特許第6276993号(P6276993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6276993少なくとも2つの薬剤の送達のためのニードル・アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276993
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】少なくとも2つの薬剤の送達のためのニードル・アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20180129BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   A61M5/24
   A61M5/32
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-537105(P2013-537105)
(86)(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公表番号】特表2013-542797(P2013-542797A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2011069109
(87)【国際公開番号】WO2012059460
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年9月5日
【審判番号】不服2016-12862(P2016-12862/J1)
【審判請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】61/432,719
(32)【優先日】2011年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10189807.0
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ビーテ・フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ツデネク・カーマン
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 長屋 陽二郎
【審判官】 平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−535636(JP,A)
【文献】 実開昭57−120033(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つまたはそれ以上の薬剤を送達するための薬物送達デバイスに取り付け可能なニードル・アセンブリ(1)であって、
ニードル・アセンブリ(1)は、
第1の薬剤(28)の単独の投与量を予め充填したリザーバを含んでなり、第2の薬剤(29)を収容する薬物送達デバイスに取り付けるように構成される、近位ハウジング部材(11)であって、ここで該リザーバは、ニードル・アセンブリ(1)を薬物送達デバイスに取り付ける前に、第1の薬剤(28)の単独の投与量で予め充填している第1の薬剤チャンバ(5)である、該近位ハウジング部材(11);
近位ハウジング部材(11)と可動状態で係合される遠位ハウジング部材(12)であって、近位および遠位ハウジング部材間の相対的な軸方向運動が、リザーバの体積を減少させ、そして第1の薬剤(28)の単独の投与量を遠位ハウジング部材に配置された注射針(2)に入らせ、送達させるようになっている、該遠位ハウジング部材(12);および
近位ハウジング部材(11)内に位置していて、ニードル・アセンブリ(1)が薬送達デバイスに取り付けられたときに、第2の薬剤(29)の投与量を薬物送達デバイスからニードル・アセンブリ(1)の注射針(2)へ移送するための薬剤移送機能;
を含んでおり、
該薬剤移送機能が、さらに、薬物送達デバイス内の薬剤とニードル・アセンブリ(1)間の流体連通を確立する移送針(7)を含んでなり、第1および第2の状態の間で切り替え可能であり、該薬剤移送機能は、第1の状態において第1の薬剤(28)および第2の薬剤(29)の流体連通を阻止し、そして第2の状態において、ニードル・アセンブリ(1)の注射針(2)へ薬物送達デバイスから第2の薬剤(29)を移送し得るように構成される、
上記ニードル・アセンブリ(1)。
【請求項2】
第1、第2の薬剤の流体連通は、薬物送達デバイスの作動時に確立される、請求項1に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項3】
さらに、遠位ハウジング部材(12)に取り付けられる注射針・ハブ(3)を含んでなり、ここで、注射針(2)は、注射針・ハブ(3)内に同軸に固定される、請求項1又は2に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項4】
薬剤移送機能は、さらに、第1の薬剤チャンバ(5)と第2の薬剤チャンバ(14)の流体連通を阻止するように構成される移送シーリング部材(6)を含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項5】
移送シーリング部材(6)は、一方向弁(32)を含んでなり、そして薬物送達デバイスの作動中に誘起される圧力が、一方向弁(32)を開かせる、請求項4に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項6】
移送シーリング部材(6)は、注射針(2)の近位端(37)によって、突き通し可能なシーリング面(50)を含んでなる、請求項4又は5に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項7】
さらに、近位および遠位のハウジング部材(11、12)間の偶発的な相対的軸方向運動を阻止するための少なくとも1つの固定部材(25)を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの固定部材(25)は、少なくとも1つのカム・ロックを含んでなる、請求項7に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項9】
近位ハウジング部材(11)と可動状態で係合される遠位ハウジング部材(12)は、近位ハウジング部材(11)と摺動可能に係合される遠位ハウジング部材(12)を含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項10】
近位ハウジング部材(11)は、第1の薬剤(28)を収容する第1の薬剤チャンバ(5)を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項11】
さらに、第1の薬剤チャンバ(5)内に少なくとも部分的に配置される軸方向へ可動の栓(4)を含んでなり、第1の薬剤チャンバ(5)の遠位端は、可動栓(4)によって密封される、請求項1に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項12】
可動栓(4)は、
(i)注射針(2)の近位端(37)によって、突き通し可能な突き通し可能部分(39)、および
(ii)シーリング部分(38)
