特許第6277003号(P6277003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本アビオニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6277003-ヒータチップ研磨工具 図000002
  • 特許6277003-ヒータチップ研磨工具 図000003
  • 特許6277003-ヒータチップ研磨工具 図000004
  • 特許6277003-ヒータチップ研磨工具 図000005
  • 特許6277003-ヒータチップ研磨工具 図000006
  • 特許6277003-ヒータチップ研磨工具 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277003
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ヒータチップ研磨工具
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/04 20060101AFI20180129BHJP
   B23K 3/08 20060101ALI20180129BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20180129BHJP
   B24B 21/00 20060101ALI20180129BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20180129BHJP
【FI】
   B23K3/04 B
   B23K3/08
   B23K11/30 350
   B24B21/00 A
   B23K101:42
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-10969(P2014-10969)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-136730(P2015-136730A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西原 峻吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 厚
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−063040(JP,U)
【文献】 特開平05−055739(JP,A)
【文献】 特開2013−099779(JP,A)
【文献】 実開昭52−119589(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00−3/08
B24B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面に被接合物を押さえる凹凸が設けられたヒータチップを研磨するヒータチップ研磨工具であって、
ヒータチップの先端面と対向する受け面が前記先端面と嵌合する形状である治具と、
前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面との間に配置される研磨シートと
前記研磨シートを前記治具に固定する固定機構とを備えることを特徴とするヒータチップ研磨工具。
【請求項2】
先端面に被接合物を押さえる凹凸が設けられたヒータチップを研磨するヒータチップ研磨工具であって、
ヒータチップの先端面と対向する受け面が前記先端面と嵌合する形状である治具と、
前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面との間に配置される研磨シートと、
前記ヒータチップを上下方向に移動させることが可能な上下機構と、
前記研磨シートを間に挟んで前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とが嵌合している状態で、前記治具を前記ヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能なステージとを備えることを特徴とするヒータチップ研磨工具。
【請求項3】
請求項記載のヒータチップ研磨工具において、
さらに、被接合物を前記ヒータチップで加熱して接合するときの前記ヒータチップの高さ方向の変位量を検出する変位検出部と、
この変位検出部で検出される変位量が所定のしきい値以下となったときに、前記上下機構と前記ステージとを制御して、前記研磨シートを間に挟んだ状態で前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とを嵌合させ、前記治具を動かすことで前記ヒータチップの先端面の研磨を開始させる制御部とを備えることを特徴とするヒータチップ研磨工具。
【請求項4】
請求項2または3記載のヒータチップ研磨工具において、
さらに、前記研磨シートを前記治具に固定する固定機構を備えることを特徴とするヒータチップ研磨工具。
【請求項5】
先端面に被接合物を押さえる凹凸が設けられたヒータチップを研磨するヒータチップ研磨工具であって、
ヒータチップの先端面と対向する受け面が前記先端面と嵌合する形状である治具と、
前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面との間に配置される研磨シートと、
前記ヒータチップを上下方向に移動させることが可能な上下機構と、
前記治具を前記ヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能なステージと、
前記研磨シートを間に挟んで前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とが嵌合している状態で、前記研磨シートを前記ヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能な搬送機構とを備えることを特徴とするヒータチップ研磨工具。
【請求項6】
請求項5記載のヒータチップ研磨工具において、
さらに、被接合物を前記ヒータチップで加熱して接合するときの前記ヒータチップの高さ方向の変位量を検出する変位検出部と、
