特許第6276994号(P6276994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276994
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】人工心臓弁用の結合点に縫合する弁尖
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20180129BHJP
   A61F 2/844 20130101ALI20180129BHJP
   A61F 2/86 20130101ALI20180129BHJP
【FI】
   A61F2/24
   A61F2/844
   A61F2/86
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-552514(P2013-552514)
(86)(22)【出願日】2011年8月24日
(65)【公表番号】特表2014-513994(P2014-513994A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2011048967
(87)【国際公開番号】WO2012106011
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2014年6月6日
【審判番号】不服2016-8333(P2016-8333/J1)
【審判請求日】2016年6月6日
(31)【優先権主張番号】61/438,451
(32)【優先日】2011年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/216,124
(32)【優先日】2011年8月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】アルカティブ,ユーセフ・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイド,ピーター・ニコラス
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 長屋 陽二郎
【審判官】 関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−540079(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0240320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
近位端及び遠位端を有している折畳み可能かつ拡張可能なステントと、
前記ステント上に設けられ、それぞれが前記ステント内腔側に位置した内面とその反対側の外面を含む本体を有する複数の結合点と、
前記ステント内に配置されている折畳み可能かつ拡張可能な弁アセンブリであって、それぞれが自由端縁を有している複数の弁尖を備えている弁アセンブリと、を備え、
前記複数の弁尖のうち1つの弁尖の前記自由端縁の側端部は、折り曲げられた部分と前記折り曲げられた部分が重ねられる残りの部分とを含み、前記複数の結合点のうちの1つの結合点の前記内面と面接触するように前記1つの結合点に縫合され、前記折り曲げられた部分と前記残りの部分は、前記結合点に対して略平行な襞をなしており、
前記1つの弁尖に隣接する第2の弁尖の前記自由端縁の側端部は、襞をなす折り曲げられた部分を備えており、前記第2の弁尖の前記折り曲げられた部分は前記1つの結合点に縫合されている、人工心臓弁。
【請求項2】
前記1つの弁尖の前記折り曲げられた部分の前記襞の内側に配設されている補強ウェブを更に備えている、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記折り曲げられた部分は、前記1つの弁尖の前記端部の前記残りの部分に対して略平行である、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記折り曲げられた部分は螺旋形態である、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記端部の上に位置するウェブ材をさらに備え、前記ウェブ材は、前記折り曲げられた部分及び前記1つの結合点に縫合されている、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
人工心臓弁であって、
近位端及び遠位端を有している折畳み可能かつ拡張可能なステントと、
前記ステント上に設けられ、それぞれが前記ステント内腔側に位置した内面とその反対側の外面を含む本体を有する複数の結合点と、
前記ステント内に配置されている折畳み可能かつ拡張可能な弁アセンブリであって、それぞれが自由端縁を有している複数の弁尖を備えている弁アセンブリと、を備え、
前記複数の弁尖のうちの1つの弁尖の前記自由端縁の端部は、折り曲げられた部分と前記折り曲げられた部分が重ねられる残りの部分とを含み、前記複数の結合点のうちの1つの結合点の前記内面と面接触するように前記1つの結合点に縫合され、前記折り曲げられた部分と前記残りの部分は、U字形状の襞、S字形状の襞、および、略螺旋状のロールからなる群から選択される構造を有しており、
前記1つの弁尖に隣接する第2の弁尖の前記自由端縁の側端部は、襞をなす折り曲げられた部分を備えており、前記第2の弁尖の前記折り曲げられた部分は、U字形状の襞、S字形状の襞、および、略螺旋状のロールからなる群から選択される構造を有し、かつ、前記1つの結合点に縫合されている、人工心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心臓弁置換に関し、特に、折畳み可能な人工心臓弁に関する。本発明は、より詳細には、折畳み可能な人工心臓弁に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年8月23日に出願された米国特許出願第13/216,124号及び2011年2月1日に出願された米国仮特許出願第61/438,451号の出願日の利益を主張するものであり、これらの米国特許出願及び米国仮特許出願の開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
