特許第6276917号(P6276917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276917
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】化粧用コンパクトケース
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   A45D33/00 650E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-284883(P2012-284883)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124456(P2014-124456A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(72)【発明者】
【氏名】岡部 健一
【審査官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−43815(JP,U)
【文献】 実開昭64−31015(JP,U)
【文献】 実開平3−17720(JP,U)
【文献】 実開平3−99508(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料レフィルを収容する化粧料収容部及び化粧料の塗布具を収容する塗布具収容部を有するケース本体と、蓋体と、化粧料が蓋体に設けられた鏡に付着するのを防止する保護シートとを具備する化粧用コンパクトケースであって、
前記ケース本体は、該ケース本体の平面視において、前記蓋体が連結されている側を後方、該蓋体が連結されている側とは反対側を前方としたときの前後方向、及び該前後方向と直交する方向である長手方向を有しており、
前記ケース本体の前記長手方向における、前記化粧料収容部より外側に位置する部分にシート挿入孔が設けられており、
前記保護シートは、前記シート挿入孔に、該保護シートに設けた取り付け片が挿入され、該取り付け片が、該シート挿入孔の入り口より前記長手方向の長さが拡大した空間内に折り返された部分を有しており、前記保護シートに前記取り付け片を引き抜く力が加わったときに、前記折り返された部分の先端縁が、前記シート挿入孔の前記入り口付近に生じた段差部又は出っ張りに当接することによって、該取り付け片の引き抜きが阻止されるようにして前記ケース本体に固定されている、化粧用コンパクトケース。
【請求項2】
前記取り付け片に、前記前後方向に突出して、前記ケース本体の被係合部に係合するアンカー部が形成されている、請求項1記載の化粧用コンパクトケース。
【請求項3】
前記取り付け片の前記折り返された部分の一部が、折り返されていない部分の一側縁から突出して、該取り付け片の片側に、前記アンカー部を形成している、請求項2記載の化粧用コンパクトケース。
【請求項4】
前記取り付け片における前記アンカー部とは反対側の角部が、円弧状又はテーパー状に加工されている、請求項2又は3記載の化粧用コンパクトケース。
【請求項5】
前記保護シートは、複数のヒンジ部を有している、請求項1〜4の何れか1項記載の化粧用コンパクトケース。
【請求項6】
前記保護シートは、ヒンジ部を有し、ヒンジの折線方向とは異なる方向に延びる切込み若しくはスリット、又は前記折線上に形成された貫通孔を有している請求項1〜5の何れか1項記載の化粧用コンパクトケース。
【請求項7】
前記化粧料収容部は、前記化粧料レフィルに係合する係合突起を、前記シート挿入孔側に空間を形成して変位可能とした可撓片に有しており、
前記可撓片は、前記ケース本体の前記長手方向における、前記シート挿入孔側を後側、該シート挿入孔側とは反対側である前記化粧料収容部側を前側としたときに、前後に変位可能であり、
前記可撓片の前記後側に位置する、前記シート挿入孔側の前記空間内に、前記取り付け片の前記折り返された部分を有している、請求項1〜6の何れか1項記載の化粧用コンパクトケース。
【請求項8】
前記ケース本体は、該ケース本体の前記長手方向における、前記シート挿入孔を挟む両側それぞれに、該長手方向の長さが1.2mm以上の肉厚壁を有する、請求項1〜6の何れか1項記載の化粧用コンパクトケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用コンパクトケースに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、チーク、アイシャドウ等の化粧料を収容する化粧用コンパクトケースとして、化粧料を収容する化粧料収容部と、化粧料の塗布具を収容する塗布具収容部とが形成されたケース本体と、該ケース本体に開閉可能に取り付けられる蓋体とを備えたものが知られている。このような化粧用コンパクトケースにおいては、化粧料が蓋体、特に蓋体の裏面に設けられた鏡に付着することを防止するために、化粧料収容部と蓋体との間に保護シートが配置されることも多い。
