特許第6276810号(P6276810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276810
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】エアタービン駆動スピンドル
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/02 20060101AFI20180129BHJP
   F01D 15/06 20060101ALI20180129BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20180129BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20180129BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180129BHJP
   F16C 32/06 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F16C27/02 Z
   F01D15/06
   F01D25/16 C
   F01D25/00 M
   F01D25/16 B
   F01D25/16 F
   F16J15/10 D
   F16J15/10 C
   F16C32/06 Z
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-153966(P2016-153966)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-21625(P2018-21625A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年10月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 照悦
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/079896(WO,A1)
【文献】 実開昭50−85650(JP,U)
【文献】 特開昭53−92595(JP,A)
【文献】 特開2002−295470(JP,A)
【文献】 特開2008−138850(JP,A)
【文献】 特開2010−261505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C27/02
F01D 15/06
F01D 25/00
F01D 25/16
F16C 32/06
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の外周面の少なくとも一部を取り囲む軸受部と、
前記軸受部の外周側に第1の空隙を介して配置された支持部材と、
前記支持部材の外周側に第2の空隙を介して配置されるとともに、前記回転軸、前記軸受部、および前記支持部材を収容するカバー部材と、
前記第1の空隙および前記第2の空隙のそれぞれに配置された少なくとも1つ以上のOリングとを備える、エアタービン駆動スピンドル。
【請求項2】
前記軸受部、前記支持部材、および前記カバー部材の少なくともいずれか1つにおいて前記第1の空隙または前記第2の空隙に面する表面には、前記Oリングを係合させる少なくとも1つ以上の溝が形成されている、請求項1に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項3】
前記軸受部は、前記回転軸側に配置された軸受部材と、前記支持部材側に配置されたハウジング部材とを含む、請求項1または請求項2に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項4】
前記カバー部材および前記支持部材の少なくともいずれか一方に、前記第1の空隙および前記第2の空隙に連なる連通穴部が形成され、
前記連通穴部に気体を供給する供給部をさらに備え、
前記1つ以上のOリングは、前記回転軸のスラスト方向において前記連通穴部を挟むように前記第1の空隙および前記第2の空隙に配置された複数のシール用Oリングを含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項5】
前記1つ以上のOリングは、前記回転軸のスラスト方向において前記複数のシール用Oリングを挟むように配置された複数のダンパ用Oリングを含む、請求項4に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項6】
前記複数のシール用Oリングを構成する材料は、前記複数のダンパ用Oリングを構成する材料と異なる、請求項5に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項7】
前記複数のダンパ用Oリングのつぶし代は0.3mm未満である、請求項5または請求項6に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項8】
前記支持部材を構成する材料には、金属が含まれる、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項9】
前記支持部材を構成する材料には、樹脂が含まれる、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項10】
前記支持部材は前記軸受部を取り囲むように形成された環状部材であり、
前記支持部材における前記回転軸のスラスト方向での端部には、切れ込みが形成されている、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、精密加工機や静電塗装装置などに適用されるエアタービン駆動スピンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密加工機や静電塗装装置に用いられるエアタービン駆動スピンドルが知られている。たとえば、特開平9−72338号公報は、回転軸を回転可能に支持する軸受部材がハウジング内に保持されているスピンドルを開示している。特開平9−72338号公報では、ハウジングに対して軸受部材がOリングを介して支持されている。このようなOリングは、通常、ゴムなどの弾性体によって構成されている。Oリングは、スピンドルの回転軸が高速回転することにより発生する振動を吸収し、スピンドルの動作を安定させるといった機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−72338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、スピンドルが使用される静電塗装装置などは、溶剤雰囲気中で使用されるため、上述したOリングについて耐溶剤性に優れた材料を用いる必要がある。このような耐溶剤性に優れた材料としては、パーフロロエラストマーが知られている。パーフロロエラストマーは、耐溶剤性に優れているが、Oリングに一般的に用いられるゴム材料に比べて硬度が高い。その結果、パーフロロエラストマー製のOリングは、外力に対する変形量が一般的なOリングに比べて小さい。このため、回転軸の回転に起因する振動をOリングにより十分に吸収することができず、結果的にスピンドルの回転軸を安定して高速回転させることができない場合があった。
【0005】
また、パーフロロエラストマーに限らず、スピンドルの使用環境に応じてOリングの材料を適宜選択することが考えられる。このような場合に、材料の選択の自由度を高める観点から、一般的なOリングの材料よりも高硬度の材料からなるOリングを用いた場合でも十分に回転軸の回転による振動を吸収でき、回転軸を安定して高速回転させることができるスピンドルが求められている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、回転軸を安定して高速回転させることができるエアタービン駆動スピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアタービン駆動スピンドルは、回転軸と、軸受部と、支持部材と、カバー部材と、少なくとも1つ以上のOリングとを備える。軸受部は、回転軸の外周面の少なくとも一部を取り囲む。支持部材は、軸受部の外周側に第1の空隙を介して配置されている。カバー部材は、支持部材の外周側に第2の空隙を介して配置されるとともに、回転軸、軸受部、および支持部材を収容する。少なくとも1つ以上のOリングは、第1の空隙および第2の空隙のそれぞれに配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転軸を安定して高速回転させることができるエアタービン駆動スピンドルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドルの断面模式図である。
図2】本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドルにおける部分断面模式図である。
