特許第6276957号(P6276957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276957
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】インターホンシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20180129BHJP
   H04M 9/06 20060101ALI20180129BHJP
   H04L 25/12 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H04L25/02 F
   H04M9/06
   H04L25/12
   H04L25/02 303B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-207047(P2013-207047)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-73173(P2015-73173A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇夫
【審査官】 森谷 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−163950(JP,A)
【文献】 特開平08−070313(JP,A)
【文献】 特開平09−238164(JP,A)
【文献】 特開2013−179516(JP,A)
【文献】 特開平07−111480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04L 25/12
H04M 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主装置から延線される幹線と、前記幹線から分岐されて複数の端末器にそれぞれ接続される複数の分岐線と、前記主装置及び前記端末器間で信号伝送を行うにあたり前記幹線及び前記複数の分岐線間にそれぞれ挿入され、前記幹線が接続される幹線端子及び前記分岐線が接続される分岐線端子を有する複数の分岐器とを備えるインターホンシステムにおいて、
前記複数の分岐器は、自己の端末器から前記分岐線を経由して送信されてくる分岐線側伝送信号を検知し、自己の端末器から送信される前記分岐線側伝送信号が前記主装置に対するものであるか否かを検知する送信信号検知手段と、
自己の端末器から前記主装置に対し送信される前記分岐線側伝送信号を検知している間、前記送信信号検知手段から出力される制御信号によって前記幹線の特性インピーダンスで前記分岐線側伝送信号を前記幹線端子に送出するために制御される送信信号出力インピーダンス可変手段と、
前記幹線端子から受信され前記分岐線端子に送出される前記幹線側伝送信号が一次巻線から入力されるトランス(ただし、一次巻線の巻数、二次巻線の巻数との比である巻線比nをn>1にする)と、
前記二次巻線からの前記幹線側伝送信号を検知する受信信号検知手段と、
前記幹線側伝送信号を増幅する伝送信号増幅手段と、
前記伝送信号増幅手段による増幅利得を制御する利得制御手段とを備えることを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記送信信号検知手段は、前記分岐線側伝送信号が検知処理するために必要な時間分、前記送信信号出力インピーダンス可変手段への前記分岐線側伝送信号の入力を遅延させる前記制御信号を出力する機能を備えることを特徴とする請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項3】
前記伝送信号増幅手段は、前記受信信号検知手段で検知される前記幹線側伝送信号の減衰量を検知し、前記減衰量が所定の閾値レベル以上であったとき、前記分岐線端子への前記幹線側伝送信号の送出を停止する機能を備えることを特徴とする請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記利得制御手段は、前記受信信号検知手段で検知される前記幹線側伝送信号の減衰量が所定の閾値レベル未満であったとき、前記伝送信号増幅手段の利得を可変する機能を備えることを特徴とする請求項1又は請求項3記載のインターホン伝送装置。
【請求項5】
