(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276811
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】高度計測装置及び該高度計測装置を含む携帯物
(51)【国際特許分類】
G01L 7/12 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
G01L7/12
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-154314(P2016-154314)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-44690(P2017-44690A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】15182364.8
(32)【優先日】2015年8月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フェッリ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ルボー,ニコラ
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−089209(JP,U)
【文献】
実開昭57−147736(JP,U)
【文献】
特開2005−300186(JP,A)
【文献】
特開平07−146198(JP,A)
【文献】
実開昭60−123613(JP,U)
【文献】
特開昭49−060277(JP,A)
【文献】
特開昭55−072837(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/090944(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00− 7/14
G01C 5/06
G04G 21/02
G04B 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増減する計測気圧に応じて、直線方向に収縮、又は伸張するよう配設する気圧センサ(2)を含む高度計測装置(1)であり、前記気圧センサ(2)が変形する動きを、伝達システム(6)を介して、表示針(10)の枢動を駆動する作動システム(8)の、前記気圧センサ(2)が変形する直線方向に直交する平面における、枢動運動に変換し、前記表示針(10)は、円形目盛り(12)上で移動し、前記気圧センサ(2)を、前記高度計測装置の他の部品に対して、前記気圧センサが変形する直線方向に沿って、一方向に、又は反対方向に移動可能に配設する高度計測装置(1)であって、前記気圧センサ(2)を、カバー(78)と共にケース(80)を形成する支持体(68)に固定する座(66)に取付け、前記支持体(68)には、前記カバー(78)に設けられた第2の手段と協働する第1の手段が設けられ、前記高度測定装置(1)の他の構成要素に対する前記気圧センサ(2)の前記移動は、前記第1の手段と前記第2の手段との協働によって行われることを特徴とする、高度計測装置(1)。
【請求項2】
前記支持体(68)には、該支持体の外周に、前記カバー(78)の内周に設けた第2ねじ山(74)と協働する第1ねじ山(72)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の高度計測装置。
【請求項3】
前記気圧センサ(2)を、アネロイド式のものとし、部分真空下で、互いに組付ける上板(4a)及び下板(4b)の2枚から形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の高度計測装置。
【請求項4】
前記伝達システム(6)は、アーム(24)の形をした感知要素(22)を含み、前記アーム(24)の自由端部を介して、前記感知要素(22)は、前記気圧センサ(2)の前記上板(4a)に当接することを特徴とする、請求項3に記載の高度計測装置。
【請求項5】
前記感知要素(22)の前記アーム(24)は、該アーム(24)の自由端部に、キャスタ(26)を備え、前記キャスタ(26)を介して、前記感知要素(22)を、前記気圧センサ(2)の前記上板(4a)と接触状態にすることを特徴とする、請求項4に記載の高度計測装置。
【請求項6】
