(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テープカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、前記カートリッジ装着部に設けられ、剛体として機能すると共に、装着した前記テープカートリッジを離脱方向に係止するエッジを有する装置側係止部と、を備えたテープ印刷装置に、着脱可能に装着される為のテープカートリッジであって、
前記カートリッジ装着部に装着された場合に、前記装置側係止部の前記エッジに対し前記エッジの近接壁面に沿わない傾斜状態で係止されるカートリッジ側係止部と、
前記カートリッジ側係止部を支える係止ばね部と、を備え、
前記係止ばね部と前記カートリッジ側係止部とは、両持の梁状に形成されていることを特徴とするテープカートリッジ。
テープカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、前記カートリッジ装着部に設けられ、剛体として機能すると共に、装着した前記テープカートリッジを離脱方向に係止するエッジを有する装置側係止部と、を備えたテープ印刷装置に、着脱可能に装着される為のテープカートリッジであって、
前記カートリッジ装着部に装着された場合に、前記装置側係止部の前記エッジに対し前記エッジの近接壁面に沿わない傾斜状態で係止されるカートリッジ側係止部と、
前記カートリッジ側係止部を支える係止ばね部と、
カートリッジケースと、を備え、
前記係止ばね部と前記カートリッジ側係止部とは、前記カートリッジケースの並列な2つの線状部分を除去することにより画成された帯状体で構成されていることを特徴とするテープカートリッジ。
前記カートリッジ装着部に対する着脱に際し、前記カートリッジ側係止部は、前記着脱方向と交差する方向成分を有する変位が生じ、前記変位に対応する前記係止ばね部の撓み量は、前記着脱動作の途中でピークとなることを特徴とする請求項1または2に記載のテープカートリッジ。
前記ガイド面は、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面との間に連設され、前記着脱動作に際しクリック感を奏するように構成された連設面を、更に有していることを特徴とする請求項5に記載のテープカートリッジ。
前記カートリッジ側係止部は、前記装置側係止部に係止された状態で、前記装置側係止部からの反力を受け、前記着脱方向のうちの装着方向の分力を得る被押圧斜面を有することを特徴とする請求項1または2に記載のテープカートリッジ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような凹所に立設した一対の板バネにより、テープカートリッジを位置決め保持する構造では、繰り返しテープカートリッジが着脱されることにより、板バネが塑性変形し、経時的に板バネのばね力が失われて、その機能が損なわれる問題があった。すなわち、装置側にばね材(板バネ)を設け、テープカートリッジ側に非ばね材(係合部)を設ける構造では、ばね材を十分に長く形成等しない限り、経時的にばね性が損なわれるおそれがある。或いは、着脱の円滑さが損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は、装着のためのばね性が損なわれることがなく、且つ着脱の円滑さが損なわれることのないテープカートリッジを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープカートリッジは、テープカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、カートリッジ装着部に設けられ、剛体として機能すると共に、装着したテープカートリッジを離脱方向に係止するエッジを有する装置側係止部と、を備えたテープ印刷装置に、着脱可能に装着される為のテープカートリッジであって、カートリッジ装着部に装着された場合に、装置側係止部のエッジに対しエッジの近接壁面に沿わない傾斜状態で係止されるカートリッジ側係止部と、カートリッジ側係止部を支える係止ばね部と、を備え
、係止ばね部とカートリッジ側係止部とは、両持の梁状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、エッジを有する装置側係止部に対し、円滑に着脱を行うことができると共に、意図した通のばね力で確実に係止させることができる。また、長期の使用に伴い、ばねが疲労破壊したりすることなど、経時的にばね性が損なわれることが問題となることがない。
また、この構成によれば、着脱に際し発揮されるばね力を安定化させることができる。
本発明の他のテープカートリッジは、テープカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、カートリッジ装着部に設けられ、剛体として機能すると共に、装着したテープカートリッジを離脱方向に係止するエッジを有する装置側係止部と、を備えたテープ印刷装置に、着脱可能に装着される為のテープカートリッジであって、カートリッジ装着部に装着された場合に、装置側係止部のエッジに対しエッジの近接壁面に沿わない傾斜状態で係止されるカートリッジ側係止部と、カートリッジ側係止部を支える係止ばね部と、カートリッジケースと、を備え、係止ばね部とカートリッジ側係止部とは、カートリッジケースの並列な2つの線状部分を除去することにより画成された帯状体で構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、エッジを有する装置側係止部に対し、円滑に着脱を行うことができると共に、意図した通のばね力で確実に係止させることができる。また、長期の使用に伴い、ばねが疲労破壊したりすることなど、経時的にばね性が損なわれることが問題となることがない。
また、この構成によれば、係止ばね部および係止開口を、カートリッジケースのケース壁に簡単に作り込むことができる。
【0008】
