特許第6276823号(P6276823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276823
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】輸液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/36 20060101AFI20180129BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   A61M5/36 500
   A61M5/142 502
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-198284(P2016-198284)
(22)【出願日】2016年10月6日
(62)【分割の表示】特願2014-529166(P2014-529166)の分割
【原出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-23794(P2017-23794A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096806
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(72)【発明者】
【氏名】中西 勝
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−029915(JP,A)
【文献】 特開2005−013412(JP,A)
【文献】 特開平05−305141(JP,A)
【文献】 特開2000−087844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/36
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を患者側に輸液する輸液チューブを水平方向に装着するチューブ装着部に装着した状態で、複数のフィンガの蠕動運動により前記輸液チューブを加圧して前記輸液チューブ中の前記薬液を前記水平方向に送液する輸液ポンプであって、
前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブ内の気泡を超音波により検出する気泡検出部と
を有し、
前記気泡検出部の下流側の前記輸液チューブの流路は、前記気泡検出部にある前記輸液チューブの前記流路より小さく設定されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
前記気泡検出部は、
前記輸液ポンプの本体の下部分に設けられた開閉カバーに配置される第1部材と、
前記本体に配置される第2部材と、を備え、
前記第1部材は、基部と、前記基部から突出して形成された凸状の曲面部と、前記気泡検出部の下流側の前記輸液チューブの前記流路を設定するために前記凸状の曲面部よりも前記下流側に突出して形成された突起部とを有し、前記第2部材は、前記第1部材の凸状の曲面部に対面して、前記気泡検出部にある前記輸液チューブの前記流路を設定する凸状の曲面部を有することを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記第1部材の前記突起部の前記基部からの突出高さは、前記凸状の曲面部の前記基部からの突出高さに比べて、大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記本体の上部分には、表示部と操作パネル部が配置され、前記本体の下部分には、前記開閉カバーの他に前記チューブ装着部と前記送液駆動部が配置されていることを特徴とする請求項ないし請求項3のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者へ薬液等を送液するための輸液ポンプに関する。特に、輸液チューブを輸液ポンプに対して水平方向に装着して送液する輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して薬液の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられている。輸液ポンプの上には所定の薬液バッグ(輸液バッグ)が配置され、本体と開閉扉との間には、薬液バッグから下げた輸液チューブを挟みこんで、この輸液チューブを本体内に収容して開閉扉を閉じることで保持している。輸液ポンプの本体内では、定位置にセットされた輸液チューブの外周面が、本体内の複数のフィンガと開閉扉の内面との間に挟まれている。この輸液ポンプは、送液駆動部の複数のフィンガが個別駆動されることで、複数のフィンガが輸液チューブの外周面を長さ方向に沿って順次押圧して薬液の送液を行う蠕動式輸液ポンプである (特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輸液ポンプでは、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において上から下に向けて垂直に通して保持している。これに対して、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において水平方向に通して保持する輸液ポンプが提案されている。このように、輸液チューブを輸液ポンプの本体において水平方向に通して保持する構造を採用しようとするのは、輸液チューブが輸液ポンプの本体内を上から下に向けて垂直に通っている輸液ポンプとは異なり、複数の輸液ポンプを上下位置にスタックした状態で重ねて保持しても輸液チューブが邪魔にならないという利点があるからである。例えば、輸液ポンプの本体に対して向かって右側部分に輸液チューブの上流側が配置され、輸液ポンプの本体に対して向かって左側部分に輸液チューブの下流側が配置されるように予め決められている。この場合には、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置すれば、送液駆動部が駆動することで、薬液が上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って送液でき、患者に対して正しく送液できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、輸液ポンプは、輸液チューブ内に気泡が存在しているかどうかを検出する気泡検出部(気泡センサ)を有している。気泡センサは、超音波発信部と超音波受信部を有している。輸液ポンプが輸液チューブを本体内において垂直に通して保持している形式のものでは、薬液と空気(気泡)の境が、気泡センサにおいて輸液チューブの流路を狭くしている部分を通過する際に、薬液の液面は輸液チューブの流路を狭くしている部分の全体に広がった状態で、薬液はそのまま下方に流れ出る。
