特許第6276961号(P6276961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276961
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】医療用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20180129BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   A61M25/10
   A61M25/092 500
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-217557(P2013-217557)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-77345(P2015-77345A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】末原 達
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰佳
(72)【発明者】
【氏名】雲山 賢一
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−022187(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132114(WO,A1)
【文献】 特開平07−265432(JP,A)
【文献】 米国特許第05772578(US,A)
【文献】 特開2011−161260(JP,A)
【文献】 特開2014−168528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/092
A61B 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が湾曲可能な可撓部で構成され、患者の体内に挿入される管状の挿入部と、
前記可撓部の外周に設けられ、当該可撓部の径方向に拡張する拡張体とを備え、
前記挿入部は、前記可撓部を構成する可撓管を有する挿入管と、前記挿入管内に設けられ、前記可撓管の湾曲操作を行う操作管と、当該挿入部の軸方向の先端部に設けられ、当該先端部に向かって外径が縮径した縮径部を備え、
前記操作管は、管状部と、前記管状部から前記軸方向の基端側に延設され、前記軸方向に相対移動可能に設けられた第1移動部および第2移動部とを備え、前記管状部が前記挿入管から突出して設けられ、
前記縮径部は、前記操作管の前記管状部により構成され、
前記拡張体の前記軸方向の先端部は、少なくとも前記縮径部に固定されていることを特徴とする医療用処置具。
【請求項2】
前記縮径部は、多段階に縮径することを特徴とする請求項に記載の医療用処置具。
【請求項3】
前記挿入部内には、画像情報を取得する画像情報取得部を有する画像情報伝達部材が設けられ、
前記画像情報取得部は、前記挿入部の前記先端部に固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医療用処置具。
【請求項4】
前記可撓部は、複数の管状体が連結された関節構造を有し、
前記拡張体は、当該拡張体内の流体が前記挿入部の内腔に漏れ出ることを防止するように前記可撓部を被覆する被覆部と、前記被覆部とともに拡張用の空間を形成する拡張部とを備えていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の医療用処置具。
【請求項5】
前記被覆部は、前記可撓部および前記拡張部の湾曲方向の剛性よりも低い剛性を有していることを特徴とする請求項に記載の医療用処置具。
【請求項6】
前記拡張体の前記先端部は、前記縮径部の前記軸方向の先端面を覆っていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の医療用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体内に挿入する挿入部を湾曲可能に構成し、当該挿入部の外周に拡張体を設けた医療用処置具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の医療用処置具は、先端部が予め湾曲した形状を有する内部案内部材と、内部案内部材を内部に有する管状に形成され、内部案内部材に沿って進退可能かつ湾曲可能に設けられたシャフト(挿入部)と、シャフトの外周に設けられたバルーン(拡張体)とを備え、内部案内部材に沿ってシャフトを移動させることで、バルーンを体内に挿入可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012−528702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の医療用処置具では、拡張体が挿入部の外周面に取り付けられているため、軸方向の力に対する拡張体の取付強度を十分に確保することができない。