図3】本実施の形態に係るダンパリングの全体構成を示す概略図である。
図4】本実施の形態に係る第1の溝および第2の溝を示す断面模式図である。
図5図4に示す本実施の形態に係る第2の溝の拡大断面模式図である。
図6】参考例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝および第2の溝において軸受用気体が供給されていない場合の断面模式図である。
図7図6に示す参考例に係る第2の溝の拡大断面模式図である。
図8】参考例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝および第2の溝において軸受用気体が供給されている場合の断面模式図である。
図9図8に示す参考例に係る第2の溝の拡大断面模式図である。
図10】第1の変形例に係るダンパリングを備えたエアタービン駆動スピンドルにおける部分断面模式図である。
図11】第1の変形例に係るダンパリングの全体構成を示す概略図である。
図12】第2の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝および第2の溝を示す断面模式図である。
図13図12に示す第2の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第2の溝の拡大断面模式図である。
図14】第3の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝および第2の溝を示す断面模式図である。
図15図14に示す第3の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第2の溝の拡大断面模式図である。
図16】第4の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝および第2の溝を示す断面模式図である。
図17図16に示す第4の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第2の溝の拡大断面模式図である。
図18】第5の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルにおける部分断面模式図である。
図19】第6の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルにおける部分断面模式図である。
図20】参考例に係るエアタービン駆動スピンドルの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰り返さない。
【0011】
(本願実施の形態)
<エアタービン駆動スピンドルの構成>
図1および図2を参照しながら、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200の断面模式図である。図2は、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200における部分断面模式図である。
【0012】
エアタービン駆動スピンドル200は、回転軸1と、回転軸1をラジアル方向に支持するジャーナル軸受7と、回転軸1をスラスト方向(軸方向)に支持するスラスト軸受8と、回転軸1をジャーナル軸受7およびスラスト軸受8を介して回転可能に支持する軸受部2と、軸受部2の外周側に位置するダンパリング50と、ダンパリング50の外周側に位置するカバー部材5と、軸受部2とダンパリング50との間およびダンパリング50とカバー部材5との間に配置された複数のOリング24となどを含む。
【0013】
カバー部材5には、スラスト方向において回転軸1を覆うようにノズル板6が固定して設けられている。カバー部材5は、軸受部2に含まれるハウジング3の外周面3aの少なくとも一部を取り囲む。ノズル板6には、駆動用気体供給部(図示せず)が設けられている。ジャーナル軸受7およびスラスト軸受8は、たとえば静圧気体軸受として構成されている。
【0014】
回転軸1は、円筒形状を有する軸部1bと、軸部1bに対してラジアル方向に延びるように形成されているスラスト板部1cとを含む。スラスト板部1cは、軸部1bのスラスト方向における一方の端部に結合されている。以下、スラスト方向においてスラスト板部1cが設けられている側を「後側」、軸部1bのスラスト方向において後側と反対側を「前側」という。
【0015】
軸部1bおよびスラスト板部1cには、スラスト方向に延びる貫通孔17が形成されている。エアタービン駆動スピンドル200が静電塗装機用に構成されている場合には、回転軸1の前側の端部に円錐形のカップ80が取り付けられる。貫通孔17の内部にはカップ80に塗料を供給するための塗料供給管45が配置される。スラスト板部1cには、回転翼15および回転翼15の内周側に配置される被回転検出部(図示せず)が形成されている。
【0016】
回転軸1は、軸部1bの一部が軸受部2に収容されている。軸受部2は、ハウジング3と軸受スリーブ4とを含む。なお、ハウジング3は、「ハウジング部材」の一実施形態に対応する。軸受スリーブ4は、「軸受部材」の一実施形態に対応する。軸受スリーブ4は、回転軸1の軸部1bの外周面1aおよびスラスト板部1cの前側の平面の各一部に面しており、軸部1bの一部を囲むように形成されている。ハウジング3は、ラジアル方向において軸受スリーブ4よりも外周側に配置され、軸受スリーブ4に固定されている。ハウジング3は、軸受スリーブ4の外周側から、軸部1bの外周面1aの少なくとも一部を取り囲む。
【0017】
回転軸1のスラスト板部1cは、ラジアル方向において外周側に位置する領域が回転中心軸側(中央側)に位置する領域(厚肉部)よりもスラスト方向における厚みが薄い薄肉部を有している。厚肉部は、貫通孔17を囲むように形成されている。薄肉部は、厚肉部を囲むように形成されている。
【0018】
回転翼15は、スラスト板部1cの薄肉部上において、後側に位置する面からスラスト方向に延びるように形成されている。回転軸1は、回転翼15が駆動用気体供給部から噴出された気体(駆動用気体ともいう)を受けることにより回転可能に設けられている。複数の回転翼15は、回転軸1の回転方向に互いに間隔を隔てて設けられている。好ましくは、複数の回転翼15において隣り合う回転翼15は等間隔に設けられている。複数の回転翼15は、スラスト板部1cの外周に沿って配置されている。複数の回転翼15のスラスト方向に垂直な断面形状は任意の形状であればよい。たとえば、当該断面形状は、回転方向において前方に位置して回転方向に凸状に形成されている前方曲面部と、回転方向において後方に位置して回転方向に凸状に形成されている後方曲面部とを有している。
【0019】
スラスト板部1cにおいて、薄肉部と厚肉部との境界領域は、スラスト方向における厚みがゆるやかに変化するように設けられている。つまり、スラスト板部1cの後側に位置する面は、薄肉部と厚肉部との間に曲面を有している。回転翼15における後側に位置する部分と厚肉部における後側に位置する部分とは、ラジアル方向に延びる同一面上に形成されている。
【0020】
スラスト板部1cの厚肉部において後側の面上には、被回転検出部(図示せず)が形成されている。被回転検出部は、回転軸1の回転を光学的に検出するための任意の構成を採用できるが、たとえば、回転方向において分割される複数の領域ごとに異なる反射率となるように表面処理が施されていてもよい。具体的には、厚肉部において後側に位置する面のうち、回転軸1の回転方向における半分の領域が他の半分の領域よりもレーザ光などの光が照射されたときに反射光の強度が高くなるように設けられている。
【0021】
供給部100は、たとえば、エアコンプレッサであり、供給口9から気体(軸受用気体ともいう)を供給(噴出)する。カバー部材5、ダンパリング50、ハウジング3、および軸受スリーブ4には、ラジアル方向の一部に軸受用供給路10が形成されている。軸受用供給路10は、カバー部材5とダンパリング50との間に形成された空隙43、およびダンパリング50とハウジング3との間に形成された空隙44のそれぞれと連通穴部25を介して連通している。供給部100によって供給口9から供給された軸受用気体は、軸受用供給路10を経由して空隙43および空隙44のそれぞれへと流れ込む。軸受用気体は、たとえば圧縮空気である。なお、空隙44は、「第1の空隙」の一実施形態に対応する。空隙43は、「第2の空隙」の一実施形態に対応する。
【0022】
軸部1bと軸受スリーブ4との間には、空隙41が形成されている。スラスト板部1cと軸受スリーブ4との間には、空隙42が形成されている。軸受用供給路10は、空隙41および空隙42のそれぞれと連通している。軸受用供給路10において空隙41および空隙42と連通されている部分の孔径は供給口9の孔径よりも小さいことによりいわゆる絞りが形成されている。供給部100から軸受用気体が供給されると、軸受用供給路10および空隙41〜44に軸受用気体が充填する。
【0023】
ジャーナル軸受7は、供給部100から軸受用供給路10に供給された軸受用気体が空隙41に供給されることにより構成される。スラスト軸受8は、供給部100から軸受用供給路10に供給された軸受用気体が空隙42に供給されることによる押圧力と、磁石16の吸引力とにより構成される。