【0003】
また、近年においては、化粧料のみを交換可能なように、化粧料を、上面が開口した深さの浅い容器に収容して化粧料レフィルとして販売することも行われており(特許文献1参照)、その場合、使用者自身が、化粧料レフィルを化粧用コンパクトケースの化粧料収容部に固定して使用する。
化粧料レフィルを交換して化粧用コンパクトケースを繰り返し使用する場合、保護シートも長期間に亘って使用されることになる。その場合、保護シートは、ケース本体に対する取り付け部分付近において、繰り返し折り曲げられることになり、破損することも多くなる。保護シートが破損したときには、保護シートの交換を依頼したり、消費者自身が交換作業を行うことになるが、そのような作業は煩わしいことでもある。
【0004】
特許文献1には、保護シートを、化粧料収納皿を載置する支持枠に取り付け、保護シートにヒンジ部を設けることなく、化粧料収納皿の上面を開閉可能としたコンパクトケースが記載されている。
また、特許文献2には、保護シートに、化粧料レフィルに相当する化粧料収納中皿の上面を覆う部分、下面に配される部分、及びそれらの間を連結する部分を設け、化粧料収納中皿を受け皿部に固定する際に、該化粧料収納中皿の下面に配される部分を、化粧料収納中皿と受け皿部との間に挟むことによって保護シートを脱着可能に固定できるようにしたコンパクトケースが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−065348号公報
【特許文献2】特開2004−255061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のコンパクトケースは、保護シートが、簡単に外れてしまう可能性が高い。また、特許文献2のコンパクトケースも、化粧料レフィルの交換時に保護シートが意図せずに外れて、紛失してしまう恐れがある。また、化粧料レフィルをセットする際に、保護シートの位置がずれて、化粧料レフィルを正常な位置にセットできなくなる恐れがある。
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、化粧用コンパクトケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、化粧料レフィルを収容する化粧料収容部及び化粧料の塗布具を収容する塗布具収容部を有するケース本体と、蓋体と、化粧料が蓋体に設けられた鏡に付着するのを防止する保護シートとを具備する化粧用コンパクトケースであって、前記ケース本体は、該ケース本体の平面視において、前記蓋体が連結されている側を後方、該蓋体が連結されている側とは反対側を前方としたときの前後方向、及び該前後方向と直交する方向である長手方向を有しており、前記ケース本体の前記長手方向における記化粧料収容部より外側に位置する部分にシート挿入孔が設けられており、前記保護シートは、前記シート挿入孔に、該保護シートに設けた取り付け片が挿入され、該取り付け片が、該シート挿入孔の入り口より前記長手方向の長さが拡大した空間内に折り返された部分を有しており、前記保護シートに前記取り付け片を引き抜く力が加わったときに、前記折り返された部分の先端縁が、前記シート挿入孔の前記入り口付近に生じた段差部又は出っ張りに当接することによって、該取り付け片の引き抜きが阻止されるように構成されている、化粧用コンパクトケースを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧用コンパクトケースによれば、化粧料レフィルを交換して長期間に亘って使用しても、保護シートがケース本体から取れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る化粧用コンパクトケースの、保護シートを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図2図1に示す化粧用コンパクトケースの、保護シートを取り付けた後の状態を示す斜視図である。
図3図1に示す化粧用コンパクトケースに用いた保護シートを、折り返された部分を延ばした状態として示す平面図である。
図4図3に示す保護シートを、先端部を折り返した状態として、シート挿入孔に挿入する様子を示す平面図である。
図5図5(a)は、図2のII−II線に沿う断面の部分拡大図である。但し、保護シートは、化粧料収容部を覆うように寝かした状態としてある。図5(b)は、図5(a)の一部を拡大して示す図である。
図6図2に示す化粧用コンパクトケースの、一対のシート挿通孔を通る位置における、ケース本体の幅方向に沿う断面を示す拡大断面図である。
図7】本発明に係る保護シートの他の例を示す図である。
図8】本発明に係る保護シートの更に他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態である化粧用コンパクトケース1は、図1及び図2に示すように、化粧料レフィル31を収容する化粧料収容部3及び化粧料の塗布具41を収容する塗布具収容部4を有するケース本体2と、蓋体5と、化粧料が蓋体5に付着するのを防止する保護シート6とを具備する。
