業者による人為的な作業を行うことを必要としない。結果として、全体としての処理能力を高め、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0019】
手段2.前記再撮像処理を実行する際に前記撮像条件を変更する変更処理を実行可能としたことを特徴とする手段1に記載の基板位置検出装置。
【0020】
上記手段2によれば、先の撮像処理で得られた画像データから認識対象を認識できなかった場合には自動的に(作業者を介さずに)撮像条件を変更して再試行することができる。これにより、認識できなかった認識対象を自動的に認識可能となる。尚、撮像条件については、例えば先の撮像処理で得られた画像データを基に変更内容を決定したり、予め定めた複数通りの変更内容に所定の順序で切替設定することなどが一例に挙げられる。
【0021】
手段3.前記撮像条件として、前記照射手段から照射される光の光量を変更可能としたことを特徴とする手段2に記載の基板位置検出装置。
【0022】
照射光の光量を変更することにより、認識マークが認識可能となる場合がある。かかる場合、上記手段3がより奏功することとなる。また、光量の過不足は先の撮像処理で得られた画像データから容易に判別可能であるため、先の撮像処理で得られた画像データを基に変更内容(光量の増減等)を決定すれば、再試行を行う際、より適切な撮像条件の下で実行することが可能となる。
【0023】
尚、「照射手段から照射される光の光量を変更可能」なことには、「照射手段から光を照射する光源の輝度を変更可能」なことや、「照射手段から光を照射する光源の数を変更可能」なことが含まれる。
【0024】
手段4.前記撮像条件として、前記照射手段から照射される光の照射角度を変更可能、又は、前記照射手段から光を照射する少なくとも1つの光源(の位置)を変更可能としたことを特徴とする手段2又は3に記載の基板位置検出装置。
【0025】
例えば認識マーク(認識対象)の表面が半田でコーティングされた半田レベラー品の場合には、認識マークの表面が平坦になっていない場合がある。かかる場合、光源の位置や照射角度を変更することにより、認識マークが認識可能となる場合がある。かかる場合、上記手段4がより奏功することとなる。尚、「照射手段から光を照射する少なくとも1つの光源(の位置)を変更可能」なことには、「照射手段から光を照射する光源を追加若しくは削減すること」などが含まれる。
【0026】
手段5.前記撮像条件として、前記照射手段から照射される光の色を変更可能としたことを特徴とする手段2乃至4のいずれかに記載の基板位置検出装置。
【0027】
プリント基板等における認識対象の周囲(ガラスエポキシ樹脂やレジスト膜など)の色は様々である。そのため、照射光の色を変更することにより、認識対象が認識可能となる場合がある。かかる場合、上記手段5がより奏功することとなる。
【0028】
手段6.前記基板は、電子部品が実装されるプリント基板であることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の基板位置検出装置。
【0029】
上記手段6によれば、プリント基板の位置決め精度を高めることができる。ひいては、クリーム半田の検査精度や、電子部品の実装精度などを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】半田印刷検査装置を模式的に示す概略構成図である。
図2】プリント基板の製造ラインの構成を示すブロック図である。
図3】半田印刷検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】プリント基板の構成並びにカメラの撮像視野の移動順序を示す平面模式図である。
図5】認識マーク抽出処理の一部を示すフローチャートである。
図6】認識マーク抽出処理の一部を示すフローチャートである。
図7】認識マーク抽出処理を行う際の各種処理動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
図8】第2実施形態に係る半田印刷検査装置を模式的に示す概略構成図である。
図9】第2実施形態に係る位置検出用の照明装置を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態における基板位置検出装置を具備する半田印刷検査装置13を模式的に示す概略構成図である。本実施形態における基板位置検出装置は半田印刷検査装置13の一機能として具現化されている。
【0032】
まず基板位置検出装置による位置検出対象(半田印刷検査装置13による検査対象)となるプリント基板の構成について詳しく説明する。図4に示すように、プリント基板P1は、ガラスエポキシ樹脂等からなる平板状のベース基板50の表面に、銅箔からなるパターン(図示略)やランド51が形成されてなる。ベース基板50の表面には、ランド51を除く部分にレジスト膜52がコーティングされている。そして、ランド51上には、クリーム半田53が印刷される。
【0033】
また、プリント基板P1の表面には、位置検出用の認識対象となる認識マークが設けられている。より詳しくは、プリント基板P1の表面には、その四隅のうち所定の対角線上に並ぶ2つコーナー部において、それぞれ円形状の第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕が付されている。本実施形態に係る認識マーク〔A〕,〔B〕は、ランド51と同様、銅箔により形成されている。
【0034】
次にプリント基板P1を製造する製造ラインについて図2を参照して説明する。図2は、プリント基板P1の製造ライン10の構成を示すブロック図である。本実施形態における製造ライン10では、その正面側から見て左から右へプリント基板P1が搬送されるように設定されている。