【0024】
ハウジング3には、スラスト板部1cとスラスト方向において対向する領域に磁石16が配置されている。磁石16はスラスト板部1cに対して磁気力を印加する。磁石16は、たとえば永久磁石である。磁石16はスラスト板部1cを磁気力により吸引する。磁石16は、たとえば回転翼15が形成されているスラスト板部1cの薄肉部とスラスト方向において対向するように設けられている。磁石16は、スラスト方向から見たときの平面形状がたとえば円環形状である。
【0025】
カバー部材5は、スラスト方向においてノズル板6と固定されている。ノズル板6は、回転軸1において軸受部2およびカバー部材5に収容されていない部分(スラスト板部1cのラジアル方向における外周端面およびスラスト板部1cの後側に位置する面)を囲むように形成されている。
【0026】
ノズル板6は、回転軸1よりも後側に配置されている。ノズル板6の内部には、駆動用給気路13および駆動用給気ノズル14が形成されている。駆動用給気路13は、その一方端がノズル板6の内周面上の駆動用気体給気口12と連通し、他方端が駆動用給気ノズル14に連通している。駆動用給気路13および駆動用給気ノズル14は、回転翼15に駆動用気体を供給させるための流通路である。駆動用気体は、たとえば圧縮空気である。駆動用気体給気口12から駆動用気体を供給する駆動用気体供給部(図示せず)は、供給部100と兼用するようにしてもよいし、供給部100とは異なるものであってもよい。
【0027】
駆動用給気ノズル14は、回転翼15に対し、ラジアル方向において回転軸1の外周側から内周側に向かって駆動用気体を噴出可能である。駆動用給気路13および駆動用給気ノズル14は、回転方向において互いに間隔を隔てて複数形成されていてもよい。つまり、駆動用給気路13および駆動用給気ノズル14は、回転方向に任意の間隔を隔てて設けられている回転翼15に対して、同一の回転方向に同時に駆動用気体を供給可能であってもよい。
【0028】
ノズル板6には、貫通孔17よりもラジアル方向の外周側に回転センサ挿入口18が形成されている。回転センサ挿入口18は、スラスト板部1cに設置された被回転検出部とスラスト方向において対向するように形成されている。回転センサ挿入口18は、被回転検出部に対してレーザ光などの光を照射し、反射光を得るための回転センサを配置するために形成されている。このような構成を備えることにより、エアタービン駆動スピンドル200では回転軸1の回転数を光学的に測定することができる。
【0029】
排気孔11は、ノズル板6において、駆動用給気路13および駆動用給気ノズル14よりもラジアル方向における中央側に形成されている。排気孔11は、排気空間20からノズル板6の外部に連通するように形成されている。
【0030】
軸受用供給路10は、連通穴部25を含む。第1の溝31および第2の溝32は、ダンパリング50の外周側(カバー部材5側)の面に、スラスト方向において連通穴部25を挟むように配置されている。第3の溝33および第4の溝34は、ダンパリング50の内周側(軸受部2側)の面に、スラスト方向において連通穴部25を挟むように配置されている。連通穴部25は、空隙43,44と連通しているため、供給部100によって供給口9から供給された軸受用気体が、連通穴部25を介して空隙43,44へと流れ込む。
【0031】
具体的には、供給部100によって供給口9から供給された軸受用気体は、軸受用供給路10を通過してやがて連通穴部25に到達する。軸受用気体の一部は、連通穴部25を介して空隙43へと流れ込み、第1の溝31および第2の溝32へと到達する。第1の溝31および第2の溝32へと到達した軸受用気体は、第1の溝31および第2の溝32のそれぞれに係合するOリング24を圧力の低い方向(軸受用供給路10から離れる方向)に押し出す。第1の溝31および第2の溝32のそれぞれに係合するOリング24は、軸受用気体によって押し出されることで、ダンパリング50の第1の溝31および第2の溝32の内周面とカバー部材5の内周面5aとに密着し、軸受用気体の流路を遮断する。
【0032】
また、軸受用気体の一部は、連通穴部25を介して空隙44へと流れ込み、第3の溝33および第4の溝34へと到達する。第3の溝33および第4の溝34へと到達した軸受用気体は、第3の溝33および第4の溝34のそれぞれに係合するOリング24を圧力の低い方向(軸受用供給路10から離れる方向)に押し出す。第3の溝33および第4の溝34のそれぞれに係合するOリング24は、軸受用気体によって押し出されることで、ダンパリング50の第3の溝33および第4の溝34の内周面とハウジング3の外周面3aとに密着し、軸受用気体の流路を遮断する。
【0033】
このように、供給部100から供給された軸受用気体は、Oリング24の存在によって空隙43内および空隙44内で滞留し、外部に漏れない。つまり、Oリング24は、シール(密封)性能を有する。
【0034】
<ダンパリングの形状>
ダンパリング50は、ラジアル方向における軸受部2の外周側において軸受部2を取り囲むように、ハウジング3の外周面3aに沿って周方向に設けられている。エアタービン駆動スピンドル200は、ダンパリング50を備えることにより、ラジアル方向に複数段階に分けてOリング24を配置させることができる。なお、ダンパリング50は、「支持部材」の一実施形態に対応する。
【0035】
図3を参照しながら、本実施の形態に係るダンパリング50の形状について説明する。図3は、本実施の形態に係るダンパリング50の全体構成を示す概略図である。図3に示すように、ダンパリング50は、中空の環状部材であり、基礎部分55には、軸受用供給路10を構成し、かつ連通穴部25にも対応する穴56が複数形成されている。
【0036】
図1図3に示すように、ダンパリング50の基礎部分55には、ラジアル方向における軸受部2側(内周側)の面およびカバー部材5側(外周側)の面のそれぞれに、少なくとも1つ以上の溝が形成されている。本実施の形態においては、エアタービン駆動スピンドル900の重心29よりも後側、すなわち基礎部分550の連通穴部25(穴56)よりも後側における外周側の面に第1の溝31が形成される。さらに、当該後側における内周側の面に第3の溝33が形成されている。また、エアタービン駆動スピンドル900の重心29よりも前側、すなわち基礎部分550の連通穴部25(穴56)よりも前側における外周側の面に第2の溝32が形成される。さらに、当該前側における内周側の面に第4の溝34が形成されている。
【0037】
各溝31〜34は、回転軸1の回転中心軸の周りを周回するようにダンパリング50の表面に形成された環状溝である。図1および図2に示すように、各溝31〜34のそれぞれには、Oリング24が係合される。
【0038】
第1の溝31および第2の溝32のそれぞれに係合されたOリング24は、その断面の直径が第1の溝31および第2の溝32のそれぞれの深さよりも長く、かつカバー部材5の内周面5aと接触する。これにより、第1の溝31および第2の溝32のそれぞれに係合されたOリング24によって、ダンパリング50と、カバー部材5との間に空隙43が形成される。ダンパリング50と、カバー部材5とは、空隙43の存在によって直接接触しない。
【0039】
第3の溝33および第4の溝34のそれぞれに係合されたOリング24は、その断面の直径が第3の溝33および第4の溝34のそれぞれの深さよりも長く、かつハウジング3の外周面3aと接触する。これにより、第3の溝33および第4の溝34のそれぞれに係合されたOリング24によって、ダンパリング50と、ハウジング3との間に空隙44が形成される。ダンパリング50と、ハウジング3とは、空隙44の存在によって直接接触しない。
【0040】
第3の溝33および第4の溝34のそれぞれに係合されたOリング24によって、軸受ユニット(回転軸1および軸受部2など)が、ダンパリング50を介してカバー部材5に対して保持される。
【0041】
Oリング24は、弾力性を有する部材である。エアタービン駆動スピンドル200が作動すると、カップ80が装着された回転軸1の先端側での振れ回りにより振動が発生する。各溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24に振動が伝わると、その弾力性から、Oリングが変形する。Oリング24は、変形することで振動を吸収することができる。このように、Oリング24は、減衰性能を有する。
【0042】
ダンパリング50を構成する材料としては、ステンレスなどの金属が用いられる。
<溝の形状>
次に、図4および図5を参照しながら、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200が有する各溝31〜34の形状について具体的に説明する。図4は、本実施の形態に係る第1の溝31および第2の溝32を示す断面模式図である。図5は、図4に示す本実施の形態に係る第2の溝32の拡大断面模式図である。なお、図4および図5は、第1の溝31および第2の溝32の形状を説明するための模式図であり、説明を簡略化するためダンパリング50の基礎部分55の厚みおよび溝間の距離は、実際と異なる。
【0043】