前記伝送信号増幅手段は、前記利得制御手段の利得レベルに対応させて前記幹線側伝送信号の波形補正を実行するイコライザ機能を備えることを特徴とする請求項1、請求項3又は請求項4のうち何れか1項記載のインターホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンシステムに係り、特に、幹線と分岐線との分岐点に挿入される分岐器を備えるインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のインターホンシステムとして、図4に示すように、主装置S10から延線される幹線L10と、幹線L10から分岐されて複数の端末器20a、20b、・・・、20nにそれぞれ接続される複数の分岐線L20a、L20b、・・・、L20nと、主装置10及び端末器20a、20b、・・・、20n間で信号伝送を行うにあたり幹線L10及び複数の分岐線L20a、L20b、・・・、L20n間にそれぞれ挿入される複数の分岐器30a、30b、・・・、30nとを有するインターホンシステムが知られている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
なお、以下の説明では、複数の端末器20a、20b、・・・、20n、複数の分岐線L20a、L20b、・・・、L20n、複数の端末器20a、20b、・・・、20nのそれぞれを単一のものとして区別するときは、説明を簡単にするため、単に、「端末器20」「分岐線L20」および「分岐器30」として説明する。
【0004】
このような構成のインターホンシステムにおいては、一般的に、幹線L10と分岐線L20との各分岐点にそれぞれ分岐器30を挿入することで、インピーダンスの不整合(ミスマッチ)による伝送信号の反射等の影響を抑制することが行われている。
【0005】
ここで、分岐器30を用いて反射等の影響を抑制するためには、以下の2つの条件を満たすように設計する必要がある。
【0006】
第1に、分岐器30に接続された端末器20での伝送信号の受信時において、幹線L10側から分岐線L20側を見たときのインピーダンスが伝送線路の特性インピーダンスよりも高くなっていることが必要である。
【0007】
第2に、分岐器30に接続された端末器20からの伝送信号の送信時において、分岐線L20側から幹線L10側を見たときのインピーダンスが伝送線路の特性インピーダンスと一致していることが必要である。
【0008】
図5は、上記の条件を満たす分岐器30の構成例を示している。
【0009】
同図において、分岐器30は、上流側(図5の左側)の幹線L10が接続される幹線端子T10a、T10bと、下流側(図5の右側)の幹線L10が接続される幹線端子T10a´、T10b´と、分岐線L20が接続される分岐線端子T20a、T20bとを備えており、これらの幹線端子T10a、T10b、T10a´、T10b´と分岐線端子T20a、T20bとの間には幹線端子T10a、T10b、T10a´、T10b´側を1次巻線、分岐線端子T20a、T20b側を2次巻線とするトランスTr10が接続されている。また、各幹線端子T10a、T10b、T10a´、T10b´とトランスTr10の1次巻線との間にはそれぞれ抵抗R1、R2が接続されている。
【0010】
なお、この分岐器30は幹線L10における分岐線L20の分岐点となる各部位に挿入される形で接続されるので、幹線端子T10a、T10b、T10a´、T10b´は、幹線L10の上流側と幹線L10の下流側とのそれぞれに対応して2組設けられており、上流側の幹線端子T10a、T10bと下流側の幹線端子T10a´、T10b´とが互いに接続されている。また、端末器20を分岐線L20の先端に接続する場合には、通常、端末器20は伝送線路とのインピーダンス整合(インピーダンスマッチング)を実現するために、伝送線路の特性インピーダンスに近いインピーダンスに設定されている。
【0011】
ここで、上記の第1の条件を満たすためには、トランスTr10の1次巻線の巻数N1と2次巻線の巻数N2との比である巻数比n(=N1/N2)を、n>1(つまり、N1>N2)とする必要がある。このとき、幹線L10側から見た分岐線L20側のインピーダンスZ1は、Z1=n2×Za+r1+r2となる。なお、Zaは伝送線路の特性インピーダンス、r1、r2はそれぞれ抵抗R1、R2の抵抗値を表している。
【0012】
また、分岐線L20側から見た幹線L10側のインピーダンスZ2は、Z2=(1/n)2×(r1+r2+Za/2)で表されるので、上記の第2の条件を満たすためには、抵抗R1、R2の抵抗値r1、r2は、次の式を満たす必要がある。
【0013】
Za≒(1/n)2×(r1+r2+Za/2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−303951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、このような構成の分岐器30においては、図6(a)に示すように上流側の幹線L10−下流側の幹線L10間をエネルギが通過するときの通過損失BL1と、幹線L10−分岐線L20間をエネルギが通過するときの分岐損失BL2との関係は、一般的には図6(b)に示すように、BL1≪BL2となるため、分岐器30を介して幹線L10−分岐線L20間をエネルギが通過する際に比較的大きな伝送損失(ロス)が生じる。