この変位検出部で検出される変位量が所定のしきい値以下となったときに、前記上下機構と前記ステージとを制御して、前記研磨シートを間に挟んだ状態で前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とを嵌合させ、前記研磨シートを動かすことで前記ヒータチップの先端面の研磨を開始させる制御部とを備えることを特徴とするヒータチップ研磨工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合物を加圧しながら加熱するヒータチップを用いてリフロソルダリングや熱圧着等を行う接合技術に係り、特にヒータチップの先端を研磨する研磨工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被接合物を局部的に加熱することによって厚膜、薄膜基板等へのリード線の熱圧着や、プリント基板へのICリード等のリフロソルダリングなどを行う接合装置があり、この接合装置で用いられる局部加熱法の1方式としてパルスヒート法がある。
パルスヒート法は、モリブデン等の高抵抗材料からなるヒータチップによって被接合物を加圧しながら、このヒータチップにパルス状の大電流を流して、そこで発生するジュール熱により被接合物を溶融させて接合を得るものである。接合装置は、例えばヒータチップの先端に取り付けられた熱電対によってヒータチップの温度を検出し、この温度が予め設定された温度になるようにヒータチップに供給する電流を制御していた。
【0003】
このような接合装置では、接合の繰り返しによりヒータチップの先端にフラックスなどが付着する。フラックスなどが付着すると、熱伝導性が損なわれるため、ヒータチップの付着物を定期的に除去する必要がある。
従来、ヒータチップの先端を研磨する手段として、特許文献1に開示されたヒータチップ研磨機構が提案されている。特許文献1に開示されたヒータチップ研磨機構は、X−Yステージの一部に設けた研磨ステージにラッピングペーパを貼り付け、ヒーターチップを下降させてラッピングペーパに接触させた状態でX−Yテーブルを動作させることにより、ヒータチップの先端を研磨するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−63040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたヒータチップ研磨機構は、ヒータチップの被接合物との接触面が平坦である場合に対応している。しかしながら、被接合物は平坦な形状とは限らない。例えば図6に示すように、基板100上の複数のパッド101に1本ずつワイヤ102をはんだ付けする場合、はんだとパッド101とワイヤ102とからなる被接合物が基板100上で凸部となるため、この被接合物を押さえてはんだ付けするために、ヒータチップ1の被接合物との接触面(下面)に凹部2を設ける必要がある。このように被接合物との接触面が平坦でないヒータチップ1の場合、特許文献1に開示されたヒータチップ研磨機構では対応することができず、凹部2に付着したフラックスなどを除去することはできない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、先端が凹凸な形状のヒータチップを研磨することができるヒータチップ研磨工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先端面に被接合物を押さえる凹凸が設けられたヒータチップを研磨するヒータチップ研磨工具であって、ヒータチップの先端面と対向する受け面が前記先端面と嵌合する形状である治具と、前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面との間に配置される研磨シートと、前記研磨シートを前記治具に固定する固定機構とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のヒータチップ研磨工具は、ヒータチップの先端面と対向する受け面が前記先端面と嵌合する形状である治具と、前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面との間に配置される研磨シートと、前記ヒータチップを上下方向に移動させることが可能な上下機構と、前記研磨シートを間に挟んで前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とが嵌合している状態で、前記治具を前記ヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能なステージとを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のヒータチップ研磨工具の1構成例は、さらに、被接合物を前記ヒータチップで加熱して接合するときの前記ヒータチップの高さ方向の変位量を検出する変位検出部と、この変位検出部で検出される変位量が所定のしきい値以下となったときに、前記上下機構と前記ステージとを制御して、前記研磨シートを間に挟んだ状態で前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とを嵌合させ、前記治具を動かすことで前記ヒータチップの先端面の研磨を開始させる制御部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のヒータチップ研磨工具の1構成例は、前記研磨シートを前記治具に固定する固定機構を備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のヒータチップ研磨工具は、ヒータチップの先端面と対向する受け面が前記先端面と嵌合する形状である治具と、前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面との間に配置される研磨シートと、前記ヒータチップを上下方向に移動させることが可能な上下機構と、前記治具を前記ヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能なステージと、前記研磨シートを間に挟んで前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