比較的小さな周方向寸法に折畳み可能である人工心臓弁は、折畳み可能でない弁よりも低い侵襲性で患者の体内に送達することができる。例えば、折畳み可能な弁は、カテーテル、トロカール、腹腔鏡手術器具等のようなチューブ状送達機器を介して患者の体内に送達することができる。この折畳み性によって、全開胸開心手術等のより侵襲性の高い手技の必要性を回避することができる。
【0004】
折畳み可能な人工心臓弁は、通常、ステントに取り付けられた弁アセンブリ又は弁構造体の形態をとる。用いることのできる多くのタイプのステントがある。しかしながら、弁構造体が通例取り付けられるステントには、自己拡張型ステント及びバルーン拡張式ステントの2つのタイプがある。そのような弁を送達機器内に配置し、最終的に患者の体内に配置するには、その弁を先ず折り畳むか又はクリンプして、その周方向寸法を縮小しなければならない。
【0005】
折り畳まれた人工弁が患者の所望の移植部位(例えば、人工弁によって置換される、患者の心臓弁の弁輪又は当該弁輪の近く)に達したとき、その人工弁を送達機器から展開又は解放して完全な動作寸法に拡張することができる。バルーン拡張式ステントの場合、これは、一般に、弁全体を解放し、その適切な位置を確実にし、次いでステント内に位置決めされているバルーンを拡張することを伴う。他方、自己拡張型ステントの場合、弁を覆うシースが引き抜かれると、ステントは、自動的に拡張する。
【0006】
折畳み可能な人工心臓弁内の弁尖は、その有効寿命中に何百万回も開閉しなければならない。この繰り返し動作は、弁尖の上に、特に弁の残りの部分に固定されている弁尖に種々の応力を生じさせ得る。不適切な又は不適当な取付けは、弁をステントからの引き剥がす裂け及び弁の故障につながり得る。循環系における弁の故障は患者に対して重大な影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、心臓弁を製造するとともに、折畳み可能な人工心臓弁内に弁尖を固定するための改良された方法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は人工心臓に関するものである。一実施形態においては、人工心臓弁はステントと弁アセンブリとを備えている。ステントは、折畳み状態及び拡張状態を有し、ステント上に設けられた複数の結合点を備えている。弁アセンブリは、ステントに固定されており、複数の弁尖を備えている。各弁尖は自由端縁を有している。弁尖の自由端縁の端部は、折り曲げられ、複数の結合点のうちの対応する1つの結合点に縫合されている。
【0009】
本発明の一実施形態においては、互いに隣接している第1の弁尖及び第2の弁尖の自由端縁の端部は相互に縫合されている。別の実施形態においては、人工心臓弁は、弁尖の自由端縁の折り曲げられた端部同士の間に配設されている補強層を更に備えている。
【0010】
本発明の幾つかの或る特定の実施形態においては、弁尖の自由端縁の折り曲げられた端部は、弁尖の、すぐ隣の部分に対して略平行であり結合点に対して略垂直である又は結合点に対して略平行である。
【0011】
弁尖の自由端縁の折り曲げられた端部の自由端は、縫合糸を越えて、弁尖の、すぐ隣の部分まで延びることができる。更に別の実施形態においては、弁尖の自由端縁の端部は略螺旋状の形態になるように巻かれ得る。更に別の実施形態においては、弁尖の自由端縁の折り曲げられた端部は2つ以上の折曲げ部を含むことができる。
【0012】
弁尖の自由端縁の端部の上に位置するウェブが、結合点の周りを実質的に包囲することができ、また、このウェブを端部及び結合点に縫合することができる。
【0013】
さらに、弁尖は、「タブ」すなわち結合点に取り付けられる端部を備えていてもよく、又は取り付けられた端縁の一部分が弁尖に縫合されてもよい。
【0014】
本発明の更に別の実施形態によると、人工心臓弁は、ステントとステント内に配置されている弁アセンブリとを備えている。ステント及び弁アセンブリのそれぞれは、折畳み状態及び拡張状態を有している。ステントは近位端及び遠位端を有している。ステント上に複数の結合点が設けられている。弁アセンブリは複数の弁尖を備えており、複数の弁尖のそれぞれが自由端縁を有している。弁尖の自由端縁の端部は、折り曲げられ、複数の結合点のうちの対応する1つの結合点に縫合されている。端部は、U字形状の襞、S字形状の襞、略螺旋状のロール、及び外側ウェブによって被包されているU字形状の襞からなる群から選択される形態に折り曲げられている。
【0015】
本発明の種々の実施形態を、図面を参照しながら本明細書において開示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による折畳み可能な人工心臓弁の部分側面図である。
図2】本発明の更なる実施形態による折畳み可能な人工心臓弁であって、弁尖の端縁が実質的に幾つかのステントストラットに沿って配置されている人工心臓弁の一部分の展開図である。
図3】本発明の更に別の実施形態による折畳み可能な人工心臓弁であって、弁アセンブリの弁尖の幾つかの部分が、ステントに取り付けられておりかつ実質的に幾つかの特定のステントストラットに沿って配置されている人工心臓弁の一部分の展開図である。
図4A】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4B】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4C】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4D】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4E】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4F】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4G】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4H】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図4I】本発明の態様に従ってステントの結合点に縫合する弁尖の種々の実施形態のうちの一つを示す極概略的な端面図である。