【0035】
製造ライン10には、その上流側(図2左側)から順に、半田印刷機12、半田印刷検査装置13、部品実装機14及びリフロー装置15が設置されている。
【0036】
半田印刷機12は、プリント基板P1のランド51上にクリーム半田53を印刷するためのものである。
【0037】
半田印刷検査装置13は、上記のように印刷されたクリーム半田53の状態を検査するためのものである。半田印刷検査装置13の詳細については後述する。
【0038】
部品実装機14は、印刷されたクリーム半田53上にチップ等の電子部品(図示略)を搭載するためのものである。電子部品は、複数の電極やリードを備えており、該各電極やリードがそれぞれ所定のクリーム半田53に対し仮止めされる。
【0039】
リフロー装置15は、クリーム半田53を加熱溶融させて、ランド51と、電子部品の電極やリードとを半田接合(半田付け)するためのものである。
【0040】
尚、製造ライン10には、半田印刷機12と半田印刷検査装置13との間など、上記各装置間において、プリント基板P1を移送するためのコンベア16等が設けられている(図2参照)。また、図示は省略するが、半田印刷検査装置13と部品実装機14との間には分岐装置が設けられている。そして、半田印刷検査装置13にて良品判定されたプリント基板P1は、その下流側の部品実装機14へ案内される一方、不良品判定されたプリント基板P1は分岐装置により不良品貯留部へと排出される。
【0041】
次に半田印刷検査装置13の構成について詳しく説明する。図1に示すように、半田印刷検査装置13は、プリント基板P1の搬送や位置決め等を行う搬送機構22と、プリント基板P1の検査を行うための検査ユニット23と、搬送機構22や検査ユニット23の駆動制御など半田印刷検査装置13内における各種制御や画像処理、演算処理を実施するための制御装置26(図3参照)とを備えている。制御装置26が本実施形態における処理実行手段を構成する。
【0042】
搬送機構22は、プリント基板P1の搬送方向に沿って配置された一対の搬送レール22aと、各搬送レール22aに対し回転可能に配設された無端のコンベアベルト22bと、該コンベアベルト22bを駆動するモータ等の駆動手段(図示略)と、プリント基板P1を所定位置に位置決めするためのチャック機構(図示略)と備え、制御装置26により駆動制御される。
【0043】
上記構成の下、半田印刷検査装置13へ搬入されたプリント基板P1は、搬送方向と直交する幅方向の両側縁部がそれぞれ搬送レール22aに挿し込まれると共に、コンベアベルト22b上に載置される。続いて、コンベアベルト22bが動作を開始し、プリント基板P1が所定の検査位置まで搬送される。プリント基板P1が検査位置に達すると、コンベアベルト22bが停止すると共に、チャック機構が作動する。このチャック機構の動作により、コンベアベルト22bが押し上げられ、コンベアベルト22bと搬送レール22aの上辺部によってプリント基板P1の両側縁部が挟持された状態となる。これにより、プリント基板P1が検査位置に位置決め固定される。検査が終了すると、チャック機構による固定が解除されると共に、コンベアベルト22bが動作を開始する。これにより、プリント基板P1は、半田印刷検査装置13から搬出される。勿論、搬送機構22の構成は、上記形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0044】
検査ユニット23は、搬送レール22a(プリント基板P1の搬送路)の上方に配設されている。検査ユニット23は、プリント基板P1上の所定範囲(検査範囲や認識範囲)に対し斜め上方から所定の光を照射する照射手段としての第1照明23A及び第2照明23Bと、プリント基板P1上の所定範囲を真上から撮像する撮像手段としてのカメラ23Cと、X軸方向への移動を可能とするX軸移動機構23D(図3参照)と、Y軸方向への移動を可能とするY軸移動機構23E(図3参照)とを備え、制御装置26により駆動制御される。
【0045】
第1照明23A及び第2照明23Bは、三次元計測用の光と、位置検出用の光を切替え照射可能に構成されている。より詳しくは、第1照明23A及び第2照明23Bは、プリント基板P1上の所定の検査範囲(検査範囲「1」〜「15」:図4参照)に対し三次元計測用の所定の光(例えば縞状の光強度分布を有するパターン光)を照射可能に構成されると共に、所定の認識範囲(第1認識マーク〔A〕又は第2認識マーク〔B〕:図4参照)に対し位置検出用の所定の光(例えば光強度が一定の均一光)を照射可能に構成されている。
【0046】
第1照明23Aは、所定の光を発する第1光源23Aaや、該第1光源23Aaからの光を透過させる第1液晶シャッタ23Abを備え、制御装置26により駆動制御される。第1液晶シャッタ23Abは、第1光源23Aaからの光を縞状の光強度分布を有する第1パターン光に変換する第1格子を形成可能に構成されている。従って、第1照明23Aは、第1液晶シャッタ23Abを切替制御することにより、均一光及びパターン光を切替え照射可能となる。
【0047】
第2照明23Bは、所定の光を発する第2光源23Baや、該第2光源23Baからの光を透過させる第2液晶シャッタ23Bbを備え、制御装置26により駆動制御される。第2液晶シャッタ23Bbは、第2光源23Baからの光を縞状の光強度分布を有する第2パターン光に変換する第2格子を形成可能に構成されている。従って、第2照明23Bは、第2液晶シャッタ23Bbを切替制御することにより、均一光及びパターン光を切替え照射可能となる。
【0048】