化粧料レフィル31は、例えばファンデーションである化粧料32が、上面が開口した深さの浅い薄型の容器33に収容されたものであり、化粧料収容部3に収容して該化粧料収容部3内に固定された状態として使用される。化粧料レフィル31の外周部には、化粧料収容部3内に固定するための係合凹部34が設けられており、係合凹部34が、化粧料収容部3の内周面の対応する位置に設けられた係合突起35,36と係合することによって、化粧料収容部3内に収容された状態が安定に維持される。
化粧料の塗布具41は、化粧料の種類に応じて適切なものが用いられ、化粧料が、ファンデーションである場合には、図1に示すような、パフと呼ばれるスポンジ状の塗布具が好ましく用いられる。塗布具収容部4は、塗布具41を収容可能な大きさの凹部として形成されている。蓋体5は、蝶番部52を介してケース本体2に対して回動自在に連結されており、ケース本体2の上面を開閉自在である。蓋体5は、閉蓋時に、塗布具収容部4側を向く内面に鏡51が設けられている。
【0012】
化粧用コンパクトケース1を用いて化粧を行うには、蓋体5を開いて、塗布具収容部4から塗布具41を取り出し、該塗布具41で、化粧料レフィル31内の化粧料32を擦り取り、擦り取った化粧料を、蓋体5に設けられた鏡51を見ながら、肌面等に塗布する。化粧料レフィル31内の化粧料32を使い切った場合には、化粧料レフィル31ごと取り出し、新しい化粧料レフィルに交換する。
【0013】
保護シート6は、蓋体5の閉蓋時に化粧料レフィル31の上面を覆う本体部分61と、本体部分61から突出する一対の取り付け片62,62とを有している。取り付け片62は、保護シート6を、ケース本体2に取り付けるための部分であり、保護シート6は、図4に示すように、一対の取り付け片62,62を、ケース本体2に設けられた一対のシート挿入孔7,7に挿入することによって、該ケース本体2に、容易には外れないように固定されている。より具体的に説明すると、保護シート6は、図3に示すように、取り付け片62の突出方向の先端側から順に、折り返し部63,第1ヒンジ部64及び第2ヒンジ部65を有している。取り付け片62を、先端縁66と折り返し部63との間の先端部67、折り返し部63と第1ヒンジ部64との間の中間部68、及び第1ヒンジ部64と第2ヒンジ部65との間の基端部69に区分すると、ケース本体2に取り付けられた状態の取り付け片62は、先端部67が、取り付け片62の先端縁から2〜5mm程度離れた位置にある折り返し部63において折り返されており、図5に示すように、その折り返された先端部67が、取り付け片62の折り返された部分となっている。折り返された先端部67と折り返されていない中間部68との間は、60度以下、好ましくは45度以下の鋭角をなすように屈曲している。折り返された先端部67は、折り返されていない中間部68に密着するように折り返されていても良い。
【0014】
第1ヒンジ部64及び第2ヒンジ部65は、保護シート6を、ケース本体2に対する取り付け部分付近において折れ曲がり易くするものであり、ヒンジ部の存在により、保護シート6を回動させ、化粧料収容部3の上面を開閉させることが容易となる。
本実施形態においては、ヒンジ部として、保護シート6を構成する合成樹脂製のシートに、ケース本体2の幅方向Yに延びる直線状の押し罫(罫線)を形成してある。また、その押し罫(罫線)は、例えば、通常の金属押し刃での冷間押し、または加熱押しによって形成することができる。
押し罫(罫線)は一直線に連続したものでよいが、部分的に押し罫がない部分があってもよい。また、部分的には貫通した箇所が存在してもよい。
【0015】
本実施形態においては、図4に示すように、保護シート6の一端部を固定するためのシート挿入孔7,7が、ケース本体2の長手方向Xにおける化粧料収容部3側の該化粧料収容部3より外側に位置する部分Gに形成されている。また、図5に示すように、保護シート6は、そのシート挿入孔7,7に、該保護シート6に設けられた取り付け片62,62が挿入され、該取り付け片62,62が、該シート挿入孔7の入り口より幅が拡大した空間71内に、折り返された部分67を有することによって、ケース本体2に固定されている。
この折り返された部分67は、取り付け片62における先端縁66から折り返し部63までの範囲の、折り返された先端部67である。
シート挿入孔7の入り口より幅が拡大した空間7は、ケース本体2の長手方向Xにおける寸法W2が、同方向Xにおける入り口の寸法W1よりも大きい空間71であり、このような空間内に、取り付け片62の折り返された部分67が存在することにより、取り付け片62を引き抜く力が加わったときに、該折り返された部分67、好ましくはその先端縁66が、シート挿入孔7の入り口付近に生じた段差部や出っ張り72に当接して、取り付け片62が引き抜かれることが阻止される。
【0016】