【0006】
これに対して、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において水平方向に通して保持する輸液ポンプでは、薬液と空気の境が、気泡センサにおいて輸液チューブの流路を狭くしている部分を通過する際に、薬液の表面張力と重力の影響と、そして薬液の吸引速度と吸引のタイミングにより、薬液の一部(薬液液滴ともいう)が輸液チューブの流路を狭くしている部分の内面に引っ掛かり、輸液チューブの流路を狭くしている部分内に、薬液の一部が残ってしまうことがある。
このように、輸液チューブの流路を狭くしている部分内に薬液の一部が残ると、気泡センサの超音波発信部からの超音波が、残った薬液の一部を伝わって超音波受信部に受信されてしまう。このため、気泡センサは、輸液チューブ内には薬液があると判断してしまい、輸液チューブ内には気泡があるにもかかわらず、気泡が無いとして気泡の誤検出を起こすおそれがある。
そこで、本発明は、気泡センサにより輸液チューブの流路を狭くしている部分内には、薬液の一部を残さないようにして、気泡センサが気泡の有無の誤検出をすることを防止できる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の輸液ポンプは、薬液を患者側に輸液する輸液チューブを水平方向に装着するチューブ装着部に装着した状態で、複数のフィンガの蠕動運動により前記輸液チューブを加圧して前記輸液チューブ中の前記薬液を前記水平方向に送液する輸液ポンプであって、前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブ内の気泡を超音波により検出する気泡検出部とを有し、前記気泡検出部の下流側の前記輸液チューブの流路は、前記気泡検出部にある前記輸液チューブの前記流路より小さく設定されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記気泡検出部は、前記輸液ポンプの本体の下部分に設けられた開閉カバーに配置される第1部材と、前記本体に配置される第2部材と、を備え、前記第1部材は、基部と、前記基部から突出して形成された凸状の曲面部と、前記気泡検出部の下流側の前記輸液チューブの前記流路を設定するために前記凸状の曲面部よりも前記下流側に突出して形成された突起部とを有し、前記第2部材は、前記第1部材の凸状の曲面部に対面して、前記気泡検出部にある前記輸液チューブの前記流路を設定する凸状の曲面部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、第2間隔を設定するための突起部は、第1部材に一体的に設けるので、突起部を第1部材と別の部材で設けるようにする場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0010】
好ましくは、前記第1部材の前記突起部の前記基部からの突出高さは、前記凸状の曲面部の前記基部からの突出高さに比べて、大きく設定されていることを特徴とする。
上記構成によれば、第1部材を配置するだけで、突起部が形成する第2間隔は、気泡センサの第1間隔に比べて小さく設定することができる。
【0011】
好ましくは、前記本体の上部分には、表示部と操作パネル部が配置され、前記本体の下部分には、前記開閉カバーの他に前記チューブ装着部と前記送液駆動部が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、チューブ装着部への輸液チューブの装着を行って、開閉カバーを閉じることができる。そして、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、操作パネル部の操作ボタンを操作することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、気泡センサにより輸液チューブの流路を狭くしている部分内には、投与された薬液の最後の一部を残さないようにして、気泡センサが気泡の有無の誤検出をすることを防止できる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図。
図2図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図。
図3図1図2に示す輸液ポンプの開閉カバーを開いて輸液チューブを装着するためのチューブ装着部を示す斜視図。
図4】輸液ポンプの電気的な構成例を示す図。
図5図3に示す輸液ポンプの本体の下部分と開閉カバーを拡大して示す斜視図。
図6図1図2に示すように開閉カバーが本体の下部分を覆っている際のE−E線における断面を示す図。
図7】押し当て部材の形状を示す斜視図。
図8図8(A)は、本発明の実施形態における図6に示す気泡センサを使用した場合の輸液チューブ内での薬液の挙動を示している。図8(B)は、比較例として、従来の気泡センサを使用した場合の輸液チューブ内での薬液の挙動を示す図。
図9】輸液チューブが、従来の気泡センサにより押圧されていることで、輸液チューブの流路が狭くなって、薬液の液切れ部分が発生していない様子と、液切れ部分が発生している様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図である。