を含んでなる、請求項11に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項13】
近位および遠位のハウジング部材(11、12)間の第1の相対的な軸方向運動が、注射針(2)の近位端(37)に可動栓(4)の突き通し可能部分(39)を突き通させ、近位および遠位のハウジング部材(11、12)間の第2の相対的な軸方向運動が、第1の薬剤(28)が送達されるように可動栓(4)を近位方向へ動かす、請求項12に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項14】
さらに、注射針(2)の遠位端(42)とユーザの間の偶発的な接触を防ぐための注射針・シールド(16)を含んでなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のニードル・アセンブリ(1)。
【請求項15】
薬物送達デバイスおよび請求項1〜14のいずれか1項に記載のニードル・アセンブリ(1)を含んでなる、2つまたはそれ以上の薬剤を送達するための薬物送達システムであって、該薬物送達デバイスは、投与量設定機構、および第2の薬剤(29)を含む薬剤カートリッジ(13)を含んでなる、上記薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、患者(またはユーザ)に少なくとも2つのドラッグ・エージェント(または薬剤)を送達するための、単独の投与量設定機構および単独の計量分配インタフェースを有する医療デバイスおよびこのようなデバイスを使用する方法に関する。ユーザによって開始される送達手順は、第1のドラッグ・エージェントのユーザ設定不可投与量および第2のドラッグ・エージェントの可変設定投与量を患者に送達させる。ドラッグ・エージェントは、各々が個別のドラッグ・エージェント(単独のドラッグ化合物)または予め混合されたドラッグ・エージェント(共処方された複数のドラッグ化合物)を収容する2つまたはそれ以上のリザーバ、チャンバ、容器またはパッケージで入手可能である。
【背景技術】
【0002】
或る種の疾病は、1つまたはそれ以上の異なったドラッグ・エージェントを使用する治療を必要とする。或る種のドラッグ化合物は、最適治療投与量を送達するために互いとの特定の関係において送達される必要がある。ここに提案するデバイスおよび方法は、限定するつもりはないが、安定性、妥協した治療パフォーマンスおよび毒物検査のような理由のために単独の処方では組み合わせ治療が望ましいが、不可能である場合に特別な利点を持つ。たとえば、或る種の場合においては、長時間作用インスリンおよびプログルカゴン遺伝子の転写生成物から誘導されるグルカゴン様のペプチド−1(GLP−1)で糖尿病患者を治療することが有益かも知れない。GLP−1は、人体に見いだされ、腸のL細胞によって腸ホルモンとして分泌される。GLP−1は、それおよびその類似体を糖尿病の可能性ある治療として集中的な研究の対象にするいくつかの生理的特性を所有する。
【0003】
2つまたはそれ以上の活性ドラッグ・エージェントの保管および同時送達と関連して多数の潜在的な問題がある。たとえば、2つの活性エージェントが長期間にわたって同じチャンバ内に保管される場合、これらの活性エージェントが互いに作用する可能性がある。したがって、活性成分を個別に保管し、送達の時点で(たとえば、注入中、無針注入中または吸入中に)それらを混合することが有利である。しかしながら、2つのドラッグ・エージェントを混合するプロセスは、ユーザが確実に、繰り返しそして安全に行うのに簡単で便利である必要がある。
【0004】
さらなる問題は、組み合わせ治療を構成する各活性ドラッグ・エージェントの量および/または比率をユーザ毎に、または、異なった治療段階で変えることが必要であるかも知れないということである。たとえば、1つまたはそれ以上の活性エージェントは、「維持」投与量まで患者を徐々に導く滴定期間を必要とする可能性がある。もし1つの活性エージェントが調整不可の固定投与量を必要とし、他方のエージェントが患者の症状または身体的な状態に応じて変えられる場合にさらなる例となろう。したがって、複数の活性ドラッグ・エージェントの予め混合された調合は、これらの調合がヘルスケア専門家またはユーザによって変えることができない活性成分の固定比を有するので、適切ではない可能性がある。
【0005】
多くのユーザが2つ以上の薬物送達システムを使用したり、必要な投与量組み合わせについての必要な正確な計算を行ったりしなければならないということにうまく対処することができないため、複数のドラッグ化合物治療が必要とされる場合に付加的な問題が起きる。これは、器用さまたは計算に問題点をもつユーザについて特に当てはまる。或る種の環境においては、ドラッグ・エージェントを計量分配する前にデバイスおよび/またはニードル・カニューレの起動準備手順を実施することも必要である。
【0006】
前述のことに照らして、2つまたはそれ以上のドラッグ・エージェントの送達のための使い勝手の良いデバイスおよび方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
2つまたはそれ以上のドラッグ・エージェント(または薬剤)を送達する薬物送達デバイス(ひとまとめにして「薬物送達システム」と呼ぶ)と共に使用するためのニードル・アセンブリならびにこのようなニードル・アセンブリを使用する種々の方法の種々の実施形態がここに開示される。ここに提案するニードル・アセンブリおよび方法は、単独の薬物送達システムを使用しての複数のドラッグ化合物の複合組み合わせの送達を考慮に入れている。さらに、ここに提案するニードル・アセンブリおよび方法は、ユーザが単独の投与量設定機構および単独の計量分配インタフェースのみを有する薬物送達システムを使用して少なくとも2つの薬剤を設定、計量分配することを可能にする。単独の投与量セッタは、薬剤の1つの単独の投与量が設定され、単独の計量分配インタフェースを通して計量分配されるときに個々のドラッグ化合物の所定の組み合わせが送達されるように薬物送達システムの投与量設定機構を制御できる。
【0008】
本発明によるニードル・アセンブリは、第1の薬剤を含んでなるものでもよい。第1の薬剤は、近位ハウジング部材内に収容されてもよい。
【0009】
第1の薬剤は、ニードル・アセンブリにおけるリザーバまたは第1薬剤チャンバ内に収容されてもよい。ニードル・アセンブリは、第1の薬剤を予め充填されてもよい。なお、「予め充填される」という表現は、ニードル・アセンブリが薬物送達デバイスに取り付けられる前にすでにニードル・アセンブリが第1の薬剤で満たされているということを意味する。したがって、ニードル・アセンブリは、ニードル・アセンブリと薬物送達デバイスの間に流体連通が確立される前に第1の薬剤で予め充填されてもよい。
【0010】
ニードル・アセンブリは、組み込み式であってもよいし、密封され、滅菌された使い捨てモジュールとして提供されてもよい。図示してないが、ニードル・アセンブリは、滅菌した保護カプセルまたは容器内に収容され得る。滅菌ニードル・アセンブリへのアクセスを獲得するためにユーザが剥離または引き裂きでシールまたは容器自体を開けることになっている場合、ニードル・アセンブリは製造業者によって供給されてもよい。或る種の例においては、ニードル・アセンブリの各端に2つまたはそれ以上のシールを提供することが望ましいかも知れない。シールは、ニードル・アセンブリ内に収容される第1の薬剤の完全な状態を確保できる。シールは、保管中に薬剤が失われないこと、または、薬剤が、たとえば、湿気で汚染されないということを確実にすることができる。