この場合、カートリッジ装着部に対する着脱に際し、カートリッジ側係止部は、着脱方向と交差する方向成分を有する変位が生じ、変位に対応する係止ばね部の撓み量は、着脱動作の途中でピークとなることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、円滑に着脱を行うことができると共に、クリープなどによるばね力の減退を伴わず、確実に係止させることができる。
【0010】
また、カートリッジ側係止部は、着脱方向と鋭角を為すガイド面を有していることが好ましい。
【0011】
この場合、ガイド面は、着脱方向のうちの装着方向と鋭角を為す第1ガイド面と、各部が前記離脱方向と鋭角を為す第2ガイド面と、を有していることが好ましい。
【0012】
この場合、ガイド面は、第1ガイド面と第2ガイド面との間に連設され、着脱動作に際しクリック感を奏するように構成された連設面を、更に有していることが好ましい。
【0013】
これらの構成によれば、円滑に着脱を行うことができると共に、確実に係止させることができる。また、着脱に際し、適度なクリック感を得ることができる。
【0014】
また、カートリッジ側係止部は、装置側係止部に係止された状態で、装置側係止部からの反力を受け、着脱方向のうちの装着方向の分力を得る被押圧斜面を有することが好ましい。
【0015】
これらの構成によれば、被押圧斜面により、装着時に適度なクリック感を得ることができると共に、相対的にテープカートリッジを押えておくことができる。
【0016】
さらに、係止ばね部は、着脱方向と交差する方向に延在していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、係止ばね部が、装着方向に直交する方向に延在しているため、カートリッジケースの厚みに関係なく、十分な長さの係止ばね部を構成することができる。
【0018】
この場合、係止ばね部とカートリッジ側係止部とは、一体に形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、係止ばね部およびカートリッジ側係止部廻りの構造を単純化することができる。
【0024】
この場合、カートリッジケースは、装着方向手前側の天壁部、奥側の底壁部および周壁部を含むシェル構造を有していることが好ましい。
【0025】
この場合、係止ばね部とカートリッジ側係止部とは、底壁部および周壁部のいずれか一方に設けられていることが好ましい。
【0026】
同様に、係止ばね部とカートリッジ側係止部とは、底壁部および周壁部とが交わるコーナー部に設けられていることが好ましい。
【0027】
これらの構成によれば、外形や内部構造を変更することなく、係止ばね部およびカートリッジ側係止部を簡単に作り込むことができる。
【0028】
一方、係止ばね部とカートリッジ側係止部との組が、相互に離間して2組設けられていることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、カートリッジケースをカートリッジ装着部に、精度良く位置決めすることができると共に、これを確実に保持することができる。
【0030】
この場合、カートリッジケースは、相対する周壁部の2箇所に着脱動作のための把持部を有し、2組の係止ばね部およびカートリッジ側係止部は、2箇所の把持部の近傍に設けられていることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、着脱時の力を、係止ばね部およびカートリッジ側係止部に直接的に作用させることができる。このため、着脱時にカートリッジケースが傾くことがなく、着脱を円滑に行うことができる。
【0032】
また、カートリッジケースは、着脱方向において2分割構造のケースを含み、係止ばね部およびカートリッジ側係止部は、着脱方向のうちの装着方向の奥側に位置する一方のケースに設けられていることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、カートリッジ側係止部および係止ばね部の有無に関係なく、他方のケースを共通部品とすることができる。したがって、カートリッジ側係止部および係止ばね部を設けることによるコストアップを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るテープカートリッジにつき、これが装着されるテープ印刷装置と共に説明する。このテープ印刷装置は、装着したテープカートリッジから印刷テープおよびインクリボンを繰り出しながら印刷を行い、印刷テープの印刷済み部分を切断して、ラベル(テープ片)を作成するものである。
【0036】
[テープ印刷装置の概要]
図1は、テープ印刷装置およびこれに装着されるテープカートリッジの外観斜視図である。同図に示すように、テープ印刷装置1は、外殻を構成する装置ケース3と、テープカートリッジ100が着脱自在に装着されるカートリッジ装着部5と、カートリッジ装着部5を開閉する開閉蓋7と、を備えている。装置ケース3の上面には、奥側にカートリッジ装着部5が設けられ、中央にディスプレイ11が設けられ、手前側にキーボード13が設けられている。開閉蓋7の近傍には、指掛け用の窪入部15が設けられている。開閉蓋7は、この窪入部15に指を掛け引き上げることで開放される。そして、装置ケース3の側面(左側面)には、印刷テープ102が排出される縦長のテープ排出口17が設けられている。
【0037】
また、テープ印刷装置1は、カートリッジ装着部5に立設された印刷ヘッド21を有する印刷機構部23と、カートリッジ装着部5の裏側空間に内蔵したテープ送り機構部25と、テープ排出口17の近傍に内蔵したテープ切断機構部27と、を備えている。ユーザーは、キーボード13から印刷情報を入力し、ディスプレイ11で印刷情報を確認した後、キー操作により印刷を実行する。印刷が指令されると、テープ送り機構部25が駆動することで、印刷テープ102とインクリボン110とが並走する。さらに、これに印刷機構部23からインクリボン110に加えられる熱によって、インクリボン110のインクを印刷テープ102に転写することで印刷が行われる。この印刷送りにより、印刷テープ102はテープ排出口17から排出されてゆき、印刷が完了すると、テープ切断機構部27が駆動して、印刷テープ102の印刷済み部分が切り離される。
【0038】
[テープカートリッジの概要]