図1図2に示す輸液ポンプ1は、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる微量持続注入ポンプである。この輸液ポンプ1は、例えば薬液ライブラリから使用する薬液を選択して、その選択した薬液を送液するために用いられる。この薬液ライブラリは、薬液ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬液名を含む薬液の投与設定群である薬液情報である。医療従事者は、この薬液ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬液の選択および薬液の設定が図れる。
【0015】
図2に示すように、輸液ポンプ1は、薬液171を充填した薬液バッグ170から、クレンメ179と輸液チューブ200と留置針172を介して、患者Pに対して正確に送液することができる。薬液は輸液剤ともいう。輸液チューブは輸液ラインともいう。
輸液ポンプ1は、本体カバー2と取手2Tを有しており、取手2TはN方向に伸ばしたり送液方向Tに収納したりすることができる。この本体カバー2は、本体ともいい、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬液等がかかっても輸液ポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防滴処理構造を有している。このように、本体カバー2が防滴処理構造を有しているのは、上方に配置されている薬液バッグ170内の薬液171がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着することがあるためである。
【0016】
まず、輸液ポンプ1の本体カバー2に配置された要素について説明する。
図1図2に示すように、本体カバー2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。表示部3は、画像表示装置であり、例えばカラー液晶表示装置を用いている。この表示部3は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。表示部3は、本体カバー2の上部分2Aの左上位置であって、開閉カバー5の上側に配置されている。
本体カバー2の上部分2Aは、本体カバー2の上半分の部分である。本体カバー2の下部分2Bは、本体カバー2の下半分の部分である。図2では、表示部3には、一例として薬液投与の予定量(mL)の表示欄3B、薬液投与の積算量(mL)の表示欄3C、充電履歴の表示欄3D、流量(mL)の表示欄3E等が表示されているが、図1に示す表示部3ではこれらの表示内容の図示は、図面の簡単化のために省略している。表示部3は、この他に警告メッセージを表示することもできる。
【0017】
操作パネル部4は、本体カバー2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、例えばパイロットランプ4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E、電源スイッチ4F等が配置されている。
【0018】
図1に示すように、本体カバー2の下部分2Bには、蓋部材としての開閉カバー5が回転軸5Aを中心として、R方向に開閉可能に設けられている。開閉カバー5は、X方向に沿って長く形成されている板状の蓋部材である。チューブ装着部50と送液駆動部60は、開閉カバー5の内側に配置されている。このチューブ装着部50には、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製の輸液チューブ200をセットして、この開閉カバー5を閉じることで、輸液チューブ200は、チューブ装着部50において、X方向(送液方向T)に沿って水平に装着できる。
なお、図1図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。X方向は、送液方向Tと平行であり輸液ポンプ1の左右方向である。Y方向は、輸液ポンプ1の前後方向である。
【0019】
図3では、図1図2に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5を開いて、輸液チューブ200を装着するためのチューブ装着部50と送液駆動部60が示されている。
図3に示すように、チューブ装着部50と送液駆動部60は、輸液ポンプ1の本体下部1B(本体カバー2の下部分2B)に設けられており、チューブ装着部50と送液駆動部60は、表示部3と操作パネル部4の下部においてX方向に沿って設けられている。チューブ装着部50と送液駆動部60は、図2に示すように開閉カバー5を、回転軸5Aを中心としてCR方向に閉じると開閉カバー5により覆うことができる。
【0020】
医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。これにより、医療現場において、輸液ポンプ1の操作性を向上することができる。
図3に示すように、チューブ装着部50は、気泡検出部51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、チューブクランプ部270と、右側位置の第1輸液チューブガイド部54と、左側位置の第2輸液チューブガイド部55を有している。
【0021】
図3に示すように、チューブ装着部50の付近には、輸液チューブ200をセットする際に、正しい送液方向Tを明確に表示するための輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。この輸液チューブ設定方向表示部150は、例えば複数の矢印151により構成されている。輸液チューブ設定方向表示部150は、例えばチューブ装着部50の下部に直接印刷しても良いし、シール状の部材に印刷したものをチューブ装着部50の下部に貼り付けても良い。輸液チューブ設定方向表示部150は、開閉カバー5の内側にセットされた輸液チューブ200による薬液171の正しい方向の送液方向(送液方向T)を明示するために配置されている。
