特許第6277076号(P6277076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277076
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20180129BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20180129BHJP
   F16D 55/2255 20060101ALI20180129BHJP
   F16D 65/46 20060101ALI20180129BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20180129BHJP
   F16D 121/08 20120101ALN20180129BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20180129BHJP
   F16D 125/28 20120101ALN20180129BHJP
   F16D 125/64 20120101ALN20180129BHJP
   F16D 125/70 20120101ALN20180129BHJP
   F16D 129/04 20120101ALN20180129BHJP
【FI】
   F16D65/18
   B61H5/00
   F16D55/2255 103F
   F16D65/46 A
   F16D121:04
   F16D121:08
   F16D121:24
   F16D125:28
   F16D125:64
   F16D125:70
   F16D129:04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-147641(P2014-147641)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-23697(P2016-23697A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 努
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−280386(JP,A)
【文献】 特表平10−505038(JP,A)
【文献】 特表昭57−501277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/18
B61H 5/00
F16D 55/2255
F16D 65/46
F16D 121/04
F16D 121/08
F16D 121/24
F16D 125/28
F16D 125/64
F16D 125/70
F16D 129/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転するブレーキディスクを挟持して制動するブレーキ装置であって、
車体又は台車に支持されるブレーキ本体と、
前記ブレーキ本体に対して一端部と他端部との間の支持部が回動可能に支持されて前記ブレーキディスクの両面に臨んで各々設けられ、前記他端部が前記ブレーキディスクに摺接して摩擦力を付与するブレーキライニングを支持する一対のリンクアームと、
前記一対のリンクアームの前記一端部どうしを連結する連結部材と、
前記連結部材に取り付けられ、出力部材を進退させるアクチュエータと、
前記アクチュエータの前記出力部材に回動可能に連結され前記出力部材の進退によって回動するレバーと、
前記一対のリンクアームの前記一端部のうち少なくとも一方に設けられ、前記レバーの回動によって伝達される力を倍力して前記支持部を支点に前記リンクアームを回動させる倍力ユニットと、を備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記連結部材の前記アクチュエータが取り付けられる範囲外に設けられ、前記ブレーキライニングの摩耗量に応じて前記連結部材を伸長させるアジャスタを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記リンクアームの前記一端部よりも前記支持部から離れた位置に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記倍力ユニットは、前記レバーの回動によって回転軸を中心に回転する偏心カムを有し、
前記偏心カムは、前記回転軸からオフセットされた位置に中心軸を有し前記レバーの回動によって前記回転軸を中心として円弧状に回動する偏心部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記偏心カムは、