図5A】本発明の態様による弁尖の2つの実施形態のうちの一方の実施形態の極めて概略的な前面図である。
図5B】本発明の態様による弁尖の2つの実施形態のうちの一方の実施形態の極めて概略的な前面図である。
図5C】本発明の態様による結合点に縫合する弁尖の一実施形態を示している極めて概略的な端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において使用されているように、人工心臓弁に関して使用されている場合の「近位の」という語は、心臓弁が患者に移植された状態における心臓弁の心臓に最も近い端を指すのに対し、人工心臓弁に関して使用されている場合の「遠位の」という語は、心臓弁が患者に移植された状態における心臓弁の心臓から最も遠い端を指す。
【0018】
図1に見られるように、折畳み可能な人工心臓弁100が、典型的には、弁アセンブリ104を支持しているステント又はフレーム102を備えている。折畳み可能な人工心臓弁の例が、国際特許出願公開第2009/042196号、米国特許第7,018,406号、米国特許第7,329,278号、米国特許出願公開第2005/0113910号及び同第2009/0030511号に記載されており、これらの国際特許出願公開、米国特許及び米国特許出願公開の全ての開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0019】
人工心臓弁100は、患者の本来の大動脈弁の機能の代わりを果たすように設計されている。以下で詳細に説明するように、人工心臓弁は拡張状態及び折畳み状態を有する。本発明は、本来の大動脈弁の代わりを果たす人工心臓弁に適用されるものとして本明細書において記載されているが、そのように限定はされず、他のタイプの心臓弁の代わりを果たす人工弁に適用することができる。
【0020】
人工心臓弁100は、ステント又はフレーム102を備えており、ステント又はフレーム102は、金属、合成高分子、又は、ステントとして機能することが可能な生体高分子等の、任意の生体適合性材料から全体的に又は部分的に形成することができる。適した生体高分子として、エラスチン及びその混合物又はその複合物が挙げられるが、それらに限定されない。適した金属として、コバルト、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、及び、ニチノールを含むそれらの合金が挙げられるが、それらに限定されない。ステントとしての使用に適した合成高分子として、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、アクリル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリアラミド等の熱可塑性樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。ステント102は、弁輪区域110と大動脈区域(図示せず)とを有することができる。ステント102の弁輪区域110及び大動脈区域のそれぞれは、ステントの周囲で互いに接続される複数のセル112を含む。ステント102の弁輪区域110及び大動脈区域は、互いに接続される1つ又は複数の環状列のセル112を含むことができる。例えば、弁輪区域110は2つの環状列のセル112を有することができる。人工心臓弁100が拡張状態になると、各セル112は略菱形の形状になるものとすることができる。各セル112は、その形状を問わず、複数のストラット114によって形成される。例えば、セル112は4つのストラット114によって形成することができる。
【0021】
ステント102は、ステント102の長手方向に少なくとも2つのセル112を結合する結合点116を含むことができる。結合点116は、弁アセンブリ104とステント102との縫合を容易にするアイレットを含むことができる。
【0022】
人工心臓弁100はまた、ステント102の弁輪区域110の内側に取り付けられる弁アセンブリ104を備える。2007年3月12日に出願された米国特許出願公開第2008/0228264号、2007年12月19日に出願された米国特許出願公開第2008/0147179号、2004年7月10日に出願された米国特許出願公開第2005/0113910号及び2009年1月29日に出願された米国特許出願公開第2009/0030511号(これらの米国特許出願公開の全ての開示全体は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)が、適した弁アセンブリを記載している。弁アセンブリ104は、シート、不織布及び織布等の形態の、任意の適した生体材料又は生体高分子材料から全体的に又は部分的に形成することができる。弁アセンブリ104に適した生体材料の例として、ブタ又はウシの心膜組織が挙げられるが、それらに限定されない。弁アセンブリ104に適した高分子の例として、ポリウレタン及びポリエステルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0023】