これにより、医療従事者が、図3の開閉カバー5をCS方向に開けて、チューブ装着部50を開放して、このチューブ装着部50に対して輸液チューブ200を装着する際に、輸液チューブ200による薬液の送液方向Tを明示できる。このため、医療従事者は、目視で確認しながら、誤って輸液チューブ200を逆方向に装着してしまうことを防ぐことができる。
【0022】
次に、図3に示す開閉カバー5の構造例を説明する。
図3に示すように、開閉カバー5は、輸液ポンプ1を軽量化するために、薄い成型樹脂部材により作られている板状の部材である。これにより、開閉カバー5の重量を軽減でき、構造を簡単化することができる。開閉カバー5がチューブ装着部50と送液駆動部60を覆うことができるようにするために、開閉カバー5は、回転軸5Aを中心としてCS方向とCR方向に沿って開閉可能である。すなわち、開閉カバー5は、2つのヒンジ部2H、2Hを用いて、本体2の下部分2Bに対して支持されている。2つのヒンジ部2H、2Hは、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにそれぞれ対応して配置されている。
【0023】
図3に示すように、開閉カバー5の表面側には、右上部分に開閉操作レバー260が設けられている。開閉カバー5の内面側には、輸液チューブ押さえ部材500と、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eが設けられている。この輸液チューブ押さえ部材500は、X方向に沿って長く矩形状かつ面状の突起部として配置されており、輸液チューブ押さえ部材500は、送液駆動部60に対面する位置にある。輸液チューブ押さえ部材500は、送液駆動部60に沿ってX方向に平坦面を有しており、輸液チューブ押さえ部材500は、開閉カバー5をCR方向に閉じることで、送液駆動部60との間で輸液チューブ200の一部分を押し付けて挟むようになっている。
医療従事者は、表示部3に表示されている表示内容を確認しながら、輸液チューブ200を輸液ポンプ1の本体2の下半分2Bの部分に水平方向に沿ってセットでき、輸液チューブ200がチューブ装着部50と送液駆動部60にセットされた後に、図1図2に示すように開閉カバー5をCR方向に閉じることで、輸液チューブ200を覆うことができる。
【0024】
図3に示すように、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eは、本体下部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かることにより、開閉カバー5は、図2に示すように、本体下部1Bのチューブ装着部50と送液駆動部60を閉鎖した状態に保持する。この第1フック部材5Dと第2フック部材5Eと、本体下部1B側の固定部分1D、1Eは、開閉カバー5のダブルフック構造部300を構成している。
【0025】
図3に示すチューブクランプ部270は、開閉カバー5を閉じることにより、輸液チューブ200の途中部分をクランプして閉塞させる。チューブクランプ部270は、左側の固定部分1Eの近傍であって、左側の第2フック部材5Eに対応する位置に配置されている。医療従事者が輸液チューブ200をX方向に水平にセットして、医療従事者が開閉カバー5をCR方向に閉じると、チューブクランプ部270は、輸液チューブ200の途中の一部分を閉塞できる。
【0026】
図3に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、本体下部1Bおいて向かって右側部分に設けられ、第2輸液チューブガイド部55は、本体下部1Bにおいて向かって左側部分に設けられている。第1輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aをはめ込むことで保持でき、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bをはめ込むことで保持でき、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に保持するようになっている。このように、水平方向に保持された輸液チューブ200は、気泡検出部51と、上流閉塞センサ52と、送液駆動部60と、下流閉塞センサ53と、そしてチューブクランプ部270に沿って、送液方向Tに沿ってはめ込んで固定される。
【0027】
図3に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tを有している。2つの突起54B,54Cは、輸液チューブ200を水平方向にセットする際に、輸液チューブ200の上流側200Aを着脱可能に挟んで保持するために、本体下部1Bに形成されている。傾斜案内部54Tは、2つの突起54B、54Cから斜め右上方向に向かって形成され、輸液チューブ200の上流側200Aを斜め上方に案内する。
この傾斜案内部54Tを設けることにより、医療従事者は、輸液チューブ200の上流側200Aがこの傾斜案内部54T側にセットされることを、視覚的に確認することができるばかりでなく、輸液チューブ200の上流側200Aは急激に曲げないようにして保持することができる。また、この傾斜案内部54Tが開閉カバー5により覆われずに露出しているので、医療従事者はこの傾斜案内部54Tを直接目視することで、輸液チューブ200の上流側200Aを傾斜案内部54T側に配置すれば良いことを確認できる。
【0028】