前記連結部材に回動可能に連結される大径部を更に有し、
前記偏心部は、前記大径部と比較して小径に形成され、前記大径部の軸方向両側に各々設けられて前記レバーが相対回動不能に連結されることを特徴とする請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記偏心カムは、前記偏心部を挟んで前記大径部の反対側に又は前記偏心部と前記大径部との間に、前記偏心部と同軸に形成され前記リンクアームに回転可能に支持される一対のアーム連結部を更に有することを特徴とする請求項5に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、支点を中心に回動可能な一対のリンクアームの力点にアクチュエータによる力を作用させ、リンクアームの作用点に支持されるブレーキライニングをブレーキディスクに摺接させて車輪の回転を制動するブレーキ装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、キャリパレバーの一方の端部が互いに連結され他方の端部が各々ブレーキパッドに枢着され、キャリパレバーの両端部の間の支点に設けられた偏心体伝動装置がキャリパレバーを回動させるブレーキキャリパユニットが開示されている。偏心体伝動装置は、ブレーキ力発生器による力を受けて回転する偏心ピンを有し、この偏心ピンの回転によって一方の端部を中心にキャリパレバーを回動させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−505038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のキャリパブレーキユニットでは、ブレーキパッドがブレーキディスクに摺接する制動時にブレーキディスクからブレーキパッドに作用する周方向の接線力は、偏心体伝動装置の偏心ピンに作用する。そのため、制動時に偏心ピンを回転させるためには大きな力が必要であり、機械効率を向上させることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ブレーキ装置の機械効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、ブレーキ本体に対して一端部と他端部との間の支持部が回動可能に支持されて他端部がブレーキライニングを支持する一対のリンクアームと、一対のリンクアームの一端部どうしを連結する連結部材と、連結部材に取り付けられ出力部材を進退させるアクチュエータと、一対のリンクアームの一端部のうち少なくとも一方に設けられ出力部材の進退によって回動するレバーの回動によって伝達される力を倍力して支持部を支点にリンクアームを回動させる倍力ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
第一の発明では、リンクアームは、一端部と他端部との間の支持部がブレーキ本体に対して回動可能に支持される。そして、レバーの回動によって伝達される力を倍力して支持部を支点にリンクアームを回動させる倍力ユニットは、リンクアームの一端部に設けられる。そのため、ブレーキ装置の制動時にブレーキディスクからブレーキライニングに作用する周方向の接線力は、支持部に作用して倍力ユニットには作用しない。
【0009】
第二の発明は、連結部材のアクチュエータが取り付けられる範囲外に設けられてブレーキライニングの摩耗量に応じて連結部材を伸長させるアジャスタを更に備えることを特徴とする。
【0010】
第二の発明では、アジャスタが連結部材のアクチュエータが取り付けられる範囲外に設けられるため、ブレーキライニングが摩耗して連結部材が伸長しても、アクチュエータと倍力ユニットとの位置関係は変化しない。よって、ブレーキライニングが摩耗しても、アクチュエータの作動特性を変化させないことが可能である。
【0011】
第三の発明は、アクチュエータが、リンクアームの一端部よりも支持部から離れた位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
第三の発明では、アクチュエータが連結部材と一対のリンクアームとによって囲まれる領域の外側に設けられるため、リンクアームの設計自由度が向上する。よって、リンクアームを短くすることができるため、ブレーキ装置の小型軽量化が可能である。
【0013】
第四の発明は、倍力ユニットが、レバーの回動によって回転軸を中心に回転する偏心カムを有し、偏心カムが、レバーの回動によって回転軸を中心として円弧状に回動する偏心部を有することを特徴とする。
