(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277112
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】安全コーン
(51)【国際特許分類】
E01F 13/02 20060101AFI20180129BHJP
E01F 9/688 20160101ALI20180129BHJP
【FI】
E01F13/02 A
E01F9/688
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-234379(P2014-234379)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-98501(P2016-98501A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】510106968
【氏名又は名称】首都高メンテナンス東東京株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 次美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄作
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博
(72)【発明者】
【氏名】日向 準
(72)【発明者】
【氏名】出来 信久
(72)【発明者】
【氏名】萩原 徹
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−025211(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3012330(JP,U)
【文献】
特開平11−152715(JP,A)
【文献】
実公昭40−004028(JP,Y1)
【文献】
英国特許出願公開第02280695(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/02
E01F 9/688
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角錐状または三角錐台状に形成され、3つの側面を有する本体部と、
前記本体部の下端に設けられ、平面的に見て矩形状に形成された底面部とを備え、
前記側面は、高さ方向における断面形状が弧状に張り出すように形成されるとともに、標示を施すことが可能に構成されていることを特徴とする安全コーン。
【請求項2】
三角錐状または三角錐台状に形成され、3つの側面を有する本体部を備え、
前記側面は、高さ方向における断面形状が弧状に張り出すように形成されるとともに、下端側から上端側に向けて弧状に張り出す断面形状の湾曲度合いが徐々に大きくなるように構成され、かつ、標示を施すことが可能に構成されていることを特徴とする安全コーン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の安全コーンにおいて、
前記本体部の下端に設けられた底面部を備え、
前記底面部には、重しが埋め込まれていることを特徴とする安全コーン。
【請求項4】
請求項3に記載の安全コーンにおいて、
平面的に見て前記本体部の中央に重心が一致するように、前記重しが配置されていることを特徴とする安全コーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全コーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や工事現場などに設置される安全コーンが知られている。このような安全コーンの一例としては、円錐状に形成された本体部を備えるものがある。そして、円錐状の本体部の周側面には、文字や図形などの標示が施される場合がある。この場合には、周側面の湾曲度合いが大きいことから、その周側面に施された標示が視認しにくいという不都合があった。
【0003】
そこで、従来では、三角錐台状に形成された本体部を備える安全コーンが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この安全コーンの本体部は、3つの平坦な側面を有しており、その平坦な側面に標示が施されている。これにより、安全コーンに施された標示が視認しやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−227786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の安全コーンでは、標示を視認しやすくすることが可能であるが、本体部の側面に対して垂直な方向から風を受けた場合にその風を逃がすことが困難である。このため、安全コーンが風を受けた場合に、設置位置からずれるように移動したり、転倒しやすくなるおそれがある。すなわち、特許文献1の安全コーンでは、耐風性能が悪化するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、標示が施されている場合にその標示を視認しやすくするとともに、耐風性能の悪化を抑制することが可能な安全コーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による安全コーンは、三角錐状または三角錐台状に形成され、3つの側面を有する本体部
と、本体部の下端に設けられ、平面的に見て矩形状に形成された底面部とを備える。そして、側面は、高さ方向における断面形状が弧状に張り出すように形成されるとともに、標示を施すことが可能に構成されている。
【0008】
このように構成することによって、本体部が円錐状である場合に比べて、側面の湾曲度合いを小さくすることができるので、側面に標示が施されている場合にその標示を視認しやすくすることができる。また、側面が平坦である場合に比べて、風を逃がしやすくすることができるので、耐風性能の悪化を抑制することができる。