図3に示すように、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bの一部分を着脱可能に挟んで保持するために、本体下部1Bの側面部分1Sに形成された溝部分である。第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200を開閉カバー5とチューブ装着部50との間に挟み込んで潰してしまうことが無いように、チューブ装着部50内に確実に装着できる。図1図2に示すように、開閉カバー5の右側の側面部5Kは、斜め左上方向に向かって傾斜して形成されている。これにより、開閉カバー5を閉じて状態であっても、開閉カバー5が第1輸液チューブガイド部54の2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tの上にかぶらないようにしている。
【0029】
図3に示す気泡検出部51は、輸液チューブ200内に生じる気泡(空気)を検出するセンサであり、例えば気泡検出部51は、軟質塩化ビニルなどの輸液チューブ200の外側から、輸液チューブ200内に流れる薬液中に含まれる気泡を監視する超音波センサである。超音波センサの超音波発信部から発生する超音波を輸液チューブ200内に流れる薬液に当てることで、薬液における超音波の透過率と、気泡における超音波の透過率とが異なることから、超音波受信部は、その透過率の差を検出して気泡の有無を監視する。気泡検出部51は、押し当て部材320と受け部材330を有している。後で説明するが、超音波発信部は、開閉カバー5の内側に配置された押し当て部材320に内蔵されている。超音波受信部は、本体2の下部分2B側に配置された受け部材330に内蔵されている。
【0030】
図3に示す上流閉塞センサ52は、輸液チューブ200の上流側200Aにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサであり、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の下流側200Bにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサである。上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、同じ構成である。輸液チューブ200が閉塞する場合としては、例えば送液しようとする薬液の粘度が高いか、薬液の濃度が高い等の場合である。
【0031】
図3に示すように、開閉カバー5の内面側には、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の対応する位置に、それぞれ押圧部材452、453が設けられている。医療従事者が、図3に示すようにチューブ装着部50に輸液チューブ200をセットした後に、図2に示すように開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5側の押圧部材452と押圧部材453が輸液チューブ200の一部分を上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53側にそれぞれ押し当てることができる。このため、直径が異なる複数種類の輸液チューブ200の内の何れのサイズの輸液チューブ200が輸液ポンプ1に装着されても、開閉カバー5を閉じると上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53は、輸液チューブ200の閉塞状態を検出できる。
【0032】
図4は、輸液ポンプ1の電気的な構成例を示している。
図4に示すように、送液駆動部60は、駆動モータ61と、この駆動モータ61により回転駆動される複数個のカムを有するカム構造体62と、このカム構造体62の各カムにより移動される複数のフィンガを有するフィンガ構造体63を有している。
カム構造体62は、複数のカム、例えば6個のカム62A〜62Fを有しており、フィンガ構造体63は、6個のカム62A〜62Fに対応して6個のフィンガ63A〜63Fを有している。6個のカム62A〜62Fは互いに位相差を付けて配列されており、カム構造体62は、駆動モータ61の出力軸61Aに連結されている。
【0033】
図4に示す制御部100の指令により、駆動モータ61の出力軸61Aが回転すると、6個のフィンガ63A〜63Fが予め定めた順番にY方向に所定ストローク分進退することで、輸液チューブ200は送液方向Tに沿って開閉カバー5の輸液チューブ押さえ部材500に対して押し付けられる。このため、輸液チューブ200内の薬液は、送液方向Tに送液することができる。すなわち、複数のフィンガ63A〜63Fが個別駆動されることで、複数のフィンガ63A〜63Fが輸液チューブ200の外周面を送液方向Tに沿って順次押圧して輸液チューブ200内の薬液の送液を行う。複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動を制御することにより、フィンガ63A〜63Fを順次前後進させ、あたかも波動が進行するようにして、輸液チューブ200の閉塞点を送液方向Tに移動させることで、輸液チューブ200をしごいて薬液を移送する。
【0034】
図4に示すように、輸液ポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
図4に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Fと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
【0035】
図4の表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、図2に例示する情報内容や警告メッセージを表示する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の警報内容を音声により告知することができる。ブザー132は、制御部100の指令により各種の警報を音により告知することができる。スピーカ131は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音声により警告を発する警告手段の一例である。ブザー132は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音により警告を発する警告手段の一例である。