弁アセンブリ104は、弁輪区域110の内腔表面、弁輪区域110の内腔外表面(ablumenal surface)又はそれらの双方の表面に配置されるカフ106を含むことができ、カフは、弁輪区域の内腔表面及び内腔外表面のうちの一方又は双方の全て又は一部を覆うことができる。図1は、弁輪区域110の一部を覆うが弁輪区域の別の部分を覆わないままにするように、弁輪区域の内腔表面に配置されているカフ106を示す。弁アセンブリ104は、協働して一方向弁として機能する複数の弁尖108を更に備えることができる。各弁尖108の第1の端縁122は、縫合、ステープリング、接着等の任意の適した取付け手段によってステント102に取り付けることができる。各弁尖108の第2の端縁すなわち自由端縁124は、他の弁尖の対応する自由端縁とつなぎ合わせられ、それによって弁尖が互いに協働して一方向弁として機能するのを可能にすることができる。
【0024】
用いられる取付け手段の種類にかかわらず、弁尖108は、ステント102の少なくとも幾つかのストラット114に沿ってステント102に取り付けられて、弁アセンブリ104の構造的一体性を高めることができる。このような取付けの結果として、ストラット114は、弁アセンブリ104の弁尖108を支持する補助となり、したがって、弁尖の歪みを減らすことができる。
【0025】
図1に示されているように、少なくとも1つの弁尖108は、その第1の端縁122がステント102の弁輪区域110内に位置付けられる特定のストラット114a、1114b、114c、114d、114e及び114fに概ね沿った状態で配置されるように、ステントに取り付けることができる。すなわち、端縁122は、ストラット114a、114b、114c、114d、114e及び114fと概ね位置合わさった状態で位置決めされる。同じく図示されているように、端縁122は、カフ106の端縁に対して略平行にすることができる。しかしながら、カフ106は、当然のことながら、ストラットの傾斜又はパターンに沿うように切断される必要はない。ストラット114a、114b及び114cは、3つのセル112に沿って対角に実質的に端と端とをつなぐ様式で相互に接続することができ、結合点116に接続されたストラット114aの端部から始まり、ストラット114dの端部に接続されたストラット114cの端部で終わっている。ストラット114c及び114dは、同じセル112の一部であり、互いに協働してこれらの間で略直角を規定することができる。ストラット114d、114e及び114fは、3つのセル112に沿って実質的に端と端とをつなぐ様式で相互に接続することができ、結合点116に接続されたストラット114fの端部から始まり、ストラット114cの端部とストラット114dの端部との間の接続部で終わっている。
【0026】
上記したように、弁尖108は、ストラット114a、114b、114c、114d、114e及び114fに直に取り付けられても、例えば縫合によってストラット114a、114b、114c、114d、114e及び114fによって支持されてもよい。このような場合には、カフ106は弁尖108に対する支持機能をほとんど又は全く果たさなくてもよく、そのため、カフ106の厚さを減らすことができる。カフ106の厚さを減らすことによって、折畳み状態での弁アセンブリ104の体積が減少する。この減少した体積は、人工心臓弁100が従来の送達器具よりも小さい送達器具を使用して患者の体内に移植されるのを可能にすることから望ましい。加えて、ステント114を形成している材料はカフ106を形成している材料よりも強いため、ステントは、カフよりも良好な、弁尖108に対する支持機能を達成することができる。
【0027】
弁アセンブリ104の体積は、カフ106により弁輪区域110の表面の一部分のみを覆わせることによって更に減らすことができる。続けて図を参照すると、カフ106の第1の端部すなわち近位端118はステント102の第1の端部すなわち近位端119の輪郭に概ね沿っている。したがって、カフ106の近位端は、略正弦波形状又はジグザグ形状を有することができる。このことにより、カフ106の自由な端縁はいっさい排除される。このような形状でない場合には、カフ106の自由端縁118は、ステント102の近位端119にあるセル112の尖端間に直に延びることができ、カフ106の近位端118の全長がステント102に固定されるのを可能にする。一方、カフ106の第2の端部すなわち遠位端120は必ずしも単一の環状列をなすセル112のストラットではないが、少なくとも幾つかのストラット114に概ね沿って配置することができる。
【0028】
より詳細には、カフ106の遠位端120は、カフ106がセル112の底部の環状列113をなしているセル112及び結合点とステント102の近位端119との間に位置付けられているセルの第2の環状列115をなしているセル112の全てを覆うが、結合点同士の間の環状領域内の比較的小さい面積のセルを覆うように、結合点116の位置までステントの突出部114に沿うことができる。別の言い方をすると、カフ106の遠位端120は、図1に示されているように、ストラット114a、114b、114e、114f、114g及び114hに概ね沿って配置することができる。ストラット114gは、一端がストラット114hに接続し、他端がストラット114bと114cとの交わり部に接続することができる。ストラット114hは、一端がストラット114gに接続し、他端がストラット114dと114eとの交わり部に接続することができる。ストラット114c、114d、114g及び114hは、互いに協働して単一のセル112を形成している。
【0029】
上記の構成の結果として、セル112の底部の環状列113をなしているセル112の全てをカフ106によって全体的に覆うことができる。カフ106はまた、結合点116のすぐ下に位置付けられている第2の環状列115のセル112をも全体的に覆うことができる。ステント102内の他のセル112は全て開放されている、すなわちカフ106によって覆われていないものとすることができる。したがって、カフ106によって部分的にのみ覆われるセル112は存在しないものとすることができる。
【0030】
弁尖108の端縁は結合点116の領域においてのみセル112の第2の環状列115まで延びるため、セルの第2の環状列内の結合点間に位置するセルの領域において漏れる可能性がほとんどなく、したがって、カフ106がこの領域を覆う必要はない。このようにカフ106の面積が近位端118及び遠位端120の双方において小さいことによって、弁アセンブリ104の材料の量が低減し、それによって、人工弁100は折畳み状態で比較的小さい断面積を達成することが可能になる。