図2および
図5に示すように、テープカートリッジ100は、印刷テープ102をテープコア104に巻回したテープロール106と、インクリボン110を繰出しコア112に巻回したリボンロール114と、を備えている。また、テープカートリッジ100は、使用後のインクリボン110を巻き取る巻取りコア116と、印刷ヘッド21が当接すると共に印刷テープ102およびインクリボン110を送るプラテンローラー120(プラテン)と、を備えている。さらに、テープカートリッジ100は、これらテープロール106、リボンロール114、巻取りコア116およびプラテンローラー120を収容したカートリッジケース130と、を備えている。このように、本実施形態のテープカートリッジ100は、外殻をカートリッジケース130で覆われた、いわゆるシェル構造を有している。
【0039】
また、テープカートリッジ100には、印刷ヘッド21が挿入される挿入開口134が、カートリッジケース130に形成されている。テープカートリッジ100は、カートリッジケース130に形成され印刷テープ102が送り出されるテープ送出口138と、を備えている。なお、詳細は後述するが、テープロール106は、カートリッジケース130の内側に突設した円筒状のコア軸192に回転自在に支持されている。
【0040】
上記のテープ送り機構部25により、プラテンローラー120および巻取りコア116が駆動されると、印刷テープ102はテープコア104から繰り出され、インクリボン110は繰出しコア112から繰り出される。繰り出された印刷テープ102およびインクリボン110は、プラテンローラー120の部分で並走し、印刷ヘッド21によって印刷に供される。印刷が行われた印刷テープ102の繰出し端部(印刷済部分)は、テープ送出口138からテープ排出口17に向かって送り出される。一方、インクリボン110は、挿入開口134の周壁部分を周回し、巻取りコア116に巻き取られる。なお、テープカートリッジ100には、印刷テープ102のテープ幅に応じて、厚みの異なる複数種のものが用意されている。
【0041】
[テープ印刷装置の詳細]
図1および
図3に示すように、カートリッジ装着部5は、テープカートリッジ100の平面形状と相補的な平面形状に形成されると共に、装着可能な複数種のテープカートリッジ100のうち、最大厚のテープカートリッジ100に対応する深さを有して、窪入形成されている。この場合、カートリッジ装着部5の底板部を構成する装着ベース31と側板部33とは、樹脂等で一体に形成(成形)されている。カートリッジ装着部5と上記のテープ排出口17との間には、スリット状のテープ排出経路35が形成されており、この部分に、上記のテープ切断機構部27が内蔵されている。
【0042】
カートリッジ装着部5の装着ベース31には、上記のコア軸192が嵌合して位置決めされる位置決め突起41と、ヘッドカバー43に覆われた印刷ヘッド21と、プラテンローラー120を回転駆動するプラテン駆動軸45と、巻取りコア116を回転駆動する巻取り駆動軸47と、が立設されている。また、巻取り駆動軸47の近傍に位置して装着ベース31には、印刷テープ102の種別(属性情報)を検出するテープ検出部51と、繰出しコア112および巻取りコア116の回転止めを解除するコア解除部53と、が設けられている。
【0043】
さらに、装着ベース31には、その対角位置に一対の小突起55が設けられている。加えて、装着ベース31には、装着したテープカートリッジ100を係止するための一対の装置側係止部57が設けられている。一対の装置側係止部57は、位置決め突起41を中心に左右対称に配設されており、テープカートリッジ100の裏面側が係止されるようになっている(詳細は後述する)。また、各装置側係止部57は、装着ベース31と一体に形成(成形)され、且つ装着ベース31から短く突出している。
【0044】
一方、装着ベース31の裏側空間には、プラテン駆動軸45および巻取り駆動軸47を回転させるモーターおよびギヤ列(いずれも、図示省略)等で構成され、上記のテープ送り機構部25が内蔵されている。テープ送り機構部25は、ギヤ列で動力分岐し、プラテン駆動軸45および巻取り駆動軸47を同期回転させる。
【0045】
印刷機構部23は、サーマルヘッドで構成された印刷ヘッド21と、印刷ヘッド21を支持すると共に回動させるヘッド支持フレーム61と、を有している。また、印刷機構部23は、ヘッド支持フレーム61を介して印刷ヘッド21を印刷位置と退避位置との間で回動させるヘッドリリース機構(図示省略)と、印刷ヘッド21(およびヘッド支持フレーム61)を覆うヘッドカバー43と、を有している。
【0046】
ヘッドリリース機構は、上記の開閉蓋7の開閉に連動して作動し、開閉蓋7の閉塞動作に連動して印刷ヘッド21を印刷位置に移動(回動)させる。また、ヘッドリリース機構は、開放動作に連動して印刷ヘッド21を退避位置に移動(回動)させる。印刷位置に移動した印刷ヘッド21は、プラテンローラー120にインクリボン110および印刷テープ102を介して当接し、退避位置に移動した印刷ヘッド21は、プラテンローラー120から離間する。これにより、テープカートリッジ100を着脱する際に、印刷テープ102やインクリボン110の印刷ヘッド21への干渉が防止される。
【0047】
印刷ヘッド21には、複数の発熱素子が設けられ、複数の発熱素子は、プラテンローラー120の軸方向と同方向に列設されている。そして、印刷テープ102およびインクリボン110の送りと、複数の発熱素子の選択的駆動により印刷が行われる。ヘッドカバー43は、平面視略矩形に形成されおり、上記の装着ベース31(カートリッジ装着部5)と一体に形成(成形)されている。また、ヘッドカバー43は、装着ベース31から垂直に大きく突出しており、その内側において印刷ヘッド21の回動を許容し、外側においてテープカートリッジ100の装着ガイドとして機能する。
【0048】
テープ検出部51は、複数のマイクロスイッチ51aで構成されており、後述するテープカートリッジ100の被検出部180に対し選択的に係合し、印刷テープ102のテープ幅やテープ色、材質等の種別を検出する。そして、この検出結果に基づいて、印刷ヘッド21やテープ送り機構部25の駆動が制御される。