とが嵌合している状態で、前記研磨シートを前記ヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能な搬送機構とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のヒータチップ研磨工具の1構成例は、さらに、被接合物を前記ヒータチップで加熱して接合するときの前記ヒータチップの高さ方向の変位量を検出する変位検出部と、この変位検出部で検出される変位量が所定のしきい値以下となったときに、前記上下機構と前記ステージとを制御して、前記研磨シートを間に挟んだ状態で前記ヒータチップの先端面と前記治具の受け面とを嵌合させ、前記研磨シートを動かすことで前記ヒータチップの先端面の研磨を開始させる制御部とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒータチップの先端面と治具の受け面との間に研磨シートを配置した状態で治具をヒータチップに押し付け、治具を動かすことにより、ヒータチップの先端面の付着物を除去することができる。
【0011】
また、本発明では、研磨シートを治具に固定する固定機構を設けることにより、より確実な研磨を行うことができる。
【0012】
また、本発明では、治具をヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能なステージを設けることにより、ステージを動かしてヒータチップの先端面を研磨することができる。
【0013】
また、本発明では、研磨シートをヒータチップの移動方向と垂直な方向に動かすことが可能な搬送機構を設けることにより、搬送機構を動かしてヒータチップの先端面を研磨することができる。
【0014】
また、本発明では、変位検出部と制御部とを設けることにより、作業員の指示によらずに、ヒータチップの先端面の研磨を自動的に開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るヒータチップ研磨工具の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る研磨方法を説明する図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る研磨シートの固定機構を示す側面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係るヒータチップ研磨工具の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係るヒータチップ研磨工具の構成を示すブロック図である。
図6】従来のヒータチップ研磨機構の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るヒータチップ研磨工具の斜視図である。
本実施の形態のヒータチップ研磨工具は、ヒータチップ1の先端面(被接合物との接触面であり、下面)と対向する受け面(上面)が前記先端面と嵌合する形状である治具10と、ヒータチップ1と治具10との間に配置される研磨シート11とから構成される。
【0017】
ヒータチップ1の先端面には、図6で説明したとおり、被接合物を押さえるための複数の凹部2が形成されている。
治具10の受け面には、このヒータチップ1の先端面の凹部2に対応して、凹部2と同数の凸部12が設けられている。こうして、治具10は、ヒータチップ1と嵌合するようになっている。ヒータチップ1と治具10との嵌め合いには、凹部2の配列方向(図1X方向)と直交する方向(図1Y方向)に沿って治具10を動かすことができるように、若干のゆとりが設けられている。
【0018】
ヒータチップ1を作製する際に、モリブデン製の板からワイヤカッタでヒータチップ1を切り出すと、板の残りが出るが、この残りの部分を治具10として利用すればよい。こうして、ヒータチップ1の先端面と凹凸が逆の受け面を備えた治具10を容易に作製することができる。ヒータチップ1は被接合物の種類によって先端面の凹凸の寸法が異なるが、以上のような作製方法によれば、ヒータチップ1と嵌合する治具10を容易に作製可能である。
研磨シート11としては、例えば表面に研磨粒子が塗布された市販のラッピングフィルムを用いることができる。
【0019】
ヒータチップ1の先端面を研磨するには、図2に示すようにヒータチップ1と治具10との間に研磨シート11を配置した状態で治具10をヒータチップ1に押し付け、凹部2の配列方向と直交する方向(図1Y方向)に沿って治具10を動かす。こうして、ヒータチップ1の凹部2に付着したフラックスなどを除去することができる。
【0020】
なお、本実施の形態では、ヒータチップ1を切り出す板から治具10を作製しているため、治具10の厚さ(図1のt)がヒータチップ1の厚さ(例えば2mm程度)と同じになっているが、これに限るものではなく、治具10をヒータチップ1よりも厚くしてもよい。また、本実施の形態では、治具10をヒータチップ1と同じ金属製としているが、これに限るものではなく、樹脂製の治具10を用いてもよい。
【0021】
また、本実施の形態では、ヒータチップ1と治具10との間に研磨シート11を挟むだけにしているが、より確実な研磨を行うため、図3に示すように、研磨シート11を固定する固定機構13を治具10に設けるようにしてもよい。これにより、治具10の動きに合わせて研磨シート11を確実に動かすことができ、より効果的な研磨を行うことができる。固定機構13としては、例えば研磨シート11の端を挟んで固定する機構、あるいは粘着テープなどが考えられる。
【0022】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、作業員が治具10を動かしていたが、治具10をステージ上に設置してステージを動かすようにしてもよい。図4は本発明の第2の実施の形態に係るヒータチップ研磨工具の構成を示すブロック図であり、図1図2と同様の構成には同一の符号を付してある。
【0023】
本実施の形態の治具10は、ヒータチップ1の凹部2の配列方向(X方向)および配列方向と直交する方向(図4の紙面と垂直な方向、図1Y方向)に移動可能なXYステージ14の上に設けられている。XYステージ13は、駆動源としてモータを備えている。