第1光源23Aa及び第2光源23Baは、それぞれ照射光の輝度を複数段階に切替え可能に構成されている。
【0049】
上記構成の下、各光源23Aa,23Baから発せられた光はそれぞれ集光レンズ(図示略)に導かれ、そこで平行光にされた後、液晶シャッタ23Ab,23Bbを介して投影レンズ(図示略)に導かれ、プリント基板P1に対し均一光又はパターン光として投影されることとなる。
【0050】
特に三次元計測に際しパターン光を投影する場合には、各パターン光の位相がそれぞれ4分の1ピッチずつシフトするように、液晶シャッタ23Ab,23Bbの切替制御が行われる。ここで、格子として液晶シャッタ23Ab,23Bbを使用することにより、理想的な正弦波に近いパターン光を照射することができる。これにより、三次元計測の計測分解能が向上する。また、パターン光の位相シフト制御を電気的に行うことができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0051】
尚、プリント基板P1上の検査範囲及び認識範囲は、カメラ23Cの撮像視野(撮像範囲)Kの大きさを1単位としてプリント基板P1上に予め設定された複数のエリアのうちの1つのエリアである(図4参照)。
【0052】
制御装置26は、X軸移動機構23D及びY軸移動機構23Eを駆動制御することにより、検査ユニット23(撮像視野K)を、検査位置に位置決め固定されたプリント基板P1上の任意の検査範囲や認識範囲の上方位置へ移動することができる。そして、プリント基板P1上に設定された複数の認識範囲や検査範囲に検査ユニット23を順次移動させつつ、各認識範囲に係る認識処理や各検査範囲に係る検査処理を実行していくことで、プリント基板P1全域の検査を実行する構成となっている(図4参照)。従って、X軸移動機構23D及びY軸移動機構23Eにより本実施形態における移動手段が構成される。
【0053】
カメラ23Cは、レンズや撮像素子等を備えてなる。本実施形態では、撮像素子としてCCDセンサを採用している。勿論、撮像素子はこれに限定されるものではなく、例えばCMOSセンサなど、他の撮像素子を採用してもよい。
【0054】
カメラ23Cは、制御装置26により駆動制御される。より詳しくは、制御装置26は、照明23A,23Bによる照射処理と同期をとりながら、カメラ23Cによる撮像処理を実行する。
【0055】
カメラ23Cによって撮像されて得られた画像データは、該カメラ23C内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置26に転送され、後述する画像データ記憶装置34に記憶される。そして、制御装置26は、該画像データを基に、後述するような画像処理や演算処理等を実施する。
【0056】
次に制御装置26の電気的構成について説明する。図3に示すように、制御装置26は、半田印刷検査装置13全体の制御を司るCPU及び入出力インターフェース31(以下、「CPU等31」という)、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される「入力手段」としての入力装置32、CRTや液晶などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置33、カメラ23Cにより撮像されて得られた画像データなどを記憶するための画像データ記憶装置34、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶装置35、ガーバデータ(認識マークに関する情報を含む)などの各種情報を予め記憶しておくための設定データ記憶装置36などを備えている。尚、これら各装置32〜36は、CPU等31に対し電気的に接続されている。
【0057】
設定データ記憶装置36には、プリント基板P1に設定された複数の認識範囲及び検査範囲、並びに、これらに対するカメラ23Cの撮像視野Kの移動順序に関する情報が記憶されている。ここで「撮像視野Kの移動順序」とは、プリント基板P1上に設定された複数の認識範囲及び検査範囲について、いかなる順序でカメラ23Cの撮像視野Kを移動させていくかを定めたものである。
【0058】
尚、プリント基板P1に係る複数の認識範囲及び検査範囲並びにこれらに対する撮像視野Kの移動順序の設定は、ガーバデータ等を基にして事前に所定のプログラムにより自動で又は作業者により手動で行われる。
【0059】
本実施形態では、通常時、カメラ23Cの撮像視野Kを、まず第1認識マーク〔A〕に対応する第1認識範囲へ移動させた後、第2認識マーク〔B〕に対応する第2認識範囲へ移動させる。その後は、予め定められた所定の検査範囲を起点として、検査ユニット23の移動経路が最短距離となるように、撮像視野Kの移動順序が設定される。例えば図4に示した例では、右上コーナー部の検査範囲を起点として撮像視野Kの移動順序(検査順序)が設定されている。尚、図4において破線枠により囲まれた範囲が撮像視野K(認識範囲及び検査範囲)を示し、ここに付された数字「1」〜「15」が検査順序を示す。また、図4においては、撮像視野Kの移動方向(移動経路)を矢印で示している。
【0060】
次に半田印刷検査装置13により行われるプリント基板P1の検査ルーチンについて詳しく説明する。かかる検査ルーチンは、制御装置26(CPU等31)により実行されるものである。
【0061】
上述したように、半田印刷検査装置13へ搬入されたプリント基板P1が所定の検査位置に位置決め固定されると、制御装置26は、まずプリント基板P1の位置検出処理を実行する。以下、かかる位置検出処理について図5〜7を参照しつつ説明する。図5,6は認識マーク〔A〕,〔B〕を検出する認識マーク抽出処理を示すフローチャートである。図7は認識マーク抽出処理を行う際の各種処理動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0062】