前記キャスタ(26)が当接するワッシャ(28)を、前記気圧センサ(2)の前記上板(4a)に固定することを特徴とする、請求項5に記載の高度計測装置。
【請求項7】
別の端部で、感知要素(22)を、前記気圧センサ(2)が変形する直線方向に直交する方向に延在する伝達軸(30)に固着することを特徴とする、請求項4乃至6の何れか一項に記載の高度計測装置。
【請求項8】
前記伝達軸(30)を、前記感知要素(22)によって前記気圧センサ(2)に伝達する前記気圧センサ(2)が変形する動きの影響を受けて回転するように配設すること、及び前記伝達軸(30)を、該伝達軸の長手方向軸に沿って移動するように取付けることを特徴とする、請求項7に記載の高度計測装置。
【請求項9】
前記伝達軸(30)に固着する伝達ピン(38)は、前記気圧センサ(2)が変形する動きを、作動システム(8)に伝えることを特徴とする、請求項7又は8に記載の高度計測装置。
【請求項10】
前記作動システム(8)は、ラック(40)を含み、該ラックに、前記伝達ピン(38)が、接点の直線部分(42)で当接することを特徴とする、請求項9に記載の高度計測装置。
【請求項11】
前記ラック(40)を、前記気圧センサ(2)が変形する方向に直交する平面において枢動するように取付け、前記ラック(40)は、前記表示針(10)を取付ける管(50)と一体化したカナ(48)と噛み合う円弧に、歯付きセクタ(46)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の高度計測装置。
【請求項12】
前記高度計測装置(1)は、前記感知要素(22)を、前記気圧センサ(2)と常に接触状態に維持するよう配設する弾性手段を含むことを特徴とする、請求項11に記載の高度計測装置。
【請求項13】
前記弾性手段は、前記ラック(40)に弾性復帰力を印加するコイルバネ(52)を含むことを特徴とする、請求項12に記載の高度計測装置。
【請求項14】
前記弾性手段は、前記表示針(10)を取付ける前記管(50)に係着する内側湾曲部(58)を有する渦巻状バネ(56)を含むことを特徴とする、請求項12に記載の高度計測装置。
【請求項15】
ボールベアリング(64)を、前記渦巻状バネ(56)と、前記表示針(10)を取付ける前記管(50)との間に配置することを特徴とする、請求項14に記載の高度計測装置。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか一項に記載の高度計測装置を含む携帯物。
【請求項17】
前記携帯物は、腕時計(18)であることを特徴とする、請求項16に記載の携帯物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度計測装置に関する。より具体的には、本発明は、アネロイド圧力センサを含む高度計測装置に関する。また、本発明は、本発明による高度計測装置を含む、携帯物、例えば、腕時計にも関する。
【背景技術】
【0002】
感知要素がアネロイド圧力計であるスカイダイビング用高度計を含む、多くの高度計測装置が知られている。かかる高度計は、時圏を、高度0mから4000mまで少しずつ変化させる文字盤を、通常含む。数個の市販されている高度計について本出願人が行った分析では、ヒステリシスが示された。この直線性に関する誤差は、かかる高度計のメカニズムにおける摩擦力の作用を算出することで、証明された。従って、高度が低下するに従い絶対高度計測誤差が低減するため、メカニズムは、高度を下げて(descent)設定されていた。これらの高度計は、計測誤差が、高度3000m超では増大することが観測されていたため、高度0〜3000mに設定された。その結果、高度0〜3000mでの最大誤差は、高度計の1つで21m、別の高度計では34mに達した。従って、分析したスカイダイビング用高度計では、約1%の計測誤りに繋がる直線性誤差があるのが分かった。また、アネロイドカプセルに関する特性の分散及びかかる高度計を設計した製造公差を考慮すると、事前の較正が必要である。上記種類の高度計の場合、この較正はかなり面倒である。較正は、特にこの作業のために訓練された者が手動で行い、海面気圧に等しい圧力で、次に、例えば、高度4000mでの圧力に等しい圧力で、その後再び高度0mでの圧力と等しい圧力で等、連続的に高度計が表示する値を読むことから成る。その都度、表示された高度が、環境気圧の値と対応するように、メカニズムを調整する。