また、ここでは、図4および図5を参照しながら、第2の溝32の形状について説明するが、第1の溝31も同様の形状を有し、同様の作用効果を生じる。また、第3の溝33および第4の溝34も、第1の溝31および第2の溝32と同様の形状を有し、同様の作用効果を生じる。具体的には、図2に示すように、第3の溝33の形状は、第1の溝31の形状をダンパリング50の内周側に反転させたものと同じであり、第4の溝34の形状は、第2の溝32の形状をダンパリング50の内周側に反転させたものと同じである。
【0044】
図4および図5に示すように、第2の溝32は、第1の側壁32aと、第2の側壁32bと、底部32c(底面)と、面取部32dとを含む。連通穴部25(具体的には軸受用供給路10と空隙43との交差部P)から第1の側壁32aまでの距離L1は、連通穴部25から第2の側壁32bまでの距離L2よりも長い。換言すれば、供給部100によって供給された軸受用気体の流れ(図5の矢印α参照)の下流側の側壁が第1の側壁32aとなり、軸受用気体の流れの上流側の側壁が第2の側壁32bとなる。
【0045】
底部32cから第1の側壁32aの上端(頂部32e)までの高さH5は、底部32cから第2の側壁32bの上端までの高さH4よりも低い。このように、高さH5を高さH4よりも低くするために、本実施形態では、第1の側壁32aの上側に連なる面取部32dが形成される。図4および図5の例では、面取部32dはテーパ面である。テーパ面が形成されることにより、空間Aが形成される。
【0046】
図5に示す距離H2は、ラジアル方向において、Oリング24が他部品(ダンパリング50の基礎部分55)と接触していない範囲(距離)を示す。換言すると、距離H2は、第1の側壁32aのうち、カバー部材5の内周面5aと最も近い箇所(つまり、頂部32e)からカバー部材5の内周面5aまでの距離でもある。距離H3は、底部32cからカバー部材5の内周面5aまでの距離を示す。
【0047】
<エアタービン駆動スピンドルの動作>
次に、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200の動作について説明する。
【0048】
エアタービン駆動スピンドル200が動作すると、駆動用気体は、駆動用気体給気口12から駆動用給気路13を通じて駆動用給気ノズル14に供給される。駆動用給気ノズル14に供給された駆動用気体は、回転軸1のスラスト板部1cの回転翼15に向けて、スラスト板部1cの接線方向(回転方向)とほぼ平行な方向に沿って噴出される。回転翼15は噴出された駆動用気体を後方曲面部において受ける。このとき、回転翼15に噴出された駆動用気体は後方曲面部の外周側に到達し、後方曲面部に沿って流れることで向きを変えられ、排気空間20を経由して排気孔11から外部に排気される。回転翼15には駆動用気体に与えた力の反力が作用し、回転軸1のスラスト板部1cは回転トルクを与えられる。これにより、回転軸1は回転方向に沿って回転する。回転軸1の回転数は、たとえば数万rpm以上とすることができる。このため、エアタービン駆動スピンドル200は、たとえば静電塗装機用スピンドルに好適である。
【0049】
(参考例)
以下、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200が奏する作用効果を説明することを前提として、参考例に係るエアタービン駆動スピンドル900の構成について説明する。図20は、参考例に係るエアタービン駆動スピンドル900の断面模式図である。なお、以下では、参考例に係るエアタービン駆動スピンドル900について、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200と異なる構成および動作のみ説明する。
【0050】
図20に示すように、ハウジング3の外周面3aには、第1の溝61と、第2の溝62とが形成されている。第1の溝61および第2の溝62は、回転軸1の回転中心軸の周りを周回するようにハウジング3の外周面3aに形成された環状溝である。第1の溝61は、回転軸1のスラスト方向において、エアタービン駆動スピンドル900の重心29よりも後側に配置される。第2の溝62は、回転軸1のスラスト方向において、重心29よりも前側に配置される。
【0051】
第1の溝61および第2の溝62のそれぞれには、Oリング24が係合される。第1の溝61および第2の溝62のそれぞれに係合されたOリング24は、その断面の直径が第1の溝61および第2の溝62のそれぞれの深さよりも長く、かつカバー部材5の内周面5aと接触する。これにより、第1の溝61および第2の溝62のそれぞれに係合されたOリング24によって、ハウジング3と、カバー部材5との間に空隙67が形成される。ハウジング3と、カバー部材5とは、空隙67の存在によって直接接触しない。
【0052】
第1の溝61および第2の溝62のそれぞれに係合されたOリング24によって、軸受ユニット(回転軸1および軸受部2など)が、カバー部材5に対して保持される。
【0053】
上記のような構成を備える参考例に係るエアタービン駆動スピンドル900においては、回転軸1が回転することによって発生した振動が、軸受スリーブ4、ハウジング3、およびOリング24の順に伝わる。このとき、回転軸1からの振動は、ゴム材料を含むOリング24の弾性力によって減衰する。このため、回転軸1の回転によって発生する振動がラジアル方向に伝わったとしても、回転軸からの振動は、Oリング24の弾力性によって減衰する。その結果、ハウジング3の外周面3aとカバー部材5の内周面5aとが極力接触しないため、回転軸1を安定して高速回転させることができる。
【0054】
ここで、エアタービン駆動スピンドル900は、溶剤雰囲気中で使用されるため、Oリング24について耐溶剤性に優れた材料を用いることが好ましい。このような耐溶剤性に優れた材料としては、パーフロロエラストマーが知られている。パーフロロエラストマーは、耐溶剤性に優れているが、Oリング24に一般的に用いられるフッ素ゴムおよびニトリルゴムなどのゴム材料に比べて硬度が高い。このため、Oリング24の材料にパーフロロエラストマーを用いた場合、参考例に係るエアタービン駆動スピンドル900のような構成では、回転軸1の回転に起因する振動をOリング24により十分に吸収することができない場合がある。
【0055】
そこで、上述した本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200においては、回転軸1からの振動が複数段階に亘って減衰するように、ダンパリング50によってラジアル方向にOリング24が複数段階に分けて配置されている。
【0056】
<作用効果>
図1および図2に示すように、上記のような構成を備える本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200においては、軸受部2を介して伝わる回転軸1からの振動は、まずハウジング3の外周側の面とダンパリング50の内周側の面との間に位置する空隙44に配置されたOリング24の弾力性によって減衰し、次に、ダンパリング50を伝わることで減衰し、さらに、ダンパリング50の外周側の面とカバー部材5の内周側の面との間に位置する空隙43に配置されたOリング24の弾力性によって減衰する。このように、回転軸1からの振動が複数段階に亘って減衰するため、エアタービン駆動スピンドル200は、回転軸1を安定して高速回転させることができる。
【0057】
その結果、Oリング24の材料として、フッ素ゴムおよびニトリルゴムなどのゴム材料はもちろんのこと、ゴム材料に比べて硬度が高いが耐溶剤性に優れているパーフロロエラストマーを用いた場合でも、エアタービン駆動スピンドル200は、回転軸1を安定して高速回転させることができる。
【0058】
図1および図2に示すように、連通穴部25を挟み込むように配置された各溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24によって連通穴部25から供給される駆動用気体を遮断することができる。
【0059】
なお、ダンパリング50を構成する材料としては、より縦弾性係数の小さい材料を用いてもよい。ダンパリング50を構成する材料に縦弾性係数の小さい材料を含めた場合、ダンパリング50における外力に対する変形量を大きくすることができ、ダンパリング50がひずみ易くなる。よって、ダンパリング50を構成する材料としては、ステンレスよりも縦弾性係数の小さい金属であるアルミニウムが用いられる方が好ましい。さらに、ダンパリング50を構成する材料としては、ステンレスおよびアルミニウムなどの金属よりも縦弾性係数の小さい樹脂が用いられる方が好ましい。ダンパリング50を構成する材料に樹脂を含めた場合、ダンパリング50を構成する材料に金属を含めた場合よりもダンパリング50がひずみ易くなるため、ダンパリング50によって、回転軸1からの振動をより減衰させることができる。
【0060】
また、ダンパリング50のスラスト方向における厚みを、できる限り薄くしてもよい。たとえば、ダンパリング50の基礎部分55の厚みを、各溝31〜34を形成できる最小限の厚みにしてもよい。このようにすれば、ダンパリング50における外力に対する変形量を大きくすることができ、ダンパリング50がひずみ易くなるため、ダンパリング50によって、回転軸1からの振動をより減衰させることができる。