【0014】
第五の発明は、偏心カムが、連結部材に回動可能に連結される大径部を更に有し、偏心部が、大径部と比較して小径に形成され、大径部の軸方向両側に各々設けられてレバーが相対回動不能に連結されることを特徴とする。
【0015】
第六の発明は、偏心カムが、偏心部を挟んで大径部の反対側に又は偏心部と大径部との間に、偏心部と同軸に形成されリンクアームに回転可能に支持される一対のアーム連結部を更に有することを特徴とする。
【0016】
第四から第六の発明では、偏心カムは、レバーの両端部の間の距離と、回転軸から偏心部の中心軸までの距離とのレバー比によって、ロッドからレバーを介して伝達される力を倍力してリンクアームに伝達する。よって、大型のアクチュエータを設けることなく、大きな制動力を得ることができる。したがって、ブレーキ装置の小型軽量化が可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブレーキ装置の制動時の機械効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るブレーキ装置の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るブレーキ装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係るブレーキ装置100の構成について説明する。
【0021】
ブレーキ装置100は、主に鉄道車両に適用されるものである。ブレーキ装置100は、車輪1とともに回転するブレーキディスク1aを挟持して車輪1を制動するものである。具体的には、ブレーキ装置100は、ブレーキディスク1aをその両面から一対のブレーキライニング2で挟持し、ブレーキディスク1aとブレーキライニング2との間の摩擦力によって車輪1の回転を制動する。
【0022】
ブレーキディスク1aは、車輪1の表裏両面に形成されて車輪1と一体に回転する。ブレーキディスク1aを車輪1と一体に形成する構成に代えて、車輪1とともに回転する別体のブレーキディスク1aを設けてもよい。
【0023】
ブレーキライニング2は、非制動時には、ブレーキディスク1aと予め設定された所定の間隔をあけて対向する(図1に示す状態)。ブレーキライニング2は、制動時には、ブレーキディスク1aに向かって移動し、ブレーキディスク1aに平行に当接して押圧される。
【0024】
ブレーキライニング2は、ブレーキ装置100のライニング保持部3に支持される裏板部2aと、制動時にブレーキディスク1aに当接する摩擦部材2bと、を有する。摩擦部材2bは、複数のセグメントからなり、裏板部2aの表面に固定される。ブレーキライニング2は、摩擦部材2bとブレーキディスク1aとの当接によって発生する摩擦力によって、車輪1の回転を制動する。
【0025】
ライニング保持部3は、ブレーキライニング2の裏板部2aが挿入されるアリ溝(図示省略)を有する。ライニング保持部3の上下の端部には、一対のアンカボルト5によってライニング保持部3に固定されるアンカブロック4が各々設けられる。アンカブロック4は、ブレーキライニング2の裏板部2aの長手方向(図2では上下方向)の端部を固定する。これにより、アリ溝に挿入されたブレーキライニング2は、ライニング保持部3に保持される。
【0026】
ブレーキ装置100は、ブレーキ本体10と、ブレーキ本体10に対して一端部31と他端部33との間の支持部32が回動可能に支持される一対のリンクアーム30と、一対のリンクアーム30の一端部31どうしを連結する連結部材としての連結ロッド35と、連結ロッド35に取り付けられ、出力部材としてのロッド21を進退させるアクチュエータ20と、アクチュエータ20のロッド21に回動可能に連結されロッド21の進退によって回動するレバー40と、一対のリンクアーム30の一端部31のうち少なくとも一方に設けられ、レバー40の回動によって伝達される力を倍力して支持部32を支点にリンクアーム30を回動させる倍力ユニット50と、を備える。
【0027】
ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両に適用される場合には、台車(図示省略)に支持される。ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両以外の車両に適用される場合には、車体(図示省略)に支持される。
【0028】