【0049】
コア解除部53は、繰出しコア112用および巻取りコア116用の2つの解除ピン53aで構成されている。詳細は後述するが、カートリッジケース130には、繰出しコア112および巻取りコア116にそれぞれ掛止めされる回転止めフック206が設けられている(
図6参照)。テープカートリッジ100を装着すると、これら回転止めフック206に解除ピン53aが係合し、繰出しコア112および巻取りコア116の回転止めが解除される。
【0050】
プラテン駆動軸45は、プラテンローラー120を挿通するように長く延びた固定軸45aと、固定軸45aの基部に回転自在に軸支されたスプライン形状の可動軸45bとを有している。テープ送り機構部25の回転動力は、この可動軸45bに伝達され、更に可動軸45bからプラテンローラー120に伝達される。同様に、巻取り駆動軸47は、固定軸47aと、固定軸47aに回転自在に軸支されたスプライン形状の可動軸47bとを有している。この場合も、テープ送り機構部25の回転動力は、可動軸47bに伝達され、更に可動軸47bから巻取りコア116に伝達される。
【0051】
テープカートリッジ100をカートリッジ装着部5に装着すると、位置決め突起41にコア軸192(テープコア104)が係合し、プラテン駆動軸45にプラテンローラー120か係合し、更に巻取り駆動軸47に巻取りコア116が係合する。そして、開閉蓋7を閉塞すると、印刷ヘッド21が回動し、印刷テープ102およびインクリボン110を挟んでプラテンローラー120に当接して、テープ印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0052】
図1および
図4に示すように、開閉蓋7は、奥側に設けたヒンジ部71を介して、装置ケース3に回動自在に、すなわち開閉自在に取り付けられている。開閉蓋7は、開閉蓋本体73と、開閉蓋本体73の中央に設けた覗き窓75と、を有している。また、開閉蓋7は、開閉蓋本体73の裏面に突設されヒンジ部71に回動自在に軸支された一対の軸支片77と、開閉蓋本体73の裏面に突設され印刷ヘッド21を回動させる作動レバー79と、を有している。さらに、開閉蓋7は、開閉蓋本体73の裏面に突設されテープカートリッジ100を押し込む2つの押込み突起81と、開閉蓋本体73の裏面に突設され、内蔵する蓋閉塞検出スイッチ(図示省略)を作動(ON)させる押下突起83と、を有している。
【0053】
覗き窓75は、横長に形成され、開閉蓋本体73とは別体となる透明(可視光に対し透明)な樹脂で構成されている。この覗き窓75越しに、カートリッジ装着部5に装着されたテープカートリッジ100が、視認(印刷テープ102の種別やテープ残量)できるようになっている。また、一対の軸支片77、作動レバー79、押込み突起81、押下突起83および押え部85と、開閉蓋本体73とは、樹脂で一体に形成(成形)されている。
【0054】
作動レバー79は、開閉蓋本体73の裏面から大きく突出しており、開閉蓋7の閉塞に伴って、カートリッジ装着部5の側方に設けたスリット開口87に挿入される。スリット開口87に挿入された作動レバー79は、上記のヘッドリリース機構を作動させ、印刷ヘッド21を回動させる。同様に、押下突起83は、開閉蓋7の閉塞に伴って、スリット開口87に隣接する矩形開口91に挿入され、蓋閉塞検出スイッチを作動(ON)させる。押込み突起81は、テープカートリッジ100のプラテンローラー120の近傍位置に対応しており、開閉蓋7の閉塞に伴って、テープカートリッジ100がカートリッジ装着部5の装着ベース31に着座するようにこれを押し込む。
【0055】
[テープカートリッジの詳細]
次に、
図2、
図5および
図6を参照して、テープカートリッジ100について詳細に説明する。なお、テープカートリッジ100の説明では、
図2を例に、テープカートリッジ100の上正面である装着方向手前の面を「表面」と、逆側の装着方向奥側の面を「裏面」と、左側の側面を「左側面」と、右側の側面を「右側面」と、上側の円弧状の側面を「先端面」と、下側の側面を「基端面」と、称呼するものとする。
【0056】
テープカートリッジ100は、上述のように、カートリッジケース130と、これに収容したテープロール106、リボンロール114、巻取りコア116およびプラテンローラー120と、を備えている。また、テープカートリッジ100は、カートリッジケース130に形成され挿入開口134と、プラテンローラー120の近傍において左側面に形成したテープ送出口138と、テープロール106が収容されている部位の表面、左側面および右側面に亘って貼着された識別シール141(
図1参照)と、を備えている。識別シール141には、カートリッジケース130に収容されている印刷テープ102のテープ幅やテープ色、材質等が、表面および左側面の2箇所に文字表示されている。
【0057】
カートリッジケース130は、テープカートリッジ100の外郭を構成するものであり(シェル構造)、右側面の基端側が幾分突出した、平面視「L」字状の外観を呈している。表裏方向においてカートリッジケース130は、カートリッジ装着部5に装着したときに奥側となる下ケース150と、手前側となる上ケース152と、で構成されている。実施形態のカートリッジケース130は、上ケース152が透明な樹脂の成型品で構成され、下ケース150が不透明な樹脂の成型品で構成されている。
【0058】
上ケース152は、カートリッジケース130の表面を構成する天壁部156と、天壁部156の周縁部に垂設された上周壁部158と、で一体に形成(成形)されている。また、下ケース150は、カートリッジケース130の裏面を構成する底壁部160と、底壁部160の周縁部に立設された下周壁部162と、上記の挿入開口134を画成すべく底壁部160に立設された開口周壁部164と、で一体に形成(成形)されている。
【0059】
上ケース152における上周壁部158の下端面には、適宜の間隔で複数の接合ピン170が設けられる一方、下ケース150の下周壁部162には、この複数の接合ピン170に対応して複数の接合孔172が設けられている(