このため、体内に拡張体を挿入する際に、拡張体が挿入部から外れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、体内に拡張体を挿入する際に拡張体が挿入部から外れてしまうことを防止できる医療用処置具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療用処置具は、少なくとも一部が湾曲可能な可撓部で構成され、患者の体内に挿入される管状の挿入部と、前記可撓部の外周に設けられ、当該可撓部の径方向に拡張する拡張体とを備え、前記挿入部は、前記可撓部を構成する可撓管を有する挿入管と、前記挿入管内に設けられ、前記可撓管の湾曲操作を行う操作管と、当該挿入部の軸方向の先端部に設けられ、当該先端部に向かって外径が縮径した縮径部を備え、前記操作管は、管状部と、前記管状部から前記軸方向の基端側に延設され、前記軸方向に相対移動可能に設けられた第1移動部および第2移動部とを備え、前記管状部が前記挿入管から突出して設けられ、前記縮径部は、前記操作管の前記管状部により構成され、前記拡張体の前記軸方向の先端部は、少なくとも前記縮径部に固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、拡張体の先端部が縮径部に固定されているため、体内に拡張体を挿入する際に拡張体が軸方向に押されても、当該拡張体の先端部を縮径部よりも基端側の拡径した部分に押し付けることができる。このため、軸方向の力に対する拡張体の取付強度を向上させることができるので、体内に拡張体を挿入する際に、拡張体が挿入部から外れてしまうことを防止することができる。
【0009】
本発明によれば、操作管の管状部により縮径部が構成されるため、挿入管内に操作管を設けることで縮径部を形成することができ、縮径部を容易に設けることができる。また、操作管が挿入管から突出する位置に設けられているため、操作管の第1移動部および第2移動部による操作力を挿入管の先端部に確実に伝達することができる。
【0012】
本発明の医療用処置具において、前記縮径部は、多段階に縮径することが好ましい。
【0013】
本発明によれば、縮径部が多段階に縮径するため、体内の狭窄部に挿入部を挿入する際に当該狭窄部を徐々に拡大することができ、狭窄部に対する拡張体の挿入性を向上させることができる。
【0014】
本発明の医療用処置具において、前記挿入部内には、画像情報を取得する画像情報取得部を有する画像情報伝達部材が設けられ、前記画像情報取得部は、前記挿入部の前記先端部に固定されていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、画像情報取得部が挿入部の先端部に固定されているため、挿入部の挿入方向前方側を視認することができ、挿入部の先端部が体内の狭窄部を通過したことを視認することができる。また、挿入部が処置対象部位以外に挿入されることを防止することができる。
【0016】
本発明の医療用処置具において、前記可撓部は、複数の管状体が連結された関節構造を有し、前記拡張体は、当該拡張体内の流体が前記挿入部の内腔に漏れ出ることを防止するように前記可撓部を被覆する被覆部と、前記被覆部とともに拡張用の空間を形成する拡張部とを備えていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、可撓部を被覆する被覆部が設けられているため、拡張体内の流体が挿入部の内腔に漏れ出ることを防ぐことができ、拡張体を確実に拡張させることができる。
【0018】
本発明の医療用処置具において、前記被覆部は、前記可撓部および前記拡張部の湾曲方向の剛性よりも低い剛性を有していることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、被覆部が挿入部の可撓部および拡張体の拡張部の湾曲方向の剛性よりも低い剛性を有しているため、可撓部の湾曲性を向上させることができる。
【0020】