【0031】
図2を参照すると、本発明の別の実施形態による人工心臓弁300が、ステント102と同様とすることができるステント又はフレ―ム302を備えている。ステント302は、大動脈区域340と弁輪区域310とを備えることができる。大動脈区域340及び弁輪区域310のそれぞれが、1つ又は複数の環状列で互いに接続されている複数のセル312を備えることができる。大動脈区域340のセル312は、弁輪区域310のセルよりも大きいものとすることができる。各セル312は複数のストラット314によって形成されている。例えば、各セル312は、4つのストラット314によって形成することができ、また、ステント302が拡張状態にあるときに略菱形の形状になるものとすることができる。ステント302は、弁アセンブリ304をステントに縫合しやすくするための1つ又は複数の結合点316を更に備えることができる。各結合点316は、同じ環状列の2つのセル312と異なる環状列の2つのセルとを相互接続することができる。
【0032】
弁アセンブリ304は、ステント302の内側に取り付けることができ、カフ306と、互いに協働して一方向弁として機能する複数の弁尖308とを備えることができる。カフ306は、ステント302の内側面上に位置付けられても、ステントの外側面上に位置付けられても、内側面及び外側面の両方に位置付けられてもよい。各弁尖308は、ステント302に取り付けられている端縁322と、第2の自由端縁324(図示せず)とを備えている。端縁322の上方部分328は、結合点316につながっている特定のストラット314の経路に概ね沿って配置されるようにステント302に取り付けることができる。例えば、少なくとも1つの弁尖308の端縁322の上方部分328を、ストラット314a及び314bに概ね沿って配置するとともにこれらのストラットに取り付けることができ、隣の弁尖308の端縁322の上方部分328を、ストラット314c及び314dに概ね沿って配置するとともにこれらのストラットに取り付けることができる。したがって、ストラット314a、314b、314c及び314dはこれらの互いに隣接している弁尖308を支持する補助となる。互いに隣接している弁尖308の端縁322の上方部分328は、縫合糸350を用いて結合点316並びにストラット314a、314b、314c及び314dに取り付けることができる。ストラット314b及び314cはそれぞれ、一端が結合点316に取り付けられており、それぞれが同じセル312の一部をなすことができる。
【0033】
代替的に、ストラット314b及び314cは相互に直に取り付けられてもよい。ストラット314a及び314bは、端と端とをつなぐ様式で接合することができ、互いに隣接している異なるセル312の一部をなすことができる。同様に、ストラット314c及び314dは、端と端とをつなぐ様式で接合することができ、互いに隣接している異なるセル312の一部をなすことができる。
【0034】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による折畳み可能な人工心臓弁400は、ステント102と同様とすることができるステント402を備えている。ステント402は、折畳み状態及び拡張状態を有し、ステント402の周りに環状列で相互に接続されている複数のセル412を備えている。各セル412は、複数のストラット414によって形成されており、ステント402が拡張状態にあるときに略菱形の形状になるものとすることができる。例えば、1つのセル412は4つの相互接続されているストラット414によって形成することができる。
【0035】
各ステント402は1つ又は複数の結合点416を更に備えることができ、この結合点416は、1つの環状列に位置付けられている2つの互いに隣接しているセル412と、その1つの列の上方及び下方に隣接している次の列に位置付けられている他の2つのセル412とを相互接続している。結合点416は、弁アセンブリ404をステント402に縫合しやすくすることができる。
【0036】
弁アセンブリ404は、ステント402の内側及び/又は外側に取り付けられているカフ406を備えることができる。弁アセンブリ404は、カフ406に加えて、ステント402に取り付けられているとともに互いに協働して一方向弁を画定している複数の弁尖408を備えている。各弁尖408は、ステント402に取り付けられている第1の端縁422と、第2の自由端縁424(図示せず)とを備えている。少なくとも1つの弁尖408は、その端縁422の上方部分428が特定のストラット414の経路に概ね沿って配置されるようにステント402に取り付けることができる。
【0037】
図3に示されているように、1つの弁尖408の端縁422の1つの上方部分428は、結合点416に接続することができ、また、この結合点から隔置されているストラット414bに沿って配置されるとともにストラット414bに接続することができる。端縁422の上方部分428の区域Aは、結合点416とステントのストラット414bの端部との間の略真直ぐな経路に沿うことができる。同様に、別の弁尖408の端縁422の1つの上方部分428は、結合点416に接続することができ、この結合点から隔置されているストラット414dに沿って配置されるとともにストラットに接続することができる。この第2の弁尖408の端縁422の上方部分428の区域Aは、結合点416とステントのストラット414dの端部との間の略直線経路に沿うことができる。弁尖408の端縁422は、縫合糸を使用して、結合点416並びにストラット414b及び414dに接続することができる。
【0038】