図5参照)。下ケース150に、テープロール106やリボンロール114等の構成部品をセットした後、複数の接合孔172に複数の接合ピン170を圧入するように上ケース152を接合することにより、テープカートリッジ100が組み立てられる。なお、各接合孔172は、成形の容易性を考慮し貫通孔となっている。
【0060】
一方、下ケース150の底壁部160には、上記の一対の装置側係止部57に係止される一対のカートリッジ側係止部175を有する係止構造部174が設けられている(
図6参照)。装着したテープカートリッジ100の一対のカートリッジ側係止部175が、カートリッジ装着部5側の一対の装置側係止部57に係止されることにより、テープカートリッジ100がカートリッジ装着部5(装着ベース31)に、位置決め状態で保持される(詳細は後述する)。
【0061】
また、下ケース150の裏面には、上記の一対の小突起55が幾分余裕をもって嵌合する嵌合小穴176が設けられている(
図6参照)。装着したテープカートリッジ100の一対の嵌合小穴176に、カートリッジ装着部5側の一対の小突起55が嵌合することにより、装着ベース31上におけるテープカートリッジ100の簡単な位置決めが為される。
【0062】
さらに、下ケース150の裏面には、基端面側の左隅部(表面側から見て右隅部)に位置して、上記のテープ検出部51に対応する被検出部180が設けられている(
図6参照)。被検出部180は、テープ検出部51の複数のマイクロスイッチ51aに対応する部分に構成され、この部分に設けた受け穴180aの有無により、複数のビットパターンを得るようにしている。すなわち、このビットパターンが、上記した印刷テープ102の種別に対応している。
【0063】
図5に示すように、カートリッジケース130内の上側空間(先端面側)には、広くテープロール106が収容されるテープ収容エリア190が構成されている。テープ収容エリア190の中央には、下ケース150に一体に形成(成形)されたコア軸192が立設されている。コア軸192は、円筒状に形成されており、その外周面にはテープロール106(テープコア104)が回転自在に軸支されている。また、プラテンローラー120の近傍に位置してテープ収容エリア190には、繰り出された印刷テープ102をプラテンローラー120に導くテープガイド194が、下ケース150に一体に立設されている。
【0064】
すなわち、カートリッジケース130の内部には、テープロール106を起点とし、テープガイド194およびプラテンローラー120を経てテープ送出口138に至るテープ送り経路196が構成されている。テープロール106から繰り出された印刷テープ102は、テープガイド194を介してプラテンローラー120に導かれ、ここで印刷に供され、更にプラテンローラー120からテープ送出口138に導かれる。
【0065】
テープロール106は、印刷テープ102およびテープコア104を有すると共に、ロール状の印刷テープ102の両端面に貼着された2枚のフイルム198を有している。この2枚のフイルム198は、テープコア104に巻回した印刷テープ102のバラケを防止している。また、テープコア104には、図示では省略したが、逆転止め機構が組み込まれている。テープカートリッジ100を持ち運びするときには、この逆転止め機構により、印刷テープ102の逆転が防止される。一方、テープカートリッジ100をテープ印刷装置1のカートリッジ装着部5に装着すると、上記の位置決め突起41により逆転止め機構の逆転止めが解除され、印刷テープ102の送りが可能になる。
【0066】
カートリッジケース130内の基部右側には、挿入開口134に隣接してリボン収容エリア200が構成されている。リボン収容エリア200の右寄りには、リボンロール114(繰出しコア112)を回転自在に支持する繰出し側軸受部202が、また左寄りには、巻取りコア116を回転自在に支持する巻取り側軸受部204が、それぞれカートリッジケース130に一体に形成されている。すなわち、上ケース152および下ケース150に、それぞれ繰出し側軸受部202および巻取り側軸受部204が形成されている。
【0067】
下ケース150に形成された繰出し側軸受部202および巻取り側軸受部204の切欠き部分には、先端部をこれら繰出し側軸受部202および巻取り側軸受部204に臨ませた回転止めフック206が、それぞれ一体に形成されている。そして、一方の回転止めフック206は繰出しコア112に、他方の回転止めフック206は巻取りコア116に、それぞれ回転止め状態に係合されている。
【0068】
繰出し側軸受部202の近傍に位置してリボン収容エリア200には、繰り出されたインクリボン110をプラテンローラー120に導く第1リボンガイド210が、下ケース150に一体に立設されている。また、上記の開口周壁部164の外周側には、インクリボン110の周回をガイドする複数の第2リボンガイド212が一体に形成されている。
【0069】
すなわち、カートリッジケース130の内部には、リボンロール114を起点とし、第1リボンガイド210、プラテンローラー120および複数の第2リボンガイド212を経て巻取りコア116に至るリボン送り経路214が構成されている。リボンロール114から繰り出されたインクリボン110は、第1リボンガイド210を介してプラテンローラー120に導かれ、ここで印刷に供され、更にプラテンローラー120から開口周壁部164(複数の第2リボンガイド212)を周回して巻取りコア116に巻き取られる。
【0070】
リボンロール114は、インクリボン110および繰出しコア112を有すると共に、繰出しコア112に制動負荷を付与する円環状の板ばね220を有している(
図5(b)参照)。板ばね220は、周方向において波状に形成されており、軸方向において上ケース152の天壁部156と繰出しコア112との間に介設されている。すなわち、繰出しコア112には、この板ばね220の弾発力により回転制動負荷が付与される。これにより、巻取りコア116により繰り出されてゆくインクリボン110には、バックテンションが付与されその弛みが防止される。
【0071】
繰出しコア112は円筒状に形成され、その下ケース150側の端部には、周方向に複数の切欠き222が形成されている(