【0061】
供給部100から軸受用供給路10に供給された軸受用気体は、連通穴部25を介して、矢印αの向き(図5参照)で空隙43に供給される。空隙43に軸受用気体が供給されると、図4および図5に示すように、Oリング24は、軸受用気体(圧縮空気)の影響により圧力の低い方向(連通穴部25から離れる方向)に押し出される。Oリング24が、圧力の低い方向に押し出されると、Oリング24は、第1の側壁32aに押しつけられる(圧接される)ことにより変形する。そうすると、Oリング24の一部分24aが、当該一部分24aの表面が拘束されることなく弾性力を有した状態で空間Aに移動する。
【0062】
つまり、Oリング24が第1の側壁32aに圧接された状態であっても、第1の側壁32aの高さH5が高さH4よりも相対的に低くなっているので、Oリング24の一部分24aの表面が拘束されることなく比較的自由に変形できる。よって、Oリング24が第1の側壁32aに圧接された状態であっても、Oリング24の一部分24aの体積を十分に大きくできる。したがって、軸受用気体が、空隙43に供給されても一部分24aの存在によりOリング24の弾性ストロークが確保されるため、Oリング24の減衰性能が確保される。
【0063】
ここで、図6図9を参照しながら、参考例に係るエアタービン駆動スピンドル900において、ハウジング3とカバー部材5との間に形成された空隙67に軸受用気体が供給された場合について説明する。図6は、参考例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝61および第2の溝62において軸受用気体が供給されていない場合の断面模式図である。図7は、図6に示す参考例に係る第2の溝62の拡大断面模式図である。図8は、参考例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝61および第2の溝62において軸受用気体が供給されている場合の断面模式図である。図9は、図8に示す参考例に係る第2の溝62の拡大断面模式図である。なお、図6図9においては、説明を簡略化するためハウジング3の厚みおよび溝間の距離は、実際と異なる。また、図7および図9に示す距離H1は、Oリング24が外径方向で他部品(ハウジング3)と接触していない範囲を示す。この範囲は、Oリング24が弾性力を有する範囲である。
【0064】
図7に示すように、Oリング24が係合されている第2の溝62の双方の側壁62a、62bの高さは同じである。したがって、供給部100から空隙43に軸受用気体が供給されたときには、本実施形態に係るエアタービン駆動スピンドル200と比較して、図7および図9に示すように、距離H1の減少量が大きい。距離H1の減少量は、「空隙43に軸受用気体が供給されていないときの距離H1(図7参照)」と「空隙43に軸受用気体が供給されたときの距離H1(図9参照)」との差分である。このように、距離H1の減少量が大きいことから、図9に示す軸受用気体が供給された場合の距離H1は小さくなり、その結果、Oリング24の弾性ストロークが小さくなる。したがって、参考例のエアタービン駆動スピンドル900では、供給部100から軸受用気体が供給されると、軸受用気体が供給されない場合よりも減衰性能が劣化する。
【0065】
これに対し、本実施形態のエアタービン駆動スピンドル200は、図5に示すように、第1の側壁32aの高さH5は、第2の側壁32bの高さH4よりも低い。したがって、供給部100から軸受用気体が供給されたときには、図5に示すように、参考例のエアタービン駆動スピンドル900と比較して、Oリング24の弾性ストロークを構成する一部分24aの大きさに対応する距離H2を距離H1(図9参照)よりも大きくすることができる。つまり、距離H2の減少量を低減させることができる。ここで、距離H2の減少量とは、「空隙43に軸受用気体が供給されていないときの距離H2」と「空隙43に軸受用気体が供給されたときの距離H2」との差分である。これにより、Oリング24の弾性ストロークの低減量を削減できることから、軸受用気体が供給された場合において、エアタービン駆動スピンドル200の減衰性能の劣化を抑制できる。
【0066】
また、第1の側壁32aの高さH5は、Oリング24の断面の半径とすることが好ましい。これにより、供給部100から軸受用気体が供給されたときに、エアタービン駆動スピンドル200の減衰性能の劣化を抑制できるとともに、Oリング24が第2の溝32から逸脱しないようにすることができる。
【0067】
(変形例)
以上、本発明における主な実施の形態を説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例について説明する。
【0068】
<第1の変形例に係るダンパリング>
図10および図11を参照しながら、第1の変形例に係るエアタービン駆動スピンドル300について説明する。図10は、第1の変形例に係るダンパリング150を備えたエアタービン駆動スピンドル300における部分断面模式図である。図11は、第1の変形例に係るダンパリング150の全体構成を示す概略図である。なお、第1の変形例に係るエアタービン駆動スピンドル300は、以下で説明する構成以外の構成について、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200が備える構成と同様の構成を備える。
【0069】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200は、ダンパリング50に、第1の溝31、第2の溝32、第3の溝33、および第4の溝34といった4つの溝が形成されており、各溝31〜34のそれぞれにOリング24が係合するように構成されていた。しかし、ラジアル方向にOリング24が複数段階に分けて配置される構成であれば、溝の数およびOリング24の数は、4つに限らず、その他の数であってもよい。
【0070】
たとえば、図10および図11に示すように、変形例に係るダンパリング150には、第1の溝31、第2の溝32、第3の溝33、および第4の溝34に加えて、さらに、第5の溝35、第6の溝36、第7の溝37、および第8の溝38といった4つの溝が形成され、各溝31〜38のそれぞれにOリング24が係合する。なお、溝31〜34は、「ダンパ用溝」の一実施形態に対応する。溝35〜38は、「シール用溝」の一実施形態に対応する。
【0071】
具体的には、ダンパリング150に含まれる基礎部分550の連通穴部25(穴56)よりも後側における外周側(カバー部材5側)の面に第1の溝31および第5の溝35が形成され、当該後側における内周側(軸受部2側)の面に第3の溝33および第7の溝37が形成されている。ダンパリング150に含まれる基礎部分550の連通穴部25(穴56)よりも前側における外周側(カバー部材5側)の面に第2の溝32および第6の溝36が形成され、当該前側における内周側(軸受部2側)の面に第4の溝34および第8の溝38が形成されている。
【0072】
第5の溝35および第6の溝36は、ダンパリング150の外周側の面において、スラスト方向に連通穴部25を挟むように配置されている。さらに、第1の溝31および第2の溝32は、ダンパリング150の外周側の面において、スラスト方向に第5の溝35および第6の溝36を挟むように配置されている。
【0073】
第7の溝37および第8の溝38は、ダンパリング150の内周側の面において、連通穴部25を挟むように配置されている。さらに、第3の溝33および第4の溝34は、ダンパリング150の内周側の面において、第7の溝37および第8の溝38を挟むように配置されている。
【0074】
各溝35〜38は、各溝31〜34と同様に、回転軸1の回転中心軸の周りを周回するようにダンパリング150の表面に形成された環状溝である。図10に示すように、各溝35〜38のそれぞれには、各溝31〜34のそれぞれと同様に、Oリング24が係合される。
【0075】
第5の溝35および第6の溝36のそれぞれに係合されたOリング24は、その断面の直径が第5の溝35および第6の溝36の深さよりも長く、かつカバー部材5の内周面5aと接触する。これにより、第5の溝35および第6の溝36のそれぞれに係合されたOリング24によって、ダンパリング150と、カバー部材5との間に空隙43が形成される。ダンパリング150と、カバー部材5とは、空隙43の存在によって直接接触しない。
【0076】
第7の溝37および第8の溝38のそれぞれに係合されたOリング24は、その断面の直径が第7の溝37および第8の溝38の深さよりも長く、かつハウジング3の外周面3aと接触する。これにより、第7の溝37および第8の溝38のそれぞれに係合されたOリング24によって、ダンパリング150と、ハウジング3との間に空隙44が形成される。ダンパリング150と、ハウジング3とは、空隙44存在によって直接接触しない。
【0077】
このように、ダンパリング150に形成される溝の数を増やし、かつ各溝にOリング24を係合させると、軸受部2を介して伝わる回転軸1からの振動を多くのOリング24の弾性力によって減衰させることができる。