【0016】
ここで、このような構成のインターホンシステムにおける伝送システムにおいて、例えば第1の端末器20aから最後段の端末器20nへ伝送信号を送信する場合を例として考えると、伝送信号の伝送損失は、反射等の影響がないものとして、第1の分岐線L20aを通過する際のロス(ケーブル損失)と、第1の分岐器30aを分岐線端子T20a、T20b側から下流側の幹線端子T10a´、T10b´側へ通過する際の分岐損失と、第1の分岐器30a−最後段の分岐器30n間に存在する分岐器30b、・・・、30nを通過する際の通過損失と、第1の分岐器30a−最後段の分岐器30n間に存在する幹線L10でのケーブル損失と、最後段の分岐器30nを上流側の幹線端子T10a、T10b側から分岐線端子T20a、T20b側へ通過する際の分岐損失と、最後段の分岐線L20nを通過する際のケーブル損失とを足し合わせたものになる。
【0017】
従って、複数の分岐器30a、30b、・・・、30nを用いた接続形態では、インピーダンスの不整合による影響を抑制できるという利点がある反面、別々の分岐線L20a、L20b、・・・、L20nに接続された端末器20a、20b、・・・、20n間の信号伝送においては、常に、伝送信号を送信する側の端末器2が接続された分岐器30と、伝送信号を受信する側の端末器20が接続された分岐器30との2箇所で分岐損失BL2が生じ、ひいては伝送損失が大きくなるという難点があった。
【0018】
本発明は、このような難点を解決するためになされたもので、端末器間の信号伝送における伝送損失を低減することができるインターホンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的を達成するために、本発明のインターホンシステムは、主装置から延線される幹線と、幹線から分岐されて複数の端末器にそれぞれ接続される複数の分岐線と、主装置及び端末器間で信号伝送を行うにあたり幹線及び複数の分岐線間にそれぞれ挿入され、幹線が接続される幹線端子及び分岐線が接続される分岐線端子を有する複数の分岐器とを備えるインターホンシステムにおいて、
複数の分岐器は、自己の端末器から分岐線を経由して送信されてくる分岐線側伝送信号を監視し、自己の端末器から送信される分岐線側伝送信号が主装置に対するものであるか否かを検知する送信信号検知手段と、
自己の端末器から主装置に対し送信される分岐線側伝送信号を検知している間、送信信号検知手段から出力される制御信号によって幹線の特性インピーダンスで分岐線側伝送信号を幹線端子に送出するために制御される送信信号出力インピーダンス可変手段と、
幹線端子から受信され分岐線端子に送出される幹線側伝送信号が一次巻線から入力されるトランス(ただし、一次巻線の巻数、二次巻線の巻数との比である巻線比nをn>1にする)と、
二次巻線からの幹線側伝送信号を検知する受信信号検知手段と、
幹線側伝送信号を増幅する伝送信号増幅手段と、
伝送信号増幅手段による増幅利得を制御する利得制御手段とを備えるものである。
【0020】
本発明のインターホンシステムは、送信信号検知手段は、分岐線側伝送信号が検知処理するために必要な時間分、送信信号出力インピーダンス可変手段への分岐線側伝送信号の入力を遅延させる制御信号を出力する機能を備えるものである。
【0021】
本発明のインターホンシステムは、伝送信号増幅手段は、受信信号検知手段で検知される幹線側伝送信号の減衰量を検知し、減衰量が所定の閾値レベル以上であったとき、分岐線端子への幹線側伝送信号の送出を停止する機能を備えるものである。
【0022】
本発明のインターホンシステムは、利得制御手段は、受信信号検知手段で検知される幹線側伝送信号の減衰量が所定の閾値レベル未満であったとき、伝送信号増幅手段の利得を可変する機能を備えるものである。
【0023】
本発明のインターホンシステムは、伝送信号増幅手段は、利得制御手段の利得レベルに対応させて幹線側伝送信号の波形補正を実行するイコライザ機能を備えるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のインターホンシステムによれば、分岐器に搭載された送信信号検知手段(送信信号検知回路)や送信信号出力インピーダンス可変手段(送信信号出力インピーダンス可変回路)によって、端末器から分岐線を経由して送信されてくる分岐線側伝送信号を検知することで、端末器から主装置に対し送信される分岐線側伝送信号を検知している間、幹線の特性インピーダンスで分岐線側伝送信号を送出することができる。従って、本発明のインターホンシステムによれば、端末器からの伝送信号の送信時には受信経路よりも伝送損失の少ない送信経路に通過させることができるので、端末器間での伝送損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例におけるインターホンシステムの全体構成を示すブロック図。