図6参照)。そして、複数の切欠き222には、上記の回転止めフック206が係脱するようになっている。なお、繰出しコア112を支持する下ケース150側の繰出し側軸受部202は円形の開口で構成されているが、上ケース152側の繰出し側軸受部202は、円筒状の突出部分で構成されている。そして、この突出部分に上記の板ばね220が装着されている(いずれも、
図5(b)参照)。
【0072】
同様に、巻取りコア116は円筒状に形成され、その下ケース150側の端部には、周方向に複数の切欠き224が形成されている。そして、複数の切欠き224には、上記の回転止めフック206が係脱する。また、巻取りコア116の内周面にはスプライン溝226が形成され、上記の巻取り駆動軸47にスプライン係合する。これにより、巻取り駆動軸47の回転力が巻取りコア116に伝達され、インクリボン110が巻き取られる。
【0073】
カートリッジケース130内の基部左側には、挿入開口134に隣接してプラテン収容エリア230が構成されている。プラテン収容エリア230の中央には、下ケース150に形成した楕円状開口の下軸受部234と(
図6参照)、上ケース152に形成した楕円状開口の上軸受部232と(
図5(b)参照)が設けられている。そして、上軸受部232および下軸受部234には、プラテンローラー120が回転自在且つ僅かに横移動可能に支持されている。すなわち、楕円状の上軸受部232および下軸受部234に支持されたプラテンローラー120は、プラテン駆動軸45に係合するホーム位置と、印刷テープ102を挟み込んでテープガイド194に接する挟持位置との間で、横移動(微小移動)可能に構成されている。
【0074】
ところで、このテープカートリッジ100は、印刷テープ102の繰出し端部を、テープ送出口138から外部に僅かに突出された状態で持ち運びされる(
図1参照)。その際、誤って印刷テープ102の繰出し端部に押込み力や引込み力が作用すると、これに引きずられたプラテンローラー120が上記の挟持位置に移動する。これにより、印刷テープ102の繰出し端部が、テープ送出口138からカートリッジケース130内に引き込まれることが防止される。
【0075】
プラテンローラー120は、円筒状のローラー基体240と、ローラー基体240の外周面に装着したゴムローラー242と、を有している。ゴムローラー242は、軸方向において印刷ヘッド21に対応する長さを有しており、印刷位置に移動した印刷ヘッド21は、印刷テープ102およびインクリボン110を挟み込んでこのゴムローラー242に接触する。また、ローラー基体240の内周面にはスプライン溝244が形成され、上記のプラテン駆動軸45にスプライン係合する。これにより、プラテン駆動軸45の回転力がプラテンローラー120に伝達され、印刷テープ102(およびインクリボン110)が印刷送りされる。
【0076】
[カートリッジ側係止部および装置側係止部の構造(第1実施形態)]
次に、
図7ないし
図10を参照して、第1実施形態に係るテープカートリッジ100のカートリッジ側係止部175の構造について、カートリッジ装着部5の装置側係止部57の構造と共に詳細に説明する。上述のように、カートリッジ装着部5の装着ベース31には、一対の装置側係止部57が設けられ、これに対応して、テープカートリッジ100の下ケース150には、一対のカートリッジ側係止部175を含む一対の係止構造部174が設けられている。
【0077】
図7、
図9および
図10に示すように、装着ベース31には、位置決め突起41の左右に離間して一対の装置側係止部57が配設されている。各装置側係止部57は、全体として側板部33に並行する板状に形成されており、装着ベース31から立ち上がった凸状本体280と、凸状本体280の先端部に設けた係止フック部282と、を有している。係止フック部282は、断面矩形形状を有してカートリッジ側係止部175に向かって突出しており、その先端部には、上エッジ部284と、下エッジ部286(エッジ)と、上エッジ部284および下エッジ部286間の平坦部288と、が設けられている。
【0078】
一対の装置側係止部57は、係止フック部282を相互に対向させて配置されている。この場合、各装置側係止部57は、カートリッジ側係止部175がばね材として機能するのに対し、非ばね材として機能する。したがって、装置側係止部57は、実質的に剛体として構成され、強固に且つ短く形成されている。なお、各装置側係止部57の内側には、これを成形するための型抜き孔290が形成されている。
【0079】
一方、
図8および
図9に示すように、下ケース150の底壁部160には、テープ収容エリア190の左右端部に位置して、一対の装置側係止部57に係止される一対のカートリッジ側係止部175が形成されている。また、底壁部160には、各カートリッジ側係止部175に隣接して一対の係止開口300が形成され、さらに、各カートリッジ側係止部175に隣接して一対の線状開口部302(線状除去部)が形成されている。
【0080】
すなわち、ばね性を有するカートリッジ側係止部175、装置側係止部57が挿入される係止開口300および線状開口部302により、上記の係止構造部174が構成されている。この一対の係止構造部174は、底壁部160と下周壁部162とが交わるコーナー部分の近傍にそれぞれ配設されている。また、下周壁部162の左右頂上部には、テープカートリッジ100を把持する部位となる一対の指掛け突起304が設けられており、一対の係止構造部174は、平面視(テープカートリッジ100の着脱方向かに見て)この一対の指掛け突起304の近傍に配設されている。したがって、テープカートリッジ100の着脱に伴う、カートリッジ側係止部175の装置側係止部57に対する係脱に際し、この係止構造部174の部分に力を加えることができ、着脱に支障を生ずることがない。
【0081】
係止開口300および線状開口部302は、帯状のカートリッジ側係止部175を挟んで、底壁部160の一部を線状に除去したスリット状開口で構成されている。言い換えれば、カートリッジ側係止部175は、並列に位置するスリット状開口である係止開口300および線状開口部302により画成された、底壁部160の帯状部分で構成されている。