さらに、底面部が平面的に見て円形状に形成されている場合などに比べて、安全コーンが転倒したときに転がりにくくすることができる。
本発明による安全コーンは、三角錐状または三角錐台状に形成され、3つの側面を有する本体部を備える。そして、側面は、高さ方向における断面形状が弧状に張り出すように形成されるとともに、下端側から上端側に向けて弧状に張り出す断面形状の湾曲度合いが徐々に大きくなるように構成され、かつ、標示を施すことが可能に構成されている。
【0009】
上記安全コーンにおいて、本体部の下端に設けられた底面部を備え、底面部には、重しが埋め込まれていてもよい。
【0010】
このように構成すれば、安全コーンの重心を低くすることができるので、耐風性能の向上を図ることができる。また、転倒防止用の別体の重しを設置する必要がないので、安全コーンの設置作業および撤去作業の簡単化を図ることができる。
【0011】
この場合において、平面的に見て本体部の中央に重心が一致するように、重しが配置されていてもよい。
【0012】
このように構成すれば、各方向に対する耐風性能の均等化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の安全コーンによれば、標示が施されている場合にその標示を視認しやすくするとともに、耐風性能の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による安全コーンを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
まず、
図1〜
図7を参照して、本実施形態による安全コーン100の構造について説明する。なお、安全コーン100は、たとえば、道路や工事現場などに設置され、領域を区画して侵入を規制する用途などに用いられる。また、各図において、Z1方向が上方向であり、Z2方向が下方向であり、Y1方向が前方向であり、Y2方向が後方向であり、X1方向が左方向であり、X2方向が右方向である。
【0019】
安全コーン100は、
図1〜
図7に示すように、三角錐台状に形成された本体部1と、本体部1の下端に設けられた底面部2と、本体部1の上端に設けられた先端部3とを備えている。安全コーン100は、たとえば、後述する重し50を除き、破断しにくく柔らかい合成樹脂により一体的に形成されている。この安全コーン100は、たとえば、高さ(Z1およびZ2方向の長さ)が700mmであり、総重量が5.0kgである。
【0020】
本体部1は、3つの側面11(
図5および
図6参照)を有しており、側面11をそれぞれ対向する側から見ると台形状になっている。側面11は、板状に形成されており、本体部1の内部には中空部1a(
図7参照)が形成されている。これにより、複数の安全コーン100を積み重ねて運搬や収納することが可能である。
【0021】
側面11は、
図5などに示すように、各高さ位置において中央が両端に比べて外側に膨らむように形成されている。すなわち、側面11は、高さ方向における断面形状が弧状に張り出すように形成されている。なお、側面11は、下端側から上端側に向けて、両端間の距離が徐々に小さくなるとともに、湾曲度合いが徐々に大きくなるように構成されている。側面11の下端の曲率半径は、たとえば280mmである。これにより、側面11は、対向する側から風を受けた場合に、その風を中央側から端部側に向けて逃がしやすい形状になっている。
【0022】
また、側面11は、文字や図形などの標示(図示省略)を施すことが可能に構成されている。なお、標示の具体例としては、方向を示す立体図形状の矢印を挙げることができる。これにより、車両の運転手や歩行者などに各種の情報を提供することが可能である。たとえば、標示が施された側面11を車両の走行方向と対向する方向に向けて配置することにより、その標示を車両の運転手に視認させることが可能である。
【0023】
標示は、側面11に直接描かれていてもよいし、側面11に貼り付けられていてもよい。なお、標示は、3つの側面11の全てに施されていてもよいし、3つの側面11のうちのいずれか1つまたは2つの側面11に施されていてもよい。
【0024】
底面部2は、平面的に見て角丸正方形状に形成されている。この底面部2は、本体部1の下端から外側に延びるように形成され、つば状に形成されている。すなわち、底面部2には、底面側から見て略三角形状の開口部が形成されており、その開口部が中空部1aの開放端となっている。また、底面部2の側面は、
図1などに示すように、下端に対して上端が内側に傾斜するように形成されている。そして、底面部2では、側面と上端面との境界部が丸くなるように形成されている。底面部2の1辺の長さ(側面の下端の長さ)は、たとえば380mmである。
【0025】
底面部2の下面2aには、
図6などに示すように、安全コーン100が設置されたときのグリップ性を向上させるために脚部21および22が設けられている。
【0026】
脚部21は、底面部2の下面2aの4隅にそれぞれ設けられている。脚部21は、下面2aから下方に突出する台部21aと、台部21aから下方に突出する複数の突起21bとを有する。台部21aおよび突起21bは、底面側から見て円形に形成され、突起21bの面積が台部21aに比べて小さい。
【0027】
脚部22は、底面部2の下面2aの各辺に沿って間隔を隔てて複数設けられている。この脚部22は、4つの辺にそれぞれ4つずつ設けられている。脚部22は、下面2aから下方に突出する台部22aと、台部22aから下方に突出する複数の突起22bとを有する。台部22aおよび突起22bは、底面側から見て円形に形成され、突起22bの面積が台部22aに比べて小さい。
【0028】
なお、突起21bおよび22bの面積は同じであり、台部22aの面積は台部21aに比べて小さい。また、脚部21には、脚部22に比べて多数の突起21bが設けられている。そして、安全コーン100が平坦な地面に設置された場合には、脚部21の突起21bおよび脚部22の突起22bがその地面に接触するようになっている。
【0029】
また、底面部2には、
図5〜