【0011】
薬物送達デバイスは、ニードル・アセンブリがデバイスに取り付けられる前に第2の薬剤で少なくとも部分的に満たされるリザーバまたは容器を含んでなるものであってもよい。個々のドラッグ化合物間の治療関係(または治療プロフィール)を定めることによって、このようなアセンブリを使用するここに提案するニードル・アセンブリおよび方法は、ユーザがシステムを使用する毎に正しい投与量組み合わせを算出し、設定しなければならない場合に複数の入力と関連した固有のリスクなしに患者(またはユーザ)が薬物送達システムから複数のドラッグ化合物の最適治療投与量組み合わせを受けることを確実にするのを助ける。したがって、ここに提案するニードル・アセンブリを組み込んでいる薬物送達システムは、器用さまたは計算に問題をもつユーザにとって特に有利である。
【0012】
本発明によるニードル・アセンブリは、注射針、近位ハウジング部材、遠位ハウジング部材および薬剤移送機能を含んでなるものであってもよい。近位ハウジング部材は、第1の薬剤を収容していてもよい。近位ハウジング部材は、第1の薬剤を収容するリザーバを含んでなるものであってよい。リザーバは、第1の薬剤を収容する薬剤チャンバでもよい。このリザーバの近位端は、近位ハウジング部材によって構成されてもよい。リザーバの遠位端は、遠位ハウジング部材によって構成されてもよい。リザーバの遠位端は、栓、たとえば、可動栓によって構成されてもよい。リザーバの遠位端は、遠位ハウジング部材に取り付けられたニードル・ハブにより構成されてもよい。
【0013】
近位ハウジング部材は、第2の薬剤を収容している薬物送達デバイスに、たとえば、ねじ係合を介して取り付けるように構成されてもよい。薬物送達デバイスは、取り付け前に第2の薬剤を収容していてもよい。ニードル・アセンブリは、取り付け前に第1の薬剤を収容していてもよい。注射針は、ニードル・アセンブリの遠位端のところ、特に遠位ハウジング部材のところに配置されてもよい。
【0014】
薬剤移送機能は、2つの状況のうちの1つにあってもよい。薬剤移送機能は、状況を切り換えるように構成されてもよい。第1の、または、初期の状態において、薬剤移送機能は、ニードル・アセンブリ内の第1の薬剤と薬物送達デバイス内の第2の薬剤との流体連通を阻止する構成されていてもよい。薬剤移送機能は、ニードル・アセンブリの薬剤チャンバからの第1の薬剤が送達されるときに第1の送達ステップ中にニードル・アセンブリ内の第1の薬剤と薬物送達デバイス内の第2の薬剤との流体連通を阻止するように構成されてもよい。第1の薬剤は、注射針を通して送達され得る。第2の状態において、薬剤移送機能は、第2の薬剤が送達され得るように薬物送達デバイスの作動中にニードル・アセンブリの注射針へ薬物送達デバイスから第2の薬剤を移送し得るように構成されてもよい。薬物送達デバイスが作動させられるとき、薬剤移送機能は、第2の状態にあり得る。ここで、薬剤移送機能は、第2の薬剤が2回目の送達ステップで送達され得るように薬物送達デバイスの作動中に薬物送達デバイスからニードル・アセンブリの注射針へ第2の薬剤を移送するように構成されてもよい。第2の薬剤は、注射針を通して送達され得る。
【0015】
薬剤移送機能は、さらに、移送シーリング部材を含んでなるものであってもよい。移送シーリング部材は、第1の薬剤と第2の薬剤の流体連通を阻止し得る。移送シーリング部材は、薬剤移送機能が第1の状態にあるときに閉ざされるかまたはそのままでもよい。移送シーリング部材は、薬剤移送機能が第2の状態にあるときに開放されるか、または、破壊されるか、または、刺し通されてもよい。
【0016】
遠位ハウジング部材は、そこに向かう近位ハウジング部材の相対的な軸方向運動が、第1の薬剤を注射針に入らせ、最終的にユーザに送達させられるように近位ハウジング部材と可動状態に係合されてもよく、たとえば、摺動可能に係合されてもよい。遠位ハウジング部材に向かう近位ハウジング部材の相対的な軸方向運動は、第1の薬剤を収容しているリザーバの体積を縮小させ得る。近位および遠位のハウジング部材の相対的な軸方向運動または入れ子状態の動きは、第1の薬剤を収容しているリザーバを圧縮し、この薬剤を注射針に入らせ、ユーザに送達させ得る。この動きは、注射針を通して第1の薬剤をリザーバから排出させ得る。
【0017】
一実施形態において、ニードル・アセンブリは、注射針、近位ハウジング部材、遠位ハウジング部材および薬剤移送機能を含んでなる。近位ハウジング部材は、第1の薬剤を収容し、おそらくねじ係合を介して第2の薬剤を収容している薬物送達デバイスに取り付けるように構成される。遠位ハウジング部材は、近位および遠位のハウジング部材間の相対的な軸方向運動が第1の薬剤を注射針に入らせ、最終的にユーザに送達させられるように近位ハウジング部材と可動状態で係合させられる(たとば、摺動可能に係合させられる)。薬物送達デバイスの作動時(たとえば、薬物送達デバイスの投与ボタンの作動時)、第2の薬剤は、それがユーザに送達され得るように 薬剤移送機能を介して薬物送達デバイスからニードル・アセンブリの注射針へ移送される。ここで、第1、第2の薬剤の送達が同じ注射針を介してなされ、さらに、両方の薬剤の送達が1回の連続注入ステップまたは複数回の注入ステップで行われ得るということは了解されたい。1回の注入ステップは、2回の別々の注入を行うことと比較してユーザ・ステップが減るという観点からユーザにとって便利な利点を提供する。この便利な利点は、特に注射を不快と思っている、または、計算または器用さについて問題を有するユーザにとって定められた治療とのコンプライアンスを改良することにもなり得る。薬物送達デバイスは、第1の薬剤の単独の投与量がニードル・アセンブリの近位ハウジング部材内に収容され得る一方で第2の薬剤(たとえば、インスリン)の複数回分の投与量を有するカートリッジを収容するように複数回投与量送達デバイスでもよい。
【0018】
ニードル・アセンブリは、種々の付加的なコンポーネントを含んでなるものであってもよい。たとえば、ニードル・アセンブリは、遠位ハウジング部材に取り付けられた注射針・ハブを含んでなるものであってもよい。注射針は、注射針・ハブ内に同軸に固定されてもよい。別の例において、ニードル・アセンブリは、さらに、注射針の遠位端とユーザとの偶然的な接触を防ぐための注射針・シールドを含んでなるものであってもよい。注射針・シールドは、遠位ハウジング部材に連結されてもよく、近位方向へ引込み可能であってもよい。別の例において、ニードル・アセンブリは、さらに、近位および遠位のハウジング部材の偶発的な相対的な軸方向運動を防ぐための錠止機構、たとえば、少なくとも1つのカム・ロック を含んでなるものであってもよい。さらに別の例において、ニードル・アセンブリは、さらに、遠位ハウジング部材または注射針の遠位端のいずれかに着脱自在に取り付けられる注射針・シーリング・キャップを含んでなるものであってもよい。
【0019】
薬剤移送機能は、種々のコンポーネントを含んでなるものであってもよい。薬剤移送機能は、移送針を含んでなるものであってもよい。薬剤移送機能は、移送シーリング部材を含んでなるものであってもよい。たとえば、薬剤移送機能は、移送針および移送シーリング部材を含んでなるものであってもよい。移送シーリング部材は、一方向弁を含んでなるものであってもよく、その場合、薬物送達デバイスの作動中に引き起こされる流体圧がこの弁を開く。別の例において、移送シーリング部材は、注射針の近位端によって突き通すことができるシール面を含んでなるものであってもよい。移送シーリング部材は、第1の薬剤と第2の薬剤の流体連通を阻止できる。移送シーリング部材は、ニードル・アセンブリに収容された薬剤を無菌状態に保つことができる。