こうした連続を繰返し行うことで、徐々に高度計測誤差を低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、出来るだけヒステリシスの低い精確な高度計測装置を提供することによって、他の課題に加えて、上記課題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのために、本発明は、増減する計測気圧に応じて、直線方向に収縮、又は伸張するよう配設する気圧センサを含む高度計測装置であり、気圧センサが変形する動きを、伝達システムを介して、表示針の枢動を駆動する作動システムの、気圧センサが変形する直線方向に直交する平面における、枢動運動に変換し、該表示針は、円形目盛り上で移動し、気圧センサを、高度計測装置の他の部品に対して、気圧センサが変形する直線方向に沿って、一方向に、又は反対方向に移動可能に配設する高度計測装置であって、気圧センサを、カバーと共にケースを形成する支持体に固定する座に、取付けることを特徴とする、高度計測装置に関する。
【0005】
これらの特徴の結果として、本発明は、極めて高い計測精度を得られる高度計測装置を提供する。この顕著な結果は、本発明による高度計測装置の計測精度が、気圧センサにおける如何なる寸法のバラツキによっても影響を受けないことから、得られる。実際に、気圧センサの製造公差を、高度計測装置の他の部品に対して気圧センサの位置を精確に調整可能にすることによって、完全に相殺できる。
【0006】
こうした特徴の結果、本発明は、較正操作を大幅に簡素化した、所望であれば、自動化できる高度計測装置を提供する。この顕著な結果は、2設定操作、一方を海面に等しい気圧で、他方を、例えば、高度4000mに対応する圧力で実行する操作で、本発明による高度計測装置を十分に較正できることから、得られる。更に、この設定操作は、単に、2選択高度に対して、伝達ピンと、伝達軸と平行なラックとの間にある接点の線を設置し、次に、高度計測装置の他の部品に対する気圧センサの位置を調整することから成るが、この位置は、未経験のオペレータでも極めて簡単に目視によって、又はカメラによって確認できる。精確に較正を実行できることで、ヒステリシスが低い又は全くない高度計測装置を得られ、それにより表示針が直線的に移動可能になり、その結果、必要に応じて、文字盤を1回転以上させて、より高い高度を精確に計測できる。
【0007】
本発明の補足的な特徴によると、支持体は、該支持体の外周に、カバーの内周に設けた第2ねじ山と協働する第1ねじ山を備える。
【0008】
本発明の別の特徴によると、気圧センサは、アネロイド圧力計である。
【0009】
本発明の更に別の特徴によると、作動システムは、感知要素を含み、該感知要素は、気圧センサに当接し、気圧センサが変形する動きの影響を受けて回転するよう配設した伝達軸に固着される。
【0010】
本発明の更に別の特徴によると、感知要素を保持する伝達軸は、気圧センサが変形する直線方向に直交する方向に延在する。
【0011】
本発明の更に別の特徴によると、伝達軸に固着した伝達ピンは、気圧センサが変形する動きを、作動システムへ伝える。
【0012】
本発明の更に別の特徴によると、作動システムは、ラックを含み、該ラックは、表示針を取付ける真と一体化したカナと噛み合う円弧に、歯付きセクタを備える。
【0013】
本発明の更に別の特徴によると、高度計測装置は、感知要素を気圧センサに当接した状態を保つように配設する弾性手段を含む。
【0014】
第1変形例によると、弾性手段は、弾性復帰力をラックに印加するコイルバネを含む。
【0015】
第2変形例によると、弾性手段は、渦巻状バネを含み、該バネの内側湾曲部を、表示針を取付ける真に係着する。好適には、ボールベアリングを、渦巻状バネと、表示針を取付ける真との間に配置する。
【0016】
また、本発明は、本発明による高度計測装置を収容する、腕時計等の携帯物に関する。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明による高度計測装置の実施形態に関する以下の詳細な説明から、より明確になるであろう。この実施例は、非限定的な実例として、添付図を参照して、提示だけするものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による高度計測装置を収容する腕時計ケースの斜視図である。
【
図3】カバー及び支持体から形成し、本発明による高度計測装置を収容するケースの分解斜視図である。
【
図4】高度計測装置を収容する腕時計ケースの12時〜6時軸に沿った断面図である。