図2】本発明の一実施例における分岐器のブロック図。
図3】本発明の一実施例における幹線側伝送信号の波形整形の状態を示す説明図。
図4】従来のインターホンシステムの全体構成を示すブロック図。
図5】従来のインターホンシステムにおける分岐器のブロック図。
図6】従来の分岐器における上流側の幹線−下流側の幹線間をエネルギが通過するときの通過損失と、幹線−分岐線間をエネルギが通過するときの分岐損失との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のインターホンシステムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の一実施例におけるマンション等の集合住宅に設置されるインターホンシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0027】
本発明のインターホンシステムは、集合玄関機としての主装置1から延線される平衡線路(ペア線)からなる幹線L1と、幹線から分岐されて複数の居室親機としての端末器2a、2b、・・・、2nにそれぞれ接続される複数の平衡線路(ペア線)からなる分岐線L2a、L2b・・・、L2nと、主装置1及び端末器2a、2b、・・・、2n間で信号伝送を行うにあたり幹線L1及び複数の分岐線L2a、L2b、・・・、L2n間にそれぞれ挿入される複数の分岐器3a、3b、・・・、3nとを備えている。なお、以下の実施例では、複数の端末機2a、2b、・・・、2n、複数の分岐器3a、3b、・・・、3n、複数の分岐線L2a、L2b、・・・、L2nのそれぞれを単一のものとして区別するときは、説明を簡単にするため、単に、「端末機2」、「分岐器3」、「分岐線L2」として説明する。
【0028】
図2は、本発明の一実施例における複数の分岐器のブロック図を示している。
【0029】
同図において、複数の分岐器3は、それぞれ同様の構成とされ、それぞれ幹線L1が接続される幹線端子T1a、T1b、T1a´、T1b´(以下、上流側の幹線端子T1a、T1bと下流側の幹線端子T1a´、T1b´は電気的に等価であるから、以下の実施例では、特に区別しないときには単に幹線端子「T1A、T1B」として説明する。)と、分岐線L2a、L2b・・・、L2nが接続される分岐線端子T2a、T2bと、端末器2から分岐線L2を経由して送信されてくる分岐線側伝送信号S1を検知する送信信号検知手段としての送信信号検知回路31と、分岐線側伝送信号S1を幹線L1に出力するための送信信号出力手段としての送信信号出力回路32と、幹線端子T1A、T1Bから受信経路を経由して受信され分岐線端子T2a、T2bに送出される幹線側伝送信号S2を検知する受信信号検知手段としての受信信号検知回路33と、幹線側伝送信号S2を増幅する伝送信号増幅手段としての受信信号増幅回路34と、受信信号増幅回路34の増幅利得を制御する利得制御手段としての利得制御回路35と、幹線端子T1A、T1B側を一次巻線、分岐線端子T2a、T2b側を二次巻線とするトランスTr1とを備えている。また、送信信号出力回路32は、後述する幹線端子T1A、T1B及び分岐線端子T2a、T2b間に形成される信号経路であって幹線L1を経由して送信されてくる幹線側伝送信号S2の受信経路及び分岐線側伝送信号S1の送信経路のうち送信経路を経由して幹線端子T1A、T1Bに分岐線側伝送信号S1を送出し、幹線L1に介在する送信信号出力インピーダンス可変手段としての送信信号出力インピーダンス可変回路32aを備えている。
【0030】
ここで、送信信号検知回路31は、後述するように、複数の端末器2a、2b、・・・、2nのうち何れか1つから主装置1に対し送信される分岐線側伝送信号S1を検知している間、幹線L1の特性インピーダンスで分岐線側伝送信号S1を送出するために送信信号出力インピーダンス可変回路31aを制御する制御信号を出力する機能や分岐線側伝送信号S1が検知処理するために必要な時間分、送信信号出力インピーダンス可変手段としての送信信号出力インピーダンス可変回路31aへの分岐線側伝送信号S1の入力を遅延させる制御信号を出力する機能を備えている。また、受信信号増幅回路34は、後述するように、受信信号検知回路33で検知される幹線側伝送信号S2の減衰量を検知し、減衰量が所定の閾値レベル以上であったとき、分岐線端子T2a、T2bへの幹線側伝送信号S2の送出を停止する機能や利得制御回路35の利得レベルに対応させて幹線側伝送信号S2の波形補正を実行するイコライザ機能を備えている。さらに、利得制御回路35は、後述するように受信信号検知回路33で検知される幹線側伝送信号S2の減衰量が所定の閾値レベル未満であったとき、受信信号増幅回路34の増幅利得を可変する機能を備えている。
