特許第6276937号(P6276937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276937
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】反射断熱材および熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/08 20060101AFI20180129BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20180129BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F16L59/08
   F27B17/00 B
   F27D1/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-157163(P2013-157163)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25548(P2015-25548A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】306039120
【氏名又は名称】DOWAサーモテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100076130
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】山田 恒孝
【審査官】 小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−008681(JP,B1)
【文献】 特開平05−026391(JP,A)
【文献】 特開平07−043077(JP,A)
【文献】 特開2009−097596(JP,A)
【文献】 特公平08−020035(JP,B2)
【文献】 特開2009−047285(JP,A)
【文献】 実開昭59−13947(JP,U)
【文献】 特開昭62−2094(JP,A)
【文献】 特開2013−68141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/00−59/22
F27B 17/00−19/04
F27D 1/00− 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材層の片面に、黒色板、空気層、反射材が順に積層され
前記黒色板は、黒体塗料を塗布した金属板または黒皮鉄板であることを特徴とする、反射断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の反射断熱材が、前記反射材を炉の外側に向けて、炉内の側壁および天井に設置されていることを特徴とする、熱処理炉
【請求項3】
前記反射材の外側に炉殻が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射断熱材およびその反射断熱材を設けた熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱炉や熱処理炉等の炉体には、外壁に沿って断熱層が設けられ、さらに省エネルギーを目的として、熱反射板を用いることが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、断熱材を複数の層に分け、各層間に反射板を介在させた反射断熱構造を有する炉が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、カバー本体内の空間に、断熱材、反射板、および空隙部が配置された断熱カバーで、熱処理炉の炉壁を覆うことが開示されている。
【0005】
さらに特許文献3では、断熱材が設けられたケーシングの炉内側に、複数枚の反射板を積層してなるリフレクタを備えた断熱構造を有するセラミックス素体の焼成などに用いられる熱処理炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−51610号公報
【特許文献2】特開平10−318681号公報
【特許文献3】特開2012−21742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、最高使用温度が800〜1100℃になる高温雰囲気炉では、上記の各特許文献に記載されたような反射板を設けただけでは、十分な断熱効果は得られなかった。また、特許文献3のように複数枚の反射板を用いる場合、コストがかさむうえ、リフレクタ全体が厚くなるため、小型の炉には適用しにくいという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、高い熱反射率および断熱性能を有し、小型の炉でも適用できるような薄く且つ低コストの反射断熱材およびその反射断熱材を設置した熱処理炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、断熱材層の片面に、黒色板、空気層、反射材が順に積層され、前記黒色板は、黒体塗料を塗布した金属板または黒皮鉄板であることを特徴とする、反射断熱材を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記反射断熱材が、前記反射材を炉の外側に向けて、炉内の側壁および天井に設置されていることを特徴とする、熱処理炉を提供する。