本発明の医療用処置具において、前記拡張体の前記先端部は、前記縮径部の前記軸方向の先端面を覆っていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、拡張体の先端部が縮径部の先端面を覆っているため、当該先端部により挿入部の先端面から縮径部にかけて同一部材で連続して覆うことができ、体内の狭窄部に対する拡張体の挿入性を向上させることができる。また、拡張体が体内を局部的に押圧することがなく、生体組織を傷めてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る医療用処置具の平面図。
図2図1の医療用処置具の操作管の斜視図。
図3図1の医療用処置具の動作説明図。
図4】本発明の第2実施形態に係る医療用処置具の平面図。
図5】本発明の第3実施形態に係る医療用処置具の平面図。
図6】本発明の第4実施形態に係る医療用処置具の平面図。
図7】本発明の第5実施形態に係る医療用処置具の平面図。
図8】本発明の第6実施形態に係る医療用処置具の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、医療用処置具において患者の体内に挿入される側、すなわち医療用処置具の挿入部の軸方向の先端側を「先端側」と称し、医療処置具の手元操作側、すなわち挿入部の軸方向の基端側を「基端側」と称する。
また、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0024】
[第1実施形態]
図1において、医療用処置具1は、少なくとも一部が湾曲可能な可撓部21で構成され、患者の体内に挿入される管状の挿入部2と、可撓部21の外周に設けられ、当該可撓部21の径方向に拡張する拡張体5と、挿入部2内に設けられた第1内視鏡6と、挿入部2に沿って設けられ、第2内視鏡7を案内する案内管8と、操作者が可撓部21を湾曲させる際に操作する操作部材9と、医療処置を行う際に操作者が把持する把持部10とを備えている。
【0025】
挿入部2は、可撓部21を構成する可撓管31を有する挿入管3と、挿入管3内に設けられ、可撓管31の湾曲操作を行う操作管としての押引部材4と、挿入部2の軸方向の先端部に設けられ、当該先端部に向かって外径が縮径した縮径部22とを備えている。
【0026】
挿入管3は、当該挿入管3の先端部30から基端側に向けて設けられた可撓管31と、先端が可撓管31に接続され、基端が把持部10に支持された硬性管32と、可撓管31および硬性管32内の連続する空間であって、可撓管31の先端に開口した内腔33とを備えている。
可撓管31は、複数の管状体34、35を備え、これら複数の管状体34、35と硬性管32とが互いに回動自在に、かつ軸方向に連結された関節構造を有している。この可撓管31は、体内への導入を可能にするため、その外径D1を数ミリ程度と非常に小さくする必要がある。一方、可撓管31の内部には、押引部材4や、第1内視鏡6等の挿入物が挿通されるため、可撓管31の内径D2は、出来る限り大きくすることが望ましい。このため、可撓管31の外径D1は0.4〜15[mm]程度(望ましくは0.7〜4[mm])、内径D2は0.2〜10[mm]程度(望ましくは0.4〜3[mm])とされている。
以上のような挿入管3は、例えば、ステンレス製の円管状部材をレーザー加工することにより得られる。レーザー加工を用いた場合、円管状部材をレーザーで切断するだけで、硬性管32と各管状体34、35とが互いに連結された状態の挿入管3を容易に得ることができる。なお、挿入管3の材質および製造方法は、上記のものに限らず、任意のものを用いることができる。
【0027】
押引部材4は、図2にも示すように、管状部40と、管状部40から基端側に延設され、挿入管3の軸方向に相対移動可能に設けられた第1移動部41および第2移動部42とを備え、第1移動部41および第2移動部42が挿入管3の軸方向に押し引きされて可撓管31に湾曲動作を行わせるように構成されている。
【0028】
管状部40は、挿入管3から突出した状態で挿入管3に固定され、当該管状部40により、縮径部22が構成される。
第1移動部41および第2移動部42は、挿入管3内に周方向に分割されて管状構造を形成する。
【0029】
第1移動部41は、当該第1移動部41の周方向の端縁41Aが切り欠かれた切欠部41Bと、切欠部41Bが設けられていない部分であって、円筒状の部材を周方向に分割した形状の幅広部41Cと、切欠部41Bが設けられた部分であって、切欠部41Bによって幅広部41Cよりも幅狭に形成された幅狭部41Dと、幅広部41Cに設けられ、端縁41Aと直交する方向に突出した第1突起41Eとを備えている。
【0030】