【
図5】感知要素を気圧センサと常に接触状態に保つように、コイルバネによって押圧した本発明による高度計測装置の斜視図である。
【
図6】感知要素を気圧センサと常に接触状態に保つように、渦巻き状バネによって押圧した本発明による高度計測装置の斜視図である。
【
図7】気圧センサを収容した
図3のケースに関する分解斜視図である。
【
図8】本発明による高度計測装置を較正するチャンバの分解斜視図である。
【
図9】本発明による高度計測装置を較正するために置くチャンバの斜視図である。
【
図10】気圧センサの高さを調整する駆動システムの分解斜視図である。
【
図11】密閉チャンバ内で、本発明の高度計測装置を固定するシステムの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、出来る限り精確で、高直線性を有する高度計測装置を提供するという一般的な創意に端を発する。この目的のために、本発明は、様々な構成要素の製造公差、特に気圧センサの製造公差を相殺でき、高度計測に関する高直線性を保証する高度計測装置を提供する。しかしながら、計測に関する直線性及び精度を確保するために、本発明の高度計測装置の操作中に発生する摩擦力を最小限に抑えることも目指した。最後に、本発明による高度計測装置の較正では、一つは、海面に対応する環境気圧で、もう一つは、選択した高度に対応する値より低い環境気圧で行う2計測のみが必要で、それにより、これらの較正操作を大幅に簡素化できる、又は必要に応じて較正操作を自動化することもできる。
【0020】
一般的な参照番号1で全体として示した、本発明による高度計測装置は、計測する環境気圧が変化する影響を受けて、直線方向に幾何学的に変形するよう構成した気圧センサ2を含む。
【0021】
図2で特に明示するように、気圧センサ2を、好適には、アネロイド圧力計とする。この気圧センサは、平坦で、丸い、通常は金属製筐体であり、溶接によって互いに組付ける、2枚の薄状波板、上板4a及び下板4bから形成する。このケースは、部分真空下で密封しているため、不浸透性である。気圧センサ2は、気圧変化に応じて収縮、又は伸張するが、収縮、又は伸張により2枚の上下板4a、4bを互いに接近又は離隔させる。気圧センサ2が変形する動きを、伝達システム6を介して、表示針10の枢動を駆動する作動システム8の、気圧センサ2が変形する直線方向に直交する平面で、枢動運動に変換する。
図1から分かるように、表示針10は、フランジ14に設けた、例えば一目盛りが50mで、0mから4000mの間で少しずつ変化する円形目盛り12に沿って移動する。フランジ14を、腕時計18のケース16に収容し、回転ベゼル20を用いてユーザが枢動できる。注目すべき点は、図示した実施例では、気圧センサ2を、垂直な直線方向に変形させる点である。
【0022】
伝達システム6は、アーム24の形をした感知要素22を含み、該アーム24には、該アームの自由端にキャスタ26を設け、該キャスタを介して感知要素22を気圧センサ2の上板4aと接触させた状態で設けるのが好ましいが、それに限らない。キャスタ26が当接するワッシャ28を、気圧センサ2の上板4aに固定する。ワッシャ28及びキャスタ26の目的は、感知要素22と気圧センサ2との間の摩擦力を出来る限り抑制し、その結果高度計測装置1の精度を向上させることである。
【0023】
感知要素22を、気圧センサ2が変形する直線方向に直交する方向に延在する伝達軸30に固着する。図示した実施例では、伝達軸30は、従って水平方向に延在する。
【0024】
端部に穴石32を設けた伝達軸30を、感知要素22が該伝達軸30に伝達する気圧センサ2が変形する動きの影響を受けて回転するように配設する。また、注目すべきは、伝達軸30を、調整ねじ34と弾性片36との間に遊びがない状態で軸方向に移動するように取付ける(
図3)点である。調整ねじ34への作用を通して、結果的に、伝達軸30の長手方向位置を調整可能になる。
【0025】
本発明の更に別の特徴によると、伝達軸30に固着した伝達ピン38は、気圧センサ2が変形する動きを作動システム8に伝える。
【0026】
より具体的には、作動システム8は、ラック40を含み、該ラックに、伝達ピン38が、接点の直線部分42で当接する。以下で分かるように、この直線部分42は、高度計測装置1の較正中、基準点として機能する。実際に、高度計測装置1は、直線接点部分42が、伝達軸30と平行に延在する場合に、海抜高度に正確に設定できる。伝達軸30の軸方向位置を調整して、これを達成する。