本実施形態の化粧用コンパクトケース1によれば、このようにして、シート挿入孔7に、保護シートに設けた取り付け片62が挿入され、該取り付け片62が、シート挿入孔7の入り口より奥の空間71内に折り返された部分67を有するため、取り付け片62が、シート挿入孔7から抜けにくく、化粧料レフィルの交換を繰り返して長期間使用しても、保護シート6がケース本体2から外れにくい。
また、保護シート6を上述した態様でケース本体2に取り付けてあるため、化粧料の塗布を行うために、保護シート6の開閉を繰り返し行っても、保護シート6の本体部分61と取り付け片62との境界部付近に疲労(劣化)が生じにくく、保護シート6を長期間使用しても、保護シート6が根元付近からちぎれて取れてしまうといったことも起こりにくい。
また、保護シート6に設けた取り付け片62を、特許文献2のように、化粧料レフィル31と化粧料収容部3の底部との間に挟んで固定した場合とは異なり、化粧料レフィル31を交換する際に、保護シート6が外れることがなく、また保護シート6の位置がずれて、化粧料レフィル3を適正な位置に固定できなくなることもない。
【0017】
本実施形態の化粧用コンパクトケース1によれば、このようにして、化粧料レフィル31を交換して長期間に亘って使用しても、保護シート6がケース本体2から取れにくい。
【0018】
更に、本実施形態によれば、保護シート6を固定するためのシート挿入孔7,7を、ケース本体2の長手方向Xにおける化粧料収容部3側に設け、蓋体5の閉蓋時に、化粧料収容部3内に収容した化粧料レフィル31の上面を保護シート6が覆われるようにしたので、化粧料レフィル31内の粉体等が鏡51に付着することがない。
【0019】
また、本実施形態の化粧用コンパクトケース1においては、図1及び図5に示すように、化粧料収容部3の内周面に、化粧料レフィル31の係合凹部34と係合する2種類の係合突起35,36が形成されている。
2種類の係合突起35,36のうちの一方は、シート挿入孔7側に空間71を形成して前後に変位可能とした可撓片37に設けられた係合突起35であり、他方は、化粧料収容部3の内周面に変位不能に形成された係合突起36である。
そして、前述した保護シート6の取り付け片62は、図5に示すように、係合突起35が設けられた可撓片37の後方の空間71内に、前述した折り返された部分(先端部)67を有している。
【0020】
化粧料レフィル31の脱着時に変位する可撓片37の後方の空間71を、取り付け片62固定用の空間として用いることにより、元々、そのような可撓片37を有するケース本体2においては、該空間71に連通するシート挿入孔7を形成するだけの若干の設計変更を行うだけで、本発明に用い得るケース本体を製造することができる。また、取り付け片62を固定するための空間を、可撓片37の後方の空間71とは別に形成する必要がなくなるため、コンパクトな形態のケース本体2とすることができる。
【0021】
本実施形態の化粧用コンパクトケース1においては、図6に示すように、一対の取り付け片62,62のそれぞれにおける前記折り返された部分(先端部)67の一部67aが、折り返されていない部分68の一側縁68aから突出して、該取り付け片62の片側に、ケース本体2の幅方向Yに向かって張り出すアンカー部67aが形成されている。
これらのアンカー部67aが、図6に示すように、ケース本体2に形成された被係合部73に係合することによって、保護シート6の抜けが一層確実に防止される。
本実施形態における、空間71は、ケース本体2の幅方向Yに沿って延びる細幅の空間であり、一方のシート挿入孔7の下方から他方のシート挿入孔7の下方に亘って連続している。本実施形態においては、アンカー部67aが係合する被係合部73は、ケース本体2の上面と該空間71との間を仕切る板状の天井部における、一対のシート挿入孔7,7間に位置する部分である。
【0022】
アンカー部67aは、取り付け片62のシート挿入孔7からの抜け防止の観点のみから考えれば、取り付け片62の両側に形成されていることが好ましいが、本実施形態におけるように、取り付け片62の片側のみに形成されていることが、図4に示すように、先端部67を折り返した状態の取り付け片62を、シート挿入孔7に挿入することが容易であるため好ましい。
【0023】
また、取り付け片62は、図4及び図6に示すように、アンカー部67aとは反対側の角部62aが、円弧状又はテーパー状に加工(カット)されていることが好ましい。角部62aは、取り付け片62の折り返し部63のアンカー部67aとは反対側の端に生じる角部である。
アンカー部67aとは反対側が円弧状又はテーパー状に加工されていると、先端部67を折り返してアンカー部67aを生じさえた状態の取り付け片62を、シート挿入孔7に挿入することが容易となる。テーパー状は、取り付け片62の先端側(折り返し部63側)に向かうに連れて、アンカー部67aが突出する側に近づくように傾斜した形状である。
【0024】