【0078】
さらに、図11に示すように、ダンパリング150の基礎部分550には、スラスト方向における前側の端部に切れ込み53が形成されている。また、ダンパリング50の基礎部分550には、スラスト方向における後側の端部に切れ込み54が形成されている。
【0079】
このように、ダンパリング150におけるスラスト方向の端部に切れ込み53,54が入っているため、ダンパリング150における外力に対する変形量を大きくすることができ、ダンパリング150がひずみ易くなる。よって、回転軸1からの振動をより減衰させることができる。なお、第1の変形例に係るダンパリング150に限らず、本実施の形態に係るダンパリング50においても、スラスト方向の端部に切れ込み53,54が入っていてもよい。
【0080】
ここで、本実施の形態に係るダンパリング50においては、各溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24に、減衰性能およびシール性能の役割を持たせるものであった。しかし、変形例に係るダンパリング150においては、連通穴部25に近い側に形成された各溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24に、減衰性能およびシール性能の役割を持たせる一方で、各溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24には減衰性能を主な特性として持たせてもよい。
【0081】
具体的には、供給部100によって供給口9から供給された軸受用気体の一部は、連通穴部25を介して空隙43へと流れ込み、第5の溝35および第6の溝36へと到達する。第5の溝35および第6の溝36へと到達した軸受用気体は、第5の溝35および第6の溝36のそれぞれに係合するOリング24を圧力の低い方向(軸受用供給路10から離れる方向)に押し出す。第5の溝35および第6の溝36のそれぞれに係合するOリング24は、軸受用気体によって押し出されることで、ダンパリング150の外周面とカバー部材5の内周面5aとに密着し、軸受用気体の流路を遮断する。このような第5の溝35および第6の溝36のシール性能によって、第5の溝35および第6の溝36よりも連通穴部25に遠い側に形成された第1の溝31および第2の溝32には、軸受用気体が到達しない。このため、第1の溝31および第2の溝32に係合されたOリング24は、減衰性能を主な特性として持つことになる。
【0082】
一方、供給部100によって供給口9から供給された軸受用気体の一部は、連通穴部25を介して空隙44へと流れ込み、第7の溝37および第8の溝38へと到達する。第7の溝37および第8の溝38へと到達した軸受用気体は、第7の溝37および第8の溝38のそれぞれに係合するOリング24を圧力の低い方向(軸受用供給路10から離れる方向)に押し出す。第7の溝37および第8の溝38のそれぞれに係合するOリング24は、軸受用気体によって押し出されることで、ダンパリング150の内周面と軸受部2の外周面3aとに密着し、軸受用気体の流路を遮断する。このような第7の溝37および第8の溝38のシール性能によって、第7の溝37および第8の溝38よりも連通穴部25に遠い側に形成された第3の溝33および第4の溝34には、軸受用気体が到達しない。このため、第3の溝33および第4の溝34に係合されたOリング24は、減衰性能を主な特性として持つことになる。
【0083】
このように、連通穴部25に近い側に形成されたシール用の溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24によって連通穴部25から供給される軸受用気体を遮断することができる一方で、連通穴部25から遠い側に形成されたダンパ用の溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24によって回転軸1からの振動を減衰することができる。
【0084】
連通穴部25に近い側に形成された溝35〜38は、重心29に近い位置に形成されるため、回転軸1が回転すると、溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24を中心としたすりこぎ運動により振動が発生する。一方、連通穴部25に遠い側に形成された溝31〜34は、溝35〜38よりも重心29から遠い位置に形成されるため、溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24には、溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24よりも大きなすりこぎ運動による振動が発生する。溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24には、軸受用気体の流動によって減衰性能が低下することがないため、このすりこぎ運動による振動を十分に吸収することができる。
【0085】
このように、連通穴部25に近い側に形成された溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24と、連通穴部25に遠い側に形成された溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24とで、シール用およびダンパ用といった役割を分けることで、それぞれのOリング24の性能を発揮させることができる。
【0086】
なお、図4および図5を参照しながら説明した本実施の形態に係るダンパリング50に形成された溝31〜34の形状は、主にシール用の溝に適用されると効果的であるため、変形例に係るダンパリング150に形成された溝35〜38の形状に適用させればよい。この場合、変形例に係るダンパリング150に形成された溝31〜34の形状には、必ずしもダンパリング50に形成された溝31〜34の形状を適用しなくてもよい。
【0087】
なお、ラジアル方向にOリング24が複数段階に分けて配置される構成であれば、溝の数およびOリング24の数は、上述したものに限らない。たとえば、ダンパリングの外周側にOリング24が係合する溝が1つ形成され、ダンパリングの内周側にOリング24が係合する溝が複数形成されていてもよい。あるいは、ダンパリングの外周側にOリング24が係合する溝が複数形成され、ダンパリングの内周側にOリング24が係合する溝が1つ形成されていてもよい。ダンパリングにおける軸受部2側の面およびカバー部材5側の面のそれぞれに、Oリング24が係合する溝が少なくとも1つ以上形成されていればよい。
【0088】
<Oリングの材料>
連通穴部25に近い側に形成された溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24と、連通穴部25に遠い側に形成された溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24とで、材料が異なるようにしてもよい。これにより、材料の選択の自由度が向上する。
【0089】
たとえば、シール用として設置される溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24は、外部との間に溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24が設置されているため、極力、外気に触れることがない。このため、溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24については、外気に含まれる溶剤を考慮した耐溶剤性を持たせる必要はなく、溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24よりも硬度が低くて弾力性のある材料を用いてもよい。
【0090】
たとえば、溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24には、パーフロロエラストマーよりも硬度の低いフッ素ゴムまたはニトリルゴムなどのゴム材料を用いてもよい。一方、溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24は外気に触れる場合があるため、溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24には、パーフロロエラストマーのような耐溶剤性に優れた材料を用いる方が好ましい。
【0091】
このように、連通穴部25に近い側に形成された溝35〜38のそれぞれに係合するOリング24と、連通穴部25に遠い側に形成された溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24とで、材料を異ならせることができるため、Oリング24に用いる材料の選択肢の幅を広げることができる。
【0092】
<つぶし代>
Oリング24のつぶし代の設計について説明する。つぶし代とは、Oリング24を溝に装着させた状態で圧縮させた場合におけるOリング24の圧縮距離のことである。たとえば、非圧縮状態におけるOリング24の断面の直径をD、圧縮状態におけるOリング24の断面の直径(たとえば、図5に示すH3)をHとすると、つぶし代Xは、DからHを減算した値で表される。