切欠部41Bは、周方向の両側の端縁41Aが、軸方向の同じ位置で同じ形状に切り欠かれて形成されている。なお、本実施形態では、切欠部41Bが、管状部40と幅広部41Cのとの間の部分に形成されている。
幅広部41Cは、円筒状の部材を周方向に均等に2分割した形状に形成されている。この幅広部41Cの周方向の端縁41Aは、直線状に形成されるとともに、隣り合う第2移動部42の端縁42Aと軸方向に摺接する。すなわち、第1移動部41および第2移動部42は、それぞれ切欠部41B、42Bを除く周方向の端縁41A、42A同士が軸方向に摺接するように形成されている。
幅狭部41Dは、第1移動部41の周方向の略中央の位置に軸方向に延設されるとともに、周方向の寸法が軸方向に一定に形成されている。
【0031】
第2移動部42は、第1突起41Eのかわりに第2突起42Eが設けられた点を除き、第1移動部41と同様の構成であり、第1移動部41における41の記号を42に置き換えることで説明ができるので、第2突起42E以外の説明を省略する。
第2突起42Eは、端縁42Aと直交する方向であって、第1移動部41の第1突起41Eの突出方向と同じ方向に突出している。この第2突起42Eは、可撓管31が湾曲していない状態で、操作部材9の回転中心RCよりも先端側(第1突起41Eよりも先端側)に設けられている。
【0032】
以上の押引部材4では、第1移動部41と第2移動部42とを軸方向に相対移動させることにより、対向する2つの幅狭部41D、42Dが、これら2つの幅狭部41D、42Dを通る面内で湾曲し、可撓管31を湾曲させる。また、押引部材4は、可撓管31内に設けられるため、その外径を数ミリ程度と非常に小さくする必要がある。一方、押引部材4の内部には、第1内視鏡6等の挿入物が挿通されるため、押引部材4の内径D3は、出来る限り大きくすることが望ましい。このため、押引部材4の外径は、可撓管31の外径D1と同程度、内径D3は0.1〜5[mm]程度(望ましくは0.2〜2.5[mm])とされている。
【0033】
拡張体5は、当該拡張体5の先端側に設けられ、挿入部2の縮径部22に固定された先端部51と、可撓管31を被覆する被覆部52と、被覆部52とともに拡張用の空間を形成する拡張部53と、拡張体5の軸方向の基端部55に設けられ、当該基端部55を挿入管3に沿って移動可能な可動部54とを備えている。
【0034】
先端部51は、縮径部22の先端面を覆うとともに、縮径部22よりも先端側の外径が縮径部22よりも縮径している。ここで、先端部51は、縮径部22の周面に固定された部分の軸方向の長さ(縮径部22の軸方向長さ)L1が0.05〜10[mm]程度(望ましくは1〜3[mm])とされている。また、先端部51は、第1内視鏡6の視野を確保するため、縮径部22の先端面を覆う部分の軸方向長さL2が0.01〜2[mm]程度(望ましくは0.05〜0.5[mm])、当該部分の内径D4が0.1〜5[mm]程度(望ましくは0.2〜2[mm])とされている。
被覆部52は、ゴムや樹脂等の弾性部材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンープロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン、さらにはこれらの架橋もしくは部分架橋物、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂等の高分子材料、シリコーンゴム、ラテックスゴム等、拡張部53よりも柔軟性の高い素材で構成され、可撓管31および拡張部53の湾曲方向の剛性よりも低い剛性を有している。
拡張部53は、被覆部52と同様の柔軟性を有する素材で構成されている。この拡張部53は、拡張時の外径D5が2〜30[mm]程度(望ましくは3.5〜10[mm])、先端側の傾斜角θが20〜90[deg]程度(望ましくは45〜80[deg])とされている。
可動部54は、金属、樹脂等のすべり特性に優れた素材で構成され、硬性管32の外周面に摺動自在に設けられている。なお、可動部54は、拡張部53と一体で形成され、基端部55の一部を構成してもよい。
【0035】
以上の拡張体5は、挿入管3に沿って設けられた流体搬送路56と連通しており、当該流体搬送路56を介して拡張体5内に流体が導入されることで、拡張体5が径方向に拡張するように構成されている。なお、流体搬送路56は、拡張体5の基端部55に接続され、当該基端部55とともに挿入管3の軸方向に移動自在に構成されている。
【0036】