まず制御装置26は、検査ユニット23を移動させる移動処理を実行し、カメラ23Cの撮像視野Kをプリント基板P1上の第1認識マーク〔A〕に対応する第1認識範囲に合わせる(ステップS01)。
【0063】
続いて、第1照明23A及び第2照明23Bから均一光を照射しつつ、プリント基板P1上の第1認識マーク〔A〕を撮像する撮像処理を実行する(ステップS02)。
【0064】
第1認識マーク〔A〕の撮像処理の終了後、検査ユニット23をプリント基板P1上の第2認識マーク〔B〕に対応する位置へ移動させる移動処理を開始する(ステップS03)と同時に、先の撮像処理で得られた第1認識マーク〔A〕の画像データを基に、該第1認識マーク〔A〕の認識処理を開始する(ステップS04)。
【0065】
本実施形態では、画像データにおける各画素の輝度値を基に、第1認識マーク〔A〕のエッジを検出することにより、第1認識マーク〔A〕を認識する。勿論、第1認識マーク〔A〕の認識方法は、これに限定されるものではなく、パターンマッチングなど他の方法を採用してもよい(後述する第2認識マーク〔B〕についても同様)。
【0066】
そして、第1認識マーク〔A〕の認識処理が終了すると、その結果を演算結果記憶装置35に記憶する。具体的には、ステップS02の撮像処理により得られた画像データから第1認識マーク〔A〕を認識できたか否かといった画像データに対する評価結果を記憶する。
【0067】
尚、本実施形態では、上記認識処理により、第1認識マーク〔A〕を認識できた場合には、続けて第1認識マーク〔A〕の位置情報(例えば中心座標)を算出し、前記評価結果と共に第1認識マーク〔A〕の位置情報を演算結果記憶装置35に記憶する(後述する第2認識マーク〔B〕についても同様)。但し、第1認識マーク〔A〕の位置情報の算出処理は、後述する第2認識マーク〔B〕の認識処理に成功した後、プリント基板P1の位置情報を検出する際に、第2認識マーク〔B〕の位置情報(例えば中心座標)の算出処理と合わせて行う構成としてもよい。
【0068】
一方、第2認識マーク〔B〕に対応する位置への検査ユニット23の移動処理が完了し、カメラ23Cの撮像視野Kを第2認識範囲に合せ終わると、第1照明23A及び第2照明23Bから均一光を照射しつつ、プリント基板P1上の第2認識マーク〔B〕を撮像する撮像処理を実行する(ステップS05)。
【0069】
第2認識マーク〔B〕の撮像処理の終了後、演算結果記憶装置35に記憶した第1認識マーク〔A〕に係る画像データの評価結果を基に、第1認識マーク〔A〕を認識できたか否かを判定する(ステップS06)と同時に、ステップS05にて撮像して得られた第2認識マーク〔B〕の画像データを基に、該第2認識マーク〔B〕の認識処理を開始する(ステップS07)。
【0070】
そして、ステップS06の判定処理にて、第1認識マーク〔A〕を認識できた旨の判定結果が得られた場合には、ステップS07の第2認識マーク〔B〕の認識処理の終了を待って、次の処理(ステップS13)へ移行する。
【0071】
ステップS07の第2認識マーク〔B〕の認識処理が終了すると、上記第1認識マーク〔A〕の場合と同様、その結果を演算結果記憶装置35に記憶し、次の処理(ステップS13)へ移行する。
【0072】
一方、ステップS06の判定処理にて、第1認識マーク〔A〕を認識できた旨の判定結果が得られなかった場合には、第1認識マーク〔A〕に係るリトライ処理を開始する。より詳しくは、まず検査ユニット23(カメラ23Cの撮像視野K)をプリント基板P1上の第1認識マーク〔A〕に対応する位置(第1認識範囲)へ再び移動させる移動処理を開始する(ステップS08)。尚、本実施形態(図7に示す例)においては、第2認識マーク〔B〕の認識処理(ステップS07)の終了後に、前記移動処理(ステップS08)を開始する構成となっているが、これに限らず、第2認識マーク〔B〕の認識処理(ステップS07)の終了前に、前記移動処理(ステップS08)を開始可能な構成としてもよい。
【0073】
そして、第1認識マーク〔A〕に対応する位置への検査ユニット23の移動処理の終了後において、第1認識マーク〔A〕に係る撮像条件の変更処理を実行する(ステップS09)。勿論、検査ユニット23の移動処理の実行中に、前記変更処理(ステップS09)を実行する構成としてもよい。
【0074】
本実施形態では、先の撮像処理で得られた第1認識マーク〔A〕に係る画像データを基に光量の過不足を判別し、第1照明23A及び第2照明23Bから照射される均一光の光量を変更する。例えば画像データにおいて、第1認識マーク〔A〕が、ガーバデータに記憶されたものよりも大きく撮像されている場合、すなわち光量が多すぎると判別した場合には、第1光源23Aa及び第2光源23Baから照射される光の輝度を下げる。逆に画像データにおいて、第1認識マーク〔A〕が、ガーバデータに記憶されたものよりも一部が欠けて小さく撮像されている場合、すなわち光量が不足していると判別した場合には、第1光源23Aa及び第2光源23Baから照射される光の輝度を上げる。これに代えて、液晶シャッタ23Ab,23Bbの制御により光量を調節する構成としてもよい。
【0075】
続いて、検査ユニット23の移動処理及び撮像条件の変更処理が完了し、カメラ23Cの撮像視野Kを第1認識範囲に合せ終わると、第1照明23A及び第2照明23Bから変更後の均一光を照射しつつ、プリント基板P1上の第1認識マーク〔A〕を再び撮像する再撮像処理を実行する(ステップS10)。
【0076】