アンカー部67aが、折り返されていない部分(中間部)68の側縁から突出する長さ(ケース本体2の幅方向Yに沿う長さ)L3は、保護シート6の取り付け片62の抜け防止の観点から、好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2mm以上であり、また、シート挿入孔7への挿入を容易とする観点から、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下である。
また、アンカー部67aとは反対側の角部62aの円弧状又はテーパー状にカットされた部分の、ケース本体2の幅方向Yに沿う長さL4は、前記アンカー部67aの前記長さL3に対する割合が、好ましくは30%以上、更に好ましくは70%以上であり、また、好ましくは150%以下、更に好ましくは110%以下である。
アンカー部67aとは反対側の角部62aが円弧状又はテーパー状に加工されている態様には、円弧状にカットされている場合、テーパー状にカットされている場合、円弧とテーパー状とを繋げた形状にカットされている場合の何れもが含まれる。換言すれば、シート挿入孔7に挿入することが容易となる形態を満たせばよい。
【0025】
本実施形態における保護シート6は、図4に示すように、一対の取り付け片62,62のそれぞれにおける、互いに向かい合う内方側にアンカー部67aが形成されている。本発明においては、一対の取り付け片62,62のそれぞれにおける、互いに逆方向に向かう外方側にアンカー部67aを形成しても良いが、本実施形態におけるように、互いに向かい合う内方側にアンカー部67aを有する方が、保護シート6を捻ったときのケース本体2からの外れにくさの点で優れる。
【0026】
また、本実施形態における保護シート6は、図3及び図5に示すように、ケース本体2に対する取り付け部分の付近に、第1ヒンジ部64と第2ヒンジ部65の2つのヒンジ部を有している。第1ヒンジ部64と第2ヒンジ部65は、シート挿入孔7の入り口からの距離が相互に異なっている。
ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂からなるシートは、繰り返し折り曲げられると切れやすくなるが、保護シート6に2つのヒンジ部64,65を設けることによって、各ヒンジに加わる折り応力が分散して低下し、各ヒンジ部分でのシートの破断が生じにくくなる。また、2つのヒンジ部64,65を有することで、折れ曲がり性の自由度が向上し、例えば、本体部分61を、図5(b)に実線で示す右向きに延びた状態から、180度回動させて左向きに延びた状態とすることも容易となり、更には、ケース本体2の外周部に形成された化粧料、特に粉体の漏出防止のために設けた外周壁21の外側において、図5(b)に点線で示すように、該外周壁21よりも低い位置まで下降するように傾斜した状態とすることも可能である。このような状態まで回動させてその状態に保持できると、化粧料を、塗布具で掻き取りないし拭き取りする操作の作業性が向上する。
なお、本実施形態における2つのヒンジ部64,65は、ケース本体2に固定された状態の保護シート6におけるシート挿入孔7の位置と本体部分61との間に形成されている。
【0027】
保護シート6に一つ又は二つ以上のヒンジ部を設ける場合、そのヒンジ部は、例えば、図7(a)及び図7(b)に示すヒンジ部64のように、折線64Aが延びる方向である折線方向とは異なる方向に延びる切り込み81を有することが好ましい。また、保護シート6の一つ又は二つ以上のヒンジ部を設ける場合、そのヒンジ部は、例えば図7(c)及び図7(d)に示すヒンジ部64のように、その折線64A上に、該折線64Aに沿って進行する切れを、該折線64Aから離れる方向に導く貫通孔82やスリット83を有することも好ましい。
保護シートの長期間の使用によりヒンジ部が弱くなると、該ヒンジ部が切れやすくなる恐れがあるが、ヒンジ部の折線に沿って進行する切れを、折線から離す方向に導くことで、その切れの進行を阻止することができる。これにより、保護シートの一層長期に亘る使用が可能となる。
【0028】
保護シート6に複数のヒンジ部を設ける場合、その総てのヒンジ部に、上記の切り込み81、貫通孔82、スリット83等を設けてもよいし、複数のヒンジ部のうちの一部のヒンジ部のみに、上記の切り込み81、貫通孔82,スリット83等を設けても良い。
上記の切り込み81、貫通孔82,スリット83等は、取り付け片62における、ケース本体の幅方向Yの外方側の縁部62s又はその近傍に設けることが好ましい。例えば、上述した切り込み81は、取り付け片62の外方側の縁部62sに始端を有することが好ましく、上述した貫通孔82,スリット83は、取り付け片62の外方側の縁部からの距離が、好ましくは4mm以下であり、更に好ましくは3mm以下であり、また、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上である。なお、貫通孔82の形状は、図7(c)に示す正方形状のものに限られず、三角形、五角形等の他の形状であっても良い。
【0029】