アクチュエータ20は、油圧等の液圧や空気圧など作動流体の圧力によって作動する流体圧アクチュエータである。これに限らず、アクチュエータ20は、電動モータの回転によって作動する機械式アクチュエータなど他の形式であってもよい。アクチュエータ20は、運転者の制動操作に基づいて作動し、連結ロッド35に取り付けられるアクチュエータ本体20aに対してロッド21を進退させる。
【0029】
アクチュエータ20は、リンクアーム30の一端部31よりも支持部32から離れた位置に設けられる。つまり、アクチュエータ20は、連結ロッド35を挟んでブレーキ本体10と対向するように設けられる。これにより、アクチュエータ20が連結ロッド35と一対のリンクアーム30とによって囲まれる領域の外側に設けられるため、リンクアーム30の設計自由度が向上する。よって、リンクアーム30を短くすることができるため、ブレーキ装置100の小型軽量化が可能である。
【0030】
図2に示すように、ロッド21は、一対のレバー40に各々連結される連結部21aと、一対の連結部21aの間に形成される凹部21bと、を有するU字状に形成される。凹部21bは、ロッド21がアクチュエータ本体20aから退出したときに、ロッド21と連結ロッド35との干渉を防止するものである。よって、ロッド21がアクチュエータ本体20aから退出する際には、連結ロッド35が凹部21bに入り込み、一対の連結部21aが連結ロッド35を避けて伸長することとなる。
【0031】
ロッド21は、各々の連結部21aにレバー40を回動可能に各々連結する一対の連結シャフト22を有する(図1参照)。一対の連結シャフト22は、同軸に設けられる。連結シャフト22は、その中心軸がブレーキライニング2と平行となるように配設される。ロッド21が往復動する中心軸の延長線上には、ブレーキディスク1aの中心が位置する。ロッド21は、アクチュエータ本体20aに対して進退するとともに、ブレーキライニング2が移動可能な方向(図1では上下方向)に揺動可能である。
【0032】
図1に示すように、リンクアーム30は、ブレーキディスク1aの両面に臨んで各々設けられる。一対のリンクアーム30の一端部31どうしは、連結ロッド35によって連結される。リンクアーム30の他端部33は、ブレーキディスク1aに摺接して摩擦力を付与するブレーキライニング2を揺動可能に支持する。図2に示すように、リンクアーム30は、上下に設けられる一対のアーム部30aを有する略U字状に形成される。
【0033】
図1に示すように、一方のリンクアーム30の一端部31には、連結ロッド35とリンクアーム30とを貫通して連結する連結シャフト31aが設けられる。他方のリンクアーム30の一端部31には、連結ロッド35とリンクアーム30と一対のレバー40とを貫通して連結して、アクチュエータ20のロッド21の進退による力を倍力してリンクアーム30を回動させる倍力ユニット50が設けられる。
【0034】
この構成に代えて、一方のリンクアーム30の一端部31と他方のリンクアーム30の一端部31とに、ともに倍力ユニット50を設けてもよい。その場合、各々の倍力ユニット50が一方のリンクアーム30と他方のリンクアーム30とをそれぞれ回動させることができる。倍力ユニット50については、後で詳細に説明する。
【0035】
リンクアーム30の支持部32には、リンクアーム30とブレーキ本体10とを貫通して連結するアームシャフト32aが設けられる。リンクアーム30は、アームシャフト32aによってブレーキ本体10に回動可能に支持される。ブレーキ装置100の制動時にブレーキディスク1aからブレーキライニング2に作用する周方向の接線力は、支持部32からアームシャフト32aを介してブレーキ本体10に作用する。
【0036】
リンクアーム30の他端部33には、リンクアーム30とライニング保持部3とを貫通して連結するライニングシャフト33aが設けられる。ライニング保持部3は、ライニングシャフト33aによってリンクアーム30に回動可能に支持される。これにより、ブレーキライニング2は、リンクアーム30に対して揺動可能となり、制動時にブレーキディスク1aに常に平行に当接することができる。
【0037】
レバー40は、アクチュエータ20のロッド21の進退による力を倍力ユニット50に伝達する。レバー40の一端部41は、ロッド21の連結シャフト22に回動可能に連結される。レバー40の他端部42は、倍力ユニット50の後述する偏心部53に回動不能に連結される。
【0038】
レバー40は、ロッド21がアクチュエータ本体20aに対して進退すると、連結シャフト22と偏心部53との間で回動する。レバー40は、ロッド21がアクチュエータ本体20aから最も退出した状態では、連結ロッド35と平行な位置まで回動する。
【0039】