第1認識マーク〔A〕の再撮像処理の終了後、再度撮像して得られた第1認識マーク〔A〕の画像データを基に、該第1認識マーク〔A〕の再認識処理を実行する(ステップS11)。尚、第1認識マーク〔A〕の再認識処理は、上記認識処理(ステップS04)と同様であるため、詳細な説明は省略する(後述する第2認識マーク〔B〕の再認識処理についても同様)。
【0077】
続いて、第1認識マーク〔A〕に係る画像データの評価結果を基に、第1認識マーク〔A〕を認識できたか否かを判定する(ステップS12)。ここで、第1認識マーク〔A〕を認識できた旨の判定結果が得られた場合には、次の処理(ステップS13)へ移行する。
【0078】
一方、ステップS12にて、第1認識マーク〔A〕を認識できた旨の判定結果が得られなかった場合には、上記ステップS09の撮像条件変更処理に戻り、第1認識マーク〔A〕を認識できるまで、該ステップS09〜ステップS12の処理を繰り返し実行する。
【0079】
さて、第1認識マーク〔A〕を認識できた場合には、演算結果記憶装置35に記憶した第2認識マーク〔B〕に係る画像データの評価結果を基に、第2認識マーク〔B〕を認識できたか否かを判定する(ステップS13)。
【0080】
そして、ステップS13の判定処理にて、第2認識マーク〔B〕を認識できた旨の判定結果が得られた場合には、認識マーク抽出処理を終了する。
【0081】
一方、ステップS13の判定処理にて、第2認識マーク〔B〕を認識できた旨の判定結果が得られなかった場合には、第2認識マーク〔B〕に係るリトライ処理を開始する。より詳しくは、まず検査ユニット23(カメラ23Cの撮像視野K)をプリント基板P1上の第2認識マーク〔B〕に対応する位置(第2認識範囲)へ再び移動させる移動処理を開始する(ステップS14)。
【0082】
但し、上述した第1認識マーク〔A〕に係るリトライ処理(ステップS08〜ステップS12)が行われていない場合、すなわち最初の撮像処理(ステップS02)おいて第1認識マーク〔A〕に係る適切な画像データが撮像された場合には、既にカメラ23Cの撮像視野Kが第2認識範囲に合った状態となっているため、ステップS14の移動処理は実質的には省略されることとなる。この場合、ステップS14の移動処理では、第2認識範囲に対するカメラ23Cの撮像視野Kの位置合わせの確認処理のみが行われることとなる。
【0083】
そして、第2認識マーク〔B〕に対応する位置への検査ユニット23の移動処理(確認処理)の終了後において、第2認識マーク〔B〕に係る撮像条件の変更処理を実行する(ステップS15)。尚、第2認識マーク〔B〕に係る撮像条件の変更処理(ステップS15)は、第1認識マーク〔A〕に係る撮像条件の変更処理(ステップS09)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0084】
続いて、検査ユニット23の移動処理及び撮像条件の変更処理が完了し、カメラ23Cの撮像視野Kを第2認識範囲に合せ終わると、第1照明23A及び第2照明23Bから変更後の均一光を照射しつつ、プリント基板P1上の第2認識マーク〔B〕を再び撮像する再撮像処理を実行する(ステップS16)。
【0085】
第2認識マーク〔B〕の再撮像処理の終了後、再度撮像して得られた第2認識マーク〔B〕の画像データを基に、該第2認識マーク〔B〕の再認識処理を実行する(ステップS17)。
【0086】
続いて、第2認識マーク〔B〕に係る画像データの評価結果を基に、第2認識マーク〔B〕を認識できたか否かを判定する(ステップS18)。ここで、第2認識マーク〔B〕を認識できた旨の判定結果が得られた場合には、認識マーク抽出処理を終了する。
【0087】
一方、ステップS18にて、第2認識マーク〔B〕を認識できた旨の判定結果が得られなかった場合には、上記ステップS15の撮像条件の変更処理に戻り、第2認識マーク〔B〕を認識できるまで、該ステップS15〜ステップS18の処理を繰り返し実行する。
【0088】
そして、上記図5図7に示した認識マーク抽出処理が終了すると、制御装置26は、該認識マーク抽出処理により検出した第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕の位置情報(座標)と、ガーバデータに記憶された第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕の位置情報(座標)とを基に、プリント基板P1の位置情報(傾きや位置ズレなど)を算出する。これにより、プリント基板P1の位置検出処理を終了する。そして、このプリント基板P1の位置情報を基に、検査ユニット23(カメラ23C)とプリント基板P1との相対位置関係のズレを補正する補正処理を実行する。
【0089】
その後、設定データ記憶装置36に記憶された検査順序に従って、検査ユニット23をプリント基板P1上の「1」番目の検査範囲に対応する位置へ移動させる移動処理を開始する。
【0090】
検査ユニット23の移動処理が完了し、カメラ23Cの撮像視野Kがプリント基板P1上の「1」番目の検査範囲に合わせられると、第1照明23A又は第2照明23Bから縞パターンを照射して、プリント基板P1上の「1」番目の検査範囲に係る検査処理を実行する。かかる検査処理の詳細については後述する(他の検査範囲に係る検査処理についても同様)。
【0091】
その後、プリント基板P1上の「1」番目の検査範囲に係る検査処理が終了すると、設定データ記憶装置36に記憶された検査順序に従って、検査ユニット23をプリント基板P1上の「2」番目の検査範囲に対応する位置へ移動させる移動処理を開始する。
【0092】
以降同様に、検査ユニット23によるプリント基板P1上の「2」番目〜「15」番目の検査範囲に係る検査処理が実行されることにより、プリント基板P1全体に係る検査が終了する。