第1内視鏡6は、対物レンズ等の光学系やCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子により構成された画像情報取得部61を有し、当該画像情報取得部61が挿入部2の先端部に固定された画像情報伝送部材62と、当該第1内視鏡6の先端部に向けて光を伝送する光ファイバー等の光伝送部63と、吸引洗浄用に先端が開口した内腔64とを備えている。この第1内視鏡6は、当該第1内視鏡6の先端部に接続された図示しないワイヤ等の操作手段により、湾曲可能に構成されていてもよい。また、画像情報取得部61は、CMОS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の他の撮像素子を用いたデジタルビデオカメラであってもよい。さらに、画像情報伝送部材62は、画像情報取得部61にイメージセンサ等の撮像素子を用いた場合、金属線等の電気信号を伝える電線からなるが、これに限らず、光ファイバーを利用して画像の取得および画像の伝送を行なうイメージファイバ、対物レンズおよび複数のリレーレンズ光学系によって画像伝送を行なう撮像システムであってもよい。
【0037】
第2内視鏡7は、第1内視鏡6と同様の構成を有するため、説明を省略する。なお、第2内視鏡7は、第1内視鏡6の構成から吸引洗浄用の内腔64を除いた構成としてもよい。
【0038】
操作部材9は、第1移動部41に設けられた第1突起41Eが係合する第1案内溝91と、第2移動部42に設けられた第2突起42Eが係合する第2案内溝92とが盤面に形成されるとともに、外周面に図示しない凹凸が施された円盤状の部材によって構成されている。この操作部材9は、挿入管3の軸方向と直交する方向の軸を回転中心として回転可能に設けられ、操作部材9を回転させることによって第1移動部41および第2移動部42の移動が操作可能に構成されている。
【0039】
第1案内溝91および第2案内溝92は、それぞれ真円の円弧状に形成され、円弧の内側を操作部材9の回転中心RCに向けて、互いが回転中心RCを挟む位置に設けられている。
第1案内溝91は、曲率中心が回転中心RCから当該第1案内溝91のR1方向の端部側に離れた位置に設けられている。そして、第1案内溝91は、R1方向の端部よりもR2方向の端部の方が回転中心RCに近い位置に設けられ、R1方向に向かうにしたがって回転中心RCからの距離が次第に増加する形状とされている。すなわち、第1案内溝91は、操作部材9がR1方向に回転したときに第1移動部41を先端側に移動させ、操作部材9がR2方向に回転したときに第1移動部41を基端側に移動させるように形成されている。
第2案内溝92は、曲率中心が回転中心RCから当該第2案内溝92のR1方向の端部側(第1案内溝91の曲率中心の反対側)に離れた位置に設けられている。そして、第2案内溝92は、R1方向の端部よりもR2方向の端部の方が回転中心RCに近い位置に設けられ、R1方向に向かうにしたがって回転中心RCからの距離が次第に増加する形状とされている。すなわち、第2案内溝92は、操作部材9がR1方向に回転したときに第2移動部42を基端側に移動させ、操作部材9がR2方向に回転したときに第2移動部42を先端側に移動させるように形成されている。
【0040】
把持部10は、例えば、硬質の樹脂材料によって構成され、挿入部2、案内管8、および操作部材9を支持している。この把持部10には、第1内視鏡6が挿通される貫通孔11が設けられ、貫通孔11に挿入管3の基端部が挿入された状態で、当該挿入管3が把持部10に支持されている。
【0041】
次に、一例として、医療用処置具1を副鼻腔炎治療用処置具として用いた場合の医療用処置具1の使用手順を説明する。
先ず、操作者は、医療用処置具1の挿入部2を鼻孔に挿入する。この際、操作者は、画像情報取得部61により取得される画像情報に基づいて、挿入経路内の様子を確認しながら挿入部2を挿入することができる。また、操作者は、挿入経路の形状に合わせて可撓管31を湾曲させることができる。
【0042】
ここで、可撓管31を湾曲させる場合は、操作部材9を回転させる。例えば、図3に示すように、操作部材9をR1方向に回転させると、第1移動部41は、第1突起41Eが第1案内溝91に案内されることにより先端側に移動し、第2移動部42は、第2突起42Eが第2案内溝92に案内されることにより基端側に移動する。これにより、第1移動部41が先端側に押されるとともに、第2移動部42が基端側に引っ張られ、幅狭部41D、42Dが下向きに湾曲することで、可撓管31が下方に湾曲することになる。
【0043】
挿入部2が、副鼻腔炎によって狭窄した副鼻腔の自然口に導かれると、操作者は、拡張体5を自然口の狭窄部に挿入する。