【0031】
なお、幹線側伝送信号として例えば、フレーム毎に伝送される信号の一形態として、その信号を構成する複数のスロットのうち、所定のスロットに、集合玄関機から特定の居室親機への呼出しがあることを示す呼出データ、集合玄関機の撮像機能で生成される映像データ、集合玄関機の通話機能で生成される通話データがそれぞれ組込まれている。また、分岐線側伝送信号として例えば、フレーム毎に伝送される信号の一形態として、その信号を構成する複数のスロットのうち、所定のスロットに、集合玄関機から特定の居室親機への呼出しに当該居室親機が応答したことを示す応答データ、特定の居室親機の通話機能で生成される音声データがそれぞれ組込まれている。
【0032】
次に、このように構成された本発明の一実施例におけるインターホンシステムの具体的な動作について説明する。なお、本発明の実施例において、住戸玄関に居る来訪者が玄関子機(不図示)を使用して所定の呼出操作を行い、この玄関呼出しを検出した居室親機としての端末器2の信号処理部(不図示)の制御による所定の呼出報知動作、及び居住者が端末器2の操作部(不図示)を使用して所定の応答操作を行い来訪者との間で通話を成立させる動作はそれぞれ、インターホン通信分野において周知な技術であるため、説明は省略する。
【0033】
先ず、本発明の第1の実施例におけるインターホンシステムにおいては、前述の分岐器3の各回路のうち、少なくとも送信信号検知回路31および送信信号出力インピーダンス可変回路32aを備えている。
【0034】
このように構成された伝送システムにおいては、幹線L1と当該幹線L1から分岐された複数の分岐線L2とを含む伝送線路と、各分岐線路L2の先端に接続された複数台の端末器2とを備え、これら複数台の端末器2間で伝送線路を介して信号伝送が行われる。
【0035】
ここで、端末器2を分岐線L2の先端に接続する場合には、通常、端末器2は伝送線路とのインピーダンス整合(インピーダンス・マッチング)を実現するために、伝送線路の特性インピーダンスに近いインピーダンスに設定されている。
【0036】
分岐器3は、伝送線路を構成する幹線L1と分岐線L2との各分岐点にそれぞれ挿入され、インピーダンス不整合による伝送信号の反射等の影響を抑制する。
【0037】
ここで、幹線L1および分岐線L2はペア線からなるので、上流側の幹線端子T1a、T1b、下流側の幹線端子T1a´、T1b´および分岐線端子T2a、T2bはそれぞれ2個1組として設けられている。さらに、この分岐器3は幹線L1の分岐線L2の分岐点となる各部位に挿入される形で接続されるので、幹線端子T1a、T1b、T1a´、T1b´は幹線L1の上流側(図1の左側)と幹線L1の下流側(図2の右側)とのそれぞれに対応して2組設けられており、上流側の端子T1a、T1bと下流側の端子T1a´、T1b´とが互いに接続されている。
【0038】
ここで、幹線端子T1A、T1Bと分岐線端子T2a、T2bとの間には、次に述べるように、端末器2で送受信される伝送信号を通す経路として送信経路Tx1と、受信経路Rx1との2つの経路が形成される。
【0039】
送信経路Tx1は、分岐線側伝送信号S1を幹線L1に出力するための送信信号出力手段としての送信信号出力回路32と、分岐線側伝送信号S1を検知するための送信信号検知回路31とを備えている。
【0040】
具体的には、送信経路Tx1の送信信号出力回路32の出力インピーダンスは、分岐線側伝送信号S1を送信するときは幹線L1の特性インピーダンスとなり、それ以外のときは高インピーダンスに制御されるようになっている。
【0041】
送信信号出力回路32の制御は、送信信号検知回路31により端末器2の分岐線側伝送信号S1の有無を検知することで行われている。
【0042】
受信経路Rx1は、幹線端子T1A、T1B側を一次巻線、分岐線端子T2a、T2b側を二次巻線とするトランスTr1を備えており、ここでは、トランスTr1の一次巻線の巻数N1、二次巻線の巻数N2との比である巻線比n(=N1/N2)をn>1(つまり、N1>N2)としてある。
【0043】
また、受信経路Rx1は幹線側伝送信号S2を検知するための受信信号検知回路33と、幹線側伝送信号S2を増幅する受信信号増幅回路34と、受信信号増幅回路34の増幅利得を制御する利得制御回路35とを備えている。