図7に示すように、重し50が埋め込まれている。この重し50は、安全コーン100が転倒するのを抑制するために設けられている。重し50は、たとえばインサート成形によって埋め込まれている。また、重し50は、安全コーン100の重心が、本体部1を平面的に見たときの中央Cに一致するように配置さている。なお、本体部1を平面的に見たときの中央Cは、安全コーン100を平面的に見たときの中央と一致するようになっている。また、安全コーン100の重心の高さは、たとえば、脚部21および22の地面と接触する面から約60mmの位置である。
【0030】
また、重し50は、平面的に見て角丸正方形状に形成されるとともに、略三角形状の開口部を有する。すなわち、重し50は、角丸正方形状の外側面51と、略三角形状の内側面52とを有する。外側面51および内側面52は、
図7に示すように、下端に対して上端が内側に傾斜するように形成されている。なお、
図5および
図6では、外側面51の下端および内側面52の下端を破線で示している。
【0031】
重し50の底面には、
図6に示すように、下方に突出する突部53が形成されている。突部53は、底面側から見て円形に形成されるとともに、間隔を隔てて複数設けられている。そして、重し50の周囲が合成樹脂で覆われることにより、底面部2が形成されている。なお、重し50の突部53は露出されており、その突部53が底面部2の下面2aと面一である。
【0032】
先端部3は、円筒状に形成されるとともに、本体部1の上端から連なるように形成されている。この先端部3には、上端に開口部3aが形成されている。開口部3aは、たとえば内径が40mmであり、発光装置(図示省略)を挿入可能に構成されている。そして、開口部3aに発光装置が挿入されることにより、発光装置が安全コーン100に取り付けられるようになっている。
【0033】
また、先端部3は、
図7に示すように、上端が内側に折れ曲がるように形成されている。先端部3は、たとえば、長さが50mmであり、外径が56mm程度である。このため、設置作業および撤去作業の際に、作業者が先端部3を把持しやすくなっている。
【0034】
−効果−
本実施形態では、上記のように、3つの側面11を有する三角錐台状の本体部1を設けるとともに、高さ方向における断面形状が弧状に張り出すように側面11を形成することによって、本体部が円錐状である場合に比べて、側面11の湾曲度合いを小さくすることができるので、側面11に標示が施されている場合にその標示を視認しやすくすることができる。たとえば、側面11に立体図形状の矢印が標示されている場合には、その標示を車両の運転手や歩行者などに適切に視認させることができる。また、側面が平坦である場合に比べて、風を逃がしやすくすることができるので、側面11が対向する側から風を受けた場合であっても、安全コーン100が設置位置からずれるように移動したり、転倒するのを抑制することができる。すなわち、耐風性能の悪化を抑制することができる。その結果、標示が施されている場合にその標示を視認しやすくするとともに、耐風性能の悪化を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、底面部2に重し50を埋め込むことによって、安全コーン100の重心を低くすることができるので、耐風性能の向上を図ることができる。また、転倒防止用の別体の重し(図示省略)を設置する必要がないので、安全コーン100の設置作業および撤去作業の簡単化を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態では、安全コーン100の重心が平面視における中央Cに一致することによって、各方向に対する耐風性能の均等化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、底面部2を角丸正方形状にすることによって、底面部が平面的に見て円形状に形成されている場合などに比べて、安全コーン100が転倒したときに転がりにくくすることができる。
【0038】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0039】
たとえば、本実施形態では、本体部1が三角錐台状に形成される例を示したが、これに限らず、本体部が三角錐状に形成されていてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、少なくとも1つの側面11に標示が施される例を示したが、これに限らず、全ての側面に標示が施されていなくてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、底面部2に重し50が埋め込まれる例を示したが、これに限らず、重しが設けられていなくてもよい。また、重しが設けられる場合において、その形状、配置、数などはどのようなものであってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、安全コーン100の重心が平面視における中央Cに一致する例を示したが、これに限らず、安全コーンの重心が平面視における中央からずれていてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、底面部2が平面的に見て角丸正方形状である例を示したが、これに限らず、底面部が平面的に見て長方形状であってもよい。また、底面部が平面的に見て三角形状または円形状であってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、底面部2の下面2aに脚部21および22が設けられる例を示したが、これに限らず、底面部に脚部が設けられていなくてもよい。また、脚部が設けられる場合において、その形状、配置、数などはどのようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、道路や工事現場などに設置される安全コーンに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 本体部
2 底面部
11 側面
50 重し
100 安全コーン