【0024】
ヒータチップ1の先端面を研磨する場合、接合装置の制御部15は、作業員の指示に応じてXYステージ14を移動させて治具10をヒータチップ1の真下の位置に移動させる。ヒータチップ1と治具10との位置決めは、XYステージ14の移動による既存の位置決め技術で実現可能である。そして、制御部15は、上下機構16によりヒータチップ1を下降させる。これにより、研磨シート11を間に挟んだ状態でヒータチップ1の先端面と治具10の受け面とが嵌合し、図2に示したような状態となる。制御部15は、このような状態でY方向に沿ってXYステージ14を動かす。こうして、本実施の形態では、XYステージ14を動かすモータの動力を用いてヒータチップ1の先端面を研磨することができる。
【0025】
XYステージ14の動きは作業員の指示に応じて止めてもよいし、研磨を一定時間行った時点で制御部15が自動的に停止させるようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、治具10をXYステージ14で動かすため、治具10の厚さ(図1のt)をヒータチップ1よりも厚くすることが望ましい。また、第1の実施の形態で説明したとおり、研磨シート11を固定する固定機構を治具10に設けることが望ましい。
【0026】
また、本実施の形態では、ヒータチップ1の先端面を研磨する際に、作業員の指示に応じてXYステージ14を移動させるようにしているが、これに限るものではなく、ヒータチップ1の先端面を研磨するメンテナンスのタイミングを自動的に検出して、自動的に研磨を開始するようにしてもよい。
ヒータチップ1の上下機構16には図示しない変位センサが設けられており、被接合物を接合中のヒータチップ1の高さ方向(図4Z方向)の変位量を電気信号に変換できるようになっている。変位検出部17は、この変位センサの出力に基づいて、ヒータチップ1の高さ方向の変位量を検出する。
【0027】
接合装置の制御部15は、図6に示したような被接合物をはんだ付けする場合、被接合物を載せたXYステージ14を移動させて被接合物をヒータチップ1の真下の位置に移動させる。そして、制御部15は、上下機構16によりヒータチップ1を下降させて、ヒータチップ1によって被接合物を加圧しながら、電源18からヒータチップ1に電流を流して、はんだを溶融させる。
【0028】
制御部15は、所定の終了条件が成立したときに、ヒータチップ1への通電を終了して、接合を終了させる。例えば、制御部15は、ヒータチップ1に取り付けられた熱電対(不図示)によってヒータチップ1の温度を検出し、この温度が予め設定された温度になるようにヒータチップ1に供給する電流を制御する。このような通電制御を一定時間行って接合を終了する。
【0029】
このとき、はんだの溶融により被接合物の高さが変化するので、被接合物を押さえているヒータチップ1の高さ方向の位置も変化する。変位検出部17は、このような接合中のヒータチップ1の高さ方向の変位量を検出するものである。ヒータチップ1の凹部2にフラックスなどが付着すると、この付着物の厚みによってヒータチップ1が被接合物から浮いた状態となり、変位検出部17で検出される変位量が小さくなる。
【0030】
そこで、制御部15は、接合開始時から接合終了時までの変位量が所定のしきい値以下となったときに、メンテナンスを実施すべき時期と判断し、上記のようにXYステージ14を移動させて治具10をヒータチップ1の真下の位置に移動させ、ヒータチップ1の先端面の研磨を行う。こうして、作業員の指示によらずに、自動的に研磨を開始することができる。
【0031】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。第1、第2の実施の形態では、治具10またはXYステージ14を動かしてヒータチップ1の先端面を研磨していたが、研磨シート11を動かすようにしてもよい。図5は本発明の第3の実施の形態に係るヒータチップ研磨工具の構成を示すブロック図であり、図1図4と同様の構成には同一の符号を付してある。
【0032】
本実施の形態では、研磨シート11をヒータチップ1の凹部2の配列方向と直交する方向(Y方向)に沿って動かす搬送機構19が設けられている。搬送機構19は、駆動源としてモータを備えている。
治具10と搬送機構19とは、第2の実施の形態で説明したXYステージに取り付けられている。ヒータチップ1の先端面を研磨する場合、接合装置の制御部15は、作業員の指示に応じてXYステージ14を移動させて治具10をヒータチップ1の真下の位置に移動させる。そして、制御部15は、上下機構16によりヒータチップ1を下降させる。このとき、制御部15は、ヒータチップ1と治具10との間を研磨シート11が滑り動くことができる程度のゆとりが生じるように、ヒータチップ1の加圧力を調節する。制御部15は、このような状態で搬送機構19によりY方向に沿って研磨シート11を動かす。
【0033】
こうして、本実施の形態では、搬送機構19を動かすモータの動力を用いてヒータチップ1の先端面を研磨することができる。研磨シート11の動きは作業員の指示に応じて止めてもよいし、研磨を一定時間行った時点で制御部15が自動的に停止させるようにしてもよい。
なお、本実施の形態の場合、治具10の厚さ(図1のt)はヒータチップ1の厚さと同じでもよいし、ヒータチップ1より厚くてもよい。また、第2の実施の形態で説明したとおり、変位検出部17で検出される変位量に応じて自動的に研磨を開始するようにしてもよい。
【0034】
第2、第3の実施の形態で説明した制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第2、第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、被接合物を加圧しながら加熱するヒータチップの先端を研磨する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…ヒータチップ、2…凹部、10…治具、11…研磨シート、12…凸部、13…固定機構、14…XYステージ、15…制御部、16…上下機構、17…変位検出部、18…電源、19…搬送機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6