【0020】
移送針は、ニードル・アセンブリと薬物送達デバイス内の第2の薬剤の流体連通を確立するように構成されてもよい。移送針は、薬物送達デバイスの容器を密封する突き通し可能なセプタムを突き通すように構成されてもよい。移送針は、ニードル・アセンブリと薬物送達デバイス内の第2の薬剤の流体連通を確立するように構成されたチャネルを提供してもよい。あるいは、移送針は、薬物送達デバイスの一部であってもよい。
【0021】
別の実施形態において、ニードル・アセンブリは、注射針、近位ハウジング部材、遠位ハウジング部材、薬剤移送エレメントおよび注射針・ハブを含んでなる。近位ハウジング部材は、第1の薬剤を収容している第1の薬剤チャンバを含み、おそらくねじ係合を介して第2の薬剤を収容している薬物送達デバイスに取り付けるように構成される。遠位ハウジング部材は、近位および遠位のハウジング部材間の相対的な軸方向運動が第1の薬剤を注射針に入らせ、ユーザに送達させるように近位ハウジング部材と可動状態で係合する。薬物送達デバイスの作動時、第2の薬剤は、それがユーザに送達され得るように 薬剤移送機能を介して薬物送達デバイスからニードル・アセンブリの注射針へ移送される。注射針・ハブは、遠位ハウジング部材に取り付けられ、そして、注射針は、注射針・ハブ内に、おそらく同軸に固定される。
【0022】
ニードル・アセンブリは、さらに、少なくとも部分的に第1の薬剤チャンバ内に位置する軸方向可動栓を含んでなるものであってもよく、この場合、第1の薬剤チャンバの遠位端が可動栓によって、密封され得る。可動栓は、(i)注射針の近位端によって、突き通し可能な突き通し可能部分および(ii)シーリング部分を含んでなるものであってもよい。
【0023】
この実施形態においては、近位および遠位のハウジング部材間の第1の相対的な軸方向運動は、注射針の近位端に可動栓の突き通し可能部分を突き通させることになり、そして、近位および遠位のハウジング部材間の第2の相対的な軸方向運動は、可動栓を近位方向へ動かすことになり、したがって、第1の薬剤を入ニードルに入らせ、ユーザに送達させることになる。第1、第2の相対的な軸方向運動は、1つの連続的な動きとして発生してもよい。
【0024】
少なくとも2つの薬剤を送達するためのニードル・アセンブリを用いる方法の一実施形態において、この方法は、(i)注射針、第1の薬剤を収容している近位ハウジング部材および近位ハウジング部材と摺動可能に係合する遠位ハウジング部材を含んでなるニードル・アセンブリを用意すること、(ii)ニードル・アセンブリを第2の薬剤を収容している薬物送達デバイスに取り付けること、(iii)注射針をユーザに挿入すること、(iv)第1の薬剤がユーザに送達されるようにニードル・アセンブリの近位および遠位のハウジング部材を相対的に軸方向へ動かすこと、および、(v)第2の薬剤がユーザに送達されるように薬物送達デバイスを作動させることを含んでなる。ここで、第1、第2の薬剤の送達が1回の連続的な注入ステップでなされてもよいことは了解されたい。ここで、この方法は、ここに開示する実施形態によるニードル・アセンブリを使用し得ることは了解されたい。ここで、この方法が、第2の薬剤がユーザに送達され得るように薬物送達デバイスの作動中に薬物送達デバイスからその注射針へ第2の薬剤を移送するめの薬剤移送機能をさらに含んでなるニードル・アセンブリを使用してもよいことは了解されたい。さらに、この方法は、薬剤移送機能が、移送針および一方向弁を含んでなる移送シーリング部材を含んでなり、そして、薬物送達デバイスの作動中に発生する流体圧が一方向弁を開くニードル・アセンブリを使用してもよい。
【0025】
ここに提案したようなニードル・アセンブリは、適切な互換性を持つインタフェースを有する任意の薬物送達デバイスと共に使用できるように設計されてもよい。しかしながら、不適切なニードル・アセンブリの適合しないデバイスへの取り付けを防ぐために専用のまたはコード化した機能特徴の使用を介して1つの排他的な一次薬物送達デバイス(または一群のデバイス)にその使用を制限するようにニードル・アセンブリを設計すると好ましいかも知れない。或る種の状況においては、ニードル・アセンブリが1つの薬物送達デバイスに専用であると共に、デバイスへの標準のドラッグ計量分配インタフェースの取り付けを可能にすることを確実にすると有利であるかも知れない。これによれば、ニードル・アセンブリが取り付けられたときにユーザが組み合わせ治療を行うことが可能になると共に、たとえば、制限するつもりはないが、投与量分割または一次化合物のトップアップのような状況において、標準のドラッグ計量分配インタフェースを介して独立して一次化合物の送達も可能になる。ニードル・アセンブリは、さらに、一次薬物送達デバイスへの再取り付けを防ぐか、または、他の手段を介してのニードルを通しての引き続く投与を防ぐかまたは阻止する機能要素を含んでなるものであってもよい。たとえば、ニードル・アセンブリは、ユーザがニードル・アセンブリから1回分の投与量を送達した後に作動させられるロッキング・ニードル・ガードを含んでもよい。それに加えて、ニードル・アセンブリは、以下のことを行うための1つまたはそれ以上の付加的な機能を含んでなるものであってもよい。すなわち、
・ひとたびニードル・アセンブリが使用され、取り外されたならば一次薬物送達デバイスへのニードル・アセンブリの再取り付けを物理的に防ぐこと。
・ひとたび使用されてしまったならばドラッグ計量分配インタフェースを介しての引き続く液体の流れを物理的/液圧的に防ぐこと。
・視覚による警告(たとえば、ひとたび挿入または流体の流れが生じたならばニードル・アセンブリ上の表示窓内のカラーおよび/または警告テキスト/マークを変えること)。
・触覚によるフィードバック(たとえば、使用後のニードル・アセンブリの外面上の触覚による機能の有無)。
【0026】
薬物送達デバイスは、複数回使用デバイスまたは単回使用の使い捨てのデバイスでもよい。さらに、薬物送達デバイスは、交換可能カートリッジ(またはリザーバ/チャンバ)を有するものでもないものでもよい。また、すでに標準の薬物送達デバイスを使用している患者に一回限りの余分な薬剤として処方され得る種々の条件のための1セットの異なったニードル・アセンブリを有するも可能である。
【0027】
ここで、薬剤は、たとえば、流れることが可能であり、フォースの作用を受けたときに安定した率で形状を変える液体、ガスまたは粉末として定義される流体であってもよい。薬剤は、別の流体薬剤と共に運ばれるか、溶解されるか、または、計量分配される固体であってもよい。さらに、ここで、単独の薬剤(たとえば、第1の薬剤)が、ドラッグ・エージェントの組み合わせを含んでなるものであってもよいことは了解されたい。さらにまた、単独の薬剤についてのここでの言及(たとえば、第2の薬剤を移送することについての言及)は、単独のドラッグ・エージェントもしくはドラッグ・エージェントの組み合わせの1回分の投与量もしくは複数回分の投与量に対する言及であり得る。一例において、薬剤は、インスリンのようなマスター・ドラッグ化合物であってもよい。本出願では特にインスリンに言及するが、インスリン類似体またはインスリン派生物、2つの可能性あるドラッグ組み合わせとしてのGLP−1またはGLP−1類似体、鎮痛剤、ホルモン類、β作用薬または副腎皮質ステロイドのような他のドラッグまたはドラッグ組み合わせ、または上述のドラッグのいずれかの組み合わせが使用され得る。