【0044】
具体的には、受信経路Rx1の受信信号増幅回路34は、幹線受信信号S2を受信信号検知回路33にて信号の有無および信号振幅を検知することで、利得制御回路35により適正信号振幅となるように利得制御がなされる。
【0045】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施例におけるインターホンシステムによれば、分岐器3に搭載された送信信号検知手段(送信信号検知回路31)や送信信号出力インピーダンス可変手段(送信信号出力インピーダンス可変回路32a)によって、端末器2から分岐線L2を経由して送信されてくる分岐線側伝送信号S1を検知することで、端末器2から主装置1に対し送信される分岐線側伝送信号S1を検知している間、幹線L1の特性インピーダンスで分岐線側伝送信号S1を送出することができる。従って、本発明のインターホンシステムによれば、端末器2からの伝送信号の送信時には受信経路よりも伝送損失の少ない送信経路に通過させることができるので、端末器間での伝送損失を低減することができる。
【0046】
次に、本発明のインターホンシステムの付加機能について説明する。
[実施例2]
この実施例においては、前述の第1の実施例におけるインターホンシステムに、更に、送信信号検知手段としての送信信号検知回路31に、分岐線側伝送信号S1が検知処理するために必要な時間分(例えば、100μsec程度)、送信信号出力インピーダンス可変手段としての送信信号出力インピーダンス可変回路32aへの分岐線側伝送信号S1の入力を遅延させる制御信号を出力する機能が付加されている。
【0047】
ここで、送信信号検知手段としての送信信号検知回路31は、ピーク・ホールド回路、全波整流回路、半波整流回路、またはパルス・カウント回路で構成され、これらの回路で分岐線L2を経由して送信されてくる分岐線側伝送信号S1の検知を行うことができる。
【0048】
本発明の第2の実施例におけるインターホンシステムによれば、分岐線側伝送信号S1が検知処理するために必要な時間分、送信信号出力インピーダンス可変回路32aへの分岐線側伝送信号S1の入力を遅延させることができることから、第1の実施例であるインターホンシステムの作用・効果に加えて、幹線L1への出力信号のいわゆる頭切れ現象の発生を防止することができる。
[実施例3]
この実施例においては、前述の第1の実施例または第2の実施例におけるインターホンシステムの分岐器3に、更に、幹線端子T1A、T1Bから受信経路を経由して分岐線端子T2a、T2bに送出される幹線側伝送信号S2を検知する受信信号検知回路33と、幹線側伝送信号S2を増幅する受信信号増幅回路34と、受信信号増幅回路34の増幅利得を制御する利得制御回路35とが付加されている。
【0049】
本発明の第3の実施例におけるインターホンシステムによれば、分岐器3に搭載された
受信信号検知回路33、受信信号増幅回路34および利得制御回路35により、幹線側伝送信号S2の有無および大きさを検知し、幹線側伝送信号S2を増幅することができることから、第1の実施例または第2の実施例であるインターホンシステムの作用・効果に加えて、線路長に依存する線路損失や分岐器3の挿入に伴う損失に因る減衰を補償し適切な信号振幅を得ることができる。
[実施例4]
この実施例においては、前述の第3の実施例におけるインターホンシステムの伝送信号増幅手段としての受信信号増幅回路34に、更に、受信信号検知回路33で検知される幹線側伝送信号S2の減衰量を検知し、減衰量が所定の閾値レベル(例えば、−210dB程度)以上であったとき、分岐線端子T2a、T2bへの幹線側伝送信号S2の送出を停止する機能が付加されている。
【0050】
本発明の第4の実施例におけるインターホンシステムによれば、分岐器3に搭載された受信信号増幅回路34に、受信信号検知回路33で検知される幹線側伝送信号S2の減衰量を検知し、減衰量が所定の閾値レベル以上であったとき、分岐線端子T2a、T2bへの幹線側伝送信号S2の送出を停止する機能が付加されていることから、第3の実施例であるインターホンシステムの作用・効果に加えて、次のような効果を奏する。すなわち、幹線側伝送信号S2として例えば、フレーム毎に伝送される信号の一形態として、その信号を構成する複数のスロットのうち、所定のスロットに、集合玄関機から特定の端末器(居室親機)2への呼出しがあることを示す呼出データ、集合玄関機の撮像機能で生成される映像データ、集合玄関機の通話機能で生成される音声データがそれぞれ組込まれているとき、この幹線側伝送信号S2の減衰量が例えば、幹線L1の線路長の長さに比例して所定の閾値レベル以上である場合、受信信号増幅回路34を経由して増幅しても、増幅後の幹線側伝送信号S2を受信する特定の端末器(居室親機)2では、幹線側伝送信号S2に組込まれた各種データ(呼出データ、映像データ、音声データ)に基づく正常な動作を行うことができず、誤動作を発生するおそれがあるところ、第4の実施例においては、それを防止するにあたって信号の送出を停止することができる。