【0093】
次にプリント基板P1の各検査範囲ごとに行われる検査処理について説明する。かかる検査処理は、制御装置26(CPU等31)にて実行されるものである。
【0094】
本実施形態では、プリント基板P1の各検査範囲に係る検査において、第1照明23Aから照射される第1パターン光の位相を変化させつつ、位相の異なる第1パターン光の下で4回の撮像処理を行った後、第2照明23Bから照射される第2パターン光の位相を変化させつつ、位相の異なる第2パターン光の下で4回の撮像処理を行い、計8通りの画像データを取得する。以下、詳しく説明する。
【0095】
上述したように、制御装置26は、まずX軸移動機構23D及びY軸移動機構23Eを駆動制御して検査ユニット23を移動させ、カメラ23Cの撮像視野Kがプリント基板P1の所定の検査範囲に合わせられると、両照明23A,23Bの液晶シャッタ23Ab,23Bbを切替制御し、該両液晶シャッタ23Ab,23Bbに形成される第1格子及び第2格子の位置を所定の基準位置に設定する。
【0096】
第1格子及び第2格子の切替設定が完了すると、制御装置26は、第1照明23Aの第1光源23Aaを発光させ、第1パターン光を照射すると共に、カメラ23Cを駆動制御して、該第1パターン光の下での1回目の撮像処理を実行する。
【0097】
その後、制御装置26は、第1パターン光の下での1回目の撮像処理の終了と同時に、第1照明23Aの第1光源23Aaを消灯すると共に、第1液晶シャッタ23Abの切替処理を実行する。具体的には、第1液晶シャッタ23Abに形成される第1格子の位置を前記基準位置から、第1パターン光の位相が4分の1ピッチ(90°)ずれる第2の位置へ切替設定する。
【0098】
第1格子の切替設定が完了すると、制御装置26は、第1照明23Aの光源23Aaを発光させ、第1パターン光を照射すると共に、カメラ23Cを駆動制御して、該第1パターン光の下での2回目の撮像処理を実行する。以後、同様の処理を繰り返し行うことで、90°ずつ位相の異なる第1パターン光の下での4通りの画像データを取得する。
【0099】
続いて、制御装置26は、第2照明23Bの第2光源23Baを発光させ、第2パターン光を照射すると共に、カメラ23Cを駆動制御して、該第2パターン光の下での1回目の撮像処理を実行する。
【0100】
その後、制御装置26は、第2パターン光の下での1回目の撮像処理の終了と同時に、第2照明23Bの第2光源23Baを消灯すると共に、第2液晶シャッタ23Bbの切替処理を実行する。具体的には、第2液晶シャッタ23Bbに形成される第2格子の位置を前記基準位置から、第2パターン光の位相が4分の1ピッチ(90°)ずれる第2の位置へ切替設定する。
【0101】
第2格子の切替設定が完了すると、制御装置26は、第2照明23Bの光源23Baを発光させ、第2パターン光を照射すると共に、カメラ23Cを駆動制御して、該第2パターン光の下での2回目の撮像処理を実行する。以後、同様の処理を繰り返し行うことで、90°ずつ位相の異なる第2パターン光の下での4通りの画像データを取得する。
【0102】
そして、制御装置26は、各パターン光の下でそれぞれ撮像して得られた4通りの画像データを基に公知の位相シフト法によりクリーム半田53の三次元計測(高さ計測)を行い、かかる計測結果を演算結果記憶装置35に記憶する。尚、本実施形態では、2方向からパターン光を照射して三次元計測を行っているため、パターン光が照射されない影の部分が生じることを防止することができる。
【0103】
次に、制御装置26は、三次元計測結果に基づき、クリーム半田53の良否判定処理を行う。具体的に、制御装置26は、上記のように得られた検査範囲の計測結果に基づいて、基準面より高くなったクリーム半田53の印刷範囲を検出し、この範囲内での各部位の高さを積分することにより、印刷されたクリーム半田53の量を算出する。
【0104】
続いて、制御装置26は、このようにして求めたクリーム半田53の位置、面積、高さ又は量等のデータを、予め設定データ記憶装置36に記憶されている基準データ(ガーバデータなど)と比較判定し、この比較結果が許容範囲内にあるか否かによって、その検査範囲におけるクリーム半田53の印刷状態の良否を判定する。
【0105】
上記8通りの画像データの取得後、上記良否判定処理が行われている間に、制御装置26は、検査ユニット23を次の検査範囲へと移動させる。以降、上記一連の処理が、プリント基板P1上の全ての検査範囲で繰り返し行われることで、プリント基板P1全体の検査が終了する。
【0106】
以上詳述したように、本実施形態によれば、第1認識マーク〔A〕に係る撮像処理の終了後、第2認識マーク〔B〕に対応する位置へ検査ユニット23(カメラ23C)を相対移動させている間に、第1認識マーク〔A〕に係る認識処理を実行することができる。
【0107】
つまり、第1認識マーク〔A〕に係る撮像処理の終了後、第1認識マーク〔A〕を適切に認識できたか否かに拘わらず、認識処理の結果を待たずに、第2認識マーク〔B〕に対応する位置へ検査ユニット23の相対移動を開始することができる。結果として、第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕について、リトライ処理(再撮像処理及び再認識処理)を実行することなく、認識に成功した場合には、プリント基板P1の位置検出の高速化を図ることができる。
【0108】