【0027】
ラック40を、垂直な枢軸44周りに、水平面で枢動するよう取付ける。ラック40は、アーチ形の歯付きセクタ46を備え、該セクタは、表示針10を取付けた管50と一体化したカナ48と噛み合う。管50を、時計ムーブメントの時車に枢着できる。しかしながら、その場合には、計測を歪めることがある摩擦力が観測される可能性がある。そのため、筒カナは、該筒カナと管50とが接触せずに、管50内を通るのが好ましい。
【0028】
本発明の更に別の特徴によると、高度計測装置1は、感知要素22を気圧センサ2と常に接触状態に保つように配設する弾性手段を含む。
【0029】
第1変形例(
図5)によると、弾性手段は、螺旋バネ又はコイルバネ52を含み、該バネの一端部を、スタッド54に固定し、他端部をラック40に固定して、該ラックに弾性復帰力を印加する。この弾性復帰力を、伝達ピン38及び伝達軸30を介して、感知要素22に伝達する。
【0030】
第2変形例(
図6)によると、弾性手段は、表示針10を取付けた管50に固定する内側湾曲部58、及び腕時計18のケース16と一体化したスタッド62に固定する外側湾曲部60を有する渦巻状バネ56を含む。好適だが、必須ではなく、表示針10を取付ける管50を、ボールベアリング64の内側に固定し、次に、該ベアリングを、腕時計18の文字盤65に固定する。
【0031】
これらの弾性手段、即ち、コイルバネ52又は渦巻状バネ56は、感知要素22を気圧センサ2と接触状態に維持でき、ラック40の歯付きセクタ46の歯とカナ48の歯との間の遊びを補償できる。
【0032】
本発明の更に別の特徴(
図7)によると、気圧センサ2を、座66に取付け、該座66を、例えば、気圧センサ2と支持体68との間の遊びを取るために、フランジ70を挿入した状態で、支持体68に押圧し、接着する(
図3及び
図4)。この支持体68は、該支持体の外周に、第1ねじ山72を備え、該第1ねじ山は、支持体68と共にケーシング80を形成するカバー78の内周に設けた第2ねじ山74と協働する。このようにして、支持体68を、螺進退でき、それにより気圧センサ2の高さを、高度計測装置の他の部品に対して精確に調整可能になり、その結果、製造公差による気圧センサ2の寸法バラツキを補償可能になる。
【0033】
高度計測装置1を、較正のために、密閉装置82、例えば、密閉用ガスケット88を挿入した状態でガラス86で閉じる密閉チャンバ84等の内に、置く(
図8及び
図9)。密閉チャンバ84は、必要に応じて、チャンバ84内の圧力を調整できる空気取入口90を含む。
【0034】
また、密閉チャンバ84は、高度計測装置1を設定するための第1ボタン92及び第2ボタン94も含む。これらのボタン92及び94を、把持し易くするためにローレット加工してもよい。第1ボタン92を、穴石98aに枢着したドライバブレード96によって密閉チャンバ84内部へと延伸し、該ドライバブレード96を用いて、調整ねじ34を作動して、伝達軸30の軸位置を調整できる。密閉用ガスケット100aを、第1ボタン92の通過部分を密閉するために、ドライバブレード96に配置する。第2ボタン94は、軸102を含み、該軸102を、穴石98bに枢着し、第2ボタン94の通過部分を密閉するために密閉用ガスケット100bに係合させる。軸102の自由端に、軸102は、カナ104を保持し、該カナは、水平方向に延在する歯車106と協働する(
図10)。この歯車106のプレートは、2本のピン108を保持し、該ピンを、互いに径方向に対向して配置し、支持体68に設けた2つの対応する穴110に受容する。一方向又は他方向に第2ボタン94を回すことによって、支持体68を締め付けたり緩めたりでき、その結果気圧センサ2を上下に移動できる。
【0035】
より具体的には、
図10に示すように、高度計測装置1を、密閉チャンバ84の底部内に突出する2本のピン114と係合する2つの穴112を備える取付け具76によって、密閉チャンバ84内に受容する。また、2本のねじ118で留める保持ブレード116(
図11)も設ける。保持ブレード116に穴120を開け、該穴にドライバブレード96を通して、平坦な肩部122に当接させるが、該肩部を、カバー78に配設し、保持ブレード116が当接する平坦な直線的壁124によって限定する。よって、カバー78を、密閉チャンバ84内部に軸方向及び枢動可能に係止する、即ち支持体68を、必要に応じて螺進退でき、従って気圧センサ2を、高度計測装置1を較正する操作中、他の部品に対して上下に移動できる。チャンバ84を密閉するために、ガラス86には、チャンバ84のフレーム130に固定した2個のボルト128と協働する2個のフック126を備える。