【0093】
Oリング24のつぶし代については、JIS規格およびメーカの仕様などにより規定値が設定されている。たとえば、Oリング24の断面の直径がD=2mmである場合には、つぶし代の規定値の下限はX=0.3mmに設定されている。
【0094】
ここで、変形例に係るダンパリング150の場合、連通穴部25に遠い側に形成された溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24は、シール性能を持たせることが必須ではないため、つぶし代を、規定値よりも小さくしてもよい。
【0095】
たとえば、つぶし代は、X=0.3mm未満としてもよい。また、つぶし代は、X=0mmであってもよい。この場合、溝に係合するOリング24は、圧縮することなく上側に位置する面に接触することになる。たとえば、第1の溝31に係合するOリング24は、圧縮することなく、カバー部材5の内周面5aに接触することになる。さらに、つぶし代は、X=0mm未満、すなわちマイナスであってもよい。この場合、溝に係合するOリング24は、圧縮することなく、かつ上側に位置する面に接触することもない。たとえば、第1の溝31に係合するOリング24は、圧縮することなく、かつカバー部材5の内周面5aに接触することもない。
【0096】
ただし、つぶし代をX=0mm未満とした場合、Oリング24の断面の直径Dは、係合する溝の深さよりも長い方が好ましい。つまり、Oリング24が溝に係合した状態では、Oリング24が少なくとも溝から突出している方が好ましい。Oリング24が溝から突出しないと、回転軸1からの振動が伝わったときにOリング24によって上手く振動を減衰させることができないためである。
【0097】
このように、連通穴部25に遠い側に形成された溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24のつぶし代を規定値よりも短い0.3mm未満にすることにより、Oリング24がダンパリング150および軸受部2を固定する力を抑制することができる。よって、溝31〜34のそれぞれに係合するOリング24の弾力性によって回転軸1からの振動をより減衰させることができる。
【0098】
<第2の変形例に係る溝>
図12および図13を参照しながら、第2の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルについて説明する。図12は、第2の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝331および第2の溝341を示す断面模式図である。図13は、図12に示す第2の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第2の溝341の拡大断面模式図である。なお、ここでは、図12および図13を参照しながら、第2の溝341について説明するが、第1の溝331も同様の形状を有し、同様の作用効果を生じる。また、第3の溝33および第4の溝34も、第2の変形例に係る第1の溝331および第2の溝341と同様の形状を有し、同様の作用効果を生じてもよい。なお、第2の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルは、以下で説明する構成以外の構成について、本実施の形態係るエアタービン駆動スピンドル200が備える構成と同様の構成を備える。
【0099】
図12および図13に示すように、第2の溝341は、第1の側壁341aと、第2の側壁341bと、底部341c(底面)と、切欠部341dとを含む。図11および図12に示す第2の溝341と、図1および図2に示す第2の溝34とが異なる点は、第2の溝34は面取部34dを含むのに対し、第2の溝341は切欠部(段部)341dを含む点である。このように、第2の溝341は、第1の側壁341aの上側に連なる切欠部341dを含む。この切欠部341dが形成されることにより、第1の側壁341aの高さH5は、第2の側壁341bの高さH4よりも低くなる。また、切欠部341dが形成されることにより、頂部341eが形成される。頂部341eからカバー部材5の内周面5aまでの距離を距離H2とする。
【0100】
このような構成であっても、空隙43に軸受用気体が供給されたときに、Oリング24の一部分24aが、当該一部分24aの表面が拘束されることなく弾性力を有した状態で移動する空間Bを形成できる。したがって、第2の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルは、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200と同様の効果を奏する。
【0101】
<第3の変形例に係る溝>
図14および図15を参照しながら、第3の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルについて説明する。図14は、第3の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝332および第2の溝342を示す断面模式図である。図15は、図14に示す第3の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第2の溝342の拡大断面模式図である。なお、ここでは、図14および図15を参照しながら、第2の溝342について説明するが、第1の溝332も同様の形状を有し、同様の作用効果を生じる。また、第3の溝33および第4の溝34も、第3の変形例に係る第1の溝332および第2の溝342と同様の形状を有し、同様の作用効果を生じてもよい。なお、第3の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルは、以下で説明する構成以外の構成について、本実施の形態係るエアタービン駆動スピンドル200が備える構成と同様の構成を備える。
【0102】
図14および図15に示すように、第2の溝342は、第1の側壁342aと、第2の側壁342bと、底部342c(底面)とを含む。以下では、ダンパリング50における基本部分55の外周面のうち、第1の側壁342aの近傍の領域を第1領域3bとし、第2の側壁342bの近傍の領域を第2領域3cとする。第2の変形例では、第1領域3bと底部342cとの最短距離P1は、第2領域3cと底部342cとの最短距離P2よりも短い。P1=H5であり、P2=H4となる。また、頂部342eからカバー部材5の内周面5aまでの距離を距離H2とする。第1の側壁342aの高さH5は、第2の側壁342bの高さH4よりも低くなる。
【0103】
このような構成であっても、空隙43に軸受用気体が供給されたときに、Oリング24の一部分24aが、当該一部分24aの表面が拘束されず弾性力を有した状態で移動する空間Cを形成できる。したがって、第3の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルは、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200と同様の効果を奏する。
【0104】
<第4の変形例に係る溝>
図16および図17を参照しながら、第4の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルについて説明する。図16は、第4の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第1の溝333および第2の溝343を示す断面模式図である。図17は、図16に示す第4の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルが有する第2の溝343の拡大断面模式図である。なお、ここでは、図16および図17を参照しながら、第2の溝343について説明するが、第1の溝333も同様の形状を有し、同様の作用効果を生じる。また、第3の溝33および第4の溝34も、第4の変形例に係る第1の溝333および第2の溝343と同様の形状を有し、同様の作用効果を生じてもよい。なお、第4の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルは、以下で説明する構成以外の構成について、本実施の形態係るエアタービン駆動スピンドル200が備える構成と同様の構成を備える。
【0105】
図16および図17に示すように、第2の溝343は、第1の側壁343aと、第2の側壁343bと、底部343c(底面)と、面取部343dとを含む。本実施形態の面取部34dは、テーパ面(平面)であるとしたが、第3の変形例の面取部343dは、図16に示すように曲面状の形状を有する。この面取部343dは、外側に膨らんだ形状であることが好ましい。面取部343dが形成されることにより、頂部343eが形成される。頂部343eからカバー部材5の内周面5aまでの距離を距離H2とする。
【0106】