【0036】
図4において、気泡検出部51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの輸液チューブ200の上流側が閉塞したことを示す上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの輸液チューブ200の下流側が閉塞したことを示す下流閉塞信号S3は、制御部100に供給される。上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越えて、薬液を送液できない状態を検出することができる。輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越える原因としては、輸液用の留置針や輸液チューブ200の詰まっている場合、輸液チューブ200がつぶれているまたは折れている場合、高粘度の薬液を使用している場合等である。
【0037】
図4において、制御部100は、通信ポート140を通じて、例えば、デスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬液データベース(DB)160に接続されており、薬液データベース160に格納されている薬液情報MFは、コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬液情報MFを基にして、例えば図2に示す表示部3には薬液情報MF等を表示することができる。
【0038】
図5は、図3に示す輸液ポンプ1の本体2の下部分2Bと開閉カバー5を拡大して示す斜視図である。
図5に示す気泡検出部51は、気泡検出センサともいい、輸液チューブ200内における気泡(空気)の有無を検出する。気泡検出部51は、輸液チューブ200内に流れる薬液中に含まれる気泡を監視する超音波センサである。気泡検出部51の超音波発信部321は、押し当て部材320内に配置されている。これに対して、気泡検出部51の超音波受信部331は、受け部材330内に配置されている。なお、超音波発信部321を受け部材330内に配置し、超音波受信部331を、押し当て部材320内に配置してもよい。なお、超音波発信部321,超音波受信部331には、磁気(電磁)シールド(不図示)が施されている。
【0039】
図1図2に示すように、開閉カバー5が閉じると、図5の押し当て部材320は輸液チューブ200を受け部材330側に押し当てて、輸液チューブ200を所定量だけ押しつぶすようになっている。押し当て部材320と受け部材330は、共に電気絶縁性を有するプラスチック成型品である。
図5に示すように、押し当て部材320は、開閉カバー5の内側に配置され、受け部材330は、本体2の下部分2Bに配置されている。押し当て部材320の超音波発信部321から発生する超音波は、輸液チューブ200内に流れる薬液に当てることで、薬液における超音波の透過率と、気泡(または、気泡を含む薬液)における超音波の透過率とが異なることから、受け部材330の超音波受信部331は、その透過率の差を、例えば閾値との出力電位差として検出して気泡の有無を監視する。
【0040】
図6は、図1図2に示すように開閉カバー5が本体2の下部分2を覆っている際のE−E線における断面図である。
図6には、開閉カバー5の右側の側面部5K付近と、本体2の下部分2Bの一部を示しており、開閉カバー5に配置されている気泡検出部51の押し当て部材320と、気泡検出部51の受け部材330は対面している。
気泡検出部51の第1部材である押し当て部材320は凸状の曲面部320Wを有しており、気泡検出部51の第2部材である受け部材330は凸状の曲面部330Wを有していて、曲面部320Wと曲面部330Wとは対面位置にある。輸液チューブ200の途中部分200Pは、押し当て部材320の凸状の曲面部320Wと、受け部材330の凸状の曲面部330Wとの間で、所定量だけ押されていて、途中部分200Pは弾性変形している。押し当て部材320の超音波発信部321と受け部材330の超音波受信部331は対面している。
【0041】
ここで、この押し当て部材320の好ましい形状を、図6図7を参照して説明する。図7は、押し当て部材320の形状を示す斜視図である。
図7に示す押し当て部材320は、基部320Bと、凸状の曲面部320Wと、突起部320Dを有している。基部320Bは、直方体形状の部材であり、押し当て部材320を固定するためのねじを通すねじ穴320Nを有している。基部320Bの一方の面320Fには、凸状の曲面部320WがY方向に突出して形成されている。突起部320Dは、凸状の曲面部320Wのすぐ横の位置であって、送液方向Tの下流側において、Y方向に突出して形成されている。
この突起部320Dは、輸液チューブ200の途中部分200Pを押すための押圧部分320Rを有している。この押圧部分320Rが基部320Bの底部からY方向に沿って突出している高さH1は、凸状の曲面部320Wが基部320Bの底部からY方向に沿って突出している高さH2に比べて、大きく設定されている。
【0042】
次に、上述した輸液ポンプ1を使用する際の動作を説明する。
図3に示すように医療従事者が、開閉カバー5を開けてチューブ装着部50に輸液チューブ200を設定する際に、輸液チューブ設定方向表示部150を見て輸液チューブ200のセット方向を目視で確認できる。そして、医療従事者は、開閉カバー5を開けて、輸液チューブ200の上流側200Aを本体下部1Bおいて向かって右側部分の第1輸液チューブガイド部54側にはめ込み、輸液チューブ200の下流側200Bを本体下部1Bにおいて向かって左側部分の第2輸液チューブガイド部55側にはめ込む。これにより、医療従事者は、輸液チューブ200を輸液ポンプ1に対して送液方向Tに沿って正しくセットできる。医療従事者は、図4に示す輸液チューブ200を、第1輸液チューブガイド部54、気泡検出部51と、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53、チューブクランプ部270、そして第2輸液チューブガイド部55に沿って送液方向Tにセットできる。