図2に示すように、倍力ユニット50は、レバー40の回動によって回転軸A1を中心に回転する偏心カム51を有する。偏心カム51の回転軸A1は、リンクアーム30に対する位置が、連結シャフト31aの中心軸と同じ位置となるように設けられる。
【0040】
偏心カム51は、連結ロッド35に回動可能に連結される大径部52と、偏心カム51の回転軸A1からオフセットされた位置に中心軸A2を有しレバー40の回動によって回転軸A1を中心として円弧状に回動する偏心部53と、偏心部53と同軸に形成されリンクアーム30に回転可能に支持される一対のアーム連結部54と、を有する。
【0041】
大径部52は、連結シャフト31aと同じ外径に形成される。大径部52の中心軸が、偏心カム51の回転軸A1である。
【0042】
偏心部53は、大径部52と比較して小径に形成される。偏心部53は、大径部52の軸方向両側に各々設けられる。偏心部53には、レバー40が相対回動不能に連結される。よって、ロッド21がアクチュエータ本体20aに対して進退してレバー40が回動すると、偏心部53が回転軸A1を中心とする円弧状に回動する。
【0043】
アーム連結部54は、偏心部53と同径に形成される。アーム連結部54は、偏心部53を挟んで大径部52の反対側に設けられる。これに代えて、アーム連結部54を、偏心部53と比較して小径に形成してもよい。また、アーム連結部54を、偏心部53と大径部52との間に各々設けてもよい。
【0044】
このように、偏心カム51は、中央に大径部52を有し、その両端に大径部52よりも小径な偏心部53を有し、更にその両端に偏心部53と同径又は偏心部53よりも小径なアーム連結部54を有する。よって、偏心カム51は、中央から両端部に向かって段階的に小径になるため、加工が容易である。また、偏心カム51に連結ロッド35とレバー40とリンクアーム30とを順番に組み立てることができるため、組み立て性が良好である。
【0045】
ブレーキ装置100は、ブレーキライニング2の摩耗量に応じて連結ロッド35を伸長させるアジャスタ37を更に備える。アジャスタ37は、アクチュエータ20が取り付けられる範囲外に設けられる。アジャスタ37は、調整ロッド36を伸長させることによって連結ロッド35を伸長させるものである。アジャスタ37は、ブレーキ装置100が制動状態になってブレーキライニング2が摩耗すると、連結ロッド35内に設けられた調整ねじ(図示省略)が回転して、調整ロッド36を伸長させる。
【0046】
このように、アジャスタ37が連結ロッド35のアクチュエータ20が取り付けられる範囲外に設けられるため、ブレーキライニング2が摩耗して連結ロッド35が伸長しても、アクチュエータ20と倍力ユニット50との位置関係は変化しない。よって、ブレーキライニング2が摩耗しても、アクチュエータ20の作動特性を変化させないことが可能である。
【0047】
次に、ブレーキ装置100の作用について説明する。
【0048】
ブレーキ装置100は、運転者の制動操作に基づいてアクチュエータ20が作動すると、非制動状態(図1及び図2に示す状態)から制動状態になる。
【0049】
アクチュエータ20が作動して、ロッド21がアクチュエータ本体20aから退出すると、レバー40は連結シャフト22によって押されて回動する。アクチュエータ20がロッド21を退出させる力は、レバー40を介して偏心カム51の偏心部53に伝達される。
【0050】
偏心カム51は、レバー40を介して伝達された力によって、偏心部53が回転軸A1を中心とする円弧状に回動することによって一方向(図1では時計回り)に回転する。これにより、偏心部53と一体にアーム連結部54がロッド21から離間する方向に回動するため、一対のリンクアーム30の一端部31は、互いに離間する方向に移動する。
【0051】
リンクアーム30は、支持部32によってブレーキ本体10に回動可能に支持されるため、一端部31が互いに離間する方向に移動すると、他端部33は互いに近接する方向に移動する。よって、ブレーキライニング2が、ブレーキディスク1aに向かって移動して、ブレーキディスク1aに平行に当接して押圧され、車輪1の回転が制動される。
【0052】
このとき、偏心カム51は、連結シャフト22の中心軸A3と回転軸A1との間の距離L1と、回転軸A1と偏心部53の中心軸A2との間の距離L2とのレバー比によって、ロッド21からレバー40を介して伝達される力をL1/L2倍に倍力してリンクアーム30に伝達する。よって、大型のアクチュエータを設けることなく、大きな制動力を得ることができる。したがって、ブレーキ装置100の小型軽量化が可能である。
【0053】