上記した人工心臓弁の実施形態のいずれも、動作の際、大動脈弁のような本来の心臓弁と置換するために用いることができる。人工心臓弁は、当該技術において既知の何らかの適切な送達器具を使用して、所望の部位(例えば、本来の弁輪の近く)へと送達することができる。人工心臓弁は、送達の際には、折畳み状態で送達器具の内側に配置される。送達器具は、経大腿法、経頂端法、又は経中隔法を用いて患者の体内へ導入することができる。送達器具が目標部位に達すると、ユーザは、上記した人工心臓弁のうちのいずれかを展開させることができる。展開させると、人工心臓弁が拡張して本来の弁輪内に確実に係合する。人工心臓弁は、心臓内に適正に位置決めされると、血液が一方向に流れるのを許可するとともに逆方向に流れるのを阻止する一方向弁として機能する。
【0039】
上記した人工心臓弁の実施形態のうちのそれぞれにおいて、弁アセンブリは、ステントの遠位端が送達器具によって捕捉されたままの状態で人工弁の弁尖が意図したように動作するのに十分な量だけ心臓弁が展開されるのを可能にする距離だけ、ステントの遠位すなわち大動脈側端部から隔てられていることが好ましい。より詳細には、人工心臓弁の弁輪側端部は、最初は、人工心臓弁の大動脈側端部が送達器具の遠位のシースによっても少なくとも部分的に覆われたままの状態で展開することができる。人工心臓弁の弁輪部分は、結合点の深さまで及び結合点を含む弁尖全体が展開されかつ十分に動作できるように展開することができる。人工心臓弁をこのようなやり方で展開することによって、ユーザは、弁尖が本来の弁輪に対して適正に位置決めされているか否か、また、弁が適正に機能しているか否かを判断することができる。
【0040】
ユーザが弁の位置決め及び動作が許容できるものであると判断した場合に、弁の残りの部分を展開することができる。しかしながら、弁の位置が不適正であるか又は弁が適正に機能していないと判断された場合には、ユーザは、弁を再度シースで覆い、再展開するために再位置決めするか又は弁全体を患者から抜去することができる。このことは、その病状の性質、並びに本来の弁及び弁輪の形状及び/又は状態に及ぶ可能性のある影響が原因で、一般にこれらのタイプの弁の受容者となっている極めて危険度が高い患者においては特に重要であり得る。当然のことながら、本発明の人工心臓弁は、同様に、最初に大動脈側端部すなわち遠位端を展開させることによって送達することができる。
【0041】
移植部位の解剖学的凹凸によって、人工心臓弁の適正な機能及び摩耗に関する問題点が生じる可能性がある。本発明の別の態様は、移植及び使用時に弁が呈し得る、楕円、丸、凹凸等のような種々の形状で、より良好に機能する弁を達成する点である。幾つかの例においては、これは、既に記載した弁尖の位置、結合点の位置、及び弁の幾何学的構造に左右され得るだけでなく、弁尖が弁アセンブリ、ステント、及び特に結合点取付け地点に取り付けられる方法にも関連し得る。ステントは移植及び使用によって変形するため、弁尖の位置及び幾何学的構造が正しくない場合には、弁尖の端縁、特に結合点取付け地点に不所望な荷重力が生じ得る。このことは、弁尖及び/又はカフの裂け及び最終的には弁の故障につながる可能性がある。
【0042】
弁の故障を最小限に抑えるとともにより良好な弁の機能を促進させることが意図されている幾つかの構成が図4A図4Iに示されている。図4A図4Iは、弁の機能をより良好にかつより長期にわたって促進させるために、弁尖を結合点116に取り付けるための種々の構成を示す。どの特定の構成が用いられるかは、とりわけ、使用される弁材のタイプ、ステントの厚さ、結合点の寸法、カフがある場合はカフのタイプ、厚さ及び配置、弁及び弁アセンブリの全体形状等に応じて決まり得る。なお、ステントの長手軸線に沿ってステントの遠位端からステントの近位端に向かって見た、結合点の端面図及び結合点への弁尖の取付け状態を示している種々の図面(これらの図面において、点線は縫合糸の線を表わしている)において、カフは明確化のために示されていない。
【0043】
参考例に係る図4Aを参照すると、2つの互いに隣接している弁尖108a及び108bの一部分が示されている。なお、弁尖108a及び108bは、単に簡潔化のために互いに対して略平行なものとして示されている。実際上は、互いに隣接している弁尖108a、108bは、結合点116から離れる方向に延びるにつれて互いから概ね分岐している。図示されている実施形態においては、弁尖108aの端部722aは、折り曲げられて略「U字形状」の襞737aをなしている。同様に、弁尖108bの端部722bは、折り曲げられて略「U字形状」の襞737bをなしている。折り曲げられている端部722a、722bは、弁尖108a、108bそれぞれのすぐ隣の部分735a、735bに対して略平行であるとともに、結合点116に対して略垂直であるものとすることができる。折り曲げられている端部722a、722bは、1本又は複数本の縫合糸710(一対の縫合糸が図示されている)によって相互に縫合することができる。加えて、端部722aは、1本又は複数本の縫合糸720aを介して結合点116に縫合することができ、端部722bは、1本又は複数本の縫合糸720b(1本の縫合糸が図示されている)を介して結合点116に縫合することができる。縫合糸710a、710bは、U字形状の襞737a、737bそれぞれを貫通しているため、縫合部位における縫合に起因して弁尖108a、108b内に誘起される応力がより広く分散され、それによって、縫合に起因する弁尖における裂けの可能性を最小限に抑えることができる。
【0044】
図4Bは、本発明実施形態による、結合点116への弁尖の縫合を示す。それぞれの弁尖108a、108bの端部722a、722bのそれぞれは、図4Aの実施形態における場合と同様に、折り曲げられて略「U字形状」の襞737a、737bをそれぞれなしており、U字形状の襞737a、737bは、次いで、外方へ曲げられて、弁尖108a、108bのすぐ隣の部分735a、735bに対して略垂直にかつ結合点116に対して略平行に位置するようになされている。U字形状の襞737aは、1本又は複数本の縫合糸730aによって結合点116に縫合することができる。同様に、U字形状の襞737bは、1本又は複数本の縫合糸730bによって結合点116に縫合することができる。この形態の変形例においては、2本以下又は3本以上の縫合糸を、各折り曲げられている端部722a、722bを結合点116に縫合するために使用することができる。縫合糸730a、730bは、U字形状の襞737a、737bをそれぞれ貫通しているため、縫合部位において弁尖108a、108b内に誘起される応力がより広く分散され、それによって、縫合に起因する弁尖における裂けの可能性を最小限に抑えることができる。