一方、第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕について一通り認識処理を実行した後、第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕の少なくとも一方の認識に失敗した場合には、自動的にリトライ処理(再撮像処理及び再認識処理)を実行する構成となっている。つまり、半田印刷検査装置13(製造ライン10)を停止して、作業者による人為的な作業を行うことを必要としない。結果として、全体としての処理能力を高め、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0109】
また、本実施形態では、リトライ処理を実行する際に撮像条件を変更する構成となっている。これにより、第1認識マーク〔A〕(又は第2認識マーク〔B〕)の認識に失敗した場合には自動的に(作業者を介さずに)撮像条件を変更してリトライ処理を実行することができる。これにより、認識に失敗した第1認識マーク〔A〕(又は第2認識マーク〔B〕)を自動的に認識可能となる。
【0110】
さらに、本実施形態では、撮像条件の変更処理を行う際に、先の撮像処理で得られた第1認識マーク〔A〕(又は第2認識マーク〔B〕)に係る画像データを基に光量の過不足を判別し、第1照明23A及び第2照明23Bから照射される均一光の光量を変更する構成となっている。結果として、リトライ処理を行う際、より適切な撮像条件の下で実行することが可能となる。
【0111】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について図8図9を参照しつつ説明する。但し、第1実施形態と同一構成部分については、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。図8は第2実施形態に係る半田印刷検査装置13を模式的に示す概略構成図であり、図9は第2実施形態に係る位置検出用の照明装置を示す部分拡大断面図である。
【0112】
上記第1実施形態に係る半田印刷検査装置13では、第1照明23A及び第2照明23Bが三次元計測用の光と、位置検出用の光を切替え照射可能に構成されているが、これに代えて、本実施形態では、第1照明23A及び第2照明23Bを三次元計測専用の照明とし、位置検出用の光を照射可能な照明を別途設けた構成となっている。
【0113】
詳しくは、図8,9に示すように、本実施形態に係る検査ユニット23は、第1照明23A及び第2照明23B並びにカメラ23Cに加えて、位置検出用の照明装置71を備えた構成となっている。
【0114】
照明装置71は、プリント基板P1の一番近くに配置された第1リングライト72と、該第1リングライト72の次にプリント基板P1の近くに配置された第2リングライト73と、プリント基板P1から最も離れた位置に配置された第3リングライト74とを備えている。
【0115】
各リングライト72〜74は、それぞれ赤色光、緑色光及び青色光の3色の単色光を切替え照射可能に構成されている。また、第1リングライト72は、プリント基板P1に対し大入射角(例えば74°)で光照射を行うように構成されている。第2リングライト73は、プリント基板P1に対し中入射角(例えば20°)で光照射を行うように構成されている。第3リングライト74は、プリント基板P1に対し小入射角(例えば0°)で光照射を行うように構成されている。
【0116】
上記構成の下、図5,6に示す認識マーク抽出処理において、第1認識マーク〔A〕に係る最初の撮像処理(ステップS02)及び第2認識マーク〔B〕に係る最初の撮像処理(ステップS05)を実行する際には、第3リングライト74から小入射角で照射される単色光(本実施形態では「赤色光」)の下で撮像処理を実行する。
【0117】
また、認識に失敗し、第1認識マーク〔A〕に係るリトライ処理(ステップS09〜ステップS12)及び/又は第2認識マーク〔B〕に係るリトライ処理(ステップS15〜ステップS18)を実行する場合には、撮像条件変更処理(ステップS09,S15)において第2リングライト73を追加する。そして、第3リングライト74から小入射角で照射される単色光(本実施形態では「赤色光」)、及び、第2リングライト73から中入射角で照射される単色光(本実施形態では「赤色光」)の2つの照射光の下で再撮像処理(ステップS10,S16)を実行する。
【0118】
その後、再び認識に失敗し、第1認識マーク〔A〕及び/又は第2認識マーク〔B〕に係る2回目のリトライ処理を実行する場合には、2回目の撮像条件変更処理において、第1リングライト72から大入射角で照射される単色光(本実施形態では「赤色光」)を追加し、全リングライト72〜74から照射される単色光(本実施形態では「赤色光」)の下で2回目の再撮像処理を実行する。
【0119】
以下同様に、3回目のリトライ処理を実行する場合には、第3リングライト74から小入射角で照射される単色光(本実施形態では「緑色光」)の下で3回目の再撮像処理を実行する。
【0120】
4回目のリトライ処理を実行する場合には、第3リングライト74から小入射角で照射される単色光(本実施形態では「緑色光」)、及び、第2リングライト73から中入射角で照射される単色光(本実施形態では「緑色光」)の2つの照射光の下で4回目の再撮像処理を実行する。
【0121】
5回目のリトライ処理を実行する場合には、全リングライト72〜74から照射される単色光(本実施形態では「緑色光」)の下で5回目の再撮像処理を実行する。
【0122】
6回目のリトライ処理を実行する場合には、第3リングライト74から小入射角で照射される単色光(本実施形態では「青色光」)の下で6回目の再撮像処理を実行する。
【0123】
7回目のリトライ処理を実行する場合には、第3リングライト74から小入射角で照射される単色光(本実施形態では「青色光」)、及び、第2リングライト73から中入射角で照射される単色光(本実施形態では「青色光」)の2つの照射光の下で7回目の再撮像処理を実行する。