【0028】
ここでは、「インスリン」という用語は、ヒト・インスリンまたはヒト・インスリン類似体または派生物を含めてインスリン、インスリン類似体、インスリン派生物またはその混合物を意味するものとする。インスリン類似体の例としては、限定するつもりはないが、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒト・インスリン、Lys(B3)、Glu(B29)ヒト・インスリン、Lys(B28)、Pro(B29)ヒト・インスリン、Asp(B28)ヒト・インスリン、位置B28のプロリンが、Asp、Lys、Leu、ValまたはAlaと置き換えられており、そして、位置B29で、LysがProと置き換えられている可能性のあるヒト・インスリン、Ala(B26)ヒト・インスリン、Des(B28−B30)ヒト・インスリン、Des(B27)ヒト・インスリンまたはDes(B30)ヒト・インスリンがある。インスリン派生物の例としては、限定するつもりはないが、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒト・インスリン、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒト・インスリン、B29−N−ミリストイル・ヒト・インスリン、B29−N−パルミトイル・ヒト・インスリン、B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒト・インスリン、B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒト・インスリン、B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒト・インスリン、B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒト・インスリン、B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒト・インスリン、B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒト・インスリン、B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒト・インスリンおよびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒト・インスリンがある。
【0029】
ここで用いられる「GLP−1」という用語は、限定するつもりはないが、エキセナチド(エキセンディン−4(1−39)、シーケンス H−His−GlyGlu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phelle−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2)のペプチド、エキセンディン−3、Liraglutide、またはAVE0010(H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−LysGln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−VEil−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−SerGly−Ala−Pro−Pro−Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−NH2)を含めて、GLP−1、GLP−1類似体またはその混合物を意味するものとする。
【0030】
β作用薬の例としては、限定するつもりはないが、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、ビトルテロール・メシラート、サルメテロール、フォルモテロール、バンブテロール(barnbuterol)、クレンブテロール、インダカテロールがある。
【0031】
ホルモン類としては、限定するつもりはないが、下垂体ホルモン類または視床下部ホルモン類または調節性活性ペプチドおよびそれらの拮抗剤(たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリンブセレリン、ナファレリン、ゴセレリン)がある。
【0032】
上述の局面は、添付の図面を適切に参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって当業者にとって明らかになろう。さらに、ここに開示する任意の実施形態の任意の代替案、入替え案または他の変更もしくは特徴が、代替案、入れ替え案または他の変更もしくは特徴が矛盾なく両立することになる程度まで任意の他の実施形態に応用し得ることが特に意図される。言い換えれば、ニードル・アセンブリまたはこのようなアセンブリを使用する方法の所与の代替案、入替え案または他の変更若しくは特徴および/またはその所与の実施形態と関連する任意の他のコンポーネントまたはコンポーネントの集合の開示は、その所与の実施形態に限定する意図がまったくないということである。さらにまた、上記の概要が例証であって、限定するつもりのないことを意図していることを留意されたい。
【0033】
類似の数字が類似の実体を示す以下の図面を参照しながら図示の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】具体例としてのニードル・アセンブリの断面図である。
図1B】具体例としての薬物送達デバイスに連結された図1Aのニードル・アセンブリの断面図である。
図1C】第1の送達ステップ中の図1Bのニードル・アセンブリの断面図である。
図1D】2回目の送達ステップ中の図1Bのニードル・アセンブリの断面図である。
図2A】第1の送達ステップ中の図1Bのニードル・アセンブリの具体例としての薬剤移送シーリング部材の詳細な断面図であり、ここでは、移送シーリング部材は弁を含んでなる。
図2B】2回目の送達ステップ中の図2aの薬剤移送シーリング部材の詳細な断面図である。
図3A】別の具体例としてのニードル・アセンブリの断面図である。
図3B】具体例としての薬物送達デバイスに連結された図3Aのニードル・アセンブリの断面図である。
図3C】第1の送達ステップ中の図3Bのニードル・アセンブリの断面図である。
図3D】2回目の送達ステップ中の図3Bのニードル・アセンブリの断面図である。
図4A】第1の送達ステップ中の図3Bのニードル・アセンブリの具体例としての薬剤移送シーリング部材の詳細な断面図であり、ここでは、移送シーリング部材は弁を含んでなる。
図4B】2回目の送達ステップ中の図4Aの薬剤移送シーリング部材の詳細な断面図である。
図5A】ニードル・シールドを有する別の具体例としてのニードル・アセンブリの断面図である。
図5B】具体例としての薬物送達デバイスに連結された図5Aのニードル・アセンブリの断面図である。