【0045】
図4Cには、図4Bの実施形態の変形例が示されている。図4Cの実施形態においては、端部722a、722bは、はるかに大きな未縫合の自由端縁724a、724bそれぞれを有しており、これらの自由端縁724a、724bは、弁尖108a、108bのすぐ隣の部分735a、735bそれぞれに向かって延び、次いで、U字形状の襞737a、737bそれぞれに向かって戻るようにカールしている。この構造によって、縫合によって誘起される応力に起因して端部722a、722bの自由端縁724a、724bが裂ける可能性が少なくなる。
【0046】
図4Dを参照すると、示されている実施形態は、図4B及び図4Cの実施形態と略同様である。図4B及び図4Cの実施形態においては、弁尖108a、108bの端部722a、722bは、U字形状の襞737a、737bそれぞれの形態の単一の折曲げ部を有しているが、図4Dの実施形態における端部722a、722bは、概ね圧縮された「S字形状」の襞又はハインツ型の襞747a、747bの複数の折曲げ部を含んでいる。襞747a、747bについての2つのこのような折曲げ部が図4Dに示されているが、襞747a、747bは3つ以上のそのような折曲げ部を含んでいてもよいことが理解されるであろう。図4Dの実施形態における付加的な折曲げ部はさらに、縫合に起因する応力を分散させるとともに、弁尖108a及び108bが裂ける可能性を減らす。
【0047】
ここで参考例に係る図4Eを参照すると、弁尖108a、108bが結合点116に縫合されている。弁尖108aの端部722aは結合点116の一方の側部の周りを包囲している。同様に、弁尖108bの端部722bは結合点116の他方の側部の周りを包囲している。このようにして、結合点116は、端部722a及び722bそれぞれによって両側が被包され得る。1本又は複数本の縫合糸730a(一対の縫合糸が図示されている)が端部722aを結合点116に取り付けており、1本又は複数本の縫合糸730b(一対の縫合糸が図示されている)が端部722bを結合点116に取り付けている。端部724a及び724b上の縫合部位は、結合点116の存在により互いに更に離隔されて位置しており、それによって、弁尖108a及び108b内の縫合に起因する応力が減じられる。なお、このタイプの構成は、カフ106が取り付けられる方法及び場所の何らかの変更を必要とし得る。カフは、自由端724a、724bの内腔外表面上に取り付けることができる。他の構成においては、カフ106はまた、両端が折曲げ部の内側部分の頂部上に取り付けられ得るように結合点116の近くで分裂させることもできる。
【0048】
カフ106はまた、内腔面に取り付けられているが、結合点とステントの近位端との間及びそれらの下方に配置することもできる。これらのタイプのカフの構成はまた、例えば、図4F及び図4Gに示されている実施形態と併せて使用することもできる。
【0049】
図4F他の参考例を示しており、弁尖108aの端部722aは結合点116の一方の側部の周りを包囲し弁尖108bの端部722bは結合点116の他方の側部の周りを包囲している。次いで、組織ウェブ又は織物ウェブ750が、自由端724aと724bとの間のあらゆる隙間を覆うように外側面(図4Fに見られる底部)から端部722a、722b及び結合点116の周りに巻かれている。1本又は複数本の縫合糸730a、730b(一対の縫合糸が各弁尖108a、108bについて図示されている)が、ウェブ750及び端部722a、722bを結合点116に取り付けることができる。例示的な構造においては、ウェブ750は適当な生体材料又は生体高分子材料から形成することができる。ウェブ750に適した生体材料の例としては、ブタ又はウシの心膜組織が挙げられるが、それに限定されない。ウェブ750に適した高分子としては、ポリウレタン及びポリエステルが挙げられるが、それらに限定されない。ウェブ750は、端部722a、722bに対する補強を提供するとともに、縫合に起因して内部に誘起される応力を減らす。
【0050】
図4Gに示されている更に別の参考例においては、それぞれの弁尖108a、108bの端部722a、722bは、略L字形状の折曲げ状態で結合点116の上に位置するが、結合点の周りを包囲してはいない。次いで、織物ウェブ又は組織ウェブ751が、弁尖108a、108bの端部722a、722bの上に位置するように結合点116の周りに巻かれているウェブ751は、ウェブ750を形成するために使用することができる材料と同じ材料から形成することができる。1本又は複数本の縫合糸730a(一対の縫合糸が図示されている)が、ウェブ751及び端部722aを結合点116に取り付けることができる。同様に1本又は複数本の縫合糸730b(一対の縫合糸が図示されている)が、ウェブ751及び端部722bを結合点116に取り付けることができる。ウェブ751は、端部722a、722bに対する補強を提供するとともに、縫合に起因して内部に誘起される応力を減らす。
【0051】
ここで図4Hを参照すると、本発明の更に別の実施形態に従って、弁尖108a、108bが結合点116に縫合されている。それぞれの弁尖108a、108bの端部722a、722bは、略螺旋状の構造757a、757bそれぞれをなすようにロール状になっている。ロール状になっている端部722a、722bは、1本又は複数本の縫合糸730a、730bそれぞれによって結合点116に縫合することができる。ロール状になっている端部722a、722bの利点は、縫合糸730a、730bによって生じる応力が端部722a、722b上に均一に分散される点である。
【0052】