【0082】
カートリッジ側係止部175、係止開口300および線状開口部302は、相互に平行に、且つ下周壁部162に平行に延在している。また、カートリッジ側係止部175、係止開口300および線状開口部302は、同じ長さを有しており、装置側係止部57の長さより十分に長く形成されている。
【0083】
この場合、係止開口300は、装置側係止部57の凸状本体280に対応するスリット幅を有している。また、線状開口部302は、カートリッジ側係止部175の撓みを許容するスリット幅を有している。装置側係止部57のカートリッジ側係止部175への相対的な係止動作では、装置側係止部57の凸状本体280が係止開口300に挿入される動作と、装置側係止部57の係止フック部282が、カートリッジ側係止部175を線状開口部302側に撓ませてこれを乗り越える(係止)動作と、が同時に為される。
【0084】
図9および
図10に示すように、カートリッジ側係止部175は、テープカートリッジ100の着脱に際し(着脱方向は、
図10における上下矢印方向)、装置側係止部57の係止フック部282により適度に撓んでばね性を発揮する。すなわち、カートリッジ側係止部175は、装置側係止部57(係止フック部282)が係止される部位と、係止される部位を弾力的に支える部位と、を一体化した構造を有している。カートリッジ側係止部175は、いわゆる両持ちの梁状に形成され、線状開口部302に適度に撓んでばね性を発揮するような幅を有している。
【0085】
テープカートリッジ100をカートリッジ装着部5に装着すると、装置側係止部57の係止フック部282が、カートリッジ側係止部175に接触して、カートリッジ側係止部175が線状開口部302側に撓む。このカートリッジ側係止部175の撓みにより、装置側係止部57は、カートリッジ側係止部175を乗り越えて係止開口300に、相対的に嵌まり込んでカートリッジ側係止部175に係止される。また、テープカートリッジ100の離脱時には、逆の手順で、装置側係止部57に対しカートリッジ側係止部175が係止解除される(引き抜かれる)。なお、装置側係止部57は、プラスチックなどの金属よりもヤング率の低い材料で形成した場合でも肉厚を大きくし弾性変形がし難い形状に形成すれば、実質的に剛体として機能し、破損し難い剛体とみなせるものである。
【0086】
このテープカートリッジ100の装着に際し、係止フック部282は、上エッジ部284、平坦部288および下エッジ部286の順で、カートリッジ側係止部175に接触する(
図10参照)。また、テープカートリッジ100の離脱に際し、係止フック部282は、下エッジ部286、平坦部288および上エッジ部284の順で、カートリッジ側係止部175に接触する(
図10参照)。ここで、上エッジ部284と下エッジ部286とは、鋭いナイフエッジでなくても、極小さな面取りや曲率半径の極小さな円弧が付いていても構わない。そして、この着脱時の係止フック部282の接触に対し、カートリッジ側係止部175が円滑に撓むように、カートリッジ側係止部175には、ガイド斜面312(第1ガイド面)と、被押圧斜面314(第2ガイド面)と、ガイド斜面312と被押圧斜面314とを結ぶ連接面316と、を有するガイド面310が設けられている。
【0087】
ガイド斜面312は、テープカートリッジ100の装着における装着方向の力に対し、カートリッジ側係止部175を線状開口部302側に撓ませるための分力を生じさせるものである。このため、ガイド斜面312は、装着方向に対し鋭角を為すように形成されている。すなわち、装着方向とガイド斜面312との為す角度は、90°以下となっている。これにより、カートリッジ側係止部175が無理なく撓んで、係止フック部282の円滑な乗り越えが可能となる。
【0088】
同様に、被押圧斜面314は、テープカートリッジ100の離脱における装着方向の力に対し、カートリッジ側係止部175を線状開口部302側に撓ませるための分力を生じさせるものである。このため、被押圧斜面314は、離脱方向に対し鋭角を為すように形成されている。すなわち、離脱方向と被押圧斜面314との為す角度は、90°以下となっている。これにより、カートリッジ側係止部175が無理なく撓んで、係止フック部282の円滑な乗り越えが可能となる。
【0089】
また、被押圧斜面314は、係止状態において、係止フック部282の下エッジ部286が接触する部位となっている。すなわち、カートリッジ側係止部175が装置側係止部57に係止されている状態で、被押圧斜面314の所定の位置(
図10における断面視では下エッジ部286と被押圧斜面314とが接触する点接触位置)には、下エッジ部286が延在方向において線状に接触するようになっている。すなわち、広域的な面接触ではなく、接触面積の狭い点接触が直線的に連続する線接触である。これにより、カートリッジ側係止部175のばね力が、係止フック部282に作用し、その反力(分力)を受けてテープカートリッジ100が装着ベース31に押圧される。
【0090】
また、このように所定の位置での狭い接触面積による接触である為、ここでのカートリッジ側係止部175のばね力やその反力(分力)がばらつくことを抑制することができる。よって、設計値通りの正確なばね力等を設定することができる。なお、下エッジ部286は、
図10の紙面に垂直な方向(紙面手前から奥に向かう方向)には必ずしも直線的に延びている必要はなく、下エッジ286を
図10の紙面に垂直な方向に湾曲させた形状とし、下エッジ286と被押圧斜面314を3次元的にも点接触となるようにしても構わない。
【0091】
テープカートリッジ100がカートリッジ装着部5に装着された状態において、カートリッジ側係止部175の被押圧斜面314は、
図10(a)に示す様に係合フック部282の平坦部288、およびフック下部289のいずれにも沿わない形状に形成されている。よって、テープカートリッジ100がカートリッジ装着部5から離脱および装着される際に、下エッジ部286は被押圧斜面314上を滑動することができる。したがって、テープカートリッジ100をカートリッジ装着部5から離脱させる際に、フック下部289と被押圧斜面314とが「かみ合い」離脱の障害となることがない。また、テープカートリッジ100をカートリッジ装着部5に装着された際に、下エッジ部286によって被押圧斜面314を押圧してテープカートリッジ100をカートリッジ装着部5に位置決めすることができる。
