(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277054
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/133 20060101AFI20180129BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
G02F1/133 545
G02F1/1343
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-90215(P2014-90215)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-210318(P2015-210318A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 浩
【審査官】
横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−152600(JP,A)
【文献】
特開2010−224233(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0227896(US,A1)
【文献】
特開平01−285921(JP,A)
【文献】
特開平02−096118(JP,A)
【文献】
特開2010−145594(JP,A)
【文献】
特開2013−057833(JP,A)
【文献】
特開平04−052621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133,1/1343−1/1345
G09G 3/18,3/36
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される第1基板及び第2基板と、
前記第1基板の一面側に設けられ、第1方向に沿って帯状に延在する複数の第1電極と、
前記第2基板の一面側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って帯状に延在する複数の第2電極と、
平面視において前記複数の第2電極の各々の相互間に配置されて前記第2方向に沿って延在しており、各々の幅が前記複数の第2電極の各々の幅よりも小さい複数の補助電極と、
前記第1基板と前記第2基板の各一面の間に配置され、プレティルト角が90°未満の垂直配向したモノドメイン配向の液晶層と、
前記複数の第1電極、前記複数の第2電極及び前記複数の補助電極へ駆動電圧を供給する駆動手段と、
を含み、
前記複数の補助電極は、相互に接続されており、
前記駆動手段は、前記複数の第2電極に対する順次走査の合間に、相互に接続された前記複数の補助電極に対する走査を行う、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記複数の第2電極に対する順次走査の開始前又は終了後に、相互に接続された前記複数の補助電極に対する走査を行う、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、相互に接続された前記複数の補助電極に対する走査時に、前記複数の第1電極の各々に対してオフ電圧を供給する、
請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記複数の補助電極の各々の幅が前記複数の第2電極の各々の幅の1/2以下である、
請求項1〜3の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向型の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013−57833号公報(特許文献1)には、垂直配向モードを採用する液晶表示装置において、配線取り出しの方向が互いに異なる複数の第1コモン電極と第2コモン電極とを1つずつ交互に配置し、駆動ICからの走査信号が複数の第1コモン電極のそれぞれに出力された後、複数の第2コモン電極のそれぞれに出力されるように構成した液晶表示装置が開示されている。この特許文献1に開示される先行技術によれば、1つのコモン電極の選択によって液晶の流れが誘起されても、それに続くコモン電極の選択が隣接したコモン電極で行われずコモン電極1つを挟んで隔離された場所で行われるため、液晶の流れを助長させることがなく、マルチプレックス駆動したときに誘発される液晶の流れを低減することができ、その結果、表示ムラを低減することができる、とされている。
【0003】
また、特開2010−145594号公報(特許文献2)には、複数のセグメント電極と複数のコモン電極を交差配置した単純マトリクス垂直配向型液晶表示装置において、コモン電極の少なくとも1ラインをオフ信号ラインとすることにより、液晶層の配向が動的に不安定となる状態の伝播を阻止し、表示品位を向上させる技術が開示されている。
【0004】
ところで、昨今の液晶表示装置における駆動手段としては、装置を小型化するために駆動装置と制御装置を一体化した1チップドライバーICや、液晶表示装置を総合的に制御可能な1チップマイコンが用いられる場合が多い。そして、マルチプレックス駆動を行う場合、1フレームで表示するための1画素毎の画素情報を記憶装置に保存しておく必要があるため、上記の駆動手段にはフレームメモリが内蔵される。さらに走査線数(コモン電極数)が4本より多い場合には、アルファベット等の文字フォントを不揮発メモリに予め記憶させておくことにより、駆動手段やそこで実行される制御プログラムの簡素化を図る工夫が施されている。このような駆動手段を前提とした場合に、上記した特許文献1に開示される液晶表示装置においては、内蔵される文字フォントをそのままでは使用できないため、画像表示のためのデータや制御プログラムの作成に要する工数が増加する不都合や、フレームメモリの容量が大きくなる不都合が生じる。
【0005】
また、上記した特許文献2に開示される液晶表示装置の駆動方法は、走査線本数が比較的多く(例えば32本以上)、1つの走査線の選択時間が短い場合を想定しているものと考えられるが、走査線数が少なく(例えば16本以下)、1つの走査線の選択時間が長い場合には、オフ動作としたコモン線が外観上、例えば横筋として観察される場合がある。この不都合はフレーム周波数を上昇させることで解決し得るが、クロストーク軽減や低消費電力化の観点では不利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−57833号公報