前記熱処理炉において、前記反射材の外側に炉殻が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、厚みが少なく簡易な構成で、高い熱反射率および断熱性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる反射断熱材の例を示す断面図である。
図2図1の組み立て方法の例を示す拡大断面図である。
図3】本発明にかかる反射断熱材を用いた熱処理炉の例を示す断面図である。
図4】実施例1の本発明例および比較例を示す断面図であり、(a)は本発明例、(b)は比較例1、(c)は比較例2を示す。
図5】実施例2の本発明例および比較例を示す断面図であり、(a)は比較例3、(b)は比較例4、(c)は比較例5、(d)は本発明例2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明にかかる反射断熱材の実施形態の一例を示す。
【0016】
反射断熱材1は、断熱材層2の一方の面、すなわち炉に取り付ける際に炉外側11になる面に、黒色板3が取り付けられ、黒色板3の外側に、空気層4を介して反射材5が取り付けられた構成である。
【0017】
断熱材層2は、例えば耐熱レンガ、セラミックボード、セラミックファイバー、真空断熱材、多孔質断熱材等を単独または複数層重ね合わされて形成される。黒色板(黒体)3は、市販されている酸化皮膜による黒皮鉄板の他、SUSなどの表面に耐熱性の黒体塗料を塗布したものが用いられる。黒色板3が厚すぎると、炉の作製に必要なガスや熱電対などを炉内に導入するために黒色板3に形成される穴の面からの放熱が大きくなり、すなわち板厚方向に垂直な方向の熱移動が大きく、それが放熱ロスに繋がる。また、薄すぎると剛性に欠けるため、黒体板3の厚さは1〜6mm程度が好ましい。
【0018】
空気層4の厚さは、黒色板3と反射材5との接触を避けて熱伝導を遮断し、断熱効果を得ることができればよく、板の変形を考慮すると空気層4の厚さの下限は5mm程度が好ましい。厚いほど断熱効果が大きいが厚すぎると炉体が大きくなり、また空気層4内の空気の量が多くなって、その空気を暖める分だけ定常状態に達するまでの炉の昇温時間が長くかかるので、上限は20mm程度が好ましい。
【0019】
反射材5は、熱反射率が高く耐熱性に優れたSUSなどの金属板等が用いられる。内側反射および外側放熱の機能を有する市販の反射材が好ましい。反射材5の厚さは、施工上の扱い易さによって決めればよい。厚すぎると重く、薄すぎると扱いによっては切創など怪我の恐れがあるので、0.5〜5mm程度が好ましい。反射断熱材1を薄くするために、反射材5として、例えばシート状の遮断熱材「サーモプロテクト」(製品名、株式会社サンハロー製)が好適である。
【0020】
さらに、反射断熱材1の外側に、既存の炉と同様、鉄板などからなる炉殻を設けてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態における反射断熱材1の組み立て方法の一例を示す。断熱材層2の外枠21に、黒色板3が溶接される。さらに、黒色板3に、例えば図示するようにT字状のブラケット22を溶接により取り付ける。ブラケット22は、空気層4を所定の厚さに形成するリブ22aと、炉殻6への取り付け面22bを有している。そして、炉殻6をブラケット22の取り付け面22bにボルト23等で止め、その際、取り付け面22bと炉殻6との間に、反射材5を挟み込む。あるいは、反射材5にもボルト23を貫通させて取り付け面22bに固定してもよい。
【0022】
図3は、本発明にかかる反射断熱材1を設置した高温熱処理炉10の一例を示す。熱処理炉10の外側表面を形成する例えば鉄やステンレス等の金属材料からなる炉殻6の内側の、天井部および側壁部に、反射断熱材1が取り付けられている。反射断熱材1は、断熱材層2、黒色板3、空気層4、および反射材5が順に積層された構成であり、反射材5を炉の外側に向けて取り付けられる。床部には、セラミックブロックや耐熱レンガ等の断熱構造材31が配置されている。反射断熱材1は、天井および側壁の全面に設け、熱処理炉10の内部の熱処理室32を取り囲むようにすることが効果的である。熱処理室32内には、例えば被処理体20を囲むようにヒータ33が設けられ、熱処理室32内が800℃〜1100℃、浸炭処理においては850℃〜1050℃程度に加熱されて、熱処理室32に搬入された被処理体20に対して浸炭等の熱処理が行われる。さらに、炉内上部にファン34が設けられ、炉内の雰囲気が撹拌される。
【0023】