【0124】
8回目のリトライ処理を実行する場合には、全リングライト72〜74から照射される単色光(本実施形態では「青色光」)の下で8回目の再撮像処理を実行する。
【0125】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。特に本実施形態によれば、半田レベラー品のように認識マーク〔A〕,〔B〕の表面が平坦になっていない場合により奏功することとなる。
【0126】
また、上記第1実施形態では、先の撮像処理で得られた第1認識マーク〔A〕(又は第2認識マーク〔B〕)に係る画像データを基に撮像条件の変更内容を決定する構成となっているが、本実施形態では、予め定めた複数通りの撮像条件に所定順序で切替設定する構成となっている。これにより、撮像条件変更処理の簡素化を図ることができる。
【0127】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0128】
(a)上記各実施形態では、基板位置検出装置を半田印刷検査装置13の一機能として具体化している。これに限らず、例えば半田印刷機12や部品実装機14など他の装置の一部として又は独立して基板位置検出装置を設けた構成としてもよい。
【0129】
(b)基板位置検出装置による位置検出対象となる基板は、上記各実施形態に係るプリント基板P1に限らず、例えば両面基板など異なるタイプのプリント基板であってもよいし、プリント基板とは異なるウエハ基板等であってもよい。
【0130】
(c)上記各実施形態に係るプリント基板P1は、位置検出用の認識対象として、その四隅のうち所定の対角線上に並ぶ2つコーナー部において、それぞれ円形状の第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕が付された構成となっている。
【0131】
認識対象の数や形状、大きさ、位置、種類など、認識対象の構成は上記各実施形態に限定されるものではない。例えばプリント基板P1に認識マークを3箇所以上設けた構成としてもよい。また、プリント基板P1の表裏に貫通するスルーホールなどを位置検出用の認識対象としてもよい。
【0132】
(d)上記各実施形態では、リトライ処理を実行する際に撮像条件を変更する構成となっているが、これに限らず、少なくとも1回は撮像条件を変更することなく、リトライ処理を実行する構成としてもよい。
【0133】
(e)撮像条件の変更内容は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば第2実施形態においては、リトライ処理に伴い、照明装置71のリングライト72〜74を1つずつ順次追加していくことにより照射光の光量や照射角度などを変更する構成となっているが、これに代えて、例えば「第3リングライト74」→「第2リングライト73」→「第1リングライト72」といったように、1つずつ照明(光源)を切替えることで、光の照射角度を変更したり、光を照射する光源(の位置)を変更する構成としてもよい。
【0134】
また、照明装置71のリングライト72〜74の輝度を変更可能な構成としてもよい。かかる構成の下、例えば第3リングライト74の輝度を変更しても認識マーク〔A〕,〔B〕を認識できない場合に、第2リングライト73に光源を切替える(照射角度を変更する)構成としてもよい。但し、対象が半田レベラー品などの場合には、撮像条件の変更処理において、光量の変更よりも照射角度の変更を優先して行うことが好ましい。
【0135】
また、カメラ23Cの露光時間や光の照射時間などを変更することにより撮像条件(光量)を変更する構成としてもよい。
【0136】
(f)上記各実施形態では、プリント基板P1を固定した状態で検査ユニット23が移動する構成となっているが、これに限らず、検査ユニット23を固定した状態でプリント基板P1を移動させる構成としてもよい。
【0137】
(g)上記各実施形態では、予め定められた所定の検査範囲(図4に示した例では、右上コーナー部の検査範囲)を起点として、検査ユニット23の移動経路が最短距離となるように検査順序が設定されている。
【0138】
これに限らず、第1認識マーク〔A〕及び第2認識マーク〔B〕のうち、通常時(マーク認識エラーがない場合)に最後に撮像する第2認識マーク〔B〕を起点として、又は、第2認識マーク〔B〕の最も近くに位置する検査範囲を起点として、検査ユニット23の移動経路が最短距離となるように検査順序が設定される構成としてもよい。
【0139】
また、リトライ処理を行った場合には、最後にリトライ処理を行った第1認識マーク〔A〕若しくは第2認識マーク〔B〕を起点として、又は、第1認識マーク〔A〕若しくは第2認識マーク〔B〕の最も近くに位置する検査範囲を起点として、検査ユニット23の移動経路が最短距離となるように検査順序が設定される構成としてもよい。
【0140】
上記構成により、最初の検査範囲にて検査を開始するまでの時間を短くすることができ、検査の高速化を図ることができる。
【符号の説明】
【0141】
13…半田印刷検査装置、22…搬送機構、23…検査ユニット、23A…第1照明、23Aa…第1光源、23B…第2照明、23Ba…第2光源、23C…カメラ、23D…X軸移動機構、23E…Y軸移動機構、26…制御装置、34…画像データ記憶装置、35…演算結果記憶装置、36…設定データ記憶装置、A…第1認識マーク、B…第2認識マーク、K…撮像視野、P1…プリント基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9