【特許文献2】特開2010−145594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る具体的態様は、一般的な制御手段を用いた画像表示が可能であり、フレーム周波数を上昇させることなく表示品位を向上させることが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の液晶表示装置は、(a)対向配置される第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板の一面側に設けられ、第1方向に沿って帯状に延在する複数の第1電極と、(c)前記第2基板の一面側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って帯状に延在する複数の第2電極と、(d)平面視において前記複数の第2電極の各々の相互間に配置されて前記第2方向に沿って延在しており、各々の幅が前記複数の第2電極の各々の幅よりも小さい複数の補助電極と、(e)前記第1基板と前記第2基板の各一面の間に配置され、プレティルト角が90°未満の垂直配向したモノドメイン配向の液晶層と、(f)前記複数の第1電極、前記複数の第2電極及び前記複数の補助電極へ駆動電圧を供給する駆動手段を含み、
(g)前記複数の補助電極は、相互に接続されており、(
h)前記駆動手段は、前記複数の第2電極に対する順次走査の合間に、前記複数の補助電極
に対する走査を行う、液晶表示装置である。
【0009】
上記構成によれば、一般的な制御手段を用いた画像表示が可能であり、フレーム周波数を上昇させることなく表示品位を向上させることが可能となる。
【0010】
上記の液晶表示装置において、前記駆動手段は、前記複数の第2電極に対する順次走査の開始前又は終了後に、
相互に接続された前記複数の補助電極
に対する走査を行う、ことが好ましい。
【0011】
上記の液晶表示装置において、前記駆動手段は、
相互に接続された前記複数の補助電極
に対する走査時に、前記複数の第1電極の各々に対してオフ電圧を供給する、ことも好ましい。
【0012】
上記の液晶表示装置において、前記複数の補助電極の各々の幅が前記複数の第2電極の各々の幅の1/2以下である、ことも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態の液晶表示装置の構造を示す模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第1電極、第2電極および補助電極の詳細な構造を説明するための平面図である。
【
図3】
図3は、各電極の結線状態について示す図である。
【
図4】
図4は、駆動部によって供給される駆動電圧の一例を示す波形図である。
【
図5】
図5(A)は、実施例の液晶表示装置の表示状態を示す図である。
図5(B)は、比較例の液晶表示装置の表示状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、一実施形態の液晶表示装置の構造を示す模式的な断面図である。
図1に示す本実施形態の液晶表示装置は、対向配置された第1基板1と第2基板2と、両基板の間に配置された液晶層3と、を主に備える。第1基板1の外側には第1偏光板4が配置され、第2基板2の外側には第2偏光板5が配置されている。第1基板1と第1偏光板4の間には第1視角補償板6が配置され、第2基板2と第2偏光板5の間には第2視角補償板7が配置されている。液晶層3の周囲はシール材によって封止されている。以下、さらに詳細に液晶表示装置の構造を説明する。
【0016】
第1基板1および第2基板2は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。第1基板1と第2基板2との相互間には、スペーサー(粒状体)が分散して配置されている。これらのスペーサーにより、第1基板1と第2基板2との間隙が所定値(例えば5μm程度)に保たれる。
【0017】
液晶層3は、第1基板1の第1電極11と第2基板2の第2電極12との相互間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負(Δε<0)の液晶材料(ネマティック液晶材料)を用いて液晶層3が構成されている。液晶層3に図示された太線は、電圧無印加時における液晶分子の配向方位を模式的に示したものである。図示のように、本実施形態の液晶表示装置においては、液晶層3の液晶分子が一方向に配向した状態(モノドメイン配向)となっている。
【0018】
配向膜8は、第1基板1の一面側に、第1電極11を覆うようにして設けられている。同様に、配向膜9は、第2基板2の一面側に、第2電極12および補助電極17を覆うようにして設けられている。本実施形態においては、配向膜8および配向膜9としては、液晶層3の初期状態(電圧無印加時)における配向状態を垂直配向状態に規制するもの(垂直配向膜)が用いられており、少なくとも一方の配向膜に配向処理(ラビング処理等)が施されている。それにより、液晶層3の液晶分子に対して90°に極めて近い角度(89.8°〜89.95°程度)のプレティルト角が付与されている。
【0019】
複数の第1電極11は、それぞれ第1方向(
図1では紙面の左右方向)に沿って延びる短冊状電極であり、第1基板1の一面上に設けられている。複数の第2電極12は、それぞれ第1方向と交差する第2方向(
図1では紙面に直交する方向)に沿って延びる短冊状電極であり、第2基板2の一面上に設けられている。第1電極11および第2電極12は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。本実施形態の液晶表示装置は、第1電極11と第2電極12とが交差する箇所のそれぞれが画素領域となるドットマトリクス型の液晶表示装置である。
【0020】
複数の補助電極17は、それぞれ第2方向に沿って延びる短冊状電極であり、第2基板2の一面上に設けられている。各補助電極17は、各第2電極12の相互間にそれぞれ配置されている。各補助電極17は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。
【0021】