本発明の反射断熱材1によれば、熱反射率の非常に小さい黒色板3が熱の吸収を良くし、空気層4および熱反射率の高い反射材5との組合せにより、加熱された炉の定常状態において、空気層4および反射材5の断熱および熱反射効果と合わせて、炉壁(炉殻)の温度が極端に上昇することなく且つ炉外への放熱量を大きく低減することができると考えられる。すなわち、厚みが少なく簡易な構成で、高い反射断熱効果が得られ、低コストで小型の炉にも適用できる。
【0024】
また、本発明の反射断熱材は、例えば既存の浸炭炉や窒化炉、焼結炉、焼鈍炉、連続熱処理炉などに追加または改造によって取り付けることが容易にできるため、非常に適用の範囲が広いというメリットを有する。また、反射断熱材を脱着可能としておけば、炉の立ち下げ時に反射板を適時はずすことで、外壁の冷却能が向上し、速く冷却することができる。さらに、本発明の反射断熱材は、前述の機能を発現させることができれば、材料が耐える限り使用温度域は問わないが、炉の外殻に用いられるときは200℃以下が好ましい。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0026】
例えば、反射材5は、熱反射率が高く耐熱性に優れた金属であればよく、SUS、Al、Agめっき金属板、耐熱合金等の金属板、またはSS材に反射効果を持たせたものなどでもよい。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
図4に示すように、本発明の反射断熱材1の表面に炉殻として鉄板7を取り付けた本発明例1(図4(a))と、断熱材層2の表面に鉄板7のみを取り付けた比較例1(図4(b))、本発明例1から黒色板3を除いた比較例2(図4(c))について、炉に取り付けて比較試験を行った。
【0028】
本発明例1としては、炉内側から厚さ10mmのSiCプレートと厚さ50mmの低熱伝導率断熱材ロスリムボード(ニチアス株式会社製)3層からなる断熱材層2に、黒色板3として厚さ1.6mmの黒皮鉄板、厚さ10mmの空気層4、反射材5として厚さ0.2mmのサーモプロテクト(製品名、株式会社サンハロー製)を取り付け、最外層に炉殻として厚さ4.5mmの鉄板7(SS材)を設けた。比較例1は、本発明例1と同じ断熱材層2に、厚さ4.5mmの鉄板7(SS材)のみを取り付けた。比較例2は、本発明例1と同じ断熱材層2から厚さ10mmの空気層4を介し、反射材5として厚さ0.2mmのサーモプロテクトを取り付け、最外層に、厚さ4.5mmの鉄板7(SS材)を設けた。本発明例1および比較例1、2の構成と、それぞれの場合について、炉内の温度を950℃としたときの、鉄板7の外側の温度と放熱量を測定した結果を表1に示す。尚、表1中の○および×は各構成要素の取り付けの有無を示し、○は有り、×は無しを表す。
【0029】
【表1】
【0030】
本発明の反射断熱材を用いた本発明例は、放熱量が比較例1に対して42%、比較例2に対して22%低減した。したがって、黒色板3を用いることで熱反射効果が大きく高まり、従来と比較して極めて高い熱反射および断熱効果を有することが明らかになった。
【0031】
(実施例2)
図5に示す比較例3(図5(a))、比較例4(図5(b))、比較例5(図5(c))、本発明例2(図5(d))をそれぞれ炉に取り付けて、比較試験を行った。
【0032】
本発明例2としては、断熱材層2に、黒色板3として厚さ1.6mmの黒皮鉄板、厚さ5mmの空気層4、反射材5として厚さ0.2mmのサーモプロテクトを取り付け、最外層に炉殻として厚さ4.5mmの鉄板7(SS材)を設けた。比較例3は、本発明例2と同じ断熱材層2に、厚さ10mmの空気層4を介して厚さ4.5mmの鉄板7(SS材)を取り付けた。比較例4は、本発明例2の構成から反射材5を除いた。比較例5は、本発明例2の黒色板3の代わりに、黒色板3と同じ材質および厚さ(1.6mm)の黒色ではない反射板8を設け、他は本発明例2と同じ構成とした。比較例3〜5および本発明例2の構成と、それぞれの場合について、放熱量を測定した結果を表2に示す。尚、表2中の○および×は各構成要素の取り付けの有無を示し、○は有り、×は無しを表す。また、実施例2は、実施例1とは試験炉や外気温度などの試験条件が異なる。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示すように、比較例3と比較例4とを比べると、断熱材層2に黒色板3を取り付けるだけでは、放熱量が約2%しか低減しなかった。また、比較例5は、比較例3よりも放熱量が約14%低減したが、黒色板3を設けた本発明例2は約20%低減し、黒色板3および反射材5の両方を設けることで、熱反射効果が大きく高まり、従来と比較して極めて高い熱反射および断熱効果を有することが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、高温の加熱炉や熱処理炉の反射断熱材として適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 反射断熱材
2 断熱材層
3 黒色板
4 空気層
5 反射材
6 炉殻
10 熱処理炉
11 炉外側
20 被処理体
図1
図2
図3
図4
図5