【0043】
その後、図1図2に示すように、開閉カバー5を閉じることで、開閉カバー5は、気泡検出部51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、そして送液駆動部60と、チューブクランプ部270を覆う。この状態で、送液駆動部60を駆動することにより、薬液は輸液チューブ200を通じて送液方向Tに沿って送液できる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0044】
上述のようにして、輸液ポンプ1が、輸液チューブ200を用いて、薬液を患者に対して送液する場合に、図4に示す気泡検出部51は、輸液チューブ200内の薬液に気泡が混入しているかどうかを検出して、気泡検出部51が輸液チューブ200内に気泡を検出すると、図6に示す気泡検出部51の超音波受信部331は、制御部100に対して気泡検出信号S1を送るようになっている。
図8(A)は、本発明の実施形態における図6に示す気泡検出部51を使用した場合の輸液チューブ200内での薬液171の挙動を示している。図8(B)は、比較例として、従来の気泡センサ1500を使用した場合の輸液チューブ200内での薬液171の挙動を示している。
【0045】
図8(A)に示す本発明の実施形態の気泡検出部51では、間隔BH1は、押し当て部材320の凸状の曲面部320Wと、受け部材330の凸状の曲面部330Wとの間に形成されている輸液チューブ200の途中部分200Pにおける流路の隙間を示している。
もう1つの間隔BH2は、突起部320Dの押圧部分320Rと、この押圧部分320Rと対向する対向壁部398との間に形成されている輸液チューブ200の途中部分200Pにおける流路の隙間を示している。
この間隔BH2は、間隔BH1に比べて、送液方向Tに関して下流側に位置されている。間隔BH2は、間隔BH1に比べて小さく設定されている。このため、輸液チューブ200の途中部分200Pは、間隔BH1に比べて間隔BH2において、より流路(流路断面積)が狭くなっている。
【0046】
このように、図8(A)に示すように、気泡検出部51の間隔BH1よりも小さい間隔BH2が、送液方向Tに関して気泡検出部51の下流側に設けられているので、気泡検出部51の下流側における輸液チューブ200の途中部分200Pの流路が、気泡検出部51により挟まれている輸液チューブ200の途中部分200Pの流路に比べて狭くなっている。このため、薬液171は、気泡検出部51の間の輸液チューブ200の途中部分200Pの流路には滞留せずに、気泡検出部51の下流側における輸液チューブ200の途中部分200Pの流路に滞留させることができる。この薬液171の滞留現象は、輸液チューブ200の流路の狭い部分で、いわゆる液切れ部分171Mとして薬液の一部が残ってしまう現象である。
【0047】
この薬液171の液切れ部分171Mの滞留現象を、気泡検出部51の押し当て部材320の凸状の曲面部320Wと、受け部材330の凸状の曲面部330Wとの間で発生させるのではなく、気泡検出部51の下流側の突起部320Dの押圧部分320Rと、この押圧部分320Rと対向する対向壁部398との間で、積極的に発生させるようにしている。すなわち、気泡検出部51の下流側の突起部320Dの押圧部分320Rと、この押圧部分320Rと対向する対向壁部398との間は、薬液171の流速が変化する部分であり、薬液171の表面張力が崩れ易くなる。
【0048】
従って、気泡検出部51の押し当て部材320と受け部材330の間では、いわゆる薬液171の液切れ部分171Mが取り残されないので、気泡検出部51がこの液切れ部分171Mを誤検出してしまうことが無くなる。このため、気泡検出部51の押し当て部材320と受け部材330の間には薬液171の一部である液切れ部分171Mが残らないので、気泡検出部51の超音波発信部321からの超音波が、液切れ部分171Mを伝わって超音波受信部331に受信されてしまうことが無い。このため、気泡検出部51は、輸液チューブ200内には薬液があるとは判断しないので、輸液チューブ200内には気泡があれば、気泡の存在を、液切れ部分171Mに邪魔されずに検出できる。つまり、気泡検出部51が薬液171の液切れ部分171による薬液171の存在の誤検出を防止することができる。
【0049】
上述したように、本発明の実施形態では、気泡検出部51が形成する輸液チューブ200の流路よりも、気泡検出部51の下流側において輸液チューブ200の流路を狭くするようにしているので、気泡検出部51の下流側において薬液171の液切れ部分171Mを発生させることができる。
これに対して、図8(B)に示す比較例の気泡センサ1500では、輸液チューブ200の途中部分200Pの下流側では、途中部分200Pを押圧する部材は配置されていない。このため、気泡センサ1500の押し当て部材1501の凸状の曲面部1501Wと、受け部材1502の凸状の曲面部1502Wとの間隔CH1は、送液方向Tに関して下流側の輸液チューブ200Pの途中部分200Pの内径CH2に比べて小さくなっている。
これにより、薬液171の液切れ部分171Nは、気泡センサ1500の押し当て部材1501と、受け部材1502の間で流速が変化するので取り残されて滞留してしまうことから、気泡センサ1500は、この液切れ部分171Nを検出してしまう。このため、気泡センサ1500は、薬液171が輸液チューブ200内を流れていると判断する。
【0050】
図9(A)では、図8(B)に示すように輸液チューブ200が、従来の気泡センサ1500により押圧されていることで、輸液チューブ200の流路が狭くなっているが、薬液171の液切れ部分は発生しておらず、正常に薬液が送液方向Tに流れている様子を示している。これに対して、図9(B)では、図8(B)に示すように輸液チューブ200が、従来の気泡センサ1500により押圧されていることで、輸液チューブ200の流路が狭くなっているが、薬液171の液切れ部分171Nが発生して、空間(気泡)ARが生じてしまっている様子を示している。