図5C】第1の送達ステップ中の図5Bのニードル・アセンブリの断面図である。
図5D】第1の送達ステップ中の図5Bのニードル・アセンブリの断面図である。
図6A】第1の送達ステップ中の具体例としてのニードル・アセンブリの具体例としての薬剤移送シーリング部材の詳細な断面図であり、ここでは、移送シーリング部材はシーリング面を含んでなる。
図6B】2回目の送達ステップ中の図6Aの薬剤移送シーリング部材の詳細な断面図である。
図7A】第1の送達ステップ中の具体例としての薬剤チャンバ移送シーリング部材の詳細な断面図であり、ここでは、移送シーリング部材はスライダを含んでなる。
図7B】2回目の送達ステップ中の図7Aの薬剤チャンバ移送シーリング部材の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
概括的に言えば、ニードル・アセンブリは、ニードル、ニードル・ハブ、およびニードル・アセンブリを薬物送達デバイス(またはペン型注入デバイス)に連結する手段を備える外側スリーブを含んでなる。ひとたび連結されたならば、ニードルは、薬物送達デバイスの薬剤カートリッジ(またはリザーバ/チャンバ)のセプタムを刺し貫き、単独の薬剤の送達が可能になる。しかしながら、或る種の環境下では、2つまたはそれ以上の薬剤の送達のためのデバイスおよび方法を提供することが望ましいかも知れない。
【0036】
図1Aにおいては、少なくとも2つの薬剤の送達のためのニードル・アセンブリ1の具体的な実施形態の断面図が示されている。このニードル・アセンブリ1は、2つの主要コンポーネント、近位ハウジング部材11および遠位ハウジング部材12に分割されている。図示のように、両方のハウジング部材11、12は、互いに対して摺動できるように可動状態で係合させられている。固定部材25が、近位および遠位のハウジング部材11、12間の偶発的な相対的な軸方向運動を防いでいる。各固定部材25は、カム・ロックまたは別タイプの突起機構を含んでなるものであってもよい。
【0037】
近位ハウジング部材11は、ニードル・アセンブリ1を薬物送達デバイスに取り付けるためのねじ山8を含む取り付け部分9を含んでなる。他の実施形態は、スナップまたはラチェット機構のような他の種々の取り付け手段を含み得る。図示のように、移送針7は、取り付け部分9内に同軸に位置し、取り付け部分9の遠位壁26から突出する。移送針7は、取り付け部分9内に同軸に位置するように示されているが、他の実施形態では同軸に位置してなくてもよい。近位ハウジング部材11は、第1の薬剤28を収容している第1の薬剤チャンバ5を含む。第1の薬剤チャンバ5の遠位端は、遠位ハウジング部材12の係合によって、特に遠位ハウジング部材12内の注射針・ハブ3によって密封される。流体移送シーリング部材6が、第1の薬剤チャンバ5と移送針7の流体連通を阻止するために第1の薬剤チャンバ5の近位壁27に一体に設けられている。ここでは、移送針7および移送シーリング部材6は、ひとまとめにして「薬剤移送機能」と呼ぶ。
【0038】
遠位ハウジング部材12は、注射針・ハブ3内に同軸で固定される注射針2を含んでなる。他の実施形態においては、移送針7と同様の、注射針2の同軸位置は不要である。図示のように、シーリング・キャップ18が、遠位ハウジング部材12に着脱自在に取り付けられており、使用前の注射針2の汚染を防いでいる。他の実施形態においては、シーリング・キャップ16は、注射針2に着脱自在に取り付けられてもよい。遠位ハウジング部材12および注射針・ハブ3は、少なくとも部分的に相互に固定され、これら両方のコンポーネントは、摺動可能に係合された近位ハウジング部材11を受けるためのくぼみ10を形成する。この係合は、遠位ハウジング部材12および近位ハウジング部材11の軸方向の入れ子式の動きを可能にする。遠位ハウジング部材12は、ねじ山、プレスばめ、ラチェット機構および接着剤を含む、この技術分野で知られた任意の連結機構を使用して注射針・ハブ3に固定され得る。
【0039】
図1Bは、薬物送達デバイスに連結された図1Aのニードル・アセンブリ1の断面図である。しかしながら、簡潔さを求めて、薬物送達デバイス全体ではなくて、カートリッジ13のみ(カートリッジ・ホルダなしで示される)が図示してあり、このカートリッジは、(i)第2の薬剤29を収容しているチャンバ14、(ii)突き通し可能なセプタム15、(iii)プランジャ30(普通は「ピストン」、「栓」または「ストッパ」とも呼ばれる)を含んでなる。プランジャ30は、この技術分野で良く知られる従来の駆動機構により駆動されたときに第2の薬剤29をカートリッジから放出させるのに用いられる(図1D参照)。図示のように、カートリッジ13は、ねじ係合を介して、取り付け部分9のところでニードル・アセンブリ1に連結される。実際の作動に際して、カートリッジ13は、薬物送達デバイスのカートリッジ・ホルダにより保持されてもよく、そして、カートリッジ・ホルダまたは送達デバイスの他のコンポーネントは、ニードル・アセンブリ1に取り付けてもよい。ニードル・アセンブリ1へのカートリッジ13の取り付けに際して、移送針7は突き通し可能なセプタム15を刺し貫くが、移送シーリング部材6は、その初期状態(このメカニズムは後に説明する)において、第1の薬剤チャンバ5と第2の薬剤チャンバ14の流体連通を阻止する。図1Bに示すように、デバイスは、使用準備が整っている。
【0040】
図1Cにおいて、注射針2は、患者(またはユーザ)31に挿入され、患者の皮膚に押し付けられる(ここでは、これを「第1の送達ステップ」Fと呼ぶ)。閾値レベルのフォースが遠位方向において、近位ハウジング部材11に適用されると、近位ハウジング部材の遠位端が、固定部材25を過ぎて動くことが可能となり、そして、近位および遠位のハウジング部材11、12が入れ子式に互いに対して動かされる。この動きは、注射針2を通しての、そして、患者31への第1の薬剤チャンバ5からの第1の薬剤28の移動を生じさせる(すなわち、第1の薬剤の送達)。第1の送達ステップF中、移送シーリング部材6は、(i)第1の薬剤28の第2の薬剤チャンバ14内への流れを阻止し、(ii)第2の薬剤29の第1の薬剤チャンバ5内への流れを阻止する。他の実施形態では、近位および遠位のハウジング部材11、12は、図1A〜1Dに示されるのとは異なって構成されてもよく、ハウジング部材11、12が互いに対して動かないように相互にしっかりと固定されてもよい。このような実施形態では、注射針・ハブ3は、ハウジング部材11、12と注射針・ハブ3の相対的な動きが第1の薬剤28を送達させるように遠位ハウジング部材12に摺動可能に取り付けられてもよい。
【0041】
図1Dにおいて、第1の送達ステップFが完了し、遠位ハウジング部材12に少なくとも部分的に連結される注射針・ハブ3が移送シーリング部材6に到達している。この状態においては、第1の薬剤28のさらなる送達は、移送シーリング部材6と注射針・ハブ3のシーリング係合により不可能である。図1Dは第1の薬剤チャンバ5内に第1の薬剤28がまだ残っている状態を示しているが、他の実施形態は、第1の薬剤28のすべてが第1の送達ステップF中に送達されるように構成されてもよい。
【0042】
2回目の送達ステップGにおいて、薬物送達デバイス作動(たとえば、薬物送達デバイスの投与ボタンの作動)が遠位方向へプランジャ30を押し、移送シーリング部材6にかかる圧力を増大させる。この圧力は、移送シーリング部材6を開かせ、したがって、注射針2および患者31への第2の薬剤29の移送および送達を可能にする。最初および2回目の送達ステップを別々に説明したが、これらのステップは、単独の送達ステップとして1つの連続的な動きで行われてもよい。