また、リンクアーム30は、一端部31と他端部33との間の支持部32がブレーキ本体10に対して回動可能に支持される。レバー40の回動によってロッド21に伝達される力を倍力してリンクアーム30を回動させる偏心カム51は、リンクアーム30の一端部31に設けられる。そのため、ブレーキ装置100の制動時にブレーキディスク1aからブレーキライニング2に作用する周方向の接線力は、支持部32のアームシャフト32aに作用することとなり、偏心カム51には作用しない。したがって、偏心カム51が回転する際の摩擦抵抗が大きくなることがないため、ブレーキ装置100の制動時の機械効率を向上させることができる。
【0054】
偏心カム51からリンクアーム30の一端部31に伝達される力は、一端部31と支持部32との間の距離L3と、支持部32と他端部33との間の距離L4とのレバー比によって、L3/L4倍に倍力される。ブレーキ装置100では、距離L3と比較して距離L4の方が大きいため、ブレーキライニング2をブレーキディスク1aに押圧する力は、偏心カム51からリンクアーム30の一端部31に伝達される力よりも小さな力となる。
【0055】
しかしながら、ブレーキ装置100では、偏心カム51によってアクチュエータ20のロッド21からレバー40を介して伝達される力が大きな倍率で倍力されている。そのため、ブレーキ装置100の小型軽量化のためにリンクアーム30を短くして距離L3を小さくしても、充分に大きな制動力を得ることができる。
【0056】
なお、ブレーキ装置100では、偏心カム51をリンクアーム30の一端部31に設けることによって、支持部32のアームシャフト32aの位置の設計自由度が高くなっている。そのため、アームシャフト32aを車輪1の側面に臨む位置に配置することも可能である。よって、距離L3を距離L4と比較して大きくすることもでき、偏心カム51によって倍力された力を更に倍力してブレーキライニング2をブレーキディスク1aに押圧することも可能である。
【0057】
ブレーキ装置100は、運転者の制動解除操作に基づいてアクチュエータ20が制動時とは逆の方向に作動すると、制動状態から非制動状態(図1及び図2に示す状態)になる。
【0058】
アクチュエータ20が作動して、ロッド21がアクチュエータ本体20aに進入すると、レバー40は連結シャフト22に引っ張られて回動する。アクチュエータ20がロッド21を進入させる力は、レバー40を解して偏心カム51の偏心部53に伝達される。
【0059】
偏心カム51は、レバー40を介して伝達された力によって、偏心部53が回転軸A1を中心とする円弧状に回動することによって他方向(図1では反時計回り)に回転する。これにより、一対のリンクアーム30の一端部31は、互いに近接する方向に移動する。よって、一対のリンクアーム30の他端部33は、互いに離間する方向に移動する。これにより、ブレーキライニング2がブレーキディスク1aから離間して、車輪1の制動が解除される。
【0060】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0061】
リンクアーム30は、一端部31と他端部33との間の支持部32がブレーキ本体10に対して回動可能に支持される。レバー40の回動によってロッド21に伝達される力を倍力してリンクアーム30を回動させる偏心カム51は、リンクアーム30の一端部31に設けられる。そのため、ブレーキ装置100の制動時にブレーキディスク1aからブレーキライニング2に作用する周方向の接線力は、支持部32のアームシャフト32aに作用することとなり、偏心カム51には作用しない。したがって、偏心カム51が回転する際の摩擦抵抗が大きくなることがないため、ブレーキ装置100の制動時の機械効率を向上させることができる。
【0062】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0063】
本実施形態では、車輪1とともに回転するブレーキディスク1aを挟持して制動するブレーキ装置100は、車体又は台車に支持されるブレーキ本体10と、ブレーキ本体10に対して一端部31と他端部33との間の支持部32が回動可能に支持されてブレーキディスク1aの両面に臨んで各々設けられ、他端部33がブレーキディスク1aに摺接して摩擦力を付与するブレーキライニング2を支持する一対のリンクアーム30と、一対のリンクアーム30の一端部31どうしを連結する連結ロッド35と、連結ロッド35に取り付けられ、ロッド21を進退させるアクチュエータ20と、アクチュエータ20のロッド21に回動可能に連結されロッド21の進退によって回動するレバー40と、一対のリンクアーム30の一端部31のうち少なくとも一方に設けられ、レバー40の回動によって伝達される力を倍力して支持部32を支点にリンクアーム30を回動させる倍力ユニット50と、を備えることを特徴とする。