ここで、拡張体5は、先端部51が縮径部22に固定されているため、拡張体5の取付強度を向上させることができ、拡張体5が挿入管3から外れてしまうことを防止することができる。また、拡張体5の先端部51が縮径部22の先端面を覆っているため、自然口の狭窄部に対する拡張体5の挿入性を向上させることができる。
【0044】
拡張体5が自然口の狭窄部に挿入されると、操作者は、拡張体5内に流体を導入し、拡張体5を拡張させることで、自然口の狭窄部を拡張治療する。
ここで、拡張体5は、先端部51のみが挿入管3に固定されており、拡張体5の基端部55は、可動部54を介して挿入管3に対して軸方向に移動自在に設けられている。このため、可撓管31が湾曲した状態で拡張体5を拡張させると、拡張体5の基端部55が挿入管3の先端側に引っ張られ、図3に示すように、基端部55が挿入管3の先端側に移動する。このことにより、拡張体5が変形してしまうことを防止することができるので、可撓管31が湾曲した状態で拡張体5を拡張させた場合でも、拡張体5を適切に拡張することができる。
【0045】
以上のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、拡張体5の先端部51が縮径部22に固定されているため、拡張体5が軸方向に押されても、当該拡張体5の先端部51を縮径部22よりも基端側の拡径した部分に押し付けることができる。このため、軸方向の力に対する拡張体5の取付強度を向上させることができるので、体内に拡張体5を挿入する際に、拡張体5が挿入部2から外れてしまうことを防止することができる。
【0046】
また、押引部材4の管状部40により縮径部22が構成されるため、挿入管3内に押引部材4を設ければ縮径部22を形成することができ、縮径部22を容易に設けることができる。また、押引部材4が挿入管3から突出する位置に設けられているため、押引部材4の第1移動部41および第2移動部42による操作力を挿入管3の先端部30に確実に伝達することができる。
【0047】
また、画像情報取得部61が挿入部2の先端部に固定されているため、挿入部2の挿入方向前方側を視認することができ、挿入部2の先端部が体内の狭窄部を通過したことを視認することができる。また、挿入部2が処置対象部位以外に挿入されることを防止することができる。
【0048】
また、可撓管31を被覆する被覆部52が設けられているため、拡張体5内の流体が挿入管3の内腔33に漏れ出ることを防ぐことができ、拡張体5を確実に拡張させることができる。
【0049】
また、被覆部52が可撓管31および拡張部53の湾曲方向の剛性よりも低い剛性を有しているため、可撓部21の湾曲性を向上させることができる。
【0050】
また、拡張体5の先端部51が縮径部22の先端面を覆っているため、当該先端部により挿入部2の先端面から縮径部22にかけて同一部材で連続して覆うことができ、体内の狭窄部に対する拡張体5の挿入性を向上させることができる。また、拡張体5が体内を局部的に押圧することがなく、生体組織を傷めてしまうことを防止することができる。
【0051】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る医療用処置具1Aは、図4に示すように、拡張体5Aの先端部51Aが縮径部22の先端面を覆っていない点が、第1実施形態と相違する。
【0052】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、拡張体5Aの先端部51Aが縮径部22の先端面を覆わない構成とされているため、拡張体5Aの形状を簡素化することができ、医療用処置具1Aをより簡易に製造することができる。
【0053】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る医療用処置具1Bは、図5に示すように、拡張体5Bの被覆部52Bおよび拡張部53Bが同一素材で一体形成されている点が、第1実施形態と相違する。
なお、被覆部52Bおよび拡張部53Bは、第1実施形態と同様の素材で構成されている。
【0054】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、拡張体5Bの被覆部52Bおよび拡張部53Bを同一素材で構成するため、拡張体5Bを構成するための素材数を低減することができる。
【0055】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る医療用処置具1Cは、図6に示すように、拡張体5Cの被覆部52Cおよび拡張部53Cが同一素材で一体形成されている点、および拡張体5Aの先端部51Cが縮径部22の先端面を覆っていない点が、第1実施形態と相違する。