【0043】
図2A、2Bは、第1、第2の送達ステップ中の図1A〜Dのニードル・アセンブリの薬剤移送シーリング部材6の詳細な図である。図2Aに示すように、移送シーリング部材6は、通路33、一方向弁32および移送シーリング部材キャビティ35を含んでなる。弁32は、圧力作動式の弁であり、2回目の送達ステップGまで(すなわち、圧力が遠位方向において、弁32に適用されるときまで)第2の薬剤29が第1の薬剤チャンバ5に入るのを阻止すると共に、第1の薬剤28が第2の薬剤チャンバ14に入るのを阻止する。 移送シーリング部材6の他の実施形態は、キャビティ35を含んでいなくてもよい。第1の送達ステップFによって誘起される流体圧(矢印)が、第1の送達ステップ中に一方向弁32を閉ざしたままにするのを助ける。しかしながら、図2Bに示す2回目の送達ステップG中(すなわち、薬物送達デバイスの作動中)、弁32は、第2の薬剤チャンバ14内でプランジャ30の遠位方向の動きによって誘起される流体圧(矢印)によって開く。したがって、第2の薬剤29は、移送針7、移送シーリング部材6および通路36を通して注射針2およびユーザ31に移送、送達され得る。
【0044】
図3A〜Dは、ニードル・アセンブリの第2の実施形態例を示す。全体的に、全機能およびコンポーネントは、図1A〜Dに関連して先に説明したものと同様である。図3Aに示すニードル・アセンブリ1は、2つの主要コンポーネント、すなわち、近位ハウジング部材11および遠位ハウジング部材12に分割される。図示のように、両方のハウジング部材11、12は、相対的に摺動できるように可動状態で係合している。図示しないが、図3A〜Dに示すニードル・アセンブリ例は、近位および遠位のハウジング部材11、12の偶発的な相対的な軸方向運動を阻止する固定部材25を含んでなるものであってもよい。各固定部材25は、カム・ロックまたは他の種々の突起を含んでなるものであってもよい。
【0045】
近位ハウジング部材11は、ニードル・アセンブリ1を薬物送達デバイスに取り付けるためのねじ山8を含む取り付け部分9を含んでなる。他の実施形態は、スナップまたはラチェット機構のような、この技術分野で知られる他の種々の取り付け手段を含み得る。図示のように、移送針7は、取り付け部分9内に同軸に位置し、取り付け部分9の遠位壁26から突出する。移送針7は、取り付け部分9内に同軸に位置するように示されているが、他の実施形態では同軸に位置していなくてもよい。近位ハウジング部材11は、また、第1の薬剤28を収容している第1の薬剤チャンバ5を含む。この実施形態においては、第1の薬剤チャンバ5の遠位端は、第1の薬剤チャンバ5内に配置される可動栓4によって密封される。他の実施形態においては、可動栓4は、第1の薬剤チャンバ5内に部分的に配置されるだけであってもよい。可動栓は、シーリング部分38および突き通し可能部分39を含んでなる。
【0046】
突き通し可能部分39は、注射針2の近位端37によって突き通し可能である。流体移送シーリング部材6は、第1の薬剤チャンバ5と移送針7の流体連通を阻止するために第1の薬剤チャンバ5の近位壁27と一体化される。ここでは、移送針7および移送シーリング部材6は、ひとまとめにして「薬剤移送機能」と呼ぶ。
【0047】
遠位ハウジング部材12は、注射針・ハブ3内に同軸に固定された注射針2を含んでなり、この場合、注射針2はニードル・ハブ3の近位および遠位、両方の端から延びる。移送針7と同様に、注射針2の同軸配置は、他の実施形態においては不要である。遠位ハウジング部材12および注射針・ハブ3は、少なくとも部分的に相互に固定され、両コンポーネントは、摺動可能に係合する近位ハウジング部材11を受けるためのくぼみ10を形成する。この係合は、遠位ハウジング部材12および近位ハウジング部材11の軸方向の入れ子式の動きを可能とする。遠位ハウジング部材12は、ねじ山、プレスばめ、ラチェット機構および接着剤を含めて、この技術分野で知られる任意の連結機構を使用して注射針・ハブ3に固定され得る。
【0048】
図3Bは、薬物送達デバイスに連結された図3Aのニードル・アセンブリ1の断面図である。しかしながら、説明を簡単にするため、薬物送達デバイス全体ではなく、(i)第2の薬剤29を収容しているチャンバ14、(ii)突き通し可能なセプタム15および(iii)プランジャ30を含んでなるカートリッジ13(カートリッジ・ホルダなしで示す)のみが示してある。プランジャ30は、この技術分野で知られる従来の駆動機構によって駆動されたときに第2の薬剤29をカートリッジから放出するために用いられる(図1D参照)。図示のように、カートリッジ13は、ねじ係合を介して取り付け部分9のところでニードル・アセンブリ1に連結される。実際の作動に際して、カートリッジ13は、薬物送達デバイスのカートリッジ・ホルダにより保持され得、薬物送達デバイスのカートリッジ・ホルダまたは別のコンポーネントは、ニードル・アセンブリ1に取り付けられ得る。ニードル・アセンブリ1へのカートリッジ13の取り付けに際して、移送針7が突き通し可能なセプタム15を突き通すが、移送シーリング部材6は、その初期状態(後に説明する)において、第1の薬剤チャンバ5と第2の薬剤チャンバ14の流体連通を阻止する。図3Bに示すように、デバイスは使用準備が整っている。
【0049】
図3Cにおいて、注射針2は、患者31に導入され、患者の皮膚に対して押し付けられる(これは「第1の送達ステップ」Fと呼ぶ)。閾値レベルのフォースが遠位方向において近位ハウジング部材11に適用されると、近位および遠位のハウジング部材11、12が入れ子式に互いに対して動かされる。第1の送達ステップF中、近位および遠位のハウジング部材11、12間の第1の相対的な軸方向運動は、注射針2に突き通し可能部分39の栓4を突き通させる。近位および遠位のハウジング部材11、12間の第2のおよびさらなる相対的な軸方向運動の間、栓4が変位させられ、したがって、注射針2を通して第1の薬剤チャンバ5から第1の薬剤28を患者31へ放出させることになる(すなわち、第1の薬剤の送達)。第1の送達ステップF中、移送シーリング部材6は、(i)第1の薬剤28の第2の薬剤チャンバ14への流れおよび(ii)第2の薬剤29の第1の薬剤チャンバ5への流れを阻止する。
【0050】
図3Dにおいて、第1の送達ステップFが完了し、栓4が移送シーリング部材6に到達している。この状態において、移送シーリング部材6と栓4とのシーリング係合により、第1の薬剤28のさらなる送達が可能となる。図3Dは少量の第1の薬剤28が第1の薬剤チャンバ5内にまだ残っている状態を示すが、他の実施形態は、第1の送達ステップF中に第1の薬剤28がすべて送達されるように構成され得る。2回目の送達ステップGにおいては、薬物送達デバイスの作動(たとえば、薬物送達デバイスの投与ボタンの作動)は、遠位方向へプランジャ30を押し、移送シーリング部材6にかかる圧力を増大させる。この圧力が移送シーリング部材6を開かせ、したがって、注射針2および患者31への第2の薬剤29の移送および送達を可能にする。第1、第2の送達ステップを別々に説明したが、これらのステップは単独の送達ステップとして1回の連続した動きで実施されてもよい。
【0051】