【0092】
つまり、
図10において被押圧斜面314と下エッジ部286とは、その接触点以外では接触していないような線接触ないしは点接触の状態とすることで、テープカートリッジ100がカートリッジ装着部5に装着された状態において係止部175が下エッジ286に接触し、ばねとしての荷重点がはっきりする。この為、設計通りのばね力で安定して保持され、テープカートリッジ100を離脱させる際に、
図10の矢印上向きにテープカートリッジ100を引き抜く力を加えることで、カートリッジ側係止部175は
図10(b)に示す水平方向矢印の右向きに移動しながら、下エッジ286は被押圧斜面314を滑り、容易に離脱が達成される。
【0093】
連接面316は、テープカートリッジ100の着脱において、これに接触するカートリッジ側係止部175の撓みがピークとなる部分である。したがって、装着時に係止フック部282に接触する部位が、連接面316から被押圧斜面314に移行することにより、装着時のクリック感が得られる。また、離脱時に、係止フック部282に接触する部位が、連接面316からガイド斜面312に移行することにより、離脱時のクリック感が得られる。前述のように、カートリッジ側係止部175の撓みがピークとなるときは、テープカートリッジ100の着脱動作途中の一瞬に過ぎないため、テープカートリッジ100を長時間のカートリッジ装着部5に装着し続けても、クリープ変形などでカートリッジ側係止部175のばね力が低下することを防ぐことができる。
【0094】
なお、ガイド斜面312、被押圧斜面314および連接面316は、必ずしも平坦な面でなくてもよい。すなわち、ガイド斜面312は、各部において、装着方向に対し鋭角を為す湾曲面であってもよい。同様に、被押圧斜面314は、各部において、離脱方向に対し鋭角を為す湾曲面であってもよい。また、連接面316も、湾曲面であってもよい。
【0095】
[カートリッジ側係止部および装置側係止部の構造(第2実施形態)]
次に、
図11を参照して、第2実施形態に係るテープカートリッジ100Aのカートリッジ側係止部175の構造について、カートリッジ装着部5の装置側係止部57の構造と共に詳細に説明する。また、第2実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0096】
この実施形態では、カートリッジ側係止部175、係止開口300および線状開口部302から成る一対の係止構造部174が、第1実施形態と異なり、下ケース150における底壁部160と下周壁部162とのコーナー部320に設けられている。すなわち、係止開口300がコーナー部320近傍の下周壁部162に、カートリッジ側係止部175がコーナー部320に、線状開口部302がコーナー部320近傍の底壁部160に、それぞれ形成されている。なお、テープカートリッジ100Aの着脱方向は、
図11における上下方向の矢印の向きである。
【0097】
一方、装置側係止部57は、第1実施形態と同様の形態を有し、係止開口300に対応するように、装着ベース31に立設されている。この場合も、装置側係止部57の係止フック部282は、断面矩形形状に形成されている。また、カートリッジ側係止部175には、第1実施形態と同様に、ガイド斜面312、被押圧斜面314および連接面316を有する、ガイド面310が形成されている。
【0098】
そしてこの場合も、装着方向とガイド斜面312との為す角度、および離脱方向と被押圧斜面314との為す角度は、いずれも90°以下となっている。これにより、テープカートリッジ100Aの着脱が円滑に行われると共に、適度なクリック感を得ることができる。また、テープカートリッジ100Aを装着ベース31に押圧することができる。また、第2実施形態では、第1実施形態に比べ、カートリッジ側係止部175各々の間に距離(固定位置間距離)を大きくとることができるため、より安定したテープカートリッジ100Aの装着状態を得ることができる。
【0099】
以上のように、本実施形態によれば、断面矩形形状の係止フック部282を有する装置側係止部57に対し、カートリッジ側係止部175が、ガイド面310として、ガイド斜面312、被押圧斜面314および連接面316を有しているため、テープカートリッジ100,100Aの着脱を円滑に行うことができると共に、適度なクリック感を得ることができる。また、テープカートリッジ100,100Aを、カートリッジ装着部5に押圧状態で適切に係止することができる。
【0100】
また、テープカートリッジ100,100A,をカートリッジ装着部5に装着したときに、装置側係止部57の特定の位置の狭い面積の部分にカートリッジ側係止部175の特定の位置の狭い面積の部分が係止されるため(
図11のように断面視では、下エッジ部286と押圧面314の点接触)、テープカートリッジ100,100Aをカートリッジ装着部5に設計した通りの力で正確に位置決めし、且つ保持することができる。このため、テープカートリッジ100,100Aが、印刷ヘッド21等から力を受けても、位置ズレすることがなく、且つ浮き上がることがない。
【0101】
さらに、ばねとして機能するカートリッジ側係止部175(係止構造部174)をテープカートリッジ100,100A側に設けるようにしているため、装置側係止部57にばね性を持たせる必要がなく、且つ装置側係止部57の突出寸法を短くすることができる。しかも、係止構造部174が、装着方向に交差する方向に延在しているため、カートリッジケース130の厚みに関係なく、十分な長さのカートリッジ側係止部175を構成し、所望のばね定数に設定する設計を容易に行うことができる。
【0102】
なお、特に図示しないが、一対の係止構造部174(カートリッジ側係止部175)を、下ケース150の下周壁部162に設けるようにしてもよい。また、カートリッジケース130に代えて、構成部品を連結するフレームを設けるようにしてもよい、かかる場合には、このフレームに一対の係止構造部174を設けるようにする。