なお、被覆部52Cおよび拡張部53Cは、第2実施形態の被覆部52Bおよび拡張部53Bと同様の素材で構成されている。
【0056】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、第2実施形態および第3実施形態の効果がある。
【0057】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態に係る医療用処置具1Dは、図7に示すように、押引部材4Dの管状部40Dの外周面に周方向の溝43Dが形成されている点、拡張体5Dの被覆部52Dおよび拡張部53Dが同一素材で一体形成されている点、および拡張体5Dの先端部51Dの内周面に突出して設けられ、押引部材4Dの溝43Dに係止される係止部57Dが設けられている点が、第1実施形態と相違する。
【0058】
ここで、係止部57Dは、拡張体5Dの先端部51Dの内周面に周方向に連続して構成してもよいし、周方向に断続的に設けてもよい。
なお、被覆部52Dおよび拡張部53Dは、第2実施形態の被覆部52Bおよび拡張部53Bと同様の素材で構成されている。
【0059】
本実施形態によれば、第1実施形態から第3実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、拡張体5Dの係止部57Dが押引部材4Dの溝43Dに係止されるため、軸方向の力に対する拡張体5Dの取付強度をより向上させることができる。
【0060】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態に係る医療用処置具1Eは、図8に示すように、縮径部22Eが挿入管3Eの先端部30Eに設けられている点、および拡張体5Eの先端部51Eが縮径部22Eの先端面を覆っていない点が、第1実施形態と相違する。
挿入管3Eの先端部30Eは、押引部材4の管状部40の先端面を覆うとともに、その外径が先端部30Eより基端側の挿入管3Eの外径よりも縮径している。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果がある。
【0061】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、縮径部22は、多段階に縮径してもよい。これにより、体内の狭窄部に挿入部2を挿入する際に当該狭窄部を徐々に拡大することができ、狭窄部に対する拡張体5の挿入性を向上させることができる。
【0062】
挿入管3、3Eは、少なくとも一部が湾曲自在に設けられていれば、任意のものを使用できる。例えば、挿入管3、3E全体を可撓管31で構成してもよい。また、可撓性を有する素材で可撓管31を構成してもよいし、当該可撓性を有する素材で挿入管3全体を構成してもよい。この場合、挿入管3は、円筒状である必要はなく、断面多角形上のものでもよい。
【0063】
押引部材4、4Dは、前記実施形態のものに限られず、例えば、管状部40、40Dを環状に形成してもよい。また、管状部40、40Dを周方向に2分割し、それぞれを第1移動部41および第2移動部42の一部として構成してもよい。
【0064】
操作部材9は、第1移動部41および第2移動部42を挿入管3、3Eの軸方向に沿って相対移動可能であれば任意の形状を採用できる。例えば、操作部材9に第1突起および第2突起を設け、第1移動部41に第1案内溝を設け、第2移動部42に第2案内溝を設けてもよい。また、第1移動部41に第1案内溝を設け、第2移動部42に第2突起を設け、押引部材4に第1突起および第2案内溝を設けてもよいし、その逆の組み合わせでもよい。
また、第1案内溝91および第2案内溝92は、操作部材9を貫通せず、凹状に形成されていてもよい。
また、操作部材9をR1方向に回転させた場合に、可撓管31が上方に湾曲しても良い。
【0065】
流体搬送路56は、挿入管3、3Eに沿って設けられていたが、これに限らず、例えば、挿入管3、3Eに巻き付けたり、挿入管3、3Eの軸方向に伸縮自在に構成したりしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 医療用処置具
2 挿入部
3 挿入管
4 押引部材(操作管)
5 拡張体
21 可撓部
22 縮径部
30 先端部
31 可撓管
34 管状体
35 管状体
41 第1移動部
42 第2移動部
51 先端部
52 被覆部
53 拡張部
61 画像情報取得部
62 画像情報伝達部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8