【0036】
本発明による高度計測装置1の較正を、以下の方法で実行する。
【0037】
まず、本発明による高度計測装置1を、チャンバ84に挿入する。高度計測装置1を、ねじ118を締めて係止する保持ブレード116を用いて、密閉チャンバ84内部に固定する。その前に、確実に、ピン108を、支持体68に設けた対応する穴110に正確に挿入する。これを行うには、ピン108が穴110を貫通するまで、歯車106を単に回転するだけで十分である。密閉チャンバ84を、フック126と係合するボルト128を用いて、密閉する。確実に、密閉用ガスケット88を正確に適当な位置にする。
【0038】
次に、チャンバ72内部の気圧を、海抜0mで見られる平均気圧に相当する、1013.25hPaの値にし、直線接点部分42の位置を、伝達軸30に対して観察する。必要であれば、第2ボタン94を、支持体68を螺進退して、気圧センサ2を上下に移動させるように、一方向又は他方向に回転させる。気圧センサ2の並進運動を、感知要素22及び伝達ピン38を介してラック40に伝える。直線接点部分42が伝達軸30と平行に延在すると、高度計測装置1は、海抜高度で正確に設定される。
【0039】
最後に、チャンバ84内の気圧を、例えば4000mの高度に相当する値に減圧する。表示針10が、フランジ14に固着した円形目盛りの目盛り4000を指さない場合、伝達軸30を、第1ボタン92によって調整ねじ34を螺進退することによって軸方向に移動させる。
【0040】
上記の2操作を実行すると、本発明の高度計測装置1の較正が完了する。確認するには、例えば、チャンバ84内部の気圧を、海面に相当する値に再び上昇させる必要があるだけで、表示針10が円形目盛りで目盛り0を指すのを観察する。
【0041】
言うまでもなく、本発明は、説明したところの実施形態に限定されず、当業者は、様々な若干の変形例及び変更例を、付記したクレームで規定した本発明の範囲から逸脱せずに、想定できる。特に、本発明の高度計測装置1を較正する操作については、容易に自動化できることが分かるであろう。実際に、自動化には、伝達軸30に対する直線接点部分42の位置を決められ、且つフランジ14上に印付けした円形目盛り12に対して表示針10の位置を決められるカメラを設けることだけが必要となる。カメラには、ローレット加工したボタン92、94を作動させる装置が追加される。また、これらの較正操作を、工場で行うこと、及びユーザに渡す際に、本発明の高度計測装置を完全に設定することも理解されるであろう。旅行中に、ユーザが、自分の高度計測装置で示した高度が、自分がいる場所の高度に対応していないことに気付いた場合には、ユーザは、単にフランジを回転させて、自分がいる高度に対応する表示を、表示針10の反対側に移動させることができる。また、較正操作を、環境温度、通常23℃で行うことにも注意されたい。高度計測装置1を正確に較正し終えると、支持体68のねじ山と、カバー78及び調整ねじ34のねじ山を、例えば、ワックス又は接着結合を用いて、纏めて締付けして、高度計測装置1が調整不良になるのを防止できる。
【符号の説明】
【0042】
1 高度計測装置
2 気圧センサ
4a 上板
4b 下板
6 伝達システム
8 作動システム
10 表示針
12 円形目盛り
14 フランジ
16 ケース
18 腕時計
20 回転ベゼル
22 感知要素
24 アーム
26 キャスタ
28 ワッシャ
30 伝達軸
32、98a、98b 穴石
34 調整ねじ
36 弾性片
38 伝達ピン
40 ラック
42 接点の直線部分
44 垂直な枢軸
46 歯付きセクタ
48、104 カナ
50 管
52 コイルバネ
54、62 スタッド
56 渦巻状バネ
58 内側湾曲部
60 外側湾曲部
64 ボールベアリング
65 文字盤
66 座
68 支持体
70 遊び取りフランジ
72 第1ねじ山
74 第2ねじ山
76 取付け具
78 カバー
80 ケーシング
82 密閉装置
84 チャンバ
86 クリスタルガラス
88、100a、100b 密閉用ガスケット
90 空気取入口
92 第1ボタン
94 第2ボタン
96 ドライバブレード
102 軸
106 歯車
108、114 ピン
110、112、120 穴
116 保持ブレード
118 ねじ
122 平坦な肩部
124 平坦な直線的壁
126 フック
128 ボルト
130 フレーム