ケース本体及び蓋体の鏡以外の部分は、例えば、それぞれ合成樹脂の成形品である。蓋体の鏡は、その成形品に接着剤等の公知の手段により固定する。
保護シートを形成するシートは、前述したように、合成樹脂製のシートであることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂からなるものや、これらの樹脂などで複数層に形成したもの等を用いることができる。また、保護シートは、不透明のものであっても良いが、透明であることが好ましい。
【0030】
保護シートを形成するシートの厚みは、特に制限されず、構成樹脂に応じて適宜の厚みとすることができる。
例えば、構成樹脂が、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンである場合、保護シートを形成するシートの厚みは、取り付け片に、ある程度の剛性を持たせて、保護シートの抜け防止機能が確実に発現されるようにする観点から、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.2mm以上であり、また、肌に当たったときの感触や、シートの開閉力を良好とする観点等から、好ましくは0.4mm以下、更に好ましくは0.3mm以下である。
【0031】
図5(b)に示すように、ケース本体2は、ケース本体の長手方向Xにおける、シート挿入孔7を挟む両側それぞれに、長手方向Xの長さL5,L6が1.2mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上の肉厚壁22,23を有することが、折り返し部分67が収容される空間71を形成しつつ、ケース本体2に充分な強度を確保する観点から好ましい。また、保護シート6が複数のヒンジ部64,65を有すると、このような肉厚壁22又は23を有する場合であっても、保護シート6をスムーズに回動することができる。肉厚壁22,23の長手方向Xの長さL2,L3は、シート挿入孔7を挟む両側において測定する。
【0032】
以上、本発明をその好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上記の実施形態に制限されることなく種々変更可能である。
例えば、保護シート6に設ける取り付け片を一つとし、それに対応してケース本体に設けるシート挿入孔も一つのみであっても良い。その場合、アンカー部は、取り付け片の両側に形成することが好ましい。また、取り付け片62の先端部67(取り付け片62の折り返された部分)の折り返し方向は、図5に示すように、先端部67が中間部68よりも内側(化粧料収容部側)に位置するように折り返しても良いが、先端部67が中間部68よりも外側に位置するように折り返してもよい。また、保護シート6に設ける取り付け片が、2回以上折り返されていても良い。また、保護シート6のヒンジ部は、上記の実施形態のように2本設けることが好ましいが、それに代えて、1本又は3本以上設けることもできる。図3に示す保護シート6の操作用突出部61aは無くても良い。
【0033】
また、保護シートの取り付け片のアンカー部は、ケース本体の長手方向Xと直交する方向(幅方向)Yに突出してケース本体に係合し、該保護シートのシート挿入孔からの抜け難さを向上し得る他の形状や構成のものであっても良く、例えば、図8(a)に示すアンカー部67a’のように、取り付け片62の折り返されていない部分68の側縁に、該側縁から突出する突起として形成されていても良い。なお、図8(a)は、取り付け片の先端部67を折り返した状態、図8(b)は、取り付け片の先端部67を折り返す前の状態を示す。
【0034】
また、上述した保護シート6については、図2に示すように、レフィル31を覆う形態を示し説明している。この形態は、容易にシートを開閉できる等の利点を有する。尚、課題として、スポンジ41側の鏡が汚れる可能性がある。したがって、鏡の全面の汚れを抑制したい場合は、保護シートをX方向に伸ばしスポンジ41まで覆う事も可能でX方向の長さは種々選択可能である。
【0035】
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 化粧用コンパクトケース
2 ケース本体
21 外周壁
3 化粧料収容部
31 化粧料レフィル
32 化粧料
33 容器
34 係合凹部
35 係合突起(可撓片に設けられた係合突起)
36 係合突起
37 可撓片
4 塗布具収容部
41 塗布具
5 蓋体
51 鏡
52 蝶番部
6 保護シート
61 本体部分
62 取り付け片
62a 角部
63 折り返し部
64 第1ヒンジ部
65 第2ヒンジ部
66 先端縁
67 先端部(折り返された部分)
67a,67a’ アンカー部
68 中間部(折り返されていない部分)
68a 折り返されていない部分の側縁
69 基端部
7 シート挿入孔
71 空間
72 出っ張り
73 被係合部
81 切り込み
82 貫通孔
83 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8