駆動部15は、各第1電極11、各第2電極12および各補助電極17と接続されており、これらに対して駆動電圧を供給する。この駆動部15は、例えば駆動装置と制御装置を一体化した1チップドライバーICであり、文字フォントが内蔵されている。
【0022】
図2は、第1電極、第2電極および補助電極の詳細な構造を説明するための平面図である。この
図2では、第2基板2側から平面視した場合における各電極の平面形状が示されている。各第1電極11は、図中の上下方向に延在するストライプ状に形成されている。また、各第2電極12は、図中の左右方向に延在するストライプ状に形成されている。各第1電極11と各第2電極12とが交差する領域のそれぞれが画素領域に相当する。液晶層3の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向16は、各第2電極12の延在方向(図中の左右方向)に対して略直交している。この配向方向16は、各配向膜8、9に対する配向処理方向13、14によって規定される。また、各偏光板4、5の吸収軸は、例えば、両者が略直交し、かつそれぞれが第2電極12の延在方向に対して略45°の角度をなすように配置されている。
【0023】
各補助電極17は、図中の左右方向に延在するストライプ状に形成されている。これらの補助電極17は、隣り合う2つの第2電極12の間に1つずつ配置されている。図示の例では、各補助電極17の幅は各第2電極12の幅よりも小さく設定されており、各補助電極17の長さは各第2電極12の長さとほぼ等しく設定されている。なお、各補助電極17の幅、長さについてはこの限りではないが、幅は各第2電極12の幅以下であることが好ましく、長さは各第2電極12の長さとほぼ等しいことが好ましい。各補助電極17は、配線18を介して相互に接続されている。図示の例では、配線18は、第1方向に沿った部位と第2方向に沿った部位とを有する略L字状に形成されており、各補助電極17の一端側と接続されている。
【0024】
図3は、各電極の結線状態について示す図である。各第1電極11は、図中の左側のものから順に、駆動部15のSEG1、SEG2、・・・SEGnの端子に接続されている。各第2電極12は、図中の上側から順に、駆動部15のCOM1、COM2、・・・COM7の端子に接続されている。また、各補助電極17は、配線18を介して、駆動部15のCOM8の端子に接続されている。
【0025】
図4は、駆動部によって供給される駆動電圧の一例を示す波形図である。本例の駆動方法では、COM1〜COM7に対応する各第2電極12は順次走査され、COM8で補助電極17が走査される。COM1〜COM7の各選択時には、表示画像に応じた駆動電圧がSEG1〜SEGnに対応する各第1電極11に対して印加される。これに対して、COM1〜COM7の間に挿入されているCOM8の選択時には、SEG1〜SEGnの全てに対応する各第1電極11に対してオフ電圧が印加される。なお、各補助電極17の幅が各第2電極12の幅の1/2以上である場合には、COM8の選択時には、SEG1〜SEGn、COM1〜COM7ともに非表示動作としてもよい。
【0026】
図5(A)は、実施例の液晶表示装置の表示状態を示す図である。ここでは、1/8デューティ、1/4バイアスのマルチプレックス駆動、A波形、フレーム周波数80Hzにて液晶表示装置を駆動したときのオフからオンへの表示切り替え時の表示状態が示されている。ここでいうA波形とは、1ライン選択中に極性反転を行う「フレーム内反転駆動(または、1ライン反転駆動)」の駆動波形である。比較例としての補助電極17を設けない構造の液晶表示装置の表示状態(
図5(B)参照)と比べると、各画素内の暗領域は消失し、均一な表示状態が得られており、外観観察状態も良好であった。
【0027】
暗領域を消失させて均一な表示状態を得られる理由は上記した特許文献1,2に開示される液晶表示装置の場合と同様であると考えられる。
図5(B)に示す比較例の液晶表示装置における暗領域は各第2電極12(COM1〜COM7)の走査方向へ流動して発生するように観察されるため、隣接する第2電極12を順次走査するのではなく、順番を変更することやオフ電圧を各第2電極間に挿入することにより走査方向の流動を分断することができることから、表示ムラを抑制できると考えられる。したがって、上記では各補助電極17の走査順番は各第2電極12を走査した後であったが、任意の順番でも同様な効果が得られると考えられる。しかし、駆動部15に文字フォントなどが内蔵されている場合、各補助電極17を各第2電極12の走査の間に割り込みさせると、表示される文字の欠けを生じることから、文字フォントを用いて表示を行う場合には、各補助電極17の走査は、各第2電極12の走査が全て終わった後、あるいは各第2電極12の走査が開始する前のいずれかのタイミングで行うことが好ましい。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態においては第2基板2の液晶層3と接する範囲内で各補助電極17を配線18によって結線する配線パターン例を示していたがこの限りではない。例えば、液晶層3を囲む枠状のシール部材と重なる範囲においてジャンプ配線(クロス配線)を設けることによって各補助電極17の間を接続してもよいし、各電極と駆動装置を接続する基板(プリント基板、フレキシブル基板等)においてクロス配線を設けることによって各補助電極17の間を接続してもよい。
【0029】
また、走査線本数が多い場合(例えば32本以上)には、各補助電極17を全て1つの配線18で接続して1つのCOM端子へ接続するのではなく、複数の連続したCOM端子、または不連続なCOM端子に接続して走査してもよい。
【0030】
また、各補助電極17の幅は全て均一としていなくてもよい。電極幅の最小値は30μm程度が好ましい。
【0031】
また、上記した実施形態では、液晶層はねじれ配向とされていない場合について例示していたが、ねじれ配向していてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1:第1基板
2:第2基板
3:液晶層
4:第1偏光板
5:第2偏光板
6:第1視角補償板
7:第2視角補償板
8、9:配向膜
11:第1電極
12:第2電極
13、14:配向処理方向
15:駆動部
16:液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向
17:補助電極
18:配線