【0051】
図9(B)における液切れ部分171Nが生じている場合には、液切れ部分171Nの上部には、空間ARができており、この空間ARを通じて空気が通過するが、液切れ部分171Nは気泡センサ1500内で滞留してしまう。液切れ部分171Nと空気の境が、気泡センサ1500により流路を狭くしている部分を通過する際に、薬液の表面張力と重力の影響と、薬液の吸引速度と吸引のタイミングにより、薬液の一部が輸液チューブ200の内面に引っ掛かり、液切れ部分171N(薬液の一部)として残ってしまうことがある。この液切れ部分171Nが輸液チューブ200の流路の大部分を占める場合には、気泡センサの超音波発信部からの超音波が液切れ部分171Nに伝わって超音波受信部で受信してしまうので、制御部は輸液チューブ200内に空間(気泡)ARが存在しているにもかかわらず、薬液が通っていると誤判断してしまう。
【0052】
上述したように、本発明の実施形態の輸液ポンプ1は、本体2と、本体2内に配置されて、薬液171を患者側に輸液する輸液チューブ200を横方向に装着するチューブ装着部50と、本体2内に配置されて、輸液チューブ200をチューブ装着部50に装着した状態で、輸液チューブ200を加圧して輸液チューブ200中の薬液を横方向に送液する送液駆動部60と、本体2に取り付けられ、閉じることでチューブ装着部50に装着した輸液チューブ200を覆う開閉カバー5と、チューブ装着部50に装着されて、輸液チューブ200に対して発生した超音波を受けて輸液チューブ200内の気泡を検出する気泡検出部51を有する。
この気泡検出部51は、開閉カバー5に配置され超音波発信部321を有する第1部材としての押し当て部材320と、本体2に配置され超音波発信部321からの超音波を受信する超音波受信部31を有する第2部材としての受け部材330を備える。そして、開閉カバー5を閉じた状態では、第1部材と第2部材との間で輸液チューブ200の流路を狭めるための第1間隔BH1に比べて、輸液チューブ200の薬液171を送る送液方向Tに関して、気泡検出部51よりも下流側において輸液チューブ200の流路を狭める第2間隔BH2が、小さく設定されている。
【0053】
これにより、気泡検出部51によりも下流側における輸液チューブ200の流路を狭める第2間隔BH2が、第1部材と第2部材との間で輸液チューブ200の流路を狭めるための第1間隔BH1に比べて、小さく設定されているので、薬液の液切れ部分の滞留現象を、気泡センサの間で発生させるのではなく、気泡センサの下流側で発生させることができる。これは、薬液の流速が変化する部分で、薬液の表面張力が崩れやすくなるためである。従って、気泡センサの第1部材と第2部材の間では、いわゆる薬液の液切れ部分が取り残されていないので、気泡センサがこの液切れ部分を誤検出してしまうことが無くなる。このため、気泡センサにより輸液チューブの流路を狭くしている部分内には、薬液の一部を残さないようにして、気泡センサが気泡の有無の誤検出をすることを防止することができる。
【0054】
第1部材は、基部320Bと、基部320Bから突出して形成された凸状の曲面部320Wと、第2間隔BH2を設定するために凸状の曲面部320Wよりも下流側に突出して形成された突起部320Dとを有し、第2部材は、第1部材の凸状の曲面部320Wに対面して、第1間隔を設定する凸状の曲面部330Wを有する。
このため、第2間隔BH2を設定するための突起部320Dは、第1部材に一体的に設けるので、突起部320Dを第1部材とは別の部材で設ける場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0055】
第1部材の突起部320Dの基部320Bからの突出高さH1は、凸状の曲面部320Wの基部320Bからの突出高さH2に比べて、大きく設定されている。このため、第1部材を配置するだけで、突起部320Dが形成する第2間隔BH2は、気泡検出部51の第1間隔BH1に比べて小さく設定することができる。
【0056】
本体2の上部分2Aには、表示部3と操作パネル部4が配置され、本体2の下部分2Bには、チューブ装着部50と送液駆動部60と開閉カバー5が配置されている。このため、医療従事者は、本体2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0057】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図示例の気泡検出部51では、押し当て部材320側にだけ突起部320Dが設けられているが、これに限らず、受け部材330側にも突起部を設けるようにして、押し当て部材320側の突起部320Dと受け部材330側の突起部が、気泡センサの下流側で、輸液チューブの流路を狭めるようにしても良い。
図1図2に示す例では、輸液チューブ200は、チューブ装着部50により水平方向である送液方向Tに沿ってセットされているが、これに限らず、例えばチューブ装着部50は、輸液チューブ200の上流側200Aから下流側200Bにかけて所定の角度分下がるように傾斜して横方向にセットするような構造を採用しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1・・・輸液ポンプ、2・・・本体カバー(本体ともいう)、2A・・・本体カバーの上部分、2B・・・本体カバーの下部分、3・・・表示部、4・・・操作パネル部、5・・・開閉カバー(蓋部材)、50・・・チューブ装着部、51・・・気泡センサ、60・・・送液駆動部、171・・・薬液、171M・・・薬液の液切れ部分、200・・・輸液チューブ、200P・・・輸液チューブの途中部分、320・・・気泡センサの押し当て部材(第1部材)、321・・・気泡センサの超音波発信部、330・・・気泡センサの受け部材(第2部材)、331・・・気泡センサの超音波受信部、BH1・・・気泡センサの間隔、BH2・・・気泡センサの下流側での間隔、T・・・送液方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9