このような構成であっても、空隙43に軸受用気体が供給されたときに、Oリング24の一部分24aが、当該一部分24aの表面が拘束されず弾性力を有した状態で移動する空間Dを形成できる。したがって、第4の変形例に係るエアタービン駆動スピンドルは、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル200と同様の効果を奏する。なお、面取部343dは、回転軸1方向にへこんだ形状であってもよい。
【0107】
なお、上述した変形例1〜3に係る溝の形状は、主にシール用の溝に適用されると効果的であるため、変形例に係るダンパリング150に形成された溝35〜38の形状に適用させてもよい。この場合、変形例に係るダンパリング150に形成された溝31〜34の形状には、変形例1〜3に係る溝の形状を適用しなくてもよい。
【0108】
<距離H2の範囲などについて>
次に、図5図13図15、および図17に示した距離H2の好ましい範囲について説明する。エアタービン駆動スピンドル200が、たとえば、静電塗装機用に用いられるサイズである場合には、距離H2は、0.5mm≦H2≦(H3)/2とすることが好ましい。距離H2の値をこのような範囲内の値とすることで、エアタービン駆動スピンドル200を安定して作動させることができる。
【0109】
また、第1の側壁32aの高さH5は、Oリング24の断面の半径以上としてもよい。これにより、供給部100から軸受用気体が供給されたときに、エアタービン駆動スピンドル200の減衰性能を維持できるとともに、Oリング24が第2の溝32から逸脱しないようにすることができる。
【0110】
<溝の形成箇所について>
上述した実施例においては、ハウジング3の外周側に配置されたダンパリング50,150において、ラジアル方向に複数段階に分けてOリング24を配置させる複数の溝が形成されていた。しかし、図18および図19に示すように、ラジアル方向に複数段階に分けてOリング24を配置させる複数の溝は、ダンパリングに形成されているものに限らない。
【0111】
図18は、第5の変形例に係るエアタービン駆動スピンドル400における部分断面模式図である。なお、第5の変形例に係るエアタービン駆動スピンドル400は、以下で説明する構成以外の構成について、本実施の形態係るエアタービン駆動スピンドル200が備える構成と同様の構成を備える。
【0112】
図18に示すように、ダンパリング250の基礎部分650には、溝が形成されていない。その一方で、カバー部材405のラジアル方向におけるダンパリング250側(内周側)の面に、第1の溝131および第2の溝132が形成されている。さらに、ハウジング403のラジアル方向におけるダンパリング250側(外周側)の面に、第3の溝133および第4の溝134が形成されている。第1の溝131、第2の溝132、第3の溝133、および第4の溝134のそれぞれには、Oリング24が係合される。
【0113】
また、図19は、第6の変形例に係るエアタービン駆動スピンドル500における部分断面模式図である。なお、第6の変形例に係るエアタービン駆動スピンドル500は、以下で説明する構成以外の構成について、本実施の形態係るエアタービン駆動スピンドル200が備える構成と同様の構成を備える。
【0114】
図19に示すように、ダンパリング250の基礎部分650には、溝が形成されていない。その一方で、カバー部材505のラジアル方向におけるダンパリング250側(内周側)の面に、第1の溝131、第2の溝132、第5の溝135、および第6の溝136が形成されている。そして、第5の溝135および第6の溝136は、スラスト方向において連通穴部25を挟むように配置され、さらに、第1の溝131および第2の溝132は、スラスト方向において第5の溝135および第6の溝136を挟むように配置されている。第5の溝135および第6の溝136のそれぞれには、シール用のOリング24が係合され、第1の溝131および第2の溝132のそれぞれダンパ用のOリング24が係合される。さらに、ハウジング503のラジアル方向におけるダンパリング250側(外周側)の面に、第3の溝133、第4の溝134、第7の溝137、第8の溝138が形成されている。そして、第7の溝137および第8の溝138は、スラスト方向において連通穴部25を挟むように配置され、さらに、第3の溝133および第4の溝134は、スラスト方向において第7の溝137および第8の溝138を挟むように配置されている。第7の溝137および第8の溝138のそれぞれには、シール用のOリング24が係合され、第3の溝133および第4の溝134のそれぞれには、ダンパ用のOリング24が係合される。
【0115】
なお、図18および図19に示す、第1の溝131、第2の溝132、第3の溝133、第4の溝134、第5の溝135、第6の溝136、第7の溝137、および第8の溝138のそれぞれは、上述した、本実施の形態に係る溝、第2の変形例に係る溝、第3の変形例に係る溝、および第4の変形例に係る溝のいずれかにおいて例示した溝と同じ形状を有していてもよい。たとえば、第2の溝132は、図5に示す本実施の形態に係る第2の溝32、図13に示す第2の変形例に係る第2の溝341、図15に示す第3の変形例に係る第2の溝342、図17に示す第4の変形例に係る第2の溝343のいずれかと同じ形状を有していてもよい。
【0116】
さらに、ダンパリングのラジアル方向におけるハウジング側(内周側)の面、ダンパリングのラジアル方向におけるカバー部材側(外周側)の面、ハウジングのラジアル方向におけるダンパリング250側(外周側)の面、およびカバー部材のラジアル方向におけるダンパリング側(内周側)の面のいずれか2以上の面に、Oリング24が係合する溝が形成されていてもよい。
【0117】
このように、ラジアル方向に複数段階に分けてOリング24を配置させる複数の溝は、ダンパリングとは異なる構成(たとえば、ハウジングおよびカバー部材など)に形成されてもよい。このように構成しても、ハウジングの外周側の面とダンパリングの内周側の面との間の空隙にOリング24が配置されるとともに、ダンパリングの外周側の面とカバー部材の内周側の面との間の空隙にOリング24が配置されることになる。
【0118】
上述した実施例においては、ダンパリング50,150において、ラジアル方向に2段階に分けてOリング24を配置させる複数の溝が形成されていた。しかし、ダンパリング50,150において、ラジアル方向に3段階以上に分けてOリング24を配置させる複数の溝が形成されていてもよい。
【0119】
たとえば、エアタービン駆動スピンドルは、ラジアル方向において複数のダンパリングを重ねて配置してもよい。そして、複数のダンパリング間において形成された空隙にOリング24を配置してもよい。このようにすれば、軸受部2を介して伝わる回転軸1からの振動は、まずハウジング3と第1のダンパリングとの間の空隙に配置されたOリング24の弾力性によって減衰し、次に、第1のダンパリングを伝わることで減衰し、次に、第1のダンパリングと第2のダンパリングとの間の空隙に配置されたOリング24の弾力性によって減衰し、次に、第2のダンパリングを伝わることで減衰し、さらに、第2のダンパリングとカバー部材5との間の空隙に配置されたOリング24の弾力性によって減衰する。これにより、より回転軸を安定して高速回転させることができる。
【0120】
また、上述した第1のダンパリングと第2のダンパリングとは、一体的に一つの部材として構成されていてもよい。たとえば、複数のダンパリングが片持ち梁のように一体的に1つの部材として構成され、各ダンパリング間に位置する空隙にOリングが配置されてもよい。
【0121】
<切れ込みについて>
上述した実施例においては、ダンパリング150におけるスラスト方向の両側の端部に切れ込み53,54が形成されていた。しかし、ダンパリングにおけるスラスト方向の一方の端部のみに切れ込みが形成されていてもよい。あるいは、切れ込みが形成されていないものであってもよい。なお、ダンパリングにおける外力に対する変形量を大きくすることができる点からすると、ダンパリングにおけるスラスト方向の両側の端部に切れ込み53,54が形成されている方が好ましい。
【0122】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、静電塗装装置などに用いられるエアタービン駆動スピンドルに特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0124】
1 回転軸、2 軸受部、3 ハウジング、4 軸受スリーブ、5 カバー部材、6 ノズル板、7 ジャーナル軸受、8 スラスト軸受、9 供給口、10 軸受気体供給路、11 排気孔、12 駆動用気体給気口、13 駆動用給気路、14 駆動用給気ノズル、15 回転翼、16 磁石、17 貫通孔、18 回転センサ挿入口、20 排気空間、24 Oリング、25 連通穴部、31 第1の溝、32 第2の溝、33 第3の溝、34 第4の溝、50 ダンパリング、53,54 切れ込み、55 基礎部分、56 穴、80 カップ、100 供給部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
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