[実施例5]
この実施例においては、前述の第3の実施例または第4の実施例におけるインターホンシステムの利得制御手段としての利得制御回路35に、受信信号検知手段としての受信信号検知回路33で検知される幹線側伝送信号S2の減衰量が所定の閾値レベル(例えば、30dB程度)未満であったとき、伝送信号増幅手段としての受信信号増幅回路34の利得を可変する機能が付加されている。
【0051】
本発明の第5の実施例におけるインターホンシステムによれば、分岐器3に搭載された利得制御回路35に、受信信号検知回路33で検知される幹線側伝送信号S2の減衰量が所定の閾値レベル未満であったとき、受信信号増幅回路34の利得を可変する機能が付加されていることから、第3の実施例または第4の実施例であるインターホンシステムの作用・効果に加えて、次のような効果を奏する。すなわち、幹線側伝送信号S2の減衰量が例えば、幹線L1の線路長の長さに比例して所定の閾値レベル未満である場合、その減衰量に対応させた利得で受信信号増幅回路34を経由して増幅することにより、増幅後の幹線側伝送信号S2を受信する特定の端末器(居室親機)2では、幹線側伝送信号S2に組込まれた各種データ(呼出データ、映像データ、音声データ)に基づく正常な動作を行うことができ、誤動作の発生を防止することができる。
[実施例6]
この実施例においては、前述の第3の実施例乃至第5の実施例の何れかの実施例であるインターホンシステムの伝送信号増幅手段としての受信信号増幅回路34に、図3に示すように、利得制御手段としての利得制御回路35の利得レベルに対応させて幹線側伝送信号S2の波形補正を実行するイコライザ機能が付加されている。
【0052】
同図において、分図(a)は波形整形前の信号減衰量の特性、分図(b)は波形成形後の信号減衰量の特性を示している。ここで、横軸は周波数、縦軸は利得レベルを示しており、利得レベルの高い領域、すなわち信号の減衰量が大きい領域と、利得レベルの低い領域、すなわち信号の減衰量が小さい領域は遮断帯域として遮断することで幹線側伝送信号S2における通過帯域の波形補正が図られている。
【0053】
本発明の第6の実施例におけるインターホンシステムによれば、分岐器3に搭載された受信信号増幅回路34に利得制御回路35の利得レベルに対応させて幹線側伝送信号S2の波形補正を実行するイコライザ機能が付加されていることから、第3の実施例乃至第5の実施例の何れかの実施例であるインターホンシステムの作用・効果に加えて、幹線側伝送信号S2の波形補正により、幹線側伝送信号S2の平滑化を図ることができる。
【0054】
以上、述べたように、本発明のインターホンシステムにおいては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成の、インターホンシステム、例えば、次のようなインターホンシステムであっても採用できることはいうまでもないことである。
【0055】
第1に、前述の実施例においては、幹線と分岐線との分岐点に分岐器を挿入した例について述べているが、当該分岐器に代えて分配器を挿入しても本発明と同等の効果を奏する。
【0056】
第2に、前述の実施例においては、主装置を集合玄関機として使用する場合について述べているが、集合玄関機に制御機を接続し、当該制御機を主装置として使用しても本発明と同等の効果を奏する。
【0057】
第3に、前述の実施例における分岐線側伝送信号S1が検知処理するために必要な時間分や幹線側伝送信号S2の減衰量が所定の閾値レベル等の数値は一例であって、これに限定されない。
【符号の説明】
【0058】
1・・・主装置
2(2a、2b、・・・、2n)・・・端末器
3(3a、3b、・・・、3n)分岐器
31・・・送信信号検知回路(送信信号検知手段)
32・・・送信信号出力回路(送信信号出力手段)
32a・・・送信信号出力インピーダンス可変回路
(送信信号出力インピーダンス可変手段)
33・・・受信信号検知回路(受信信号検知手段)
34・・・受信信号増幅回路(伝送信号増幅手段)
35・・・利得制御回路(利得制御手段)
L1・・・幹線
L2(L2a、L2b、・・・、L2n)分岐線
T1A、T1B(T1a、T1b、T1a´、T1b´)・・・幹線端子
T2a、T2b・・・分岐線端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6