図4Iは、本発明の別の例示的な実施形態を示す。それぞれの弁尖108a、108bの端部722a、722bのそれぞれは、折り曲げられて略「U字形状」の襞737a、737bそれぞれをなしている。カフ706が、U字形状の襞737a、737bと結合点116との間に挟まれている。それぞれの端部722a、722bの自由端724a、724bは、弁尖108a、108bのそれぞれの残りの部分に取り付けられている。補強用の組織ウェブ又は織物ウェブ760a、760bが、それぞれ、端部722a、722bのそれぞれの折曲げ部間に配置されている。ウェブ760a、760bは、ウェブ750を形成するために使用することができる生体材料又は生体高分子材料と同じ生体材料又は生体高分子材料から形成することができる。1本又は複数本の縫合糸730aが、折り曲げられた端部722aをウェブ760a及びカフ706とともに結合点116に取り付けており、一方、1本又は複数本の縫合糸730bが、折り曲げられた端部722bをウェブ760b及びカフ706とともに結合点に取り付けている。ウェブ760a、760bは、折り曲げられた部分722a、722bを補強する。
【0053】
図5Aは弁尖108を概略的に示しており、弁尖108は、上記した構造のうちのいずれかを用いてステント102の結合点116に縫合することができる。弁尖108は、自由端縁505と、例えば、上記したステント102の1つ又は複数のストラット114に取り付けられる弓状端縁507とを有している。弁尖108は、自由端縁505の一端に略矩形のタブ510と、自由端縁505の他端に別の略矩形のタブ520とを備えることができる。タブ510は、略真っ直ぐな外側端縁511と、この外側端縁511に対して略平行である略真っ直ぐな内側端縁512と、略真っ直ぐな頂部端縁513と、この頂部端縁513に対して略平行でありかつ端縁511及び512と略直交している略真っ直ぐな底部端縁514とによって画定することができる。タブ510は、外側端縁511から横方向に突出している更なる突出部530を備えることができる。タブ520は、タブ510と略同じであるものとすることができるが更なる突出部530は省くこともできる。
【0054】
述べたように、弁尖108は、既に記載した構造のうちのいずれかを用いてステント102の結合点116に取り付けることができる。以下は、図4Iの構造を用いての結合点116への弁尖108の取付けを記載する。タブ510は仮想折り線532を含むことができ、仮想折り線は、弁尖108の弓状端縁507と概ね位置合わせされており、端縁511及び内側端縁512に対して略平行であり、タブ510を第1の部分542及び第2の部分544に分割している。タブ510は折り線532に沿って折り曲げられて、例えば図4Iに示されている略「U字形状」の襞737aを形成することができる。
【0055】
図5B及び図5Cは、弁尖108と、結合点116への弁尖の縫合との更に別の実施形態を示す。弁尖108は、以下に記載する相異点以外は図5Aの弁尖108と概ね同様とすることができる。弁尖108は、構造が図5Aのタブ510と同様の、自由端縁505の一端から延びている略矩形のタブ610と、自由端縁505の他端から延びている同様の略矩形のタブ640とを備えることができる。しかしながら、タブ610は、タブ510の場合のように外側端縁から延びている更なる突出部を有するのではなく、頂部端縁613から延びている更なる突出部630を任意に有してもよい。同様の更なる突出部650がタブ640の頂部端縁から延びていてもよい。
【0056】
述べたように、弁尖108は、既に記載した構造のうちのいずれかを用いてステント102の結合点116に取り付けることができる。図5Cには、弁尖108を結合点116に取り付けるための更に別の構造が示されている。タブ610は仮想折り線632を含むことができ、この仮想折り線は、弁尖108の弓状端縁507と更なる突出部630の一端縁とに概ね位置合わせされており、タブ610の外側端縁611及び内側端縁612に対して略平行であり、タブ610を第1の部分642及び第2の部分644に分割する。図5Bに見られるように、略垂直なスリット620がタブ610の第1の部分642内に画定されており、このスリットは端縁611及び612に対して略平行である。タブ610は、折り線632に沿って折り曲げられて弁尖108a、108bを横切って延びている略「U字形状」の襞637を形成する。スリット620は、弁尖108a、108bの自由端縁の一部分を収容する。1本又は複数本の縫合糸730aが、弁尖108bの折り曲げられている第2の部分644と弁尖108aの自由端722aとを結合点116に取り付けている。1本又は複数本の縫合糸730bがU字形状の襞637を結合点116に取り付けている。タブ610が更なる突出部630を備えている場合には、この更なる突出部は、ステントに一時的に取り付けられ、その後取り外すことができる。
【0057】
本発明は特定の実施形態を参照しながら本明細書において説明されてきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び応用形態を例示するにすぎないことを理解されたい。それゆえ、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に数多くの変更を加えることができること、及び他の構成を考案することができることを理解されたい。
【0058】
種々の従属請求項及びそれらの従属請求項に記載の他の特徴は、初期の請求項において提示されるのとは異なる方法において組み合わせることができることが理解されよう。また、個々の実施形態との関連で説明された特徴は、記述される実施形態のうちの他の実施形態と共用できることも理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、広範な産業上の利用可能性を有しており、産業上の利用可能性としては、限定的ではないが、心臓弁置換のための医療器具及び方法に対する、特に折畳み可能な人工心臓弁に対する利用可能性を含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5A
図5B
図5C