【0064】
この構成では、リンクアーム30は、一端部31と他端部33との間の支持部32がブレーキ本体10に対して回動可能に支持される。レバー40の回動によってロッド21に伝達される力を倍力してリンクアーム30を回動させる偏心カム51は、リンクアーム30の一端部31に設けられる。そのため、ブレーキ装置100の制動時にブレーキディスク1aからブレーキライニング2に作用する周方向の接線力は、支持部32のアームシャフト32aに作用することとなり、偏心カム51には作用しない。したがって、偏心カム51が回転する際の摩擦抵抗が大きくなることがないため、ブレーキ装置100の制動時の機械効率を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、連結ロッド35のアクチュエータ20が取り付けられる範囲外に設けられ、ブレーキライニング2の摩耗量に応じて連結ロッド35を伸長させるアジャスタ37を更に備えることを特徴とする。
【0066】
この構成では、アジャスタ37が連結ロッド35のアクチュエータ20が取り付けられる範囲外に設けられるため、ブレーキライニング2が摩耗して連結ロッド35が伸長しても、アクチュエータ20と倍力ユニット50との位置関係は変化しない。よって、ブレーキライニング2が摩耗しても、アクチュエータ20の作動特性を変化させないことが可能である。
【0067】
また、本実施形態では、アクチュエータ20は、リンクアーム30の一端部31よりも支持部32から離れた位置に設けられることを特徴とする。
【0068】
この構成では、アクチュエータ20が連結ロッド35と一対のリンクアーム30とによって囲まれる領域の外側に設けられるため、リンクアーム30の設計自由度が向上する。よって、リンクアーム30を短くすることができるため、ブレーキ装置100の小型軽量化が可能である。
【0069】
また、本実施形態では、倍力ユニット50は、レバー40の回動によって回転軸A1を中心に回転する偏心カム51を有し、偏心カム51は、回転軸A1からオフセットされた位置に中心軸A2を有しレバー40の回動によって回転軸A1を中心として円弧状に回動する偏心部53を有することを特徴とする。
【0070】
また、本実施形態では、偏心カム51は、連結ロッド35に回動可能に連結される大径部52を更に有し、偏心部53は、大径部52と比較して小径に形成され、大径部52の軸方向両側に各々設けられてレバー40が相対回動不能に連結されることを特徴とする。
【0071】
また、本実施形態では、偏心カム51は、偏心部53を挟んで大径部52の反対側に又は偏心部53と大径部52との間に、偏心部53と同軸に形成されリンクアーム30に回転可能に支持される一対のアーム連結部54を更に有することを特徴とする。
【0072】
これらの構成によれば、偏心カム51は、レバー40の両端部の間の距離と、回転軸A1から偏心部53の中心軸A3までの距離とのレバー比によって、ロッド21からレバー40を介して伝達される力を倍力してリンクアーム30に伝達する。よって、大型のアクチュエータを設けることなく、大きな制動力を得ることができる。したがって、ブレーキ装置100の小型軽量化が可能である。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、アクチュエータ20は、連結ロッド35と一対のリンクアーム30とによって囲まれる領域の外側に設けられる。しかしながら、この構成に限らず、アクチュエータ20が連結ロッド35に取り付けられていればよいため、連結ロッド35と一対のリンクアーム30とによって囲まれる領域の内側にアクチュエータ20を設けてもよい。
【0075】
また、アクチュエータ20のロッド21やレバー40を、連結ロッド35に取り付けられるカバー部材(図示省略)で覆ってもよい。これにより、ブレーキ装置100の作動時に動作するロッド21やレバー40を保護することができる。
【符号の説明】
【0076】
100・・・ブレーキ装置、1・・・車輪、1a・・・ブレーキディスク、2・・・ブレーキライニング、10・・・ブレーキ本体、20・・・アクチュエータ、21・・・ロッド(出力部材)、30・・・リンクアーム、31・・・一端部、32・・・支持部、33・・・他端部、35・・・連結ロッド(連結部材)、36・・・調整ロッド(長さ調整部)、37・・・アジャスタ、40・・・レバー、50・・・倍力ユニット、51・・・偏心カム、52・・・大径部、53・・・偏心部、54・・・アーム連結部
図1
図2