図4A、4Bは、図3A〜Dのニードル・アセンブリの薬剤移送シーリング部材6の詳細な図である。図示のシーリング部材6は、図2A、2Bに関連して説明したものと実質的に同様であり、したがって、図2A、2Bに関する上記の説明をここに適用できるので繰り返さない。唯一の相違は、図4Bにおいて、図2Bに示すように移送シーリング部材6に当接する注射針・ハブ3の代わりに、栓4が移送シーリング部材6に当接することである。
【0052】
図5A〜Dは、ニードル・アセンブリの第3の実施形態例を示す。全体的に、全機能およびコンポーネントは、図1A〜Dに関連して先に説明したものと同様である。図5Aに示すニードル・アセンブリ1は、2つの主要コンポーネント、すなわち、近位ハウジング部材11および遠位ハウジング部材12に分割される。図示のように、両方のハウジング部材11、12は、互いに対して摺動できるように可動状態で係合させられている。図1A〜Dおよび3A〜Dに示す実施形態とは異なり、図5A〜Dに示すニードル・アセンブリは、ニードル・シールド16を含む。
【0053】
その中立の状態において、ニードル・シールド16は、注射針42の遠位端を覆う。ニードル・シールド16は、(使用前後)最外方へ延びた位置に付勢するように配置された圧縮スプリング17を含んでなる。注射針2は、摺動可能なカラー23によってニードル・ハブ3に可動状態で取り付けられる。注射針37の近位端は、ニードル・ハブ40の近位面の下に配置され、突き通し可能なハブ・シーリング部材45によって第1の薬剤チャンバ5から分離されている。ニードル・スライド46は、シールド16の中央付近に配置され、バー47を介してシールドに連結される。他の実施形態においては、ニードル・スライド46をシールド16に取り付けるために異なった連結手段が使用され得る。たとえば、シールド16の内壁から延びているプレートまたはフランジが、ニードル・スライド46をシールド16に連結してもよい。近位および遠位のハウジング部材11、12間の偶発的な相対的な軸方向運動を回避するために、ブロッキング部材22およびブロッキング凹所24を含んでなるブロッキング機構48が導入される。
【0054】
遠位ハウジング部材12に向かう近位ハウジング部材11の軸方向運動は、ブロッキング凹所24内に係合するブロッキング部材22によって阻止される。ブロッキング部材22は、可撓性および/または弾力性のある材料または剛性材料で作られ得る。図示のように、ブロッキング部材22は、遠位ハウジング部材12に連結され、ブロッキング凹所24は、近位ハウジング部材11の外面上に設けられる。しかしながら、他の実施形態においては、ブロッキング部材22は、近位ハウジング部材11に連結され、ブロッキング凹所24は、遠位ハウジング部材12の外面に設けられ得る。ブロッキング部材22は、遠位ハウジング部材12に回動可能に連結され得る。
【0055】
シールド16は、摺動可能に配置されたアンブロッキング部材21を含んでなる。アンブロッキング部材21は、図5Aに最も良く示されるように三角形状であってもよい。摺動可能に配置されたアンブロッキング部材21は、ニードル・アセンブリ1の使用中のシールド16の近位方向の動きが或る位置のところで近位および遠位のハウジング部材11、12のアンブロッキングになるように構成される。シールド16がニードル・アセンブリ1の使用中に近位方向へ動くにつれて、シールド16の一部であってもよいし、あるいは、おそらくはシールド16に取り付けられてもよいアンブロッキング部材21が近位方向へ押される。アンブロッキング部材21がブロッキング部材22の近位端と接触すると、ブロッキング部材は、くぼみ24から分離され、近位および遠位のハウジング部材11、12間の相対的な軸方向運動が可能になる。
【0056】
図5Bは、薬物送達デバイスに連結された図5Aのニードル・アセンブリ1の断面図である。使用中、シールド16は、患者31の皮膚に押し付けられ(矢印E)、その結果、注射針・スライド46が注射針2をニードル・ハブ3に取り付けたニードル・カラー23と係合するまで、シールド16が引っ込む(すなわち、近位方向へ動く)。付加的な近位シールド動きが、近位方向におけるニードル2の平行な動きを生じさせ、突き通し可能なハブ・シーリング部材45が注射針37の近位端によって突き通される。したがって、注射針2と第1の薬剤チャンバ5の流体連通が確立される。同時に、シールド16のこの近位方向の動きは、ブロッキング機構48を解放する。
【0057】
ブロッキング機構48の解放後、薬剤送達が、図1A〜Dに関連して説明したと同じ方法で実施される。図5Cは、第1の薬剤28が送達される第1の送達ステップFを示し、図5Dは、第2の薬剤29が送達される2回目の送達ステップGを示す。第1、第2の薬剤28、29が送達された後、注射針2は、患者31から取り外され、そして、スプリング17がシールド16を再び最外方に延びた位置に押圧し、したがって、注射針42の遠位端を覆う。別の実施形態においては、ニードル・アセンブリ1の再利用を阻止する機構が導入され得る。たとえば、使用後にシールド16をその最外方遠位位置(すなわち、図5Aに示す位置)で錠止する、この技術分野で知られるような錠止機構が導入されてもよい。
【0058】
図6A、6Bは、第1、第2の送達ステップ中にここに説明したニードル・アセンブリ実施形態のいずれかと共に使用され得る薬剤移送シーリング部材6例の詳細な図である。図6Aに示すように、移送シーリング部材6は、移送シーリング部材キャビティ35およびシーリング面50を含んでなる。シーリング面50は、第1の送達ステップF中に第2の薬剤29が第1の薬剤チャンバ5に入るのを防ぐと共に、第1の薬剤28が第2の薬剤チャンバ14に入るのを防ぐ。移送シーリング部材6の他の実施形態は、キャビティ35を含まなくてもよい。この実施形態においては、2回目の送達ステップGに先立って、注射針2は、第2の薬剤29が送達され得るようにシーリング面50を突き通さなければならない。注射針2は、第1の送達ステップFの終り近くにシーリング面50を突き通してもよい。
【0059】
図7A、7Bは、第1、第2の送達ステップ中にここに説明したニードル・アセンブリ実施形態のいずれかと共に使用され得る別の薬剤移送シーリング部材6例を示す。図7Aに示すように、移送シーリング部材6は、閉位置(すなわち、第1、第2の薬剤チャンバ5、14間の流体連通はない)にあるスライダ51を含んでなる。この実施形態においては、近位ニードル・ハブ面40は、2回目の送達ステップG中にスライダ51をその開構成(図7B参照)に押し、したがって、注射針2と第2の薬剤チャンバの間の流体連通(図7A、7Bには示していない)を提供するように(機械的にまたは電子的に)変更されている。
【0060】
種々の実施形態例を先に説明してきた。しかしながら、当業者であれば、特許請求の範囲から逸脱することなくこれらの実施形態に変更、修正をなし得ることは理解できよう。たとえば、図1A〜7Bに示すものの代わりにおよび/またはそれに加えて、ニードル・アセンブリの他の実施形態は、付加的な特徴を含んでもよい。たとえば、種々の具体例としての移送シーリング部材を説明してきたが、この技術分野で知られる他の移送シーリング部材が使用され得る(たとえば、機械式または電子式の弁、閉形態、および開形態を備える回転ディスクなどのような他のシャッタ手段)。それに加えて、他の実施形態は、図に示す特徴のいくつか(すべてではない)を含み得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B